説明

ボールペン用水性インキ組成物

【課題】インキ収容管に直接インキを充填する構造のボールペンに使用し、ボールホルダーの磨耗も少なく、滑らかな筆記感を得られ、且つにじみの少ないボールペン用インキ組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも水と、着色剤と、剪断減粘性物質からなる水性インキ組成物であって、角周波数が0.1以上100以下(rad/s)の範囲で、常にtanδが1.0以下である、ボールペン用水性インキ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接に紙面等の被筆記面と当接して筆跡を形成する筆記部材としてのボールと、このボールを回転自在に抱持するボールホルダーとを備え、このボールに付着したインキが被筆記面に転写されることによって、筆記線を形成する、所謂ボールペンに使用するインキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールペンは、比較的細い筆跡が得られると共に、繊維性ペン先や樹脂製ペン先を有する筆記具と異なり、長時間使用してもペン先の潰れなどによる筆跡幅の変化が少ないことから、多く使用されている。水を主溶剤として、水溶性高分子化合物を溶かして粘弾性を調整した所謂水性ゲルインキは、高剪断でのインキの粘度が下がりやすい為、カスレやボテがない筆跡となることから広く使用されている。
しかし、ボールペンは、ボールも、それを抱持するボールホルダーも金属であるので、金属同士が直接接触すると、ボールの回転に対する摩擦抵抗が大きくなり、ボールの回転が阻害されて筆記感が重くなったり、ボールホルダーのボールとの接触部分が磨耗し、ボールが後退してインキ通路を塞いで筆記不能になったりすることなどがあった。特に、油性ボールペンと比較して、水性ボールペンは、ボールやボールホルダーの金属表面に対する親和性が乏しい為、この現象が顕著に現れる。
また、ボールの直径が0.3mm以下となるものなどの極細ボールペンでは、ボールの直径が小さくなることで、ボールとボールホルダーの接触部分の面積が小さいので、ボールホルダーのボールとの接触部分が磨耗したり、紙面との距離が短くなることによって、ボールホルダーの先端開口部付近が紙面に引っかかり書き味が悪くなったりする現象が顕著に現れるものであった。
軽い滑らかな書き味を得るために、潤滑剤として、N−アシルサルコシンや、N−アシルメチルタウリンのナトリウム塩などを添加したもの(特許文献1)や、水溶性シリコンオイルと脂肪酸を併用したもの(特許文献2)が知られている。
このようなボールペンに使用される水性インキ組成物として、筆跡の滲みを抑制し、ドライアップによる筆記不良を防止し、且つ引っかかりのない滑らかな書き味を実現するものとして、1rpmでの粘度と、非ニュートン粘性指数のnの値を制御したもの(特許文献3)や、顔料の経時的な沈降を防止するべく、周波数0.01Hzでのインキのtanδを制御したもの(特許文献4)、インキのボタ落ちや速書きでのカスレを防止するものとして、剪断速度1(1/s)及び200(1/s)での粘度を制御したもの(特許文献5)が知られている。
【特許文献1】特公平07−057853号公報
【特許文献2】特開平10−212444号公報
【特許文献3】特開2006−181905号公報
【特許文献4】特開2004−338340号公報
【特許文献5】特開2004−268420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のごとく、ボールペンは、ボールの回転に伴ってインキ組成物を吐出させるものであるので、ボールが回転し易ければ、軽く滑らかな筆記感触が得られる。
しかし、特許文献1や特許文献2に記載の発明のように、潤滑効果の高い潤滑剤を使用しても、その効果には限界がある。特に、ボールの直径が0.3mm以下の極細ボールペンにおいては、筆記の際にボールとボール受け座の接触部分も絶対値としての面積が小さいものとなるので、筆圧の力が局所に集中することとなり、潤滑効果が高く、金属に吸着しやすい潤滑剤を使用しても、金属同志の接触が免れ難く、また、ボールの直径が小さいことによる、ボールホルダーの先端開口部付近の紙面に対する引っかかりは防止できないので、その効果を十分に発揮できないものであった。また、潤滑剤を大量に添加すると、紙面などの吸収面にインキ組成物が浸透し易くなり過ぎて筆跡の滲みが発生し、非吸収面では拡張濡れが起こるので濡れ広がってしまい、所望の幅の筆記線が得られ難いという問題があった。
更に、特許文献3に記載の発明のように、1rpmでの粘度と非ニュートン指数を規定したり、特許文献4に記載の発明のように周波数0.01Hzという低周波数でのtanδを制御しても、低剪断や低周波数時の粘度やtanδは筆記状態でのインキの状態を規定していないので、筆記している最中の問題である書き味の向上やボールホルダーのボールとの接触部分の磨耗を抑制できないものであった。特許文献5に記載の発明のように、200(1/s)での粘度が、0.1〜20Pa・sや、384(1/s)での粘度を30〜550mPa・sと粘度を設定したものも、剪断減粘性のインキ組成物は、ボールの回転による高い剪断によって粘度が低くなるので、低い粘度の状態の時にはボールとボールホルダーの金属同士が接触しやすい状態が形成されてしまう為、書き味の向上やボールホルダー磨耗を抑制できないものであった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、少なくとも水と、着色剤と、剪断減粘性物質とからなり、角周波数が0.1以上100以下(rad/s)の範囲で、tanδ(損失正接)が常に1.0以下であるボールペン用水性インキ組成物を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0005】
