説明

ポリアクリル酸エステルの重合度の測定方法およびポリアクリル酸エステルの製造方法

【課題】ポリアクリル酸エステルの重合度を測定する方法等を提供する。
【解決手段】多官能アクリル酸エステルを重合させてなるポリアクリル酸エステル(A)に、流通式の反応系で、前記ポリアクリル酸エステル(A)の主鎖が切断されない温度で、超臨界または亜臨界状態の一般式(2)で表される低級アルコールを反応させて、一般式(3)で表されるポリアクリル酸エステルを得る工程と、一般式(3)で表されるポリアクリル酸エステルの重合度を測定して該重合度から前記ポリアクリル酸エステル(A)の重合度を測定する工程を含む、ポリアクリル酸エステルの重合度の測定方法。
一般式(2)
3OH
(一般式(2)中、R3は置換もしくは無置換の炭素数1〜3のアルキル基である。)


(一般式(3)中、R1は水素原子または置換もしくは無置換のメチル基であり、R3は置換もしくは無置換の炭素数1〜3のアルキル基である。nは重合度を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアクリル酸エステルの重合度の測定方法およびポリアクリル酸エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アクリル系樹脂の分析方法および製造方法について検討されている。
例えば、特許文献1には、「架橋が形成されていてもよいアクリル系樹脂を、超臨界状態の低級アルコールと反応させ、アルコールおよび/または該アクリル系樹脂のオリゴマーおよび/またはポリマーを分離・検出して構造解析することを特徴とする該アクリル系樹脂の繰り返し構造単位組成の分析方法」が開示されている。この方法では主鎖を切断して繰り返し構成単位の組成の分析を行っている。
また、特許文献2には、「高分子化合物を超臨界流体又は高温高圧流体中で化学的に変性する変性高分子化合物の製造方法であって、得られる変性高分子化合物は、変性反応前の高分子化合物を構成する単量体ユニットの一部又は全部が化学的に変性されていることを特徴とする変性高分子化合物の製造方法」が開示されている。しかしながら、該方法は、例えば、該特許文献2の39頁表4に記載のとおり、反応温度が300℃〜400℃と高い。このような反応温度では、主鎖がやはり切断されてしまう。
【0003】
また、超臨界流体中または亜臨界流体中での反応を利用した方法として、特許文献3には、特定の構造(1)を有する樹脂を超臨界流体中又は亜臨界流体中で脱離反応させることにより、特定の構造(2)を有する改質ポリオレフィン系樹脂を生成させることを特徴とする改質ポリオレフィン系樹脂の製造方法について開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−141725号公報
【特許文献2】国際公開WO2003/033548号パンフレット
【特許文献3】特開2004−244596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、本発明者は、主鎖を切断せずにポリアクリル酸エステルの側鎖のみを変換させることができないかと考えた。
このような変換反応が可能であれば、例えば、特定の構造を有するポリアクリルエステル酸を、重合度の測定が可能な構造を有するポリアクリル酸エステルに変換することにより、変換前のポリアクリル酸エステルの重合度を測定することができる。すなわち、本発明の第一の課題は、主鎖を切断せずに、ポリアクリル酸エステルの重合度を測定する方法を提供することである。
さらに、本発明の第二の課題は、このような変換反応を用いたポリアクリル酸エステルの製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の下、発明者が鋭意検討を行った結果、下記手段により上記課題を解決しうることを見出した。
(1)多官能アクリル酸エステルを重合させてなるポリアクリル酸エステル(A)に、流通式の反応系で、前記ポリアクリル酸エステル(A)の主鎖が切断されない温度で、超臨界または亜臨界状態の一般式(2)で表される低級アルコールを反応させて、一般式(3)で表されるポリアクリル酸エステルを得る工程と、一般式(3)で表されるポリアクリル酸エステルの重合度を測定して該重合度から前記ポリアクリル酸エステル(A)の重合度を測定する工程を含む、ポリアクリル酸エステル(A)の重合度の測定方法。
一般式(2)
3OH
(一般式(2)中、R3は置換もしくは無置換の炭素数1〜3のアルキル基である。)
【化1】

(一般式(3)中、R1は水素原子または置換もしくは無置換のメチル基であり、R3は置換もしくは無置換の炭素数1〜3のアルキル基である。nは重合度を示す。)
(2)前記多官能アクリル酸エステルは、官能基を1〜6個有するアクリル酸エステルである、(1)に記載のポリアクリル酸エステルの重合度の測定方法。
(3)一般式(1)で表されるポリアクリル酸エステルの重合度の測定方法であって、
一般式(1)で表されるポリアクリル酸エステルに、流通式の反応系で、かつ、一般式(1)で表されるポリアクリル酸エステルの主鎖が切断されない温度で、超臨界または亜臨界状態の一般式(2)で表される低級アルコールを反応させて、一般式(3)で表されるポリアクリル酸エステルを得る工程と、一般式(3)で表されるポリアクリル酸エステルの重合度を測定して該重合度から一般式(1)で表されるポリアクリル酸エステルの重合度を測定する工程を含む、測定方法。
【化2】

