説明

ポイントツーポイント通信のための光学エンジン

【課題】ポイントツーポイント通信のための光学エンジンを提供する。
【解決手段】第1の演算装置210と第2の演算装置220との間でポイントツーポイント光通信リンクを提供するための光学エンジン100。光学エンジン100は、基板106上に形成され、基板の平面に対して平行に進む光信号を生成するように構成される、変調されたハイブリッドマイクロリングレーザー120を備える。光学エンジンは、これもまた基板の平面に対して平行な平面に形成される導波路130であって、光信号を変調リングレーザーから規定の領域108へ導くように構成される、導波路と規定の領域における導波路結合器140であって、光信号をマルチコア光ファイバー150に結合するように構成される、導波路結合器と規定の領域におけるマルチコア光ファイバーであって、光信号を受信して第2の演算装置に移送するように構成される、マルチコア光ファイバーとをさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポイントツーポイント通信のための光学エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピューター性能は、コンピュータープロセッサーが迅速にかつ効率よくオフチップメモリにアクセスするか又は他の周辺装置と通信する能力によってますます制限されつつある。
この制限は、部分的に、規定のサイズ及び表面積のコネクタに収まることができる電気ピンの数の内在的な物理制限に起因する。
そして、この制限は最大電気的帯域幅を確定する。
電気ピン密度の飽和状態は、結果としてプロセッサー又はチップの「ピン配列ボトルネック」となる。
これは、チップパッケージの電気的帯域幅が性能限定要因となる状況を表している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ポイントツーポイント通信のための光学エンジンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一形態は、第1の演算装置(210、306)と第2の演算装置(220、308)との間でポイントツーポイント通信を提供するための光学エンジン(100、300)であって、基板上の、前記第1の演算装置(210、306)に結合される、変調されたリングレーザー(120、320)であって、前記基板の平面に対して平行に進む光信号を生成するように構成される、変調されたリングレーザーと、前記基板の前記平面に対して平行な平面に形成される導波路(130、330)であって、前記光信号を前記変調されたリングレーザーから規定の領域(108、318)へ導くように構成される、導波路と、前記規定の領域(108、318)における導波路結合器(140、340)であって、前記光信号を光ファイバー(154、354)に結合するように構成される、導波路結合器と、前記規定の領域(108、318)における光ファイバー(154、354)であって、前記光信号を受信して前記第2の演算装置(220、308)に移送するように構成される、光ファイバーと、を備える、光学エンジンを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】本発明の例示的な一実施形態による送信基本ユニットの図である。
【図2】本発明の例示的な一実施形態による受信基本ユニットの図である。
【図3】本発明の例示的な一実施形態による光学エンジンの図である。
【図4】本発明の別の例示的な一実施形態による光学エンジンの図である。
【図5】本発明の例示的な一実施形態による光学エンジン及びマルチコア光ファイバーの図である。
【図6a】本発明の例示的な一実施形態による、第1のチップの上に形成される光学エンジンと、第2のチップの上に形成される光学エンジンとの間のポイントツーポイント光通信リンクの図である。
【図6b】本発明の例示的な一実施形態による、第1の演算装置に接合される光学エンジンチップと、第2の演算装置に接合される光学エンジンチップとの間のポイントツーポイント光通信リンクの図である。
【図7】本発明の別の例示的な実施形態による光学エンジンの図である。
【図8】本発明の別の例示的な実施形態による、第1の演算装置に接合される光学エンジンチップと、第2の演算装置に接合される光学エンジンチップとの間のポイントツーポイント光通信リンクの図である。
【図9】本発明の例示的な一実施形態による、第1の演算装置と第2の演算装置との間のポイントツーポイント通信を送信するための方法を示すフローチャートである。
【図10】本発明の別の例示的な実施形態による、第1の演算装置と第2の演算装置との間のポイントツーポイント通信を提供するための方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面を参照する。
添付の図面は本発明の一部を形成すると共に、本発明を実行することができる例示的な実施形態を示す。
