説明

ボールペン用インキ組成物

【目的】 筆記にともなうボテが少なく、長期保存においても筆記カスレが発生することがないボールペン用油性インキ組成物を提供するものである。
【構成】着色剤と有機溶剤と該有機溶剤に可溶な樹脂とアミンオキシド基含有樹脂とを少なくとも含むボールペン用インキ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記部材としてのボールをボールホルダーの先端より一部突出して抱持した所謂ボールペンチップを使用したボールペンに好適に使用されるインキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボールペン用インキ組成物としては、着色剤と有機溶剤と樹脂等により構成され、インキ漏れを防ぐために高粘度となるように樹脂を配合しており、結果として粘着性が高いインキになっている。この場合、粘着性が高いために筆記時にボール表面のインキの一部が紙面に転写せずに残り、回転するボールと共にボールペンチップの先端に溜まり、チップ先端が汚れるという欠点がある。
このような欠点を防ぐためにインキに曳糸性を付与する試みがなされている。特許文献1には、曳糸性付与樹脂として重量平均分子量100万以上のポリビニルピロリドンを使用し曳糸長が100mm以上のインキが、特許文献2には曳糸性付与樹脂として重量平均分子量200万以上のポリビニルピロリドンを使用したインキが、特許文献3には0.2〜0.6質量%の重量平均分子量約100万〜150万のポリビニルピロリドンと0.1〜0.4質量%の重量平均分子量約250万〜300万のポリビニルピロリドンを合計0.4〜0.8質量%含有したインキが開示されている。
【特許文献1】特開平8−157765号公報
【特許文献2】特開平8−239616号公報
【特許文献3】特開2001−139866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の特許文献のように曳糸性を大きくしたインキ組成物において筆記をした場合、本来の線分の横に髭のようなボテが発生し、紙面を汚すという欠点があった。
本発明は、筆記においてボテが発生して紙面を汚すことが無いボールペン用インキ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
即ち、本発明は、少なくとも着色剤と有機溶剤と該有機溶剤に可溶な樹脂とアミンオキシド基含有樹脂とを含有するボールペン用インキ組成物を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0005】
アミンオキシド基含有樹脂は、アミンオキシド基中で配位結合した窒素原子と酸素原子が正と負の電荷を持つが、その電荷間の距離が非常に近いために強く分極していて活性が高い。そこで、近くに存在する樹脂分子間では強い静電気引力による結合が発生して複合体を形成し一種の架橋構造を形成する。この架橋構造の強い凝集力により、インキは一つの固まりとして挙動し易くなり、紙面と接触したインキがボール表面の周囲のインキもいっしょに連れて行くので、ボール表面に残るインキが少なく、堆積し難くなる。
また、たとえ僅かに残ってチップ先端に到達しても、強い凝集力によりボールの回転と共にチップ内に引き込まれてチップ先端に溜まることが無いためボテが少ないと推測される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下詳細に説明する。
着色材は、従来ボールペン用油性インキ組成物に使用されている染料および/または顔料を用いることができる。
【0007】
染料としては、従来公知の水溶性染料と油溶性染料を使用することが出来る。水溶性染料の具体例としては、C.I.ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、同71、C.I.ダイレクトイエロー4、同26、同44、同50、C.I.ダイレクトレッド1、同4、同23、同31、同37、同39、同75、同80、同81、同83、同225、同226、同227、C.I.ダイレクトブルー1、同15、同41、同71、同86、同87、同106、同108、同199等の直接染料や、C.I.アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同52、同107、同109、同110、同119、同154、C.I.アシッドイエロー1、同7、同17、同19、同23、同25、同29、同38、同42、同49、同61、同72、同78、同110、同127、同135、同141、同142、C.I.アシッドレッド8、同9、同14、同18、同26、同27、同35、同37、同51、同52、同57、同82、同83、同87、同92、同94、同111、同129、同131、同138、同186、同249、同254、同265、同276、C.I.アシッドバイオレット15、同17、同49、C.I.アシッドブルー1、同7、同9、同15、同22、同23、同25、同40、同41、同43、同62、同78、同83、同90、同93、同100、同103、同104、同112、同113、同158、C.I.アシッドグリーン3、同9、同16、同25、同27、C.I.アシッドオレンジ56等の酸性染料、C.I.フードイエロー3等の食用染料、マラカイトグリーン(C.I.42000)、ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、メチルバイオレットFN(C.I.42535)、ローダミンF4G(C.I.45160)、ローダミン6GCP(C.I.45160)等の塩基性染料等が挙げられる。
