説明

ポリアセタール樹脂組成物及びその成形品

【課題】優れた加工性及び安定性を有し、その成形品からのホルムアルデヒド発生量が抑制され、かつ、配合成分の染み出しや金型への付着も抑制されたポリアセタール樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)ヘミホルマール末端基量が1.0mmol/kg以下であり、ホルミル末端基量が0.5mmol/kg以下であり、不安定末端基量が0.5重量%以下であるポリアセタール共重合体100重量部に対し、(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.01〜3重量部、(C)尿素誘導体0.01〜1重量部、(D)イソシアネート化合物、イソチオシアネート化合物及びそれらの変性体からなる群から選ばれた化合物0.01〜1.5重量部を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた加工性及び安定性を有し、その成形品からのホルムアルデヒド発生量が抑制され、かつ、配合成分等の染み出しや金型への付着物(モールドデポジット)も抑制されたポリアセタール樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は優れた諸特性を有し、その成形品は広汎な分野に利用されているが、その化学構造上の特徴から、加熱酸化雰囲気下や、酸性或いはアルカリ性条件下では分解されやすいという性質を有する。その為、ポリアセタール樹脂の課題として、熱安定性が高く、成形加工過程又は成形品からのホルムアルデヒドの発生を抑制することが挙げられる。熱安定性が低いと、押出又は成形などの加工工程において加熱によりポリマーが分解し、モールドデポジットが発生したり、成形性や機械的物性などが低下したりする。また、分解により発生したホルムアルデヒドは化学的に活性であり、酸化によりギ酸となってポリアセタール樹脂の耐熱性に悪影響を及ぼしたり、ホルムアルデヒド発生量の多いポリアセタール樹脂を電気・電子機器の部品などに用いると、発生したホルムアルデヒド或いはその酸化物であるギ酸により金属製接点部品が腐蝕したり、有機化合物の付着により変色や接点不良を生じる要因になる場合がある。また、通常の使用条件下においてポリアセタール樹脂成形品から発生するホルムアルデヒドは極めて微少量であるが、発生するホルムアルデヒド自体が部品組立工程での作業環境や最終製品の使用環境を汚染する要因の1つとなる。
【0003】
そこで、ポリアセタール樹脂を安定化させるため、酸化防止剤やその他の安定剤が配合されている。ポリアセタール樹脂に添加される酸化防止剤としては、立体障害を有するフェノール化合物(ヒンダードフェノール)、立体障害を有するアミン化合物(ヒンダードアミン)などが知られており、その他の安定剤として、メラミン、ポリアミド、アルカリ金属水酸化物やアルカリ土類金属水酸化物などが使用されている。また、通常、酸化防止剤は他の安定剤と組み合わせて用いられる。しかしながら、このような汎用的な安定剤を通常のホルムアルデヒド品質を有するポリアセタール樹脂に配合しただけでは、発生するホルムアルデヒド、特に、成形品から発生するホルムアルデヒドを大幅に低減させることは困難である。
【0004】
そこで、上記のような問題を解決しホルムアルデヒドの発生量を低減させるため、種々の化合物を配合したポリアセタール樹脂組成物が開示されている。
例えば、ポリアセタール樹脂とグリオキシジウレイド化合物とを含むポリアセタール樹脂組成物[特開平10−182928号公報(特許文献1)]、ポリアセタール樹脂と環状窒素含有化合物(クレアチニンなどのグリコシアミジン又はその誘導体)とを含むポリアセタール樹脂組成物[特開平11−335518号公報(特許文献2)]、ポリアセタール樹脂と、ポリアルキレングリコール、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドおよび脂肪酸金属塩から選択された少なくとも1種の加工安定剤と、尿素又はその誘導体及びアミジン誘導体から選択される少なくとも1種の抑制剤とを含むポリアセタール樹脂組成物[特開平12−26704号公報(特許文献3)]、ポリアセタール樹脂と、ヒンダードフェノール系化合物と、トリアジン環を有するスピロ化合物と、加工安定剤及び耐熱安定剤から選択された少なくとも1種とで構成されたポリアセタール樹脂組成物[特開2003−113289号公報(特許文献4)]、ポリアセタール樹脂に、安定剤としてベンゾグアナミンなどのグアナミン誘導体を配合したポリアセタール樹脂組成物[特開昭62−190248号公報(特許文献5)]などが開示されている。
【0005】
また、特開2005−112995号公報(特許文献6)には、特定末端基のポリアセタール共重合体とホルムアルデヒド抑制剤とで構成されたポリアセタール樹脂組成物が開示され、ホルムアルデヒド抑制剤としてグアナミン化合物、尿素系化合物、カルボン酸ヒドラジド系化合物などが開示されている。
【特許文献1】特開平10−182928号公報(請求項1)
【特許文献2】特開平11−335518号公報(請求項1)
【特許文献3】特開平12−26704号公報(請求項1)
【特許文献4】特開2003−113289号公報(請求項1)
【特許文献5】特開昭62−190248号公報
【特許文献6】特開2005−112995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの文献1〜6に開示された技術によれば、ポリアセタール樹脂からのホルムアルデヒドの発生を低減することが可能である。しかしながら、ホルムアルデヒドの発生を顕著に低減するためには配合成分を比較的多量に添加する必要があり、得られる組成物或いはその成形品から配合成分が染み出して外観不良などの問題が生じることは避けがたい。特に高温高湿下での配合成分の染み出しが抑制された樹脂材料を得るのは極めて難しい。また、文献6の如く特定末端基のポリアセタール共重合体を使用することは、ホルムアルデヒド発生の低減には有効であるが、配合成分の染み出しを一層助長する傾向がある。
【0007】
本発明の目的は、成形品からのホルムアルデヒドの発生を極めて低レベルに抑制でき、かつ、成形品からの配合成分の染み出しや、成形品成形時のモールドデポジットの発生が抑制されたポリアセタール樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成し、成形品からのホルムアルデヒドの発生を極めて低レベルに抑制でき、かつ、成形品からの配合成分の染み出しや、成形時のモールドデポジットの発生が抑制されたポリアセタール樹脂材料を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の末端基特性を有するポリアセタール共重合体を基体樹脂とし、配合する安定剤成分を選択すると共に、イソ(チオ)シアネート化合物を併用することにより、成形品からのホルムアルデヒドの発生が大幅に低減され、かつ、配合成分の染み出しやモールドデポジットの発生も抑制されるという意外な作用を見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
即ち本発明は、
(A)ヘミホルマール末端基量が1.0mmol/kg以下であり、ホルミル末端基量が0.5mmol/kg以下であり、不安定末端基量が0.5重量%以下であるポリアセタール共重合体100重量部に対し、
