説明

ポリアセタール樹脂組成物

【課題】ポリアセタール樹脂が本来有する機械的特性、加工性、表面特性等の優れた特性を維持し更にはその向上を図りながら、ホルムアルデヒド等のガスの発生を極限まで低減したポリアセタール樹脂材料を提供する。
【解決手段】実質的に直鎖の分子構造を有するポリアセタール樹脂(A1)99.88〜70.0重量%、分岐又は架橋構造を有するポリアセタール樹脂(A2)0.1〜20.0重量%、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(B)0.01〜5.0重量%およびグアナミン化合物(C)0.01〜5.0重量%を含有してなるポリアセタール樹脂組成物(含有量は何れも全組成物中の割合を示し、合計量は100重量%である)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた機械的特性、加工性及び安定性を有すると共に、ホルムアルデヒド等の発生量が著しく抑制されたポリアセタール樹脂組成物に関するものである。また、表面特性を損なうことなくかかる特性を付与したポリアセタール樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は優れた機械的特性、摺動性、加工性、表面特性等を有し、その成形品は広汎な分野に利用されている。
【0003】
このようなポリアセタール樹脂に対し、近年は、その優れた機械的特性、加工性、表面特性等を維持し更にはその向上を図りながら、ホルムアルデヒド等のガスの発生を極限まで低減することが強く要求される傾向にある。しかしながら、従来から知られた方法によってこれらの特性をすべて満足するポリアセタール樹脂材料を得ることは極めて難しい。
【0004】
例えば、ポリアセタール樹脂の熱安定性を高め、樹脂の分解によるホルムアルデヒド等の発生を抑制するために各種の安定剤を配合することは従来より行われており、安定剤としてグアナミン化合物を添加することも古くから知られている(特許文献1)。しかしながら、グアナミン化合物の添加によって高度の熱安定性を達成し、ホルムアルデヒド等のガスの発生を著しく減少させようとしてその配合量等の調整を行った場合、ポリアセタール樹脂が本来有する優れた機械的特性や加工性等を損なうことがあり、また、配合成分の染み出しが生じる要因になるものであった。
【0005】
一方、ポリアセタール樹脂の機械的特性を向上させるためにガラス繊維等の無機充填材を配合することが従来から知られているが、かかる樹脂材料を調製する際の溶融混練による剪断によってポリアセタール樹脂の分解が生じ易くなり、ホルムアルデヒド等のガスの発生を低いレベルに維持することは困難である。また、無機充填材の存在により、ポリアセタール樹脂が本来有していた摺動性、加工性、表面特性等の優れた特性が著しく損なわれたものとなる。
【特許文献1】特公昭40−21148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、従来から知られた技術によっては、ポリアセタール樹脂が本来有する機械的特性、加工性、表面特性等の優れた特性を維持し更にはその向上を図りながら、ホルムアルデヒド等のガスの発生を極限まで低減したポリアセタール樹脂材料を得ることは困難であった。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決し、これらの特性を兼備した樹脂材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、かかる要求に応え得るポリアセタール樹脂組成物を得るため鋭意検討を重ねた結果、基体とするポリアセタール樹脂の構成と配合成分の選択によって目的が達成できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
即ち本発明は、実質的に直鎖の分子構造を有するポリアセタール樹脂(A1)99.88〜70.0重量%、分岐又は架橋構造を有するポリアセタール樹脂(A2)0.1〜20.0重量%、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(B)0.01〜5.0重量%およびグアナミン化合物(C)0.01〜5.0重量%を含有してなるポリアセタール樹脂組成物(含有量は何れも全組成物中の割合を示し、合計量は100重量%である)に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた機械的特性等を有し、かつ、ホルムアルデヒド等のガス発生量の少ないポリアセタール樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。