説明

ポリアセタール樹脂組成物及びその製造方法

【課題】引張強さ、曲げ強さ、衝撃強さなどの機械的特性に優れ、セルロース繊維パウダーの分散性に優れたポリアセタール樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(a)トリオキサン99.9〜90.0重量%と単官能環状エーテル0.1〜10.0重量%を共重合して得られる直鎖ポリアセタール樹脂100重量部に対して、(b)トリオキサン99.89〜89.0重量%と単官能環状エーテル0.1〜10.0重量%と官能基数が2〜4の多官能グリシジルエーテル化合物0.01〜1.0重量%を共重合して得られる分岐ポリアセタール樹脂0.1〜50重量部、(c)アスペクト比が5〜25、平均繊維長が150〜350μmのセルロース繊維パウダー10〜150重量部、(d)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.01〜3重量部及び(e)アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びポリアミドから選ばれた少なくとも一種の窒素含有化合物0.01〜3重量部を含有してなるポリアセタール樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張強さ、曲げ強さ、衝撃強さなどの機械的特性に優れ、セルロース繊維パウダーの分散性に優れたポリアセタール樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、機械的特性、熱的特性、電気的特性、摺動性、成形性などにおいて優れた特性を持っており、主に構造材料や機構部品などとして電気機器、自動車部品、精密機械部品などに広く使用されている。ポリアセタール樹脂が利用される分野の拡大に伴い、要求特性は益々高度化、複合化、特殊化する傾向にある。その中で、再生可能資源の使用や特性改善を目的としてセルロース系物質とポリアセタール樹脂とを複合化させた材料が検討されている。
【0003】
特許文献1には、ポリアセタール樹脂にパルプを配合したポリアセタール樹脂組成物が開示されている。ここでは、機械的強度、耐熱性、燃焼性(燃焼時の樹脂のドリッピング)等の改善が示されているが、該材料の調整方法では、一般にパルプを樹脂中に均一に安定して分散させることが難しく、実用的に材料を製造することが難しかった。
【0004】
また、特許文献2には、ポリアセタール樹脂と、特定の嵩密度の繊維状セルロース系物質を配合したポリアセタール樹脂組成物が開示されている。ここでは、繊維状セルロース系物質を使用しているため、繊維状セルロース系物質の凝集は比較的抑えられた結果が得られてはいるが、得られた材料の曲げ弾性率は低めであり、機械的特性の改善が不十分であった。また、引張強さ、曲げ強さ、衝撃強さなどの物性改善については何ら開示されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−217447号公報
【特許文献2】特開2010−150313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から知られた技術では、上記のように、機械的特性の改善とセルロース系物質の分散性との両立が難しく、さらなる改善が切望されていた。本発明は、これらの課題を解決し、引張強さ、曲げ強さ、衝撃強さなどの機械的特性に優れ、セルロース繊維パウダーの分散性に優れたポリアセタール樹脂組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の選択されたポリアセタール樹脂を併用して基体樹脂とし、これに特定の選択されたセルロース繊維パウダーを配合し、更にヒンダードフェノール系酸化防止剤と特定の窒素含有化合物を併用配合することにより、上記課題が解決し目的を達成し得るポリアセタール樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち本発明は、(a)トリオキサン99.9〜90.0重量%と単官能環状エーテル0.1〜10.0重量%を共重合して得られる直鎖ポリアセタール樹脂100重量部に対して、(b)トリオキサン重量99.89〜89.0%と単官能環状エーテル重量0.1〜10.0%と官能基数が2〜4の多官能グリシジルエーテル化合物0.01〜1.0重量%を共重合して得られる分岐ポリアセタール樹脂0.1〜50重量部、(c)アスペクト比が5〜25、平均繊維長が150〜350μmのセルロース繊維パウダー10〜150重量部、(d)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.01〜3重量部、(e)アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びポリアミドから選ばれた少なくとも一種の窒素含有化合物0.01〜3重量部を含有してなるポリアセタール樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、引張強さ、曲げ強さ、衝撃強さなどの機械的特性に優れるとともに、セルロース繊維パウダーの分散性にも優れ、自動車部品、電気・電子部品、雑貨、文房具類などに関連した成形品に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のポリアセタール樹脂組成物及びその製造方法について詳細に説明する。