これらの例示的な実施形態を、例示として、当業者が本発明を実行するのに十分詳細に説明するが、他の実施形態も実現可能であり、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を本発明に加えることができることを理解されたい。
したがって、以下の本発明の実施形態のより詳細な説明は、特許請求される本発明の範囲を限定することを意図しておらず、本発明の特徴及び特性を説明する共に、当業者が本発明を実行することを十分可能にするために、例示の目的のみで提示される。
したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
本発明の以下の詳細な説明及び例示的な実施形態は、添付の図面を参照することによって最も良好に理解される。
添付の図面において、本発明の要素及び特徴は全体を通じて数字で示される。
【0007】
図1〜図12には、2つのコンピューターチップのような、2つの演算装置間のポイントツーポイント通信リンクのための光学エンジンのための、本発明の様々な例示的な実施形態が示されている。
オフチップメモリに迅速にアクセスすることができないか、又は他の周辺装置と迅速に通信することができないことに起因する、コンピューター性能におけるボトルネックの増大を、光学エンジンを使用して克服することができる。
制限は、部分的に、規定のサイズ及び表面積のコネクタに収まることができる電気ピンの数の内在的な物理制限に起因する。
そして、この制限は通信のための最大帯域幅を確定する。
このため、本発明に関する1つの例示的な用途は、マイクロプロセッサと別個のメモリチップ又は装置との間の、チップ間光通信又はポイントツーポイント光通信を確立することであり得る。
【0008】
光学エンジンは、削減された製造コストで大幅に改善された性能を提供する構成要素を組み合わせたものである。
以下でより詳細に説明するように、光学エンジンは、共振器において光信号を生成する1つ又は複数のハイブリッドエバネセントマイクロリングレーザーと、光学エンジンチップ又は基板の平面に平行な平面において形成された導波路とを備えることができる。
導波路を使用して、光信号を、第2の演算装置への移送用のマルチコア光ファイバーに結合するための規定のロケーション又は領域(たとえばチップの中央又はチップ端)に搬送することができる。
規定の領域がチップの中央に向いている場合、光信号を、格子結合パッドを有する基板の平面に対して面外に曲げて、該基板の平面に対して面外に配向されたマルチコア光ファイバーの光コアに結合することができる。
規定の領域がチップの端にある場合、光信号を導路波テーパーを用いて集め、導波路に位置合わせされると共に基板の平面に平行に配向されたマルチコア光ファイバーリボンのコアに結合することができる。
【0009】
第2の演算装置からブロードキャストされる光信号を受信するためのフォトニック検出器を含むことができる。
フォトニック光信号検出器、すなわちフォト検出器は、通常、光信号生成器(すなわちレーザー、LED等)よりも複雑でないため、フォト検出器は、規定の領域に配置されて、マルチコア光ファイバーを通じて進む入力信号を直接受信してもよく、又はマイクロリングレーザーのように、チップの表面にわたって分散され、同様に、格子結合パッド若しくはテーパー型導波路を有するマルチコア光ファイバーに結合することができる。
【0010】
本発明の光学エンジンは、今日のコンピューター設計者が直面する、チップあたり数千個の電気ピンという概算の上限に起因する「ピン配列ボトルネック」を解消するのに役立つことができる。
これらの電気ピンのうちのいくつかは、CPU対メモリトラフィック、又はポイントツーポイントリンクに適している場合がある他の二次通信に使用される。
2つの演算装置間の直接光接続を提供すると共に、CPU対メモリ通信又は二次通信の負荷を別個のマルチチャネルのポイントツーポイント光リンクにして軽減することによって、多数の入出力ピンが電気バス内の他の使用に再配置することができ、結果として他の内部コンピューター動作に利用可能な帯域幅が大幅に増加する。
【0011】
本発明は、従来技術に勝るさらなる利点を提供する。
これは、従来からの配線型コネクタ、及び光ファイバー通信技術におけるより最近の開発の双方を含むことができる。
1つの恩恵は、製造コストが低下することである。
これは、マイクロリングレーザー、フォト検出器、導波路、及び光結合器を含む、光学エンジンの各構成要素を、VLSI(超大規模集積回路)製作技術のような、コスト効率のよい、大量製作プロセスを使用して製造することができるためである。
別の利点は、取り付けられた演算装置によって最大1GHz以上の周波数で直接変調することができるマイクロリングレーザーを使用することによって帯域幅が大幅に増大されることである。
それに関連した改善点は、従来の垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)及び発光ダイオード(LED)を使用する従来の発光システムと比較して、マイクロリングレーザーの電力消費が比較的低いことである。
【0012】