まず、本発明で用いられる実質的に直鎖の分子構造を有するポリアセタール樹脂(A1) とは、オキシメチレン基(-CHO-)を主たる構成単位とする高分子化合物であって、分子鎖中に意図的に導入された分岐構造や架橋構造を有しないものを指す。かかるポリアセタール樹脂(A1)としては、実質的にオキシメチレン基の繰返しのみからなるポリアセタールホモポリマー、オキシメチレン基を主体とし分岐・架橋構造を形成しない他の構成単位、特にC2−6のオキシアルキレン単位、を少量有するポリアセタールコポリマー(ブロックコポリマーを含む)がその代表例として挙げられる。本発明においては、ポリアセタール樹脂(A1)としてこれらのポリアセタール樹脂の何れも使用でき、また、必要に応じて二種以上の特性の異なるポリアセタール樹脂をブレンドして使用することも出来るが、成形性、熱安定性等の観点からポリアセタールコポリマーを用いるのが好ましい。
【0012】
かかるポリアセタールコポリマーとしては、トリオキサン(a)99.95〜80.0重量%と置換基を持たない環状エーテル化合物及び環状ホルマール化合物から選ばれた化合物(b)0.05〜20.0重量%とを共重合して得られるものが好ましく、更に好ましくはトリオキサン(a)99.9〜90.0重量%と上記化合物(b)0.1〜10.0重量%とを共重合して得られるものである。
【0013】
ポリアセタールコポリマーの製造に用いるコモノマー成分(上記化合物(b))としては、例えばエチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,3−ジオキサン、プロピレンオキシド等が挙げられ、特にエチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール及びジエチレングリコールホルマールから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。ポリアセタール樹脂(A1) の調製法は特に限定されるものではなく、公知の方法で調製することができるが、工業的には連続塊状重合法が好ましい。
【0014】
本発明において用いるポリアセタールコポリマーは、そのメルトインデックス(190℃ 、荷重2160gで測定)は1〜50 g/min.であるものが好ましい。メルトインデックスは、重合に用いる連鎖移動剤、例えばメチラールの添加量を増減することにより調整できる。また、本発明において用いるポリアセタールコポリマーとしては、ヘミホルマール末端基量が1.0 mmol/kg以下、ホルミル末端基量が2.0 mmol/kg以下、不安定末端基量が0.5重量%以下であるものが好ましく、より好ましくは、ヘミホルマール末端基量が0.6 mmol/kg以下、ホルミル末端基量が0.5mmol/kg以下、不安定末端基量が0.3重量%以下のものである。このような末端特性を有するポリアセタールコポリマーをポリアセタール樹脂(A1)として使用することにより、本発明が目的の1つとするホルムアルデヒド発生量の十分に低減されたポリアセタール樹脂組成物の調製に有効に寄与するものとなる。
ここでヘミホルマール末端基は−OCHOHで示されるものであり、ヒドロキシメトキシ基あるいはヘミアセタール末端基とも称される。また、ホルミル末端基は−CHOで示される。かかるヘミホルマール末端基およびホルミル末端基の量はH−NMR測定により求めることができ、その具体的な測定方法は、特開2001−11143号公報に記載された方法を参照できる。また、不安定末端基量とは、ポリアセタール共重合体の末端部分に存在し、熱や塩基に対して不安定で分解し易い部分の量を示す。かかる不安定末端基量は、ポリアセタール共重合体1gを、0.5%(体積%)の水酸化アンモニウムを含む50%(体積%)メタノール水溶液100mlとともに耐圧密閉容器に入れ、180℃で45分間加熱処理した後、冷却し、開封して得られる溶液中に分解溶出したホルムアルデヒド量を定量し、ポリアセタール共重合体に対する重量%で表したものである。
【0015】