【0011】
本発明のポリアセタール樹脂組成物を構成する主要な成分は以下に説明する通りである。
<(a)直鎖ポリアセタール樹脂>
本発明に使用する(a)成分のポリアセタール樹脂は、トリオキサン99.9〜90.0重量%と単官能環状エーテル0.1〜10.0重量%を共重合して得られる直鎖ポリアセタール樹脂である。
【0012】
(a)成分の直鎖ポリアセタール樹脂は、ホルムアルデヒドの環状三量体であるトリオキサンと単官能環状エーテルとを共重合することによって製造され、通常、加水分解によって末端の不安定部分を除去して熱分解に対して安定化される。
【0013】
本発明で、単官能環状エーテルとしては−C−O−C−単位を含んで環状構造が形成されている化合物を総称し、環状ホルマールと称される化合物群も包含する。本発明においては、かかる単官能環状エーテルのうち、トリオキサンとの共重合によって、(a)直鎖ポリアセタール樹脂の分子中にC2〜C6程度のオキシアルキレン単位を導入し得る化合物が用いられ、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキサイド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキシド、オキセタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、テトラヒドロフラン、トリオキセパン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマールなどが挙げられる。
【0014】
これらの単官能環状エーテルは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。特に、エチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール、ジエチレングリコールホルマールなどの単官能環状エーテルが好ましい。
【0015】
これらの単官能環状エーテルの共重合割合は、トリオキサン99.9〜90.0重量%に対して0.1〜10.0重量%であり、好ましくは、トリオキサン99.7〜93.0重量%に対して0.3〜7.0重量%である。これにより得られる(a)直鎖ポリアセタール樹脂は、分子中に、かかる単官能環状エーテルに由来する単位をこの程度の割合で含むものが好ましい。単官能環状エーテルの共重合割合が少ない場合は、本発明のポリアセタール樹脂組成物の基体である(a)直鎖ポリアセタール樹脂の熱安定性などが不十分なものになり易く、単官能環状エーテルの共重合割合が多い場合は(a)直鎖ポリアセタール樹脂の機械的特性が不十分なものとなる。
【0016】
(a)成分のポリアセタール樹脂のメルトインデックスは、好ましくは10〜50g/10分の範囲が良い。メルトインデックスが過小及び過大の場合には、本発明の効果が十分に得られない場合がある。なお、メルトインデックスは、ASTM−D1238に準拠して、190℃、2.16kgf(21.2N)の条件下で測定した値である。
<(b)分岐ポリアセタール樹脂>
本発明に使用する(b)成分のポリアセタール樹脂は、トリオキサン99.89〜89.0重量%と単官能環状エーテル0.1〜10.0重量%と官能基数が2〜4の多官能グリシジルエーテル化合物 0.01〜1.0重量%を共重合して得られる分岐ポリアセタール樹脂である。
【0017】
(b)成分の分岐ポリアセタール樹脂は、トリオキサンと単官能環状エーテルと官能基数が2〜4の多官能グリシジルエーテル化合物とを共重合することによって製造され、通常、加水分解によって末端の不安定部分を除去して熱分解に対して安定化される。
【0018】
(b)成分の分岐ポリアセタール樹脂の製造に使用する単官能環状エーテルとしては、前記(a)成分のポリアセタール樹脂に使用する物質を同様に使用することができる。特に、エチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール、ジエチレングリコールホルマールなどの単官能環状エーテルが好ましい。
【0019】
(b)成分の分岐ポリアセタール樹脂の製造に使用する官能基数が2〜4の多官能グリシジルエーテル化合物とは1分子中に2〜4のグリシジルエーテル単位を有する化合物であり、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリブチレングリコールジグリシジルエーテルなどの2官能グリシジルエーテル化合物、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテルなどの3官能グリシジルエーテル化合物、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルなどの4官能グリシジルエーテル化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。その中でも特に、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルなどの、1分子中に3乃至4のグリシジルエーテル単位を有する化合物が好ましい。