従来技術に勝る本発明の1つの明確な利点は、マイクロリングレーザー及び/又はフォト検出器を、光学エンジンチップの表面にわたって分散させると共に、光信号を導波路を介して規定の領域へ、及び規定の領域から導くことが可能であることであり、該規定の領域において、多数の光信号を集めて、フォトニック結晶ファイバー、又は光ファイバーリボンのような単一のマルチコア光ファイバーに結合するように構成可能な小さな占有面積になるように束ねることができる。
VCSELでは、VCSELの配向及び比較的大きなサイズによって、マルチコア光ファイバーの占有面積内に収めることができる光信号の数が厳しく制限されるため、上記を行うことはできない。
さらに、VCSELはシリコン内に直接集積することができないため、VCSEL技術に基づく光学エンジンは、シリコンベースのフォト検出器と直接組み合わせることができない。
したがって、従来の光学系では、到来信号を受信し二重通信リンクを完結するには、検出器を有する別個のチップが必要となる場合がある。
対照的に、本発明の各構成要素は、III−V族半導体材料を使用して製作することができ、送信マイクロリングレーザー、受信フォト検出器、及びそれらの関連付けられる構成要素を同じチップ内に集積することが可能になる。
【0013】
本発明は、コンピューター設計者及び技術者にとって魅力的であり得るさらなる恩恵を提供する。
例えば、2つの演算装置間の全てのポイントツーポイントトラフィックは、フォトニック結晶ファイバー又は光ファイバーリボンのようなマルチコア光ファイバーによって扱うことができ、これを能動的に又は受動的に光結合器に位置合わせすることができ、実証済みの接着剤及び接着方法を試用して光学エンジン上の規定の領域に取り付けることができる。
さらに、本発明は、光学エンジンを演算装置内に直接集積するか、又はその後の演算装置へのウェハー実装のために該エンジンを別個のチップ上に製作するという利便性及び柔軟性を提供する。
【0014】
上記で挙げた利点及び改善点のそれぞれは、添付の図面を参照して下記で示す詳細な説明を考慮すれば明らかとなろう。
これらの利点は、いかなる形でも限定的であることを意図していない。
実際、当業者であれば、本発明を実行する際、本明細書に特に挙げた恩恵及び利点以外に、他の恩恵及び利点を実現することができることを理解するであろう。
【0015】
図1に示すのは、本発明の例示的な一実施形態による送信基本ユニット10である。
送信基本ユニット10を使用して、第1の演算装置(図示せず)によって変調された光信号を生成し、該光信号を、第2の演算装置への移送用のマルチコア光ファイバーに結合することができる。
送信基本ユニットは、マイクロリングレーザー20と、光導波路30と、面外光結合器40とを備えることができる。
それらは共に、第1の演算装置から第2の演算装置への単一の変調された光信号又は光ビーム12(例えば赤外線ビーム)を、生成し、移送し、結合するように機能することができる。
複数の送信基本ユニット10を光学エンジンの表面にわたって分散させて、大きな帯域幅を有するマルチチャネル光路を作成すると共に、2つの演算装置間の高速で大容量の通信を可能にすることができる。
【0016】
送信基本ユニット内の構成要素のそれぞれは、シリコンベースのチップ基板2の上に形成された1つ又は複数の基礎を成す基層(複数可)4上に、既知の大容量(例えばVLSI)製作技術を使用して製作することができる。
送信基本ユニットの構成要素は、図1において、基層(複数可)4及び基板2の上に重なる単一の光学エンジン層6に形成されるものとして示されているが、当業者であれば、様々な基本ユニット構成要素、特にマイクロリングレーザー20を、異なる材料から形成される様々な副層から構築することができることを理解することができる。
例えば、ハイブリッドマイクロリングレーザーは、下部クラッド、マイクロリング共振器及び導波路、InP電荷注入層、電極等を作成するのに使用される7つ以上の異なる層から製作することができる。
【0017】
さらに、送信基本ユニットの構成要素は、図示されるように光学エンジン層6内に埋め込むこともできるし、又は層の上部に拡張し、空間若しくは透明な保護被覆に取り囲まれるように形成することもできることが理解され得る。
光学エンジンと該光学エンジンの駆動演算装置との間の電気的接続は、基礎を成す基層(複数可)4内に提供することができる。
【0018】
光ビーム12を生成するマイクロリングレーザー20は、取り付けられた演算装置によって、最大1GHz以上のスピードで直接変調される、低電力の、電気的に励起された(pumped)ハイブリッドIll−Vシリコンレーザーとすることができる。
直接変調によって、従来の光学系に見られる電気−光変調器の必要性がなくなる。
リング共振器22の直径が5μmと小さいため、マイクロリングレーザーは、既存のエバネセント共振レーストラックレーザーよりも数桁小さくすることができる。
この小型なサイズ、及び補助要素の低減によって、多数のレーザーを、単一のチップ上に、従来技術の方法よりも小さな空間を占めるように統合することができ、一方で同時に、改善された配置及び編成を提供することができる。
【0019】
本発明の柔軟性の別の態様は、ハイブリッドマイクロリングレーザーが、シングルモード動作及びマルチモード動作の双方に関して構成可能であることである。
