説明

ポリアミド樹脂組成物およびそれからなる成形体

【課題】ポリアミド樹脂本来の高い剛性、衝撃特性を保持しつつ、吸水による物性低下の抑制および良好な外観を示す材料を提供する。
【解決手段】ISO 307(96%硫酸法)に従って得られた粘度数が100〜200ml/gの(A)ポリアミド55〜90重量%、ISO 1133(温度230℃、滞留時間5min、荷重2160g)に従って測定したメルトフローレイトが1〜60g/10minの(B)未変性ポリプロピレン9〜44重量%、ISO 1133(温度230℃、滞留時間5min、荷重2160g)に従って測定したメルトフローレイトが20〜80g/10min、JIS K7196(昇温速度5℃/min)に従って測定したガラス転移点が−20〜0℃の(C)変性ポリオレフィン1〜10重量%からなるポリアミド樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂の機械強度、剛性、耐摩耗性などの機械的性質及び良好な表面外観を保持しつつ、且つポリアミド樹脂の欠点である吸水性を抑制できるため、吸水による物性低下および寸法変化が小さいことを特徴とするポリアミド樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリアミド樹脂は剛性、耐衝撃性、耐摩耗性などの機械的性質がすぐれ、耐熱性、成形加工性も良好なために、自動車部品、電気部品、一般機械部品など種々の用途に使用されている。しかしポリアミド樹脂は吸水により、剛性の低下や大きく寸法変化するといった特徴がある。また特定の無機金属塩との接触下においてクラックを発生するなどの欠点もある。
【0003】
上記のようなポリアミド樹脂の吸水によって発現する特徴や欠点を改良することを目的としたポリアミド樹脂にポリプロピレンを添加する試みは、特許文献1、特許文献2及び特許文献3にあるように実施された例も過去にある。
【0004】
しかし、上記公知技術を用いて製造されたポリアミド樹脂組成物は、いずれも吸水性低減には一応効果があるものの、ポリアミドとポリプロピレンとの相溶性が十分でないため絶乾時の剛性が低く、また成形品表面外観が悪いなどの問題点があり、実用化技術からすれば未だ不満足である。従ってポリアミド本来のすぐれた剛性、耐摩耗性、耐熱性を保持しつつ、且つ吸水による物性低下や寸法の変化が小さく、高い耐衝撃性と良好な成形品表面外観を有するポリアミド樹脂組成物は未だ得られていないのが現状である。
【特許文献1】特開平01−103662号公報
【特許文献2】特開平09−157454号公報
【特許文献3】特開平13−202935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポリアミド樹脂本来のすぐれた剛性、耐摩耗性、耐熱性を保持しつつ、且つ吸水による物性低下や寸法の変化が小さく、高い耐衝撃性と良好な成形品表面外観を有することを特徴とするポリアミド樹脂組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、次のような手段を採用するものである。
【0007】
本発明は以下のとおりである。
1.(A)、(B)、(C)の合計を100重量%として、(A)ポリアミド55〜90重量%、(B)未変性ポリプロピレン9〜45重量%、(C)変性ポリオレフィン1〜10重量%を配合してなるポリアミド樹脂組成物であって、(A)ポリアミドのISO 307(96%硫酸法)に従って得られた粘度数が100〜200ml/g、(B)未変性ポリプロピレンのISO 1133(温度230℃、滞留時間5min、荷重2160g)に従って測定したメルトフローレイトが1〜60g/10min、(C)変性ポリオレフィンのISO 1133(温度230℃、滞留時間5min、荷重2160g)に従って測定したメルトフローレイトが20〜80g/10min、JIS K7196(昇温速度5℃/min)に従って測定したガラス転移点が−20〜0℃であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
2.前記(A)、(B)、(C)の合計を100重量部として、無機充填材を10〜150重量部配合してなる1記載のポリアミド樹脂組成物。
3.(A)ポリアミドが(A1)ポリアミド66または(A2)ポリアミド6である1または2記載のポリアミド樹脂組成物。
4.1〜3いずれかに記載のポリアミドからなる成形体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポリアミド樹脂本来のすぐれた剛性、耐摩耗性、耐熱性を保持しつつ、且つポリアミド樹脂の欠点とされる吸水による物性低下や寸法変化が小さく、高い耐衝撃性と良好な成形品表面外観を有することを特徴とするポリアミド樹脂組成物を提供する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0010】