【0020】
本発明において、(b)成分として用いる分岐ポリアセタール樹脂は、トリオキサン99.89〜89.0重量%に対して前記単官能環状エーテルを0.1〜10.0重量%、前記多官能グリシジルエーテル化合物を0.01〜1.0重量%の割合で共重合して得られるものであり、好ましくは、トリオキサン99.67〜92.3重量%に対して前記単官能環状エーテルを0.3〜7.0重量%、前記多官能グリシジルエーテル化合物を0.03〜0.7重量%の割合で共重合して得られるものである。
【0021】
単官能環状エーテルの割合が少ない場合は(b)分岐ポリアセタール樹脂の熱安定性などが不十分なものになり易く、単官能環状エーテルの割合が多い場合は(b)分岐ポリアセタール樹脂の機械的特性が不十分なものとなる。また、多官能グリシジルエーテル化合物の共重合割合が少ない場合には、得られる(b)分岐ポリアセタール樹脂がポリアセタール樹脂組成物の機械的特性の改善に寄与する程度が不十分となり、逆に多官能グリシジルエーテル化合物の共重合割合が多い場合には、得られる(b)分岐ポリアセタール樹脂の流動性が不十分なものとなり、セルロース繊維パウダーの分散性に悪影響を及ぼすため好ましくない。
【0022】
本発明において、(b)成分の分岐ポリアセタール樹脂のメルトインデックスは、好ましくは0.01〜10g/10分の範囲が良い。メルトインデックスが過小及び過大の場合には、本発明の効果が十分に得られない場合がある。なお、メルトインデックスは、ASTM−D1238に準拠して、190℃、2.16kgf(21.2N)の条件下で測定した値である。
【0023】
本発明において、(b)成分の分岐ポリアセタール樹脂の配合量は、(a)成分の直鎖ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部であり、好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜10重量部である。(b)成分の分岐ポリアセタール樹脂の配合量が0.1重量部を下回る場合には、ポリアセタール樹脂組成物の機械的特性の改善が不十分となり、50重量部を上回る場合には、セルロース繊維パウダーの分散性が悪化するため好ましくない。
<(c)セルロース繊維パウダー>
本発明に使用する(c)セルロース繊維パウダーは、精製パルプを原料とし、パウダー形状としたものであり、そのアスペクト比は5〜25である。特に、好ましいアスペクト比は7〜20である。(c)セルロース繊維パウダーのアスペクト比が5を下回る場合には、ポリアセタール樹脂組成物の機械的特性の改善が不十分となり、25を上回る場合には、セルロース繊維パウダーの分散性が悪化するため好ましくない。なお、アスペクト比は、SEM又は光学顕微鏡による観察により測定することができる。
【0024】
また、(c)セルロース繊維パウダーの平均繊維長は150〜350μmであり、特に、180〜320μmが好ましい。(c)セルロース繊維パウダーの平均繊維長が150μmを下回る場合には、ポリアセタール樹脂組成物の機械的特性の改善が不十分となり、350μmを上回る場合には、セルロース繊維パウダーの分散性が悪化し、又、ポリアセタール樹脂組成物の分解が進行する場合があるため好ましくない。なお、平均繊維長は、SEM又は光学顕微鏡による観察により測定することができる。
【0025】
また、本発明において使用する(c)セルロース繊維パウダーとしては、αセルロース純度が98〜100%のものが好ましく、特に好ましくは、αセルロース純度が99〜100%の範囲のものである。このようにαセルロース純度の高いセルロース繊維パウダーを用いることにより、熱安定性等にも優れたポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。αセルロース純度の不十分なセルロース繊維パウダーを用いた場合には、得られるポリアセタール樹脂組成物の安定性が不十分なものとなり、樹脂の分解により製造が難しくなる場合がある。
【0026】
本発明において、(c)セルロース繊維パウダーの配合量は、(a)直鎖ポリアセタール樹脂100重量部に対して10〜150重量部であり、好ましくは10〜150重量部である。(c)セルロース繊維パウダーの配合量が10重量部を下回る場合には、ポリアセタール樹脂組成物の機械的特性の改善が不十分となり、150重量部上回る場合には、セルロース繊維パウダーの分散性が悪化するため好ましくない。
<(d)ヒンダードフェノール系酸化防止剤>