tanδ(損失正接)は、損失弾性率を貯蔵弾性率で除した値であり、この値が大きいこと(tanδ>1)は、その流体が粘性応答を示し、小さいこと(tanδ<1)は、弾性応答に近いことを示すとされている。損失弾性率及び貯蔵弾性率は、角振動数(または振動数)で振動させたときの位相角から得られる物性であり、損失弾性率が試料の粘性要素を、貯蔵弾性率が弾性要素を表している。
角周波数が0.1以上100以下の領域において、インキの貯蔵弾性率が損失弾性率よりも高い、つまり、tanδが1.0以下である場合、そのインキが弾性応答であることとなり、角周波数が変化しても、インキ組成物中の顔料や剪断減粘性物質などで構成される多次元な網目構造が絡み合ってほどけ難い。よって、剪断減粘性により、法線応力やワイセンベルク効果が生じ、インキ自体が多方性に広がることで、常にボールとボール受け座の間に、ある程度厚みのあるインキの層を存在させることが出来、ボールとボールホルダー接触部分にかかる力に耐えることができるものと推察される。これにより、ボール受け座の磨耗を防止し、更に筆記時におけるボールの移動量を最小限に抑え、ボール出が短くなることによる、ボールホルダー小口先端の引っかかりも防ぐことが出来、滑らかな書き味を実現することが可能であると推測される。
また、低周波数、高周波数のどの領域においても、tanδが1.0以下であることで、紙面などに転写されたのちも、分子の構造がある程度ほどけにくい状態になるため、筆跡も滲むことが少なく、細い文字が書けると推測される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
tanδを算出するための粘弾性の測定は、ボールペンを使用する環境に近いと考えられる25℃で測定することが好ましく、測定機器としてはレオメーターを使用することが好ましい。水性インキの場合、角周波数が0.1未満や100を越える部分は、再現性のある測定結果が得られにくい領域であり、0.1以上100以下(rad/s)が好ましい角周波数領域である。測定に使用するローターの角度は、3°以下のものを用いることが好ましい。測定に際しての歪の設定が大きすぎると、得られるtanδの挙動や値が再現性の無いものとなる可能性があるので、そのインキの特性を代用する指標として信頼性がなくなるため、注意が必要である。今回の測定では、AntonPaar社製レオメーター MCR301を用い、パラレルコーンを用い、ギャップを0.150mmとした。角周波数に関しては、0以上100(rad/s)の範囲で、歪みを1%に設定し、任意の10点以上測定し、貯蔵弾性率と損失弾性率を測定している。
【0007】
本発明に使用する着色剤は、従来の水性インキ組成物に用いられる染料及び顔料が使用可能であり、染料では酸性染料、直接染料、塩基性染料等のいずれも用いることができる。その一例を挙げれば、ジャパノールファストブラックDコンク(C.I.ダイレクトブラック17)、ウォーターブラック100L(同19)、ウォーターブラックL−200(同19)、ダイレクトファストブラックB(同22)、ダイレクトファストブラックAB(同32)、ダイレクトディープブラックEX(同38)、ダイレクトファストブラックコンク(同51)、カヤラススプラグレイVGN(同71)、カヤラスダイレクトブリリアントエローG(C.I.ダイレクトエロー4)、ダイレクトファストエロー5GL(同26)、アイゼンプリムラエローGCLH(同44)、ダイレクトファストエローR(同50)、アイゼンダイレクトファストレッドFH(C.I.ダイレクトレッド1)、ニッポンファストスカーレットGSX(同4)、ダイレクトファストスカーレット4BS(同23)、アイゼンダイレクトローデュリンBH(同31)、ダイレクトスカーレットB(同37)、カヤクダイレクトスカーレット3B(同39)、アイゼンプリムラピンク2BLH(同75)、スミライトレッドF3B(同80)、アイゼンプリムラレッド4BH(同81)、カヤラススプラルビンBL(同83)、カヤラスライトレッドF5G(同225)、カヤラスライトレッドF5B(同226)、カヤラスライトローズFR(同227)、ダイレクトスカイブルー6B(C.I.ダイレクトブルー1)、ダイレクトスカイブルー5B(同15)、スミライトスプラブルーBRRコンク(同71)、ダイボーゲンターコイズブルーS(同86)、ウォーターブルー#3(同86)、カヤラスターコイズブルーGL(同86)、カヤラススプラブルーFF2GL(同106)、カヤラススプラターコイズブルーFBL(同199)等の直接染料や、アシッドブルーブラック10B(C.I.