本発明におけるポリアミド樹脂組成物を構成する(A)ポリアミドは、アミノ酸、ラクタム、あるいはジアミンとジカルボン酸を主たる構成成分とするポリアミドである。具体例を挙げるとε−カプロラクタム、エナントラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、ε−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのアミノ酸、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン1.2.2.4−/2.4.4−1リメチルへキサメチレンジアミン、5=メチルノナメチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1.3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1.4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス−p−アミノシクロヘキシルメタン、ビス−p−アミノシクロへキシルプロパン、イソホロンジアミンなどのジアミン、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セパシン酸、ドデカンニ酸、1.4−シクロヘキサンジカルボン酸、1.3−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ダイマー酸などのジカルボン酸がある。これらの構成成分は単独あるいは二種以上の混合物の形で重合に供され、そうして得られるポリアミドホモポリマ、コポリマいずれも本発明で用いることができる。特に本発明で有用に用いられるポリアミドはポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリへキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリへキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、そしてこれらポリアミドの共重合体および混合物である。外観や強度、剛性、靭性面で、ナイロン6、ナイロン66が好ましい。
【0011】
本発明で用いる(A)ポリアミドは、ISO 307に準拠した測定方法で求められる粘度数が100〜200ml/gであることが必要であり、好ましくは100〜160ml/gである。(A)ポリアミドの粘度数が100ml/gを下回ると、剛性、衝撃特性が低下し、逆に200ml/gを超えると、溶融成形時の流動性が低下し、成形性が悪くなる。(A)ポリアミドの配合量は、(A)ポリアミド、(B)未変性ポリプロピレン、(C)変性ポリオレフィンの合計を100重量%として、55〜90重量%であり、好ましくは55〜75重量%である。(A)ポリアミドの配合量が55重量%に満たないと、ポリアミド本来の剛性を保持することができず、逆に90重量%を超えると、吸水時の強度及び剛性の低下や寸法変化が大きくなる。
【0012】
本発明で用いる(B)未変性ポリプロピレンは、ISO 1133(温度230℃、滞留時間5min、荷重2160g)で規定されるメルトフローレイト(MFR)が1〜60g/10minが必要であり、好ましくは5〜50g/10minである。(B)未変性ポリプロピレンのMFRが1g/10minを下回ると、溶融成形時の流動性が低下し、成形性が悪くなる。逆に(B)未変性ポリプロピレンのMFRが60g/10minを超えると、ポリアミド本来の特性を得ることができない。(B)未変性ポリプロピレンの配合量は、、(A)ポリアミド、(B)未変性ポリプロピレン、(C)変性ポリオレフィンの合計を100重量%として、9〜44重量%であり、好ましくは15〜35重量%である。(B)未変性ポリプロピレンの配合量が9重量%に満たないと、低吸水化効果が不十分であり、逆に(B)未変性ポリプロピレンの配合量が40重量%を超えると、剛性の低下が大きい。
【0013】
本発明で用いる(C)変性ポリオレフィンは、ISO 1133(温度230℃、滞留時間5min、荷重2160g)で規定されるMFRが20〜80g/10minが必要であり、好ましくは40〜60g/10minである。(C)変性ポリオレフィンのMFRが20g/10minを下回ると、ポリアミド本来の特性を得ることができず、逆にMFRが80g/10minを超えると、剛性、衝撃特性を満足することができない。(C)変性ポリオレフィンは、JIS K7196(昇温速度5℃/min)に従って測定したガラス転移点が−20〜0℃であることが必要である。(C)変性ポリオレフィンのガラス転移点が−20℃に満たないと、高温環境下において剛性を保持することができず、逆にガラス転移点が0℃を超えると、結晶化が不十分で剛性を満足できない。(C)変性ポリオレフィンの配合量は、(A)ポリアミド、(B)未変性ポリプロピレン、(C)変性ポリオレフィンの合計を100重量%として、1〜10重量%が必要であり、好ましくは3〜10重量%である。(C)変性ポリオレフィンの配合量が1重量部に満たないと、(A)ポリアミドと(B)変性ポリプロピレンの相溶性が不十分で良好な剛性、衝撃特性、表面外観を得ることができない。10重量%を超えると、強度、剛性が低下する。
