説明

ポリアミドをベースにした帯電防止組成物

【課題】ポリアミドと帯電防止に有効な量のカーボンブラックとからなる帯電防止ポリアミド組成物及びその成形方法を提供する。
【解決手段】ASTM D 3037−89で測定したBET比表面積が5〜200m2/gで且つASTM D 2414−90で測定したDBP吸収能が50〜300ml/100gであるカーボンブラックを少なくとも一種含むポリアミド組成物であり、該ポリアミド組成物を好ましくは押出成形する方法であり、該ポリアミド組成物をベースにしたものからなる単層または多層のチューブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアミド組成物に関するものであり、特に、炭化水素の輸送および/または貯蔵に用いられるチューブおよび/または管路の製造用のポリアミド組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車ではエンジンとタンクとを結ぶチューブ中を燃料が燃料噴射ポンプの作用で高速に循環する。このチューブは基本的にポリアミド11または12(リルサン)をベースにした組成物で作られている。しかし、チューブ内壁/ガソリンの摩擦によって静電気が発生し、それが蓄積して電気放電(火花)が発生し、ガソリンに引火して破滅的な結果(爆発)に至ることがある。従って、このチューブ内壁の表面抵抗は一般に106オーム(Ω)以下にする必要がある。
【0003】
ポリアミドをベースにした組成物はガソリンラインの他の耐久性基準、特に低温での耐衝撃性を満たす必要もある。さらに、帯電防止特性を付与したポリアミド組成物は押出成形可能なものでなければならない。従って、溶融時の粘度をできるだけ下げる必要がある。また、ガソリンに対して化学的に安定であることも要求される。
【0004】
ポリアミド樹脂または材料の表面抵抗を低下させるために、導体および/または半導体、例えばカーボンブラック、鋼繊維、カーボン繊維、金、銀またはニッケルで金属化した粒子(繊維、板、球等)を入れるか、本質的に導体および/または半導体であるポリマーの薄い層で被覆する方法は公知である。
特に、カーボンブラックは市場で入手し易く、性能が良いため広く用いられている。
ポリアミド組成物にカーボンブラックを添加し、その含有量を増加せていっても最初のうちは抵抗はほとんど下がらないが、パーコレレーション限界値とよばれるあるカーボンブラックの含有率を過ぎると表面抵抗は急落し、ほぼ一定値(プラトー領域)に達し、それ以上添加率を上げても抵抗はほとんど変わらない。
【0005】
「Ketjenblack EC−BLACK 94/01」(アクゾノベル社)の技術報告書には、導体および/または半導体のカーボンブラックはその構造を成長(developpe)させるほど効率がよくなる(換言すれば静電特性を与えるためにポリマーに添加する量が少なくてよい)ということが記載されている。カーボンブラックの構造はカーボンブラックを構成している基礎の炭素粒子が凝集した配列の状態すなわち凝集物に表われるが、カーボンブラックの構造はその比表面(ASTM D 3037−89規格で測定した窒素吸着法-BET法-で測定される)と、吸収能(ASTM D 2414−90で測定したジブチルフタレートDBPの吸収)とで表現できると思われる。アクゾノベル社から市販のカーボンブラックは極めて構造化されており、BET比表面積値およびDBP吸収能が極めて高く、エキストラ導電カーボンブラック(extra-conducteur)とよばれている。すなわち、その成長した構造のため少量の添加で前記のパーコレレーション限界値に達する。
【0006】
カーボンブラックは導電性の他に充填材としての役目があり、タルク、クレー、カオリンと同様に、他の物理的および化学的な特性に影響を与える。すなわち、充填材の量を増加させると、ポリアミド/充填材混合物の粘度が上昇し、組成物の弾性率(モジュール)が増加する。粘度の増加は例えば流動指数(MFI、メルトフローインデックス)で測定できる。充填材の量を増加させると充填したポリアミドの耐衝撃性も低下する。この耐衝撃性は例えば破断伸びまたは弾性で測定でき、それが低下する。粘度の増加と耐衝撃強度の低下は充填材の量を増加させるほど大きくなる。
【0007】
従って、当業者は、粘度や耐衝撃性等の他の特性に影響を与えないでポリマー/充填材混合物に所望の特性を与えるようにするために充填材の量は最小にしてきた。従って、表面抵抗を小さくしたい場合には当業者は当然エキストラ導電カーボンブラックを用いることになる。
【0008】