アシッドブラック1)、ニグロシン(同2)、スミノールミリングブラック8BX(同24)、カヤノールミリングブラックVLG(同26)、スミノールファストブラックBRコンク(同31)、ミツイナイロンブラックGL(同52)、アイゼンオパールブラックWHエクストラコンク(同52)、スミランブラックWA(同52)、ラニルブラックBGエクストラコンク(同107)、カヤノールミリングブラックTLB(同109)、スミノールミリングブラックB(同109)、カヤノールミリングブラックTLR(同110)、アイゼンオパールブラックニューコンク(同119)、ウォーターブラック187−L(同154)、カヤクアシッドブリリアントフラビンFF(C.I.アシッドエロー7:1)、カヤシルエローGG(同17)、キシレンライトエロー2G140%(同17)、スミノールレベリングエローNR(同19)、ダイワタートラジン(同23)、カヤクタートラジン(同23)、スミノールファストエローR(同25)、ダイアシッドライトエロー2GP(同29)、スミノールミリングエローO(同38)、スミノールミリングエローMR(同42)、ウォーターエロー#6(同42)、カヤノールエローNFG(同49)、スミノールミリングエロー3G(同72)、スミノールファストエローG(同61)、スミノールミリングエローG(同78)、カヤノールエローN5G(同110)、スミノールミリングエロー4G200%(同141)、カヤノールエローNG(同135)、カヤノールミリングエロー5GW(同127)、カヤノールミリングエロー6GW(同142)、スミトモファストスカーレットA(C.I.アシッドレッド8)、カヤクシルクスカーレット(同9)、ソーラールビンエクストラ(同14)、ダイワニューコクシン(同18)、アイゼンボンソーRH(同26)、ダイワ赤色2号(同27)、スミノールレベリングブリリアントレッドS3B(同35)、カヤシルルビノール3GS(同37)、アイゼンエリスロシン(同51)、カヤクアシッドローダミンFB(同52)、スミノールレベリングルビノール3GP(同57)、ダイアシッドアリザリンルビノールF3G200%(同82)、アイゼンエオシンGH(同87)、ウォーターピンク#2(同92)、アイゼンアシッドフロキシンPB(同92)、ローズベンガル(同94)、カヤノールミリングスカーレットFGW(同111)、カヤノールミリングルビン3BW(同129)、スミノオールミリングブリリアントレッド3BNコンク(同131)、スミノールミリングブリリアントレッドBS(同138)、アイゼンオパールピンクBH(同186)、スミノールミリングブリリアントレッドBコンク(同249)、カヤクアシッドブリリアントレッド3BL(同254)、カヤクアシッドブリリドブリリアントレッドBL(同265)、カヤノールミリングレッドGW(同276)、ミツイアシッドバイオレット6BN(C.I.アシッドバイオレット15)、ミツイアシッドバイオレットBN(同17)、スミトモパテントピュアブルーVX(C.I.アシッドブルー1)、ウォーターブルー#106(同1)、パテントブルーAF(同7)、ウォーターブルー#9(同9)、ダイワ青色1号(同9)、スプラノールブルーB(同15)、オリエントソルブルブルーOBC(同22)、スミノールレベリングブルー4GL(同23)、ミツイナイロンファストブルーG(同25)、カヤシルブルーAGG(同40)、カヤシルブルーBR(同41)、ミツイアリザリンサフィロールSE(同43)、スミノールレベリングスカイブルーRエクストラコンク(同62)、ミツイナイロンファストスカイブルーB(同78)、スミトモブリリアントインドシアニン6Bh/c(同83)、サンドランシアニンN−6B350%(同90)、ウォーターブルー#115(同90)、オリエントソルブルブルーOBB(同93)、スミトモブリリアントブルー5G(同103)、カヤノールミリングウルトラスカイSE(同112)、カヤノールミリングシアニン5R(同113)、アイゼンオパールブルー2GLH(同158)、ダイワギニアグリーンB(C.I.アシッドグリーン3)、アシッドブリリアントミリンググリーンB(同9)、ダイワグリーン#70(同16)、カヤノールシアニングリーンG(同25)、スミノールミリンググリーンG(同27)等の酸性染料、アイゼンカチロンイエロー3GLH(C.I.ベーシックイエロー11)、アイゼンカチロンブリリアントイエロー5GLH(同13)、スミアクリルイエローE−3RD(同15)、マキシロンイエロー2RL(同19)、アストラゾンイエロー7GLL(同21)、カヤクリルゴールデンイエローGL−ED(同28)、アストラゾンイエロー5GL(同51)、アイゼンカチロンオレンジGLH(C.I.ベーシックオレンジ21)、アイゼンカチロンブラウン3GLH(同30)、ローダミン6GCP(C.I.ベーシックレッド1)、アイゼンアストラフロキシン(同12)、スミアクリルブリリアントレッドE−2B(同15)、アストラゾンレッドGTL(同18)、アイゼンカチロンブリリアントピンクBGH(同27)、マキシロンレッドGRL(同46)、アイゼンメチルバイオレット(C.I.ベーシックバイオレット1)、アイゼンクリスタルバイオレット(同3)、アイゼンローダミンB(同10)、アストラゾンブルーG(C.I.ベーシックブルー1)、アストラゾンブルーBG(同3)、メチレンブルー(同9)、マキシロンブルーGRL(同41)、アイゼンカチロンブルーBRLH(同54)、アイゼンダイヤモンドグリーンGH(C.I.ベーシックグリーン1)、アイゼンマラカイトグリーン(同4)、ビスマルクブラウンG(C.I.ベーシックブラウン1)等の塩基性染料が挙げられる。
