説明

ポリアミドフィルムの帯電防止方法、帯電防止フィルム、およびその製造方法

【課題】塗布裏面への帯電防止性能を発揮する帯電防止方法を提供すること。
【解決手段】本発明のポリアミドフィルムの帯電防止方法は、35μm以下の厚みを有するポリアミドフィルムの一方の面に、π共役系導電性高分子を含有するコーティング剤を塗布する工程;および該コーティング剤を乾燥させて導電層を形成する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドフィルムの帯電防止に関する。さらに詳しくは、ポリアミドフィルムにπ共役系導電性高分子を含有するコーティング剤を塗布することにより導電層を形成し、該塗布面と反対の面(塗布裏面)への帯電防止性能を発揮する帯電防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装フィルム、電子波シールド材、偏光フィルムなどの帯電を防止するために、帯電防止性能を有するフィルムが好適に用いられている。このようなフィルムとしては、ポリアミドフィルム(ナイロンフィルム)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)などの透明フィルム表面の少なくとも片面に、ドライプロセスまたはウエットプロセスでITOなどの無機金属酸化物層を形成したもの、導電性高分子を主成分とするコーティング剤をウェットコーティングしたものなどがよく用いられている。
【0003】
特許文献1には、ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とポリ陰イオンから成る導電性ポリマーを主成分とする水系のコーティング用組成物が開示されており、プラスチック基材に塗布し、密着性、透明性、導電性、耐溶剤性、および耐水性に優れた塗膜を形成することが開示されている。
【0004】
しかし、このコーティング用組成物の帯電防止効果は、塗布された表面にのみ発揮され、裏面には発揮されない。したがって、食品のパッケージフィルム、医療用フィルムなどフィルムの表面と接する物の安全性などの観点から、帯電防止コーティング用組成物を表面に塗布することができない用途には、このようなコーティング方法は適用できないのが現状である。
【0005】
特許文献2には、薄膜PETフィルムの片面に導電層を形成し、裏面に帯電防止性能を発現させる方法が開示されている。この方法は、帯電防止成分として4級アンモニウム塩を用いているため、湿度依存性が大きく、湿度によっては安定して使用することができない。
【0006】
さらに、特許文献3には、プラスチック成型品の裏側(一方の面)にアミン系窒素肥料および水溶性の造膜性高分子を塗布する帯電防止方法が開示されている。しかし、この方法は、帯電防止成分としてアミン系窒素肥料を用いているため、湿度依存性が大きく、湿度によっては安定して使用することができない。
【特許文献1】特開2002−60736号公報
【特許文献2】特開2001−152136号公報
【特許文献3】特開2004−307676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の問題を解決し、ポリアミドフィルムの一方の面に特定の高分子を含有するコーティング剤を塗布するだけで、他方の面(塗布裏面)にも帯電防止効果を発揮し得る方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、35μm以下の厚みを有するポリアミドフィルムの片面に、特定の高分子を含有するコーティング剤を塗布することにより、塗布裏面への帯電防止効果を発揮し得ることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、ポリアミドフィルムの帯電防止方法を提供し、該方法は、35μm以下の厚みを有するポリアミドフィルムの一方の面に、π共役系導電性高分子を含有するコーティング剤を塗布する工程;および該コーティング剤を乾燥させて導電層を形成する工程を包含する。
【0010】
1つの実施態様では、上記π共役系導電性高分子は、アニリン誘導体、チオフェン誘導体、およびピロール誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のモノマーを重合させて得られる高分子である。
【0011】
また本発明は、帯電防止フィルムを提供し、該フィルムは、35μm以下の厚みを有するポリアミドフィルムの一方の面にπ共役系導電性高分子を含有する導電層が形成され、該フィルムの他方の面の表面抵抗率は10〜1013Ω/□である。
【0012】
1つの実施態様では、上記π共役系導電性高分子は、アニリン誘導体、チオフェン誘導体、およびピロール誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のモノマーを重合させて得られる高分子である。
【0013】
