説明

ポリアミドの製造方法

【課題】極限粘度[η]が1.0dl/g以上の高重合度のポリアミドを固相重合で製造する場合でも得られたポリアミドにゲルが無く、これを用いた製品における力学性能や耐熱性が良好なポリアミドを提供すること。
【解決手段】ジカルボン酸成分から形成される塩及びジアミン成分から形成される塩又はそれらの低次縮合物を固相状態で加熱し重縮合させるポリアミドの製造方法において、粒径が2mm以下のジカルボン酸成分およびジアミン成分の塩、又はそれらの低次縮合物を固相重合することを特徴とするポリアミドの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリアミドの製造方法に関する。詳しくは、力学性能、耐熱性、耐薬品性などの性能に優れ、エンジニアリングプラスチックとして好適なポリアミドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からナイロン6、ナイロン66などに代表される結晶性ポリアミドは、その優れた特性と溶融成形の容易さから、衣類用、産業資材用繊維、あるいは汎用のエンジニアリングプラスチックとして広く用いられているが、一方では、耐熱性不足、吸水による寸法安定性不良などの問題点も指摘されている。特に、近年の表面実装技術(SMT)の発展に伴うリフローハンダ耐熱性を必要とする電気・電子分野、あるいは年々耐熱性への要求が高まる自動車のエンジンルーム部品などにおいては、従来のポリアミドでの使用が困難となってきており、より耐熱性、寸法安定性、機械特性、物理化学特性に優れたポリアミドへの要求が高まってきている。
【0003】
このような世の中の要求に対し、テレフタル酸と1,6−ヘキサンジアミンを主成分とする半芳香族ポリアミドが種々提案され、一部は実用化されている。しかしながら、テレフタル酸と1,6−ヘキサンジアミンからなるポリアミド(以下、PA6Tと略称する)は、ポリマーの分解温度を超える370℃付近に融点があるため、溶融成形が困難であり、実用に耐えうるものではない。そのため、実際には、アジピン酸、イソフタル酸などのジカルボン成分、あるいはナイロン6などの脂肪族ポリアミドを30〜40モル%共重合することにより、実使用温度領域、すなわち280〜320℃程度にまで低融点化した組成で用いられるのが現状である。
【0004】
このように、通常、高耐熱性の半芳香族ポリアミドはその分解温度と融点が接近した組成で使用されるので、従来の重合法、例えば、バッチ式溶融重合法などではポリマーの分解を伴わずに重合を行い、高分子量化する事は困難であった。そのために、半芳香族ポリアミドの重合方法として多くの方法が提案されてきた。その中でも、固相重合法は、反応を終始ポリアミドの融点よりも数10℃低温で行うことができるために、重合中の樹脂の劣化を抑えることができる有効な方法として研究例が多い。
【0005】
例えば、特開昭62−20527号公報には、それぞれ1,6−ヘキサンジアミンとテレフタル酸の当モル塩、1,12−ドデカンジアミンとテレフタル酸の当モル塩を減圧または、窒素気流中で固相重合することによりポリアミドが得られることが開示されている。また、高分子化学,Vol.29,No.323,159−163(1972)には、PA6Tの製造法として、まずナイロン塩よりオリゴマーを合成し、ついで窒素気流下あるいは、減圧下に固相重合し高分子量化することにより、顕著な着色を伴わずに重縮合反応が進行することが報告されている。また、特開昭60−163928公報には、これと同様の方法がPA6Tに対して15〜40mol%の第3成分を共重合した場合にも適用できることが開示されている。特開昭61−228022号公報には、半芳香族ポリアミドの製造法として、芳香族ジカルボン酸成分単位およびアルキレンジアミン成分単位から形成される低次縮合物を、溶融剪断条件下に重縮合反応を行い、低次縮合物とした後に、固相重合により高重合度化を行う方法が開示されている。
特開平2−251532号公報には、次亜リン酸の金属塩の存在下、PA6Tの低次縮合物を原料として固相重合を行うことによって、ゲル量の少ない高重合度のポリアミドを得ることが開示されている。
【特許文献1】特開昭62−20527号
【特許文献2】特開昭60−163928号
【特許文献3】特開昭61−228022号
【特許文献4】特開平2−251532号
【非特許文献1】高分子化学,Vol.29,No.323,159−163(1972)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの研究によれば、上記のような従来公知の半芳香族ポリアミドの固相重合法を用いてポリアミドを重合しても、例えば、濃硫酸中30℃で測定した極限粘度[η]が0.2dl/g以下のような低次縮合物から固相重合で極限粘度[η]が1.0dl/g以上の高重合度のポリアミドを製造する場合、得られたポリアミドにゲルが含まれ、これを用いた製品の力学性能や耐熱性が劣ることが判明した。また、このゲルの生成には、ジアミン成分同士の重縮合で副生したトリアミンが起点となって、一部、架橋構造をとることが起因することを見出した。ポリアミド中のトリアミン量を抑制することがゲル抑制の課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するため、鋭意研究を行った結果、塩あるいは低次縮合物をポリマー前駆体として固相重合により半芳香族ポリアミドの重合を行う場合には、得られたポリアミドにゲルが含まれることに鑑み、本発明者らは、塩あるいは低次縮合物を分級あるいは粉砕して固相重合することでゲルを抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、ジカルボン酸成分から形成される塩及びジアミン成分から形成される塩又はそれらの低次縮合物を固相状態で加熱し重縮合させるポリアミドの製造方法において、粒径が2mm以下のジカルボン酸成分およびジアミン成分の塩、又はそれらの低次縮合物を固相重合することを特徴とするポリアミドの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリアミドの製造方法によれば、固相重合法にて得たポリアミドのゲルを抑制し、力学性能、耐熱性、耐薬品性などの性能に優れ、エンジニアリングプラスチックとして好適なポリアミドを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、固相重合を行う前のポリマー前駆体は、テレフタル酸を主成分とするカルボン酸成分と、炭素数6〜18の脂肪族ジアミンを主成分とするジアミン成分からなる、塩または低次縮合物である。