説明

ポリアセタール樹脂成形品

【課題】成形品に応力が存在する状態において、有機酸、無機酸等の酸性物質を有する液体との直接接触に対して高度の耐久性を有する成形品を提供する。
【解決手段】(A)ポリアセタール樹脂100重量部に対して、(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.1〜3.0重量部、(C)含窒素化合物0.001〜3.0重量部、(D)脂肪酸カルシウム塩0.1〜3.0重量部、及び、(E)滑剤0.1〜3.0重量部を添加して成るポリアセタール樹脂組成物からなり酸性雰囲気下にて応力のかかった状態で使用される成形品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性雰囲気下において応力がかかった状態での耐久性に優れたポリアセタール樹脂組成物からなる成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、機械的物性、耐熱性、耐化学薬品性、電気的性質に優れ、且つその成形加工の容易さからエンジニアリングプラスチックとして、自動車部品、電機・電子部品、各種機械、建材、機能雑貨等の分野で幅広く利用されている材料である。しかしながら、ポリアセタール樹脂は酸に弱い性質を持つため酸性雰囲気での使用には大きな制約があり、実際には、微濃度の酸性雰囲気の場合のみに使用が制限されている。
【0003】
このようなポリアセタール樹脂の利用分野として、例えば自動車部品としては、耐薬品性、特に耐燃料性に優れるため、燃料油と直接接触する、例えば燃料ポンプモジュールなどに代表される燃料搬送ユニット等の大型部品がある。
【0004】
一方、近年、自動車用燃料としては、二酸化炭素排出による地球温暖化に対する防止策として、また、石油価格の高騰に対する対応策として、生物資源由来の所謂バイオ燃料を普及させようとする動きがある。しかしながらバイオディーゼル燃料に用いられる燃料は種々の植物等から製造されるため、有機酸等の不純物も多く、旧来のディーゼル燃料(軽油)と比べると劣化による酸性物質も発生しやすい。従ってその種の燃料と直接接触する部品には、耐燃料性と共に優れた耐酸性を兼ね備えた材料を使用することが要求される。
【0005】
また樹脂化による軽量化や一体化によるコストダウンを目的として複雑な形状を一体成形した製品が増加している。このような成形品の場合、肉厚の変化や、リブやパイプ等が一体化していることで成形品内に成形時の残留応力が残りやすい構造となっている。このような残留応力の残った成形品の場合、酸性物質が接触することで応力緩和破壊により製品が破壊されることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリアセタール樹脂組成物からなる成形品であり、成形品に応力が存在する状態において、有機酸、無機酸等の酸性物質を有する液体との直接接触に対して高度の耐久性を有する成形品を提供することを目的とするものである。中でも、酸性成分を含む自動車用燃料と直接接触しても優れた耐久性を有する自動車部品を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、特定のポリアセタール樹脂組成物からなる成形品によって目的が達成されることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
即ち本発明は、(A)ポリアセタール樹脂100重量部に対して、(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.1〜3.0重量部、(C)含窒素化合物0.001〜3.0重量部、(D)脂肪酸カルシウム塩0.1〜3.0重量部、及び、(E)滑剤0.1〜3.0重量部を添加して成るポリアセタール樹脂組成物からなり酸性雰囲気下にて応力のかかった状態で使用される成形品に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリアセタール樹脂組成物からなる成形部品は、非常に優れた耐酸性と応力緩和性を有している。また、十分な機械的強度、耐熱性も有する。このため、酸性成分を含有する液体と直接接触する成形品、例えば、硫黄や酸性物質を含んだ自動車用燃料、特に、バイオディーゼル燃料と直接接触する部品等に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明で用いられる(A)ポリアセタール樹脂とは、オキシメチレン基(-CH2O-)を主たる構成単位とする高分子化合物であり、実質的にオキシメチレン基の繰り返し単位のみからなるポリアセタールコポリマー、オキシメチレン基以外に他の構成単位を少量含有するポリアセタールコポリマー等が挙げられる。これらは何れも使用可能であるが、本発明の目的である耐酸性の観点から、ポリアセタールコポリマーを基体樹脂とするのが好ましい。ポリアセタールコポリマーとしては、コモノマー成分を0.5〜30重量%共重合させてなるポリアセタールコポリマーが好ましく、特に好ましくはコモノマー成分を0.5〜10重量%共重合させてなるものである。コモノマー成分を共重合させてなるポリアセタールコポリマーは、耐酸性に優れると共に、優れた熱安定性、機械的強度等を保持できる。また、ポリアセタールコポリマーは、分子が線状構造を有するものだけでなく、分岐構造、架橋構造を有するものであっても良い。
【0011】
このようなポリアセタールコポリマーを製造するにあたり、主モノマーとしては、トリオキサンに代表されるホルムアルデヒドの環状オリゴマーが用いられる。また、コモノマー成分としては、少なくとも1つの炭素−炭素結合を有する環状エーテル及び環状ホルマールから選ばれた化合物が用いられる。このようなコモノマーとしては、例えばエチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,3−ジオキサン、プロピレンオキシド等が挙げられる。
【0012】