上記のような末端特性のポリアセタールコポリマーは、重合工程の調整、触媒失活化工程の調整、不安定末端の分解除去による安定化工程の調整、それらの調整法の組合せによって得ることができる。例えば、重合工程においては、重合に用いるモノマーやコモノマーに含まれる水分、メタノール、ギ酸などの不安定末端を生じさせる不純物を減少させ、これらの不純物の少ないモノマーやコモノマーを用いて重合を行う方法、モノマー中の不純物の減少に伴い或いは高活性の触媒の使用により触媒使用量を少量に調整する方法、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の共存下で重合を行う方法、触媒失活化工程においては、重合によって得られた固体状の重合体を効率的に微細粒子状に粉砕して触媒の失活を行う方法、不安定末端の分解除去による安定化工程においては、重合後の不安定末端部を有するポリアセタールコポリマーを塩基性化合物の存在下で押出機等により溶融処理して不安定末端部の分解除去を行い、冷却固化後に、さらに高温液体中(例えば水中)で不均一状態を保って加熱処理する方法、重合後の不安定末端部を有するポリアセタールコポリマーを塩基性化合物を含有する溶媒中に加熱溶解させ、溶液状態で加熱処理する方法等により、更にはこれらの方法を組み合わせることにより、より好ましい末端特性のポリアセタールコポリマーを調製することができる。
【0016】
次に、本発明に用いる分岐又は架橋構造を有するポリアセタール樹脂(A2) は、上記の如きポリアセタールホモポリマー或いはポリアセタールコポリマーの製造において、ホルムアルデヒド或いはトリオキサン等と共重合可能であり、かつ共重合によって分岐単位或いは架橋単位を形成し得る化合物を更に添加して共重合することによって得られるものである。例えば、トリオキサン(a)と置換基を持たない環状エーテル化合物及び環状ホルマール化合物から選ばれた化合物(b)を共重合させるにあたり、置換基を有する単官能グリシジル化合物(例えば、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル等)を更に加えて共重合することにより分岐構造を有するポリアセタール樹脂が得られ、また、多官能グリシジルエーテル化合物を加えて共重合することにより架橋構造を有するポリアセタール樹脂が得られる。
【0017】
本発明においては、ポリアセタール樹脂(A2) として架橋構造を有するものを使用するのが好ましく、中でも、トリオキサン(a)99.89〜88.0重量% 、置換基を持たない単官能環状エーテル化合物及び単官能環状ホルマール化合物から選ばれた化合物(b)0.1〜10.0重量% 及び多官能グリシジルエーテル化合(c)0.01〜2.0重量% を共重合して得られるものが好ましく、特に好ましくはトリオキサン(a)99.28〜96.50重量% 、化合物(b)0.7〜3.0重量%及び多官能グリシジルエーテル化合物(c)0.02〜0.5重量%を共重合して得られるものである。また、そのメルトインデックスが0.1〜10 g/min.の架橋ポリアセタール樹脂が好ましい。
【0018】
化合物(b)としては、前記と同じものが挙げられ、特にエチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール及びジエチレングリコールホルマールから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0019】
また、多官能グリシジルエーテル化合物(c)としてはエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4 −ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリブチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの化合物は単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0020】
中でも、1分子中に3乃至4個のグリシジルエーテル基を有するものが特に好ましく、具体的にはトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル及びペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルが挙げられる。かかる3乃至4個のグリシジルエーテル基を1分子中に有するグリシジルエーテル化合物を用いて架橋構造を形成させたポリアセタール共重合体をポリアセタール樹脂(A2)として使用することにより、より一層機械的特性の優れたポリアセタール樹脂組成物となる。
【0021】
上記の如き分岐又は架橋構造を有するポリアセタール樹脂(A2) の調製法も特に限定されるものではなく、ポリアセタール樹脂(A1) の調製と同様に、公知の方法で調製することができる。
【0022】
