説明

ポジションインジケータ

この発明は、対象物に接続可能であると共に、対象物の表面の指定された領域を明確にマークして、上記領域を上記表面の他の領域からはっきりと分化することができるポジションインジケータに関する。本発明はさらに、特定および/または認証を目的として、表面をマークする本発明のポジションインジケータの使用、および、好ましくは対象物の特定および/または認証を目的として、特徴ある放射パターンを検出するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、対象物に接続可能であると共に、対象物の表面の指定された領域を明確にマークして、上記領域を上記表面の他の領域からはっきりと分化することができるポジションインジケータに関する。本発明はさらに、特定および/または認証を目的として、表面をマークする本発明のポジションインジケータの使用、および、好ましくは対象物の特定および/または認証を目的として、特徴ある放射パターンを検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学的方法による対象物の自動検出は、先行技術により知られている。例えば、バーコードが付された商品および/または包装を誰もがよく知っている。このバーコードは、例えば値段を確認するために、機械によって商品を特定することを可能にする。
【0003】
代表的なバーコードは、国際規格ISO/IEC 15420で定義されるEAN 8コードである。このコードは、様々な幅のバーおよびスペースで8進シーケンスをエンコードする。このバーは、一般に、ホワイトサポート、例えば、マークされる対象物の包装または対象物自身に黒の印刷用インクで印刷されている。
【0004】
上記EAN 8コードに加えて、非常に多くの他のバーコードがあり、同様に、数字(digits)に加えて、レター、特殊文字および制御文字をエンコードする。バーコードの発展の1つとしては、一次元だけでなく二次元においても情報が光学的にエンコードされる2Dコードがある。2Dコードのサブグループは、いわゆるマトリクスコードである。代表的なものとしては、例えば、国際規格ISO/IEC 16022で定義されるデータマトリクスコード(Data Matrix code)がある。
【0005】
上述のバーコード、2Dコードおよびマトリクスコード、また、OCRテキスト(OCR=Optical Character Recognition)あるいは同様の光学的機械可読コード等の機械可読光学コードは、以下の文章において、一般名称の光学コードに含まれてグループ化される。
【0006】
光学コードは、まず第1に、簡単かつ極めてコスト効率よく製造することができ、第2に、すばやく、確実に光学的に検出できる、つまり、読むことができる。そのため、光学コードは、対象物を特定するのに理想的に適している。光学コードは、対象物を追跡(Track & Trace)するのに特に適している。この場合、対象物には、例えば、固有の番号が与えられ、その結果、ロジスティクスチェーンの各ステーションにおいて対象物を特定することができると共に、ロジスティクスチェーンの一のステーションから他のステーションへの対象物の動きを追跡することができる。
【0007】
しかし、光学コードは、簡単な方法で複製および再現することができるため、偽造に対する防御をすることができない。
【0008】
偽造に対する防御のために、身分証明書、紙幣、製品等には、今日では、特別な知識および/または高い技術的複雑性でのみ再現され得る要素が設けられている。本明細書においては、上記要素をセキュリティ要素と言う。セキュリティ要素は、好ましくは、防御される対象物に密接に接続されている。セキュリティ要素が悪用されないために、対象物からセキュリティ要素を分ける試みは、それらの破壊の原因となる場合がある。
【0009】
対象物の真偽は、1以上のセキュリティ要素の存在に基づいてチェックされ得る。本明細書においては、対象物の真偽をチェックするための方法を認証と言う。
【0010】
例えば、透かし、特殊インク、ギョーシェパターン(guilloche patterns)、マイクロスクリプト(microscript)およびホログラム等の光学的セキュリティ要素は、世界的に確立されている。特に適切であるが、ドキュメント保護だけのものではない光学的セキュリティ要素の概略は、書籍「Rudolf L. van Renesse, Optical Document Security, Third Edition, Artech House Boston/London, 2005(pp63-259)」により得られる。
【0011】
また、対象物自身により提供される特徴以外に用いられる特徴がない特定および/または認証するための方法がある。