上記のようなポリアセタール樹脂(A)、特にポリアセタール共重合体において、その重合度等については特に制約はなく、その使用目的や成形手段に応じた重合度等の調整が可能であるが、耐酸性と成形性の両立の観点から、温度190℃、荷重2.16kgにおいて測定されるメルトインデックス(MI)が1〜100g/10分であることが好ましく、特に好ましくは5〜30g/10分である。
【0013】
メルトインデックスが5g/10分より小さくなると成形時に流動性が低下することで成形品の残留応力が大きくなり、酸性雰囲気下に成形品を放置した際、ソルベントクラックによる割れが発生しやすくなる。一方、メルトインデックスが30g/10分よりも高くなるとポリアセタール樹脂の分子量が小さくなり、酸性雰囲気下で酸による攻撃を受けた際の強度低下が大きくなる。
【0014】
本発明において使用される(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ヘキサメチレングリコール−ビス(3,5 −ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)、テトラキス〔メチレン(3,5 −ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)〕メタン、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,3,5 −トリメチル−2,4,6 −トリス(3,5 −ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル)ベンゼン、n−オクタデシル−3−(4'−ヒドロキシ−3',5' −ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、4,4'−メチレンビス(2,6 −ジ−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデン−ビス−(6−t−ブチル−3−メチル−フェノール)、ジ−ステアリル−3,5 −ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、3,9 −ビス{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1 −ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5 〕ウンデカン等が例示される。
【0015】
本発明においては、これらの酸化防止剤から選ばれた少なくとも一種又は二種以上を使用することができる。
【0016】
(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤の融点は100℃未満のものが好ましい。融点が低いことでポリアセタール樹脂中で運動性が向上し、成形品表面への酸化攻撃に対し効果的に酸化防止機能が発現する。トリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート(融点約77℃)などは特に好ましい酸化防止剤である。
【0017】
本発明における(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤の添加量は、(A)ポリアセタール樹脂100重量部に対し、0.1〜3.0重量部である。(B)酸化防止剤の配合量が少ないと、本来の目的である酸化防止特性が不十分になるだけでなく、本発明の目的である耐酸性も劣るものとなる。(B)酸化防止剤の配合量が過剰の場合は、樹脂組成物の機械特性や成形性等の好ましくない影響が生じる。
【0018】
本発明において使用される(C)窒素含有化合物としては、メラミンおよびその誘導体(グアナミンおよびその誘導体も含む)、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ヒドラジド化合物、ポリアミドおよびポリアクリルアミド等が挙げられる。
【0019】
まず、メラミン及びその誘導体としては、メラミン(2,4,6 −トリアミノ−sym −トリアジン)、メレム、メラム、メロン、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N −ジフェニルメラミン、N,N −ジアリルメラミン、N,N",N" −トリメチロールメラミン、ベンゾグアナミン(2,4 −ジアミノ−6−フェニル−sym −トリアジン)、2,4 −ジアミノ−6−メチル−sym −トリアジン、2,4 −ジアミノ−6−ブチル−sym −トリアジン、2,4 −ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym −トリアジン、2,4 −ジアミノ−6−ブトキシ−sym −トリアジン、2,4 −ジアミノ−6−シクロヘキシル−sym −トリアジン、2,4 −ジアミノ−6−クロロ−sym −トリアジン、2,4 −ジアミノ−6−メルカプト−sym −トリアジン、2,4 −ジオキシ−6−メルカプト−sym −トリアジン、2,4 −ジオキシ−6−アミノ−sym −トリアジン(アメライド)、2−オキシ−4,6 −ジアミノ−sym −トリアジン(アメリン)、N,N,N',N' −テトラシアノエチルベンゾグアナミン等が使用される。
【0020】
メラミンホルムアルデヒド樹脂としては、メラミンとホルムアルデヒドとから1:0.8 〜1:10.0のモル比で製造され、水に不溶性のメラミン−ホルムアルデヒド重縮合物が使用される。
【0021】
ヒドラジド化合物としては、アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等が挙げられる。
【0022】
ポリアミドとしては、ナイロン12、ナイロン6・10、ナイロン6・66・610 の如き単独または共重合ポリアミド、メチロール基等を有する置換ポリアミド、ナイロン塩、カプロラクタムから合成、またはカプロラクトン、カプロラクタムとの組み合わせから合成されるポリエステルアミド等が使用される。
【0023】