本発明者は、固有粘度(メタクレゾール100g中の0.5gのサンプルを20℃で測定)が1.65で、可塑材としてのn−ブチルベンゼンスルホンアミド(BBSA)を11.4%含み、アクゾノベル社のカーボンブラックKetjenblack EC600JD(表面DBP吸収能が400ml/100gで、表面BET吸着値が1000m2/g)を少なくとも6%含むポリアミド12の場合、チューブの表面抵抗値は106オームであることを確認した。さらに、この同じポリアミドはカーボンブラックKetjenblack EC600JDの量が10重量%に達するとプラトー領域(102〜103オーム)になることも確認した。
【0009】
しかし、これらの「構造化」または「超構造化」されたカーボンブラックとよばれるカーボンブラックは溶融状態のポリアミドへの分散性が悪く、固まって(凝集して)しまう。この凝集は抵抗に負の作用する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「Ketjenblack EC−BLACK 94/01」(アクゾノベル社)の技術報告書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、驚くことに、これまでの技術常識に反した型式と使用量のカーボンブラックを選択すること(すなわち、上記のエキストラ導電カーボンブラックよりも「構造化」が進んでいないカーボンブラックをエキストラ導電カーボンブラックの場合の使用量よりも多量に用いることによって)、より良い抵抗値が得られ、しかもレオロジー特性も良くなる(同じ抵抗値で)ということを発見した。
「構造化」が進んでいないカーボンブラックを用いるため同じ帯電防止特性(一般に比表面抵抗が106オーム以下)を得るためにはその量を多量にしなければならないが、このように多量にカーボンブラックを入れてもレオロジー(溶融粘度が低くなる。このことは流動性(MFI)の測定で分かる)および柔軟性(耐衝撃特性)が良くなる。このことは従来の常識、充填材の量を増加させるとこれらの特性は低下するという常識からは驚くべきことである。
「構造化」が進んでいないカーボンブラックを選択する本発明は、帯電防止とその他の特性とを妥協させたものではなく、「本来的」に優れたレオロジー特性と弾性とを有するポリアミド組成物を見い出したものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の対象は、ポリアミドと帯電防止に有効な量のカーボンブラックとからなる帯電防止ポリアミド組成物において、ASTM D 3037−89で測定したBET比表面積が5〜200m2/g、特に20〜100m2/gで且つASTM D 2414−90で測定したDBP吸収能が50〜300ml/100g、特に125〜250ml/100gであるカーボンブラックを少なくとも一種含むことを特徴とするポリアミド組成物を提供する。
DBP吸収能はカーボンブラック100gに対するジブチルフタレートのmlで表される孔の容積で測定される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のカーボンブラックは従来法で用いていたエキストラ導電カーボンブラック(これらのBET比表面積は一般に500m2/g以上であり、DBP吸収能は300ml/100g以上である)に対して導体または半導体とよぶことができる。
特に、本発明のポリアミドをベースにした帯電防止組成物は組成物の全体量に対して「構造化」が進んでいない導体または半導体カーボンブラックを重量比で16〜30%、好ましくは17.5〜23%含むのが好ましい。
こらに対して「構造化」が進んだ従来のエキストラ導電カーボンブラックを用いた従来のポリアミドをベースにした帯電防止組成物で同じ帯電防止能を得るのに必要なエキストラ導電カーボンブラックの重量は一般に4〜14%、特に6〜10%である。
本発明ではカーボンブラックの量が多いにもかかわらず、下記実施例に示すように本発明の帯電防止組成物の方が流動性に優れ、耐衝撃性にも優れている。
【0014】
「ポリアミド」とは脂肪族、脂環族または芳香族単位を含むポリアミド、PAを意味する。例としてはラクタム、α、ω‐アミノ酸の重縮合や、脂肪族ジアミンと脂肪族ジアッシドの略化学量論量での重縮合で得られるポリアミドが挙げられる。また、カルボキシル基末端に比べてアミン基末端の比率が過剰となるようにジアミンを過剰に用いることもできる。
ラクタムの炭素数は6以上、好ましくは10以上である。好ましいラクタムはデカラクタム、ウンデカラクタム、ドデカラクタムである。