【0014】
本発明ではさらに、無機充填材を配合することができる。無機充填材としては、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定なく使用することができる。無機充填材は、板状、棒状、球状などの形状を持ったものが挙げられる。このような無機充填材は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維など繊維状強化材、ガラスビーズ、ガラスフレーク、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、アスベスト、アルミノシリケート、珪酸カルシウム、アルミナ、シリカ、珪藻土、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、セラミックビーズ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化珪素などが挙げられる。これらは中空であってもよく、さらにはこれら無機充填材を2種類以上用いることも可能である。また、これら無機充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で処理して使用してもよい。繊維状強化材は長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。
【0015】
特に剛性、表面外観、寸法安定性の点でガラス繊維、ガラスビーズ、タルク、マイカ、ワラステナイト、カオリンが好ましい。ガラス繊維の場合、数平均繊維長は200μm以上である事が強度、剛性の点で好ましい。ガラスビーズ、タルク、マイカ、ワラステナイト、カオリンの場合、平均粒径は0.5〜10μmであることが好ましい。平均粒径が0.5μm未満では凝集が起こりやすく剛性に劣る場合がある。また平均粒径が10μmを超えると剛性、表面外観に劣る場合がある。なお、平均粒径は、レーザー回折法により測定した粒径の50%積算値として求めることができる。
【0016】
また無機充填材の配合量としては(A)〜(C)成分の合計量を100重量部として10〜150重量部が好ましい。10重量部以上配合することで、ポリアミド樹脂組成物の強度、剛性を向上させることができ、150重量部以下配合することで、ポリアミド樹脂組成物の流動性、外観を良好にいじすることができるので好ましい。
【0017】
本発明におけるポリアミド樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、他の重合体を添加することができる。
【0018】
本発明のポリアミド樹脂組成物を得る方法としては、特に制限はないが、溶融混練において、たとえば2軸押出機で溶融混練する場合に(A)ポリアミドと(B)未変性ポリプロピレンと(C)変性ポリオレフィンと無機充填剤とをあらかじめブレンダーを用いてブレンドし、メインフィーダーから供給する方法、(A)ポリアミドと(B)未変性ポリプロピレンと(C)変性ポリオレフィンとをあらかじめブレンダーを用いてブレンドし、メインフィーダーから供給し、無機充填材を押出機のサイドフィーダーから供給する方法が挙げられ、サイドフィールする際のサイドフィード位置としては、元込め位置から吐出口までの長さを1として、元込め位置から1/5〜4/5の位置で行うことが好ましい。また事前に(A)ポリアミドと(B)未変性ポリプロピレンと(C)変性ポリオレフィンを溶融混練した後、無機充填材を溶融混練する方法なども挙げられる。
【0019】
本発明のポリアミド樹脂組成物は公知の方法で成形でき、その成形方法に関しても制限はなく射出成形、押出成形、吹込成形、プレス成形等を利用することができる。中でも射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形から選ばれる一方法を採用することが生産性に優れ工業的に本発明を実施する上で好ましい。
【0020】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、吸水による物性低下が小さいことから、この特性を活かしてウィンドレギュレータードアノブスイッチ類、ドアミラーやルームミラー、バックミラー等を車体に保持する車両用鏡体保持部品、ドアーハンドル、サンバイザーアーム、アシストグリップ、シフトノブ、シリンダーヘッドカバー、エンジン遮音カバー、タイミングベルトカバーなどのカバー類、各種スイッチやセンサーのケース類、ホイールキャップ、フューエルフィラーキャップ、チャイルドシート部品などの自動車関連部品や、自転車部品、車椅子およびベビーカー部品、椅子脚、肘掛け、手摺り、窓枠、ドアノブ、床材およびその支柱、ボルトやねじ等の生活関連部品や家具建材関連部品、パソコンの筐体など電気・電子機器関連における用途などに好適に用いることができる。