【0008】
顔料ではアゾ系顔料、ニトロソ系顔料、ニトロ系顔料、塩基性染料系顔料、酸性染料系顔料、建て染め染料系顔料、媒染染料系顔料、及び天然染料系顔料等の有機系顔料、黄土、バリウム黄、紺青、カドミウムレッド、硫酸バリウム、酸化チタン、弁柄、鉄黒、カーボンブラック等の無機顔料等が挙げられ、これらは単独あるいは混合して使用することが出来る。具体例を挙げるとアニリンブラック(C.I.50440)、シアニンブラック、ナフトールエローS(C.I.10316)、ハンザエロー10G(C.I.11710)、ハンザエロー5G(C.I.11660)、ハンザエロー3G(C.I.11670)、ハンザエローG(C.I.11680)、ハンザエローGR(C.I.11730)、ハンザエローA(C.I.11735)、ハンザエローRN(C.I.11740)、ハンザエローR(C.I.12710)、ピグメントエローL(C.I.12720)、ベンジジンエロー(C.I.21090)、ベンジジンエローG(C.I.21095)、ベンジジンエローGR(C.I.21100)、パーマネントエローNCG(C.I.20040)、バルカンファストエロー5G(C.I.21220)、バルカンファストエローR(C.I.21135)、タートラジンレーキ(C.I.19140)、キノリンエローレーキ(C.I.47005)、アンスラゲンエロー6GL(C.I.60520)、パーマネントエローFGL、パーマネントエローH10G、パーマネントエローHR、アンスラピリミジンエロー(C.I.68420)、スダーンI(C.I.12055)、パーマネントオレンジ(C.I.12075)、リソールファストオレンジ(C.I.12125)、パーマネントオレンジGTR(C.I.12305)、ハンザエロー3R(C.I.11725)、バルカンファストオレンジGG(C.I.21165)、ベンジジンオレンジG(C.I.21110)、ペルシアンオレンジ(C.I.15510)、インダンスレンブリリアントオレンジGK(C.I.59305)、インダンスレンブリリアントオレンジRK(C.I.59105)、インダンスレンブリリアントオレンジGR(C.I.71105)、パーマネントブラウンFG(C.I.12480)、パラブラウン(C.I.12071)、パーマネントレッド4R(C.I.12120)、パラレッド(C.I.12070)、ファイヤーレッド(C.I.12085)、パラクロルオルトアニリンレッド(C.I.12090)、リソールファストスカーレット、ブリリアントファストスカーレット(C.I.12315)、ブリリアントカーミンBS、パーマネントレッドF2R(C.I.12310)、パーマネントレッドF4R(C.I.12335)、パーマネントレッドFRL(C.I.12440)、パーマネントレッドFRLL(C.I.12460)、パーマネントレッドF4RH(C.I.12420)、ファストスカーレットVD、バルカンファストルビンB(C.I.12320)、バルカンファストピンクG(C.I.12330)、ライトファストレッドトーナーB(C.I.12450)、ライトファストレッドトーナーR(C.I.12455)、パーマネントカーミンFB(C.I.12490)、ピラゾロンレッド(C.I.12120)、リソールレッド(C.I.15630)、レーキレッドC(C.I.15585)、レーキレッドD(C.I.15500)、アンソシンB(C.I.18030)、ブリリアントスカーレットG(C.I.15800)、リソールルビンGK(C.I.15825)、パーマネントレッドF5R(C.I.15865)、ブリリアントカーミン6B(C.I.15850)、ピグメントスカーレット3B(C.I.16105)、ボルドー5B(C.I.12170)、トルイジンマルーン(C.I.12350)、パーマネントボルドーF2R(C.I.12385)、ヘリオボルドーBL(C.I.14830)、ボルドー10B(C.I.15880)、ボンマルーンライト(C.I.15825)、ボンマルーンメジウム(C.I.15880)、エオシンレーキ(C.I.45380)、ローダミンレーキB(C.I.45170)、ローダミンレーキY(C.I.45160)、アリザリンレーキ(C.I.58000)、チオインジゴレッドB(C.I.73300)、チオインジゴマルーン(C.I.73385)、パーマネントレッドFGR(C.I.12370)、PVカーミンHR、ワッチングレッド,モノライトファストレッドYS(C.I.59300)、パーマネントレッドBL、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ(C.I.42535)、ジオキサジンバイオレット、アルカリブルーレーキ(C.I.42750A、C.I.42770A)、ピーコックブルーレーキ(C.I.42090)、ピーコックブルーレーキ(C.I.42025)、ビクトリアブルーレーキ(C.I.44045)、フタロシアニンブルー(C.I.74160)、ファストスカイブルー(C.I.74180)、インダンスレンブルーRS(C.I.69800)、インダンスレンブルーBC(C.I.69825)、インジゴ(C.I.73000)、ピグメントグリーンB(C.I.10006)、ナフトールグリーンB(C.I.10020)、グリーンゴールド(C.I.12775)、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ(C.I.42000)、フタロシアニングリーン等が挙げられる。