【0008】
油溶性染料の具体例としては、ローダミンBベース(C.I.45170B、田岡染料製造(株)製)、ソルダンレッド3R(C.I.21260、中外化成(株)製)、メチルバイオレット2Bベース(C.I.42535B、米国、National Aniline Div.社製)、ビクトリアブルーF4R(C.I.42563B)、ニグロシンベースLK(C.I.50415)(以上、BASF社製、独国)、バリファーストイエロー#3104(C.I.13900A)、バリファーストイエロー#3105(C.I.18690)、オリエントスピリットブラックAB(C.I.50415)、バリファーストブラック#3804(C.I.12195)、バリファーストイエロー#1109、バリファーストオレンジ#2210、バリファーストレッド#1320、バリファーストブルー#1605、バリファーストバイオレット#1701、バリファーストバイオレット#1704、オイルブルー#613、オイルイエロ−#129、ニグロシンベースEX(以上、オリエント化学工業(株)製)、スピロンブラックGMHスペシャル、スピロンイエローC−2GH、スピロンイエローC−GNH、スピロンレッドC−GH、スピロンレッドC−BH、スピロンブルーBPNH、スピロンブルーC−RH、スピロンバイオレットC−RH、S.P.T.オレンジ6、S.P.T.ブルー111(以上、保土ヶ谷化学工業(株)製)などが例示できる。
これらの各種染料は、単独又は混合して使用することができ、合計の使用量は全インキ組成物に対し0.1重量%〜50重量%が好ましい。
【0009】
また、着色剤として顔料を用いる場合は、従来公知の顔料を使用することが出来る。
例えば、有機顔料として、C.I.PIGMENT RED2、同3、同5、同17、同22、同38、同41、同48:2、同48:3、同49、同50:1、同53:1、同57:1、同58:2、同60、同63:1、同63:2、同64:1、同88、同112、同122、同123、同144、同146、同149、同166、同168、同170、同176、同177、同178、同179、同180、同185、同190、同194、同202、同206、同207、同209、同216、同245、同254、同255、同256、同272、C.I.PIGMENT ORANGE 5、同10、同13、同16、同36、同40、同43、同61、同64、同71、同73、C.I.PIGMENT VIOLET 19、同23、同31、同33、同36、同37、同38、同50、C.I.PIGMENT BLUE 2、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:5、同15:6、同16、同17、同22、同25、同60、同66、C.I.PIGMENT BROWN 23、同25、同26、C.I.PIGMENT YELLOW 1、同3、同12、同13、同24、同83、同93、同94、同95、同97、同99、同108、同109、同110、同117、同120、同128、同139、同147、同151、同153、同166、同167、同173、C.I.PIGMENT GREEN 7、同10、同36、同37、C.I.PIGMENT BLACK 7等の有機顔料等が挙げられる。これらの有機顔料は1種又は2種以上混合して使用することができ、その使用量は、インキ組成物全量に対して10〜50重量%が好ましい。
【0010】
また、無機顔料として、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、群青、紺青、コバルトブルー、チタンイエロー、ターコイズ、モリブデートオレンジ、酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。
【0011】
