ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を含有するアジュバント組成物
本発明は、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を含有するアジュバント組成物及び前記アジュバントを含有するワクチン用組成物に関し、より一層詳しくは安全性が確保されたポリγ−グルタミン酸とキトサンのイオン結合によるナノ粒子を含有するアジュバント組成物及び前記ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原とを含有するワクチン用組成物に関する。本発明に係るポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を含有するアジュバント組成物は、毒性及び副作用が殆どなく、ウイルス及び細菌性感染症に対するワクチンと癌に対する人体用または動物用予防及び治療用ワクチンに添加されて、抗体生成率を増加させる効果がある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を含有するアジュバント組成物及び前記アジュバントを含有するワクチン用組成物に関し、より一層詳しくは安全性が確保されたポリγ−グルタミン酸とキトサンのイオン結合によるナノ粒子を含有するアジュバント組成物及び前記ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原とを含有するワクチン用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アジュバント(adjuvant)は、抗原性を高めて、ワクチン開発に利用されたり、抗原に対する非特異的免疫反応を増強させて、治療及び予防等に利用される物質である。アジュバントは、抗原量が少ない時、抗原に対する免疫反応を迅速かつ強力に、そして長期間維持させる役割を果たすため、ワクチンを製造する際に用いられ、また特別なアジュバントを使ったり抗原の量を異ならせて、免疫反応を調節したり抗原に対する抗体の種類と亜型(subclass)等を調節することができるようにする。また、アジュバントは、粘膜免疫能誘導を増進するための目的で、特に免疫的に未熟であったり、高齢者において免疫反応を増強するため用いられる。
【0003】
多くのアジュバントは、数多くの天然物において多くの試行錯誤から発見された。最初の研究報告は、1925年フランスのRamonが食品に用いられるタピオカ(tapioca)というキャッサバ(Casaba)澱粉をジフテリア及び破傷風トキソイドと混合した際、抗原特異性及び抗体生成が効果的に増加すると発表した。以後、アルミニウムアジュバントの免疫増強効果が報告されて、免疫調節剤としてマイコバクテリア死菌を含むエマルジョン(emulsion)状の効果的なアジュバントが開発された。これは、FCA(Freund’s complete adjuvant)といわれ、非常に効果的な免疫調節剤として知られているが、反応性(reactogenic)が非常に高く、人体に適用するワクチンに用いるには適していなかった。そこで、マイコバクテリアが含まれないFIA(Freund’s incomplete adjuvant)が開発され、イギリスで許可を受けた。グラム陰性桿菌のエンドトキシンが、免疫増強効果を持つことが報告され、1974年Ellouz等は、ムラミルジペペプチド(muramyl dipeptide、MDP)の効果を確認した(Ellouz F. et al., Biochem. Biophys. Res. Coomun. 59:1317-25, 1974)。その後、レシチン、サポニン等も免疫性を増強させるアジュバントとしての可能性が報告された。
【0004】
理想的なアジュバントは、免疫増進効果以外にも、非毒性、良好な生体分解性、安定性、使いやすさ、購入のしやすさ、安価といった条件が必要である。現在、種々のアジュバントが報告されているが、実際臨床的に利用可能なものは数えるほどしかない。ワクチンに用いられるアジュバント開発において、最も重要なものは安全性であり、これついては、確実な研究資料によってサポートされなければならない。
【0005】
ワクチンは、治療効果だけでなく予防効果があって、99%まで疾病の発病率を抑えることのできる費用対応効果が最も大きい医薬品である。特に、最近ではワクチンの用途が、感染性疾病にだけ限定されるのではなく、癌、自己免疫疾患を含んだ各種難治性疾患に広げられており、治療ワクチンが登場することによってワクチン開発が大変重要であると認識されている。従って、アジュバント開発は、ワクチン関連製品としてワクチン開発と共に加速されており、さらに免疫関連疾患の範囲が広げられ、新しいアジュバントの開発が非常に有望な分野として認識されている。
【0006】
一方、本発明者等は、高分子量ポリγ−グルタミン酸及びその利用方法に対する物質特許(韓国特許登録第399091)、高分子量のポリγ−グルタミン酸を産生する耐塩性菌株バチルスサブチルスチョンクッジャン菌株を用いて、ポリγ−グルタミン酸を産生する方法に関する特許(韓国登録特許第500796号)を取得し、その他にポリγ−グルタミン酸を含有する抗癌組成物、アジュバント、免疫増強剤及びウイルス感染抑制に対する特許(韓国登録特許第496606号、韓国登録特許第517114号、韓国登録特許第475406号、及び韓国登録特許第0873179号)を取得した。また、ポリγ−グルタミン酸を含有するヒアルロニダーゼ阻害剤(韓国登録特許第582120号)及びポリγ−グルタミン酸の免疫増強を介した抗癌機能を明らかにすることによって[Poo, H.R. et al., Journal of Immunology, 178:775, 2007, Poo, H.R. et al., Cancer Immunol Immunother (published online:18 March 2009)]、ポリγ−グルタミン酸の医薬用途に対する研究が進められる等、ポリγグルタミン酸に対する持続的な用途開発を行い、多様な効能を明らかにした。
【0007】
一方、ポリマーナノ粒子、特に、ポリカプロラクトン(poly-caprolactone)のような生分解性ポリマーで製造されたナノ粒子の場合、生体適合性に優れており大いに関心が集まっている。しかし、このようなナノ粒子は、本質的に疎水性であり、親水性の薬品または抗原を伝達するには適さない短所を持っている。
【0008】
ポリγ−グルタミン酸ナノ粒子を生体内タンパク質伝達や、体液性免疫反応増進用に用いた例が報告されたが(Akagi, T. et al., J. controlled release, 108:226, 2005, Uto, T. et al., the J, Imunol., 178:2979, 2007)、ポリγ−グルタミン酸のみを単独でアジュバントとして用いた場合には、アジュバントとしての抗体生成能が足りず、抗原特異的免疫誘導反応をより一層強化させる必要がある。
【0009】
キトサンは、陽イオンの多糖類で、キチンを脱アセチル化させた形態であり、毒性がなく、生体適合性が優れた材料である。また、キトサンは、細胞間の密着結合(tight junction)を開くことのできる物質であり、粘膜薬剤伝達システムにおいて、非常に効果的な材料と知られている。多くのキトサンは、分子量が50〜2,000kDaであり、酢酸(acetic acid)溶液(pH4)で溶解する特性を持っている。しかし、医薬材料として適用可能になるためには、中性のpHで水溶液の状態であるべきで、生理学的pHで陽イオンの水溶液の状態を維持するためにはセルラーゼを処理して、分子量を下げる方法が必須である。
【0010】
ポリγ−グルタミン酸とキトサンのナノ粒子の複合体は、ポリγ−グルタミン酸とキトサンのイオン結合複合体として口腔投与されるインシュリンのキャリアとして用いられたり、DNA運搬用として用いられるが、免疫誘導反応に用いられた例は報告されていない(Lin, Y. et al., Biomacromolecules, 6:1104, 2005, Lin, Y. et al., Nanotechnology, 16:105102, 2007)。
【0011】
そこで、本発明者等は、前記従来技術の問題点を改善しようと鋭意努力した結果、ポリγ−グルタミン酸とキトサンのイオン結合で製造されたナノ粒子を含有したアジュバントを多くの抗原と共にマウスに投与した場合、ポリγ−グルタミン酸をアジュバントとして用いた場合より、抗体の生成が顕著に増加することを確認して、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、抗原特異的免疫誘導反応が優れたポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を含有するアジュバント組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原とを含有するワクチン用組成物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、前記ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原とを含有するワクチンの製造方法を提供することにある。
【課題を達成するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明はポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を含有するアジュバント組成物を提供する。
また、本発明は、前記アジュバント組成物をヒトを除いた動物に抗原と共に投与して、抗原に対する抗体生成率を増加させる方法を提供する。
また、本発明は、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原とを含むワクチン用組成物を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、(a)表面電荷が陰電荷の抗原とキトサンとをイオン結合させる工程、及び(b)前記キトサンと結合した抗原にポリγ−グルタミン酸を添加して、キトサンとポリγ−グルタミン酸とをイオン結合させて、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原とを含むワクチンを製造する工程を含むポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と表面電荷が陰電荷の抗原が結合されているワクチンの製造方法を提供する。
【0015】
本発明は、また(a)表面電荷が陽電荷の抗原とポリγ−グルタミン酸をイオン結合させる工程、及び(b)前記ポリγ−グルタミン酸と結合した抗原にキトサンを添加して、ポリγ−グルタミン酸とキトサンとをイオン結合させて、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原とを含むワクチンを製造する工程を含むポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と表面電荷が陽電荷の抗原が結合されているワクチンの製造方法を提供する。
【0016】
本発明はまた、前記ワクチン用組成物をヒトを除いた動物に投与して、抗原に対する抗体生成率を増加させる方法を提供する。
本発明の他の特徴及び具現例は、以下の詳細な説明及び添付された特許請求の範囲からより一層明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の電子顕微鏡写真を示した。
【図2】抗原タンパク質の混合順により、タンパク質導入率を確認するために、FITC標識されたOVAが導入されたポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の共焦点レーザー蛍光顕微鏡写真である。
【図3】OVA抗原に対する体液性免疫反応に及ぼす影響を観察するために、OVAとPGA分子量毎に製造されたポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を混合して、マウスに注射後、OVA特異抗体生成程度をOVA特異的血清IgGを測定して確認した結果を示した。
【図4】OVAと電荷によるポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を混合して、マウスに注射後、OVA特異抗体生成程度を確認して、Freund adjuvantとの比較のために、OVA特異的血清IgG生成程度を測定した結果を示した。
【図5】ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子によるマウス脾臓内T細胞のOVAに対する細胞性免疫反応を調べるために、分子量毎PGAを利用して、製造されたPGAキトサンナノ粒子によるIFN−γを分泌するCD8+ T細胞の活性化程度をFACSで分析した結果を示した。
【図6】混合順により製造されたポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子による樹枝状細胞とT細胞の混合比により活性化したT細胞を確認するために、IFN−γを分泌するCD8+T細胞の分布をFACSで分析した結果を示した。
【図7】AIタンパク質とポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を混合して、マウスに皮下注射または鼻腔内投与後、AIタンパク質特異抗体生成程度を確認するために、AI特異的血清IgGを測定した結果を示した。
