説明

ボール弁の固定構造

【課題】比較的簡単な構造によって、スペースに制約がある場所にも容易に固定することができる微調整を可能としたボール弁の固定構造を開示する。
【解決手段】一次側流路4と、二次側流路5と、これら一次側流路4と二次側流路5の間に位置するボールバルブ3を備えたボール弁である。二次側流路5は外径を等径とした一定長の円筒部11を備え、この円筒部11の外周には、ブッシュ15を介して壁面等に固定するための固定板13が設けられる。ブッシュ15はその内径がボール弁の円筒部11の外形より小さく、拡径状態で前記円筒部11に摺動可能に取り付けられた弾性材である。ブッシュ15の外周には環状溝16が設けられ、この環状溝16に対して固定板13の中心部に設けられた円形孔の内周縁が嵌合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に上水用の開閉弁として用いるボール弁を壁面などに取り付けるための固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家庭内配水を配管し、吐水機器を設置する際に、開閉弁としてボール弁を用いることは周知である。又、最近の家庭内配管には、軟質管やアルミニウムパイプの三層管が用いられるのが主流であり、管の先端部にボール弁が取り付けられる。この場合、配管を完了したボール弁の下流側にはさらに吐水機器が取付けられるが、配管に比べて比較的重量があるボール弁であるから、振動などに対処するためにボール弁自体を何らかの手段で固定することが好ましい。
【0003】
この場合、例えばボール弁本体を壁面などに固定しようとすると、配管の設定誤差を吸収するための構成が必要となる。このような構成の一例としては、伸縮ジョイント、あるいは伸縮管継手が公知である。
【0004】
【特許文献1】特開平09−257178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術として示した伸縮管継手は、一定長さの配管誤差を管継手の伸縮によって吸収することができるので、便利である。しかしながら、伸縮管継手の構造は、固定管と伸縮管の二重構造であるから、コストが高くなる他、部品点数が多くなり、さらには伸縮管が存在するために大径化するという問題がある。特に配管スペースに制約がある場所に取り付ける場合には、装置の大型化は重要な問題となる。
【0006】
一方、伸縮継手を用いることなく継手から特定の装置に配管を接続する構造としては、図6に示す例がある。ここで、60は継手、61は配管を接続する相手としての装置であり、その間をフレキシブル管62で接続している。フレキシブル管62は継手60と装置61の微細な距離の誤差を吸収するので、便利である。しかしながら、フレキシブル管62を装置61の雄ネジ63に螺合する場合に、作業スペースに十分な余裕があれば問題はないが、仮に継手60が露出している浴室点検口からしか作業を行うことができないとすると、図のように障害物を回避しながらフレキシブル管62を配管しなければならない場合には、作業が極めて困難になるという問題がある。また、図示したような作業スペースの限られた状況では、フレキシブル管62を回して装置側の雄ネジ63に螺合することは作業性が悪く、接続ミスの原因となりかねない。
【0007】
そこで、本発明では、これらの課題を解決しようとしたもので、比較的簡単な構造によって、スペースに制約がある場所にも容易に固定することができる微調整を可能としたボール弁の固定構造を開示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のボール弁の固定構造は、上記課題を解決するために、一次側流路と、二次側流路と、これら一次側流路と二次側流路の間に位置するボールバルブを備えたボール弁を基本的な構造としている。そして、二次側流路は外径を等径とした一定長の円筒部を備えており、この円筒部の外周には、ブッシュを介して壁面等に固定するための固定板を設けるという手段を採用することとした。一次側流路と二次側流路の間にボールバルブを有する構造は公知である。本発明の特徴的な構造は、二次側流路の構成として、外径を等径とするパイプ状の円筒部を備えることである。円筒部は、一定長が外径を等径としているので、同じ内径を有する部材を摺動させることができる。ここで、同じ内径とは、力が加わらない状態で同じ内径であっても、弾性的に拡径した結果として同じ内径になる構成であってもよい。ブッシュは固定板を支持する基礎となるもので、これを円筒部に摺動させて位置決めすることにより、固定板の位置決めが行われる。円筒部の先端側を給水器具の内部配管と接続するように構成した場合は、ボール弁が何らかの原因で壁面から離れる方向に引っ張られても、ボール弁の脱落を抑制する。また、ボール弁の先端に、環状の凸条を設ける手段を採用した場合には、万が一、給水器具の内部配管との接続部に不良が発生した場合であっても、凸条がブッシュを規制し、ボール弁の脱落および給水装置外部への水漏れを抑制する。
【0009】
また、ブッシュのより具体的な構成として、その内径がボール弁の円筒部の外形より小さく、拡径状態で前記円筒部に摺動可能に取り付けられた弾性材を採用することとした。素材が弾性材であるから、ブッシュは円筒部に対して緊密に位置決めされ、少々の外力では横滑りすることはない。なお、ブッシュが弾性材であることにより、壁面からボール弁への振動、あるいは逆にボール弁から壁面への振動を吸収し、機器を保護すると同時に、異音の発生を抑制する。
【0010】