例示的な一実施形態では、例えば、本発明の光学エンジンを、1310nm又は1550nmの波長を中心としたシングルモード動作に関して構成することができる。
【0020】
マイクロリングレーザー20の動作及び機能は、該マイクロリングレーザー20のシングルモード動作及びマルチモード動作の双方に関する構成可能性を含めて、2008年5月6日に出願され、「System and Method For Micro-ring laser」と題する、共同所有された同時係属中の国際特許出願第PCT/US081/62791号に、より詳細に示されている。
該特許出願は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0021】
図1に示す実施形態では、変調されたマイクロリングレーザー20は、変調された光ビーム又は出力光信号12をシリコン光導波路30内に発する。
導波路30は、ハイブリッドマイクロリングレーザーの一体化した部分として開始し、光信号12を面外又は送信光導波路結合器40に搬送する。
単一のチップ上に複数の送信基本ユニット10を形成することができるため、マイクロリングレーザーと導波路結合器との間の距離は比較的短く、約100μm以下であり、これは光信号が固体シリコン導波路を通じて進むときの該光信号の損失又は減衰を最小にするのに役立つ。
例示的な一実施形態では、導波路30は、約0.5μm×0.5μmの寸法の正方形又は長方形の断面積を有することができる。
【0022】
面外送信光結合器40を使用して、出力光信号を、基礎を成す基板2の平面に対して面外に曲げることができる。
銀めっきされたミラー、ビームスプリッター、光格子パッド等のような様々なタイプの光結合装置を使用して光ビームを面外に曲げることができる。
例示的な一実施形態では、光信号を、基板の平面に対して実質的に垂直に、すなわち90度に曲げることができるが、マルチコア光ファイバーに結合するために、光ビームの方向を約30度以上の角度に変えることも、本発明の範囲内に入るものとして検討することができることを理解されたい。
【0023】
出力光信号12を、基板の平面に対して面外に結合するための、1つの低コストであるが非常に効率的な装置は、格子パッド結合器42とすることができる。
格子パッド結合器は、通常、光導波路30の拡張部分又はパッド44を備えることができる。
該拡張部分又はパッド44は、同じ材料又は異なる材料から作製することができ、導波路と一体的に、又は導波路とは別個に形成することができる。
パッド44は、その厚みよりもはるかに大きな幅を有することができる。
スロット46の格子パターンは、結合格子パッドの上面内にエッチングされるか又は他の方法で形成されることができ、格子結合器の本体内に下方に延在する。
格子結合器は、光回折の原理に基づいて動作することができ、パッド材料を通じて進む際にスロットに接触する光信号が、いくつかの成分に分割される。
該成分は、送信成分、反射成分、及び面外成分を含む。
正確に寸法合わせされ、格子パッドの上面に沿って離間された複数のスロットを使用することによって、光ビームの大部分の方向を変えて、導波路の平面に対して面外に進む送信光信号14にすることができる。
【0024】
光信号12を基板2の平面に対して面外に曲げる際の格子結合器の効率は、光ビームの波長に対する、格子スロットの寸法及び間隔の制御を通じて最適化することができる。
このため、格子結合器は、マイクロリングレーザーが発するレーザー光の中心波長に関して調整又は最適化することができる。
これは2つの装置を共に接続する導波路も同様に行うことができる。
送信基本ユニット全体を、マイクロリングレーザーによって生成される光の波長、上述した1310nm又は1550nmの波長等に調整することによって、同時に、基本ユニットの出力を最大にしながら、各構成要素を通じて移動する光信号の損失を最小にすることができ、結果として、電力要件が低減された光学エンジンとなる。
【0025】
図2に示すのは、本発明の例示的な一実施形態による受信基本ユニット60である。
受信基本ユニットは、送信基本ユニットと同様に編成され、受信面外光結合器70と、光学装置へとつながっている導波路80とを有する。
しかし、一方で受信ユニットのケースでは、受信光信号18は反対方向に(すなわち面外光結合器から光学装置へ)進み、光学装置は、マイクロリングレーザーではなく、フォトニック光信号検出器、又はフォト検出器90である。
【0026】
受信光結合器70を使用して、基板2の平面に対して面外を進む到来光ビーム又は入力光信号16を曲げて、導波路80を通じて基板2の平面に平行に移動する受信光信号18にすることができる。
受信光結合器70は、送信光結合器と実質的に同一とすることができ、銀めっきされたミラー、ビームスプリッター、光格子パッド等を含む様々なタイプの光結合装置をさらに備えることができる。
【0027】
図2に示す例示的な実施形態では、受信光結合器70は、送信基本ユニットにおいて使用された格子パッド結合器と実質的に同一の格子パッド結合器72とすることができる。
この理由は2つであり得る。