【図8】ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の中和抗体誘導能を確認するために、HI(Haemagglutination Inhibition)テスト法を用いて、マウス血清での抗体力価を測定した結果を示した。
【図9】ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の抗体生成能を確認するために、皮下注射または鼻腔内投与後、ウイルスを感染させたマウスの感染経過日に伴う死亡個体数変化を示したグラフである。
【図10】インフルエンザワクチン抗原とポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を混合して、マウスに筋肉注射した後、インフルエンザワクチン抗原特異抗体生成程度を確認するために、ワクチン抗原特異的血清IgGを測定した結果を示した。
【図11】インフルエンザワクチン抗原とポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の抗体生成能を確認するために、筋肉注射後ウイルスを感染させたマウスの感染経過日に伴う体重変化を示したグラフである。
【図12】インフルエンザワクチン抗原とポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の抗体生成能を確認するために、筋肉注射後ウイルスを感染させたマウスの感染経過日に伴う死亡個体数変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
一つの観点において、本発明は、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を含有するアジュバント組成物及びポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原とを含むワクチン用組成物に関する。
【0019】
本発明において、前記ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子は、ポリγ−グルタミン酸の余分のカルボキシル(carboxyl)反応基の陰電荷とキトサンのアミノ(amino)反応基がプロトン化されながらできた両電荷間の静電気引力(electrostatic interaction)により形成されるナノ粒子を用いた。
【0020】
本発明に係るポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子は、人体に有害なタンパク質間の架橋物質なしに単純な静電気的引力で製造されて、ナノ粒子の安全性及び有効性が非常に高く、アジュバントとして用いるのに適している。
【0021】
ポリγ−グルタミン酸は、D−、及びL−グルタミン酸(glutamic acid)がγ結合を介して連結した粘液性のアミノ酸高分子であり、バチルス属菌株から作られる天然アミノ酸高分子素材で、本発明の一様態において、前記ポリγ−グルタミン酸は、バチルスサブチルスチョンクッジャン菌株(Bacillus substilis chungkookjang、KCTC 0697BP)を発酵させて製造し、前記バチルスサブチルスチョンクッジャン(KCTC 0697BP)により産生されたポリγ−グルタミン酸の平均分子量は、1〜15,000kDaであった。
【0022】
本発明において、前記ポリγ−グルタミン酸は、産生されたポリγ−グルタミン酸を適当な方法で切断して、所望の分子量に調整して用いることができ、また適当な方法で、所望の分子量毎に分離し、回収して用いられる。
【0023】
本発明に係るポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を含有するアジュバントは、バチルスサブチルスチョンクッジャンが発酵産生するパイオポリマーであるポリγ−グルタミン酸及びキトサンを利用して、化学的結合でなく単純イオン結合によって製造されて、安全性、生体適合性、及び抗体生成率が優れた特徴を持つアジュバント素材である。
【0024】
本発明に係るポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子製造に用いられる前記ポリγ−グルタミン酸の分子量は、好ましくは50kDa〜15,000kDaで、ポリγ−グルタミン酸の分子量が50kDa未満の場合、免疫増強機能が低くなる問題があり、ポリγ−グルタミン酸の分子量が15,000kDa以上の場合には効能には差はないが、粘度が増加するという問題が生じる。
【0025】
本発明において、キトサンの分子量は好ましくは500Da〜1,000kDaで、キトサンの分子量が500Da未満の場合、ナノ粒子製造が困難であるという問題があり、キトサンの分子量が1000kDa以上の場合には中性の水溶液状態で溶解度が低下するという短所がある。
【0026】
本発明において、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の製造において、ポリγ−グルタミン酸の比を高めて、製造されるナノ粒子の表面電荷が陰電荷を持つナノ粒子を製造することができる。
【0027】
本発明において、前記ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の表面電荷は、陰電荷であってもよい。
【0028】
本発明に係るポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子は、化学的方法でない単純イオン反応によって製造されるナノ粒子で、毒性が低く及び安全性も優れている。
本発明に係るポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を含有するアジュバント組成物において、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子は、ワクチン組成物乾燥重量100重量部に対し、乾燥重量0.001〜5重量部で含有することを特徴とし、好ましくは乾燥重量0.01〜3重量部で含有することができる。仮に、ワクチン組成物乾燥重量100重量部に対し、乾燥重量0.001重量部未満で含有させる場合、抗体生成機能を期待できず、乾燥重量5重量部を超えるときには作用には差がないが、粘性が過度に増加するという問題が生じる。
【0029】
本発明において、ワクチン用組成物に含まれる抗原は、タンパク質、ペプチド、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ウイルス、抗ウイルス剤、抗腫瘍剤、抗生物質及び抗炎症剤からなる群から選択されてもよい。
【0030】
本発明において、前記ワクチン用組成物は鳥インフルエンザウイルス、豚インフルエンザウイルス及び新種インフルエンザウイルスからなる群から選択されたいずれか一つ以上のウイルスによる疾病の予防用または治療用であることを特徴とし、子宮頸部癌、皮膚黒色腫、前立腺癌、結腸癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、頭頸部癌、外陰癌、膀胱癌、脳腫瘍及び神経膠腫からなる群から選択されたいずれか一つ以上の疾病の予防用または治療用であってもよい。
【0031】
他の観点において、本発明は、(a)表面電荷が陰電荷の抗原とキトサンとをイオン結合させる工程、及び(b)前記キトサンと結合した抗原にポリγ−グルタミン酸を添加して、キトサンとポリγ−グルタミン酸とをイオン結合させて、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原とを含むワクチンを製造する工程を含むポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と表面電荷が陰電荷の抗原が結合されているワクチンの製造方法に関する。
【0032】
本発明において、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の製造において、結合しようとする抗原またはウイルス等が陽電荷を持つ場合、ポリγ−グルタミン酸を先に結合後、キトサンを結合させて、抗原またはウイルス等が陰電荷を持つ場合、キトサンと先に結合後、ポリγ−グルタミン酸と混合して、製造することによってより効果的なアジュバントとしての機能をもつことができる。
【0033】
また他の観点において、本発明は、(a)表面電荷が陽電荷の抗原とポリγ−グルタミン酸をイオン結合させる工程、及び(b)前記ポリγ−グルタミン酸と結合した抗原にキトサンを添加して、ポリγ−グルタミン酸とキトサンとをイオン結合させて、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原とを含むワクチンを製造する工程を含むポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と表面電荷が陽電荷の抗原が結合されているワクチンの製造方法に関する。
【0034】
また他の観点において、本発明は、ヒトを除いた動物に前記アジュバント組成物を抗原と共に投与したりワクチン用組成物を投与して、抗原に対する抗体生成率を増加させる方法に関する。
【0035】
本発明において、前記投与は、皮下注射、筋肉内注射、皮内注射、腹腔内注射、鼻腔内投与、口腔投与、経皮投与及び経口投与からなる群より選択されたいずれか一つの方法で行。
【0036】
本発明において、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を含有するアジュバント組成物またはワクチン用組成物に含まれる担体、賦形剤及び希釈剤としてはラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニールピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油が挙げられる。製剤化する場合には、通常用いる充鎮剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤等の希釈剤または賦形剤を用いて調剤される。非経口投与のための製剤には滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、油剤、凍結乾燥製剤、座薬が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステル等が用いられる。座薬の基剤としては、ウィテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、クリセロゼラチン等が用いられる。
【0037】
本発明のポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子含有アジュバントは、投与対象の年齢、性別、体重等により投与量が異なり、投与経路、疾病の程度、体重等によってもワクチンの投与量が増減される。
【0038】
また、本発明のポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子は、癌、特に皮膚黒色腫、前立腺癌、結腸癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、頭頸部癌、外陰癌、膀胱癌、脳腫瘍及び神経膠腫等だけでなく、非伝染性慢性疾病を予防及び治療に用いられる予防用あるいは治療用ワクチンを含む医薬組成物に添加して用いられる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例を挙げて詳述する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは当業者において通常の知識を有する者にとって自明である。即ち、下記工程は一つの例示として説明されるだけであり、本発明の範囲がこれらに限定されない。
【0040】
《実施例1:超高分子量ポリγ−グルタミン酸の製造》
ポリγ−グルタミン酸産生用基本培地(3%のL−グルタミン酸が添加された培地、グルコース3%、(NH4)2SO4 1%、KH2PO4 0.27%、Na2HPO4.12H2O 0.17%、NaCl 0.1%、クエン酸ナトリウム0.5%、ソイペプトン0.02%、MgSO4.7H2O 0.7%、ビタミン水溶液10mL/L、pH6.8)を滅菌、準備して、5L ジャーファーメンター(working vol. 3L)にバチルスサブチルスチョンクッジャン菌株(Bacillus subtilis var chungkookjang、KCTC 0697BP)の種菌培養液(LB medium)を4%接種して、発酵させた。攪拌速度は、500rpm、空気注入速度は1.0vvmにして、37℃で48時間発酵させた後、小型フィルタープレス(硅藻土celite 1%)を利用して、菌体を取り除いてポリγ−グルタミン酸含有試料液として用いた。
【0041】
ポリγ−グルタミン酸含有試料液に2N硫酸溶液を利用してpH2.0に調整後、10℃下で15時間静置させて、ポリγ−グルタミン酸沈殿物を取得した。これを十分量の冷却蒸溜水(10℃以下)で洗浄した後(pH3.5以上)、ヌッチェろ過器を利用してポリγ−グルタミン酸沈殿物を取得後、凍結乾燥して、超高分子量ポリγ−グルタミン酸を製造した。
【0042】
《実施例2:ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の製造》
実施例1で製造されたポリγ−グルタミン酸とキトサン(Amicogen Co.,Korea)を利用して、アジュバントとして用いるナノ粒子を製造した。