カーボンブラックの一例を挙げると、三菱カーボンブラック#10B、同#20B、同#14、同#30、同#33、同#40、同#44、同#45、同#45L、同#50、同#55、同#95、同#260、同#900、同#1000、同#2200B、同#2300、同#2350、同#2400B、同#2650、同#2700、同#4000B、同CF9、同MA8、同MA11、同MA77、同MA100、同MA220、同MA230、同MA600及びMCF88(以上、三菱化学(株)製)、モナーク120、モナーク700、モナーク800、モナーク880、モナーク1000、モナーク1100、モナーク1300、モナーク1400、モーガルL、リーガル99R、リーガル250R、リーガル300R、リーガル330R、リーガル400R、リーガル500及びリーガル660R(以上、米国、キャボット コーポレーション社製)、プリンテックスA、プリンテックスG、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス55、プリンテックス140U、プリンテックス140V、プリンテックス35、プリンテックス40、プリンテックス45、プリンテックスプリンテックス85、ナインペックス35、スペシャルブラック4,スペシャルブラック4A、スペシャルブラック5、スペシャルブラック6,スペシャルブラック100、スペシャルブラック250、スペシャルブラック350、スペシャルブラック550、カラーブラックFW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160及びカラーブラックS170(以上、デグサ ジャパン(株)製)、ラーベン5000ウルトラII、ラーベン2500ウルトラ、ラーベン1250、ラーベン760ウルトラ(以上、コロンビアカーボン日本(株)製)等が挙げられる。
更に、これらカーボンブラックの分散性、分散安定性等を向上するために、カーボンブラックは各種反応によりアニオン性置換基を有する有機基と共有結合を生成させたカーボンブラックとして使用されることがある。カーボンブラックにアニオン性置換基を有する有機基を共有させる方法としては、種々の方法があるが、原材料の入手が容易で簡便にできることから、アニオン性置換基を有する有機基のジアゾニウム塩をカーボンブラックと反応させる方法が好ましい。ジアゾニウム塩は、例えば、第一アミンと亜硝酸塩と酸を反応させることによって形成することができる。
第一アミンは、アンモニアの水素1原子をアルキル基またはアリール基で置換したものであるがジアゾニウム塩の安定性からアリール基が好ましい。アリール基としては、フェニル、ナフチル、アントラセニルなどが挙げられ、ヘテロアリール基としては、イミダゾリル、ピラゾニル、チエニル、チアゾリル、フリル、トリアジル、インドリルなどが挙げられる。また、第一アミンの置換基であるアニオン性置換基としては、COOH、COOLi、C、OONa、COOK、COONHなどのカルボキシル酸及びその塩、SOH、SOLi、SONa、SOK、SONHなどのスルホン酸及びその塩、OSOHのヒドロキシスルホン基、PO、POHNa、PONaなどのホスホン酸及びその塩、OPO、OPOHNa、OPONaなどの燐酸及びその塩を挙げることができる。アニオン性置換基を有する芳香族第一アミンとしては、p―アミノベンゼンスルホン酸、p−トルイジン−m−スルホン酸、p−トルイジン−O−スルホン酸、4−アミノ−2−クロロトルエン−5−スルホン酸、3−アミノ−6−クロロベンゼンスルホン酸、7−アミノ−1,3−ナフタレンジスルホン酸、2−アミノベンゾイックアシッド、p−アミノ安息香酸、3−アミノ−4−クロロベンゾイックアシッド、4−アミノフェニルジサルフライドなどが挙げられる。亜硝酸塩を使用する場合には、亜硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸鉛などの金属亜硝酸塩、亜硝酸イソアミル、亜硝酸エステルなどの有機亜硝酸塩及び亜硝酸ガスを使用することができる。酸を使用する場合には、一般の無機酸や有機酸が使用できるが、好ましくは、硝酸、塩酸、硫酸、氷酢酸などが使用することができる。これらのアニオン性置換基を有する第一アミン、亜硝酸塩、酸はプロトン性溶媒または非プロトン性溶媒中でジアゾニウム塩を形成し速やかにカーボンブラックと結合して、アニオン性置換基を有するジアゾニウム塩と反応したカーボンブラックを生成する。生成されたカーボンブラックは、乾燥により溶媒除去してインキに使用される。
これらの無機顔料は、1種又は2種以上混合して使用することができ、その使用量は、インキ組成物全量に対して15重量%〜50重量%が好ましい。
【0012】
有機溶剤としては従来ボールペン用インキに使用されるものなら特に限定なく使用でき、特に、アルコール、グリコール、グリコールエーテルが好ましい。
アルコールとしては、ベンジルアルコール、α−メチルベンジルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソドデシルアルコール、イソトリデシルアルコール等が使用できる。グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノノルマルブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノノルマルブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノノルマルブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられる。