一方は、格子結合器が、双方向に進む光を曲げるのに等しく効率的であり得るためである。
他方は、以下でより詳細に説明されるように、光の特定の波長に最適化された同一の光学エンジンを、多くの場合に対で使用することができるためである。
このとき、一方のエンジンの受信部は、他方の送信部によって生成された光ビームを受信し移送するように調整されている。
結果として、受信基本ユニット60上の格子結合器72は、同じ光の波長に最適化された送信基本ユニットを起点として生成され送信された入力信号16を受信するように構成することができる。
このケースでは、双方の格子結合器を実質的に同一とすることができる。
【0028】
入力光信号16が捕捉され、格子結合器72によって受信基本ユニットに結合されると、受信光信号18を導波路80に沿ってフォト検出器90に移送することができる。
フォト検出器は、ゲルマニウム又はIII−V材料から成る層、p−i−n又はショットキーダイオード、フォトトランジスタ等のような様々なタイプの光検出装置を含むことができる。
一方で、例示的な一実施形態では、フォト検出器を、マイクロリングレーザーと同じフォト検出器同じIII−V族半導体材料から作製し、光学エンジンの製作を容易にすることができる。
そして、さらに別の例示的な実施形態では、フォト検出器及びマイクロリングレーザーはほぼ同じ光学エバネセント原理に基づいて動作することができ、主な違いは、マイクロリングレーザーと比較して、フォト検出器が、光子を生成するのではなく収集するように逆バイアスされていることである。
【0029】
図3に示すのは、光学エンジンの例示的な一実施形態100である。
この実施形態では、複数の双方の送信基本ユニット110及び受信基本ユニット160が単一のチップ106上に組み合わせられて、光学装置間の全二重動作を可能にしている。
図3に示すように、それぞれが別個のマイクロリングレーザー120、導波路130、及び送信格子結合器140をさらに備える、複数の5つの送信基本ユニット110を、マイクロリングレーザーが周辺部に向って分散され、かつ格子結合器が中央ロケーション又は規定の領域108内に集められるようにチップ上に編成することができる。
同様に、それぞれが受信格子結合器170、導波路180、及びフォト検出器190をさらに備える、複数の5つの受信基本ユニット160を、フォト検出器が周辺部に向って分散され、かつ受信格子結合器170が、送信格子結合器140に隣接した、同じ中央の規定の領域108内に集められるようにチップ上に編成することができる。
【0030】
図3は、チップ又は基板106の平面に平行な平面上で動作する送信基本ユニット110及び受信基本ユニット160によって提供される利点を示している。
この「水平」配向によって、レーザー自体を規定の領域108に配置するという従来技術の制限がなくなり、多数のマイクロリングレーザー120及びフォト検出器190を光学エンジン基板106の表面にわたって分散しながら、比較的狭い導波路130、180を使用して、光信号を、規定のロケーションに集められた格子結合器140、170に効率的にルーティング又は方向付けすることが可能になる。
図3は、10個の格子結合器が規定のロケーションに形成された例示的な一実施形態を示すが、小さな占有面積の格子結合器140、170及び狭い幅のシリコン導波路130、180によって、規定の領域を、少なくとも30個以上の光チャネルのために構成することを可能にすることができることを理解されたい。
【0031】
図4に示すのは、光学エンジンの代替的な実施形態102である。
この実施形態では、フォト検出器自体は規定の領域に配置され、マルチコア光ファイバーを通じて進む入力信号を直接受信することができる。
フォト検出器は通常、光信号生成器(すなわち、レーザー、LED等)よりも複雑でないため、基板106の平面に平行に、又は該平面に対して面外に光信号を受信するように構成することができる。
前の実施形態における受信基本ユニットを、単にフォト検出器190自体に置き換えることができ、これを通常受信格子結合器と概ね同じ位置にある規定の領域108内に配置することができる。
この実施形態によって、光学エンジンチップの製作を単純にすると共にコストを削減することができ、チップの表面積のより多くを送信基本ユニットの設置に当てることを可能にすることができる。
【0032】
図4に示すような、中央ロケーション又は規定の領域108内の送信格子結合器140及びフォト検出器190の位置決めは、単に典型であり、図示される並んだ構成に限定されない。
当業者であれば、送信基本ユニット110及びフォト検出器190を、様々な構成で規定の領域108内及び光学エンジンチップ106の表面にわたって再位置決め及び混合し、構成要素の分散、マルチコア光ファイバーへの見通し線、及び基礎を成す基層(複数可)内に形成される電気経路を最適化することができることを理解されたい。
【0033】
図5は、本発明の例示的な一実施形態による、光学エンジン100、及び、フォトニック結晶ファイバーのような、シングルモード又はマルチモードのマルチコア光ファイバー150の図である。