使用するポリγ−グルタミン酸及びキトサンは0.85%NaCl溶液に溶解して用いた。ポリγ−グルタミン酸とキトサンの混合比を1:1〜8:1の割合でキトサン溶液にポリγ−グルタミン酸溶液を混合して、表面電荷が陰電荷を持つポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を製造した。製造されたナノ粒子は、DLS(Dynamyc Light Scattering)を利用して、粒度及び表面電荷を測定した。その結果、200〜300nm大きさのナノ粒子が製造されることを確認し、ナノ粒子の表面電荷が−20.8mVと測定された。また、製造されたナノ粒子の表面形態は電子顕微鏡を用いて観察した(図1)。
【0043】
【表1】
【0044】
《実施例3:対象タンパク質の混合順によるポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の製造》
実施例2で確認されたポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子にタンパク質を導入させ、該当タンパク質に対する抗体生成率を増加させるためのアジュバントとして機能するか否かの検証のために、該当タンパク質のPI値を検討して、混合順によるナノ粒子を製造した。まずpI値が5.2であるOVA(SIGMA,USA)タンパク質に蛍光物質のFITCを結合させたOVA−FITCをポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子に結合させた。結合方法でポリγ−グルタミン酸とOVA−FITCをまず混合した後、キトサンを混合して製造した試料とキトサンとOVA−FITCをまず混合した後、ポリγ−グルタミン酸を混合して製造したナノ粒子二種類を製造して、蛍光顕微鏡によってOVAの結合の程度を確認した。
【0045】
その結果、図2に示したようにキトサンとOVA−FITCをまず混合した後、ポリγ−グルタミン酸を混合した試料でナノ粒子表面及び内部にさらに明るい蛍光を示した。これは、OVAが中性pHで陰電荷(negetive charge)を持つため陽電荷(positive charge)を持つキトサンとまず結合した後、ポリγ−グルタミン酸を結合させて製造した試料でさらに多いOVAがナノ粒子に導入されたことを確認した。
【0046】
《実施例4:ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子のOVA特異的抗体生成増進》
本実施例では本発明のポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子が、OVA抗原に対して特異的免疫増進効果を示すのか調べるために、抗体特異的な免疫反応中、特に抗体産生と関連があるB細胞による体液性免疫反応(humoral immuneresponse)に及ぼす影響を調べた。
【0047】
まず、対照群としてはOVA(100μg)を分子量5,000kDaのポリγ−グルタミン酸と混ぜてC57/BL6マウス腹腔に注射し、実験群として分子量50kDa、500kDa、2,000kDa、5,000kDa、7,000kDaのポリγ−グルタミン酸とキトサンとを混合して製造したナノ粒子にOVA(100μg)を混ぜて、腹腔に注射した。
【0048】
また、対象タンパク質の混合順により、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を製造したものは、ポリγ−グルタミン酸の分子量を7,000kDaを用いてナノ粒子を製造した。ナノ粒子の混合順は、ポリγ−グルタミン酸とキトサンとを先に混合後、OVAを入れたものと、キトサンをOVAと混合した後、ポリγ−グルタミン酸を入れたものを用いた。対照群として、OVAをポリγ−グルタミン酸とともに、又はCFAとともに注射した。
【0049】
週に一回ずつ2回の腹腔注射後、3週目にマウス血清を採取して、血清中のOVAに対する抗体の力価(titer)をELISA(Enzyme linked immunosorbent assay)法で測定した。
【0050】
前記ELISA法は、OVA(0.5μg/mL)がコーティングされたプレートをPBS/5%スキムミルクを用いて、ブロッキングした後、対照群及び実験群血清を一連の濃度の希釈率で希釈し、37℃で培養した。その後、西洋わさびパーオキシダーゼ標識マウスIgG抗体(Fcに対して特異的である)を添加した。前記培養器で保管する時間はブロッキングとマウスIgG抗体を入れる過程は、1時間とし、血清は2時間保管した。前記それぞれの工程後には、PBS/0.05%Tween20を用いて、3回洗浄した。基質としては、TMB(Tetramethylbenzidine、BD Biosciences,USA)100mLを添加して、反応を行わせた後、450nmでの吸光度をELISAリーダーで測定した。
【0051】
その結果、図3に示したように、分子量毎のポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子をOVAと共に注射したマウスにおけるOVAに対する抗体力価は、OVAとポリγ−グルタミン酸を混ぜて注射したマウスにおけるOVA抗原に対する抗体力価より顕著に高く現れた。
【0052】
また、図4に示したように、対象タンパク質の混合順によるものは、キトサンをポリγ−グルタミン酸と混合してOVAを入れたナノ粒子と、キトサンをOVAと先に混合した後、ポリγ−グルタミン酸を入れたナノ粒子の抗体力価は同様な抗体力価であった。
【0053】
《実施例5:ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の細胞媒介性免疫反応増進》
ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子によるマウス脾臓内T細胞のOVAに対する細胞性免疫反応を調べた。実施例4で処理したマウスをグループ当り5匹ずつを選択して、それぞれのマウスから脾臓を摘出して、滅菌されたペトリディッシュに前記脾臓組織を移した。セルストライナー(cell strainer)を用いて、前記脾臓をこすりつけ、組織皮膜から細胞を分離した。前記ペトリディッシュ内の全ての内容物を15mLチューブに移して、RPMI培地で充填した後、1,500rpmで5分間遠心分離した後、上澄液を取り除いたペレットに赤血球溶血バッファー(red blood cell lysing buffer、sigma aldrich,Germany)を3mL入れて37℃水槽で10分間放置して、赤血球を溶血させた。チューブに含まれた細胞をPBSで洗浄した後、RPMI1640培地に浮遊させて、脾臓細胞(splenocyte)を分離した。分離した脾臓細胞を1x106cells/mLで24ウエルプレートに敷いて、golgi plug 2μLとMHCクラスI拘束OVAペプチドを1μg/mLの濃度で12時間処理した。その後、T細胞の表面分子であるCD8に対する特異的抗体(PE-conjugated anti-mouse CD8)を利用して、4℃で1時間染色した後、サイトフィックス/サイトパーム(Cytofix/Cytoperm)キット(BD Biosciences,USA)で細胞に穴を開けて、IFN−γに特異的な抗体(FITC conjugated anti-mouse IFN-γ)で細胞内部のIFN−γを染色した。
【0054】
その結果、図5に示したように、分子量毎のポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子が対照群に比べてIFN−γを分泌するCD8+T細胞の活性化を促すことを確認した。
【0055】
また、対象タンパク質の混合順によりナノ粒子を製造したものは、図6に示したように、キトサンをOVAと混合した後にポリγ−グルタミン酸を入れたナノ粒子が、ポリγ−グルタミン酸にキトサンを混合した後にOVAを添加したナノ粒子よりIFN−γを分泌するT細胞の活性化誘導能がより大きいことを確認した(図6)。
【0056】
《実施例6:ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子のAIタンパク質に対する細胞媒介性免疫反応増進》
本実施例では、本発明のポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子が鳥インフルエンザウイルス(Avian influenza virus、AIV)特異抗原タンパク質であるHA(hemagglutinin)タンパク質に対し特異的免疫増進効果を示すか調べるために、抗体特異的な免疫反応中、特に抗体産生と関連があるB細胞による体液性免疫反応に及ぼす影響を調べた。
【0057】
実験に用いたHAタンパク質は、鳥インフルエンザウイルス[A/chicken/Korea/IS2/2006(H5N1)](Yong-Jeong Leeet al. Emerging Infectious Diseases. 2008. 14:487-490)の中和抗体に対する主要エピトープが存在すると知られるHAタンパク質でありGenbank accession No.EU233683に該当する塩基配列を持つ遺伝子をPCRで合成して、大腸菌発現ベクター(pRSET)に挿入させて、組み換え抗原タンパク質を大腸菌で発現させて、精製して用いた(Langzhou Song et al. PLoS ONE, 2008. e2257)。
【0058】
対照群としては、HAタンパク質(7.128μg)を単独で皮下注射または鼻腔内投与し、7,000kDaのポリγ−グルタミン酸とキトサンを混合して製造したナノ粒子にHAタンパク質(7.128μg)を混ぜて、皮下注射または鼻腔内投与した。
最初、皮下注射または鼻腔注射後、1週毎にマウス血清を採取して、血清中のHAタンパク質に対する抗体の力価をELISA法で測定した。
【0059】
前記ELISA法は、HAタンパク質がコーティングされたプレートをPBS/5%牛胎児血清を用いてブロッキングした後、対照実験群血清を一連の濃度の希釈率で希釈し、インキュベーションした。その後、西洋わさびパーオキシダーゼ標識マウスIgG抗体(Fcに対して特異的である)を添加した。前記全てのインキュベーションは、37℃で1時間行い、前記それぞれの工程後には、PBS/0.05%Tween20を用いて3回洗浄した。基質としては、ABTS(2,2−azinobis(3−ethylbenzthiazolinesulfonic acid))1mg/mLを添加して、反応を行わせた後、450nmにおける吸光度を30分後ELISAリーダーで測定した。
【0060】
その結果、図7に示したように、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子をHAタンパク質と共に皮下注射または鼻腔内投与したマウスにおけるHAタンパク質に対する抗体力価は、HAタンパク質だけを皮下注射または鼻腔内投与したマウスにおける抗体力価がより高く現れた。
【0061】
《実施例7:ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の中和抗体誘導能》
各グループ毎のマウス血清における抗体力価測定は、下記のHIテスト法で測定した。
全ての血清は、ビブリオコレラから抽出したRDE(receptor-destroying enzyme)を血清サンプル体積対比1:3で処理した後(例えば、血清10μLにRDE30μL添加)、37℃培養器で18〜20時間培養した。血清内の非特異的な受容体の活性を取り除いたサンプルを96ウエル丸底プレートで25μLずつ順に2進希釈した。次に、血清サンプルに同じ体積の4HAUウイルスを入れて、37℃培養器で30分間反応させて、最後に0.5%鶏赤血球が含まれたPBSを50μLずついれた後、室温で40分間反応させた。力価は希釈された50μL範囲で計算された値で、log10N=10NでN値で表記した。
【0062】
その結果、図8に示したように、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子とAIタンパク質を皮下注射及び鼻腔内投与した実験群で、ウイルスに対する抗体力価が増加した。
【0063】
《実施例8:ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子のウイルスに対する免疫増強効果》
本実施例では、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の鳥インフルエンザウイルスに対する免疫増強効果を調べるために、インフルエンザウイルスを感染させた実験動物の斃死を確認した。
【0064】
(1)ウイルスの準備
病原体として使われたインフルエンザウイルスは忠北(チュンブク)大学医科大学微生物学実験室崔ヨンギ教授から分譲された、マウスにおいて高病原性を示すH1N1インフルエンザウイルス株(A/Puerto Rico/8/34(H1N1))をMadin−Darby canine kidney(MDCK) cellで増幅した後、実験に用いて、実験動物としては6周齢の雌Balb/Cマウスを用いた。
分譲されたウイルスの純粋分離は次のとおり実施した。
【0065】
一次的に分離したウイルスを抗生剤が入っているPBSに希釈して、10日齢となった白色産卵鶏の有精卵に接種した後、37℃で48時間静置培養した後、有精卵の腰髄を取って増幅されたウイルスを用いた。
次に、6ウエル細胞培養プレートでペニシリンとストレプトマイシンと5%牛胎児血清(fetal bovine serum、FBS)が含まれたalpha−MEM(minimun essential medium、Gibco,USA)培地で育ったMDCK cellをPBSで3度洗浄をして、ペニシリンとストレプトマイシン(以下P/S)は含むがFBSが入っていない培地で希釈して、各ウエルにウイルスを希釈してから感染させた後、5%二酸化炭素が充填された37℃細胞培養器で1時間培養した。FBSが入っていない0.1%TPCK(N-alpha-tosyl-L-phenylalanyl chloromethyl ketone)処理トリプシンEDTAとP/Sが含まれたalpha−MEM培地を各ウエルに入れ、細胞培養器で培養した。培養24時間後、細胞培養プレートをPBSで洗浄して、培地を含んでいる0.1%ノーブルアガーを用いて固定した。