【0012】
WO2005/088533A(1)には、特徴ある表面構造に基づいて対象物を特定および認証できる方法が記載されている。この場合、上記方法は、例えば対象物に接続されるセキュリティ要素等の追加手段無しで扱う。この方法において、レーザービームは、対象物の表面上に焦点を合わせられると共に、この表面上を動かされる(スキャニング)。そして、異なる範囲に、異なる角度で、異なる表面上の位置に散乱する上記ビームを光検出器により検出する。検出された散乱線は、多様な異なる材料の特徴であり、対象物が生成される際にランダムに生起するので、再現することが非常に難しい。例として、紙状対象物は、作り出された各々の対象物に対して固有である、製品を左右する繊維構造を有する。個々の対象物に関する散乱データはデータベースに記憶され、やがて後のポイントで対象物を認識することができる。このために、対象物は再び測定され、散乱データが記憶された参照データと比較される。
【0013】
WO2005/088533(A1)の方法で使用される対象物のランダム特性は、偽造に対して非常に高い防御をもたらす。
【0014】
WO2005/088533(A1)に記載された方法は、初期検出のステップと再検出のステップとを備える。初期検出において、定められた表面領域の特徴ある散乱線が測定される。この測定された散乱線は、例えば、対象物自身上にコード形式で、あるいは、データベースにおけるデータセットとして記憶される。再検出において、特徴ある散乱線が再度記録され、1以上の記憶された散乱線のデータセットと比較されて、対象物が特定される、あるいは、対象物の固有性が確認される。
【0015】
対象物を特定し、認証するためのWO2005/088533(A1)に記載された方法を使用可能にするためには、再検出における表面領域が、初期検出における表面領域と同じであることが確実とならなければならない。
【0016】
次第により大きくなる対象物については、検出領域に関する選択オプションの数が増加する。明確に検出領域を画定するために対象物上の独特なマーキングを用いることができると、WO2005/088533(A1)は説明する。例えば紙の文書のエッジのような対象物の突出点または境界を、検出領域の位置を画定し、求めるために用いることもできる。このような突出点、境界あるいはマーキングは、本明細書において共にグループ化され、ポジションインジケータに指定される。
【0017】
ポジションインジケータは、検出領域のすぐ近くに位置しているのが望ましい。ポジションインジケータと検出領域とが離れすぎた間隔で配置されている場合、検出領域の位置を求めることは、次第に難しくなる。マシンの(例えば、宇宙旅行あるいは軍事技術における)高品位構成要素として用いられ、ポジションインジケータを備える対象物が存在する場合がある。しかし、それらのポジションインジケータのすぐ近くの表面領域が、特徴ある散乱線を検出するために全く適さないか、あるいは、完成したマシンで覆われているということがあり得る。その場合、検出領域の位置を求めることが困難になるであろう。
【0018】
例えば、丸いエッジおよびコーナーを有する高品質香料の小瓶等、はっきりと区別できるポジションインジケータを持たない対象物も存在する。検出された領域が少なくとも部分的に初期検出の領域に対応する再検出における高い尤度を達成するために、このような対象物をWO2005/088533(A1)に記載された方法から除外するか、表面の大部分を初期検出により検出する必要があるであろう。
【0019】
印刷されたポジションインジケータを有する紙状の対象物は、例えば、水による損傷の結果として、上記ポジションインジケータを失う可能性があるという事も考えられる。この場合、紙状の対象物は、おそらくWO2005/088533(A1)に記載された方法にアクセス可能であろうが、欠落したポジションインジケータが、特定および/または認証のプロセスを困難にするであろう。エッジがポジションインジケータとして用いられた紙状の対象物も同様であり、エッジが時間と共にぼろぼろになる。
【0020】
検出される領域が大きくなればなるほど記録されるデータ量も大きくなる。一方で、対象物自身に光学コードで記憶可能なデータ量には限りがある。データベースのデータ量が増加するにつれて、コストが上昇すると共に、検出中に記憶されたデータセットにオンラインアクセスする場合、特定および/または認証速度が低下する。可能な限り小さい検出領域を用いた場合、この理由で有利かもしれない。しかし、検出領域が小さくなればなるほど、その位置を正確に求めることが困難になる。
【0021】
WO2005/088533(A1)に記載された方法は、結果的に、非常に確実な、対象物を特定するための偽造防止方法であるが、その実際的な利用において非常に多くの制限がある。