(一般式(1)中、R1は、水素原子または置換もしくは無置換のメチル基であり、R2は、置換もしくは無置換の炭素数1〜18のアルキル基である。nは重合度を示す。)
一般式(2)
3OH
(一般式(2)中、R3は置換もしくは無置換の炭素数1〜3のアルキル基である。)
【化3】

(一般式(3)中、R1は水素原子または置換もしくは無置換のメチル基であり、R3は、置換もしくは無置換の炭素数1〜3のアルキル基である。nは重合度を示す。)
(4)R1は水素原子または無置換のメチル基であり、R2は置換メチル基である、(3)に記載の測定方法。
(5)R3は無置換のメチル基である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の測定方法。
(6)240℃〜295℃の温度で前記反応を行う、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の測定方法。
(7)4時間以上前記反応を行う、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の測定方法。
(8)多官能アクリル酸エステルを重合させてなるポリアクリル酸エステル(A)に、流通式の反応系で、かつ、前記ポリアクリル酸エステル(A)の主鎖が切断されない温度で、超臨界または亜臨界状態の一般式(2)で表される低級アルコールを反応させる工程を含む、一般式(3)で表されるポリアクリル酸エステルの製造方法。
一般式(2)
3OH
(一般式(2)中、R3は炭素数1〜3のアルキル基である。)
【化4】

(一般式(3)中、R1は水素原子または置換もしくは無置換のメチル基であり、R3置換もしくは無置換の炭素数1〜3のアルキル基である。nは重合度を示す。)
【発明の効果】
【0007】
本発明を採用することにより、特定の構造を有するポリアクリル酸エステルの重合度を測定することが可能になった。この方法により、直接に分子量の測定が困難なポリアクリル酸エステルについても、その重合度から分子量を測定することが可能となった。
また、特定の構造を有するポリアクリル酸エステルから、他の特定の構造を有するポリアクリル酸エステルを製造することが可能になった。本発明の製造方法では、主鎖が切断されないので、重合度が一定のポリアクリル酸エステルが得られる。該製造方法は、特定の重合度のポリアクリル酸エステルを製造したい場合に特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0009】
本発明においては、多官能アクリル酸エステル、好ましくは、官能基を1〜6個有するアクリル酸エステルを重合してなるポリアクリル酸エステル(A)(より好ましくは、一般式(1)で表されるアクリル酸エステル)に、流通式の反応系で、かつ、前記ポリアクリル酸エステル(A)の主鎖が切断されない温度で、超臨界または亜臨界状態の一般式(2)で表される低級アルコールを反応させ、一般式(3)で表されるポリアクリル酸エステルを得る反応系を利用している。
このような反応系を採用することにより、本発明で用いるポリアクリル酸エステル(A)の主鎖が切断されずに、一般式(3)で表されるポリアクリル酸エステルが得られる。すなわち、両ポリアクリル酸エステルの重合度nが等しくなる。ここで「重合度nが等しい」とは、完全に同一である場合のみならず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において差異を有していてもよい。例えば、ポリアクリル酸エステルの分子量として誤差とみなせる範囲をいい、分子量 20,000〜50,000のポリアクリル酸エステルの場合、±2,000以内の範囲が例示される。本発明で特に好ましくは、重合度が完全に同一である場合である。
【0010】
ここで、一般式(3)で表されるポリアクリル酸エステルは、重合度の測定が可能なポリアクリル酸エステルであることが好ましい。このようなポリアクリル酸エステルであると、ポリアクリル酸エステル(A)の重合度を測定でき、該重合度から分子量も測定できる。重合度の測定が可能なポリアクリル酸エステルとしては、例えば、分子量の測定が可能なポリアクリル酸エステルが挙げられる。本発明で採用するポリアクリル酸エステルは、ホモポリマーであるため、容易に重合度が測定できる。
この方法は、直接的に、分子量の測定ができないポリアクリル酸エステルの分子量を測定するのに特に有効である。例えば、溶剤に溶解しない等の理由により分子量の測定が困難なポリアクリル酸エステルの分子量を測定する場合に有効な方法である。
一般式(3)で表されるポリアクリル酸エステルの分子量の測定方法は、公知の方法を広く採用できる。例えば、新版高分子分析ハンドブック(日本分析化学会、高分子分析研究懇談会編:紀伊国屋書店)、45ページに記載の方法を採用できる。
【0011】
また、本発明における反応機構は、一般式(3)で表されるポリアクリル酸エステルの製造方法としても利用することができる。特に、本発明では、反応率を90%以上とすることができるという利点がある。
さらには、本発明で用いるポリアクリル酸エステル(A)が溶剤に不溶若しくは難溶である場合、該ポリアクリル酸エステルを溶媒に可溶化若しくは易溶化する方法として採用することもできる。
【0012】
次に、本発明で用いるポリアクリル酸エステル(A)について説明する。
本発明で用いるポリアクリル酸エステル(A)は、多官能アクリル酸エステルの重合体に相当するものであれば特に定めるものではない。また、架橋構造を有するものであってもよい。
【0013】
ここで、多官能アクリル酸エステルとは、例えば、CH2=CRCOORで表されるもの(Rはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す)をいう。以下、多官能アクリル酸エステルについて説明する。
【0014】
多官能アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。
【0015】
(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、アセトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、
【0016】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチル
エーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、β−フェノキシエトキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、オクタフロロペンチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜18であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ドデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等)、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜18であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ドデカプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等)、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリ(メタ)アクリレート、1,5−ベンタンジオール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコール鎖/プロピレングリコール鎖を少なくとも各々一つずつ有するアルキレングリコール鎖のジ(メタ)アクリレート(例えば、国際公開WO01/98832号パンフレットに記載の化合物等)、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの少なくともいずれかを付加したトリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、キシレノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
また、上記のほか、下記構造式(23)、(26)〜(32)、(35)、(36)、(60)で表される化合物が挙げられる。
【0018】
【化5】