その他、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、N−メチル−2−ピロリドンなどが使用できる。
これらの溶剤は単独あるいは2種以上併用して使用することができる。その使用量はボールペン用油性インキ組成物全量に対して35重量%〜80重量%が好ましい。
【0013】
上記有機溶剤に可能な樹脂としては、従来よりボールペン用油性インキ組成物に、定着性、分散性、粘度調整、耐水性などを付与するものとして使用されているものが使用できる。例えば、ケトン樹脂、スルフォアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸ポリメタクリル酸共重合物、マレイン酸樹脂、スチレンとマレイン酸エステルとの共重合体、スチレンとアクリル酸又はそのエステルとの共重合体、エステルガム、キシレン樹脂、クマロン−インデン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン系樹脂やその水添化合物、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルキルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等が挙げられ、これらは単独もしくは複数種を併用することも出来る。合計の配合量は、インキ組成物全量に対して、0.1〜30重量%範囲が好ましい。
【0014】
アミンオキシド基含有樹脂は、配位結合した窒素原子と酸素原子を構造中に有する分極性基であるアミンオキシド基を構造中に含む共重合体であり、ボテを防止するために添加されるが、特に、着色剤として顔料を使用した場合には、アミンオキシド基が顔料表面のイオン性官能基とイオン結合を形成し、顔料の沈降を防止することが出来るため長期保存時の筆記カスレも防止することが出来る。
本発明のアミンオキシド基含有樹脂としては、下記の一般式(数1)〜(数5)のいずれか1つで示される構成単位を少なくとも含有する共重合体が挙げられる。
【0015】
【数1】

【0016】
【数2】

【0017】
【数3】

【0018】
【数4】

【0019】
【数5】

【0020】
上記式(数1)〜(数5)において、R1は水素原子又はメチル基を、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基又はアラルキル基を、Xは2価の結合基を、Yはメチレン結合(−CH2−)、イミノ結合(−NH−)、エーテル結合(−O−)、又はチア結合(−S−)のいずれかをそれぞれ示し、mは0又は1、nは1又は2、p及びqは一方が0で他方が1である。
【0021】
上記一般式(数1)で示される構成単位を含有するアミンオキシド基含有樹脂としては、長鎖脂肪酸アクリルエステルとメタクリル酸エチルアミンオキシドとアクリル酸及び/またはメタクリル酸を構成成分に有する共重合体等が好適に使用できる。
具体的には、アクリル酸・アクリル酸ラウリル・アクリル酸ステアリル・メタクリル酸エチルアミンオキシド共重合体、アクリル酸・アクリル酸ステアリル・メタクリル酸エチルアミンオキシド共重合体、アクリル酸・アクリル酸ラウリル・メタクリル酸エチルアミンオキシド共重合体等が挙げられる。
具体的な商品名としては、ダイヤフォーマーZ−711、ダイヤフォーマーZ−712、ダイヤフォーマーZ−631、ダイヤフォーマーZ−651、ダイヤフォーマーZ−632、ダイヤフォーマーZ−772(以上、三菱化学(株)製)、DaiformerZ711、DaiformerZ712、DaiformerZ731、DaiformerZ651(以上、クラリアント社製、ドイツ)が使用できる。これらは、単独で用いても良いし、2種以上混合して用いても良く、その合計の配合量は、ボールペン用油性インキ組成物全量に対して0.05重量%〜10.0重量%が好ましい。
【0022】
尚、前記必須成分の他、ひまし油、ひまし油のポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルアミン、二硫化モリブデンなどの潤滑剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤、分散剤などを適宜選択して使用してもよい。
【0023】
本ボールペン用油性インキ組成物の調製は、従来公知のインキ組成物の製造方法を適用することができる。即ち、分散混合機で顔料を他の成分と共に分散させることによってボールペン用油性インキ組成物を得ることができる。なお、製造時、染料などの固形物を溶解させる為に加熱することや、顔料などの粗大粒子を除去する為にフィルターや遠心分離を用いることなどは特に好ましい方法である。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例を示して具体的に説明する。なお、以下の配合数値は重量%を示す。
本実施例に用いたアミンオキシド基含有樹脂の溶液を以下に示す。
アミンオキシド基含有樹脂溶液A:
ダイヤフォーマーZ−631(三菱化学(株)製)は30%エタノール溶液にて供給されるが、60℃72時間(開放系)でエタノールを揮発させた後、還流装置を付けた攪拌機にてエチレングリコールモノフェニルエーテルを加えて80℃5時間攪拌して30%溶液とした。
【0025】
アミンオキシド基含有樹脂溶液B:
ダイヤフォーマーZ−712(三菱化学(株)製)は40%エタノール溶液にて供給されるが、60℃72時間(開放系)でエタノールを揮発させた後、還流装置を付けた攪拌機にてエチレングリコールモノフェニルエーテルを加えて80℃5時間攪拌して40%溶液とした。
【0026】
アミンオキシド基含有樹脂溶液C:
ダイヤフォーマーZ−632(三菱化学(株)製)は30%エタノール溶液にて供給されるが、60℃72時間(開放系)でエタノールを揮発させた後、還流装置を付けた攪拌機にてエチレングリコールモノフェニルエーテルを加えて80℃5時間攪拌して30%溶液とした。
【0027】
アミンオキシド基含有樹脂溶液D:
ダイヤフォーマーZ−711(三菱化学(株)製)は40%エタノール溶液にて供給されるが、60℃72時間(開放系)でエタノールを揮発させた後、還流装置を付けた攪拌機にてエチレングリコールモノフェニルエーテルを加えて80℃5時間攪拌して40%溶液とした。
【0028】
本発明に用いた処理カーボンブラックを以下に示す。
処理カーボンブラックA:
ガラス容器中でp−アミノベンゼンスルホン酸60gと苛性ソーダ13.8gを水600mlに溶解する。これに濃塩酸79gと適量の氷加え1.2lとする。次いで40%亜硝酸ソーダ59.4gを加え1時間攪拌してベンゼンスルホン酸のジアゾニウム塩を得る。次に苛性ソーダ33.2gを水3lに溶解し、プリンテックスV(カーボンブラック、デグサ ジャパン(株)製)300gを加えて10分攪拌する。この分散液に上記ジアゾニウム塩を添加して5時間攪拌し、放置後、塩酸にてpHを5に調整する。これに硫酸アルミ122.1g加えて30分攪拌した後、ろ過、水洗、乾燥してスルホン基を有する芳香族基と共有結合したカーボンブラックを得た。
【0029】
インキ組成物の配合例を以下示す。なお、以下の配合数値は重量%を示す。
実施例1
処理カーボンブラックA 28.00
ソルスパース #20000(高分子活性剤型分散剤、Lubrizol社製、米国)
12.00
レジンSK(ケトン樹脂、デグサ ジャパン(株)製) 15.00
エチレングリコールモノフェニルエーテル 25.00
ベンジルアルコール 10.00
アミンオキシド含有樹脂溶液A 10.00
アミンオキシド含有樹脂溶液A以外の成分をビーズミルで分散後、アミンオキシド含有樹脂溶液Aを添加しプロペラ撹拌機にて60℃で2時間撹拌して黒色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0030】
実施例2
C.I.Pigment Blue15:6(青顔料) 21.00
ソルスパース #20000(前述) 5.00
レジンSK(前述) 18.00
プロピレングリコールモノフェニルエーテル 35.00
ベンジルアルコール 18.50
アミンオキシド含有樹脂溶液B 2.50
アミンオキシド含有樹脂溶液B以外の成分をビーズミルで分散後、アミンオキシド含有樹脂溶液Bを添加しプロペラ撹拌機にて60℃で2時間撹拌して青色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0031】
実施例3
C.I.Pigment Red254(赤顔料) 19.00
エスレックBL−1(ポリビニルブチラール、分散剤、積水化学(株)製) 4.00
レジンSK(前述) 10.00
エチレングリコールモノフェニルエーテル 45.00
ベンジルグリコール 20.50
アミンオキシド含有樹脂溶液C 1.50
アミンオキシド含有樹脂溶液C以外の成分をビーズミルで分散後、アミンオキシド含有樹脂溶液Cを添加しプロペラ撹拌機にて60℃で2時間撹拌して赤色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0032】
実施性4
スペシャル ブラック #100カーボンブラック、デグサ ジャパン(株)製)
20.00
ソルスパース #20000(前述) 9.00
スピロンブラックGMHスペシャル(染料、保土ヶ谷化学工業(株)製) 5.00
レジンSK(前述) 10.00
エチレングリコールモノフェニルエーテル 41.00
ベンジルアルコール 10.00
アミンオキシド含有樹脂溶液D 5.00
アミンオキシド含有樹脂溶液D以外の成分をビーズミルで分散後、アミンオキシド含有樹脂溶液Dを添加しプロペラ撹拌機にて60℃で2時間撹拌して黒色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0033】
実施例5
スピロンブラックGMHスペシャル(前述) 12.00
バリファーストバイオレット1704(染料、オリエント化学工業(株)製)
12.00