【実施例】
【0021】
以下、実施例を挙げてさらに本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。実施例および比較例に用いた測定方法を以下に示す。
【0022】
(1)粘度数
ISO 307に従って測定を行った。
使用溶媒:96%硫酸
【0023】
(2)メルトフローレイト(MFR)
ISO 1133に従って測定を行った。
測定温度:230℃、荷重:2160g、滞留時間:5分。
【0024】
(3)ガラス転移点
JIS K7196に従って、熱機器的分析(TMA)によって得られる横軸を温度、縦軸を変形量とした曲線(TMA曲線)から求められる変曲点をガラス転移点とし、測定を行った。
昇温速度:5℃/min。
【0025】
(4)機械強度
以下の標準方法に従って測定した。
引張強度、引張破断伸び(23℃、絶乾):ISO 527−1、ISO 527−2
引張強度、引張破断伸び(23℃、平衡吸水):ISO 527−1、ISO 527−2
曲げ強度、曲げ弾性率(23℃、絶乾):ISO 178
曲げ強度、曲げ弾性率(23℃、平衡吸水):ISO 178
シャルピー衝撃強度(ノッチ付)(23℃、絶乾):ISO 175。
【0026】
(5)成形品の外観
80×80×3(mm)の角板(フィルムゲート)を射出成形し得られた角板表面を目視で確認し、表面平滑性および光沢による評価を行った。
◎ 表面が平滑で光沢に優れる。
○ 表面が平滑で光沢がある。
△ 表面の平滑性が劣り、光沢がおとる。
× 表面の平滑性が悪く、光沢がない。
【0027】
参考例1 (A1)ポリアミド66の製造方法
実施例および比較例で用いた(A1)ポリアミド66は以下の方法で重合した。
【0028】
ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸1500g、イオン交換水375gを秤量し、重合缶に仕込み、常圧、窒素フロー下で攪拌しながら最終到達温度260℃とし反応させた。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。得られたペレットは95℃熱水中で20時間処理し、未反応モノマーや低重合物を抽出除去した。抽出後のペレットは80℃で50時間以上乾燥した。得られたペレットの粘度数を測定した結果、140ml/gであった。
【0029】
参考例2 (A2)ポリアミド6の製造方法
実施例および比較例で用いた(A2)ポリアミド6は以下の方法で重合した。
【0030】
ε−カプロラクタム10,000gと安息香酸2.16g、イオン交換水200gを秤量し、重合缶に仕込み、常圧、窒素フロー下で攪拌しながら最終到達温度250℃とし12時間反応させた。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。得られたペレットは95℃熱水中で15時間処理し、未反応モノマーや低重合物を抽出除去した。抽出後のペレットは80℃で50時間以上乾燥した。得られたペレットの粘度数を測定した結果、130ml/gであった。
【0031】
[実施例1]
参考例1に示した重合方法で製造された(A1)ポリアミド66を70重量部、MFR50g/10分の(B)未変性ポリプロピレン [プライムポリマー(株)製:商品名E111G]を25重量部、MFR50g/10min、ガラス転移点−14℃の(C)変性ポリオレフィン[三井化学(株)製:商品名TX1370]5重量部をタンブラーでドライブレンドした混合物100重量部に対し、ガラス繊維[日本電気硝子(株)製:商品名T−289]を55重量部の割合でニ軸押出機(Werner Pfleiderer社製:ZSK57)を用いてシリンダー設定温度290℃、スクリュー回転数200rpmの条件下で溶融混練を行った。その際、ドライブレンドした混合物を元込めで、ガラス繊維をサイドフィードした。サイドフィード位置としては元込め位置から吐出口までの長さを1として、元込め位置から3/5の位置から行った。溶融混錬した後、ストランド状のガットを冷却バスで冷却し、カッターを用いてペレットを得た。得られたペレットを、ISO1874−2に従い、日精樹脂工業(株)製の射出成形機NEX1000により、シリンダー設定温度290℃、金型表面温度80℃、スクリュー回転数120rpm、平行部流速200mm/秒、射出/冷却=20/20秒の条件でISO Type−A規格の試験片を成形し、前記の測定方法によって諸特性を調べた。その結果を表1に示す。
【0032】
[実施例2〜3]
実施例1に示した(A1)ポリアミド66と(B)未変性ポリプロピレンと(C)変性ポリオレフィンが表1に示す配合比率であること以外は、実施例1と同様にして、ペレットおよび成形品を得て諸特性を調べた。
【0033】
[実施例4]