α、ω‐アミノ酸として好ましいものは10−アミノデカン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸である。
【0015】
脂肪族ジアミンは炭素数が6、好ましくは6〜10のアミノ末端基を有するα、ω‐ジアミンである。炭素鎖は直鎖(ポリメレンジアミン)、分岐鎖、脂環鎖にすることができる。好ましいジアミンはヘキサメチレンジアミン(HMDA)ドデカメチレンジアミン、デカメチレンジアミンである。
ジアッシドは脂肪族、脂環族または芳香族にすることができ、脂肪族ジアッシドとしては直鎖または分岐鎖中に4以上、好ましくは6以上の炭素(カルボキシル基の炭素を含まず)を有するα、ω‐カルボンジアッシドである。このジアッシドはアゼレン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン酸である。
【0016】
ポリアミドPAの例としては下記のものが挙げられる:
ポリヘキサメチレンセバカミド(PA−6,10)
ポリヘキサメチレンドデカンジアミド(PA−6,12)
ポリ(ウンデカノアミド)(PA−11)
ポリラウリルラクタム(PA−12)
ポリドデカメチレンドデカンジアミド(PA−12,12)
ポリカプロンアミド(PA−6)
ポリヘキサメチレンアジパミド(PA−6,6)
【0017】
ポリアミドPAの数平均分子量は5000以上であり、その固有(インヘレント)粘度は一般に0.7以上である(メタクレゾール100g中の0.5gのサンプルを20℃で測定)。
本発明でいうポリアミドにはマトリックスがポリアミドからなる上記ポリアミドを50重量%以上含むポリマー混合物も含まれる。こうした混合物の例としてはEP550308に記載の脂肪族ポリアミドと半芳香族および/またはアモルファスポリアミドとの混合物や、PA−ポリオレフィン混合物、特にEP342066に記載のものが挙げられる。
本発明でいうポリアミドにはポリアミドをベースにしたブロック共重合体の熱可塑性エラストマー(TPE)も含まれる。このブロック共重合体はポリエーテルアミドまたはポリエーテルブロックアミドともよばれ、その硬い単位はポリアミドで構成され、結晶化可能な柔らかい単位はポリエーテルからなる。
【0018】
本発明組成物は下記(1)〜(10)の中から選択される少なくとも一つの添加物をさらに含むことができる:
(1)可塑剤
(2)衝撃吸収材
(3)燐酸、亜燐酸またはヒドロ亜燐酸またはこれらのエステルまたは塩あるいはこれらの混合物
(4)着色剤
(5)カーボンブラック以外の顔料
(6)染料
(7)酸化防止剤
(8)耐UV安定化剤
(9)連鎖制限剤
(10)補強材
【0019】
可塑剤の重量比は組成物の全体量に対して30重量%以下である。可塑剤はポリアミドの分野で公知の任意のものでよく、特にベンゼンスルホンアミドの誘導体、例えばn−ブチル−ベンゼンスルホンアミド(BBSA)(''Ucemid A'')、エチルトルエンスルホンアミド(''Santicizer 8'')およびN−シクロヘキシルトルエンスルホンアミド(''Santicizer 1H'')、ヒドロキシ安息香酸エステル、例えば2−エチルヘキシルパラヒドロキシベンゾエート(EHPB)および2−デシルヘキシルパラヒドロキシベンゾエート(DHPB)、ラクタム、例えばカプロラクタムおよびN−メチルピロリドン、テトラヒドロフルフリルアルコールのエステルまたはエーテル、例えばオリゴエチレンオキシテtラヒドロフルフリル アルコール、クエン酸のエステルおよびヒドロキシマロン酸のエステル、例えばオリゴエチレンオキシマロネートの中から選択することができる。特に好ましい可塑剤はn−ブチル−ベンゼンスルホンアミド(BBSA)である。
【0020】
衝撃吸収材の重量比は組成物の全体量に対して40重量%以下である。その例としては下記(1)(2)(3)が挙げられる:
(1)オレフィン単位、例えばエチレン、プロピレン、ブテンー1、その他のαオレフィンからなるポリマーとして定義できるポリオレフィン、例としては下記のものが挙げられる:
1) ポリエチレン、例えばLDPE,HDPE、LLDPE、VLDPE、
2) ポリプロピレン、
3) エチレン・プロピレン共重合体
4) メタロセン触媒を用いて得られたPE、特にVLDPE,
5) 不飽和カルボン酸のエステルまたは塩または不飽和カルボン酸のビニルエステルの中から選択される化合物とエチレンとの共重合体。