さらに、本発明は、帯電防止フィルムの製造方法を提供し、該方法は、35μm以下の厚みを有するポリアミドフィルムの一方の面に、π共役系導電性高分子を含有するコーティング剤を塗布する工程;および該コーティング剤を乾燥させて導電層を形成する工程を包含する。
【0014】
1つの実施態様では、上記π共役系導電性高分子は、アニリン誘導体、チオフェン誘導体、およびピロール誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のモノマーを重合させて得られる高分子である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ポリアミドフィルムの一方の面に特定の高分子を含有するコーティング剤を塗布するだけで、他方の面(塗布裏面)にも帯電防止効果を発揮し得る。したがって、本発明のフィルムは、表面に直接帯電防止処理を施すことができない食品のパッケージフィルム、医療用フィルムなどの用途であっても使用し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0017】
(ポリアミドフィルム)
本発明に用いられるポリアミドフィルムは、35μm以下の厚みであれば、その材料、形状、構造、大きさなどについては、目的に応じて適宜選択し得る。
【0018】
フィルムの厚みは、好ましくは1μm〜35μm、より好ましくは10μm〜25μmである。フィルムの厚みが1μm未満の場合、コーティング剤を塗布しにくくなる。一方、フィルムの厚みが35μmを超える場合、裏面への帯電防止効果が十分発揮されない。
【0019】
フィルムの性質は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択され得る。例えば、フィルムは、可撓性を有することが好ましい。
【0020】
フィルムの形状は、特に限定されず、例えば、層状(シート状、フィルム状など)、板状などが好ましい。本明細書において、ポリアミドフィルムは、例えば、ガスバリア層などがポリアミド上に積層されたフィルムも含む。
【0021】
本発明では、任意の製造方法で得られたポリアミドフィルムが用いられ、目的に応じて適宜選択され得る。例えば、二軸延伸、無延伸などによって得られたポリアミドフィルムを使用し得、二軸延伸よって得られたポリアミドフィルムが好ましい。さらに、コーティング剤を塗布する際の濡れ性を向上させる目的で、適宜、表面にコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理などの物理的処理が施されていてもよい。
【0022】
ポリアミドフィルムの原料であるポリアミド樹脂は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択され得る。ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリアミド6、ポリアミド8、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12などが挙げられる。
【0023】
ポリアミドフィルムとしては、特に限定されず、例えば、ハーデンフィルムN1100、ハーデンフィルムN2100、ハーデンフィルムMX−N3190、エコシアールVN400、(以上、東洋紡績株式会社製)、ボニール RX(以上、株式会社興人製)ダイアミロンMF、ダイアミロンM、スーパーニール、サントニールSNR、ダイアミロンC(以上、三菱樹脂株式会社製)、エンブレムON、エンブレムNC、エンブレムDCR、エンブレムDCWU(以上、ユニチカ株式会社製)、レイファンNO−1401、レイファンNO−8000、レイファンNO−8100(以上、東レ株式会社製)などが挙げられる。
【0024】
(導電層)
ポリアミドフィルムに形成される導電層は、π共役系導電性高分子を含有し、必要に応じてバインダー樹脂を含有する。このような導電層は、例えば、π共役系導電性高分子を含有し、必要に応じてバインダー樹脂を含有するコーティング剤を、ポリアミドフィルムに塗布することにより形成される。
【0025】
π共役系導電性高分子としては、公知のπ共役系導電性高分子を使用し得、例えば、以下に示すモノマーの1種または2種以上を単量体として、重合させて得られる導電性高分子が挙げられる。
【0026】