参考例2に示した重合方法で製造された(A2)ポリアミド6を70重量部、MFR50g/10分の(B)未変性ポリプロピレン [プライムポリマー(株)製:商品名E111G]を25重量部、MFR50g/10min、ガラス転移点−14℃の(C)変性ポリオレフィン[三井化学(株)製:商品名TX1370]5重量部をタンブラーでドライブレンドした混合物100重量部に対し、ガラス繊維[日本電気硝子(株)製:商品名T−289]を55重量部の割合でニ軸押出機(Werner Pfleiderer社製:ZSK57)を用いてシリンダー設定温度260℃、スクリュー回転数200rpmの条件下で溶融混練を行った。その際、ドライブレンドした混合物を元込めで、ガラス繊維をサイドフィードした。サイドフィード位置としては元込め位置から吐出口までの長さを1として、元込め位置から3/5の位置から行った。溶融混錬した後、ストランド状のガットを冷却バスで冷却し、カッターを用いてペレットを得た。得られたペレットを、ISO1874−2に従い、日精樹脂工業(株)製の射出成形機NEX1000により、シリンダー設定温度260℃、金型表面温度80℃、スクリュー回転数120rpm、平行部流速200mm/秒、射出/冷却=20/20秒の条件でISO Type−A規格の試験片を成形し、前記の測定方法によって諸特性を調べた。その結果を表1に示す。
【0034】
[実施例5〜6]
実施例2に示した(A2)ポリアミド6と(B)未変性ポリプロピレンと(C)変性ポリオレフィンが表1に示す配合比率であること以外は、実施例2と同様にして、ペレットおよび成形品を得て諸特性を調べた。
【0035】
[比較例1]
参考例1に示した重合方法で製造された(A1)ポリアミド66を70重量部、MFR50g/10分の(B)未変性ポリプロピレン [プライムポリマー(株)製:商品名E111G]30重量部をタンブラーでドライブレンドした混合物100重量部に対し、ガラス繊維[日本電気硝子(株)製:商品名T−289]を55重量部の割合でニ軸押出機(Werner Pfleiderer社製:ZSK57)を用いてシリンダー設定温度290℃、スクリュー回転数200rpmの条件下で溶融混練を行った。その際、ドライブレンドした混合物を元込めで、ガラス繊維をサイドフィードした。サイドフィード位置としては元込め位置から吐出口までの長さを1として、元込め位置から3/5の位置から行った。溶融混錬した後、ストランド状のガットを冷却バスで冷却し、カッターを用いてペレットを得た。得られたペレットを、ISO1874−2に従い、日精樹脂工業(株)製の射出成形機NEX1000により、シリンダー設定温度290℃、金型表面温度80℃、スクリュー回転数120rpm、平行部流速200mm/秒、射出/冷却=20/20秒の条件でISO Type−A規格の試験片を成形し、前記の測定方法によって諸特性を調べた。その結果を表1に示す。
【0036】
[比較例2]
参考例1に示した重合方法で製造された(A1)ポリアミド66を50重量部、MFR50g/10分の(B)未変性ポリプロピレン [プライムポリマー(株)製:商品名E111G]を45重量部、MFR50g/10min、ガラス転移点−14℃の(C)変性ポリオレフィン[三井化学(株)製:商品名TX1370]5重量部をタンブラーでドライブレンドした混合物100重量部に対し、ガラス繊維[日本電気硝子(株)製:商品名T−289]を55重量部の割合でニ軸押出機(Werner Pfleiderer社製:ZSK57)を用いてシリンダー設定温度290℃、スクリュー回転数200rpmの条件下で溶融混練を行った。その際、ドライブレンドした混合物を元込めで、ガラス繊維をサイドフィードした。サイドフィード位置としては元込め位置から吐出口までの長さを1として、元込め位置から3/5の位置から行った。溶融混錬した後、ストランド状のガットを冷却バスで冷却し、カッターを用いてペレットを得た。得られたペレットを、ISO1874−2に従い、日精樹脂工業(株)製の射出成形機NEX1000により、シリンダー設定温度290℃、金型表面温度80℃、スクリュー回転数120rpm、平行部流速200mm/秒、射出/冷却=20/20秒の条件でISO Type−A規格の試験片を成形し、前記の測定方法によって諸特性を調べた。その結果を表1に示す。
【0037】
[比較例3]
MFR0.6g/10min、ガラス転移点−40℃のエチレン−プロピレン共重合体を5重量部、無水マレイン酸を0.8重量部、2,5−ジメチルー2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.2重量部の割合でニ軸押出機(Werner Pfleiderer社製:ZSK57)を用いてシリンダー設定温度200℃、スクリュー回転数200rpmの条件下で溶融混練を行った。溶融混錬した後、ホットカットし、無水マレイン酸変性させたエチレン−プロピレン共重合体のペレットを得た。得られた無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体のMFRは0.6g/min、ガラス転移点は−40℃であった。