構造式(23)中、R1は水素原子または置換若しくは無置換のメチル基を表す。
【0019】
【化6】

構造式(26)中、R1は水素原子または置換若しくは無置換のメチル基を表す。nは1以上の整数を表す。
【0020】
【化7】

構造式(27)中、R1は水素原子または置換若しくは無置換のメチル基を表す。nは1以上の整数を表す。
【0021】
【化8】

構造式(28)中、R1は水素原子または置換若しくは無置換のメチル基を表す。nは1以上の整数を表す。
【0022】
【化9】

構造式(29)中、R1は水素原子または置換若しくは無置換のメチル基を表す。nは1以上の整数を表す。
【0023】
【化10】

構造式(30)中、R1は水素原子または置換若しくは無置換のメチル基を表す。n1、n2はそれぞれ1以上の整数を表す。
【0024】
【化11】

構造式(31)中、R1は水素原子または置換若しくは無置換のメチル基を表す。n1、n2はそれぞれ1以上の整数を表す。
【0025】
【化12】

構造式(32)中、R1は水素原子または置換若しくは無置換のメチル基を表す。n1、n2はそれぞれ1以上の整数を表す。
【0026】
【化13】

【0027】
【化14】

【0028】
構造式(35)、(36)中、R1〜R3は、それぞれ水素原子または置換もしくは無置換のメチル基を表す。
【0029】
構造式(35)、(36)中、X1〜X3はそれぞれアルキレンオキサイド基を表し、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
前記アルキレンオキサイド基としては、例えば、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、ブチレンオキサイド基、ペンチレンオキサイド基およびヘキシレンオキサイド基、ならびにこれらの2以上を組み合わせた基(ランダム、ブロックのいずれに組み合わされてもよい)が好ましく、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基およびブチレンオキサイド基ならびにこれらの2以上を組み合わせた基がより好ましく、エチレンオキサイド基およびプロピレンオキサイド基がさらに好ましい。
【0030】
前記構造式(35)及び(36)中、m1〜m3は、1〜60の整数を表し、2〜30の整数が好ましく、4〜15の整数がより好ましい。
【0031】
前記構造式(35)及び(36)中、Y1及びY2は、それぞれ、炭素数2〜30の2価の有機基を表し、例えば、アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、カルボニル基(−CO−)、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、イミノ基(−NH−)、イミノ基の水素原子が1価の炭化水素基で置換された置換イミノ基およびスルホニル基(−SO2−)ならびにこれらの2以上を組み合わせた基などが好ましい例として挙げられ、これらの中でも、アルキレン基およびアリーレン基ならびにこれらの2以上を組み合わせた基が好ましい。
【0032】
前記アルキレン基は、分岐構造または環状構造を有していてもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ネオペンチレン基、ヘキシレン基、トリメチルヘキシレン基、シクロへキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、2−エチルヘキシレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、オクタデシレン基、または下記に示すいずれかの基などが好ましい例として挙げられる。
【0033】
【化15】