本発明において、上記の如き分岐又は架橋構造を有するポリアセタール樹脂(A2) の配合量は、全組成物中の割合として0.1〜20.0重量%であり、より好ましくは2.0〜20重量%である。この配合量が少ない場合は機械的特性の優れたポリアセタール樹脂組成物を得ることができず、配合量が過大の場合はポリアセタール樹脂組成物の成形加工性を損ねることになり、結果として機械的特性も不十分なものとなる。
また、本発明において使用するヒンダードフェノール系酸化防止剤(B)としては、単環式ヒンダードフェノール化合物、炭化水素基又はイオウ原子を含む基で連結された多環式ヒンダードフェノール化合物、エステル基又はアミド基を有するヒンダードフェノール化合物などが挙げられる。これらの具体的化合物としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、n−オクタデシル−2−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、ジ−n−オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ジヒドロシンナムアミド、N,N’−エチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−テトラメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−エチレンビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N’−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレートなどを例示することができる。
【0023】
これらのヒンダードフェノール系酸化防止剤(B)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤(B)の添加量は、全組成物中の割合として0.01〜5.0重量%であり、好ましくは0.03〜3.0重量%である。添加量が少ない場合は効果が不十分なものとなり、多い場合は、着色、染み出し等の問題を引き起こす可能性がある。
【0024】
また、本発明において使用するグアナミン化合物(C)としては、脂肪族グアナミン系化合物、脂環族グアナミン系化合物、芳香族グアナミン系化合物、ヘテロ原子含有グアナミン系化合物などが可能である。
【0025】
脂肪族グアナミン系化合物としては、アセトグアナミン、バレログアナミン、カプログアナミン、ヘプタノグアナミン、カプリログアナミン、ステアログアナミンなどのモノグアナミン類、サクシノグアナミン、グル夕ログアナミン、アジポグアナミン、ピメログアナミン、スベログアナミン、アゼログアナミン、セバコグアナミンなどのアルキレンビスグアナミン類が挙げられる。
【0026】
脂環族グアナミン系化合物としては、シクロヘキサンカルボグアナミン、ノルボルネンカルボグアナミン、シクロヘキセンカルボグアナミン、ノルボルナンカルボグアナミンなどのモノグアナミン類、及び、それらのシクロアルカン残基に、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アセトアミノ基、ニトリル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルコキシ基、フェニル基、クミル基、ヒドロキシフェニル基などの官能基が1〜3個置換した誘導体が挙げられる。
【0027】
芳香族グアナミン系化合物としては、ベンゾグアナミン及びそのフェニル残基にアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アセトアミノ基、ニトリル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルコキシ基、フェニル基、クミル基、ヒドロキシフェニル基などの官能基が1〜5個置換した誘導体(例えば、トルグアナミン、キシログアナミン、フェニルベンゾグアナミン、ヒドロキシベンゾグアナミン、4−(4’−ヒドロキシフェニル)ベンゾグアナミン、ニトリルベンゾグアナミン、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンゾグアナミン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾグアナミンなど)、ナフトグアナミン及びそのナフチル残基に上記の如き官能基が置換した誘導体などのモノグアナミン類、フ夕ログアナミン、イソフタログアナミン、テレフタログアナミン、ナフタレンジグアナミン、ビフェニレンジグアナミンなどのポリグアナミン類、フェニルアセトグアナミン、β−フェニルプロピオグアナミン、キシリレンビスグアナミンなどのアラルキル又はアラルキレングアナミン類が挙げられる。