【0022】
ポジションインジケータを持たないか、可能性のあるポジションインジケータが検出領域から離れて位置している対象物に対して、上記方法を使用することができるのが望ましい。また、簡単に損傷するポジションインジケータのみが存在する対象物に対して、上記方法を使用することができるのが望ましい。検出領域のサイズが減少するような制限および複雑な位置測定無しに、上記方法を小さい検出領域で用いることができるのが望ましい。
【0023】
したがって、上記先行技術を発端として、原則として自身の表面または容量に関する性質により、実際にサイズ、形状および性質に依存しないで、上記方法にアクセス可能な特徴ある放射パターンに基く特定および/または認証に適している対象物を作るための解決方法を提供するという目的が生じる。
【発明の概要】
【0024】
驚いたことに、上記目的は、対象物に接続されると共に、対象物の表面領域を封鎖態様でマークする指定された領域を有するポジションインジケータによって、簡単かつ効果的に達成することができるということが判明した。
【0025】
そのため、本発明の対象は、対象物に配置するためのポジションインジケータであって、上記対象物の選択された表面領域を封鎖態様でマークするマーキング領域を少なくとも備える。
【0026】
表面領域を封鎖態様でマークするということは、対象物の表面領域が、他の全ての表面領域から明確に区別することができ、かつ、マークされた表面領域に属するか否かに関して、どんな疑念も生じない表面領域であるように、上記対象物の表面領域が本発明によるポジションインジケータにより強調され、他の表面領域に対して境界が定められるということを意味していると解される。従って、上記ポジションインジケータは、マーキング領域により、対象物の表面の領域をマークし、この領域は、特徴ある放射パターンを検出するために用いることを目的としている。本発明によるポジションインジケータは1以上のマーキング領域を備えることもできる。
【0027】
特徴ある放射パターンを検出するということは、対象物の領域に電磁放射線を照射して、この対象物から放射される放射線を適切な検出器により受信すると共に、記憶可能な信号に変換する方法を意味していると解される。以下、本明細書において、対象物を照射するために用いられる上記放射線を入力信号といい、対象物から放射される放射線を出力信号という。上記出力放射線は、反射性および/または散在性の放射線であってもよい。この場合、特徴ある放射パターンの検出は反射で達成される。すなわち、入力信号の発信源および出力信号の検出器が、対象物から見ると、同じ側に位置している。同様に、出力信号の検出が送信中に達成されることもあり得る。すなわち、入力信号の発信源および出力信号の検出器が、対象物から見ると、対象物の異なる側に位置していて、入力信号および出力信号の一部が対象物の一部を必ず通過する。特徴ある放射パターンの検出の例は、以下でさらに論じられる。
【0028】
上記ポジションインジケータは少なくとも一のエリアを備えていて、このエリアは、対象物の表面の一部とポジティブフィットで接触することができる。対象物の表面領域は、特徴ある放射パターンの検出のために平面タイプで構成されるのが好ましいので、本発明によるポジションインジケータはまた、少なくとも一の平面エリアを備える。
【0029】
本発明によるポジションインジケータのマーキング領域は、カットアウトの形式であるのが好ましい。そのため、このポジションインジケータは、エリアを備える。このエリアは、対象物の表面の一部と接触することができると共に、明確な方法で、かつ、封鎖態様で対象物の表面領域をマークするカットアウトを有している。この対象物の表面領域は、接触した場合にポジションインジケータと対象物との間のカットアウトの領域に位置している。
【0030】
本発明によるポジションインジケータの表面は、対象物のマークされた表面領域から電磁放射線が照射されるときに、好ましくは、異なった反応を示す。例えば、電磁放射線で照射する場合に、対象物が広い角度範囲でその電磁放射線を散乱させる紙状の対象物であるならば、ポジションインジケータの表面は、好ましくは、鏡面反射様式で設計されているか、放射される放射線が完全に、あるいは、実質上完全に吸収されるように構成されている。この利点は、特徴ある放射パターンを検出するときに、信号対雑音比(SN比)の増加を導く放射線が、可能なら、ポジションインジケータ自身から放射されない、あるいは、殆んど放射されないということである。
【0031】
好ましい一実施形態において、本発明によるポジションインジケータは、入力信号に対して少なくとも部分的に透明である層を備える。上記層は、以下、透明層という。出力信号が反射で測定される場合、透明層は同様に、出力信号に対して少なくとも部分的に透明である。
【0032】