(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.01〜3重量部、
(C)尿素誘導体0.01〜1重量部、
(D)イソシアネート化合物、イソチオシアネート化合物及びそれらの変性体からなる群から選ばれた化合物0.01〜1.5重量部
を配合してなるポリアセタール樹脂組成物、および、その成形品に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ホルムアルデヒドの発生量が低減され、かつ、配合成分の染み出しやモールドデポジットの発生が抑制されたポリアセタール樹脂組成物、及び、成形品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳しく説明する。
(A)ポリアセタール共重合体
本発明においては、基体樹脂として特定の末端特性を有するポリアセタール共重合体(A)が用いられる。ポリアセタール共重合体は、オキシメチレン基(−OCH−)を主たる構成単位とし、オキシメチレン単位以外に他のコモノマー単位を有する樹脂であり、一般的にはホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーを主モノマーとし、環状エーテルや環状ホルマールから選ばれた化合物をコモノマーとして共重合させることによって製造され、通常、加水分解によって末端の不安定部分を除去して熱分解に対して安定化される。
【0012】
特に、主モノマーとしてはホルムアルデヒドの環状三量体であるトリオキサンを用いるのが一般的である。トリオキサンは、一般的には酸性触媒の存在下でホルムアルデヒド水溶液を反応させることにより得られ、これを蒸留などの方法で精製して使用される。重合に用いるトリオキサンは、後述する如く、水、メタノール、蟻酸などの不純物の含有量が極力少ないものが好ましい。また、コモノマーである環状エーテル及び環状ホルマールとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフラン、トリオキセパン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマールなどが挙げられる。さらに、分岐構造や架橋構造を形成可能な化合物をコモノマー(或いはターモノマー)として使用することが可能であり、かかる化合物としては、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチル−ヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなどのアルキル又はアリールグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテルなどのアルキレングリコール又はポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらのコモノマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0013】
上記の如きポリアセタール共重合体は、一般には適量の分子量調整剤を添加し、カチオン重合触媒を用いてカチオン重合することにより得ることができる。使用される分子量調整剤、カチオン重合触媒、重合方法、重合装置、重合後の触媒の失活化処理、重合によって得られた粗ポリアセタールコポリマーの末端安定化処理法などは多くの文献によって公知であり、基本的にはそれらが何れも利用できる。
【0014】
本発明で使用するポリアセタール共重合体の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量が10,000〜400,000程度のものが好ましい。また、樹脂の流動性の指標となるメルトインデックス(ASTM−D1238に準じ、190℃、荷重2.16kgで測定)が0.1〜100g/10分であるものが好ましく、さらに好ましくは0.5〜80g/10分である。
【0015】
本発明において使用するポリアセタール共重合体(A)は、前記の如く特定の末端特性を有していることが必要であり、具体的には、ヘミホルマール末端基量が1.0mmol/kg以下、ホルミル末端基量が0.5mmol/kg以下、不安定末端基量が0.5重量%以下であることが必須である。ここでヘミホルマール末端基は−OCHOHで示されるものであり、ヒドロキシメトキシ基あるいはヘミアセタール末端基とも称される。また、ホルミル末端基は−CHOで示される。かかるヘミホルマール末端基およびホルミル末端基の量はH−NMR測定により求めることができ、その具体的な測定方法は、特開2001−11143号公報に記載された方法を参照できる。また、不安定末端基量とは、ポリアセタール共重合体の末端部分に存在し、熱や塩基に対して不安定で分解し易い部分の量を示す。かかる不安定末端基量は、ポリアセタール共重合体1gを、0.5%(体積%)の水酸化アンモニウムを含む50%(体積%)メタノール水溶液100mlとともに耐圧密閉容器に入れ、180℃で45分間加熱処理した後、冷却し、開封して得られる溶液中に分解溶出したホルムアルデヒド量を定量し、ポリアセタール共重合体に対する重量%で表したものである。
【0016】
使用するポリアセタール共重合体(A)が上記の末端特性を有するものではなく、末端特性の何れか又は全てが上限値を上回る場合、ホルムアルデヒド発生量が十分に低減されたポリアセタール樹脂組成物を得ることができず、さらに、熱履歴の繰返しによって生じるホルムアルデヒドの量を低レベルに維持することが困難となる。
【0017】
このような観点から、本発明において用いるポリアセタール共重合体(A)は、ヘミホルマール末端基量が0.6mmol/kg以下のものが好ましく、ホルミル末端基量は0.1mmol/kg以下のものが好ましく、不安定末端基量は0.3重量%以下のものが好ましい。ヘミホルマール末端基量、ホルミル末端基量、不安定末端基量の下限は特に限定されるものではない。
【0018】
このような特定の末端特性を有するポリアセタール重合体(A)は、モノマー及びコモノマーに含まれる不純物の低減、製造プロセスの選択およびその製造条件の最適化などを行うことにより製造できる。
【0019】
以下に本件の発明の要件を満たす特定の末端特性を有するポリアセタール重合体(A)を製造する方法の具体例を挙げるが、何らこの方法に限定されるものではない。
【0020】
先ず、重合系で不安定末端を形成する活性不純物、具体的には、前記モノマー及びコモノマー中に含まれる水、アルコール(例えばメタノール)、酸(例えばギ酸)などの不純物を少なくすることが重要であり、これらの活性不純物の総量が反応系中の全モノマーに対して1×10-2mol%以下とすることが好ましく、更に好ましくは5×10-3mol%以下である。この含有量が過大であると当然ながら不安定末端部の少ないポリアセタール重合体を得るのに好ましくない。なお、不安定末端を形成することの無い連鎖移動剤、例えば、メチラールの如き両末端がアルコキシ基を有する低分子量線状アセタール等は任意の量を含有させ、ポリアセタール重合体の分子量を調整することができる。
【0021】