【0034】
前記アリーレン基としては、炭化水素基で置換されていてもよく、例えば、フェニレン基、トリレン基、ジフェニレン基、ナフチレン基、または下記に示す基などが好適に挙げられる。
【0035】
【化16】

【0036】
前記これらを組み合わせた基としては、例えば、キシリレン基などが挙げられる。
【0037】
前記アルキレン基およびアリーレン基、ならびにこれらの2以上を組み合わせた基としては、更に置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アリール基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、2−エトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ブチリルオキシ基)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基)などが挙げられる。
【0038】
前記構造式(35)及び(36)中、nは3〜6の整数を表し、3、4又は6が好ましい。
【0039】
前記構造式(35)及び(36)中、Zはn価(3価〜6価)の基を表し、例えば、下記に示すいずれかの基などが挙げられる。
【0040】
【化17】

但し、X4はアルキレンオキサイド基を表す。m4は、1〜20の整数を表す。nは、3〜6の整数を表す。Aは、n価(3価〜6価)の有機基を表す。
【0041】
前記Aとしては、例えば、n価の脂肪族基およびn価の芳香族基ならびにこれらとアルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子、イミノ基、イミノ基の水素原子が1価の炭化水素基で置換された置換イミノ基又はスルホニル基とを組み合わせた基が好ましく、n価の脂肪族基およびn価の芳香族基ならびにこれらとアルキレン基、アリーレン基、酸素原子とを組み合わせた基がより好ましく、n価の脂肪族基またはn価の脂肪族基とアルキレン基および/または酸素原子とを組み合わせた基が特に好ましい。
【0042】
前記Aの炭素数としては、例えば、1〜100の整数が好ましく、1〜50の整数がより好ましく、3〜30の整数がさらに好ましい。
【0043】
前記n価の脂肪族基としては、分岐構造又は環状構造を有していてもよい。前記脂肪族基の炭素数としては、1〜30の整数が好ましく、1〜20の整数がより好ましく、3〜10の整数がさらに好ましい。
前記芳香族基の炭素数としては、6〜100の整数が好ましく、6〜50の整数がより好ましく、6〜30の整数がさらに好ましい。
【0044】
前記n価の脂肪族基又は芳香族基は、更に置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アリール基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、2−エトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ブチリルオキシ基)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基)などが挙げられる。
【0045】
前記アルキレン基は、分岐構造又は環状構造を有していてもよい。前記アルキレン基の炭素数としては、例えば、1〜18の整数が好ましく、1〜10の整数がより好ましい。
【0046】
前記アリーレン基は、炭化水素基でさらに置換されていてもよい。 前記アリーレン基の炭素数としては、6〜18の整数が好ましく、6〜10の整数がより好ましい。
【0047】
前記置換イミノ基の1価の炭化水素基の炭素数としては、1〜18の整数が好ましく、1〜10の整数がより好ましい。
【0048】
以下に、前記Aの好ましい例は以下の通りである。
【0049】
【化18】

【0050】
前記構造式(35)及び(36)で表される化合物としては、下記構造式(37)〜(59)で表される化合物が好ましい。
【0051】
【化19】

【0052】
【化20】

【0053】
【化21】

【0054】
【化22】

【0055】
【化23】

【0056】
【化24】

【0057】
【化25】

【0058】
【化26】

【0059】
【化27】

【0060】
【化28】

【0061】
【化29】

【0062】
【化30】

【0063】
【化31】

【0064】
【化32】

【0065】
【化33】

【0066】
【化34】

【0067】
【化35】

【0068】
【化36】

【0069】
【化37】

【0070】
【化38】

【0071】
【化39】

【0072】
【化40】

【0073】
【化41】

【0074】
但し、前記構造式(37)〜(59)中、n、n1、n2及びmは、それぞれ、1〜60の整数を表し、lは1〜20の整数を表し、Rは水素原子又は置換若しくは無置換のメチル基を表す。
さらに好ましくは、構造式(60)で表される化合物が挙げられる。
【0075】
【化42】