上記透明層は、マーキング領域を有する。透明層の使用は、次の点で有利である。検出するための表面領域は、埃、傷および湿気等の環境の影響による損傷に対して、透明層により保護される。マークされた表面領域はこの透明層により覆われるが、透明性に起因して、特徴ある放射パターンの検出になおアクセス可能なままである。
【0033】
上記ポジションインジケータは、好ましくは、対象物の表面の一部に接続するための手段を備える。好ましい一実施形態において、ポジションインジケータは、例えば粘着ラベルの形式である。すなわち、ポジションインジケータは、対象物の表面の一部に接触する場合に、ポジションインジケータと対象物とを接続する接着層を備える。ポジションインジケータと対象物との間の接続は、着脱可能に、あるいは、着脱不可能に設計することができる。着脱可能接続(detachable connection)とは、対象物上の、あるいは、ポジションインジケータ上の先の接続の視覚的形跡を残すこと無しに、取り外すことができる接続である。着脱不可接続(non-detachable connection)とは、この接続を取り除く試みがなされるときに、対象物および/またはポジションインジケータが損害を被る接続である。着脱不可接続が力ずくで取り外された場合、取り外しが試されたことを示すはっきりとした視覚的形跡がポジションインジケータおよび/または対象物上に残される。
【0034】
上記ポジションインジケータは更なる特徴を備えることができる。好ましい一実施形態において、ポジションインジケータは、少なくとも1つの光学コードを備える。この光学コードは、例えば、対象物の固有性に関する情報を含むことができる。例として、光学コードは、デジタル形式でマークされた表面領域の特徴ある放射パターンを含むことができる。従って、対象物を特定するプロセスを大幅にスピードアップすることができる。それぞれの場合において、対象物が何か分からない場合、この対象物の特徴ある放射パターンを、対象物を特定するためにデータベースに記憶されていて、放射パターンがこの対象物の放射パターンに対して最も近いものである全ての対象物の放射パターンと比較する必要があるであろう(放射パターン数がn個である場合におけるいわゆる1:n比較)。対象物の固有性がすでに光学コードにより確定され得る場合、現在検出された対象物の放射パターンを用いるいわゆる1:1比較で、その対象物の放射パターンだけをチェックする必要がある。この1:1比較は、放射パターン数がn個(n>>1)である1:n比較よりも大幅に所要時間が少ない。
【0035】
本発明によるポジションインジケータは、任意の希望する形状にすることができる。例として、円形、楕円形、長円形、あるいは、n角形(n-angular)にすることもできる。本発明によるポジションインジケータのサイズは、好ましくは、10mmと10000mmとの間にある。
【0036】
本発明によるポジションインジケータは、表面領域を封鎖態様でマークするのに適している。そのため、本発明の目的はまた、対象物の表面領域を封鎖態様でマークするためのポジションインジケータの使用である。この目的を達成するために、本発明によるポジションインジケータは、着脱可能に、あるいは、着脱不可能に対象物に接続されている。好ましい一実施形態において、ポジションインジケータは、着脱不可能な様式で、対象物に接続されている。この好ましい実施形態において、ポジションインジケータは、好ましくは、同時にセキュリティ要素としての機能を果たす。ポジションインジケータを対象物から取り除こうとすることによって、ポジションインジケータは使い物にならない状態にされる。このポジションインジケータは、偽造に対するセキュリティをさらに増加させるために、透かし、特殊インク、ギョーシェパターン、マイクロスクリプトおよび/またはホログラム等の更なるセキュリティ特性(security features)を備えることができる。
【0037】
様々な機構(feature)およびこれらの組み合わせは、ポジションインジケータと対象物との間の接続を着脱不可能な状態にすることができる。例として、ポジションインジケータ内に分離層を取り入れてもよい。対象物を接着して接合するための接着剤層と分離層とは互いにマッチしていて、分離層を合わせて固定する力は、接着剤層によりポジションインジケータと対象物とを合わせて固定する力よりも弱い。ポジションインジケータを対象物から取り除こうとすることによって、接着剤層が対象物から分離されるよりも分離層が壊れるということがより起こり得る。従って、分離層は、既定の限界点を形成する。
【0038】