重合反応時に使用する触媒としては、四塩化鉛、四塩化スズ、四塩化チタン、三塩化アルミニウム、塩化亜鉛、三塩化バナジウム、三塩化アンチモン、五フッ化リン、五フッ化アンチモン、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジブチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジオキサネート、三フッ化ホウ素アセチックアンハイドレート、三フッ化ホウ素トリエチルアミン錯化合物などの三フッ化ホウ素配位化合物、過塩素酸、アセチルパークロレート、t−ブチルパークロレート、ヒドロキシ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの無機及び有機酸、トリエチルオキソニウムテトラフロロボレート、トリフェニルメチルヘキサフロロアンチモネート、アリルジアゾニウムヘキサフロロホスフェート、アリルジアゾニウムテトラフロロボレートなどの複合塩化合物、ジエチル亜鉛、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライドなどのアルキル金属塩、ヘテロポリ酸、イソポリ酸などが挙げられる。その中でも特に三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素配位化合物、ヘテロポリ酸、トリフルオロメタンスルホン酸が好ましい。これらの触媒は有機溶剤などで予め希釈して用いることもできる。触媒の量は、三フッ化ホウ素又はその配位化合物からなる触媒を用いる場合、全モノマーに対して5×10-3〜1×10-2mol%の範囲であることが好ましく、特に1×10-3〜7×10-3mol%が好ましい。触媒量をかかる限定範囲とすることは、不安定末端部の生成を防ぐ上で有効である。触媒量が多すぎると重合温度の適正な制御を困難にし、重合中の分解反応が優勢となって、本発明の要件を満たす不安定末端部の少ないポリアセタール重合体を得ることが困難となる。一方、触媒量が少なすぎると重合反応速度の低下や重合収率が低下をまねき好ましくない。
【0022】
コモノマーの量や種類は、ポリアセタール重合体の熱安定性に大きく影響するが、本発明のポリアセタール重合体としては、トリオキサン(a-1)と環状エーテル及び環状ホルマールから選ばれた化合物(a-2)の1種以上とを、前者(a-1)/後者(a-2)=99.9/0.1〜80.0/20.0の割合(重量比)で共重合させてなるものが好ましく、さらに好ましくは前者/後者=99.5/0.5〜90.0/10.0の割合(重量比)で共重合させてなるものである。また、環状エーテル及び環状ホルマールから選ばれる化合物(a-2)としては、エチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール、ジエチレングリコールホルマールが特に好ましい。
【0023】
重合法としては、従来公知の方法が何れも可能であるが、液状モノマーを用いて重合の進行と共に固体粉塊状のポリマーを得る連続式塊状重合法が工業的には好ましく、重合温度は60〜105℃、特に65〜100℃に保つことが望ましい。
【0024】
三フッ化ホウ素又はその配位化合物からなる触媒を用いた場合、重合後の触媒の失活法としては、塩基性化合物を含む水溶液等に重合後のポリマーを加える等の方法が可能であるが、本発明の要件を満たすポリアセタール重合体を得るためには、重合反応により得られた重合体を粉砕し細分化して失活剤と接触させ、速やかに触媒の失活を図るのが好ましい。例えば、触媒の失活に供する重合体を粉砕し、その80重量%以上、好ましくは90重量%が1.5mm以下の粒径であり、15重量%以上、好ましくは20重量%以上が0.3mm以下の粒径に細分化されていることが望ましい。重合触媒を中和し失活するための塩基性化合物としては、アンモニア、あるいは、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、トリブタノールアミン等のアミン類、あるいは、アルカリ金属、アルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、塩類、その他公知の触媒失活剤を用いることができ、これら塩基性化合物は、0.001〜0.5重量%、特に0.02〜0.3重量%の水溶液として加えるのが好ましい。また、好ましい水溶液の温度は10〜80℃、特に好ましくは15〜60℃である。また、重合終了後、これらの水溶液に速やかに投入し触媒を失活させることが好ましい。
【0025】
また、重合に先立ち予めモノマー中にヒンダードフェノール系酸化防止剤を全モノマーに対して0.01〜0.1重量%添加し、これの存在下で重合を行うことで、重合反応系に均一に存在させることによって重合中の解重合を抑制することができ、重合後の乾燥等後処理や安定化工程での酸化分解も抑制させることができる。
【0026】
以上のようなモノマー及びコモノマーに含まれる不純物の低減、製造プロセスの選択およびその製造条件の最適化などにより不安定末端量の少ないポリアセタール重合体を製造することができるが、更に要すれば、安定化工程を経ることで更に不安定末端量を低減することが可能である。安定化工程としては、ポリアセタール重合体をその融点以上の温度に加熱して溶融状態で処理して不安定部分のみを分解除去することや、不溶性液体媒体中で不均一系を保って80℃以上の温度で加熱処理することで不安定末端部分のみを分解除去すること等が挙げられる。
【0027】
本発明においては、上記の如きポリアセタール共重合体(A)、特に直鎖の分子構造を有するポリアセタール共重合体に対して、分岐又は架橋構造を有するポリアセタール樹脂を添加しても良い。分岐又は架橋構造を有するポリアセタール樹脂は、前記ポリアセタール共重合体の製造にあたり、ホルムアルデヒド或いはトリオキサン等と共重合可能であり、かつ共重合によって分岐単位或いは架橋単位を形成し得る化合物を更に添加して共重合することによって得られるものである。例えば、トリオキサン(i)と置換基を持たない単官能性の環状エーテル化合物及び環状ホルマール化合物から選ばれた化合物(ii)を共重合させるにあたり、置換基を有する単官能グリシジル化合物(例えば、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル等)を更に加えて共重合することにより分岐構造を有するポリアセタール樹脂が得られ、また、多官能グリシジルエーテル化合物を加えて共重合することにより架橋構造を有するポリアセタール樹脂が得られる。添加するポリアセタール樹脂としては、特に、架橋構造を有するものが好ましく、中でも、トリオキサン(i)100重量部、置換基を持たない単官能性の環状エーテル化合物及び単官能環状ホルマール化合物から選ばれた化合物(ii)0.1〜10重量部及び多官能グリシジルエーテル化合物(iii)0.01〜2重量部を共重合して得られるものが好ましく、特に、トリオキサン(i)100重量部、化合物(ii)0.3〜3重量部及び多官能グリシジルエーテル化合物(iii)0.02〜1重量部を共重合して得られるものが好ましい。また、そのメルトインデックスが0.1〜10g/minの架橋ポリアセタール樹脂が好ましい。
【0028】
化合物(ii)としては、前記と同じものが挙げられ、特にエチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール及びジエチレングリコールホルマールからなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0029】