【0066】
培養されたプラックを予め準備されたMDCK cellが培養された24ウエルプレートに各ウエル当1個のプラックを接種してFBSが入っていない0.1%TPCK処理トリプシンEDTAとP/Sが含まれたalpha−MEM培地を各ウエルに入れて細胞培養器で培養した。48時間後、各ウエルの培地を取って、遠心分離して上澄液を前記同様の方法で準備されたMDCK cellフラスコに感染させた後、48時間から36時間培養して得られた培養液を遠心分離して、上澄液をマイクロチューブに移して−80℃低温冷凍庫に動物実験前まで保管した。
【0067】
(2)動物実験
まず、対照群としては、インフルエンザウイルスを単独で鼻腔内投与または皮下注射したマウスを用いて、実験群はポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子とAI抗原タンパク質を混合し皮下注射または鼻腔内投与した後、翌日インフルエンザウイルスを投与した。
ウイルスの感染は、実験動物にジエチルエーテルを用いて30秒間麻酔した後、ウイルス30μLを各マウスに鼻腔を通して、1.25×105EID50投与した。
その結果、図9に示したように、対照群はウイルス投与後8日目に全例死んだが、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子とAIタンパク質混合投与群の場合、11日経過後の間、全て生存した。これは、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子によってAIタンパク質に対する抗体生成を誘導して、ウイルス感染を抑制することによって、個体が生存するようになったものと判断される。
【0068】
《実施例9:ポリγ−グルタミン酸−キノサンナノ粒子のインフルエンザウイルスに対する免疫増強効果》
本実施例では、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子のインフルエンザウイルスに対する免疫増強効果を調べるために、インフルエンザワクチンに対するポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子のアジュバント効果を確認した。
【0069】
(1)インフルエンザワクチン
抗原として用いられたインフルエンザワクチンは、H1N1インフルエンザウイルス株(A/California/07/09(H1N1))ワクチン抗原を用いた。
(2)動物実験
対照群としてはPBSだけを筋肉注射したマウスを用い、実験群はインフルエンザワクチン(0.2μg)だけを筋肉注射したマウスとインフルエンザワクチン(0.2μg)とAlumアジュバントを混合して、筋肉注射したマウス、及びインフルエンザワクチン(0.2μg)とポリγグルタミン酸−キトサンナノ粒子(800μg)を混合して、筋肉注射したマウスを用いた。
【0070】
接種方法は、2週間隔(0日、及び14日)で2回マウスに筋肉注射をし、各々接種後14日目に血清を採取して、血清中のインフルエンザワクチン抗原に対する力価をELISA(Enzyme linked immnosorbent assay)法で測定した。
【0071】
ELISA法は、インフルエンザワクチン抗原がコーティングされたプレートをPBS/1%BSAを用いてブロッキングした後、全ての対照群、実験群血清を一連の濃度の希釈率で希釈し、インキュベーションした。その後、西洋わさびパーオキシダーゼ標識マウスIgG抗体、IgG2a抗体、及びIgG1抗体を各々用いた。前記全てのインキュベーションは、37℃で1時間行い、それぞれの工程後には、PBS/0.05%Tween20を用いて、3回ずつ洗浄した。基質としては、TMB(3,3’,5,5’tetramethylbenzidine)A溶液とB溶液の1:1混合溶液100μLを添加して、反応を行わせた後、0.5N H2SO4溶液50mLを入れて、反応を停止させた後、450mLにおける吸光度をELISAリーダーで測定した。
【0072】
その結果、図10に示したように、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子をインフルエンザワクチン抗原と共に筋肉注射したマウスにおけるワクチン抗原に対する抗体力価は、インフルエンザワクチンだけを注射またはAlumアジュバントと混合して注射したマウスにおける抗体力価より高く現れた。
【0073】
《実施例10:ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子のインフルエンザウイルスに対する中和抗体誘導能》
各グループ毎のマウス血清における抗体力価測定は、下記HI(Hemagglutination Inhibition)テスト法で測定した。
【0074】
全ての血清は、ビブリオコレラから抽出したRDEを血清サンプル体積対比1:10で処理した後、37℃培養器で18時間インキュベーションした。血清内の非特異的な受容体の活性を取り除いたサンプルを96ウエル丸底プレートで25mLずつ順に2倍に希釈した。次に、血清サンプルに同じ体積の4HAUウイルス(A/California/04/09(H1N1))を入れて、室温で30分間反応させて、最後に0.5%七面鳥赤血球が含まれたPBSを50mLずついれた後、室温で30分間反応させた。力価は希釈された50mL範囲で計算された値で、log10N=10NでN値で表記した。
【0075】
その結果、表2に示されたように、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子とインフルエンザワクチン抗原を注射したマウスでインフルエンザワクチンだけを注射したマウスとAlumアジュバントを混合注射したマウスよりインフルエンザウイルスに対する抗体力価が、各々5〜6倍程度増加した。
【0076】
【表2】
【0077】
《実施例11:ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子のインフルエンザウイルス感染に対する抵抗性》
各グループ毎の最後のワクチン注射後、14日目にインフルエンザウイルス(A/California/04/09(H1N1))を投与した。
ウイルス感染は、実験動物に麻酔をかけた後、各107.25 EID50のウイルス30μLずつ鼻腔を通して投与した。
【0078】
その結果、図11及び図12に示されたように、ワクチンだけ筋肉注射した群やAlumアジュバントとワクチンを混合注射した群は、ウイルス感染後2日目から体重が減少したが、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子とインフルエンザワクチン混合注射群の場合、ウイルス感染による体重減少が起きなかった。また、対照群は、ウイルス投与後5日目全量が死んだが、ポリγ−グルタミン酸−キノサンナノ粒子とインフルエンザワクチン混合注射群の場合、14日目まで全て生存した。しかし、ワクチンだけ投与したグループとAlumアジュバントとワクチンを混合注射群は50%だけ生存した。
【0079】
これは、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子によって、インフルエンザワクチンに対する抗体生成を誘導して、ウイルス感染を抑制することによって個体が生存するようになるものと判断される。
【産業上の利用の可能性】
【0080】
本発明に係るポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を含有するアジュバントは、安全性が確保された天然素材の単純イオン結合で製造されて、毒性及び副作用が殆どなく、免疫原性が低い抗原と共に用いて、高い抗体価を示され、アジュバント組成物及び前記アジュバントを含有するワクチン用組成物として用いられる。また、導入される抗原及びウイルスの表面電荷によりポリγ−グルタミン酸とキトサンの混合順を調整することによって抗原とナノ粒子の結合率を高め、より効果的な抗体価が示される。
【0081】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当業界における通常の知識を持った者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施態様に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲とこれらの等価物により定義されると言える。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を含有するアジュバント組成物及び前記アジュバントを含有するワクチン用組成物に関し、より一層詳しくは安全性が確保されたポリγ−グルタミン酸とキトサンのイオン結合によるナノ粒子を含有するアジュバント組成物及び前記ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原とを含有するワクチン用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アジュバント(adjuvant)は、抗原性を高めて、ワクチン開発に利用されたり、抗原に対する非特異的免疫反応を増強させて、治療及び予防等に利用される物質である。アジュバントは、抗原量が少ない時、抗原に対する免疫反応を迅速かつ強力に、そして長期間維持させる役割を果たすため、ワクチンを製造する際に用いられ、また特別なアジュバントを使ったり抗原の量を異ならせて、免疫反応を調節したり抗原に対する抗体の種類と亜型(subclass)等を調節することができるようにする。また、アジュバントは、粘膜免疫能誘導を増進するための目的で、特に免疫的に未熟であったり、高齢者において免疫反応を増強するため用いられる。
【0003】
多くのアジュバントは、数多くの天然物において多くの試行錯誤から発見された。最初の研究報告は、1925年フランスのRamonが食品に用いられるタピオカ(tapioca)というキャッサバ(Casaba)澱粉をジフテリア及び破傷風トキソイドと混合した際、抗原特異性及び抗体生成が効果的に増加すると発表した。以後、アルミニウムアジュバントの免疫増強効果が報告されて、免疫調節剤としてマイコバクテリア死菌を含むエマルジョン(emulsion)状の効果的なアジュバントが開発された。これは、FCA(Freund’s complete adjuvant)といわれ、非常に効果的な免疫調節剤として知られているが、反応性(reactogenic)が非常に高く、人体に適用するワクチンに用いるには適していなかった。そこで、マイコバクテリアが含まれないFIA(Freund’s incomplete adjuvant)が開発され、イギリスで許可を受けた。グラム陰性桿菌のエンドトキシンが、免疫増強効果を持つことが報告され、1974年Ellouz等は、ムラミルジペペプチド(muramyl dipeptide、MDP)の効果を確認した(Ellouz F. et al., Biochem. Biophys. Res. Coomun. 59:1317-25, 1974)。その後、レシチン、サポニン等も免疫性を増強させるアジュバントとしての可能性が報告された。
【0004】
理想的なアジュバントは、免疫増進効果以外にも、非毒性、良好な生体分解性、安定性、使いやすさ、購入のしやすさ、安価といった条件が必要である。現在、種々のアジュバントが報告されているが、実際臨床的に利用可能なものは数えるほどしかない。ワクチンに用いられるアジュバント開発において、最も重要なものは安全性であり、これついては、確実な研究資料によってサポートされなければならない。
【0005】
ワクチンは、治療効果だけでなく予防効果があって、99%まで疾病の発病率を抑えることのできる費用対応効果が最も大きい医薬品である。特に、最近ではワクチンの用途が、感染性疾病にだけ限定されるのではなく、癌、自己免疫疾患を含んだ各種難治性疾患に広げられており、治療ワクチンが登場することによってワクチン開発が大変重要であると認識されている。従って、アジュバント開発は、ワクチン関連製品としてワクチン開発と共に加速されており、さらに免疫関連疾患の範囲が広げられ、新しいアジュバントの開発が非常に有望な分野として認識されている。
【0006】
一方、本発明者等は、高分子量ポリγ−グルタミン酸及びその利用方法に対する物質特許(韓国特許登録第399091)、高分子量のポリγ−グルタミン酸を産生する耐塩性菌株バチルスサブチルスチョンクッジャン菌株を用いて、ポリγ−グルタミン酸を産生する方法に関する特許(韓国登録特許第500796号)を取得し、その他にポリγ−グルタミン酸を含有する抗癌組成物、アジュバント、免疫増強剤及びウイルス感染抑制に対する特許(韓国登録特許第496606号、韓国登録特許第517114号、韓国登録特許第475406号、及び韓国登録特許第0873179号)を取得した。また、ポリγ−グルタミン酸を含有するヒアルロニダーゼ阻害剤(韓国登録特許第582120号)及びポリγ−グルタミン酸の免疫増強を介した抗癌機能を明らかにすることによって[Poo, H.R. et al., Journal of Immunology, 178:775, 2007, Poo, H.R. et al., Cancer Immunol Immunother (published online:18 March 2009)]、ポリγ−グルタミン酸の医薬用途に対する研究が進められる等、ポリγグルタミン酸に対する持続的な用途開発を行い、多様な効能を明らかにした。