これらの着色剤の使用量は、インキ全量に対して0.5〜30重量%が好ましい。0.5重量%未満では、薄くて筆跡としての性能を果たさず、30重量%を超えるとチップ内でのドライアップが増長し書き出し性能が悪くなる傾向が有る。
【0009】
着色剤に顔料を用いた場合は顔料を安定に分散させるために分散剤を使用することは差し支えない。分散剤として従来一般に用いられている水溶性樹脂もしくは水可溶性樹脂や、アニオン系もしくはノニオン系の界面活性剤など、顔料の分散剤として用いられるものが使用できる。一例として、高分子分散剤として、リグニンスルホン酸塩、セラックなどの天然高分子、ポリアクリル酸塩、スチレン−アクリル酸共重合物の塩、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合物の塩、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、リン酸塩、などの陰イオン性高分子やポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの非イオン性高分子などが挙げられる。また、界面活性剤として、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩などの陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0010】
これら水可溶性樹脂及び界面活性剤は、その1種または2種以上を選択し、併用しても使用できる。その使用量は、顔料10重量部に対し0.05〜20重量部が好ましい。0.05重量部より少ない場合は添加する目的である分散効果が弱く、20重量部より多くしてもそれ以上の分散効果が望めず不経済である。顔料の場合は、更に、水性媒体に分散した水性インキベースを用いることは、顔料インキ組成物の製造上有利なことである。具体的には、Fuji SP Black8031、同8119、同8167、同8276、同8381、同8406、Fuji SP Red 5096、同5111、同5193、同5220、Fuji SP Bordeaux 5500、Fuji SP Blue 6062、同6133、同6134、同6401、Fuji SP Green 7051、Fuji SP Yellow 4060、同4178、Fuji SP Violet 9011、Fuji SP Pink 9524、同9527、Fuji SP Orange 534、FUji SP Brown 3074、FUJI SP RED 5543、同5544(以上、富士色素(株)製)、Emacol Black CN、Emacol Blue FBB、同FB、同KR、Emacol Green LXB、Emacol Violet BL、Emacol Brown 3101、Emacol Carmmine FB、Emacol Red BS、Emacol Orange R、Emacol Yellow FD、同IRN、同3601、同FGN、同GN、同GG、同F5G、同F7G、同10GN、同10G、Sandye Super Black K、同C、Sandye Super Grey B、Sandye Super Brown SB、同FRL、同RR、SandyeSuper Green L5G、同GXB、Sandye Super Navy Blue HRL、同GLL、同HB、同FBL−H、同FBL−160、同FBB、Sandye Super Violet BL H/C、同BL、Sandye Super Bordeaux FR、Sandye Super Pink FBL、同F5B、Sandye Super Rubine FR、Sandye super Carmmine FB、SandyeSuper Red FFG、同RR、同BS、Sandye SuperOrange FL、同R、同BO、Sandye Gold Yellow5GR、同R、同3R、Sandye Ywllow GG、同F3R、同IRC、同FGN、同GN、同GRS、同GSR−130、同GSN−130、同GSN、同10GN(以上、山陽色素(株)製)、Rio Fast BlackFx 8012、同8313、同8169、Rio Fast Red Fx8209、同8172、Rio Fast Red S Fx 8315、同8316、Rio Fast Blue Fx 8170、Rio FastBlue FX 8170、Rio Fast Blue S Fx 8312、Rio Fast Green S Fx 