マルチコア光ファイバーは、該マルチコア光ファイバーの全長にわたって延びる複数の光コア154を取り囲む外層又はシース152を含むことができる。
コアは、固体、ガス、液体、又は空洞から形成される実質的に透過的な材料を含むことができ、これによって光信号がコアを通じて伝播することが可能になる。
さらに、コア154は、均一な断面積を有することができ、ファイバー150の全長に沿って、互いからの均一な間隔を有することができる。
マルチコア光ファイバーの光コアは、マイクロリングレーザーによって生成される光信号との互換性を有することができ、このためシングルモード動作又はマルチモード動作のために構成可能とすることができることをさらに理解されたい。
【0034】
マルチコア光ファイバー150は、光学エンジンチップ106の中央ロケーション又は規定の領域108に結合するための近位端156と、第2の演算装置(図示せず)に関連付けられる光学エンジンの規定の領域に結合するための遠位端158とを有することができる。
近位端156は、光コア154が規定の領域内に配置された面外光結合器140、170と位置合わせされるように、光学エンジンチップ106の規定の領域108に結合することができる。
ファイバー150の近位端156を、適切な接着剤、取り付け方法、又は取り付け構造を用いて、光学エンジンチップ106の上面に取り付けることもできる。
【0035】
光コア154と面外光結合器140、170との位置合わせは、受動的な方法又は自己位置合わせ方法、及び、フォトニック結晶ファイバーのようなマルチコア光ファイバー150がチップに結合されるときに、該ファイバーの中を通る1つ又は複数の光信号の強度をモニタリングする能動的な方法を通じて達成することができる。
マルチコア光ファイバーを光学エンジンに位置合わせ及び結合するための様々な態様及び方法に関するさらなる詳細は、2008年1月10日に出願され、「Method for Connecting Multicore Fibers to Optical Devices」と題する、共同所有された同時係属中の米国仮特許出願第61/020372号に、詳細に示されている。
該特許出願は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0036】
図6aに示すのは、中央処理ユニット210及び別個のメモリチップ220のような第1の演算装置及び第2の演算装置内に直接集積される光学エンジン間のポイントツーポイント光通信リンク200である。
この例示的な実施形態では、光学エンジン240を、製作中に、演算装置210、220の回路内に直接集積し、次に該光学エンジン240を、双方の光学エンジンの規定の領域に結合及び位置合わせされるマルチコア光ファイバー250と接続することができる。
【0037】
図6bは、本発明の別の態様をさらに示している。
該態様では、別個の光学エンジンチップ260が、2つの隣接する演算装置210、220にウェハー実装され、次にポイントツーポイント光通信リンク202を作成するためにマルチコア光ファイバー250とリンクされた。
光学エンジンを別個のチップ260上に形成し、それらを後に演算装置に取り付けることによって、チップを製作する際に使用される製造プロセスに対するより優れた制御、及び製作コストの低減における規模の経済性を提供することができる。
別個の光学エンジンチップ260は、光学エンジンが実装される演算装置から実質的に独立した通信プロトコルの作成を可能にすることもできる。
【0038】
図7及び図8は共に、第1の演算装置306及び第2の演算装置308にウェハー実装することができる光学エンジンチップ300間に作成されるポイントツーポイント光リンク302の別の例示的な実施形態を示している。
この実施形態では、光学エンジンチップ300内に形成される送信基本ユニット310及び受信基本ユニット360の双方を、前の実施形態において説明したようにチップの中央に向ってではなく、チップ端314に向って配向することができる。
送信基本ユニット310において、マイクロリングレーザー320において出力光信号を生成し、該出力光信号を、チップ又は基板の端314の周囲に編成された規定の領域318に向って出力導波路330内で移送し、導波路330に位置合わせされると共に基板の平面に対して平行に配向されることができる光ファイバーリボン350に結合することができる。
一方、光信号は、端に到達する前に、該光信号のモードを、光ファイバーリボンを形成する個々の光ファイバー354の基本モードに変換する導路波テーパー340内に渡されることができる。
【0039】
光ファイバーリボン350は、出力信号を、別の演算装置308(図8を参照されたい)上に実装された同様の光学エンジンチップ300の受信部に搬送することができる。
そして、第2の光学エンジンチップ上のマイクロリングレーザーは、相互二重形式で、入力信号を光ファイバーリボン350を通じて第1の演算装置306上に実装された光学エンジンチップに返送することができる。
該光学エンジンチップは、導路波テーパー370(図7を参照されたい)を通じて入力導波路380内に入力信号を受信し、該入力導波路380は該入力信号を受信フォト検出器390に搬送することができる。
