説明

ポリアミド混合物系成形材料

【課題】工業用途及び自動車用途におけるラインを製造するに適したポリアミド混合物系成形材料を提供する。
【解決手段】ポリアミド混合物及び少なくとも1種の耐衝撃性成分を含有するポリアミド混合物系成形材料で該ポリアミド混合物が以下のポリアミドを含有する:(A)単量体単位あたり平均して少なくとも8個の炭素原子を有し20〜65重量%の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド;(B)8〜25重量%の少なくとも1種の非晶質ポリアミド及び/または微晶質ポリアミド;及び(C)単量体単位あたり平均して最大6個の炭素原子を有する1〜20重量%の少なくとも1種のポリアミド。該耐衝撃性成分は以下のものを含有する:(D)ハードセグメントとソフトセグメントで構成され、該ハードセグメントがラクタム及び/またはアミノカルボン酸に基づく10〜40重量%のポリアミドエラストマー、及び(E)0〜35重量%の非ポリアミド系エラストマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、欧州特許出願第09167002.6号(2009年7月31日出願)および欧州特許出願第10165021.6号(2010年6月4日出願)の優先権を主張する。これら全ての優先権を主張する出願の開示内容は、事実上明白な関連性があるものとして本願明細書の一部を成す。
【0002】
本発明は、独立請求項1および2の前文によるポリアミド混合物と少なくとも1種の耐衝撃性成分とを含有するポリアミド混合物系成形材料に関する。このような成形材料は、とりわけ、工業用途および自動車用途におけるライン、好ましくは真空ライン、特に好ましくはブレーキブースターラインを製造することに適している。
【背景技術】
【0003】
ポリアミド製のプラスチック管は既知であり、該管は、車両の製造において、例えばブレーキライン、油圧ライン、燃料ライン、冷却ラインおよび空気ラインのために多様な方法で使用されている(DIN73378に記載の「自動車用のポリアミド製管材料」を参照)。また、ポリアミド混合物と耐衝撃性成分を含有するポリアミド混合物系成形材料は、油圧管、特にクラッチ用ラインの製造に関する欧州特許出願公開第1942296号A1明細書から既知である。
【0004】
車両の製造において使用されるプラスチック製チューブまたはラインは、数多くの要求を満たさなければならない。ブレーキブースターラインの場合、該ラインの機能は以下のように記載できる:
【0005】
ブレーキブースターは、所望のブレーキ効果を得るために必要な作動力を減少させるために、車両のブレーキにおいて使用されている。ペダル踏力のみで自動車のディスクブレーキを作動させるためには、過大な力が必要とされるので、この装置は、特にディスクブレーキを使用する場合に必要である。乗用車および市販の小型車両の大部分に装備されている真空ブレーキブースターの場合、補助力は、負圧と大気圧との圧力差によって生じる。トラックなどの市販されている中型自動車〜大型自動車(通常7.94t以上)の場合、圧縮空気、すなわち、空気動力によるブレーキシステムを使用することによって、制動力が生じる。この場合、作動圧は約8barである。この空気式のブレーキブースターの他に、油圧式ブレーキブースターおよび電気式ブレーキブースターも存在する。
【0006】
古典的なガソリンエンジンを装備する自動車は、可燃性の燃料と空気の混合物を調製ために、部分負荷の下でスロットルを使用する必要がある。負圧は、副次的な効果として、吸気マニホールド内での吸気サイクル中においてスロットルの後方で生じる。ブレーキのペダル踏力は、吸気負圧または真空ポンプの援助により、空気式のブレーキブースター内で増幅される。VW社製のTSIエンジンのような、ガソリンを直接噴射する現在のガソリンエンジンの場合は、原則的にはスロットル有さないディーゼルエンジンの場合と同様に、当該システムからスロットルが省略されるので、独立した吸引ポンプまたは真空ポンプが必要である。逆止弁が、ブレーキブースターと真空源との間を接続するライン内に設置され、該逆止弁は、全負荷がかかっている時およびエンジン停止時の真空状態を維持するために使用される。この真空は、制動力を増加させるブレーキブースターにおいて利用できる外気に対する圧力勾配に相当する。
【0007】
真空または負圧は、通常、チューブを経由して真空発生装置からブレーキまたはブレーキブースター(BB)へ伝達される。あらゆる可能な気象条件と温度条件下で、最適に機能することを確実にするために、ブレーキブースターラインは、とりわけ、以下の要求を満たさなければならない:
【0008】