特に、LLDPE、VLDPE、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アルキル(メタ)アクリレート共重合体が挙げられる。ポリオレフィンエの密度は0.86〜0.965、MFIは0.3〜40であるのが好ましい。
【0021】
(2)ブロック共重合体、例えばエチレン・プロピレンゴム(EPR)、スチレン・b−ブタジエン−b−スチレン共重合体(SBS)、スチレン・b−イソプレン−b−スチレン共重合体(SIS)、エチレン・b−プロピレン−b−ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・b−プロピレン−b−ブタジエンまたはイソプレン共重合体(SBS)、スチレン・b−エチレン−ブタジエン−b−スチレン共重合体(SEBS)、SHell社から市販の「KRATON」のような共重合体、
(3)αオレフィン単位と、エポキシ、カルボン酸または無水カルボン酸単位とを有するポリマーで定義される機能性ポリオレフィン。その例としては不飽和エポキシド、例えばグリシジル(メタ)アクリレートおよび/またはカルボン酸、例えば(メタ)アクリル酸および/または不飽和カルボン酸無水物、例えば無水マレイン酸をグラフトした1)ポリオレフィンおよび2)ブロックポリマーが挙げられる。さらに下記のものを挙げることができる:
【0022】
1) エチレンと、不飽和エポキシドと、必要に応じて用いられる不飽和カルボン酸のエステルまたは塩あるいは不飽和カルボン酸のビニルエステルとの共重合体。例としてはエチレン/酢酸ビニル/グリシジル(メタ)アクリレート共重合体またはエチレン/アルキル(メタ)アクリレート/グリシジル(メタ)アクリレート共重合体が挙げられる。後者の例としてはエルフアトケム社から市販の「LOTADER」が挙げられる。
【0023】
2) エチレンと、不飽和カルボン酸無水物および/または不飽和カルボン酸(部分的に金属(Zn)またはアルカリ(Li)で中和されていてもよい)と、必要に応じて用いられる不飽和カルボン酸のエステルまたは飽和カルボン酸のエステルとの共重合体。この例としてはエチレン/酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体またはエチレン/アルキル(メタ)アクリレートまたは無水マレイン酸共重合体、さらにはエチレン/ZnまたはLiで中和した(メタ)アクリレート/無水マレイン酸共重合体が挙げられる。
【0024】
3) ポリエチレン、ポリプロピレン、不飽和カルボン酸をグラフトまたは共重合した後、モノアミン化されたポリアミド(またはポリアミドのオリゴマー)と縮合したエチレン/プロピレン共重合体。この化合物はEP342066に記載されている。
この機能性ポリオレフィンは特にエチレン/酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、無水マレイン酸をグラフトした後にモノアミン化したポリアミド6またはカプロラクタムのモノアミン化したオリゴマーと縮合したプロピレンを主成分とするエチレン/プロピレン共重合体の中から選択するのが好ましい。
【0025】
さらに、下記のものも挙げられる:エチレン/アルキルまたはアリ−ル(メタ)アクリレート/不飽和ジカルボン酸無水物のコポリマーまたはターポリマー、すなわち、77〜99.2モル%の少なくとも一種のエチレンからの誘導単位と、0〜20モル%の少なくとも一種のアルキルまたはアリ−ル(メタ)アクリレートからの誘導単位と、0.8〜3モル%の少なくとも一種の不飽和ジカルボン酸無水物からの誘導単位とからなるコポリマーまたはターポリマー(NFT51−016規格(190℃/2.16kgの荷重下)で測定した流れ指数が0.1〜400g/10分)、このタ−ポリマーのアルキルアクリレートまたはアルキルメタアクリレートのアルキル基は直鎖、分岐鎖または環状でよく、その炭素数は10以下であり、このタ−ポリマーのアルキル(メタ)アクリレートの例とししてはメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、エチルメタクリレート、特にエチルアクリレート、n−ブチルアクリレートおよびメチルアクリレートが挙げられ、このコポリマーまたはターポリマーの不飽和ジカルボン酸無水物の例としては無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水2−メチルマレイン酸、無水2、3−ジメチルマレイン酸、ビシクロ[2,2,2]−オクト−5−エン−2,3−無水ジカルボン酸、好ましくは無水マレイン酸が挙げられる。このターポリマーの好ましい例はエチレン/アルキル(メタ)アクリレート/不飽和ジカルボン酸無水物であり、アトケム社から「LOTADER」の名称で市販のものが挙げられる。