さらにまた、ブッシュの外周には環状溝を設け、この環状溝に対して固定板の中心部に設けられた円形孔の内周縁を嵌合させるという手段を用いた。この手段では、予め固定板の内周縁に沿ってブッシュの環状溝を嵌合しておき、その組み合わせ状態でこれらをボール弁の円筒部に挿通することにより、容易に組立てができる。固定板に設けられたビス孔によって、壁面等へボール弁を固定する。二次側流路の先端側に、さらに給水器具の内部配管と接続できる接続口を設ける手段では、例えば給水器具をクイックファスナーなどで簡単に接続することができ、作業性が向上する。また、固定板が円筒部を摺動させて位置決めする構造であるため、給水器具の内部配管位置が給水器具により異なる場合であっても、二次側流路のパイプ状円筒部の一定長の範囲内であれば、位置調整が可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上述した構成を採用したので、ボール弁装置を壁面などに取り付ける場合でも、伸縮管継手のような複雑な機器を用いることなく取付位置の微調整が可能な構造を提供することができる。また、ブッシュとして弾性材を用いる場合には、ボール弁と壁面などとの間の振動を互いに遮断することができ、機器を保護することができると同時に、異音の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1は本実施形態が予定する取り付け状態を示す概略図、図2は本発明の固定構造の一実施形態を示す平面図、図3は同断面図、図4は側面図である。図中、1はボール弁本体で、ハンドル2の軸と直結したボールバルブ3と、ボールバルブ3を挟んで一次側流路4、二次側流路5が設けられている。6は必要に応じて設けられる逆止弁である。一次側流路4の外側にはキャップ7が設けられ、その内部にはチャックリング8、ロックリング9、スプリング10などが組み込まれているが、実施形態の構成は樹脂管や三層管(図示せず)を強く挿入するだけで管が固定される、いわゆるワンタッチジョイントを示したものである。ただし、本発明はこれらのジョイントの構成は必須のものではなく、ボール弁1の一次側流路4に対して公知の手段で管を接続することができるものであれば、その構成を限定するものではない。
【0013】
次に、本発明の重要な構成を説明すると、二次側流路5は一定長を外径を等径とする円筒11によって構成され、円筒11の内部流路が二次側流路として機能する。12は二次側流路5の先端部に設けられた吐水口であり、必要に応じて吐水機器を接続する。例えば、図1のように本実施形態のボール弁を風呂場の天井面Aの裏側のミスト発生装置Bに接続する場合には、吐水口12の先にはミスト発生部への給水配管(図示せず)がクイックファスナーにより接続される。13は、実施形態のボール弁を住宅の壁面などに固定するための固定板であり、図3に示すように周囲4箇所にビス孔14が設けられている。固定板13の材質は特に限定するものではないが、酸やアルカリによって腐食しないようにステンレス板を用いることがある。15は円環状の弾性材からなるブッシュであり、内径を円筒11の外径よりやや小さく設定し、円筒11に押し込むことによって円筒11の一定長の範囲で位置決めされる。16はブッシュ15の外周に設けられた環状溝であり、固定板13の中央部に設けられた円形孔17の内周縁が環状溝16に嵌合することによって、双方が物理的に一体として機能する。18はミスト発生装置Bの筐体の一壁面、19はビス孔14を貫通するビスである。
【0014】
ブッシュ15は、本実施形態では例えば合成ゴムのような弾性材として説明したが、弾性材のブッシュを用いた場合には、壁面の振動はブッシュによって吸収されてボール弁1には伝達されないので、機器の保護が可能となる。又、ボール弁1や軟質管などが発生する振動もブッシュによって吸収されるので、壁面には伝達されることがなく、異音の原因を低減させることが可能である。ただし、ブッシュ15に求められる第一の機能は円筒11に対して固定板13の位置を決める際に微調整が可能であることであり、これを達成することができるのであれば、弾性材に限定されない。例えば硬質の合成樹脂の半割り体を一対用いることも本発明が想定する範囲である。
【0015】
図5は、円筒11の変形例であって、円筒11の先端側に僅かな高さの環状の凸条20を設けたものである。そして、ブッシュ15は設置時には凸条20を乗り越えてボール弁3側に設備される。このようにすれば、何らかの原因でボール弁本体1が壁面18から離れる方向に引っ張られたときでも、凸条20がこれを規制し、完全な脱落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のボール弁をミスト発生装置の一壁面に固定した概略図
【図2】本発明の一実施形態を示す平面図
【図3】同、断面図
【図4】同、側面図
【図5】同、円筒に凸条を設けた例を示す断面図
【図6】従来例の取り付け構造を示す概略図
【符号の説明】
【0017】
1 ボール弁本体
3 ボールバルブ
4 一次側流路
5 二次側流路
11 円筒
12 吐出ノズル
13 固定板
14 ビス孔
15 ブッシュ
16 環状溝
20 凸条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側流路と、二次側流路と、これら一次側流路と二次側流路の間に位置するボールバルブを備えたボール弁であって、前記二次側流路は外径を等径とした一定長の円筒部を備え、この円筒部の外周には、ブッシュを介して壁面等に固定するための固定板が設けられたことを特徴とするボール弁の固定構造。
【請求項2】
ブッシュは、その内径がボール弁の円筒部の外形より小さく、拡径状態で前記円筒部に摺動可能に取り付けられた弾性材である請求項1記載のボール弁の固定構造。
【請求項3】
ブッシュの外周には、環状溝が設けられ、この環状溝に対して固定板の中心部に設けられた円形孔の内周縁が嵌合する請求項1又は2記載のボール弁の固定構造。
【請求項4】
固定板には、壁面等への取付用ビス孔が設けられた請求項1〜3の何れか記載のボール弁の固定構造。
【請求項5】
円筒部の先端側には、環状の凸条を設けた請求項1記載のボール弁の固定構造。
【請求項6】
二次側流路の先端側には、さらに、給水器具の内部配管と接続できる吐水口を設けた請求項1〜3の何れか記載のボール弁の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−58066(P2009−58066A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226479(P2007−226479)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000151025)株式会社タブチ (86)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】