【0038】
参考例1に示した重合方法で製造された(A1)ポリアミド66を70重量部、MFR50g/10分の(B)未変性ポリプロピレン [プライムポリマー(株)製:商品名E111G]を25重量部、上記で得られた無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体5重量部をタンブラーでドライブレンドした混合物100重量部に対し、ガラス繊維[日本電気硝子(株)製:商品名T−289]を55重量部の割合でニ軸押出機(Werner Pfleiderer社製:ZSK57)を用いてシリンダー設定温度290℃、スクリュー回転数200rpmの条件下で溶融混線を行った。その際、ドライブレンドした混合物を元込めで、ガラス繊維をサイドフィードした。サイドフィード位置としては元込め位置から吐出口までの長さを1として、元込め位置から3/5の位置から行った。溶融混錬した後、ストランド状のガットを冷却バスで冷却し、カッターを用いてペレットを得た。得られたペレットを、ISO1874−2に従い、日精樹脂工業(株)製の射出成形機NEX1000により、シリンダー設定温度290℃、金型表面温度80℃、スクリュー回転数120rpm、平行部流速200mm/秒、射出/冷却=20/20秒の条件でISO Type−A規格の試験片を成形し、前記の測定方法によって諸特性を調べた。その結果を表1に示す。
【0039】
[比較例4]
参考例2に示した重合方法で製造された(A2)ポリアミド6を70重量部、MFR50g/10分の(B)未変性ポリプロピレン [プライムポリマー(株)製:商品名E111G]30重量部をタンブラーでドライブレンドした混合物100重量部に対し、ガラス繊維[日本電気硝子(株)製:商品名T−289]を55重量部の割合でニ軸押出機(Werner Pfleiderer社製:ZSK57)を用いてシリンダー設定温度260℃、スクリュー回転数200rpmの条件下で溶融混練を行った。その際、ドライブレンドした混合物を元込めで、ガラス繊維をサイドフィードした。サイドフィード位置としては元込め位置から吐出口までの長さを1として、元込め位置から3/5の位置から行った。溶融混錬した後、ストランド状のガットを冷却バスで冷却し、カッターを用いてペレットを得た。得られたペレットを、ISO1874−2に従い、日精樹脂工業(株)製の射出成形機NEX1000により、シリンダー設定温度260℃、金型表面温度80℃、スクリュー回転数120rpm、平行部流速200mm/秒、射出/冷却=20/20秒の条件でISO Type−A規格の試験片を成形し、前記の測定方法によって諸特性を調べた。その結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
実施例1〜6および比較例1〜4より、(A)ポリアミドと(B)未変性ポリプロピレンと(C)変性ポリオレフィンにガラス繊維を配合して得られたポリアミド樹脂組成物の成形品は、ポリアミド樹脂本来の高い剛性、衝撃特性を保持しつつ、吸水による物性低下の抑制および良好な外観性を示す材料であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)、(B)、(C)の合計を100重量%として、(A)ポリアミド55〜90重量%、(B)未変性ポリプロピレン9〜45重量%、(C)変性ポリオレフィン1〜10重量%を配合してなるポリアミド樹脂組成物であって、(A)ポリアミドのISO 307(96%硫酸法)に従って得られた粘度数が100〜200ml/g、(B)未変性ポリプロピレンのISO 1133(温度230℃、滞留時間5min、荷重2160g)に従って測定したメルトフローレイトが1〜60g/10min、(C)変性ポリオレフィンのISO 1133(温度230℃、滞留時間5min、荷重2160g)に従って測定したメルトフローレイトが20〜80g/10min、JIS K7196(昇温速度5℃/min)に従って測定したガラス転移点が−20〜0℃であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載の(A)、(B)、(C)の合計を100重量部として、無機充填材を10〜150重量部配合してなる請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
(A)ポリアミドが(A1)ポリアミド66または(A2)ポリアミド6である請求項1または2記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載のポリアミドからなる成形体。

【公開番号】特開2010−111841(P2010−111841A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331799(P2008−331799)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】