【0040】
図9は、例示的な一実施形態による、第1の演算装置と第2の演算装置との間でポイントツーポイント通信を送信するための方法400を説明するフローチャートである。
本方法は、第1の演算装置の基板上に形成されたリングレーザーを変調して(410)、基板の平面に対して平行に進む光信号を生成する動作と、ここでもまた基板の平面に対して平行な平面に形成された光導波路において、光信号をリングレーザーから送信導波路結合器へ導く(420)動作とを含む。
本方法は、送信導波路結合器において、基板の平面に対して平行に進む光信号を、該基板の平面に対して面外に進むように曲げる(430)ステップと、光信号をマルチコア光ファイバーに結合する(440)ステップをさらに含む。
ここで、マルチコア光ファイバーは、光信号を第2の演算装置に送信するように構成される。
【0041】
図10に示すのは、第1の演算装置と第2の演算装置との間でポイントツーポイント通信を送信するためのさらに別の方法450のフローチャートである。
本方法は、第1の演算装置の基板上に形成されたリングレーザーを変調して(460)基板の平面に対して平行に進む光信号を生成する動作と、ここでもまた基板の平面に対して平行な平面に形成された光導波路において、光信号を、リングレーザーから、基板の端に隣接して配置された導波路テーパーへ光信号を導く(470)動作と、光信号を導路波テーパーを通じて光ファイバーリボンに結合する(480)動作とを含む。
ここで、光ファイバーリボンは、光信号を第2の演算装置に送信するように構成される。
【0042】
上記の詳細な説明は、特定の例示的な実施形態を参照して本発明を説明している。
しかしながら、添付の特許請求の範囲に示されている本発明の範囲から逸脱することなく、様々変更及び変形を行うことができることが理解されよう。
詳細な説明及び添付の図面は、制限的なものではなく、単に説明的なものであるとみなされるべきであり、全てのそのような変更又は変形は、存在する場合、本明細書に説明されると共に示された本発明の範囲内に入ることを意図される。
【0043】
より詳細には、本明細書において、本発明を説明する例示的な実施形態を説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、上記の詳細な説明に基づいて当業者が理解するであろう変更形態、省略、(たとえば様々な実施形態にまたがる態様の)組み合わせ、適合形態、及び/又は代替形態を有する任意の全ての実施形態を含む。
特許請求の範囲における限定は、該特許請求の範囲において用いられる言語に基づいて広義に解釈されるべきであり、上記の詳細な説明において又は出願のプロセキューション中に説明される例に限定されない。
それらの例は、非排他的であると解釈されるべきである。
例えば、本開示において、用語「好ましくは」は非排他的であり、「好ましいが限定されない」を意味することが意図される。
任意の方法クレーム又はプロセスクレームにおいて挙げられるいかなるステップも、任意の順序で実行することができ、特許請求の範囲において例示される順序には限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の演算装置(210、306)と第2の演算装置(220、308)との間でポイントツーポイント通信を提供するための光学エンジン(100、300)であって、
基板上の、前記第1の演算装置(210、306)に結合される、変調されたリングレーザー(120、320)であって、前記基板の平面に対して平行に進む光信号を生成するように構成される、変調されたリングレーザーと、
前記基板の前記平面に対して平行な平面に形成される導波路(130、330)であって、前記光信号を前記変調されたリングレーザーから規定の領域(108、318)へ導くように構成される、導波路と、
前記規定の領域(108、318)における導波路結合器(140、340)であって、前記光信号を光ファイバー(154、354)に結合するように構成される、導波路結合器と、
前記規定の領域(108、318)における光ファイバー(154、354)であって、前記光信号を受信して前記第2の演算装置(220、308)に移送するように構成される、光ファイバーと
を備える光学エンジン。
【請求項2】
前記導波路結合器は、前記基板の前記平面に対して面外に前記光信号を結合するように構成される格子パッド結合器である
請求項1に記載の光学エンジン。
【請求項3】
前記光ファイバーは、前記基板の前記平面に対して面外に配向されたフォトニック結晶ファイバーの光コアである
請求項2に記載の光学エンジン。
【請求項4】
前記導波路結合器は、前記光信号を前記基板の前記平面に対して平行に結合するように構成される導路波テーパーである
請求項1に記載の光学エンジン。
【請求項5】
前記光ファイバーは、前記基板の前記平面に対して平行に配向された光ファイバーリボンの部材である
請求項4に記載の光学エンジン。
【請求項6】
第1の演算装置(210)と第2の演算装置(220)との間でポイントツーポイント通信を送信するための光学エンジン(100)であって、