前記構造式(60)中、R4、R5は、それぞれ、水素原子又は置換若しくは無置換のメチル基を表す。
【0076】
前記構造式(60)中、X5及びX6は、それぞれ、アルキレンオキサイド基を表し、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。該アルキレンオキサイド基としては、例えば、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、ブチレンオキサイド基、ペンチレンオキサイド基およびヘキシレンオキサイド基、ならびにこれらを2以上組み合わせた基(ランダム、ブロックのいずれに組み合わされてもよい)などが好ましく、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基およびブチレンオキサイド基並びにこれらを2以上組み合わせた基がより好ましく、エチレンオキサイド基およびプロピレンオキサイド基がさらに好ましい。
【0077】
前記構造式(60)中、m5、m6は、それぞれ、1〜60の整数が好ましく、2〜30の整数がより好ましく、4〜15の整数がさらに好ましい。
【0078】
前記構造式(60)中、Tは、2価の連結基を表し、例えば、メチレン基、エチレン基、−C(CH32−、−C(CF32−、−CO−、−SO2−などが好ましい例として挙げられる。
【0079】
前記構造式(60)中、Ar1、Ar2は、それぞれ、置換基を有していてもよいアリール基を表し、例えば、フェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。前記置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン基およびアルコキシ基、ならびにこれらの2以上の組合せなどが挙げられる。
【0080】
具体的には、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリルオキシエトキシ)フェニル〕プロパン、フェノール性のOH基1個に置換させたエトキシ基の数が2〜20である2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシポリエトキシ)フェニル)プロパン(例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン等)、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリルオキシプロポキシ)フェニル〕プロパン、フェノール性のOH基1個に置換させたエトキシ基の数が2〜20である2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン(例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシジプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシペンタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロイルオキシペンタデカプロポキシ)フェニル)プロパン等)、又はこれらの化合物のポリエーテル部位として同一分子中にポリエチレンオキシド骨格とポリプロピレンオキシド骨格の両方を含む化合物(例えば、国際公開WO01/98832号パンフレットに記載の化合物等が挙げられる。
【0081】
本発明におけるポリアクリル酸エステル(A)は、アクリル酸エステルを重合させてなる重合体である。
ここで、重合としては、光重合が好ましい。光重合に用いられる光重合開始剤は、アクリル酸エステルの重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができるが、例えば、紫外線領域から可視の光線に対して感光性を有するものが好ましく、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよく、モノマーの種類に応じてカチオン重合を開始させるような開始剤であってもよい。
また、前記光重合開始剤は、約300〜800nm(より好ましくは330〜500nm)の範囲内に少なくとも約50の分子吸光係数を有する成分を少なくとも1種含有していることが好ましい。
【0082】
前記光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有するもの、オキサジアゾール骨格を有するもの等)、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、メタロセン類などが挙げられる。これらの中でも、感光層の感度、保存性、及び感光層とプリント配線板形成用基板との密着性等の観点から、トリアジン骨格を有するハロゲン化炭化水素、オキシム誘導体、ケトン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物が好ましい。
【0083】
本発明におけるポリアクリル酸エステル(A)は、より好ましくは、一般式(1)で表されるポリアクリル酸エステルである。
【0084】
【化43】

(一般式(1)中、R1は、水素原子または置換もしくは無置換のメチル基であり、R2は、置換もしくは無置換の炭素数1〜18のアルキル基である。nは重合度を示す。)
【0085】
1は、無置換のメチル基または水素原子が好ましく、無置換のメチル基がより好ましい。
【0086】
2は、置換もしくは無置換の炭素数1〜18のアルキル基(置換基を有する場合、該置換基の炭素数を含めた炭素数が1〜18である、以下同様に考える)であり、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。本発明の反応機構を重合度の測定に利用する場合、R2は、通常、置換アルキル基である。
ここで置換基としては、アリール基(例えば、フェニル基、ベンジル基、クレゾール基、フタル酸アルキル、エトキシフェニル基、アルキルフェニルポリエチレングリコール基等)を挙げることができる。
2は、置換メチル基または置換エチル基が好ましく、置換メチル基がより好ましい。
【0087】
nは、特に定めるものではないが、好ましくは、4〜10,000である。
一般式(1)は、R1が水素原子または無置換のメチル基で、R2が置換メチル基であるものがさらに好ましい。
【0088】
本発明における、一般式(2)で表される低級アルコールは、下記の通りである。
一般式(2)
3OH
(一般式(2)中、R3は置換もしくは無置換の炭素数1〜3のアルキル基である。)
3は直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。置換基としては、アルキル基が好ましい。R3は、置換若しくは無置換のメチル基または無置換のエチル基がより好ましい。
本発明における反応系では、例えば、一般式(1)で表されるポリアクリル酸エステルが、R1が水素原子または無置換のメチル基で、R2が置換メチル基のものである場合、R3は無置換のメチル基であることが好ましい。
【0089】
本発明における、一般式(3)で表されるポリアクリル酸エステルは、下記の通りである。
【0090】
【化44】