【0026】
4)アイオノマー、デュポン社から「SURLYN」の名称で市販のエチレン/(メタ)アクリレート酸共重合体。
顔料の例としては二酸化チタン、酸化コバルト、酸化鉄、ニッケルチタネート、有機顔料、例えばフタロシアニンおよびアンスラキノンの誘導体が挙げられる。
染料の例としてはチオファン誘導体が挙げられる。
酸化防止剤の例としては沃化銅と沃化カリとの組み合わせ、フェノールおよびアミンの誘導体が挙げられる。
耐UV安定化剤の例としてはレゾルシンの誘導体、ベンゾトリアゾールまたはサエタシレートが挙げられる。
連鎖制限剤の例としてはモノカルボン酸、ジカルボン酸、脂肪属モノアミンまたはジアミンが挙げられる。
補強材の例としてはウオラストナイト、ガラス棒、カオリン、タルク、マイカ、石英、「plastorite」の名称で知られたマイカおよびクロライトの混合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラス繊維、窒化硼素繊維、炭素繊維が挙げられる。
【0027】
本発明組成物は各成分を溶融混合する任意の方法、例えば単軸または2軸押出機、圧縮機、共混練機や、内部混合機のような連続法または非連続法で製造することができる。
特に、共混練機のような押出機ではカーボンブラックを溶融帯域に導入し、ポリアミドのペレット(上記の少なくとも一種の添加物をさらに含むことができる)の一部を供給ホッパーから、他の一部はカーボンブラックと一緒に導入することができる。
【0028】
本発明はさらに、上記の本発明組成物の製造方法と、得られた物品とに関するものである。本発明の物品の例としてはチューブ、フィルム、管、プレート、繊維等が挙げられる。これらの材料または物品は単層でも多層でもよい。多層の場合、特に静電気が最も蓄積する層に本発明のポリアミド組成物をベースにしたものを用いる。本発明は炭化水素、特にガソレンの輸送および/または貯蔵用の単層または多層チューブでの帯電防止に特に有用である。
熱可塑性材料の分野で利用されている従来の成形方法の中では特に押出し成形と共押出成形を挙げらることができる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例を説明する。
実施例1〜3
[表1]に示す配合組成物を有する非帯電防止ポリアミド組成物(対照組成物)と、帯電防止ポリアミド組成物(比較例組成物)と、帯電防止ポリアミド組成物(本発明組成物)とを作った。
【0030】
【表1】

【0031】
実施例1の組成物は、ポリエーテルブロックアミドで変性し、可塑化したポリアミドのペレットを共混練機型の押出機の供給ホッパーに導入して製造した。押出機の材料温度は一般に240〜270℃で、吐出量は15〜20kg/時間にした。
実施例2、3の組成物は、カーボンブラックをBUSS型共混練機型の押出機の溶融帯域へ導入ホッパーを介して導入して製造した。ポリエーテルブロックアミドで変性し、可塑化したポリアミドのペレットの一部は共混練機型の押出機の供給ホッパーに導入し、他の一部はカーボンブラックと一緒に供給ホッパーから導入した。押出機の材料温度は一般に240〜270℃、吐出量は15〜20kg/時間にした。
【0032】
実施例4
流れ指数の測定(ISO規格1133:91)
実施例1〜3の各組成物の流れ指数(MFI)は10kgの荷重下で235℃で測定した(ISO規格1133:91)(g/10分で表示)。テストした各サンプルの湿分は10%以下である。
【0033】
表面抵抗の測定(SAE XJ2260規格の第7.9章「電気抵抗」に記載の試験方法) 実施例1〜3の各組成物を内径6mm、外径8mmの単層チューブに押出した。用いた押出機はポリアミドを210〜250℃で押し出すための直径45mmのスクリューを有する単軸押出機である。
得られたチューブの100mmサンプルの両端に銅製の円筒電極を挿入し、電極に電圧を加えて電流を測定した。測定された抵抗(測定抵抗)にチューブ内径を掛け、電極間距離で割って表面抵抗を求めた(オームΩで表示)。
【0034】
多軸耐衝撃強度(ISO6603−2:89規格)
実施例1〜3の組成物を250〜270℃でプレートに射出圧縮成形した。プレートの寸法は100・100・2mmで、それに対して多軸耐衝撃強度試験を4.3m/sの速度で行なった。この試験では衝撃時に組成物が吸収した全エネルギー(ジュール)を測定した。また、破断状態(脆いか、強靱か)も観察した。実験は−30℃で行なった。テスト前に各サンプルを50%相対湿度中で15日コンディショングした。