また、多官能グリシジルエーテル化合物(iii)としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4 −ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリブチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの化合物は単独で又は2種以上を併用してトリオキサン(i)との共重合に供することができる。
【0030】
前記の如きポリアセタール共重合体(A)に架橋構造を有するポリアセタール樹脂を添加する場合、該ポリアセタール樹脂は、機械的特性の観点から、上記の如き多官能グリシジルエーテル化合物(iii)の中でも、1分子中に3乃至4個のグリシジルエーテル基を有する化合物を用いて共重合することにより架橋構造を形成したものが特に好ましい。
【0031】
具体的にはトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル及びペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルが特に好ましい多官能グリシジルエーテル化合物(iii)として挙げられる。
【0032】
本発明において、前記の如きポリアセタール共重合体(A)にかかる分岐又は架橋構造を有するポリアセタール樹脂を添加して使用する場合、その配合量は、ポリアセタール共重合体(A)100重量部に対し0.1〜20重量部であり、特に好ましくは0.3〜5重量部である。分岐又は架橋構造を有するポリアセタール樹脂の配合量が過大の場合は、成形加工性等が劣るものとなり、結果として機械的特性も不十分なものとなる。
【0033】
(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
本発明において使用するヒンダードフェノール系酸化防止剤(B)としては、単環式ヒンダードフェノール化合物、炭化水素基又はイオウ原子を含む基で連結された多環式ヒンダードフェノール化合物、エステル基又はアミド基を有するヒンダードフェノール化合物などが挙げられる。
これらの具体的化合物としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、n−オクタデシル−2−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、ジ−n−オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ジヒドロシンナムアミド、N,N’−エチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−テトラメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−エチレンビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N’−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレートなどを例示することができる。
【0034】
これらのヒンダードフェノール系酸化防止剤(B)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤(B)の添加量は、ポリアセタール共重合体(A)100重量部に対して0.01〜3重量部である。この量よりも少ない場合は効果が不十分であり、この量よりも多い場合は、着色、染み出し等の問題を引き起こす可能性がある。
【0035】
(C)尿素誘導体
尿素誘導体としては、例えば、アルキル基などの置換基が置換したN−置換尿素[例えば、N−メチル体、N−エチル体などのN−C1-6 アルキル体、アルキレンジウレア(例えば、メチレンジウレアなどのC1-6 アルキレンジウレアなど)など]、尿素縮合体などが挙げられる。
【0036】
尿素縮合体は、非環状であっても、環状であってもよく、非環状縮合体には、例えば、尿素の二量体(例えば、ビウレット、ビウレアなど)、尿素の多量体、尿素とアルデヒド化合物との縮合体などが含まれる。
この縮合体としては、C1-6 アルデヒドとの縮合体、例えば、尿素とイソブチルアルデヒドとの非環状縮合体(イソブチリデンジウレアなど)、尿素とホルムアルデヒドとの非環状縮合体などが挙げられる。前記尿素とホルムアルデヒドとの非環状縮合体では、1又は複数の尿素単位が縮合していてもよく、n個のメチレン鎖を介して(n+1)個の尿素単位が縮合していてもよい(nは1以上の整数である)。前記非環状縮合体は単独で又は二種以上組合せて混合物として使用できる。この混合物は、例えば、ホルム窒素(メチレンジウレア、ジメチレントリウレア、トリメチレンテトラウレアなどの混合物)として三井化学(株)より市販されている。また、尿素誘導体は、尿素樹脂であってもよい。尿素誘導体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい尿素誘導体には、ウレイド誘導体(例えば、モノウレイド及びジウレイド、又はそれらの誘導体など)が含まれる。
【0037】
さらに、尿素誘導体には、非環状ウレイド又は環状ウレイドが含まれる。
非環状モノウレイドとしては、C2-6 ジカルボン酸のウレイド酸[例えば、シュウ酸のウレイド酸(オキサルル酸)、マロン酸のウレイド酸(マロヌル酸)など]又はこれらの誘導体(例えば、ウレイド酸の酸アミド)、あるいはウレイド基を有するカルボン酸[例えば、ウレイドギ酸、ウレイド酢酸などのウレイド基含有C1-6 モノカルボン酸、ウレイドコハク酸(カルバミルアスパラギン酸)などのカルバミド基含有C2-6 ジカルボン酸]、又はこれらのカルバミド基含有酸アミド(アロファン酸アニリド、アロファン酸アミドなど)及びカルバミド基含有エステル(アロファン酸エステルなど)などが例示できる。非環状ジウレイドとしては、C2-6 カルボン酸のジウレイド[例えば、酢酸のジウレイド(アラントイン酸)など]などが例示できる。
環状モノウレイドとしては、尿素とアセトアルデヒドとの環状縮合体(例えば、クロチリデンジウレアなど)、アラントイン、及びこれらの誘導体などが挙げられる。また、モノウレイド又はジウレイド、特に環状ウレイド誘導体は金属塩、例えば、アルカリ金属塩(Li,Na,Kなどの周期表1A族金属塩),アルカリ土類金属塩(Mg,Ca,Sr,Baなどの周期表2A属金属塩),周期表1B族金属塩(Cu,Agなどとの塩),周期表2B族金属塩(Znなどとの塩),周期表3B族金属塩(Al,Ga,Inなどとの塩),周期表4B族金属塩(Sn,Pbなどとの塩),周期表8族金属塩(Fe,Co,Ni,Pd,Ptなどとの塩)などの金属塩(1〜4価程度の金属塩)を形成してもよい。
【0038】
特に好ましい環状ウレイド誘導体には、アラントイン及びその誘導体が挙げられ、アラントイン誘導体については成書「DICTIONARY OF ORGANIC COMPOUNDS Vol.1, p60 (1965 EYRE & SPOTTISWOODE-PUBLISHERS-LTD)」を参照できる。