【0007】
一方、ポリマーナノ粒子、特に、ポリカプロラクトン(poly-caprolactone)のような生分解性ポリマーで製造されたナノ粒子の場合、生体適合性に優れており大いに関心が集まっている。しかし、このようなナノ粒子は、本質的に疎水性であり、親水性の薬品または抗原を伝達するには適さない短所を持っている。
【0008】
ポリγ−グルタミン酸ナノ粒子を生体内タンパク質伝達や、体液性免疫反応増進用に用いた例が報告されたが(Akagi, T. et al., J. controlled release, 108:226, 2005, Uto, T. et al., the J, Imunol., 178:2979, 2007)、ポリγ−グルタミン酸のみを単独でアジュバントとして用いた場合には、アジュバントとしての抗体生成能が足りず、抗原特異的免疫誘導反応をより一層強化させる必要がある。
【0009】
キトサンは、陽イオンの多糖類で、キチンを脱アセチル化させた形態であり、毒性がなく、生体適合性が優れた材料である。また、キトサンは、細胞間の密着結合(tight junction)を開くことのできる物質であり、粘膜薬剤伝達システムにおいて、非常に効果的な材料と知られている。多くのキトサンは、分子量が50〜2,000kDaであり、酢酸(acetic acid)溶液(pH4)で溶解する特性を持っている。しかし、医薬材料として適用可能になるためには、中性のpHで水溶液の状態であるべきで、生理学的pHで陽イオンの水溶液の状態を維持するためにはセルラーゼを処理して、分子量を下げる方法が必須である。
【0010】
ポリγ−グルタミン酸とキトサンのナノ粒子の複合体は、ポリγ−グルタミン酸とキトサンのイオン結合複合体として口腔投与されるインシュリンのキャリアとして用いられたり、DNA運搬用として用いられるが、免疫誘導反応に用いられた例は報告されていない(Lin, Y. et al., Biomacromolecules, 6:1104, 2005, Lin, Y. et al., Nanotechnology, 16:105102, 2007)。
【0011】
そこで、本発明者等は、前記従来技術の問題点を改善しようと鋭意努力した結果、ポリγ−グルタミン酸とキトサンのイオン結合で製造されたナノ粒子を含有したアジュバントを多くの抗原と共にマウスに投与した場合、ポリγ−グルタミン酸をアジュバントとして用いた場合より、抗体の生成が顕著に増加することを確認して、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、抗原特異的免疫誘導反応が優れたポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を含有するアジュバント組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原とを含有するワクチン用組成物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、前記ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原とを含有するワクチンの製造方法を提供することにある。
【課題を達成するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明はポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を含有するアジュバント組成物を提供する。
また、本発明は、前記アジュバント組成物をヒトを除いた動物に抗原と共に投与して、抗原に対する抗体生成率を増加させる方法を提供する。
また、本発明は、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原とを含むワクチン用組成物を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、(a)表面電荷が陰電荷の抗原とキトサンとをイオン結合させる工程、及び(b)前記キトサンと結合した抗原にポリγ−グルタミン酸を添加して、キトサンとポリγ−グルタミン酸とをイオン結合させて、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原とを含むワクチンを製造する工程を含むポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と表面電荷が陰電荷の抗原が結合されているワクチンの製造方法を提供する。
【0015】
本発明は、また(a)表面電荷が陽電荷の抗原とポリγ−グルタミン酸をイオン結合させる工程、及び(b)前記ポリγ−グルタミン酸と結合した抗原にキトサンを添加して、ポリγ−グルタミン酸とキトサンとをイオン結合させて、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原とを含むワクチンを製造する工程を含むポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と表面電荷が陽電荷の抗原が結合されているワクチンの製造方法を提供する。
【0016】
本発明はまた、前記ワクチン用組成物をヒトを除いた動物に投与して、抗原に対する抗体生成率を増加させる方法を提供する。
本発明の他の特徴及び具現例は、以下の詳細な説明及び添付された特許請求の範囲からより一層明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の電子顕微鏡写真を示した。
【図2】抗原タンパク質の混合順により、タンパク質導入率を確認するために、FITC標識されたOVAが導入されたポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の共焦点レーザー蛍光顕微鏡写真である。
【図3】OVA抗原に対する体液性免疫反応に及ぼす影響を観察するために、OVAとPGA分子量毎に製造されたポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を混合して、マウスに注射後、OVA特異抗体生成程度をOVA特異的血清IgGを測定して確認した結果を示した。
【図4】OVAと電荷によるポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を混合して、マウスに注射後、OVA特異抗体生成程度を確認して、Freund adjuvantとの比較のために、OVA特異的血清IgG生成程度を測定した結果を示した。
【図5】ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子によるマウス脾臓内T細胞のOVAに対する細胞性免疫反応を調べるために、分子量毎PGAを利用して、製造されたPGAキトサンナノ粒子によるIFN−γを分泌するCD8+ T細胞の活性化程度をFACSで分析した結果を示した。
【図6】混合順により製造されたポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子による樹枝状細胞とT細胞の混合比により活性化したT細胞を確認するために、IFN−γを分泌するCD8+T細胞の分布をFACSで分析した結果を示した。
【図7】AIタンパク質とポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を混合して、マウスに皮下注射または鼻腔内投与後、AIタンパク質特異抗体生成程度を確認するために、AI特異的血清IgGを測定した結果を示した。
【図8】ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の中和抗体誘導能を確認するために、HI(Haemagglutination Inhibition)テスト法を用いて、マウス血清での抗体力価を測定した結果を示した。
【図9】ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の抗体生成能を確認するために、皮下注射または鼻腔内投与後、ウイルスを感染させたマウスの感染経過日に伴う死亡個体数変化を示したグラフである。
【図10】インフルエンザワクチン抗原とポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を混合して、マウスに筋肉注射した後、インフルエンザワクチン抗原特異抗体生成程度を確認するために、ワクチン抗原特異的血清IgGを測定した結果を示した。
【図11】インフルエンザワクチン抗原とポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の抗体生成能を確認するために、筋肉注射後ウイルスを感染させたマウスの感染経過日に伴う体重変化を示したグラフである。
【図12】インフルエンザワクチン抗原とポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の抗体生成能を確認するために、筋肉注射後ウイルスを感染させたマウスの感染経過日に伴う死亡個体数変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
一つの観点において、本発明は、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を含有するアジュバント組成物及びポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原とを含むワクチン用組成物に関する。
【0019】
本発明において、前記ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子は、ポリγ−グルタミン酸の余分のカルボキシル(carboxyl)反応基の陰電荷とキトサンのアミノ(amino)反応基がプロトン化されながらできた両電荷間の静電気引力(electrostatic interaction)により形成されるナノ粒子を用いた。
【0020】
本発明に係るポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子は、人体に有害なタンパク質間の架橋物質なしに単純な静電気的引力で製造されて、ナノ粒子の安全性及び有効性が非常に高く、アジュバントとして用いるのに適している。
【0021】
ポリγ−グルタミン酸は、D−、及びL−グルタミン酸(glutamic acid)がγ結合を介して連結した粘液性のアミノ酸高分子であり、バチルス属菌株から作られる天然アミノ酸高分子素材で、本発明の一様態において、前記ポリγ−グルタミン酸は、バチルスサブチルスチョンクッジャン菌株(Bacillus substilis chungkookjang、KCTC 0697BP)を発酵させて製造し、前記バチルスサブチルスチョンクッジャン(KCTC 0697BP)により産生されたポリγ−グルタミン酸の平均分子量は、1〜15,000kDaであった。
【0022】
本発明において、前記ポリγ−グルタミン酸は、産生されたポリγ−グルタミン酸を適当な方法で切断して、所望の分子量に調整して用いることができ、また適当な方法で、所望の分子量毎に分離し、回収して用いられる。
【0023】
本発明に係るポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を含有するアジュバントは、バチルスサブチルスチョンクッジャンが発酵産生するパイオポリマーであるポリγ−グルタミン酸及びキトサンを利用して、化学的結合でなく単純イオン結合によって製造されて、安全性、生体適合性、及び抗体生成率が優れた特徴を持つアジュバント素材である。
【0024】
本発明に係るポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子製造に用いられる前記ポリγ−グルタミン酸の分子量は、好ましくは50kDa〜15,000kDaで、ポリγ−グルタミン酸の分子量が50kDa未満の場合、免疫増強機能が低くなる問題があり、ポリγ−グルタミン酸の分子量が15,000kDa以上の場合には効能には差はないが、粘度が増加するという問題が生じる。
【0025】
本発明において、キトサンの分子量は好ましくは500Da〜1,000kDaで、キトサンの分子量が500Da未満の場合、ナノ粒子製造が困難であるという問題があり、キトサンの分子量が1000kDa以上の場合には中性の水溶液状態で溶解度が低下するという短所がある。
【0026】
本発明において、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の製造において、ポリγ−グルタミン酸の比を高めて、製造されるナノ粒子の表面電荷が陰電荷を持つナノ粒子を製造することができる。
【0027】
本発明において、前記ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の表面電荷は、陰電荷であってもよい。
【0028】
本発明に係るポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子は、化学的方法でない単純イオン反応によって製造されるナノ粒子で、毒性が低く及び安全性も優れている。