モノマーとしては、例えば、ピロール、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−フェニルピロール、N−ナフチルピロール、N−メチル−3−メチルピロール、N−メチル−3−エチルピロール、N−フェニル−3−メチルピロール、N−フェニル−3−エチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−ブチルピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−n−プロポキシピロール、3−n−ブトキシピロール、3−フェニルピロール、3−トルイルピロール、3−ナフチルピロール、3−フェノキシピロール、3−メチルフェノキシピロール、3−アミノピロール、3−ジメチルアミノピロール、3−ジエチルアミノピロール、3−ジフェニルアミノピロール、3−メチルフェニルアミノピロール、3−フェニルナフチルアミノピロールなどのピロール誘導体;アニリン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−メトキシアニリン、m−メトキシアニリン、p−メトキシアニリン、o−エトキシアニリン、m−エトキシアニリン、p−エトキシアニリン、o−メチルアニリン、m−メチルアニリン、p−メチルアニリンなどのアニリン誘導体;チオフェン、3−メチルチオフェン、3−n−ブチルチオフェン、3−n−ペンチルチオフェン、3−n−ヘキシルチオフェン、3−n−ヘプチルチオフェン、3−n−オクチルチオフェン、3−n−ノニルチオフェン、3−n−デシルチオフェン、3−n−ウンデシルチオフェン、3−n−ドデシルチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−ナフトキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェンなどのチオフェン誘導体などが挙げられる。これらの中でも、ピロール、アニリン、チオフェン、および3,4−エチレンジオキシチオフェンが好ましく、3,4−エチレンジオキシチオフェンがより好ましい。これらのモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
さらに、電導度を向上させるために、導電層にドーパントを添加してもよい。ドーパントとしては、公知の材料、例えば、ヘキサフロロリン、ヘキサフロロヒ素、ヘキサフロロアンチモン、テトラフロロホウ素、過塩素酸などのハロゲン化物アニオン;ヨウ素、臭素、塩素などのハロゲンアニオン;メタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸などのアルキル基置換有機スルホン酸アニオン;カンファースルホン酸などの環状スルホン酸アニオン;ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸などのアルキル基置換または無置換のベンゼンモノまたはジスルホン酸アニオン;2−ナフタレンスルホン酸、1,7−ナフタレンジスルホン酸などの1〜3個のスルホン酸基を有するアルキル基置換または無置換ナフタレンスルホン酸アニオン;アントラセンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、アルキルビフェニルスルホン酸、ビフェニルジスルホン酸などのアルキル基置換または無置換のビフェニルスルホン酸イオン;ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエーテル、スルホン化ポリエステル、スルホン化ポリイミド、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合体などの高分子スルホン酸アニオン;置換または無置換の芳香族スルホン酸アニオン;ビスサルチレートホウ素、ビスカテコレートホウ素などのホウ素化合物アニオン;モリブドリン酸、タングストリン酸、タングストモリブドリン酸などのヘテロポリ酸アニオンなどが挙げられる。これらのドーパントは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
ドーパントの含有量は、π共役系導電性高分子1モルに対して0.1〜10モルの範囲であることが好ましく、1〜7モルの範囲であることがより好ましい。ドーパントの含有量が0.1モル未満の場合、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が弱くなる傾向にあり、さらなる導電性を付与する効果が得られない。その上、π共役系導電性高分子の溶剤への分散性および溶解性が低くなり、π共役系導電性高分子の均一な分散液(コーティング剤)を得ることが困難になる。一方、ドーパントの含有量が10モルを超えると、導電層中のπ共役系導電性高分子が占める割合が低くなり、充分な導電性が得られにくくなる。
【0029】
バインダー樹脂としては、溶剤に可溶な樹脂または溶剤に分散可能な樹脂が好ましい。例えば、バインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂が好ましく、このような樹脂としては、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0030】
π共役系導電性高分子の微粒子を溶剤に分散した分散液または溶剤に溶解した溶液(コーティング剤)を、ポリアミドフィルムにコーティングし、乾燥させて導電層を形成すると、π共役系導電性高分子微粒子同士が固く網目状に絡み合って、再び溶剤に溶解しなくなる。