計画された分離を示す他の機構は、例えば、既定の温度限界を超える、および/または、既定の温度限界に達しない場合、色彩が不可逆的に変化する物質である。接着剤層は、限定された温度範囲(有効接着範囲(effective adhesive range))内でのみ接着力を働かせることができるということが知られている。低い温度では、接着剤は脆弱になり、その結果壊れやすくなる。高い温度では、接着剤は軟化する。これは、潜在的な偽造者が、接着剤が有効である範囲を超える、または、下回る温度変化によって、対象物からのポジションインジケータの分離を実行することを可能にさせる。そのため、本発明によるセキュリティ要素の場合における上述の試みは、計画された攻撃を示す、セキュリティ要素の不可逆的可視的変化(irreversible visible alteration)につながる。好ましくは、上記不可逆的色彩変化は、有効接着範囲の上限よりも少なくとも5ケルビン下、および/または、有効接着範囲の下限よりも少なくとも5ケルビン上で発生する。
【0039】
スタンプされた部分の導入はまた、分離を試みるときにポジションインジケータの分割を生じさせることによって、対象物からポジションインジケータの可逆性分離を妨げる。分離を試みるときにポジションインジケータに作用する力は、スタンプされた部分により意図的な方法で導かれ、ポジションインジケータの分割を生じさせる。この分割は、好ましくは、不可逆的であり、例えば、ポジションインジケータの全ての層を貫通しないでスタンプされた部分に基づいて達成され、分割の際には、スタンプされた部分が存在しない層が、分割の結果として、不可逆的かつ認識可能な分離(破壊)を経験する。
【0040】
上記ポジションインジケータは、好ましくは、特徴ある放射パターンを検出するために使用されることを目的としている表面領域を明確に強調するために用いられる。特徴ある放射パターンは、好ましくは、対象物を特定および/または認証するために検出される。この目的のために、対象物が次のように設定される。入力信号を照射する場合、特徴ある出力信号が対象物から放射され、対象物の明確な検出(特定)および/または対象物の固有性の測定(認証)のために、この出力信号を使用することができる。従って、本発明の他の目的は、特徴ある放射パターンを検出するための方法である。好ましくは、特定および/または認証のために、少なくとも以下のステップを備える。
(A)ポジションインジケータを対象物に設置して、明確な方法で、かつ、封鎖態様で、このポジションインジケータが上記対象物の表面領域をマークするステップ
(B)電磁放射線を上記マークされた表面領域へ照射するステップ
(C)上記対象物から放射される放射線を検出するステップ
(D)上記検出された放射線に基づいて、特徴のある放射パターンを求め、記憶するステップ
【0041】
ステップ(A)の設置は、ポジションインジケータおよび対象物の実施形態に応じて、当業者に周知の、物を接続するための技術、例えば、接着、積層法、溶着、はんだ付け、その他技術によって行われる。
【0042】
ステップ(B)の照射は、対象物の特性(nature)に応じて、照射時に対象物が特徴ある放射パターンを作り出す波長範囲における多色放射または単色放射に基づいて行われる。放射プロファイルの形式(点放射、線放射または領域放射)は、同様に、対象物および特徴ある放射パターンの特性にマッチする。
【0043】
対象物のランダム表面特性が、対象物の特定および/または認証のためにWO2005/088533(A1)に記載された方法で用いられる場合、マークされた表面領域は、好ましくは、線形ビームプロファイルを持った単色放射によってスキャンされる。対象物が、例えば、WO2009/036878(A1)に記載されているようなメタルマーキングプレートレットを有する場合、これらのランダム分布および/またはランダム配向を対象物の特定および/または認証のために用いることもできる。この目的のために、対象物は、メタルマーキングプレートレットが反射する波長範囲における多色電磁放射線によって照射され得る。この照射は、好ましくは、線形ビームプロファイルによるスキャン形式で行われる。詳細は、PCT/EP2009/000450に記載されている。
【0044】
例えば、US2007/0054120A1に記載されているように、対象物にランダムに発光ナノ粒子を分布させた場合、対象物におけるこれらの分布は、特定および/または認証のために用いられ得る。例として、励起波長を伴う放射によって、対象物を一部分において明るくすることができる。
【0045】
ステップ(C)の特徴ある放射パターンの検出およびステップ(D)の特徴ある放射パターンの記憶は、対象物の特性に応じて、そして、対象物から放射される放射線に応じて発生する。本明細書では、個別の場合において、特徴ある放射パターンを検出するためのそれぞれの方法を参照する(それに応じて、例えば、WO2009/036878(A1)、PCT/EP2009/000450、US2007/0054120A1を参照のこと)。