本発明に係るポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を含有するアジュバント組成物において、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子は、ワクチン組成物乾燥重量100重量部に対し、乾燥重量0.001〜5重量部で含有することを特徴とし、好ましくは乾燥重量0.01〜3重量部で含有することができる。仮に、ワクチン組成物乾燥重量100重量部に対し、乾燥重量0.001重量部未満で含有させる場合、抗体生成機能を期待できず、乾燥重量5重量部を超えるときには作用には差がないが、粘性が過度に増加するという問題が生じる。
【0029】
本発明において、ワクチン用組成物に含まれる抗原は、タンパク質、ペプチド、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ウイルス、抗ウイルス剤、抗腫瘍剤、抗生物質及び抗炎症剤からなる群から選択されてもよい。
【0030】
本発明において、前記ワクチン用組成物は鳥インフルエンザウイルス、豚インフルエンザウイルス及び新種インフルエンザウイルスからなる群から選択されたいずれか一つ以上のウイルスによる疾病の予防用または治療用であることを特徴とし、子宮頸部癌、皮膚黒色腫、前立腺癌、結腸癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、頭頸部癌、外陰癌、膀胱癌、脳腫瘍及び神経膠腫からなる群から選択されたいずれか一つ以上の疾病の予防用または治療用であってもよい。
【0031】
他の観点において、本発明は、(a)表面電荷が陰電荷の抗原とキトサンとをイオン結合させる工程、及び(b)前記キトサンと結合した抗原にポリγ−グルタミン酸を添加して、キトサンとポリγ−グルタミン酸とをイオン結合させて、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原とを含むワクチンを製造する工程を含むポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と表面電荷が陰電荷の抗原が結合されているワクチンの製造方法に関する。
【0032】
本発明において、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の製造において、結合しようとする抗原またはウイルス等が陽電荷を持つ場合、ポリγ−グルタミン酸を先に結合後、キトサンを結合させて、抗原またはウイルス等が陰電荷を持つ場合、キトサンと先に結合後、ポリγ−グルタミン酸と混合して、製造することによってより効果的なアジュバントとしての機能をもつことができる。
【0033】
また他の観点において、本発明は、(a)表面電荷が陽電荷の抗原とポリγ−グルタミン酸をイオン結合させる工程、及び(b)前記ポリγ−グルタミン酸と結合した抗原にキトサンを添加して、ポリγ−グルタミン酸とキトサンとをイオン結合させて、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原とを含むワクチンを製造する工程を含むポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と表面電荷が陽電荷の抗原が結合されているワクチンの製造方法に関する。
【0034】
また他の観点において、本発明は、ヒトを除いた動物に前記アジュバント組成物を抗原と共に投与したりワクチン用組成物を投与して、抗原に対する抗体生成率を増加させる方法に関する。
【0035】
本発明において、前記投与は、皮下注射、筋肉内注射、皮内注射、腹腔内注射、鼻腔内投与、口腔投与、経皮投与及び経口投与からなる群より選択されたいずれか一つの方法で行。
【0036】
本発明において、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を含有するアジュバント組成物またはワクチン用組成物に含まれる担体、賦形剤及び希釈剤としてはラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニールピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油が挙げられる。製剤化する場合には、通常用いる充鎮剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤等の希釈剤または賦形剤を用いて調剤される。非経口投与のための製剤には滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、油剤、凍結乾燥製剤、座薬が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステル等が用いられる。座薬の基剤としては、ウィテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、クリセロゼラチン等が用いられる。
【0037】
本発明のポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子含有アジュバントは、投与対象の年齢、性別、体重等により投与量が異なり、投与経路、疾病の程度、体重等によってもワクチンの投与量が増減される。
【0038】
また、本発明のポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子は、癌、特に皮膚黒色腫、前立腺癌、結腸癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、頭頸部癌、外陰癌、膀胱癌、脳腫瘍及び神経膠腫等だけでなく、非伝染性慢性疾病を予防及び治療に用いられる予防用あるいは治療用ワクチンを含む医薬組成物に添加して用いられる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例を挙げて詳述する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは当業者において通常の知識を有する者にとって自明である。即ち、下記工程は一つの例示として説明されるだけであり、本発明の範囲がこれらに限定されない。
【0040】
《実施例1:超高分子量ポリγ−グルタミン酸の製造》
ポリγ−グルタミン酸産生用基本培地(3%のL−グルタミン酸が添加された培地、グルコース3%、(NH4)2SO4 1%、KH2PO4 0.27%、Na2HPO4.12H2O 0.17%、NaCl 0.1%、クエン酸ナトリウム0.5%、ソイペプトン0.02%、MgSO4.7H2O 0.7%、ビタミン水溶液10mL/L、pH6.8)を滅菌、準備して、5L ジャーファーメンター(working vol. 3L)にバチルスサブチルスチョンクッジャン菌株(Bacillus subtilis var chungkookjang、KCTC 0697BP)の種菌培養液(LB medium)を4%接種して、発酵させた。攪拌速度は、500rpm、空気注入速度は1.0vvmにして、37℃で48時間発酵させた後、小型フィルタープレス(硅藻土celite 1%)を利用して、菌体を取り除いてポリγ−グルタミン酸含有試料液として用いた。
【0041】
ポリγ−グルタミン酸含有試料液に2N硫酸溶液を利用してpH2.0に調整後、10℃下で15時間静置させて、ポリγ−グルタミン酸沈殿物を取得した。これを十分量の冷却蒸溜水(10℃以下)で洗浄した後(pH3.5以上)、ヌッチェろ過器を利用してポリγ−グルタミン酸沈殿物を取得後、凍結乾燥して、超高分子量ポリγ−グルタミン酸を製造した。
【0042】
《実施例2:ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の製造》
実施例1で製造されたポリγ−グルタミン酸とキトサン(Amicogen Co.,Korea)を利用して、アジュバントとして用いるナノ粒子を製造した。
使用するポリγ−グルタミン酸及びキトサンは0.85%NaCl溶液に溶解して用いた。ポリγ−グルタミン酸とキトサンの混合比を1:1〜8:1の割合でキトサン溶液にポリγ−グルタミン酸溶液を混合して、表面電荷が陰電荷を持つポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を製造した。製造されたナノ粒子は、DLS(Dynamyc Light Scattering)を利用して、粒度及び表面電荷を測定した。その結果、200〜300nm大きさのナノ粒子が製造されることを確認し、ナノ粒子の表面電荷が−20.8mVと測定された。また、製造されたナノ粒子の表面形態は電子顕微鏡を用いて観察した(図1)。
【0043】
【表1】
【0044】
《実施例3:対象タンパク質の混合順によるポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の製造》
実施例2で確認されたポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子にタンパク質を導入させ、該当タンパク質に対する抗体生成率を増加させるためのアジュバントとして機能するか否かの検証のために、該当タンパク質のPI値を検討して、混合順によるナノ粒子を製造した。まずpI値が5.2であるOVA(SIGMA,USA)タンパク質に蛍光物質のFITCを結合させたOVA−FITCをポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子に結合させた。結合方法でポリγ−グルタミン酸とOVA−FITCをまず混合した後、キトサンを混合して製造した試料とキトサンとOVA−FITCをまず混合した後、ポリγ−グルタミン酸を混合して製造したナノ粒子二種類を製造して、蛍光顕微鏡によってOVAの結合の程度を確認した。
【0045】
その結果、図2に示したようにキトサンとOVA−FITCをまず混合した後、ポリγ−グルタミン酸を混合した試料でナノ粒子表面及び内部にさらに明るい蛍光を示した。これは、OVAが中性pHで陰電荷(negetive charge)を持つため陽電荷(positive charge)を持つキトサンとまず結合した後、ポリγ−グルタミン酸を結合させて製造した試料でさらに多いOVAがナノ粒子に導入されたことを確認した。
【0046】
《実施例4:ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子のOVA特異的抗体生成増進》
本実施例では本発明のポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子が、OVA抗原に対して特異的免疫増進効果を示すのか調べるために、抗体特異的な免疫反応中、特に抗体産生と関連があるB細胞による体液性免疫反応(humoral immuneresponse)に及ぼす影響を調べた。
【0047】
まず、対照群としてはOVA(100μg)を分子量5,000kDaのポリγ−グルタミン酸と混ぜてC57/BL6マウス腹腔に注射し、実験群として分子量50kDa、500kDa、2,000kDa、5,000kDa、7,000kDaのポリγ−グルタミン酸とキトサンとを混合して製造したナノ粒子にOVA(100μg)を混ぜて、腹腔に注射した。
【0048】
また、対象タンパク質の混合順により、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を製造したものは、ポリγ−グルタミン酸の分子量を7,000kDaを用いてナノ粒子を製造した。ナノ粒子の混合順は、ポリγ−グルタミン酸とキトサンとを先に混合後、OVAを入れたものと、キトサンをOVAと混合した後、ポリγ−グルタミン酸を入れたものを用いた。対照群として、OVAをポリγ−グルタミン酸とともに、又はCFAとともに注射した。
【0049】
週に一回ずつ2回の腹腔注射後、3週目にマウス血清を採取して、血清中のOVAに対する抗体の力価(titer)をELISA(Enzyme linked immunosorbent assay)法で測定した。
【0050】
前記ELISA法は、OVA(0.5μg/mL)がコーティングされたプレートをPBS/5%スキムミルクを用いて、ブロッキングした後、対照群及び実験群血清を一連の濃度の希釈率で希釈し、37℃で培養した。その後、西洋わさびパーオキシダーゼ標識マウスIgG抗体(Fcに対して特異的である)を添加した。前記培養器で保管する時間はブロッキングとマウスIgG抗体を入れる過程は、1時間とし、血清は2時間保管した。前記それぞれの工程後には、PBS/0.05%Tween20を用いて、3回洗浄した。基質としては、TMB(Tetramethylbenzidine、BD Biosciences,USA)100mLを添加して、反応を行わせた後、450nmでの吸光度をELISAリーダーで測定した。
【0051】
その結果、図3に示したように、分子量毎のポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子をOVAと共に注射したマウスにおけるOVAに対する抗体力価は、OVAとポリγ−グルタミン酸を混ぜて注射したマウスにおけるOVA抗原に対する抗体力価より顕著に高く現れた。
【0052】
また、図4に示したように、対象タンパク質の混合順によるものは、キトサンをポリγ−グルタミン酸と混合してOVAを入れたナノ粒子と、キトサンをOVAと先に混合した後、ポリγ−グルタミン酸を入れたナノ粒子の抗体力価は同様な抗体力価であった。
【0053】
《実施例5:ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の細胞媒介性免疫反応増進》
ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子によるマウス脾臓内T細胞のOVAに対する細胞性免疫反応を調べた。実施例4で処理したマウスをグループ当り5匹ずつを選択して、それぞれのマウスから脾臓を摘出して、滅菌されたペトリディッシュに前記脾臓組織を移した。セルストライナー(cell strainer)を用いて、前記脾臓をこすりつけ、組織皮膜から細胞を分離した。前記ペトリディッシュ内の全ての内容物を15mLチューブに移して、RPMI培地で充填した後、1,500rpmで5分間遠心分離した後、上澄液を取り除いたペレットに赤血球溶血バッファー(red blood cell lysing buffer、sigma aldrich,Germany)を3mL入れて37℃水槽で10分間放置して、赤血球を溶血させた。チューブに含まれた細胞をPBSで洗浄した後、RPMI1640培地に浮遊させて、脾臓細胞(splenocyte)を分離した。分離した脾臓細胞を1x106cells/mLで24ウエルプレートに敷いて、golgi plug 2μLとMHCクラスI拘束OVAペプチドを1μg/mLの濃度で12時間処理した。その後、T細胞の表面分子であるCD8に対する特異的抗体(PE-conjugated anti-mouse CD8)を利用して、4℃で1時間染色した後、サイトフィックス/サイトパーム(Cytofix/Cytoperm)キット(BD Biosciences,USA)で細胞に穴を開けて、IFN−γに特異的な抗体(FITC conjugated anti-mouse IFN-γ)で細胞内部のIFN−γを染色した。
【0054】
その結果、図5に示したように、分子量毎のポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子が対照群に比べてIFN−γを分泌するCD8+T細胞の活性化を促すことを確認した。
【0055】
また、対象タンパク質の混合順によりナノ粒子を製造したものは、図6に示したように、キトサンをOVAと混合した後にポリγ−グルタミン酸を入れたナノ粒子が、ポリγ−グルタミン酸にキトサンを混合した後にOVAを添加したナノ粒子よりIFN−γを分泌するT細胞の活性化誘導能がより大きいことを確認した(図6)。
【0056】
《実施例6:ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子のAIタンパク質に対する細胞媒介性免疫反応増進》
本実施例では、本発明のポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子が鳥インフルエンザウイルス(Avian influenza virus、AIV)特異抗原タンパク質であるHA(hemagglutinin)タンパク質に対し特異的免疫増進効果を示すか調べるために、抗体特異的な免疫反応中、特に抗体産生と関連があるB細胞による体液性免疫反応に及ぼす影響を調べた。
【0057】
実験に用いたHAタンパク質は、鳥インフルエンザウイルス[A/chicken/Korea/IS2/2006(H5N1)](Yong-Jeong Leeet al. Emerging Infectious Diseases. 2008. 14:487-490)の中和抗体に対する主要エピトープが存在すると知られるHAタンパク質でありGenbank accession No.EU233683に該当する塩基配列を持つ遺伝子をPCRで合成して、大腸菌発現ベクター(pRSET)に挿入させて、組み換え抗原タンパク質を大腸菌で発現させて、精製して用いた(Langzhou Song et al. PLoS ONE, 2008. e2257)。
【0058】
対照群としては、HAタンパク質(7.128μg)を単独で皮下注射または鼻腔内投与し、7,000kDaのポリγ−グルタミン酸とキトサンを混合して製造したナノ粒子にHAタンパク質(7.128μg)を混ぜて、皮下注射または鼻腔内投与した。
最初、皮下注射または鼻腔注射後、1週毎にマウス血清を採取して、血清中のHAタンパク質に対する抗体の力価をELISA法で測定した。
【0059】
前記ELISA法は、HAタンパク質がコーティングされたプレートをPBS/5%牛胎児血清を用いてブロッキングした後、対照実験群血清を一連の濃度の希釈率で希釈し、インキュベーションした。その後、西洋わさびパーオキシダーゼ標識マウスIgG抗体(Fcに対して特異的である)を添加した。前記全てのインキュベーションは、37℃で1時間行い、前記それぞれの工程後には、PBS/0.05%Tween20を用いて3回洗浄した。基質としては、ABTS(2,2−azinobis(3−ethylbenzthiazolinesulfonic acid))1mg/mLを添加して、反応を行わせた後、450nmにおける吸光度を30分後ELISAリーダーで測定した。
【0060】
その結果、図7に示したように、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子をHAタンパク質と共に皮下注射または鼻腔内投与したマウスにおけるHAタンパク質に対する抗体力価は、HAタンパク質だけを皮下注射または鼻腔内投与したマウスにおける抗体力価がより高く現れた。
【0061】
《実施例7:ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の中和抗体誘導能》
各グループ毎のマウス血清における抗体力価測定は、下記のHIテスト法で測定した。
全ての血清は、ビブリオコレラから抽出したRDE(receptor-destroying enzyme)を血清サンプル体積対比1:3で処理した後(例えば、血清10μLにRDE30μL添加)、37℃培養器で18〜20時間培養した。血清内の非特異的な受容体の活性を取り除いたサンプルを96ウエル丸底プレートで25μLずつ順に2進希釈した。次に、血清サンプルに同じ体積の4HAUウイルスを入れて、37℃培養器で30分間反応させて、最後に0.5%鶏赤血球が含まれたPBSを50μLずついれた後、室温で40分間反応させた。力価は希釈された50μL範囲で計算された値で、log10N=10NでN値で表記した。
【0062】
その結果、図8に示したように、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子とAIタンパク質を皮下注射及び鼻腔内投与した実験群で、ウイルスに対する抗体力価が増加した。
【0063】
《実施例8:ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子のウイルスに対する免疫増強効果》
本実施例では、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の鳥インフルエンザウイルスに対する免疫増強効果を調べるために、インフルエンザウイルスを感染させた実験動物の斃死を確認した。
【0064】
(1)ウイルスの準備
病原体として使われたインフルエンザウイルスは忠北(チュンブク)大学医科大学微生物学実験室崔ヨンギ教授から分譲された、マウスにおいて高病原性を示すH1N1インフルエンザウイルス株(A/Puerto Rico/8/34(H1N1))をMadin−Darby canine kidney(MDCK) cellで増幅した後、実験に用いて、実験動物としては6周齢の雌Balb/Cマウスを用いた。
分譲されたウイルスの純粋分離は次のとおり実施した。
【0065】
一次的に分離したウイルスを抗生剤が入っているPBSに希釈して、10日齢となった白色産卵鶏の有精卵に接種した後、37℃で48時間静置培養した後、有精卵の腰髄を取って増幅されたウイルスを用いた。
次に、6ウエル細胞培養プレートでペニシリンとストレプトマイシンと5%牛胎児血清(fetal bovine serum、FBS)が含まれたalpha−MEM(minimun essential medium、Gibco,USA)培地で育ったMDCK cellをPBSで3度洗浄をして、ペニシリンとストレプトマイシン(以下P/S)は含むがFBSが入っていない培地で希釈して、各ウエルにウイルスを希釈してから感染させた後、5%二酸化炭素が充填された37℃細胞培養器で1時間培養した。FBSが入っていない0.1%TPCK(N-alpha-tosyl-L-phenylalanyl chloromethyl ketone)処理トリプシンEDTAとP/Sが含まれたalpha−MEM培地を各ウエルに入れ、細胞培養器で培養した。培養24時間後、細胞培養プレートをPBSで洗浄して、培地を含んでいる0.1%ノーブルアガーを用いて固定した。
【0066】
培養されたプラックを予め準備されたMDCK cellが培養された24ウエルプレートに各ウエル当1個のプラックを接種してFBSが入っていない0.1%TPCK処理トリプシンEDTAとP/Sが含まれたalpha−MEM培地を各ウエルに入れて細胞培養器で培養した。48時間後、各ウエルの培地を取って、遠心分離して上澄液を前記同様の方法で準備されたMDCK cellフラスコに感染させた後、48時間から36時間培養して得られた培養液を遠心分離して、上澄液をマイクロチューブに移して−80℃低温冷凍庫に動物実験前まで保管した。
【0067】
(2)動物実験
まず、対照群としては、インフルエンザウイルスを単独で鼻腔内投与または皮下注射したマウスを用いて、実験群はポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子とAI抗原タンパク質を混合し皮下注射または鼻腔内投与した後、翌日インフルエンザウイルスを投与した。
ウイルスの感染は、実験動物にジエチルエーテルを用いて30秒間麻酔した後、ウイルス30μLを各マウスに鼻腔を通して、1.25×105EID50投与した。
その結果、図9に示したように、対照群はウイルス投与後8日目に全例死んだが、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子とAIタンパク質混合投与群の場合、11日経過後の間、全て生存した。これは、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子によってAIタンパク質に対する抗体生成を誘導して、ウイルス感染を抑制することによって、個体が生存するようになったものと判断される。
【0068】
《実施例9:ポリγ−グルタミン酸−キノサンナノ粒子のインフルエンザウイルスに対する免疫増強効果》
本実施例では、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子のインフルエンザウイルスに対する免疫増強効果を調べるために、インフルエンザワクチンに対するポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子のアジュバント効果を確認した。
【0069】
(1)インフルエンザワクチン
抗原として用いられたインフルエンザワクチンは、H1N1インフルエンザウイルス株(A/California/07/09(H1N1))ワクチン抗原を用いた。
(2)動物実験
対照群としてはPBSだけを筋肉注射したマウスを用い、実験群はインフルエンザワクチン(0.2μg)だけを筋肉注射したマウスとインフルエンザワクチン(0.2μg)とAlumアジュバントを混合して、筋肉注射したマウス、及びインフルエンザワクチン(0.2μg)とポリγグルタミン酸−キトサンナノ粒子(800μg)を混合して、筋肉注射したマウスを用いた。
【0070】
接種方法は、2週間隔(0日、及び14日)で2回マウスに筋肉注射をし、各々接種後14日目に血清を採取して、血清中のインフルエンザワクチン抗原に対する力価をELISA(Enzyme linked immnosorbent assay)法で測定した。
【0071】
ELISA法は、インフルエンザワクチン抗原がコーティングされたプレートをPBS/1%BSAを用いてブロッキングした後、全ての対照群、実験群血清を一連の濃度の希釈率で希釈し、インキュベーションした。その後、西洋わさびパーオキシダーゼ標識マウスIgG抗体、IgG2a抗体、及びIgG1抗体を各々用いた。前記全てのインキュベーションは、37℃で1時間行い、それぞれの工程後には、PBS/0.05%Tween20を用いて、3回ずつ洗浄した。基質としては、TMB(3,3’,5,5’tetramethylbenzidine)A溶液とB溶液の1:1混合溶液100μLを添加して、反応を行わせた後、0.5N H2SO4溶液50mLを入れて、反応を停止させた後、450mLにおける吸光度をELISAリーダーで測定した。
【0072】
その結果、図10に示したように、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子をインフルエンザワクチン抗原と共に筋肉注射したマウスにおけるワクチン抗原に対する抗体力価は、インフルエンザワクチンだけを注射またはAlumアジュバントと混合して注射したマウスにおける抗体力価より高く現れた。
【0073】
《実施例10:ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子のインフルエンザウイルスに対する中和抗体誘導能》
各グループ毎のマウス血清における抗体力価測定は、下記HI(Hemagglutination Inhibition)テスト法で測定した。
【0074】
全ての血清は、ビブリオコレラから抽出したRDEを血清サンプル体積対比1:10で処理した後、37℃培養器で18時間インキュベーションした。血清内の非特異的な受容体の活性を取り除いたサンプルを96ウエル丸底プレートで25mLずつ順に2倍に希釈した。次に、血清サンプルに同じ体積の4HAUウイルス(A/California/04/09(H1N1))を入れて、室温で30分間反応させて、最後に0.5%七面鳥赤血球が含まれたPBSを50mLずついれた後、室温で30分間反応させた。力価は希釈された50mL範囲で計算された値で、log10N=10NでN値で表記した。
【0075】