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、(d)ヒンダードフェノール系化合物を用いることで、機械的特性の改善が安定して得られる。(d)ヒンダードフェノール系化合物としては、単環式ヒンダードフェノール化合物(例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールなど)、炭化水素基又はイオウ原子を含む基で連結された多環式ヒンダードフェノール化合物(例えば、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)など)、エステル基又はアミド基を有するヒンダードフェノール化合物(例えば、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、n−オクタデシル−2−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、ジ−n−オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ジヒドロシンナムアミド、N,N’−エチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−テトラメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−エチレンビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N’−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレートなど)が挙げられる。
【0027】
本発明において、(d)ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。その配合割合は、(a)直鎖ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜3重量部であり、好ましくは0.02〜1重量部である。
<(e)窒素含有化合物>
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、(e)アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びポリアミドから選ばれた少なくとも一種の窒素含有化合物を用いることで、機械的特性の改善が安定して得られ、溶融安定性も向上する。
【0028】
アミノトリアジン化合物としては、メラミン又はその誘導体[メラミン、メラミン縮合体(メラム、メレム、メロン)など]、グアナミン又はその誘導体、及びアミノトリアジン樹脂[メラミンの共縮合樹脂(メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−メラミン樹脂、メラミン−フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン−メラミン樹脂、芳香族ポリアミン−メラミン樹脂など)、グアナミンの共縮合樹脂など]などが挙げられる。
【0029】
グアナミン化合物としては、脂肪族グアナミン化合物(モノグアナミン類、アルキレンビスグアナミン類など)、脂環族グアナミン系化合物(モノグアナミン類など)、芳香族グアナミン系化合物[モノグアナミン類(ベンゾグアナミン及びその官能基置換体など)、α−又はβ−ナフトグアナミン及びそれらの官能基置換誘導体、ポリグアナミン類、アラルキル又はアラルキレングアナミン類など]、ヘテロ原子含有グアナミン系化合物[アセタール基含有グアナミン類、テトラオキソスピロ環含有グアナミン類(CTU−グアナミン、CMTU−グアナミンなど)、イソシアヌル環含有グアナミン類、イミダゾール環含有グアナミン類など]などが挙げられる。また、上記のメラミン、メラミン誘導体、グアナミン系化合物のアルコキシメチル基がアミノ基に置換した化合物なども含まれる。
【0030】
ヒドラジド化合物としては、脂肪族カルボン酸ヒドラジド系化合物(ステアリン酸ヒドラジド、12−ヒドロキシステアリン酸ヒドラジド 、セバシン酸ジヒドラジド 、ドデカン二酸ジヒドラジド 、エイコサン二酸ジヒドラジドなど)、脂環族カルボン酸ヒドラジ
ド系化合物(1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントインなど)、芳香族カルボン酸ヒドラジド系化合物(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル安息香酸ヒドラジド、1−ナフトエ酸ヒドラジド、2−ナフトエ酸ヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジドなど)、ヘテロ原子含有カルボン酸ヒドラジド系化合物、ポリマー型カルボン酸ヒドラジド系化合物などが挙げられる。
【0031】
ポリアミドとしては、ジアミンとジカルボン酸とから誘導されるポリアミド;アミノカルボン酸、必要に応じてジアミン及び/又はジカルボン酸を併用して得られるポリアミド;ラクタム、必要に応じてジアミン及び/又はジカルボン酸との併用により誘導されるポリアミドが含まれる。また、2種以上の異なったポリアミド形成成分により形成される共重合ポリアミドも含まれる。