1)可撓性ラインであるブレーキブースターライン「TL52655」(フォルクスワーゲンAG社製)における材料要件:通常温度域(連続的な温度T≦120℃)、高温度域(連続的な温度T≦160℃)、充分な強度を示す温度は、少なくとも+150℃まで(ただし短期的に+160℃を越える)。一方、ブレーキブースターラインは、−40℃の温度でも安全に作動しなければならない。また、このようなブレーキブースターラインは、オゾンに対する耐性を示し、亀裂を生じることなく、繰り返し変化する気象条件(最大で20〜60サイクル)での耐久性を示すことが要求されている。
【0009】
2)ブレーキブースター用低圧パイプアッセンブリーに関する世界的な工学標準規格である「GMW14640」(ゼネラルモータース社製):型式A、通常温度域−40℃〜+110℃(ピーク温度:+120℃まで);型式B、高温度域−40℃〜+140℃(ピーク温度:+150℃まで)。この条件は、9±0.15×1.5±0.1mm;12±0.15×1.5±0.1mm;12.5±0.15×1.5±0.1mmのラインで適用される。
【0010】
3)低圧用ポリアミド(PA)製チューブの納品仕様書「DBL6270」(メルセデスベンツ社製):パイプは、+150℃以下の貯蔵温度で1000時間以上の熱劣化試験にさらされ、その後ISO179に従って、23℃と−40℃での耐衝撃性試験に付される。チューブが新しい状態において、耐衝撃性試験は23℃、−40℃および−50℃でおこなわれる。破裂圧力試験はDIN53 758に従っておこなわれる。DIN73 378およびFMVSS106/74に従う評価を、ブレーキブースターラインに対して行う。さらにDIN74 324−1およびDIN74 324−2に従う評価を、空気式のブレーキシステムに対して行う。さらに、製品規格A1160006699および規格FMVSS106を、ブレーキブースターを作動させるための真空ラインとしてのチューブに対して付加的に適用した(道路清掃車を除く)
【0011】
また、欧州特許出願公開第1329481号A2明細書および独国特許出願公開第10333005号A1明細書が先行技術として既知である。両文献は、建設車両、建設機械および建設装置、ならびに医療工学用のラインに関係する。特に、これらの明細書は、ブレーキブースター用の真空ライン、換気用ライン、耐圧ホース、空気圧ライン、制御用ライン、冷却用ライン、燃料用ライン、排出用ライン、ウインドシールド洗浄機システム用ライン、油圧式クラッチシステム用ライン、パワーステアリング用ライン、空調用ライン、ケーブル若しくはリード線の外装管、またはオイルフィルター若しくは燃料フィルターの射出成形品に関係する。欧州特許出願公開第1329481号A2明細書は、6個〜12個の炭素原子を有する直鎖状の脂肪族ジアミンと、6個〜12個の炭素原子を有する直鎖状の脂肪族または芳香族のジカルボン酸と、エーテル基の酸素1個当たり少なくとも3個の炭素原子および鎖末端に第一級アミノ基を有するポリエーテルジアミンとに基づくポリエーテルアミドを99.9重量%〜95重量%含有する成形材料を開示する。この成形材料は、異なる化学成分からなるコポリマーを0.1〜5重量%含むことにより100重量%を満たす。
【0012】
独国特許出願公開第10333005号A1明細書は、6個〜14個の炭素原子を有する直鎖状の脂肪族ジアミンと、6個〜14個の炭素原子を有する直鎖状の脂肪族または芳香族のジカルボン酸と、エーテル基の酸素1個当たり少なくとも3個の炭素原子および鎖末端に第一級アミノ基を有するポリエーテルジアミンとに基づくポリエーテルアミドを97〜80重量%含有する成形材料を開示する。この成形材料は、官能基を含有する天然ゴムを3〜20重量%含むことにより、100重量%を満たす。
【0013】
さらに、製品ベスタミド(登録商標)EX9350ブロックは、先行技術として既知である(ベスタミドはエボニックデグサ社の登録商標である)。該製品は、耐熱性、耐候性を示す耐衝撃性改質ポリアミド612エラストマーに関連し、例えばブレーキブースターライン用チューブ等のチューブの生産過程で押出加工される。
【0014】
異なる組成物を含む芳香族/脂肪族ポリアミドの混合物は、M.サントスらにより1996年に刊行された「芳香族/脂肪族ポリアミド混合物の耐衝撃性改質:組成と加工条件の効果」(Journal of Applied Polymer Science 第62巻、第1167頁〜第1177頁)により既知である。ポリアミド成分と少なくとも1種の耐衝撃性成分とを有するポリアミド混合物系成形材料が開示され、該ポリアミド混合物系成形材料は以下の組成を有する:
− 単量体単位あたり平均7個の炭素原子を有する、32重量%の非晶質ポリアミド(PA6I/6T)
− 単量体単位あたり平均6個の炭素原子を有して、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸に基づく、48重量%のポリアミド(ナイロン6)、および
− 無水マレイン酸で官能化された、20重量%のエチレン/プロピレンエラストマー(EPX)。
【0015】
米国特許第5928738号明細書には、ポリアミド混合物と少なくとも1種の耐衝撃性成分とを有するポリアミド混合物系成形材料が開示され、該ポリアミド混合物系成形材料は以下の組成を含有する:
− 単量体単位あたり平均9個の炭素原子を有する、30重量%のポリアミド6/12(グリロン社製CF62)、
− 10重量%の非晶質ポリアミド6I/6T、
− 単量体単位あたり平均6個の炭素原子を有し、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸に基づく、50重量%のポリアミド6、および
− 10重量%のエチレン/メタクリル酸エラストマー。
【0016】
米国特許第6416832号明細書には、ポリアミド混合物と少なくとも1種の耐衝撃性成分とを有するポリアミド混合物系成形材料が開示され、該ポリアミド混合物系成形材料は以下の組成を有する:
− 単量体単位あたり平均8個の炭素原子を有する、20重量%のポリアミド6/12/MXD6、
− 10重量%の非晶質ポリアミド、
− 単量体単位あたり平均6個の炭素原子を有し、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸に基づく、50重量%のポリアミド6、および
− ポリエチレン(AAEおよびPE)に基づく、20重量%のエラストマー。
【0017】
米国特許出願公開第2005/0009976号A1明細書には、ポリアミド混合物と少なくとも1種の耐衝撃性成分とを有するポリアミド混合物系成形材料が開示され、該ポリアミド混合物系成形材料は以下の組成を有する:
− 単量体単位あたり平均7個の炭素原子を有する、45重量%のポリアミドMXD6、
− 25重量%の非晶質ポリアミド、および
− 単量体単位あたり平均6個の炭素原子を有し、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸に基づく、30重量%のポリアミド(PA6−NC2)。
【0018】
米国特許出願公開第2007/0089798号A1明細書には、ポリアミド混合物と少なくとも1種の耐衝撃性成分とを有するポリアミド混合物系成形材料が開示され、該ポリアミド混合物系成形材料は以下の組成を有する:
− 単量体単位あたり平均7個の炭素原子を有する、50重量%のポリアミドポリ-メタ-キシリレンアジポアミド(MXD6)、および
− 830MPaの弾性率を示し、単量体単位あたり平均6個の炭素原子を有する50重量%の変性ポリアミド6。
【0019】
米国特許出願公開第2004/0259996号A1明細書は、ポリアミド成分と少なくとも1種の耐衝撃性成分とを有するポリアミド混合物系成形材料の生成について開示し、該ポリアミド混合物系成形材料は、ポリアミドおよびポリエステルアミド、ナノサイズの繊維充填材、ならびに耐衝撃性調整剤を含有する。エチレンプロピレンゴム(EPM)と、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)が、耐衝撃性調整剤として開示されている。
【0020】
特開2001−329165号A明細書は、短いサイクル時間を示し、射出成形の間に優れた流動性を示す強化ポリアミド組成物を開示する。該強化ポリアミド組成物は、強固な熱溶着製品または溶媒溶接製品をもたらし、96重量%〜99重量%の結晶質ポリアミドと、少なくとも2種の芳香族モノマー成分を有する、0.1〜4重量%の、部分的に非晶質のコポリアミドと、ポリアミド樹脂100重量部に対し5〜200重量部の無機充填剤とを含有する。
【0021】
欧州特許出願公開第1942296号A1明細書は、以下の組成の混合物に基づくポリアミドに基づいた成形材料を開示する:
− 単量体単位あたり平均8個の炭素原子を有する、45〜97重量%のポリアミド610、
− 0〜30重量%の、非晶質および/または微晶質のポリアミドおよび/またはコポリアミド、
− エチレンおよび/またはプロピレンに基づくコポリマー形態の、2〜20重量%の耐衝撃性成分、および
− 1〜10重量%の添加剤。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1942296号A1明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1329481号A2明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10333005号A1明細書
【特許文献4】米国特許第5928738号明細書
【特許文献5】米国特許第6416832号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0009976号A1明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2007/0089798号A1明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2004/0259996号A1明細書