その結果、表2に示されたように、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子とインフルエンザワクチン抗原を注射したマウスでインフルエンザワクチンだけを注射したマウスとAlumアジュバントを混合注射したマウスよりインフルエンザウイルスに対する抗体力価が、各々5〜6倍程度増加した。
【0076】
【表2】
【0077】
《実施例11:ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子のインフルエンザウイルス感染に対する抵抗性》
各グループ毎の最後のワクチン注射後、14日目にインフルエンザウイルス(A/California/04/09(H1N1))を投与した。
ウイルス感染は、実験動物に麻酔をかけた後、各107.25 EID50のウイルス30μLずつ鼻腔を通して投与した。
【0078】
その結果、図11及び図12に示されたように、ワクチンだけ筋肉注射した群やAlumアジュバントとワクチンを混合注射した群は、ウイルス感染後2日目から体重が減少したが、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子とインフルエンザワクチン混合注射群の場合、ウイルス感染による体重減少が起きなかった。また、対照群は、ウイルス投与後5日目全量が死んだが、ポリγ−グルタミン酸−キノサンナノ粒子とインフルエンザワクチン混合注射群の場合、14日目まで全て生存した。しかし、ワクチンだけ投与したグループとAlumアジュバントとワクチンを混合注射群は50%だけ生存した。
【0079】
これは、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子によって、インフルエンザワクチンに対する抗体生成を誘導して、ウイルス感染を抑制することによって個体が生存するようになるものと判断される。
【産業上の利用の可能性】
【0080】
本発明に係るポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を含有するアジュバントは、安全性が確保された天然素材の単純イオン結合で製造されて、毒性及び副作用が殆どなく、免疫原性が低い抗原と共に用いて、高い抗体価を示され、アジュバント組成物及び前記アジュバントを含有するワクチン用組成物として用いられる。また、導入される抗原及びウイルスの表面電荷によりポリγ−グルタミン酸とキトサンの混合順を調整することによって抗原とナノ粒子の結合率を高め、より効果的な抗体価が示される。
【0081】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当業界における通常の知識を持った者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施態様に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲とこれらの等価物により定義されると言える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を含有するアジュバント組成物。
【請求項2】
前記ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子はポリγ−グルタミン酸とキトサンがイオン結合によって結合されていることを特徴とする請求項1に記載のアジュバント組成物。
【請求項3】
前記ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の表面電荷は陰電荷であることを特徴とする請求項1に記載のアジュバント組成物。
【請求項4】
炭素源としてグリセロールを用い、前記コエンザイムB12を産生し、そして3−ヒドロキシプロピオン酸を産生する能力を有する微生物が、グリセロール酸化的経路がブロックされている微生物である、請求項1に記載の方法。請求項1に記載のアジュバント組成物をヒトを除いた動物に抗原と共に投与して、抗原に対する抗体生成率を増加させる方法。
【請求項5】
前記投与は、皮下注射、筋肉内注射、皮内注射、腹腔内注射、鼻腔内投与、口腔投与、経皮投与及び経口投与からなる群より選択されるいずれか一つの方法で行われること特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原とを含むワクチン用組成物。
【請求項7】
前記抗原は、タンパク質、ペプチド、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ウイルス、抗ウイルス剤、抗腫瘍剤、抗生物質及び抗炎症剤からなる群から選択されたことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
鳥インフルエンザウイルス、豚インフルエンザウイルス及び新種インフルエンザウイルスからなる群から選択されたいずれか一つ以上のウイルスによる疾病の予防用または治療用であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
子宮頸部癌、皮膚黒色腫、前立腺癌、結腸癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、頭頸部癌、外陰癌、膀胱癌、脳腫瘍及び神経膠腫からなる群から選択されたいずれか一つ以上の疾病の予防用または治療用であることを特徴とする請求項6に記載のワクチン用組成物。
【請求項10】
次の工程を含むポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と表面電荷が陰電荷の抗原を含むワクチンの製造方法:
(a)表面電荷が陰電荷の抗原とキトサンとをイオン結合させる工程、及び
(b)前記キトサンと結合した抗原にポリγ−グルタミン酸を添加して、キトサンとポリγ−グルタミン酸とをイオン結合させて、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原が結合されているワクチンを製造する工程。
【請求項11】
次の工程を含むポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と表面電荷が陽電荷の抗原を含むワクチンの製造方法:
(a)表面電荷が陽電荷の抗原とポリγ−グルタミン酸をイオン結合させる工程、及び
(b)前記ポリγ−グルタミン酸と結合した抗原にキトサンを添加して、ポリγ−グルタミン酸とキトサンとをイオン結合させて、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原が結合されているワクチンを製造する工程。
【請求項12】
請求項6に記載のワクチン用組成物をヒトを除いた動物に投与して、抗原に対する抗体生成率を増加させる方法。
【請求項13】
前記投与は、皮下注射、筋肉内注射、皮内注射、腹腔内注射、鼻腔内投与、口腔投与、経皮投与及び経口投与からなる群より選択されるいずれか一つの方法で行われること特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項1】
ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子を含有するアジュバント組成物。
【請求項2】
前記ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子はポリγ−グルタミン酸とキトサンがイオン結合によって結合されていることを特徴とする請求項1に記載のアジュバント組成物。
【請求項3】
前記ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子の表面電荷は陰電荷であることを特徴とする請求項1に記載のアジュバント組成物。
【請求項4】
炭素源としてグリセロールを用い、前記コエンザイムB12を産生し、そして3−ヒドロキシプロピオン酸を産生する能力を有する微生物が、グリセロール酸化的経路がブロックされている微生物である、請求項1に記載の方法。請求項1に記載のアジュバント組成物をヒトを除いた動物に抗原と共に投与して、抗原に対する抗体生成率を増加させる方法。
【請求項5】
前記投与は、皮下注射、筋肉内注射、皮内注射、腹腔内注射、鼻腔内投与、口腔投与、経皮投与及び経口投与からなる群より選択されるいずれか一つの方法で行われること特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原とを含むワクチン用組成物。
【請求項7】
前記抗原は、タンパク質、ペプチド、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ウイルス、抗ウイルス剤、抗腫瘍剤、抗生物質及び抗炎症剤からなる群から選択されたことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
鳥インフルエンザウイルス、豚インフルエンザウイルス及び新種インフルエンザウイルスからなる群から選択されたいずれか一つ以上のウイルスによる疾病の予防用または治療用であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
子宮頸部癌、皮膚黒色腫、前立腺癌、結腸癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、頭頸部癌、外陰癌、膀胱癌、脳腫瘍及び神経膠腫からなる群から選択されたいずれか一つ以上の疾病の予防用または治療用であることを特徴とする請求項6に記載のワクチン用組成物。
【請求項10】
次の工程を含むポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と表面電荷が陰電荷の抗原を含むワクチンの製造方法:
(a)表面電荷が陰電荷の抗原とキトサンとをイオン結合させる工程、及び
(b)前記キトサンと結合した抗原にポリγ−グルタミン酸を添加して、キトサンとポリγ−グルタミン酸とをイオン結合させて、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原が結合されているワクチンを製造する工程。
【請求項11】
次の工程を含むポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と表面電荷が陽電荷の抗原を含むワクチンの製造方法:
(a)表面電荷が陽電荷の抗原とポリγ−グルタミン酸をイオン結合させる工程、及び
(b)前記ポリγ−グルタミン酸と結合した抗原にキトサンを添加して、ポリγ−グルタミン酸とキトサンとをイオン結合させて、ポリγ−グルタミン酸−キトサンナノ粒子と抗原が結合されているワクチンを製造する工程。
【請求項12】
請求項6に記載のワクチン用組成物をヒトを除いた動物に投与して、抗原に対する抗体生成率を増加させる方法。
【請求項13】
前記投与は、皮下注射、筋肉内注射、皮内注射、腹腔内注射、鼻腔内投与、口腔投与、経皮投与及び経口投与からなる群より選択されるいずれか一つの方法で行われること特徴とする請求項12に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−531406(P2012−531406A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517392(P2012−517392)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/KR2010/004142
【国際公開番号】WO2010/151076
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(506010208)バイオリーダーズ コーポレーション (16)
【氏名又は名称原語表記】BIOLEADERS CORPORATION
【出願人】(511166998)ククミン ユニバーシティ インダストリー−アカデミック コオペレーション ファウンデーション (3)
【出願人】(506272301)コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (17)
【出願人】(511314636)ザ インダストリー アンド アカデミック コオペレーション イン チュンナム ナショナル ユニバーシティ (1)
【出願人】(511314430)チュンブク ナショナル ユニバーシティ インダストリー−アカデミック コオペレーション (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/KR2010/004142
【国際公開番号】WO2010/151076
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(506010208)バイオリーダーズ コーポレーション (16)
【氏名又は名称原語表記】BIOLEADERS CORPORATION
【出願人】(511166998)ククミン ユニバーシティ インダストリー−アカデミック コオペレーション ファウンデーション (3)
【出願人】(506272301)コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (17)
【出願人】(511314636)ザ インダストリー アンド アカデミック コオペレーション イン チュンナム ナショナル ユニバーシティ (1)
【出願人】(511314430)チュンブク ナショナル ユニバーシティ インダストリー−アカデミック コオペレーション (1)
【Fターム(参考)】
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