【0031】
しかし、この導電層上に、さらに溶剤系のコーティング剤を塗布する際、コーティング方式によっては物理的にπ共役系導電性高分子微粒子が脱落する場合がある。そのため、このような脱落を防止するために、π共役系導電性高分子微粒子の分散液または溶液(コーティング剤)は、溶剤に可溶なバインダー樹脂または溶剤に分散可能なバインダー樹脂を含有することが好ましい。
【0032】
導電層におけるπ共役系導電性高分子とバインダー樹脂との質量比は、好ましくは固形分比1/0〜1/20の範囲である。
【0033】
導電層は、用途、塗布対象物などの必要に応じて、上記成分(π共役系導電性高分子、ドーパント、およびバインダー樹脂)以外の任意の成分を含有し得る。このような成分としては、塗布性向上剤などが挙げられる。
【0034】
塗布性向上剤は、各成分と溶剤(後述)とを混合してコーティング剤を調製した場合に、これをポリアミドフィルムに塗布するのを容易にする機能を有する。
【0035】
塗布性向上剤は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択され得る。例えば、水溶性アクリル系共重合物、シリコン変性水溶性アクリルポリマー、ポリエーテル変性水溶性ジメチルシロキサン、フッ素系変性ポリマーなどが挙げられ、これらの中でも、ポリエーテル変性水溶性ジメチルシロキサンが好ましい。塗布性向上剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
塗布性向上剤の含有量は特に限定されず、通常、コーティング剤中に0.01質量%〜10質量%、好ましくは0.1質量%〜1質量%の割合で含有される。
【0037】
コーティング剤中に含有され得るその他の成分は、特に限定されず、当該分野で用いられる一般的な添加剤などの中から適宜選択して使用し得る。例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、表面改質剤、脱泡剤、可塑剤、抗菌剤、界面活性剤、金属微粒子、導電性向上剤、溶剤などが挙げられる。このようなその他の成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
コーティング剤中に含有され得る導電性向上剤は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択され得る。導電性向上剤は、ポリアミドフィルムの表面抵抗率をより低くし得る。導電性向上剤は、コーティング前に分散または溶解して使用される。
【0039】
導電性向上剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、カテコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ジメチルスルホキシド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、およびN−メチルホルムアミドが好ましい。導電性向上剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
導電性向上剤の含有量は特に限定されず、通常、π共役系導電性高分子1質量部あたり1〜100質量部、好ましくは20〜60質量部の割合で含有される。
【0041】
溶剤は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択され得る。例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどが挙げられる。これらの中でも、水およびエタノールが好ましい。溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
溶剤の量は、上述の各材料を溶解あるいは均一に分散させ、コーティング剤としてポリアミドフィルムに塗布し得る量であればよい。通常、塗料(コーティング剤)中の固形分濃度が20質量%以下となるように溶剤が用いられ、好ましくは0.1〜10質量%である。
【0043】
固形分濃度が0.1質量%未満の場合、ポリアミドフィルムへの濡れ性が不足することがある。一方、固形分濃度が20質量%を超える場合、均一に塗工するのが難しくなり、形成される導電層の外観に劣ることがある。さらに、コーティング剤の貯蔵安定性が悪くなる場合がある。
【0044】
(帯電防止方法および帯電防止フィルムの製造方法)
本発明の帯電防止方法は、35μm以下の厚みを有するポリアミドフィルムの一方の面に、π共役系導電性高分子を含有するコーティング剤を塗布する工程;および該コーティング剤を乾燥させて導電層を形成する工程を包含する。
【0045】