【0028】
ヘテロ原子含有グアナミン系化合物としては、2,4−ジアミノ−6−(3,3−ジメトキシプロピル)−s−トリアジンなどのアセタール基含有グアナミン類、[2−(4’−6’−ジアミノ−s−トリアジン−2’−イル)エチル]−1,3−ジオキサン、[2−(4’−6’−ジアミノ−s−トリアジン−2’−イル)エチル]−4−エチル−4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサンなどのジオキサン環含有グアナミン類、CTU−グアナミン、CMTU−グアナミンなどのテトラオキソスピロ環含有グアナミン類、1,3,5−トリス[2−(4’,6’−ジアミノ−s−トリアジン−2’−イル)エチル]イソシアヌレート、1,3,5−トリス[3−(4’,6’−ジアミノ−s−トリアジン−2’−イル)プロピル]イソシアヌレートなどのイソシアヌル環含有グアナミン類、特開平6−179671号公報、特開平7−10871号公報に記載されたグアナミン化合物の如きイミダゾイル環含有グアナミン類、特開昭47−41120号公報、特開平3−284675号公報、特開平7−33766号公報に記載されたグアナミン化合物の如きイミダゾール環含有グアナミン類、特開2000−154181号記載のグアナミン化合物などが挙げられる。
【0029】
また、上記グアナミン系化合物のアミノ基の水素がアルコキシメチル基に置換された化合物、例えば、(モノ〜テトラ)メトキシメチルベンゾグアナミン、(モノ〜オクタ)メトキシメチルCTU−グアナミンなども含まれる。
【0030】
これらのグアナミン系化合物の中で、特に好ましいものとしては、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、CTU−グアナミンが挙げられる。
【0031】
本発明において、かかるグアナミン化合物(C)の配合量は、全組成物中の割合として0.01〜5.0重量%であり、好ましくは0.03〜3.0重量%である。グアナミン化合物(C)の配合量が少ない場合はポリアセタール樹脂組成物が熱安定性の劣るものとなり、ホルムアルデヒド等のガスの発生量が増加する。グアナミン化合物(C)の配合量が過大の場合は、機械的特性が低下すると共に、成形加工性も劣るものとなり、成形品の表面性も損ねることになる。
【0032】
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、更に公知の各種安定剤・添加剤を配合し得る。安定剤としては、メラミン、ヒドラジド、尿素等の窒素含有化合物、アルカリ或いはアルカリ土類金属の水酸化物、無機塩、カルボン酸塩等のいずれか1種または2種以上を挙げることができる。また、添加剤としては、熱可塑性樹脂に対する一般的な添加剤、例えば染料、顔料等の着色剤、滑剤、核剤、離型剤、帯電防止剤、界面活性剤や各種の無機充填剤等を挙げることができる。
【0033】
中でも、脂肪族系ビスアミド化合物の配合は、成形加工性の改善に寄与し、それによって機械的特性の保持やホルムアルデヒド発生の低減にも寄与するため好ましい。かかる目的で配合する脂肪族系ビスアミド化合物の配合量は、全組成物中の割合として0.01〜2.0重量%が好ましい。この配合量は、多くても少なくても成形加工性を損ねることになる。
【0034】
また、本発明は、着色剤0.01〜2.0重量%(全組成物中)で着色されポリアセタール樹脂組成物において大きな効果が発揮され、特に好ましい態様である。すなわち、着色剤の多くは活性を有し、ポリアセタール樹脂の安定性やホルムアルデヒド発生に対して好ましくない作用を生じる場合が多いが、本発明の組成はその抑制に有効に機能する。このため、表面性に優れていることが特に必要とされる着色成形品においては、その効果が顕著である。
【0035】
また、本発明は、実質的に無機繊維状充填材を含まない(配合しない)場合にも特徴的な態様となり好ましい。すなわち、かかる組成物によりポリアセタール樹脂が本来有する加工性、表面特性等の優れた特性を維持しながらその機械的特性を向上させ、更に、ホルムアルデヒド等のガスの発生を極限まで低減したポリアセタール樹脂材料を得ることができる。
本発明のポリアセタール組成物は、従来の樹脂組成物調製法として一般に用いられる公知の方法により容易に調製される。例えば、各成分を混合した後、1軸又は2軸の押し出し機により練り込み押し出しして、ペレットを調製し、しかる後、成形する方法、一旦組成の異なるペレット(マスターバッチ)を調製し、そのペレットを所定量混合(希釈)して成形に供し、成形後に目的組成の成形品を得る方法等何れも使用できる。