塩は、従来公知の方法によって、水、アルコールなどの溶媒中で合成し、そのまま溶媒を除去するか、あるいは冷却して析出した塩を濾過するなどの方法による単離した後、乾燥したものを使用する。低次縮合物は、原料のジカルボン酸およびジアミン、または前記の塩を、水溶媒中で150〜350℃に加熱し、徐々に水を留去しながら反応させた後、乾燥したものやオートクレーブの様な耐圧の容器に封じ込め、上記温度、1〜5MPaの圧力で反応させた後、乾燥させたものを用いる。
【0011】
固相重合を行う前のポリマー前駆体としては、固相重合速度の点から、低次縮合物であることが好ましい。該低次縮合物の極限粘度[η]は0.05dl/g以上であり、かつ低次縮合物のモノマー残存量が5%以下であることが好ましい。
【0012】
本発明のポリアミドの製造方法に供するジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸及び/又は脂肪族ジカルボン酸から選択される。それらの割合は、テレフタル酸成分30〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分0〜70モル%および/または炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分0〜70モル%である。なお、テレフタル酸成分は、好ましくは45モル%以上、より好ましくは50モル%以上が望ましい。テレフタル酸成分が30モル%未満の場合には、得られるポリアミドの耐熱性、耐薬品性が低下するため好ましくない。テレフタル酸成分以外の他のジカルボン酸成分としては、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2―ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸などの脂肪族カルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、ジ安息香酸、4,4‘−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、あるいはこれらの任意の混合物を挙げることができる。これらのうち、アジピン酸のような脂肪族カルボン酸やイソフタル酸のような芳香族ジカルボン酸が好ましく使用される。さらに、トリメリット酸などの多価カルボン酸を溶融成形が可能な範囲内で用いることもできる。
【0013】
本発明のポリアミドの製造方法に供するジジアミン成分としては、直鎖および/または側鎖を有する炭素原子数4〜25のジアミンから選択される。炭素数4〜25の脂肪族ジアミン成分の例としては、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンなどの直鎖脂肪族ジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4,−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミンなどの分岐を有する鎖状脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミンなど、あるいはこれらの任意の混合物を挙げることができる。これらのうち、最終的なポリマー性能が優れるという理由から、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミンが好ましい。特に、1,6−ヘキサンジアミンは力学特性、耐熱性、耐薬品性、および成形性のいずれの性能にも顕著に優れたポリアミドが得られるので好ましい。
【0014】
炭素数4〜25の脂肪族ジアミン成分以外のジアミン成分をマイナー成分として用いてもよく、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、キシレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどの芳香族ジアミン、あるいはこれらの任意の混合物を挙げることができる。
【0015】
前記低次縮合物あるいは塩を合成する際に、重縮合速度の増加および重合時の劣化防止のために、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、またはその塩またはエステルなどのリン系触媒を添加するのが好ましい。このうち、生成するポリマーの品質から、次亜リン酸誘導体が好ましく、特に次亜リン酸ナトリウムが価格および取扱いの容易さから好ましい。これらの触媒の添加量は総原料の重量に対して、0.01〜5重量%であるのが好ましく、より好ましくは0.05〜2重量%、特に好ましくは0.07〜1重量%である。添加量が0.01重量%より少ないと、重合速度がこれらの触媒を添加しない場合とほとんど変わらず、着色、劣化しやすさなど、得られるポリマーの品質も十分なものではない。一方、添加量が5重量%よりも多いと、逆に重合速度が低下し、着色、ゲル化などの劣化を伴ったポリマーしか得られなくなるので好ましくない。
【0016】