コーティング剤を、ポリアミドフィルムに塗布する方法は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択され得る。例えば、塗布方法としては、スピンコート法、ローラコート法、バーコート法、ディップコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、ニーダーコート法などの塗布法;スクリーン印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、平版印刷法などの印刷法が挙げられる。
【0046】
次いで、ポリアミドフィルムに塗布されたコーティング剤は乾燥され、ポリアミドフィルムに導電層が形成される。
【0047】
乾燥は、通常の通風乾燥機、熱風乾燥機、赤外線乾燥機、ホットプレートなどの乾燥機などが用いられる。乾燥温度は特に限定されないが、60℃〜150℃が好ましい。乾燥温度が60℃未満の場合、溶剤などの揮発分が完全に留去できないことがある。一方、乾燥温度が150℃以上の場合、ポリアミドフィルムの耐久性に悪影響を及ぼすことがある。
【0048】
導電層の厚みは、特に限定されず、目的に応じて適宜選択され得る。好ましくは、0.01〜10μmであり得、より好ましくは0.1〜1μmであり得る。
【0049】
帯電防止性能を発揮させるための表面抵抗率は、好ましくは10〜1014Ω/□程度であり得、より好ましくは10〜1013Ω/□程度であり得る。
【0050】
さらに、導電層が形成された反対の面(すなわち、塗布裏面)の表面抵抗率は、10〜1013Ω/□程度であり得、好ましくは1010〜1013Ω/□程度であり得る。
【0051】
表面抵抗率は、例えば、JIS K6911などに準拠して測定することができ、市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することもできる。
【0052】
本発明の方法は、塗布裏面への帯電防止性能に優れたフィルムを作成し得るので、表面に直接処理することが困難なフィルムへの帯電防止性能付与に特に有用である。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0054】
<ポリアミドフィルム>
ポリアミドフィルムは、ハーデンフィルム N−1100(東洋紡績株式会社製:厚み12μm、15μm、および25μm)、レイファンNO3301(東レフィルム加工株式会社製:厚み30μmおよび40μm)、およびボニール RX−15u(株式会社興人製:厚み15μm)を使用した。なお、これらのポリアミドフィルムは、一方の面にコロナ処理が施されたものを使用した。
【0055】
<コーティング剤の調製1>
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合体の水分散体(H.C.スタルク株式会社製:BaytronP、固形分1.3質量%)70質量部、11質量部のポリエステル樹脂水分散体(ナガセケムテックス株式会社製:ガブセンES−210、固形分25.0質量%)、3質量部のN−メチルピロリドン、1質量部の界面活性剤(互応化学工業株式会社製:プラスコートRY−2)、95質量部の水、および320質量部の変性エタノールを混合して1時間撹拌した。次いで、得られた混合物を400meshのSUSでろ過し、コーティング剤を調製した(以下、塗工液A−1と記載する)。
【0056】
<コーティング剤の調製2>
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合体の水分散体(H.C.スタルク株式会社製:BaytronP、固形分1.3質量%)70質量部、11質量部のポリエステル樹脂水分散体(ナガセケムテックス株式会社製:ガブセンES−210、固形分25.0質量%)、3質量部のN−メチルピロリドン、1質量部の界面活性剤(互応化学工業株式会社製:プラスコートRY−2)、35質量部の水、および80質量部の変性エタノールを混合して1時間撹拌した。次いで、得られた混合物を400meshのSUSでろ過し、コーティング剤を調製した(以下、塗工液A−2と記載する)。
【0057】
<コーティング剤の調製3>
ポリアニリン水溶液(三菱レイヨン株式会社製:aquaPASS−01X、固形分5.0質量%)18.2質量部、11質量部のポリエステル樹脂水分散体(ナガセケムテックス株式会社製:ガブセンES−210、固形分25.0質量%)、3質量部のN−メチルピロリドン、1質量部の界面活性剤(互応化学工業株式会社製:プラスコートRY−2)、87質量部の水、および80質量部の変性エタノールを混合して1時間撹拌した。次いで、得られた混合物を400meshのSUSでろ過し、コーティング剤を調製した(以下、塗工液Bと記載する)。
【0058】
<導電層の形成>
以下に示す実施例1−1〜8−2の方法で、ポリアミドフィルムに導電層を形成した。
【0059】
(実施例1−1)