【0046】
一般に、入射する電磁放射線を電気信号に変換する光検出器は、放射線を検出するために用いられる。光検出器の例としては、フォトダイオード、フォトトランジスタ、CCDセンサ(CCD=電荷結合素子(charge-coupled device))がある。
【0047】
そしてまた、アナログからデジタルに適切に変換された後に、上記電気信号をデジタルファイルとしてデータベースに記憶する、あるいは、光学コード形式で対象物またはポジションインジケータ上に印刷することができる。
【0048】
対象物の後の特定および/または認証は、少なくとも以下のステップを備える。
(a)電磁放射線でマークされた表面領域を照射するステップ
(b)検出された放射線に基づいて特徴ある放射パターンを求めるステップ
(c)上記特徴ある放射パターンと、前段階以前に検出され、記憶された少なくとも1つの放射パターンとを比較するステップ
(d)ステップ(c)の比較の結果に応じて、対象物の特定および/または認証に関するメッセージを出力するステップ
【0049】
対象物の特定および/または認証は、好ましくは、マシンにより行われる。
【0050】
ステップ(B)、ステップ(C)およびステップ(D)に関してすでに記述した説明は、ステップ(a)およびステップ(b)に引用する。
【0051】
殆んどの場合、特徴ある放射パターンが前段階で確認された放射パターンに100%一致しないということが、ステップ(c)の比較に必要である。その理由は、例えば、対象物の表面は老化作用にさらされ、そして、特徴ある放射パターンは環境影響の結果として変化するからである。そのため、一般に、閾値Sが決められる。特徴ある放射パターンと前段階で確認された放射パターンとの間の一致度が、例えば、S以上である場合、一致しているものとみなされ、上記一致度がSより下である場合、比較しているデータセットは異なるものとみなされる。
【0052】
一般に、放射パターンは、例えばナンバーテーブル等の機械処理可能な形式で存在する。上記データセットは、完全なナンバーテーブルに基づいて、あるいは、ナンバーテーブルからの特性に基づいて比較され得る。このために、例えば、周知の「パターンマッチング」法を用いることができ、データセット間の類似点に対する検索を実行する(例えば、Image Analysis and Processing:8th International Conference, ICIAP '95, San Remo, Italy, September 13-15, 1995. Proceedings (Lecture Notes in Computer Science、WO2005/088533(A1)、WO2006/016114(A1)、C. Demant, B. Streicher-Abel, P. Waszkewitz, Industrielle Bildverarbeitung, Springer-Verlag, 1998, pages 133 ff、 J. Rosenbaum, Barcode, Verlag Technik Berlin, 2000, pages 84 ff、 US 7333641 B2、 DE10260642 A1、 DE10260638 A1、 EP1435586B1参照)。
【0053】
ステップ(d)において、ステップ(c)の比較の結果に応じて、対象物の特定および/または認証に関するメッセージが出力される。
【0054】
ステップ(d)において、例えば、対象物が本物か偽造物かに関して、通知をすることができる。光信号は、例えば、次のように用いることができる。ステップ(c)で比較されたデータセットが一致すると判断される場合、間違いなく偽造物ではなく、例えば、緑色の光が点滅する。一方、ステップ(c)で比較されたデータセットが一致しないと判断される場合、間違いなく偽造物であり、例えば、赤色の光が点滅する。別の方法として、人間の感覚で検出可能な音響信号または他の通知も考えられる。さらに、上記一致度は、プリンタやモニタ等を用いて出力することができる。
【0055】
本発明は、以下の図および例を用いて、これらに限定されることなく、さらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1(a),図1(b),図1(c),図1(d)は、本発明によるポジションインジケータの好ましい実施形態を概略的に示す平面図である。
【図2】図2(a)は、粘着ラベルとして構成された本発明によるポジションインジケータの好ましい実施形態を概略的に示す平面図であり、図2(b)は、図2(a)のA−A’破線から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1(a)、図1(b)、図1(c)および図1(d)は、本発明によるポジションインジケータの好ましい実施形態を概略的に示す。これらの実施形態は全て平面図で示されている。