(一般式(3)中、R1は水素原子または置換もしくは無置換のメチル基であり、R3は置換もしくは無置換の炭素数1〜3のアルキル基である。nは重合度を示す。)
ここで、R3は、一般式(2)におけるR3と同義である。
【0091】
本発明では、超臨界または亜臨界状態の低級アルコールを用いて、好ましくは超臨界状態の低級アルコールを用いて反応が行われる。超臨界または亜臨界状態は、低級アルコールの種類や加熱温度、圧力に応じて調整され、例えば、「超臨界流体のすべて」(荒井康彦監修、テクノシステム)に記載の方法に従って調整することができる。
【0092】
本発明における流通式の反応系とは、例えば、ポリアクリル酸エステル(A)から一般式(3)で表されるポリアクリル酸エステルへの反応が平衡にならないように、副生成物であるR2OHを反応系から除去する系をいう。より好ましくは、前記反応系において、さらに、反応に利用されなかった一般式(2)で表される低級アルコールも、反応系から除去するように設定されている反応系をいう。このような手段により、流通式の反応系では、反応率が向上すると共に、主鎖切断がなく、副生成物が除去できるという利点がある。
【0093】
流通式の反応系を実行させるために、例えば、反応部と回収部を有する装置を用いて製造することができる。
反応部では、ポリアクリル酸エステル(A)の一般式(3)で表されるポリアクリル酸エステルへの変換反応が行われる。そして、該反応部へは、一般式(2)で表される低級アルコールが供給される。また、反応部で生成された、副生成物(R2OH)および反応に用いられなかった一般式(2)で表される低級アルコールが回収部にて回収される。
反応部の温度は、ポリアクリル酸エステル(A)の主鎖が切断されない温度である。このような温度は、ポリアクリル酸エステルの構造に応じて適宜定めることができ、通常、240℃〜295℃であり、好ましくは270〜295℃である。特に、一般式(1)で表されるポリアクリル酸エステルであって、R1が水素原子または無置換のメチル基で、R2が置換メチル基のものを用いる場合、270〜295℃が好ましい。
【0094】
反応部の圧力は、超臨界状態を保持し、かつ反応に使われる容器(反応管)が耐える条件で行われる。例えば、8〜40MPaであり、好ましくは8〜20MPaである。特に、一般式(1)で表されるポリアクリル酸エステルであってR1が水素原子または無置換のメチル基で、R2が置換メチル基のものである場合、8〜20MPaであることが好ましい。
【0095】
反応部に供給される一般式(2)で表される低級アルコールは、反応部の反応系における超臨界または亜臨界状態における密度が、0.1〜0.5g/cm3となるように供給されることが好ましい。
特に、一般式(1)で表されるポリアクリル酸エステルであってR1が水素原子または無置換のメチル基で、R2が置換メチル基のものを用いる場合、超臨界または亜臨界状態における密度が、0.2〜0.45g/cm3となるように供給されることが好ましい。
【0096】
反応部で反応させる時間は、好ましくは4時間以上、より好ましくは4〜12時間である。バッチ式では、反応時間が長時間(例えば、2時間超え)となると、主鎖が切断されてしまうが、本発明ではこのような問題がない。特に、一般式(1)で表されるポリアクリル酸エステルであって、R1が水素原子または無置換のメチル基で、R2が置換メチル基のものを採用する場合、4〜8時間であることが好ましい。
【0097】
反応部は、充填剤とともにポリアクリル酸エステル(A)を充填し、該反応系で、上記変換反応を進行させることが好ましい。このような手段を採用することにより、反応部のみ超臨界状態に保ち、反応終了後、生成したポリアクリル酸エステルを容易に回収可能であるという利点がある。ここで、充填剤としては、ガラスウール、セラミックビーズ、SUSビーズが好ましい。
さらに、反応部の出入口部分等に、メッシュを設けることが好ましい。このような手段を採用することにより、反応部の充填物の漏れ防止に効果的であるという利点がある。ここで、メッシュとして、金属フィルターを例示することができる。
さらに、反応部と回収部の間に、冷却ゾーン、超臨界状態を保つための背圧弁が設けられていることが好ましく、該順に設けられていることがより好ましい。このような手段を採用することにより、反応部は超臨界状態、冷却ゾーンは液体状態となり、副生成物の回収が容易となるという利点がある。
【実施例】
【0098】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0099】