アラントイン誘導体としては、例えば、アルキル基,シクロアルキル基,アリール基などの各種の置換基が置換した置換アラントイン誘導体(例えば、1−メチル体、3−メチル体、3−エチル体、5−メチル体、1,3−ジメチル体、1,6−ジメチル体、1,8−ジメチル体、3,8−ジメチル体、1,3,6−トリメチル体、1,3,8−トリメチル体などのモノ,ジまたはトリ−C1-4 アルキル置換体、5−フェニル体などのアリール置換体など)、また、その金属塩[アルカリ金属塩(周期表1A属金属塩),アルカリ土類金属塩(周期表2A属金属塩),周期表1B属金属との塩,周期表2B属金属との塩,周期表3B属金属との塩,周期表4B属金属との塩,周期表8属金属との塩など]、アラントインとアルデヒド化合物との反応生成物[例えば、アラントインホルムアルデヒド付加体又はそのアルコール変性体(アルコキシメチル体など)など]、アラントインと窒素含有化合物(アミノ基又はイミノ基含有化合物など)との反応生成物[例えば、2−ピロリドン−5−カルボン酸塩との化合物(塩、分子化合物(錯体)など)、アラントインとイミダゾール化合物との化合物(塩、分子化合物(錯体)など)]、有機酸塩なども使用できる。アラントインの金属塩の具体例としては、アラントインジヒドロキシアルミニウム、アラントインクロロヒドロキシアルミニウムなどが例示でき、アミノ基又はイミノ基含有化合物との反応生成物としては、アラントインソジウム−dlピロリドンカルボキシレートなどが例示できる。アラントインと2−ピロリドン−5−カルボン酸塩との化合物については、特開昭51−36453号公報を参照でき、アラントインと塩基性アミノ酸との反応生成物については、特開昭52−102412号公報、特開昭52−25771号公報、特開昭52−25772号公報、特開昭52−31072号公報、特開昭51−19771号公報などを参照できる。アラントインとイミダゾール化合物との化合物については、特開昭57−118569号公報などを参照できる。アラントイン及びその誘導体の立体構造は特に制限されず、d体、l体及びdl体のいずれであってもよい。これらのアラントイン及びその誘導体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0039】
本発明において、尿素誘導体(C)の添加量は、ポリアセタール共重合体(A)100重量部に対して0.01〜1重量部である。化合物(C)の配合量が過少の場合は、ホルムアルデヒド発生量が十分に低減されたポリアセタール樹脂組成物を得ることができず、さらに、熱履歴の繰返しによって生じるホルムアルデヒドの量を低レベルに維持することも困難となり、逆に化合物(C)の配合量が過多の場合は、機械的特性の低下、染み出しによる外観不良などの問題が生じる。
【0040】
(D)イソ(チオ)シアネート化合物及びそれらの変性体
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、上記(A)〜(C)成分に加えて更にイソシアネート化合物、イソチオシアネート化合物及びそれらの変性体からなる群から選ばれた化合物(D)を添加配合するところに特徴があり、かかる化合物(D)の配合により、(A)〜(C)成分によって達成される成形品からのホルムアルデヒドの発生量を低減される効果を維持すると共に、配合成分(C)の染み出しを抑制するものである。化合物(D)の配合によるこのような効果は、予期できないものであった。中でも、基体樹脂として特定の末端基特性を有するポリアセタール共重合体(A)を使用することは、本来活性に乏しいポリアセタール共重合体を一層不活性なものにし、配合成分(C)の染み出しを助長するものであるが、化合物(D)の配合によってかかる配合成分(C)の染み出しが顕著に抑制されることは、驚くべきことであった。
かかる目的で用いられる化合物(D)としては、一般式O=C=N-R-N=C=O(R;2価の基)で表されるイソシアネート化合物、S=C=N-R-N=C=S (R;2価の基)で表されるイソチオシオネート化合物、及びそれらの変性体が好ましい。例えば、イソシアネート化合物としては、4,4'−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、2,4 −トリレンジイソシアネート、2,6 −トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,6 −ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが、またイソチオシオネート化合物としては上記イソシアネート化合物に対応するジイソチオネートが、また変性体としてはこれらのイソシアネート化合物或いはイソチオシオネート化合物の二量体、三量体、さらにはイソシアネート基(-NCO)が何らかの形で保護されている化合物等が挙げられ、これらはいずれも有効であるが、溶融処理等の変色度等の諸性質、あるいは取扱い上の安全性を考慮すると、4,4'−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、1,5 −ナフタレンジイソシアネート、1,6 −ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4 −トリレンジイソシアネート、2,6 −トリレンジイソシアネート並びにこれらの二量体、三量体等の変性体(又は誘導体)が特に望ましい。
【0041】
かかるイソシアネート化合物、イソチオシアネート化合物及びそれらの変性体からなる群から選ばれた化合物(D)を配合することによる染み出し抑制等に対する作用機構は必ずしも明確ではないが、化合物(C)と化合物(D)とが反応することで成分(C)の染み出しが抑制される機構、または、化合物(C)と化合物(D)とポリアセタール(A)とが反応することで成分(C)の染み出しが抑制される機構等が推測される。
【0042】
本発明において、イソシアネート化合物、イソチオシアネート化合物及びそれらの変性体からなる群から選ばれたかかる化合物(D)の配合量は、ポリアセタール共重合体(A)100重量部に対し、0.01〜1.5重量部である。(D)成分の量が少なすぎるとホルムアルデヒド低減効果が小さく、また、成分(C)の染み出し抑制効果を発揮しなくなる。逆に化合物(D)を過剰に添加しすぎると、溶融樹脂の粘度が上昇したり、化合物(D)自身が染み出したりして支障をきたす原因となる。
かかる(D)成分の好ましい配合量は、(C)成分の配合量とも関連し、ホルムアルデヒド発生量の低減、染み出しの抑制等をバランス良く達成するためには、その配合比((D)/(C)(重量比))を0.5〜2.5に調整するのが好ましい。
【0043】
本発明において、上記の如きイソシアネ−ト化合物、イソチオシアネ−ト化合物及びそれらの変性体からなる群から選ばれた化合物(D)は、ポリアセタール樹脂80〜98重量%と化合物(D)2〜20重量%からなるマスターバッチの形で配合することも可能であり、本発明の樹脂組成物を安定して調製する上で好ましい。マスターバッチに使用するポリアセタール樹脂としては特に制約はないが、前述したポリアセタール共重合体(A)の特性を満足するものを使用するのが好ましい。
【0044】
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、さらに、熱安定性、長期熱安定性等を向上させるために、有機カルボン酸金属塩、金属酸化物、金属水酸化物から選ばれた化合物(E)を添加するのが好ましい。その添加量は、ポリアセタール共重合体(A)100重量部に対し、0.01〜1重量部が好ましい。
【0045】