【特許文献9】特開2001−329165号A明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第1942296号A1明細書
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】M.サントスらにより1996年に刊行された「芳香族/脂肪族ポリアミド混合物の耐衝撃性改質:組成と加工条件の効果」(Journal of Applied Polymer Science 第62巻、第1167頁〜第1177頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、先行技術で既知の成形材料から生産されるチューブの測定値に少なくとも匹敵する値をもたらすチューブを製造できる、ポリアミド混合物と耐衝撃性成分とを含有する代替的なポリアミド混合物系成形材料を提供することである。好ましい用途においては高い可撓性が要求されるので、新規な成形材料は、可能であれば1500MPaよりも小さい弾性率を示すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この目的は、請求項1に記載のポリアミド混合物系成形材料を用いる本発明の第1の態様により達成される。本発明によるポリアミド混合物系成形材料は、ポリアミド混合物と、少なくとも1種の耐衝撃性成分とを含有し、該ポリアミド混合物が以下のポリアミドを含有することを特徴とする:
(A)単量体単位あたり平均して少なくとも8個の炭素原子を有し、>40J/gの融解エンタルピーを示す、20〜65重量%の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド;
(B)8〜25重量%の少なくとも1種の非晶質ポリアミドおよび/または4〜40J/gの範囲、特に4〜25J/gの範囲の融解エンタルピーを示す微晶質ポリアミドおよび、
(C)単量体単位あたり平均して最大6個の炭素原子を有し、好ましくは、>40J/gの融解エンタルピーを示す、1〜20重量%の少なくとも1種のポリアミド。
【0026】
第1の形態によるポリアミド混合物系成形材料は、以下の成分を含有する耐衝撃性成分で更に特徴づけられる:
(D)ハードセグメントとソフトセグメントで構成され、該ハードセグメントがラクタムおよび/またはアミノカルボン酸に基づき、該ソフトセグメントが好ましくはポリエーテルおよび/またはポリエステルに基づく、10〜40重量%のポリアミドエラストマー、例えば、ポリエーテルアミドおよび/またはポリエステルエーテルアミドおよび/またはポリエステルアミドなど、および
(E)0〜35重量%の非ポリアミド系エラストマー。
【0027】
この目的は、請求項2に記載のポリアミド混合物系成形材料を用いる本発明の第2の態様により達成される。本発明によるポリアミド混合物系成形材料は、ポリアミド混合物と、少なくとも1種の耐衝撃性成分とを含有し、該ポリアミド混合物が以下のポリアミドを含有することを特徴とする:
(A)単量体単位あたり平均して少なくとも8個の炭素原子を有し、>40J/gの融解エンタルピーを示す、50〜85重量%の、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド、
(B)2〜15重量%の少なくとも1種の非晶質および/または4〜40J/gの範囲、特に4〜25J/gの範囲の融解エンタルピーを示す微晶質ポリアミド、および、
(C)単量体単位あたり平均して最大6個の炭素原子を有し、好ましくは、>40J/gの融解エンタルピーを示す、2〜15重量%の少なくとも1種のポリアミド。
【0028】
第2の形態によるポリアミド混合物系成形材料は、以下のものを含有する耐衝撃性成分で更に特徴づけられる:
(D)ハードセグメントとソフトセグメントで構成され、該ハードセグメントがラクタムおよび/またはアミノカルボン酸に基づき、該ソフトセグメントが好ましくはポリエーテルおよび/またはポリエステルに基づく、1〜20重量%のポリアミドエラストマー、例えば、ポリエーテルアミドおよび/またはポリエステルエーテルアミドおよび/またはポリエステルアミドなど、および
(E)0〜35重量%の非ポリアミド系エラストマー。
【0029】
好ましくは、単量体単位あたり平均して最大6個の炭素原子を有する半結晶質のポリアミドが、本発明における2つの態様において成分(C)として選択される。さらに、好ましくは、成分(D)のポリアミドエラストマーは、ポリエーテルアミド、ポリエステルエーテルアミドおよび/またはポリエステルアミドから成る群から選択される。
【0030】
重量%で表される、本発明によるいずれの態様に関連する全ての値は、必要に応じて常套の添加剤が補充されるポリアミド混合物系成形材料の総量に基づき、全体で100重量%となる。
【0031】