8314(以上、東洋インキ(株)製)、NKW−2101、同2102、同2103、同2104、同2105、同2106、同2107、同2108、同2117、同2127、同2137、同2167、同2101P、同2102P、同2103P、同2104P、同2105P、同2106P、同2107P、同2108P、同2117P、同2127P、同2137P、同2167P、NKW−3002、同3003、同3004、同3005、同3007、同3077、同3008、同3402、同3404、同3405、同3407、同3408、同3477、同3602、同3603、同3604、同3605、同3607、同3677、同3608、同3702、同3703、同3704、同3705、同3777、同3708、同6013、同6038、同6559(以上、日本蛍光(株)製)、コスモカラーS1000Fシリーズ(東洋ソーダ(株)製)、ビクトリアエロー G−11、同G−20、ビクトリアオレンジ G−16、同G−21、ビクトリアレッドG−19、同G−22、ビクトリアピンク G−17、同G−23、ビクトリアグリーン G−18、同G−24、ビクトリアブルー G−15、同G−25(以上、御国色素(株)製)、ポルックスPC5T1020、ポルックスブラックPC8T135、ポルックスレッドIT1030等のポルックスシリーズ(以上、住化カラー(株)製)などが挙げられるものであり、これらは1種又は2種以上選択して併用できるものである。
【0011】
本発明においてインキ組成物の粘度を調整するには通常の剪断減粘性物質を適宜調整して使用することで調整できる。例えば、剪断減粘性物質としては、HPC−SL、同L、同M、同H(以上、日本曹達(株)製)、アビセルPH−101、同102、同301、同M06、TG−101(以上、旭化成(株)製)等にセルロース及びその誘導体、ケルザン、ケルザンS、ケルザンF、ケルザンAR、ケルザンM、ケルザンD(以上、三晶(株)製)、コージン、コージンF、コージンT、コージンK(以上、(株)興人製)、ノムコート(日清製油(株)製)、イナゲルV−7、イナゲルV−7T(以上伊那食品工業(株)製)等のキサンタンガム、レオザン(三唱(株)製)等のサクシノグルカン、K1A96(三唱(株)製)等のウエランガム、K1A112、K7C2433(以上、三唱(株)製)等のラムザンガム、ジャガー8111、同8600、同HP−8、同HP−60、CP−13(以上、三唱(株)製)等のグァーガム及びその誘導体、GX−205、NA−010(昭和電工(株)製)等のN−ビニルアセトアミド重合架橋物等の水溶性合成高分子、ペミュレンTR−1、同TR−2(B.F.Goodrich社製)等のアクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、スメクトンSA(スメクタイト、クニミネ工業(株)製)、クニピア−F、クニピア−G(モンモリロナイト、クニミネ工業(株)製)、ベンゲルHV、同FW、同15、同23(ベントナイト、(株)豊順洋行製)、エスベン、同C、同W、同N400(4級アンモニウムカチオン変性モンモリロナイト、(株)豊順洋行製)等の無機粘土鉱物が挙げられる。その他にもカラギーナン、ゼラチン、カゼイン、デキストラン、アルカガム、デンプングリコール酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸が挙げられる。特にキサンタンガムが、大きな剪断減粘性を持つことから筆記時にインキの粘度が大きく下がりその結果として筆記時のボテや線割れが発生し難いことや、3次元的な網目構造を持つ故、tanδが1.0以下になりやすい為、特に好ましい。上記剪断減粘性物質は複数種を混合して使用することもできる。
【0012】
インキの着色材を紙面に定着させるために結合材として各種樹脂を併用することもできる。具体的には、セラック、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ金属塩、同アミン塩、同アンモニウム塩、α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ金属塩、同アミン塩、同アンモニウム塩、といった水溶性樹脂を用いることができる。また、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合物などの水不溶性樹脂などを用いることもできる。尚、水不溶性樹脂は、水性エマルジョン形態で使用する。
【0013】
また、水と共に各種水溶性有機溶剤が、インキ組成物の乾燥防止、低温時での凍結防止などの目的で使用される。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、2−ピロリドン等が使用できる。本発明における水の使用量は、インキ組成物の全重量に対して50重量%以上が好ましい。50重量%以下の場合は相対的に水溶性有機溶剤の添加量が増加し、筆跡の乾燥性が悪くなる。
【0014】
その他、上記各成分以外、従来、筆記具用の水性インキ組成物に用いられる種々の添加剤を適宜必要に応じて使用することもできる。例えば、インキ組成物の蒸発防止のためにソルビット、キシリット等の糖アルコールや尿素等を用いることができる。
【0015】