有機カルボン酸金属塩を形成する有機カルボン酸としては、炭素数が1〜34程度の各種の脂肪族カルボン酸が使用可能であり、飽和脂肪族モノカルボン酸、飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和脂肪族モノカルボン酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸、及びこれらのオキシ酸などが挙げられる。これらの脂肪族カルボン酸は、ヒドロキシル基を有するものであってもよい。また、重合性不飽和カルボン酸((メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエチルなど)とオレフィンとの共重合体などであってもよい。有機カルボン酸金属塩の具体例を挙げると、クエン酸リチウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、12−ヒドロキシステアリン酸リチウムなどのアルカリ金属有機カルボン酸塩、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、クエン酸マグネシウム、クエン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウムなどのアルカリ土類金属有機カルボン酸塩、アイオノマー樹脂などである。これらの有機カルボン酸金属塩のうち、クエン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウムなどのアルカリ土類金属塩およびアイオノマー樹脂が好ましい。
【0046】
金属酸化物、金属水酸化物としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが好ましい。
【0047】
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、さらに、成形加工性等を向上させるために、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレングリコール、シリコーン化合物から選ばれた化合物(F)を添加するのが好ましい。その添加量は、ポリアセタール共重合体(A)100重量部に対し、0.01〜1重量部が好ましい。
【0048】
脂肪酸エステルの例としては、エチレングリコールモノまたはジパルミチン酸エステル、エチレングリコールモノまたはジステアリン酸エステル、エチレングリコールモノまたはジベヘン酸エステル、エチレングリコールモノまたはジモンタン酸エステル、グリセリンモノ乃至トリパルミチン酸エステル、グリセリンモノ乃至トリステアリン酸エステル、グリセリンモノ乃至トリベヘン酸エステル、グリセリンモノ乃至トリモンタン酸エステル、ペンタエリスリトールモノ乃至テトラパルミチン酸エステル、ペンタエリスリトールモノ乃至テトラステアリン酸エステル、ペンタエリスリトールモノ乃至テトラベヘン酸エステル、ペンタエリスリトールモノ乃至テトラモンタン酸エステル、ポリグリセリントリステアリン酸エステル、トリメチロールプロパンモノパルミチン酸エステル、ペンタエリスリトールモノウンデシル酸エステル、ソルビタンモノステアリン酸エステル、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)のモノまたはジラウレート、モノまたはジパルミテート、モノまたはジステアレート、モノまたはジベヘネート、モノまたはジモンタネート、モノまたはジオレート、モノまたはジリノレートなどが挙げられる。
【0049】
脂肪酸アミドの例としては、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、アラキン酸アミド、ベヘン酸アミド、モンタン酸アミドなどの飽和脂肪酸の第1級酸アミド、オレイン酸アミドなどの不飽和脂肪酸の第1級酸アミド、ステアリルステアリン酸アミド、ステアリルオレイン酸アミドなどの飽和及び/または不飽和脂肪酸とモノアミンとの第2級酸アミド、エチレンジアミン−ジパルミチン酸アミド、エチレンジアミン−ジステアリン酸アミド(エチレンビスステアリルアミド)、ヘキサメチレンジアミン−ジステアリン酸アミド、エチレンジアミン−ジベヘン酸アミド、エチレンジアミン−ジモンタン酸アミド、エチレンジアミン−ジオレイン酸アミド、エチレンジアミン−ジエルカ酸アミドなどが挙げられ、さらにエチレンジアミン−(ステアリン酸アミド)オレイン酸アミドなどのアルキレンジアミンのアミン部位に異なるアシル基が結合した構造を有するビスアミドなどが例示できる。
【0050】
ポリオキシアルキレングリコールとしては、アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールなどのアルキレングリコールなど)の単独または共重合体、それらの誘導体などが挙げられる。ポリオキシアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体(ランダムまたはブロック共重合体など)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテルなどの共重合体などが挙げられる。これらのうち、オキシエチレン単位を有する重合体、例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体及びそれらの誘導体などが好ましい。ポリオキシアルキレングリコールの平均分子量は、3×10〜1×10、好ましくは1×10〜1×10程度である。
【0051】
シリコーン系化合物には、(ポリ)オルガノシロキサンなどが含まれる。(ポリ)オルガノシロキサンとしては、ジアルキルシロキサン(ジメチルシロキサンなど)、アルキルアリールシロキサン(フェニルメチルシロキサンなど)、ジアリールシロキサン(ジフェニルシロキサンなど)などのモノオルガノシロキサン、これらの単独重合体(ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサンなど)または共重合体などが例示できる。なお、ポリオルガノシロキサンは、オリゴマーであってもよい。また、(ポリ)オルガノシロキサンには、分子末端や主鎖に、エポキシ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基または置換アミノ基(ジアルキルアミノ基など)、エーテル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などの置換基を有する変性(ポリ)オルガノシロキサンなども含まれる。
【0052】
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、さらに、耐侯(光)安定剤、耐衝撃性改良剤、光沢性制御剤、摺動性改良剤、充填剤、着色剤、核剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、抗カビ剤、芳香剤、発泡剤、相容化剤、物性改良剤(ホウ酸又はその誘導体など)、香料などを配合することが可能であり、本発明の目的を損なうことなく、それぞれの添加剤に応じた諸特性を向上させることができる。また、前述した以外の酸化防止剤、耐熱安定剤、加工性改良剤などを併用することも可能である。
【0053】
耐侯(光)安定剤としては、(a)ベンゾトリアゾール系化合物、(b)ベンゾフェノン系化合物、(c)芳香族ベンゾエーsト系化合物、(d)シアノアクリレート系化合物、(e)シュウ酸アニリド系化合物、(f)ヒドロキシフェニル−1,3,5−トリアジン系化合物、(g)ヒンダードアミン系化合物などが挙げられる。(a)〜(g)の具体的化合物はポリアセタール樹脂の耐候安定性の向上を目的とした文献によって公知であり、本発明においても、それらの化合物を使用することが出来る。