【0058】
図1(a)は、マーキング領域2を表すカットアウトを有するポジションインジケータ1を示す。対象物上にポジションインジケータを配置することによって、明確な方法で、かつ、封鎖態様でマーキング領域2内に位置する対象物の表面領域が強調され、マークされる。
【0059】
図1(b)は、マーキング領域2として透明層を有するポジションインジケータ1を示す。対象物上にポジションインジケータを配置することによって、明確な方法で、かつ、封鎖態様でマーキング領域2の下に位置する対象物の表面領域が強調され、マークされる。同時に、対象物の表面領域は、有害な環境影響に対して防護される。
【0060】
図1(a)および図1(b)のポジションインジケータの表面3は、好ましくは、電磁放射線で照射する場合に、ポジションインジケータがマークする対象物の表面領域とは全く異なるか、あるいは、できうる限り異なる信号を出力するよう構成される。
【0061】
図1(c)は、透明層複合体として設計されたポジションインジケータを示す。印刷によって実現可能なラインマーキングは、透明層複合体の外枠をマークする。対象物上にポジションインジケータを配置することによって、明確な方法で、かつ、封鎖態様で透明層複合体の下およびマーキング4内に位置する対象物の表面領域が強調され、マークされる。同時に、対象物の表面領域は、有害な環境影響に対して防護される。図1(d)の例では、マーキングが透明層の外枠に配置されないが、ポジションインジケータ内の区切られた領域をマークする。接着剤層を設けている例えば二軸延伸ポリエステルのフィルムを透明層複合体として用いることができる。上記フィルムは、例えば商標TesaR−Filmの下、tesa SE社によって販売されている。
【0062】
図2(a)および図2(b)は、粘着ラベルとして構成された本発明によるポジションインジケータの好ましい一実施形態を概略的に示す。
【0063】
図2(a)は、一実施形態のポジションインジケータの平面図を示し、図2(b)は、図2(a)に示すA−A’間の破線から見た断面図を示す。
【0064】
上記ポジションインジケータは、3つの種類のスタンプされた部分、すなわち、ポジションインジケータのエッジ領域における放射状にスタンプされたセキュリティ部20と、ポジションインジケータ上に広がる波型にスタンプされたセキュリティ部21と、エッジ領域におけるスタンプされた外部輪郭部22とを有している。
【0065】
上記ポジションインジケータはさらに、対象物の特定に関する詳細を記録することができる光学コードを有している。
【0066】
上記ポジションインジケータは、層複合体の形状である。層順序(layer sequence)は、最下層をはじめとして、接着剤保護層10、接着剤層11、繊維性材料包含層12、印刷層13そして保護層14である。この実施形態において、繊維性材料包含層12は、分離を試みる場合に既定の破壊点を提供するための機能(分離層)だけでなく、印刷用インクを受け止めるための機能(印刷層)をも果たす。
【0067】
図2(b)に示される層順序は、次の例により実施され得る。下方領域が、3Mの特殊用紙7110(3M 7110 石版用紙(litho paper), 白)で形成されている。この特殊用紙は、接着剤保護層、接着剤層および繊維性材料包含層である層順序をすでに備える複合体である。接着剤層は、強力な粘着性アクリレート接着剤である。この接着剤の基板(例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン)に対する接着力は、メーカー情報によれば、繊維性材料包含層の強度よりも高い。そのため、この繊維性材料包含層は、分離を試みる場合に裂ける分離層としての役割を果たす。
【0068】
特殊用紙7110は、−40℃から175℃の範囲内で耐熱性を有する。この特殊用紙7110の艶消し表面は印刷することを可能にし、その結果、印刷用表面に光学コード(適切な場合、さらに印刷用イメージ)を提供する。
【0069】
特殊用紙7110上のプライマー(例えば、Indigo Topaz 10 Solution MPS-2056-42 by Hewlett Packard)は、印刷用インクの接着性を改善するために用いられ得る。色彩変化層および印刷層は、周知の印刷技術(例えば、デジタルプリント)を用いてプライマーに貼り付けられ得る。Flexo & Gravure ink社製のThermaFlag W/Bは、例えば、色彩変化層として適する。この色彩変化層は、約120℃を超えた場合、透明から黒に不可逆の色彩変化を引き起こす。この変化インクは、好ましくは、コード領域にのみ刷り込まれている。光学コードは、周知の印刷技術(例えば、デジタルプリント)によって変化インク上に印刷される。この複合体の封鎖は、保護層(例えば、UPM Raflatac社製のlaminate PET Overlam RP35)により形成され、周知の積層法を用いて貼り付けられ得る。