ポリアクリルアミドとしては、アクリルアミドの単独重合体及びその共重合体、架橋体のうちの1種または2種以上が使用される。これらの内でも、メラミンおよびメラミンの誘導体、メラミンホルムアルデヒド樹脂の内から選ばれた1種または2種以上であることが好ましく、さらにメラミンとホルムアルデヒドとから1:0.8 〜1:10.0のモル比で製造され、水に不溶性のメラミン−ホルムアルデヒド重縮合物であるメラミンホルムアルデヒド樹脂を使用することが特に好ましい。
【0024】
本発明において使用される(C)窒素含有化合物の配合量は、(A)ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.001〜3.0重量部が好ましい。
【0025】
本発明においては、耐酸性を飛躍的に向上させるために(D)脂肪酸カルシウム塩が配合される。(D)脂肪酸カルシウム塩を構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。また、一部の水素原子がヒドロキシル基などの置換基で置換されたものも使用できる。このような脂肪酸としては、炭素数10以上の1価又は2価の脂肪酸、例えば、炭素数10以上の1価の飽和脂肪酸[カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、べヘン酸、モンタン酸などのC10-34飽和脂肪酸(好ましくはC10-30飽和脂肪酸)など]、炭素数10以上の1価の不飽和脂肪酸[オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エルカ酸などのC10-34不飽和脂肪酸(好ましくはC10-30不飽和脂肪酸)など]、炭素数10以上の2価の脂肪酸(二塩基性脂肪酸)[セバシン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、タプシア酸などの2価のC10-30飽和脂肪酸(好ましくは2価のC10-20飽和脂肪酸)、デセン二酸、ドデセン二酸などの2価のC10-30不飽和脂肪酸(好ましくは2価のC10-20不飽和脂肪酸)など]が例示できる。
【0026】
前記脂肪酸には、1つ又は複数のヒドロキシル基を分子内に有する脂肪酸(例えぱ、12−ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシ飽和C10-26脂肪酸など)も含まれる。
【0027】
特に好ましい(D)成分としては、ステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム、ベヘン酸カルシウムである。
【0028】
本発明において、(D)脂肪酸カルシウム塩の添加量は、(A)ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.1〜3.0重量部である。(D)脂肪酸カルシウム塩の配合は、耐酸性の向上に大きく寄与するものである。(D)脂肪酸カルシウム塩の添加量が0.1重量部よりも少ないと目的とする耐酸性を得ることができず、3.0重量部より過剰の場合は機械的特性等を損ねることになる。
【0029】
本発明において使用される(E)滑剤としては、脂肪酸エステルや脂肪酸アミドが用いられる。
【0030】
脂肪酸エステルとしては、ラウリン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキン酸、ベヘニン酸等の炭素数12〜32の脂肪酸と、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の1価脂肪族アルコールや、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビタン等の多価脂肪族アルコールとのエステル化合物、脂肪酸と多塩基性有機酸と1価脂肪族アルコール又は多価脂肪族アルコールの複合エステル化合物等を用いることができる。このような脂肪酸エステル系滑剤としては、例えば、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、クエン酸ステアリル、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンジパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリンモノオレエート、グリセリンジオレエート、グリセリントリオレエート、グリセリンモノリノレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノ12−ヒドロキシステアレート、グリセリンジ12−ヒドロキシステアレート、グリセリントリ12−ヒドロキシステアレート、グリセリンジアセトモノステアレート、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールアジピン酸ステアリン酸エステル、モンタン酸部分ケン化エステル、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ソルビタントリステアレート、等を挙げることができる。これらの脂肪酸エステル系滑剤は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0031】
脂肪酸アミド系滑剤についても特に制限はなく、例えばラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド;N−ステアリルステアリン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド等の置換アミド;メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド等のメチロールアミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド(エチレンビスステアリルアミド)、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド等の不飽和脂肪酸ビスアミド;m−キシリレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド等が挙げられる。
【0032】