実施例1
図1に示す、流通式装置を用いて反応を行った。該流通式装置は、メタノール保存ビン1と、反応管4(内容積8cm3のSUS316製円筒容器:外径1/2インチ、肉厚2mm、長さ15cm)が設けられており、その間に、メタノールを連続供給する液体クロマトグラフィー用ポンプ(日立製L−6000、流量:0.25ml/min) 2と、流路開閉バルブ3が設けられている。また、反応管4には、ポリアクリル酸エステルがガラスウールとともに充填されており、その周囲には、反応管4を加熱してメタノールを超臨界状態にするための電気炉5(アサヒ理化製作所製ARF−50K)が設けられている。さらに、反応管4の圧力を調整して超臨界状態にするための背圧弁6と、回収ビン7が設けられている。
また、下記測定方法を採用した。
フーリエ変換赤外分光(FT−IR):堀場製作所製FT−IR装置FT−720を用い、KBr錠剤法で測定した。
ガスクロマトグラフィー−質量分析法(GC−MS):島津製作所製GC−MS装置QP2010にJ&Wサイエンティフィック製DB−WAX型カラムを装着し、質量分析型検出器を用いて検出した。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC):昭和電工製GPC装置GPC−101装置に昭和電工製KF806M型カラムを装着し、示差屈折率検出器を用いて検出した。なお、重量平均分子量はポリスチレン換算により求めた。
【0100】
具体的には、ポリアクリル酸ベンジルエステル(アルドリッチ製:重量平均分子量60,500±4,000) 0.1gを充填材であるガラスウールとともに反応管に仕込み、電気炉にて280℃まで昇温して反応を開始した。反応時の圧力は13MPa、メタノール流量は0.25ml/min(超臨界状態におけるメタノール密度0.2g/cm3)であった。反応時間は、270分であった。この時間は、エステル交換反応により生成したベンジルアルコール(BzOH)をGC−MS装置で定量することにより求められる反応率がほぼ100%になる時間により判断した。反応終了後、反応管を急速に空冷し、室温に戻った後に反応管内の反応生成物を取り出した。反応生成物はFT−IRで測定することにより、ポリアクリル酸メチルであることを確認した。反応率は、92%であった。
【0101】
次に、反応生成物をテトラヒドロフラン(THF)に濃度0.5%となるように溶解し、得られたポリアクリル酸メチルの分子量を測定した。重量平均分子量は34,800であった。すなわち、ポリアクリル酸ベンジルエステルの重合度344±23量体に対して生成したポリアクリル酸メチル(PMMA)の重合度は348量体となった。
この分析結果より、主鎖の切断がないことが確認された。さらに、生成したポリアクリル酸メチルの重合度より、反応前のポリアクリル酸ベンジルエステルの重合度を測定できることが確認された。
【0102】
比較例1
比較例として、図2に示したバッチ式装置を用いて実施例1に記載の反応を試みた。図2中、8はソルトバスを、9は温度計を、10は撹拌器を、11は反応管をそれぞれ示している。
ポリアクリル酸ベンジルエステル(アルドリッチ製:重量平均分子量60,500±4,000) 0.1gとメタノール1.6mlを反応管11(SUS316製、内容積8min)に仕込み、密栓後、ソルトバス8にて280℃まで昇温して反応を開始した。反応時の圧力は13MPaであった。120分後反応管を急冷し、室温に戻った後に反応生成物を回収した。エステル交換反応により生成したベンジルアルコールをGC−MSで定量することにより求められた反応率は65%であった。
反応生成物はIR測定より、ポリアクリル酸メチルとポリアクリル酸ベンジルエステルの混合物であった。反応生成物をTHFで濃度0.5%に溶解し、GPCを測定した。重量平均分子量は7,000であった。この分析結果より、得られたポリアクリル酸メチルとポリアクリル酸ベンジルエステルの混合物は、ポリアクリル酸ベンジルエステルの主鎖が切断されてなることが確認された。
すなわち、バッチ式では反応率が悪いことに加え、ポリマーの主鎖切断が起きていることが確認された。
【0103】
実施例2
ポリアクリル酸エステル(PNPGDMA)の合成
下記モノマーと下記光重合開始剤を含む組成物(20:1(重量比))を調整した。該組成物を基板上に塗布し、超高圧水銀灯(積算光量:999mJ/cm2)で露光して、光重合膜 (以後、PNPGDMAと略す)を得た。
【0104】
モノマー:ネオペンチルグリコールジメタクリレート(新中村化学製、NKエステルNPG)
【0105】
【化45】