ハーデンフィルムN−1100−12(東洋紡績株式会社製:2軸延伸ポリアミドフィルム、ナイロン6を主原料とした逐次二軸延伸フィルム単層)のコロナ処理面上に、塗工液A−1をワイヤーバーNo.4を用いてバーコート法により塗布した(ウエット膜厚6μm)。次いで、100℃で1分間、送風オーブンで乾燥させて、導電層(膜厚0.05μm)を形成した。
【0060】
(実施例1−2)
ハーデンフィルムN−1100−12のコロナ処理面の裏面上に、塗工液A−1をワイヤーバーNo.4を用いてバーコート法により塗布した(ウエット膜厚6μm)。100℃で1分乾燥させることにより、導電層(膜厚0.05μm)を形成した。
【0061】
(実施例2−1)
実施例1−1のハーデンフィルムN−1100−12の代わりに、ハーデンフィルムN−1100−15(東洋紡績株式会社製:2軸延伸ポリアミドフィルム、ナイロン6を主原料とした逐次二軸延伸フィルム単層)を用いたこと以外は、実施例1−1と同様の手順で導電層(膜厚0.06μm)を形成した。
【0062】
(実施例2−2)
実施例1−2のハーデンフィルムN−1100−12の代わりに、ハーデンフィルムN−1100−15を用いたこと以外は、実施例1−2と同様の手順で導電層(膜厚0.06μm)を形成した。
【0063】
(実施例3−1)
実施例1−1のハーデンフィルムN−1100−12の代わりに、ハーデンフィルムN−1100−25(東洋紡績株式会社製:2軸延伸ポリアミドフィルム、ナイロン6を主原料とした逐次二軸延伸フィルム単層)を用いたこと以外は、実施例1−1と同様の手順で導電層(膜厚0.05μm)を形成した。
【0064】
(実施例3−2)
実施例1−2のハーデンフィルムN−1100−12の代わりに、ハーデンフィルムN−1100−25を用いたこと以外は、実施例1−2と同様の手順で導電層(膜厚0.07μm)を形成した。
【0065】
(実施例4−1)
実施例1−1の塗工液A−1の代わりに塗工液A−2を用い、そしてハーデンフィルムN−1100−12の代わりに、ボニールRX−15u(株式会社興人製:2軸延伸ポリアミドフィルム)を用いたこと以外は、実施例1−1と同様の手順で導電層(膜厚0.11μm)を形成した。
【0066】
(実施例4−2)
実施例1−2の塗工液A−1の代わりに塗工液A−2を用い、そしてハーデンフィルムN−1100−12の代わりに、ボニールRX−15uを用いたこと以外は、実施例1−2と同様の手順で導電層(膜厚0.10μm)を形成した。
【0067】
(実施例5−1)
実施例1−1の塗工液A−1の代わりに、塗工液Bを用いたこと以外は、実施例1−1と同様の手順で導電層(膜厚0.07μm)を形成した。
【0068】
(実施例5−2)
実施例1−2の塗工液A−1の代わりに、塗工液Bを用いたこと以外は、実施例1−2と同様の手順で導電層(膜厚0.07μm)を形成した。
【0069】
(実施例6−1)
実施例2−1の塗工液A−1の代わりに、塗工液Bを用いたこと以外は、実施例2−1と同様の手順で導電層(膜厚0.08μm)を形成した。
【0070】
(実施例6−2)
実施例2−2の塗工液A−1の代わりに、塗工液Bを用いたこと以外は、実施例2−2と同様の手順で導電層(膜厚0.07μm)を形成した。
【0071】
(実施例7−1)
実施例3−1の塗工液A−1の代わりに、塗工液Bを用いたこと以外は、実施例3−1と同様の手順で導電層(膜厚0.06μm)を形成した。
【0072】
(実施例7−2)
実施例3−2の塗工液A−1の代わりに、塗工液Bを用いたこと以外は、実施例3−2と同様の手順で導電層(膜厚0.05μm)を形成した。
【0073】
(実施例8−1)
実施例4−1の塗工液A−2の代わりに、塗工液Bを用いたこと以外は、実施例4−1と同様の手順で導電層(膜厚0.08μm)を形成した。
【0074】
(実施例8−2)
実施例4−2の塗工液A−2の代わりに、塗工液Bを用いたこと以外は、実施例4−2と同様の手順で導電層(膜厚0.05μm)を形成した。
【0075】
(実施例9−1)
実施例1−1のハーデンフィルムN−1100−12の代わりに、レイファンNO3301♯30(東レフィルム加工株式会社製:無延伸ポリアミドフィルム)を用いたこと以外は、実施例1−1と同様の手順で導電層(膜厚0.07μm)を形成した。
【0076】
(実施例9−2)
実施例1−2のハーデンフィルムN−1100−12の代わりに、レイファンNO3301♯30を用いたこと以外は、実施例1−2と同様の手順で導電層(膜厚0.08μm)を形成した。
【0077】
(比較例1−1)
実施例1−1の塗工液A−1の代わりに塗工液A−2を用い、そしてハーデンフィルムN−1100−12の代わりに、FE2001♯12(フタムラ化学株式会社製:2軸延伸PETフィルム)を用いたこと以外は、実施例1−1と同様の手順で導電層(膜厚0.15μm)を作成した。
【0078】
(比較例1−2)
実施例1−2の塗工液A−1の代わりに塗工液A−2を用い、そしてハーデンフィルムN−1100−12の代わりに、FE2001♯12を用いたこと以外は、実施例1−2と同様の手順で導電層(膜厚0.13μm)を作成した。
【0079】
(比較例2−1)