(E)滑剤の融点は100℃未満のものが好ましい。融点が低いことでポリアセタール樹脂中で可塑剤的な効果も発現し、応力緩和を促進しやすくなる。グリセリンモノステアレート(融点 約67℃)、グリセリンモノパルミテート(融点 約67℃)、グリセリンモノベヘネート(融点 約80℃)などは特に好ましい滑剤である。
【0033】
本発明における(E)滑剤の添加量は、(A)ポリアセタール樹脂100重量部に対し、0.1〜3.0重量部である。(E)滑剤の配合量が少ないと、本来の目的である離型性が不十分になり、過剰の場合は、成形時の食い込み性が劣り、良好な成形品を得ることが困難となる。
【0034】
本発明の成形品は、上記の構成からなるポリアセタール樹脂組成物を用いて、慣用の成形方法、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形、回転成形などの方法で成形することにより得ることができる。
【0035】
その用途は、酸性成分を含有する液体、または、蒸気と直接接触する成形部品であれば特に制約はなく、例えば、硫黄や酸性物質を含んだ自動車用燃料、特にバイオディーゼル燃料や劣化ディーゼル燃料と接触する部品等に適用することができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1〜13及び比較例1〜5
(A)ポリアセタール樹脂に、(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤、(C)窒素含有化合物、(D)脂肪酸カルシウム塩、(E)滑剤を表1に示す割合で添加混合し、二軸の押出機で溶融混練してペレット状の組成物を調製した。配合成分の詳細は後記の通りである。
【0037】
次いで、このペレットを用いて射出成形により80mm×80mm×1mmの平板を作製した。成形した平板を応力の影響を受けやすい流動直角方向で10mmの幅に切り取り評価用の試験片を作製した。応力緩和性・耐酸性の評価は下記の方法で行った。結果を表1に示す。また、一部の材料については耐燃料性の評価も行った。
【0038】
比較のため、表2に示すような組成物を調製し、同様にして評価した。結果を表2に示す。
試験1(応力緩和性の評価)
試験片に2%の歪をかけて曲げた状態で100℃のオーブン中に放置し、試験片表面を観察する。試験片に割れが観察された時間を割れ発生時間とする。応力緩和性が高いほど割れ発生時間は長くなる。
試験2(耐酸性の評価)
試験片に1%の歪をかけて曲げた状態で10重量%塩酸水溶液中に室温放置し、試験片表面を観察する。試験片に割れが観察された時間を割れ発生時間とする。耐酸性・応力緩和性が高いほど割れ発生時間は長くなる。
試験3(耐燃料性の評価)
試験片に1.5%の歪をかけて曲げた状態で110℃の試験軽油(JIS2号軽油に脂肪酸エステル30重量%と酢酸0.04重量%を添加した軽油)中に放置し、試験片表面を観察する。試験片に割れが観察された時間を割れ発生時間とする。耐軽油性・応力緩和性が高いほど割れ発生時間は長くなる。
[配合成分]
(A)ポリアセタール樹脂
トリオキサン96.7重量%と1,3−ジオキソラン3.3重量%を共重合させてなるポリアセタール共重合体
a-1.メルトインデックス(190℃、荷重2160gで測定)が8.9g/10min
a-2.メルトインデックスが26.5g/10min
a-3.メルトインデックスが2.4g/10min
a-4.メルトインデックスが44.6g/10min
(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
b-1. トリエチレングリオール-ビス[3-(3-t−ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](融点 約77℃)
b-2.テトラキス〔メチレン(3,5 −ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)〕メタン(融点 約118℃)
(C)窒素含有化合物
c-1.メラミン
(D)脂肪酸カルシウム塩及び比較品としての金属化合物
d-1.ステアリン酸カルシウム
d-2.12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム
d-3.ベヘン酸カルシウム
d-4.ステアリン酸ナトリウム
(E)滑剤
e-1.グリセリンモノステアレート(融点 約67℃)
e-2.エチレンビスステアリン酸アミド(融点 約143℃)
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアセタール樹脂100重量部に対して、(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.1〜3.0重量部、(C)含窒素化合物0.001〜3.0重量部、(D)脂肪酸カルシウム塩0.1〜3.0重量部、及び、(E)滑剤0.1〜3.0重量部を添加して成るポリアセタール樹脂組成物からなり酸性雰囲気下にて応力のかかった状態で使用される成形品。
【請求項2】
(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤、及び、(E)滑剤のいずれか、または両方が融点100℃未満である請求項1記載の成形品。
【請求項3】
(D)脂肪酸カルシウム塩がステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム、ベヘン酸カルシウムのいずれかである請求項1または2記載の成形品。
【請求項4】
(A)ポリアセタール樹脂のメルトインデックスが5〜30g/10分である請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形品。

【公開番号】特開2010−31200(P2010−31200A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197612(P2008−197612)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】