本発明による更なる特徴と好ましい実施態様は、従属請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1は、本発明による成形材料で生産された成形体、および比較用の成形材料で生産された成形体における、対数尺度による剪断弾性率曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の定義は、本発明との関係において使用される。
「ポリアミド」という用語は、以下のように理解される:
−ホモポリアミド、および
−コポリアミド。
【0034】
「ポリアミド混合物」という用語は、以下のように理解される:
− ホモポリアミドとコポリアミドとの混合物(ブレンド)
− ホモポリアミドの混合物、および
− コポリアミドの混合物。
【0035】
「ポリアミド混合物系成形材料」という用語は、ポリアミドおよび/またはポリアミド混合物を含有する成形材料を意味すると理解される。このポリアミド混合物系成形材料は添加剤を含有することができる。
【0036】
「構造単位」という用語は、アミノカルボン酸および/またはジアミン、およびジカルボン酸で構成される鎖内における、ポリアミドの最小繰返し単位を意味する。
【0037】
「繰返し単位」という用語は、「構造単位」と同義語である。
【0038】
このような構造単位の選択例を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1において、構造単位は、各種ポリアミドに関する角括弧内に記載され、指数nが付与されている。表1に示されるように、AA/BB型(例えばPA66またはPA612)と称されるポリアミドの構造単位は、複数の単量体単位、すなわちジアミンとジカルボン酸の単量体単位を相互に補充して含有する。
【0041】
「単量体単位あたりの炭素原子の平均数(φ)」という用語は、使用されるモノマー中の炭素原子の総数を、使用したモノマー数で割ることにより計算される炭素原子数であると理解される。例えば、以下の例が挙げられる:
PA6 φ 単量体単位あたり平均6個の炭素原子[6:1=6]
PA66 φ 単量体単位あたり平均6個の炭素原子[(6+6):2=6]
PA11 φ 単量体単位あたり平均11個の炭素原子[11:1=11]
PA612 φ 単量体単位あたり平均9個の炭素原子[(6+12):2=9]
PA612/1012 φ 単量体単位あたり平均10個の炭素原子
[{(6+12)+(10+12)}:4=10]。
【0042】
単量体単位あたりの炭素原子の平均(φ)数は、整数でなくてもよい。
【0043】
さらに、ポリアミドは、ジアミン、ジカルボン酸、ラクタムおよびアミノカルボン酸から成る群から選択される直鎖状および/または分枝鎖状の脂肪族および/または脂環式モノマーに基づいて構成される。ジアミン、ジカルボン酸、ラクタムおよびアミノカルボン酸は、使用可能な4種類のモノマーであり、これらに基づくポリアミドの各単量体中に存在する。それは以下のように分類される:
− 単量体単位あたり平均して少なくとも8個の炭素原子を有するポリアミド、例えば、PA11、PA12、PA412、PA414、PA418、PA46/418、PA610、PA612、PA614、PA618、PA106およびPA106/10Tなど、− 非晶質および/または微晶質ポリアミド(なお、微晶質ポリアミドは4〜40J/gの範囲、特に4〜25J/gの範囲の融解エンタルピーを示す)、例えば、PA MACMI/MACMT/12、PA MACMI/12およびPA PACM12など、および− 単量体単位あたり平均して最大6個の炭素原子を有するポリアミド、例えばPA6、PA46およびPA66など。
【0044】
ポリアミドを生成するためのモノマーは以下のものから選択してもよい:
【0045】
ジカルボン酸は以下の群から選択できる:脂肪族でC-C44の二酸(diacid)、脂環式でC-C36の二酸、芳香族の二酸(好ましくはTPS、IPS、NDS)、ならびにこれらの混合物および組合せ。好ましくは、ジカルボン酸は以下の群から選択される:アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸およびこれらの混合物、特に好ましくは、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、日本酸、シクロヘキサンジカルボン酸(特にシス−および/またはトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸および/またはシス−および/またはトランス−シクロヘキサン1,3−ジカルボン酸(CHDA))、36個または44個の炭素原子を有する二量体脂肪酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタリンジカルボン酸。
【0046】