耐候(光)安定剤は、単独で用いてもよく、同種又は異種の化合物を、2種以上組み合わせて使用してもよい。耐候安定剤は、ヒンダードアミン系化合物(g)と他の耐候(光)安定剤(a)〜(f)から選択された少なくとも一種とを併用するのが好ましく、特に、ベンゾトリアゾール系化合物(a)と、ヒンダードアミン系化合物(g)とを併用するのが好ましい。耐候(光)安定剤の含有量は、例えば、ポリアセタール共重合体(A)100重量部に対して0〜5重量部(例えば0.01〜5重量部)、好ましくは0.1〜4重量部、さらに好ましくは0.1〜2重量部程度であってもよい。
【0054】
耐衝撃性改良剤には、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、アクリル系コアシェルポリマー、熱可塑性ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ゴム成分(天然ゴムなど)などが含まれる。
【0055】
光沢制御剤には、アクリル系コアシェルポリマー、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリエステルエラストマー、ポリアミド系エラストマー、アルキル(メタ)アクリレートの単独又は共重合体(ポリメチルメタクリレートなど)、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂(ポリスチレン、AS樹脂、AES樹脂など)、オレフィン系樹脂(ポリプロピレンや環状ポリオレフィンなど)などが含まれる。
【0056】
摺動性改良剤には、オレフィン系ポリマー(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとα−オレフィンの共重合体、これらの酸無水物などによる変性体など)、ワックス類(ポリエチレンワックスなど)、シリコーンオイルやシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレンなど)、脂肪酸エステルなどが含まれる。
【0057】
充填剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、チタン酸カリウム繊維、金属繊維、アラミド繊維などの無機又は有機繊維状充填剤、ガラスフレーク、マイカ、グラファイトなどの板状充填剤、ミルドファイバー、ガラスビーズ、ガラスバルーン、タルク、カオリン、シリカ、ケイソウ土、クレー、ウォラスナイト、アルミナ、フッ化黒鉛、炭化ケイ素、窒化ホウ素、金属粉などの粉粒状充填剤などが挙げられる。
【0058】
着色剤としては、各種染料及び顔料が使用できる。染料としてはアゾ系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、ナフトキノン系染料などが挙げられる。顔料としては無機顔料及び有機顔料のいずれも使用でき、無機顔料としては、チタン系顔料、亜鉛系顔料、カーボンブラック、鉄系顔料、モリブデン系顔料、カドミウム系顔料、鉛系顔料、コバルト系顔料及びアルミニウム系顔料などが例示でき、有機顔料としては、アゾ系顔料、アンスラキノン系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料及びスレン系顔料などが例示できる。これらのうち、光遮蔽効果の高い着色剤であるカーボンブラック、酸化チタン、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料を用いると、耐候(光)性も向上できる。配合される着色剤の量は特に制限されず、一般的な着色目的の量が用いられる。
【0059】
本発明のポリアセタール樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、樹脂組成物の調製法として従来から知られた各種の方法により調製することができる。例えば、(1)組成物を構成する全成分を混合し、これを押出機に供給して溶融混練し、ペレット状の組成物を得る方法、(2)組成物を構成する成分の一部を押出機の主フィード口から、残余成分をサイドフィード口から供給して溶融混練し、ペレット状の組成物を得る方法、(3)押出し等により一旦組成の異なるペレットを調製し、そのペレットを混合して所定の組成に調整する方法などが採用できる。
【0060】
押出機を用いた組成物の調製においては、一カ所以上の脱揮ベント口を有する押出機を用いるのが好ましく、さらに、主フィード口から脱揮ベント口までの任意の場所に水や低沸点アルコール類をポリアセタール樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部程度供給し、押出工程で発生するホルムアルデヒド等を水や低沸点アルコール類と共に脱揮ベント口から脱揮除去するのが好ましい。これにより、ポリアセタール樹脂組成物およびその成形品から発生するホルムアルデヒド量をさらに低減することができる。
【0061】
このようにして調製された本発明のポリアセタール樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、真空成形、吹き込み成形、発泡成形等、従来から知られた各種の成形方法によって成形することができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の「部」はすべて重量部を表す。また、実施例及び比較例において評価した諸特性及びその評価方法は以下の通りである。
(1)成形品からのホルムアルデヒド発生量
実施例及び比較例で調製したポリアセタール樹脂組成物を用い、下記条件で平板状試験片(100mm×40mm×2mm)を成形した。この平板状試験片を23℃、50重量%RHの雰囲気下で放置した後、平板状試験片2枚を10Lのフッ化ビニル製サンプリングバッグに封入し脱気して、4Lの窒素を入れ、80℃で2時間加熱した後、サンプリングバッグ内の窒素を0.5ml/minで3L抜き取り、発生したホルムアルデヒドをDNPH(2,4-ジニトロフェニルヒドラジン)捕集管(Waters社製 Sep-Pak DNPH-Silica)に吸着させた。その後、DNPH捕集管からDNPHとホルムアルデヒドとの反応物をアセトニトリルで溶媒抽出し、高速液体クロマトグラフでDNPHとホルムアルデヒドとの反応物の標準物質を用いた検量線法により、発生したホルムアルデヒド量を求め、試験片単位重量あたりのホルムアルデヒド発生量(μg/g)を算出した。
【0063】
* 成形機 :(株)日本製鋼所 J75E-P
* 成形条件:シリンダー温度(℃) ノズル − C1 − C2 − C3
220 220 210 190
射出圧力 60(MPa)
射出速度 1.0(m/min)
金型温度 50(℃)
【0064】
(2)成形品からの染み出し物量
(1)で成形した平板状試験片を温度65℃、湿度90%RHに設定した恒温恒湿層に96時間放置し、その後の成形品表面の染み出し物を目視にて観察し、以下の基準に従って染み出し物量を判定した。
0:染み出し物は確認されない
1:微量の染み出し物が確認される。
2:少量の染み出し物が確認される。
3:染み出し物が確認される。
4:多量の染み出し物が確認される。
5:非常に多量の染み出し物が確認される。
【0065】
実施例1〜7
ポリアセタール共重合体(A)に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(B)、尿素誘導体(C)、イソシアネート化合物(D)およびその他の化合物を表1に示す組成で配合し、30mm2軸押出機を用いて溶融混練しペレット状の組成物を調製した。次いで、このペレットから、射出成形機を用いて前述の成形条件(1)にて試験片を成形し、(1)に記載した方法で成形品から発生するホルムアルデヒド量を測定し、(2)に記載した方法で成形品からの染み出し物の観察を行った。それらの結果を表1に示す。