さらに、アニオン系、ノニオン系、カチオン系の各種界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の表面張力調整剤、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベンゾイソチアザリン−3−オンなどの防腐防黴剤、ベンゾトリアゾールなどの防錆剤、pH調整剤として水酸化ナトリウム、アルカノールアミン、アミン、アンモニウム等のアルカリ化剤なども用いることもできる。
【0016】
水性インキ組成物を製造する方法は、インキ組成物の製造方法としては従来知られている種々の方法が採用できる。例えば、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、ヘンシェルミキサー、プロペラ撹拌機、ホモジナイザー、ニーダー等の装置を使用して作ることが出来る。更に濾過や遠心分離を行い粗大粒子や気体を除いても良い。製造時に加熱や冷却や加圧や減圧や不活性ガス置換をしても良い。また、剪断減粘性物質を十分に膨潤させる為、インキ自体を40〜90℃に短期間放置したり、温度の低い状態(0〜30℃)で保管したりすることは、水性インキ組成物の経時性能を劣化させないためにも好ましい。これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、組み合わせて使用しても良い。
【0017】
水性インキを使用したボールペンに使用するボールホルダーの材質として一例を挙げると、洋泊、真鍮、ステンレス等の金属、ポリオキシメチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の樹脂等がある。ボール材質として一例を挙げると、タングステンカーバイドを主成分とした超硬、炭化珪素を主成分としたもの、ジルコニアを主成分としたもの等各種のボールが使用可能である。特に、ボール材質としては、タングステンカーバイトを主成分とし、コバルトなどを結合相とした超硬ボールが、書き味が軽くなる点で好ましい。ボール径は、小さいものほど顕著にこの現象を防止できる。ボール径が小さくなることで、ボールとボールホルダーの接触部分やそのクリアランスが小さくなり、ボールの回転による摩擦や、ボール出が短くなることによる、ボールホルダー小口先端の引っかかりも防ぐことができる為、ボール径が小さいものほど有効な策となる。
【0018】
インキ組成物を直接充填するインキ収容管の材質としてはポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、シリコン樹脂等が使用可能であるが、透湿性、透明性、コスト等を考えるとポリプロピレン製が好ましい。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。実施例中単に「部」とあるのは「重量部」を示す。
【0020】
(実施例1)
ダイワブルーNo.1WB(青色染料、ダイワ化成(株)製) 3.50部
ダイワレッド106WB(赤色染料、ダイワ化成(株)製) 0.70部
エチレングリコール 9.00部
チオジグリコール 9.00部
サルコシネートOH(オレオイルサルコシン、N-アシルアミノ酸、日光ケミカルズ
(株)) 2.00部
ベンゾトリアゾール(防錆剤) 0.50部
CWK(エチレンジアミン4酢酸のナトリウム塩混合物、金属イオン封鎖剤、オリエント
化学(株)製) 1.00部
トリエタノールアミン 1.70部
プロクセルGXL(S)(防腐剤、アビシア(株)製) 0.20部
ケルザンAR(キサンタンガム、三晶(株)製) 0.80部
イオン交換水 71.60部
上記成分中、ケルザンARと水とをラボミキサーにて30分間攪拌して均一に溶解しケルザン水溶液を調整した。これに残りの各成分を加えて、更に2時間混合攪拌して実施例1の青色インキ組成物を得た。
【0021】
(実施例2)
UNISPERSE BLACK C−S(黒色水性顔料ベース、チバスペシャリティケミカルズ(株)製) 22.00部
エチレングリコール 10.00部
グリセリン 7.00部
サルコシネートOH(前述) 1.00部
25%NaOH 0.20部
プロクセルGXL(s)(前述) 0.20部
ベンゾトリアゾール 0.30部PO−20(還元澱粉糖化物、東和化成工業(株)) 5.00部
ケルザンS(キサンタンガム、増粘剤、三晶(株)) 0.40部
イオン交換水 53.90部
上記成分中、ケルザンSと水とをラボミキサーにて30分間攪拌して均一に溶解しケルザン水溶液を調整した。これに残りの各成分を加えて、更に2時間混合攪拌して実施例2の黒色インキ組成物を得た。
【0022】
(実施例3)
ポルックスブルーPC5T−1020(青色水性顔料ベース、住化カラー(株)製)
25.00部
ペミュレンTR−1(アクリル酸−メタクリル酸共重合体、BF−goodrich製、
米国) 0.50部
エチレングリコール 16.00部
グリセリン 11.00部
サルコシネートOH(前述) 2.00部
25%NaOH 1.00部
プロクセルGXL(s)(前述) 0.20部
ベンゾトリアゾール 1.00部
イオン交換水 43.30部
上記成分中、ペミュレンTR−1と水と25%NaOHをラボミキサーにて30分間攪拌して均一に溶解しペミュレンTR−1水溶液を調整した。これに残りの各成分を加えて、更に2時間混合攪拌して実施例3の青色インキ組成物を得た。