【0032】
具体的なポリアミドの例としては、ポリアミド3、ポリアミド4、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12などの脂肪族ポリアミド、芳香族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸)と脂肪族ジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン)とから得られるポリアミド、脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸)と芳香族ジアミン(例えば、メタキシリレンジアミン)とから得られるポリアミド、芳香族及び脂肪族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸とアジピン酸)と脂肪族ジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン)とから得られるポリアミド及びこれらの共重合体などが挙げられる。また、ポリアミドハードセグメントとポリエーテル成分などの他のソフトセグメントの結合したポリアミド系ブロックコポリマーの使用も可能である。
【0033】
(e)アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びポリアミドから選ばれる窒素含有化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。その配合割合は、(a)直鎖ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜3重量部であり、好ましくは0.02〜1重量部である。
<(f)加工助剤>
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、(f)長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の誘導体、長鎖脂肪族アルコール、ポリオキシアルキレングリコール、オレフィン系ワックス及びシリコーン化合物から選ばれた少なくとも一種の加工助剤を用いることで、機械的特性の改善が安定して得られ、溶融加工性も向上するので、(f)加工助剤を配合するのが好ましい。
【0034】
長鎖脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。また、その一部の水素原子がヒドロキシル基などの置換基で置換されたものも使用できる。このような長鎖脂肪酸としては、炭素数10以上の1価又は2価の脂肪酸、炭素数10以上の一価の不飽和脂肪酸、炭素数10以上の二価の脂肪酸(二塩基性脂肪酸)が例示される。前記脂肪酸には、1つ又は複数のヒドロキシル基を分子内に有する脂肪酸も含まれる。
【0035】
長鎖脂肪酸の誘導体には、脂肪酸エステル及び脂肪酸アミドなどが含まれる。
【0036】
脂肪酸エステルとしては、前記長鎖脂肪酸とアルコールとのエステルが挙げられる。その構造は特に制限されず、直鎖状又は分岐状脂肪酸エステルのいずれも使用できる。脂肪酸エステルの具体例としては、エチレングリコールモノ又はジパルミチン酸エステル、エチレングリコールモノ又はジステアリン酸エステル、エチレングリコールモノ又はジベヘン酸エステル、エチレングリコールモノ又はジモンタン酸エステル、グリセリンモノ乃至トリパルミチン酸エステル、グリセリンモノ乃至トリステアリン酸エステル、グリセリンモノ乃至トリベヘン酸エステル、グリセリンモノ乃至トリモンタン酸エステル、ペンタエリスリトールモノ乃至テトラパルミチン酸エステル、ペンタエリスリトールモノ乃至テトラステアリン酸エステル、ペンタエリスリトールモノ乃至テトラベヘン酸エステル、ペンタエリスリトールモノ乃至テトラモンタン酸エステル、ポリグリセリントリステアリン酸エステル、トリメチロールプロパンモノパルミチン酸エステル、ペンタエリスリトールモノウンデシル酸エステル、ソルビタンモノステアリン酸エステル、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)のモノ又はジラウレート、モノ又はジパルミテート、モノ又はジステアレート、モノ又はジベヘネート、モノ又はジモンタネート、モノ又はジオレート、モノ又はジリノレートなどが挙げられる。
【0037】
脂肪酸アミドの例としては、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、アラキン酸アミド、ベヘン酸アミド、モンタン酸アミドなどの飽和脂肪酸の第1級酸アミド、オレイン酸アミドなどの不飽和脂肪酸の第1級酸アミド、ステアリルステアリン酸アミド、ステアリルオレイン酸アミドなどの飽和及び/又は不飽和脂肪酸とモノアミンとの第2級酸アミド、エチレンジアミン−ジパルミチン酸アミド、エチレンジアミン−ジステアリン酸アミド(エチレンビスステアリルアミド)、ヘキサメチレンジアミン−ジステアリン酸アミド、エチレンジアミン−ジベヘン酸アミド、エチレンジアミン−ジモンタン酸アミド、エチレンジアミン−ジオレイン酸アミド、エチレンジアミン−ジエルカ酸アミドなどが挙げられ、更にエチレンジアミン−(ステアリン酸アミド)オレイン酸アミドなどのアルキレンジアミンのアミン部位に