光重合開始剤:2,4−ビス(トリクロルメチル)−6−(4−(N,N−ジエトキシカルボニルメチル)−3−ブロモフェニル)−s−トリアジン(和光純薬製、PM834)
【0106】
【化46】

【0107】
PNPGDMA0.1gを充填材であるガラスウールとともに反応管に仕込み、電気炉にて280℃まで昇温して反応を開始した。反応時の圧力は13MPa、メタノール流量は0.25ml/minであった。反応時間は、600分であった。この時間は、エステル交換反応により生成したネオペンチルグリコールをGCまたはLCで定量することにより求められる反応率がほぼ100%になる時間より判断した。反応終了後、反応管を急速に空冷し、室温に戻った後に反応管内の反応生成物を取り出した。反応生成物はFT−IRで測定することにより、ポリアクリル酸メチルであることを確認した。次に、反応生成物をTHFで濃度0.5%に溶解し、ポリアクリル酸メチルの分子量を測定した。重量平均分子量は40,000であった。すなわち、PNPGDMA の重合度は400量体であることが確認された。
【0108】
実施例3
実施例2において、モノマーを下記モノマーに代え、他は同様に行って、光重合膜 (以後、PBPE500と略す)を得た。
モノマー:2,2‘−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン(新中村化学製、NKエステルBPE500)
【0109】
【化47】

【0110】
実施例2と同様に行ったところ、この結果、ポリアクリル酸メチルの重量平均分子量は9,000であった。すなわち、PBPE500の重合度は90量体であることが確認された。
【0111】
実施例2および3の結果より、使用したモノマーにより架橋ポリマーの重合度に差が見られることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本願実施例1で用いた流通式装置の概略図を示す。
【図2】本願比較例1で用いたバッチ式装置の概略図を示す。
【符号の説明】
【0113】
1 保存ビン
2 液体クロマトグラフィー用ポンプ
3 流路開閉バルブ
4 反応管
5 電気炉
6 背圧弁
7 回収ビン
8 ソルトバス
9 温度計
10 撹拌器
11 反応管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能アクリル酸エステルを重合させてなるポリアクリル酸エステル(A)に、流通式の反応系で、前記ポリアクリル酸エステル(A)の主鎖が切断されない温度で、超臨界または亜臨界状態の一般式(2)で表される低級アルコールを反応させて、一般式(3)で表されるポリアクリル酸エステルを得る工程と、一般式(3)で表されるポリアクリル酸エステルの重合度を測定して該重合度から前記ポリアクリル酸エステル(A)の重合度を測定する工程を含む、ポリアクリル酸エステル(A)の重合度の測定方法。
一般式(2)
3OH
(一般式(2)中、R3は置換もしくは無置換の炭素数1〜3のアルキル基である。)
【化1】

(一般式(3)中、R1は水素原子または置換もしくは無置換のメチル基であり、R3は置換もしくは無置換の炭素数1〜3のアルキル基である。nは重合度を示す。)
【請求項2】
前記多官能アクリル酸エステルは、官能基を1〜6個有するアクリル酸エステルである、請求項1に記載のポリアクリル酸エステルの重合度の測定方法。
【請求項3】
一般式(1)で表されるポリアクリル酸エステルの重合度の測定方法であって、
一般式(1)で表されるポリアクリル酸エステルに、流通式の反応系で、かつ、一般式(1)で表されるポリアクリル酸エステルの主鎖が切断されない温度で、超臨界または亜臨界状態の一般式(2)で表される低級アルコールを反応させて、一般式(3)で表されるポリアクリル酸エステルを得る工程と、一般式(3)で表されるポリアクリル酸エステルの重合度を測定して該重合度から一般式(1)で表されるポリアクリル酸エステルの重合度を測定する工程を含む、測定方法。
【化2】

(一般式(1)中、R1は、水素原子または置換もしくは無置換のメチル基であり、R2は、置換もしくは無置換の炭素数1〜18のアルキル基である。nは重合度を示す。)
一般式(2)
3OH
(一般式(2)中、R3は置換もしくは無置換の炭素数1〜3のアルキル基である。)
【化3】

(一般式(3)中、R1は水素原子または置換もしくは無置換のメチル基であり、R3は、置換もしくは無置換の炭素数1〜3のアルキル基である。nは重合度を示す。)
【請求項4】
1は水素原子または無置換のメチル基であり、R2は置換メチル基である、請求項3に記載の測定方法。
【請求項5】
3は無置換のメチル基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の測定方法。
【請求項6】
240℃〜295℃の温度で前記反応を行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載の測定方法。
【請求項7】
4時間以上前記反応を行う、請求項1〜6のいずれか1項に記載の測定方法。
【請求項8】
多官能アクリル酸エステルを重合させてなるポリアクリル酸エステル(A)に、流通式の反応系で、かつ、前記ポリアクリル酸エステル(A)の主鎖が切断されない温度で、超臨界または亜臨界状態の一般式(2)で表される低級アルコールを反応させる工程を含む、一般式(3)で表されるポリアクリル酸エステルの製造方法。
一般式(2)
3OH
(一般式(2)中、R3は炭素数1〜3のアルキル基である。)
【化4】

(一般式(3)中、R1は水素原子または置換もしくは無置換のメチル基であり、R3置換もしくは無置換の炭素数1〜3のアルキル基である。nは重合度を示す。)

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−56719(P2008−56719A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231653(P2006−231653)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】