チューブの耐衝撃試験(SAE XJ2260規格の第7−6章「低温衝撃」に記載の試験)
実施例1〜3の組成物を表面抵抗の測定と同じ方法でチューブに押出した。
305mmの高さの所から0.912kgの重りを得られたチューブの上に直角に落下させた。衝撃を加えないチューブの破断圧力の70%以上の耐破断抵抗性(破断圧力)を維持したものを試験をパスしたものとみなした。チューブは−40℃でテストした。テスト前に各サンプルを50%相対湿度中で15日コンディショングした。
結果は[表2]にまとめて示してある。
【0035】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドと帯電防止に有効な量のカーボンブラックとからなる帯電防止ポリアミド組成物において、
ASTM D 3037−89で測定したBET比表面積が5〜200m2/gで且つASTM D 2414−90で測定したDBP吸収能が50〜300ml/100gであるカーボンブラックを少なくとも一種含むことを特徴とするポリアミド組成物。
【請求項2】
BET比表面積が20〜100m2/gである請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項3】
カーボンブラックのDBP吸収能が125〜250ml/100gである請求項1または2に記載のポリアミド組成物。
【請求項4】
組成物の全体量に対するカーボンブラックの重量比が16〜30%である請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項5】
組成物の全体量に対するカーボンブラックの重量比が17.5〜23%である請求項4に記載のポリアミド組成物。
【請求項6】
下記(1)〜(10)の中から選択される少なくとも一つの添加物をさらに含む請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリアミド組成物:
(1)可塑剤
(2)衝撃吸収材
(3)燐酸、亜燐酸またはヒドロ亜燐酸またはこれらのエステルまたは塩あるいはこれらの混合物
(4)着色剤
(5)カーボンブラック以外の顔料
(6)染料
(7)酸化防止剤
(8)耐UV安定化剤
(9)連鎖制限剤
(10)補強材
【請求項7】
可塑剤がベンゼンスルホンアミド、ヒドロキシ安息香酸エステル、ラクタム、テトラヒドロフルフリルアルコールのエステルまたはエーテル、クエン酸のエステルおよびヒドロキシマロン酸のエステルの中から選択される請求項6に記載のポリアミド組成物。
【請求項8】
可塑剤がn−ブチル−ベンゼンスルホンアミド(BBSA)である請求項7に記載のポリアミド組成物。
【請求項9】
組成物の全体量に対する可塑剤の重量比が30%以下である請求項項6〜8のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項10】
熱可塑性材料の成形法、好ましくは押出成形で請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリアミド組成物を成形する方法。
【請求項11】
共混練機型の押出機で、溶融帯域にカーボンブラックを導入し、ポリアミドのペレット(必要な場合には請求項6に記載の少なくとも一種の添加物をさらに含むことができる)の一部を供給ホッパーから、他の一部はカーボンブラックと一緒に導入することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリアミド組成物からなる物品。
【請求項13】
押出成形で得られる請求項12に記載の物品、特に静電気が最も蓄積する層が請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリアミド組成物をベースにしたものからなる単層または多層のチューブ。

【公開番号】特開2012−107243(P2012−107243A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256260(P2011−256260)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【分割の表示】特願2000−526575(P2000−526575)の分割
【原出願日】平成10年12月11日(1998.12.11)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】