第1の基板(106)上の、前記第1の演算装置(210)に結合される、変調されたリングレーザー(120)であって、前記第1の基板の平面に対して平行に進む光信号(12)を生成するように構成される、変調されたリングレーザーと、
前記第1の基板(106)の前記平面に対して平行な平面に形成される出力導波路(130)であって、前記光信号(12)を前記変調されたリングレーザーから第1の中央ロケーション(108)へ導くように構成される、出力導波路と、
前記第1の中央ロケーションにおける送信導波路結合器(140)であって、前記光信号(12)を前記第1の基板(106)の前記平面に対して面外に曲げるように構成される、送信導波路結合器と、
前記中央ロケーション(108)におけるマルチコア光ファイバー(150)であって、前記光信号(14)を受信して前記第2の演算装置(210)へ移送するように構成される、マルチコア光ファイバーと
を備える光学エンジン。
【請求項7】
前記送信導波路結合器は、前記光信号を、前記第1の基板に対して30度より大きな角度で面外に曲げるように構成される
請求項6に記載の光学エンジン。
【請求項8】
前記送信導波路結合器は格子結合パッドである
請求項6に記載の光学エンジン。
【請求項9】
前記マルチコア光ファイバーは、前記第1の基板に前記第1の中央ロケーションにおいて物理的に結合される
請求項6に記載の光学エンジン。
【請求項10】
第2の基板上の、前記第2の演算装置に結合される光検出器であって、前記マルチコア光ファイバーからの前記光信号を、第2の中央ロケーションにおいて受信するように構成される、光検出器をさらに備える
請求項6に記載の光学エンジン。
【請求項11】
前記光検出器は前記第2の中央ロケーションに配置される
請求項10に記載の光学エンジン。
【請求項12】
前記第2の中央ロケーションにおける受信導波路結合器であって、前記マルチコア光ファイバーからの前記光信号を、前記第2の基板の前記平面に対して平行な平面に結合する、受信導波路結合器と、
前記第2の基板の前記平面に形成される入力導波路であって、前記光信号を前記受信導波路結合器から前記光検出器へ導く、入力導波路と
をさらに備える請求項10に記載の光学エンジン。
【請求項13】
前記受信導波路結合器は格子結合パッドである
請求項12に記載の光学エンジン。
【請求項14】
第1の演算装置(210)と第2の演算装置(220)との間でポイントツーポイント通信を提供する方法であって、
前記第1の演算装置(210)に結合された基板(240、260)上に形成されたリングレーザー(130)を変調することであって、前記基板の前記平面に対して平行に進む光信号(12)を生成する、変調することと、
前記光信号(12)を、前記基板の前記平面に対して平行な平面に形成された光導波路(130)において、前記リングレーザーから導波路結合器(140)へ導くことと、
前記導波路結合器(140)において、前記基板(106)の前記平面に対して平行に進む前記光信号(12)を、前記基板の前記平面に対して面外に進むように曲げることと、
前記光信号(14)を、マルチコア光ファイバー(150)に結合することであって、前記マルチコア光ファイバーは、前記光信号(14)を前記第2の演算装置(220)へ送信するように構成される、結合することと
を含む方法。
【請求項15】
第1の演算装置(306)と第2の演算装置(308)との間でポイントツーポイント通信を提供する方法であって、
前記第1の演算装置(306)に結合された基板(300)上に形成されたリングレーザー(320)を変調することであって、前記基板の前記平面に対して平行に進む光信号を生成する、変調することと、
前記光信号を、前記基板(300)の前記平面に対して平行な平面に形成された光導波路(330)において、前記リングレーザー(320)から前記基板の端に隣接して配置された導路波テーパー(340)へ導くことと、
前記光信号を、前記導路波テーパー(340)を通じて光ファイバーリボン(350)に結合することであって、前記光ファイバーリボンは、前記光信号を前記第2の演算装置(308)へ送信するように構成される、結合することと
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−520152(P2011−520152A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508464(P2011−508464)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/062958
【国際公開番号】WO2009/136925
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(511076424)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (155)
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
【Fターム(参考)】