好ましくは、ジアミンは以下のものから選択される:分枝鎖状または非分枝鎖状の脂肪族のC-C18のジアミン、脂環式でC-C20のジアミン、芳香族核を有するジアミン、ならびにこれらの混合物および組合せ。直鎖状または分枝鎖状脂肪族ジアミンの例には以下のものが含まれる:1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン(MPMD)、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン(OMDA)、1,9−ノナンジアミン(NMDA)、1,10−デカンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン(MODA)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン(NDT)、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン(INDT)、5−メチル−1,9−ノナンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,13−トリデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン−テレフタレート(TMDT)、イソホロンジアミン(IPD)および1,18オクタデカンジアミン。
【0047】
脂環式ジアミンとして以下のものを使用できる:シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス−(アミノメチル)−シクロヘキサン(BAC)、イソホロンジアミン、ノルボナンジアミン、ノルボナンジメチルアミン、ビス(アミノメチル)ノルボナン、4,4'−ジアミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、2,2−(4,4'−ジアミノジシクロヘキシル)プロパン(PACP)および3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタン(MACM)。言及されるアリール脂肪族ジアミンは、m−キシレンジアミン(MXDA)およびp−キシレンジアミン(PXDA)である。使用される全ての短縮名称および略称は、ISO基準1874−1に対応する(表A.3:非直鎖状で脂肪族の単量体単位に関連する符号参照)。
【0048】
好ましくは、ラクタムまたはアミノジカルボン酸は、以下のものよりなる群から選択される:カプロラクタム、ラウリンラクタム、アミノカプロン酸、アミノラウリン酸およびアミノウンデカン酸。好ましくは、4個、6個、7個、8個、11個または12個の炭素原子を有するラクタムまたはα,ω−アミノ酸である。これらのラクタムは、ピロリジン−2−オン(4個の炭素原子)、ε−カプロラクタム(6個の炭素原子)、オエナンセラクタム(7個の炭素原子)、カプリルラクタム(8個の炭素原子)、ラウリノラクタム(12個の炭素原子)である。または、該α,ω−アミノ酸は、1,4−アミノブタン酸(4個の炭素原子)、1,6−アミノヘキサン酸(6個の炭素原子)、1,7−アミノヘプタン酸(7個の炭素原子)、1,8−アミノオクタン酸(8個の炭素原子)、1,11−アミノウンデカン酸(11個の炭素原子)および1,12−アミノドデカン酸(12個の炭素原子)である。
【0049】
当業者は、異なるタイプのポリアミド(AA/BB型またはAB型のホモポリアミド、あるいはコポリアミド)を生成させるためにどのようなタイプのモノマーまたはどのようなモノマーを使用しなければならないかについて知悉している。
【0050】
本発明は、既知の技術によって予測できるものではない:サントスらは、耐衝撃性調整剤としてポリアミドエラストマーの使用について言及せず、また、単量体単位あたり平均して少なくとも8個の炭素原子を有する半結晶性ポリアミドの使用についても言及していない。
【0051】
米国特許第5928738号明細書、同6416832号明細書および米国特許出願公開第2005/0009976号A1明細書は、耐衝撃性調整剤としてポリアミドエラストマーの使用について教示していない。
【0052】
米国特許出願公開第2007/0089798号明細書は、非晶質および/または微晶質のポリアミドの使用について教示せず、また、耐衝撃性調整剤としてポリアミドエラストマーの使用について教示していない。PA6成分の弾性率は比較的低いが、PA6はソフトセグメントを有さないので、該PA6成分は本発明の範囲内であるポリアミドエラストマーに関係しない。
【0053】
ナノサイズで繊維質の充填材を含有させること、および耐衝撃性調整剤として非ポリアミド系のエラストマーを含有させることは、米国特許出願公開第2004/0259996号A1明細書において高い関心が示されている。単量体単位あたり平均して最大6個の炭素原子を有するポリアミドと、非晶質および/または微晶質ポリアミドと、単量体単位あたり平均して少なくとも8個の炭素原子を有するポリアミドとを組合せて使用することに関する教示は、米国特許出願公開第2004/0259996号A1明細書に開示されていない(このことは、特開2001-329165号A1明細書および欧州特許出願公開第1942296号A1明細書にも開示されていない。)