【0066】
比較例1〜4
表1に示すように、尿素誘導体(C)、イソシアネート化合物(D)の何れか1成分または複数成分を配合しない場合、またポリアセタール共重合体(A)として本発明の末端基規定を満足しないものを使用した場合について、実施例と同様にして組成物を調製し、その特性を評価した。結果を表1に示す。
【0067】
実施例・比較例で使用した各成分は以下のものである。
・ポリアセタール共重合体(A)
a−1:ポリアセタール共重合体[ヘミホルマール末端基量=0.38mmol/kg、ホルミル末端基量=0.03mmol/kg、不安定末端基量=0.15重量%、メルトインデックス=9g/10分]
a−2:ポリアセタール共重合体[ヘミホルマール末端基量=1.20mmol/kg、ホルミル末端基量=0.60mmol/kg、不安定末端基量=0.6重量%、メルトインデックス=9g/10分]
ポリアセタール共重合体a−1及びa−2は、次のようにして調製した。
【0068】
二軸パドルタイプの連続式重合機にトリオキサン96.7重量%と1,3−ジオキソラン3.3重量%の混合物を連続的に供給し、触媒として三フッ化ホウ素15ppmを添加し重合を行った。重合に供するトリオキサンと1,3−ジオキソランの混合物には、その全量に対し0.03重量%のペンタエリスリトール−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を含有させた。また、重合に供するトリオキサンと1,3−ジオキソランの混合物は、不純物として水6ppm、メタノール3.5ppm、ギ酸5ppmを含有するものであった。
【0069】
重合機吐出口より排出された重合体は、直ちにトリエチルアミン1000ppm含有水溶液を加えて粉砕、攪拌処理を行うことにより触媒の失活を行い、次いで、遠心分離、乾燥を行うことにより粗ポリオキシメチレン共重合体を得た。
【0070】
次いで、この粗ポリオキシメチレン共重合体を、ベント口を有する二軸押出機に供給し、樹脂温度約220℃で溶融混練することにより不安定末端部を分解すると共に、分解生成物を含む揮発分をベント口から減圧脱揮した。押出機のダイから取り出した重合体を冷却、細断することにより、不安定末端部の除去されたペレット状のポリアセタール共重合体a−2を得た。
【0071】
次いで、保温可能な円筒状の耐圧容器を用い、その上部より上記のペレット状の重合体を連続的に供給し、下部よりトリエチルアミン500ppmを含有する135℃の水溶液を供給する処理を8時間行った後、遠心分離、乾燥を行うことにより、ヘミホルマール末端基、ホルミル末端基、不安定末端部がより一層低減されたポリアセタール共重合体a−1を得た。
【0072】
なお、ポリアセタール共重合体のヘミホルマール末端基量及びホルミル基末端基量は、Bruker(株)製のAVANCE400型FT−NMR装置を用いて、特開2001−11143号公報に記載の方法に準じて測定を行って得られた値(mmol/kg)である。また、上記メルトインデックスは、ASTM−D1238に準じ、190℃、2160gの条件下で求めた値(g/10分)である。
・酸化防止剤(B)
b−1:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
・尿素誘導体(C)
c−1:アラントイン
・イソシアネート化合物(D)
d−1:イソホロンジイソシアネート(三量体)(VESTANAT T1890/100)
・金属化合物(E)
e−1:12ヒドロキシステアリン酸カルシウム
・化合物(F)
f−1:グリセリンモノステアレート
【0073】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ヘミホルマール末端基量が1.0mmol/kg以下であり、ホルミル末端基量が0.5mmol/kg以下であり、不安定末端基量が0.5重量%以下であるポリアセタール共重合体100重量部に対し、
(B)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.01〜3重量部、
(C)尿素誘導体0.01〜1重量部、
(D)イソシアネート化合物、イソチオシアネート化合物及びそれらの変性体からなる群から選ばれた化合物0.01〜1.5重量部
を配合してなるポリアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
化合物(D)が、ジイソシアネート化合物、ジイソチオシアネート化合物、それらの二量体および三量体から選ばれた少なくとも一種である請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
化合物(D)が、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、1,5 −ナフタレンジイソシアネート、1,6 −ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4 −トリレンジイソシアネート、2,6 −トリレンジイソシアネート、これらの二量体及びこれらの三量体から選ばれた少なくとも一種である請求項1又は2記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
化合物(D)が、ポリアセタール樹脂98〜80重量%と化合物(D)2〜20重量%を含有してなるマスターバッチの形で配合されたものである請求項1〜3の何れか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項5】
ポリアセタール共重合体(A)100重量部に対し、金属酸化物、金属水酸化物及び有機カルボン酸金属塩から選ばれた金属化合物(E)0.01〜1重量部をさらに配合してなる請求項1〜4の何れか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項6】
ポリアセタール共重合体(A)100重量部に対し、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレングリコール及びシリコーン化合物から選ばれた化合物(F)0.01〜1重量部をさらに配合してなる請求項1〜5の何れか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項7】
尿素誘導体(C)が、アラントイン又はその誘導体である請求項1〜6の何れか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項8】
尿素誘導体(C)と化合物(D)の配合比((D)/(C)(重量比))が0.5〜2.5である請求項1〜7の何れか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項記載の組成物を成形してなるポリアセタール樹脂成形品。

【公開番号】特開2010−37445(P2010−37445A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202580(P2008−202580)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】