【0023】
(比較例1)
ポルックスブルーRED PM−R(赤色水性顔料ベース、住化カラー(株)製)
25.00部
エチレングリコール 10.00部
グリセリン 25.00部
サルコシネートOH(前述) 1.00部
プロクセルGXL(s)(前述) 0.20部
ベンゾトリアゾール 4.00部アルカガム(天然多糖類、伯東(株)製) 0.20部
イオン交換水 34.60部
上記成分中、アルカガムと水とをラボミキサーにて30分間攪拌して均一に溶解しアルカガム水溶液を調整した。これに残りの各成分を加えて、更に2時間混合攪拌して比較例1の赤色インキ組成物を得た。
【0024】
(比較例2)
食用赤色103号(赤色染料、ダイワ化成(株)製) 2.00部
食用赤色104号(赤色染料、ダイワ化成(株)製) 4.00部
WaterYellow#6C(黄色染料、オリエント(株)製) 1.50部
エチレングリコール 11.00部
チオジグリコール 9.00部
ベンゾトリアゾール 1.00部
サルコシネートOH(前述) 3.00部
トリエタノールアミン 1.00部
プロクセルGXL(S)(上述) 0.20部
ケルザンAR(上述) 0.40部
イオン交換水 66.90部
上記成分中、ケルザンARと水とをラボミキサーにて30分間攪拌して均一に溶解しケルザン水溶液を調整した。これに残りの各成分を加えて、更に2時間混合攪拌して比較例2の赤色インキ組成物を得た。
【0025】
(比較例3)
FUJI SP ブラック 8922(黒色水性顔料ベース、冨士色素(株))
20.00部
チオジグリコール 15.00部
ベンゾトリアゾール 1.00部
プロクセルGXL(S)(上述) 0.20部
ケルザンS(上述) 0.15部
イオン交換水 63.65部
上記成分中、ケルザンARとチオジグリコールとをラボミキサーにて30分間攪拌して均一に溶解しケルザンAR溶液を調整した。これに残りの各成分を加えて、更に2時間混合攪拌して比較例3の黒色インキ組成物を得た。
【0026】
tanδの測定
AntonPaar社製レオメーター MCR301を用い、パラレルコーンを使用した。ギャップを0.150mmとした。歪を1%に設定し、角周波数を0以上100以下(rad/s)の範囲で、対数で測定間隔を設定し、貯蔵弾性率と損失弾性率を測定した。
【0027】
以上、実施例1〜3及び比較例1〜3の各インキ組成物を、タングステンカーバイドを主成分とする直径0.3mm、0.5mm、0.7mm、1.0mmのボールを抱持したステンレスチップを装着したポリプロピレン製のパイプに充填し、インキ組成物の後端界面部分にポリブテンを微粒子シリカとデキストリン脂肪酸エステルでゲル化した逆流防止体を注入して水性ボールペンとし試験用サンプルとした。
【0028】
書き味官能試験
実施例1〜3、比較例1〜3のボールペンを2本ずつ用意し、一対比較法(参考文献:新版官能検査ハンドブック、日本科学技術連盟 編、1973年発行)にて書き味に対する、官能評価を行った。
一対比較法は、二つのものを比較して、順位或いは評点を付けることができる。官能評価方法としては、実施例1〜4、比較例1〜6を、無作為に番号付けを行う(例えば、T1=実施例1、T2=比較例3など)。各サンプルを対にして、書き味の軽さを、Ti(Ti≠Tj)はサンプルTj(Ti≠Tj)よりも大変軽い(+2)、サンプルTiはサンプルTjよりも軽い(+1)、TiとTjは同じくらい(0)、TiはTjよりも重い(−1)、TiはTjよりも大変重い(−2)、の5段階にて評価を行い、全ての実施例、比較例の組合せを相対比較にて、点数付けを行った。評価者の半数は、Ti→Tjの順で評価し、残りの半数は、Tj→Tiの順で評価を行う。評価者は、20人で行った。これらの集計データを評点の出現度数と集計表などを用い、主効果αiを算出し、その効果を確かめる。軽い書き味であれば、αiがより低い値に、重い書き味であれば、高い値となる。
【0029】
筆跡の滲み性:JIS P3201筆記用紙Aに筆記したときの紙の繊維に沿って横に広がったヒゲ状の滲みの筆記線1cm当たりの数を顕微鏡下目視で確認した。
【0030】
自転式連続螺旋筆記試験機(TS−4C−10、精機工業研究所製)にて、筆記用紙(NS−55カエデ、リンテック(株))に筆記速度7cm/秒、筆記角度70゜、筆記荷重100gの条件で、連続筆記した。また、インキが全く出なくなったときは、その時点で中止した。受座摩耗量の代用特性であるボール沈み量(筆記前と筆記後のボール高さの差)を測定した。ボール沈み量が少ないほど受座摩耗が少ない。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水と、着色剤と、剪断減粘性物質とからなり、角周波数が0.1以上100以下(rad/s)の範囲で、tanδ(損失正接)が常に1.0以下であるボールペン用水性インキ組成物。

【公開番号】特開2008−163175(P2008−163175A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353853(P2006−353853)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】