異なるアシル基が結合した構造を有するビスアミドなどが例示できる。
【0038】
長鎖脂肪族アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。
【0039】
前記ポリオキシアルキレングリコールとしては、アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールなどのアルキレングリコールなど)の単独又は共重合体、それらの誘導体などが挙げられる。
【0040】
ポリオキシアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体(ランダム又はブロック共重合体など)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテルなどの共重合体などが挙げられる。これらのうち、オキシエチレン単位を有する重合体、例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体及びそれらの誘導体などが好ましい。ポリオキシアルキレングリコールの平均分子量は、3×102〜1×106、好ましくは1×103〜1×105程度である。
【0041】
前記オレフィン系ワックスとしては、低分子量のポリオレフィン(例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、エチレンとα−オレフィンの低分子量共重合体など)、酸化型ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0042】
前記シリコーン系化合物には、(ポリ)オルガノシロキサンなどが含まれる。(ポリ)オルガノシロキサンとしては、ジアルキルシロキサン(ジメチルシロキサンなど)、アルキルアリールシロキサン(フェニルメチルシロキサンなど)、ジアリールシロキサン(ジフェニルシロキサンなど)などのモノオルガノシロキサン、これらの単独重合体(ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサンなど)又は共重合体などが例示できる。なお、ポリオルガノシロキサンは、オリゴマーであってもよい。
【0043】
また、(ポリ)オルガノシロキサンには、分子末端や主鎖に、エポキシ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基又は置換アミノ基(ジアルキルアミノ基など)、エーテル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などの置換基を有する変性(ポリ)オルガノシロキサンなども含まれる。
【0044】
本発明において、(f)長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の誘導体、長鎖脂肪族アルコール、ポリオキシアルキレングリコール、オレフィン系ワックス及びシリコーン化合物から選ばれた少なくとも一種の加工助剤の配合は必須ではないが、良好な加工性を付与するため、さらに、良好な加工性によって安定な機械的特性や優れた表面性状を達成するためにはかかる加工助剤を配合するのが好ましく、前記化合物を単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。加工助剤を配合する場合の配合割合は、(a)直鎖ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜3重量部が好ましく、特に好ましくは0.05〜1重量部である。
<ポリアセタール樹脂組成物の調製方法>
本発明において、上記ポリアセタール樹脂組成物の調製方法の具体的態様は特に限定されるものではなく、一般に合成樹脂組成物又はその成形品の調製法として公知の設備と方法により調製することができる。即ち、必要な成分を混合し、押出機又はその他の溶融混練装置を使用して混練し、成形用ペレットとして調製することができる。また、押出機又はその他の溶融混練装置は複数使用してもよい。特に、本発明において押出機は、機械的特性の改善とセルロース繊維パウダーの分散性の両立の観点から、二軸押出機を用いることが好ましい。 特に、機械的特性の改善とセルロース繊維パウダーの分散性の両立の観点から、サイドフィード可能な二軸押出機を用い、(c)セルロース繊維パウダーを押出機のサイド側から他の原料とは独立に供給して溶融混錬する製造方法が好ましい。
【0045】
本発明のポリアセタール樹脂組成物の調製にあたり、ポリアセタール樹脂と(c)セルロース繊維パウダーとの密着性を改善する物質を使用することができる。ここで、密着性を改善する物質としては、イソシアネート化合物、イソチオシオネート化合物、及びそれらの変性体イソシアネート化合物、熱可塑性ポリウレタン樹脂、α,β−モノオレフィン性不飽和カルボン酸の酸無水物の重合体及び共重合体、ホウ酸化合物などが挙げられる。