【0036】
又、かかる組成物の調製について、基体であるポリアセタール樹脂の一部又は全部を粉砕し、これとその他の成分を混合した後、押し出し等を行うことは添加物の分散性を良くする上で好ましい方法である。
【実施例】
【0037】
以下本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
測定・評価方法は次の方法で行なった。
<引張強度及び伸び>
ISO 3167に準じた引張り試験片を温度23℃、湿度50%の条件下に48時間放置し、ISO 527に準じて測定した。
<発生ガス量>
平板状試験片(100mm×40mm×2mm:重量約11.2g)を、蒸留水50ml含むポリエチレン製瓶(容量1000ml)の蓋に吊り下げて密閉し、恒温槽内に温度60℃で3時間放置した後、室温で1時間静置した。平板状試験片から発生してポリエチレン製瓶中の蒸留水に吸収されたホルムアルデヒドの量をJIS K0102.29(ホルムアルデヒドの項)に従って定量し、試験片の単位重量当たりのホルムアルデヒド発生量を算出した。
【0039】
実施例1〜12、比較例1〜8
直鎖のポリアセタール樹脂(A1)に、分岐・架橋ポリアセタール樹脂(A2)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(B)およびグアナミン化合物(C)を表1に示す割合で配合し、シリンダー温度200℃ の押出機で溶融混練してペレット状の組成物を調製した。次いで、このペレット状の組成物から射出成形機を用いて試験片を成形し、前記の評価法にて物性評価を行った。結果を表1に示す。
【0040】
一方、比較のため、分岐・架橋ポリアセタールを添加しない場合、グアナミン化合物を添加しない場合、各成分の配合量が本発明規定外の場合等についても同様にしてペレット状の組成物を調製し、物性評価を行った。結果を表1示す。
【0041】
尚、実施例・比較例で使用した各成分は以下のものである。
・直鎖のポリアセタール樹脂(A1)
A1−1:ポリアセタール共重合体[ヘミホルマール末端基量=0.38mmol/kg、ホルミル末端基量=0.03mmol/kg、不安定末端基量=0.15重量%、メルトインデックス=9g/10分]
A1−2:ポリアセタール共重合体[ヘミホルマール末端基量=1.20mmol/kg、ホルミル末端基量=0.60mmol/kg、不安定末端基量=0.6重量%、メルトインデックス=9g/10分]
なお、直鎖ポリアセタール樹脂A1−1及びA1−2は、次のようにして調製した。
【0042】
二軸パドルタイプの連続式重合機を用い、パドル付回転軸を150rpmで回転させながらトリオキサン96.7重量%と1,3−ジオキソラン3.3重量%の混合物を連続的に供給し、更に分子量調整剤としてメチラールを連続的に供給し、触媒として三フッ化ホウ素を全モノマーに対して15ppmの割合で連続的に添加し塊状重合を行った。重合に供するトリオキサンと1,3−ジオキソランの混合物には、その全量に対し0.03重量%のペンタエリスリトール−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕を含有させた。また、重合に供するトリオキサンと1,3−ジオキソランの混合物は、不純物として水6ppm、メタノール3.5ppm、ギ酸5ppmを含有するものであった。
【0043】
重合機吐出口より排出された重合体は、直ちにトリエチルアミン1000ppm含有水溶液を加えて粉砕、攪拌処理を行うことにより触媒の失活を行い、次いで、遠心分離、乾燥を行うことにより粗ポリオキシメチレン共重合体を得た。
【0044】
次いで、この粗ポリオキシメチレン共重合体を、ベント口を有する二軸押出機に供給し、樹脂温度約220℃で溶融混練することにより不安定末端部を分解すると共に、分解生成物を含む揮発分をベント口から減圧脱揮した。押出機のダイから取り出した重合体を冷却、細断することにより、不安定末端部の除去されたペレット状のポリアセタール樹脂A1−2を得た。
【0045】
次いで、保温可能な円筒状の耐圧容器を用い、その上部より上記のペレット状の重合体を連続的に供給し、下部よりトリエチルアミン500ppmを含有する135℃の水溶液を供給する処理を8時間行った後、遠心分離、乾燥を行うことにより、ヘミホルマール末端基、ホルミル末端基、不安定末端部がより一層低減されたポリアセタール樹脂A1−1を得た。
【0046】
なお、ポリアセタール樹脂A1−1及びA1−2のヘミホルマール末端基量及びホルミル基末端基量は、Bruker(株)製のAVANCE400型FT−NMR装置を用いて、特開2001−11143号公報に記載の方法に準じて測定を行って得られた値(mmol/kg)である。また、上記メルトインデックスは、ASTM−D1238に準じ、190℃、2160gの条件下で求めた値(g/10分)である。