さらに、前記低次縮合物を合成する際に、分子量調節および溶融安定性向上のために末端封止剤を添加することが好ましい。末端封止剤としては、ポリアミド末端のアミノ基またはカルボキシル基と反応性を有する単官能性の化合物であれば特に制限はないが、反応性および封止末端の安定性などの点から、モノカルボン酸またはモノアミンが好ましく、取扱いの容易さなどの点から、モノカルボン酸がより好ましい。その他、無水フタル酸などの酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類なども使用できる。
【0017】
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば特に制限はないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリル酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸などの脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸、あるいはこれらの任意の混合物を挙げることができる。これらのうち、反応性、封止末端の安定性、価格などの点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリル酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸が特に好ましい。
【0018】
末端封止剤としてモノカルボン酸を使用した場合、ポリアミドのアミノ基末端は、これらのモノカルボン酸で封止されることにより、下記の一般式(I)で示される封止末端を形成する。
【0019】
【化1】

【0020】
(式中、Rは上記のモノカルボン酸からカルボキシル基を除いた残基であり、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基である。)
【0021】
末端封止剤として使用するモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば特に制限はないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミンなどの脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどの脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジジェニルアミン、ナフチルアミンなどの芳香族モノアミン、あるいはこれらの任意の混合物を挙げることができる。これらのうち、反応性、沸点、封止末端の安定性および価格のなどの点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンが特に好ましい。
【0022】
末端封止剤としてモノアミンを使用した場合、ポリアミドのカルボキシル基末端は、これらのモノアミンで封止されることにより、以下の一般式(II)で示される封止末端を形成する。
【0023】
【化2】

【0024】
(式中、Rは上記のモノアミンからアミノ基を除いた残基であり、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基である。Rは水素原子または上記モノアミンからアミノ基を除いた残基であり、好ましくは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基である。)
【0025】
本発明の方法で、ポリアミドを製造する際に用いることができる末端封止剤の使用量は、用いる末端封止剤の反応性、沸点、反応装置、反応条件などによって変化するが、通常、ジカルボン酸とジアミンの総モル数に対して0.1〜15モル%の範囲内で使用される。
【0026】
固相重合に用いる塩、あるいは低次縮合物は、2mm以下の粒径であることが好ましい。2mmより大きい粒径の塩、あるいは低次縮合物を用いて固相重合すると、ジアミン成分同士の縮合でトリアミンが副生し、これが基点となってポリアミドの一部が架橋構造をとり、ゲル化するので好ましくない。粒径の下限は特に限定されないが、ハンドリング上1μm以上であることが望ましい。また、本発明の方法で、固相重合に用いる塩、あるいは低次縮合物を2mm以下の粒径に制御する方法としては、特に制限はなく、公知の分級機や粉砕機が使用できる。
【0027】
本発明のポリアミドの製造方法によれば、上記の方法で得た塩及び低次縮合物を、不活性ガスの気流下で、固相状態で加熱して重縮合させ、ポリアミドを得る。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどを使用することができる。また、不活性ガスは、反応系内に送り込まれる前に、乾燥、脱酸素、加熱などを行うこともできる。また、本発明の製造方法における固相重合は、圧力、温度には特に制限はないが、圧力は反応性の点から常圧下または減圧下が好ましい。また、本発明の製造方法における固相重合は、連続式、バッチ式のいずれの反応装置にも適用可能である。
【0028】
本発明のポリアミドの製造方法において、前記以外の添加物、例えば従来公知の着色剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、結晶化促進剤、可塑剤、潤滑剤などの他の添加剤を、重縮合反応時の任意の段階で添加することもできる。
【0029】
また、本発明の製造法により得られたポリアミドは、ガラス繊維、炭素繊維、無機粉末状フィラー、有機粉末状フィラーなどを配合した強化系、多種ポリマーとのアロイなどの形態でも使用することができ、射出成形、ブロー成形、押出し成形、圧縮成型、延伸、真空成形などの成形法が適用できる。さらに、エンジニアリングプラスチックとして通常の成形体のみならず、フィルムや繊維の形態にも成形可能であり、産業資材、工業材料、家庭用品などに好適に使用することができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。なお、実施例中の極限粘度およびトリアミン分析は以下の方法により測定した。