【符号の説明】
【0070】
1…ポジションインジケータ
2…マーキング領域
3…ポジションインジケータの表面
4…ラインマーキング
10…接着剤保護層
11…接着剤層
12…繊維性材料包含層
13…印刷層
14…保護層
20…放射状にスタンプされたセキュリティ部
21…波型にスタンプされたセキュリティ部
22…スタンプされた外部輪郭部
60…光学コード
【図1(a)】

【図1(b)】

【図1(c)】

【図1(d)】

【図2(a)】

【図2(b)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に配置するためのポジションインジケータであって、
対象物の表面の一部とポジティブフィットで接触することができる一のエリアと、
上記対象物の選択された表面領域を封鎖態様でマークするマーキング領域と
を少なくとも備えることを特徴とするポジションインジケータ。
【請求項2】
請求項1に記載のポジションインジケータにおいて、
上記マーキング領域は、カットアウトの形式であることを特徴とするポジションインジケータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポジションインジケータにおいて、
上記マーキング領域は透明層の形式であり、この透明層は、少なくとも電磁放射線の部分的範囲に対して、少なくとも部分的に透明であることを特徴とするポジションインジケータ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のポジションインジケータにおいて、
ポジションインジケータを対象物に接続するための手段を備えることを特徴とするポジションインジケータ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載のポジションインジケータにおいて、
粘着ラベルの形式であることを特徴とするポジションインジケータ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載のポジションインジケータにおいて、
上記マーキング領域を除いて、鏡面反射様式で設計されていることを特徴とするポジションインジケータ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載のポジションインジケータにおいて、
上記マーキング領域を除いて、可視光の範囲において電磁放射線を殆んど吸収することを特徴とするポジションインジケータ。
【請求項8】
対象物の表面領域を封鎖態様でマークするための、請求項1から7のいずれか1つに記載のポジションインジケータの使用。
【請求項9】
ポジションインジケータが上記対象物に着脱可能に接続されることを特徴とする、請求項8に記載のポジションインジケータの使用。
【請求項10】
ポジションインジケータが上記対象物に着脱不可能に接続されることを特徴とする、請求項8に記載のポジションインジケータの使用。
【請求項11】
特徴のある放射パターンを検出するための方法であって、
(A)ポジションインジケータを対象物に設置して、明確な方法で、かつ、封鎖態様で、このポジションインジケータが上記対象物の表面領域をマークするステップと、
(B)電磁放射線を上記マークされた表面領域へ照射するステップと、
(C)上記対象物から放射される放射線を検出するステップと、
(D)上記検出された放射線に基づいて、特徴のある放射パターンを求め、記憶するステップと
を少なくとも備えることを特徴とする方法。

【公表番号】特表2012−529062(P2012−529062A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512236(P2012−512236)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003025
【国際公開番号】WO2010/139396
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(504109610)バイエル・テクノロジー・サービシーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (75)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Technology Services GmbH
【Fターム(参考)】