レジンSK(前述) 15.00
エチレングリコールモノフェニルエーテル 43.00
ベンジルグリコール 15.00
アミンオキシド含有樹脂溶液C 3.00
アミンオキシド含有樹脂溶液C以外の成分を60℃で2時間撹拌後、アミンオキシド含有樹脂溶液Cを添加しプロペラ撹拌機にて60℃で更に2時間撹拌して黒色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0034】
比較例1
実施例1においてアミンオキシド含有樹脂溶液Aに換えてレジンSKを3.00%とエチレングリコールモノフェニルエーテルを7.00%添加したこと以外は実施例1と同様にして黒色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0035】
比較例2
実施例1においてアミンオキシド含有樹脂溶液Aに換えてポリビニルピロリドンK−90(アイエスピー・ジャパン(株)製)を3.00%とエチレングリコールモノフェニルエーテルを7.00%添加したこと以外は実施例1と同様にして黒色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0036】
比較例3
実施例2においてアミンオキシド含有樹脂溶液Bに換えてポリビニルピロリドンK−120(アイエスピー・ジャパン(株)製)を1.00%とエチレングリコールモノフェニルエーテルを1.50%添加したこと以外は実施例2と同様にして青色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0037】
比較例4
実施例3においてアミンオキシド含有樹脂溶液Cに換えてアモーゲンAOL(ラウリルジメチルアミンオキシド、32%水溶液、第一工業製薬(株)製)を添加したこと以外は実施例3と同様にして赤色のボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0038】
試験サンプルの作成
上記実施例1〜5及び比較例1〜4で得た各ボールペン用インキ組成物を、直径0.7mmの超硬製のボールをステンレス製のボールホルダーにて、ボールホルダーの先端開口部より一部突出した状態で抱持したボールペンペン先と、押出成形により成形したポリプロピレン製パイプとを接続したリフィル体を収容するノック式ボールペン(Rolly、製品符号BP127、ぺんてる(株)製)のインキ収容管に0.25g充填し、試験用ボールペンサンプルとした。
尚、試験用ボールペンサンプルにて使用した、「Rolly(製品符号BP127)」は、ボールペンペン先として、ボールホルダー先端部におけるボールとの隙間距離が、5μm以上15μm以下程度、好ましくは9μm程度、該部におけるインキの吐出口となる隙間の断面積が0.01mm以上0.03mm以下、好ましくは0.018mm程度に調整されており、また、ボールを配置後にボールに衝撃力を付与することによってボールホルダーの受部にボールの曲率を転写するような変形加工を施し、この加工された部分の表面積がボールの表面積に対して5%以上17%以下、好ましくは11%程度に調整されているものである。
【0039】
ボテ試験:実施例1〜5および比較例1〜4のインキを充填したボールペンサンプル各5本を、市販の螺旋式筆記試験機(MODEL TS−4C−20、精機工業研究所製)を用い、筆記速度7cm/sec、筆記角度70度、荷重150gでJIS P3201筆記用紙Aに200m連続筆記し、紙面に落下したボテの数を測定し合計を算出した。ボテとしてはJIS S 6039 6.3項図2に規定されたものは1個、それ以下の1/2までの小さいボテは0.5個、更にそれより小さいボテは0.25個として測定し、5本の合計を算出した。
【0040】
カスレ試験:温度50℃湿度30%の恒温恒湿器に実施例1〜5および比較例1〜4のインキを充填したボールペンサンプル各5本をペン先下向きにして、且つ、ペン先が中空に位置して何も接触しない状態にして1ヶ月放置した。経時期間経過後、ボールペンサンプルを取り出して上質紙に手書きにて直径2cmの丸を50個筆記した時のカスレ状態の丸の数を計測し、平均を算出した。
【0041】
【表1】

【0042】
以上、詳細に説明したように本発明のボールペン用インキ組成物は、筆記時のボテが少なく、長期保存においても筆記カスレが発生することがない良好なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着色剤と有機溶剤と該有機溶剤に可溶な樹脂とアミンオキシド基含有樹脂とを含有するボールペン用インキ組成物。
【請求項2】
前記着色剤が顔料である請求項1に記載のボールペン用インキ組成物。

【公開番号】特開2008−297474(P2008−297474A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146311(P2007−146311)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】