極限粘度[η]:濃硫酸中、30℃、常法にて分析した。
ゲルの確認 :極限粘度分析用の溶液を用いて、ゼリー状不溶物の有無を目視により 確認した。
トリアミン :以下の条件でGC分析を行った。
【0031】
ポリアミドサンプルを塩酸水溶液で熱加水分解し、得られた処理液をろ過し、ろ液を100mlに定容する。液を5ml採取し、濃水酸化ナトリウム溶液(1g/20ml程度)を添加してアルカリ性にする。pH試験紙でアルカリになっていることを確認し、4時間放置する。放置後、エバポレータを用いて乾固し、トルエン5mlを加えて10分間超音波を当てた液を、GC測定溶液とする。定量はHMTA標準溶液を用いる。
【0032】
<GC条件>
装置:アジレント社製 HP6890
カラム:HP-1 0.32mm×30m
カラム流量:1.8ml/分
オーブン温度:40℃−15℃/分−320℃
注入量:1μl
【0033】
[実施例1]
テレフタル酸1827g(11.0モル)、1,6−ヘキサンジアミン2343g(20.2モル)、アジピン酸1315g(9.0モル)、安息香酸30.5g(0.25モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物4.7g(原料に対して0.08重量%)及び蒸留水445gを内容量13.6Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。190℃から攪拌を開始し、4時間かけて内部温度を250℃まで昇温した。この時、オートクレーブは3.1MPaまで昇圧した。このまま1時間反応を続けた後、オートクレーブ下部に設置したスプレーノズルから大気放出して低次縮合物を抜き出した。その後、室温まで冷却後、粉砕機で1.5mm以下の粒径まで粉砕し、110℃で24時間乾燥した。得られた低次縮合物の水分量は4520ppm、極限粘度[η]は0.15dl/gであった。次に、この低次縮合物を棚段式固相重合装置に入れ、窒素置換後、約2時間かけて220℃まで昇温した。その後、4時間反応し、室温まで降温した。得られたポリアミドの極限粘度[η]は1.1dl/g、ビスヘキサメチレントリアミンは0.24重量%であった。また、極限粘度[η]測定時に濃硫酸中に不溶物(ゲル)の生成は認められなかった。
【0034】
[実施例2]
テレフタル酸1423g(8.6モル)、1,10−デカンジアミン1750g(10.2モル)、アジピン酸221g(1.5モル)、安息香酸7.7g(0.063モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物2.35g(原料に対して0.07重量%)及び蒸留水2785gをオートクレーブに入れ実施例1と同様の温度まで昇温した。この時、オートクレーブは3.7MPaまで昇圧した。実施例1と同様の取り出しで得られた低次縮合物は、分級機で分級し、粒径が2mm以下のもののみ、110℃で20時間乾燥した。得られた低次縮合物の水分量は3580ppm、極限粘度[η]は0.07dl/gであった。その他、固相重合時間を10時間とした以外は実施例1と同様の方法で行った。得られたポリアミドの極限粘度[η]は0.9dl/g、ビスデカメチレントリアミンは0.35重量%であった。また、極限粘度[η]測定時に濃硫酸中に不溶物(ゲル)の生成は認められなかった。
【0035】
[比較例1]
低次縮合物を分級し、粒径が2.5mmよりも大きいもののみを用いた以外は実施例1と同様の方法で行った。得られたポリアミドの極限粘度を測定すべく、30℃で濃硫酸に溶解させようとしたが、ゼリー状の不溶物(ゲル)が認められ、分析できなかった。また、ビスヘキサメチレントリアミンは1.3重量%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸成分及びジアミン成分から形成される塩又は低次縮合物を固相状態で加熱し重縮合させるポリアミドの製造方法において、粒径が2mm以下のジカルボン酸成分およびジアミン成分の塩又は低次縮合物を用いて固相重合することを特徴とするポリアミドの製造方法。
【請求項2】
粒径2mm以下のものが、分級又は粉砕されたものである請求項1に記載のポリアミドの製造方法。
【請求項3】
ポリアミド中のトリアミン量が1重量%以下である請求項1に記載のポリアミドの製造方法。
【請求項4】
ポリアミドが、テレフタル酸成分単位30〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位0〜70モル%および/または炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位0〜70モル%のジカルボン酸成分単位と、直鎖および/または側鎖を有する炭素原子数4〜25のジアミン成分単位を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリアミドの製造方法。
【請求項5】
ジカルボン酸成分及びジアミン成分から形成される塩又は低次縮合物であって、粒径が2mm以下である固相重合用粒子。
【請求項6】
ジカルボン酸成分が、テレフタル酸成分30〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分0〜70モル%および/または炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分0〜70モル%であり、ジアミン成分が直鎖および/または側鎖を有する炭素原子数4〜25のジアミン成分である、請求項5に記載の固相重合用粒子。

【公開番号】特開2008−239908(P2008−239908A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86252(P2007−86252)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】