実施例1−1のハーデンフィルムN−1100−12の代わりに、FE2001♯25(フタムラ化学株式会社製:2軸延伸PETフィルム)を用いたこと以外は、実施例1−1と同様の手順で導電層(膜厚0.08μm)を作成した。
【0080】
(比較例2−2)
実施例1−2のハーデンフィルムN−1100−12の代わりに、FE2001♯25を用いたこと以外は、実施例1−2と同様の手順で導電層(膜厚0.08μm)を作成した。
【0081】
(比較例3−1)
比較例1−1の塗工液A−2の代わりに、塗工液Bを用いたこと以外は、比較例1−1と同様の手順で導電層(膜厚0.07μm)を作成した。
【0082】
(比較例3−2)
比較例1−2の塗工液A−2の代わりに、塗工液Bを用いたこと以外は、実施例1−2と同様の手順で導電層(膜厚0.07μm)を作成した。
【0083】
(比較例4−1)
実施例1−1のハーデンフィルムN−1100−12の代わりに、レイファンNO3301♯40(東レフィルム加工株式会社製:無延伸ポリアミドフィルム)を用いたこと以外は、実施例1−1と同様の手順で導電層(膜厚0.09μm)を形成した。
【0084】
(比較例4−2)
実施例1−2のハーデンフィルムN−1100−12の代わりに、レイファンNO3301♯40を用いたこと以外は、実施例1−2と同様の手順で導電層(膜厚0.08μm)を形成した。
【0085】
<表面抵抗率の評価>
表面抵抗率は、JIS K6911に従い、三菱化学株式会社製ハイレスターUP(MCP−HT450)を用いて測定した。
【0086】
得られたフィルムの塗布面および塗布裏面の表面抵抗率の測定結果を、表1および表2に示す。なお、表中のoverは、測定限界以上(1.0×1015以上)の値である。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
さらに、各フィルム自体の表面抵抗率の測定結果を表3に示す。
【0090】
【表3】

【0091】
表1、表2、および表3に示すように、コーティング剤を塗布して乾燥し、導電層を形成することにより、塗布裏面にも帯電防止性能を発揮し得るフィルムが得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明によれば、ポリアミドフィルムの一方の面にコーティング剤を塗布するだけで、他方の面(塗布裏面)にも帯電防止効果を発揮し得る。したがって、フィルムの表面と接する物の安全性などの観点から、その表面に直接処理することができないフィルムへの帯電防止性能付与に特に有用である。具体的には、液晶画面の保護シート、食品のパッケージフィルム、安全性を求められる医薬、衛生材料分野などの分野での使用が期待され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドフィルムの帯電防止方法であって、
35μm以下の厚みを有するポリアミドフィルムの一方の面に、π共役系導電性高分子を含有するコーティング剤を塗布する工程;および
該コーティング剤を乾燥させて導電層を形成する工程;
を包含する、帯電防止方法。
【請求項2】
前記π共役系導電性高分子が、アニリン誘導体、チオフェン誘導体、およびピロール誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のモノマーを重合させて得られる高分子である、請求項1に記載の帯電防止方法。
【請求項3】
帯電防止フィルムであって、
35μm以下の厚みを有するポリアミドフィルムの一方の面にπ共役系導電性高分子を含有する導電層が形成され、そして
該フィルムの他方の面の表面抵抗率が10〜1013Ω/□である、帯電防止フィルム。
【請求項4】
前記π共役系導電性高分子が、アニリン誘導体、チオフェン誘導体、およびピロール誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のモノマーを重合させて得られる高分子である、請求項3に記載の帯電防止フィルム。
【請求項5】
帯電防止フィルムの製造方法であって、
35μm以下の厚みを有するポリアミドフィルムの一方の面に、π共役系導電性高分子を含有するコーティング剤を塗布する工程;および
該コーティング剤を乾燥させて導電層を形成する工程;
を包含する、製造方法。
【請求項6】
前記π共役系導電性高分子が、アニリン誘導体、チオフェン誘導体、およびピロール誘導体からなる群より選択される少なくとも1種のモノマーを重合させて得られる高分子である、請求項5に記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−83940(P2010−83940A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252527(P2008−252527)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】