【0046】
更に本発明の組成物には目的とする用途に応じてその物性を改善するため、公知の各種の添加物を配合し得る。添加物の例を示せば、各種の着色剤、滑剤、核剤、界面活性剤、異種ポリマー、有機高分子改良剤及び無機、有機、金属などの繊維状、粉粒状、板状の充填剤が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合使用できる。
<ポリアセタール樹脂組成物の成形方法ならびに用途>
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、従来公知の成形方法(例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形、回転成形、ガスインジェクション成形などの方法)で、種々の成形品を成形することができる。特に、射出成形に好適である。また、これらの成形品は、自動車部品、電気・電子部品、建材、生活関係部品・化粧関係部品・医用関係部品など各種用途に利用することができる。
【0047】
具体的には、自動車部品としては、インナーハンドル、フェーエルトランクオープナー、シートベルトバックル、アシストラップ、各種スイッチ、ノブ、レバー、クリップなどの内装部品、メーター、コネクターなどの電気系統部品、オーディオ機器やカーナビゲーション機器などの車載電気・電子部品、ウインドウレギュレーターのキャリアープレートに代表される金属と接触する部品、ドアロックアクチェーター部品、ミラー部品、ワイパーモーターシステム部品、燃料系統の部品などの機構部品などが挙げられる。
【0048】
電気・電子部品としては、ポリアセタール樹脂成形品で構成され、かつ金属接点が多数存在する機器の部品又は部材、例えば、オーディオ機器、ビデオ機器、又は、電話機、コピー機、ファクシミリ、ワードプロセサー、コンピューターなどのOA機器、玩具類の部品又は部材、具体的には、シャーシ、ギヤー、レバー、カム、プーリー、軸受けなどが挙げられる。
【0049】
更に、照明器具、建具、配管、コック、蛇口、トイレ周辺機器部品などの建材・配管部品、ファスナー類、文具、リップクリーム・口紅容器、洗浄器、浄水器、スプレーノズル、スプレー容器、エアゾール容器、一般的な容器、注射針のホルダーなどの広範な生活関係部品・化粧関係部品・医用関係部品に好適に使用される。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0051】
実施例1、2、比較例1〜3
表1に示す割合で、(a)直鎖ポリアセタール樹脂、(b)分岐ポリアセタール樹脂、(c)セルロース繊維パウダー、(d)ヒンダードフェノール系酸化防止剤、(e)窒素含有化合物、及び(f)加工助剤を二軸押出機で溶融混錬し、ペレット状のポリアセタール樹脂組成物を調製した。なお、(c)セルロース繊維パウダーは二軸押出機のサイド側から独立にフィーダーから供給して混合した。得られたペレットを用いて、射出成形機により所定の試験片を成形し、試験評価を行った。結果を表1に示す。
〔使用成分〕
使用した成分の詳細は、以下のとおりである。
(a)直鎖ポリアセタール樹脂
(a−1)トリオキサン96.5重量%と1,3−ジオキソラン3.5重量%を共重合して得られる直鎖ポリアセタール樹脂、メルトインデックス=27g/10分(ポリプラスチックス(株)製)
(b)分岐ポリアセタール樹脂
(b−1)トリオキサン98.2重量%と1,3−ジオキソラン1.7重量%とトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル 0.1重量%を共重合して得られる分岐ポリアセタール樹脂、メルトインデックス=1.5g/10分(ポリプラスチックス(株)製)
(c)セルロース繊維パウダー
(c−1)ARBOCEL BC 200、アスペクト比15、平均繊維長300μm、αセルロース純度99.5%、嵩比重70〜90g/L(レッテンマイヤー社製)
(c−2)KCフロック W−200、アスペクト比2以下、平均繊維長50μm以下、αセルロース純度99%以上、嵩比重300〜360g/L(日本製紙ケミカル(株)製)
(d)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
(d−1)ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
(e)窒素含有化合物
(e−1)メラミン
(f)加工助剤
(f−1)エチレンビスステアリルアミド
〔押出条件〕
押出機:TEX−30α(L/D=38.5)、日本製鋼所社製
スクリュー回転数:129rpm
バレル温度:C2=160℃、C3〜C11・D=200℃
〔成形条件〕
成形機:ROBOSHOT S2000i100B、スクリュー径28mm、ファナック社製
シリンダ温度:200℃
金型温度:90℃(水温調)
〔試験方法〕
試験方法の詳細は、以下のとおりである。
(1)引張強さ、引張伸び(破壊ひずみ)