・架橋ポリアセタール樹脂(A2)
トリオキサン(a)、環状エーテル化合物及び環状ホルマール化合物から選ばれた化合物(b) 及び多官能グリシジルエーテル化合物(c)を表2に示す割合で混合して連続的に重合機に供給する以外はほぼ直鎖ポリアセタール樹脂A1−2と同様の操作を行い、架橋ポリアセタール樹脂A2−1〜A2−3を得た。得られた架橋ポリアセタール樹脂A2−1〜A2−3のメルトインデックスを表2に示す。
【0047】
尚、表中に略号で示したDOは1,3−ジオキソラン、BFは1,4−ブタンジオールホルマール、TMPTGEはトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルを示す。
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤(B)
B−1:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
・グアナミン化合物(C)
C1:グアナミン
C2:ベンゾグアナミン
C3:アセトグアナミン
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に直鎖の分子構造を有するポリアセタール樹脂(A1)99.88〜70.0重量%、分岐又は架橋構造を有するポリアセタール樹脂(A2)0.1〜20.0重量%、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(B)0.01〜5.0重量%およびグアナミン化合物(C)0.01〜5.0重量%を含有してなるポリアセタール樹脂組成物(含有量は何れも全組成物中の割合を示し、合計量は100重量%である)。
【請求項2】
分岐又は架橋構造を有するポリアセタール樹脂(A2)の含有量が、2.0〜20.0重量%(全組成物中)である請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
ポリアセタール樹脂(A1)が、トリオキサン(a)99.9〜90.0重量%と置換基を持たない環状エーテル化合物及び環状ホルマール化合物から選ばれた化合物(b)0.1〜10.0重量%とを共重合して得られ、そのメルトインデックス(190℃、荷重2160g)が1〜50g/min.、ヘミホルマール末端基量が1.0 mmol/kg以下、ホルミル末端基量が2.0 mmol/kg以下、不安定末端基量が0.5重量%以下のポリアセタール共重合体である請求項1または2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
ポリアセタール樹脂(A2)が、トリオキサン(a)99.89〜88.0重量% 、置換基を持たない環状エーテル化合物及び環状ホルマール化合物から選ばれた化合物(b)0.1〜10.0重量%及び多官能グリシジルエーテル化合物(c)0.01〜2.0重量% を共重合して得られ、メルトインデックス(190℃、荷重2160g)が0.1〜10 g/min.の架橋ポリアセタール共重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項5】
多官能グリシジルエーテル化合物(c)が、3官能グリシジルエーテル化合物及び4官能グリシジルエーテル化合物から選ばれたものである請求項4記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項6】
更に脂肪族系ビスアミド化合物 0.01〜2.0重量%(組成物中)を含有してなる請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項7】
更に着色剤 0.01〜2.0重量%(組成物中)を含有してなる請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項8】
無機繊維状充填材を実質的に含まないものである請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。

【公開番号】特開2008−156504(P2008−156504A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347833(P2006−347833)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】