ISO527−1,2に定められている評価基準に従い引張強さ(MPa)、引張伸び(%)を評価した。
(2)曲げ弾性率、曲げ強さ
ISO178に準拠し、曲げ強さ(MPa)、曲げ弾性率(MPa)を測定した。
(3)シャルピー衝撃強さ(ノッチ付)
ISO179/1eAに準拠しシャルピー衝撃強さ(ノッチ付)(kJ/m)を測定した。
(4)外観評価
ISO178に準拠した曲げ試験片の外観を目視観察した。
【0052】
【表1】

【0053】
表1の結果の比較から、本発明の要件を満たすポリアセタール樹脂組成物(実施例1、2)は、(b)分岐ポリアセタール樹脂を配合していない比較例1に比べ、特に、引張強さ、曲げ強さ、衝撃強さが向上し、それぞれ高い値を有していることがわかる。また、比較例2と比較例3の比較から、セルロース繊維パウダーが本発明の要件を満たさない場合には、(b)分岐ポリアセタール樹脂を配合しても、曲げ弾性率の改善は見られるものの、引張強さ、曲げ強さ、衝撃強さの値が低いことがわかる。
【0054】
尚、各実施例及び比較例において、(f)加工助剤を配合しない場合の組成物も同様に調製して評価したが、各々対応する実施例及び比較例と同等の機械的特性(引張特性、曲げ特性、衝撃特性等)を有するものであった(特に表1には記載していない)。溶融加工を安定させ、成形品の品質の安定性・均一性を確保するためには(f)加工助剤の配合が望ましいため、表1には(f)加工助剤を配合した組成物の結果を表示したが、機械的特性の改善に対する本発明の効果、特に(b)分岐ポリアセタール樹脂の配合と、セルロース繊維パウダーの選択による効果は、上記の通り、表1から明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)トリオキサン99.9〜90.0重量%と単官能環状エーテル0.1〜10.0重量%を共重合して得られる直鎖ポリアセタール樹脂100重量部に対して、
(b)トリオキサン99.89〜89.0重量%と単官能環状エーテル0.1〜10.0重量%と官能基数が2〜4の多官能グリシジルエーテル化合物0.01〜1.0重量%を共重合して得られる分岐ポリアセタール樹脂0.1〜50重量部、
(c)アスペクト比が5〜25、平均繊維長が150〜350μmのセルロース繊維パウダー10〜150重量部、
(d)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.01〜3重量部及び
(e)アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びポリアミドから選ばれた少なくとも一種の窒素含有化合物0.01〜3重量部
を含有してなるポリアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
(c)セルロース繊維パウダーのαセルロース純度が98〜100%である、請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
(b)分岐ポリアセタール樹脂の形成に用いる多官能グリシジルエーテル化合物が、1分子中に3乃至4のグリシジルエーテル単位を有する化合物である、請求項1または2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
(b)分岐ポリアセタール樹脂のメルトインデックス(ASTM−D1238に準拠、190℃、2.16kgf)が0.01〜10g/10分である、請求項1〜3いずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項5】
(a)直鎖ポリアセタール樹脂のメルトインデックス(ASTM−D1238に準拠、190℃、2.16kgf)が10〜50g/10分である、請求項1〜4いずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、(f)長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の誘導体、長鎖脂肪族アルコール、ポリオキシアルキレングリコール、オレフィン系ワックス及びシリコーン化合物から選ばれた少なくとも一種の加工助剤を、(a)直鎖ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜3重量部の割合で含有してなる請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物を製造するにあたり、サイドフィード可能な二軸押出機を用い、(c)セルロース繊維パウダーを押出機のサイド側から他の原料とは独立に供給して溶融混錬するポリアセタール樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2012−87157(P2012−87157A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232247(P2010−232247)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】