【0054】
本発明は、本発明を例証するためであって、本発明を限定するものではない添付図面を参考にすることによって、より詳細に説明される。
【0055】
図1は、本発明による成形材料で生産される成形体、および比較用の成形材料で生産される成形体における、対数尺度での剪断弾性率曲線を示す。
【0056】
図1は、温度に依存する剪断弾性率曲線を示す。ブレーキブースターラインなどの用途で好ましく使用される比較例1(VB1)は、−25℃で約800MPaの貯蔵弾性率を有し、180℃で約10MPa貯蔵弾性率を有する極めて平坦な曲線を示す。比較例VB2およびVB3は、180℃で約60MPaの貯蔵弾性率を示す。本発明による試験V2およびV7は、180℃で少なくとも20MPaの貯蔵弾性率を示し、−25℃で700MPaよりも低い貯蔵弾性率を示す。
【0057】
本発明によるポリアミド混合物系成形材料のポリアミド混合物の成分Aは、単量体単位あたり平均して少なくとも8個の炭素原子を有するポリアミドに関する。これらのポリアミドは、ジアミン、ジカルボン酸、ラクタム、およびアミノカルボン酸の群から選択される直鎖状および/または分枝鎖状の脂肪族および/または脂環式および/または芳香族モノマーに基づいて構成される。該ポリアミドは、例えば、PA11、PA12、PA610、PA612、PA1010、PA106、PA106/10T、PA614およびPA618、またはこれらの混合物などである。成分Aの半結晶性ポリアミドが使用される場合、好ましくは、この半結晶性ポリアミドは、融解エンタルピー>40J/gを示す。
【0058】
成分Bの微晶質ポリアミドまたはコポリアミドがそれぞれ使用される場合、該微晶質のポリアミドおよび/またはコポリアミドは、4〜40J/gの範囲、特に4〜25J/gの範囲の融解エンタルピーを示すことが好ましい(示差走査熱量測定系(DSC)を使用して測定する)。好ましくは、このような微晶質ポリアミド/コポリアミドは、別の成分を使用せずに加工される場合に、透明な成形品をもたらすポリアミドに関する。
【0059】
微晶質ポリアミドは、脂肪族、脂環式および/または芳香族モノマーで構成され、ホモポリアミドとコポリアミドとを共に含有する。微晶質ポリアミドは、もはや完全な非晶質ではない。しかしながら、これらは、光の波長よりも小さくて目に見えない微晶質構造に基づく結晶を有する。このため、微晶質ポリアミドは、肉眼では透明にみえる。
【0060】
透明なホモポリアミド(例えばPA MACM12およびPA PACM12など)、および透明なコポリアミド(PA12/MACMIおよびPA MACM12/PACM12)、ならびにこれらの混合物またはブレンドは、成分Bに対して特に好ましい。国際特許出願公開第2007/087896号A1明細書において既知であるPA MACMI/MACMT/12が特に好ましい。
【0061】
好ましくは、本発明によるポリアミド混合物系成形材料において、ポリアミドPA MACMI/MACMT/12は以下のものによって形成される:
− 30〜45重量部のMACMI;
− 30〜45重量部のMACMT、および
− 10〜40重量部のLC12。
【0062】
好ましい実施態様において、成分Bは、脂環式ジアミンおよび/または芳香族核を有するジアミン(例えばMXDAまたはPXDA)に基づく、非晶質および/または微晶質ポリアミドおよび/またはコポリアミドに関する。このポリアミドは、10個〜18個の炭素原子を有する脂環式ジアミンおよび脂肪族ジカルボン酸に基づいて形成されることが好ましい。更なる置換基を有するか、または有さないMACMおよび/またはPACMおよび/またはIPD(イソホロンジアミン)に関する脂環式ジアミンが特に好ましい。この成分B全体において、MACM12/PACM12等の10個〜18個の炭素原子を有する脂肪族のジカルボン酸をいずれの場合も含有する、MACM/PACM型のコポリアミドが特に好ましい。この場合、PACM濃度は55モルパーセントより高く、特に70モルパーセントより高いことが特に好ましい。MACMを表すISO表記はビス-(4-アミノ-3-メチル-シクロヘキシル)-メタンであり、商品名ラロミン(Laromin)(登録商標)C260型の3-3’-ジメチル-4-4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンとして市販されている(CAS No.6864−37−5)。MACMの用語の後にある数字は、ジアミンMACMと重合する脂肪族で直鎖状のジカルボン酸を表す(C12の場合、例えばDDS、ドデカン二酸を表す)。PACMを表すISO表記は、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)-メタンであり、商品名ジシカン型の4’4-ジアミノジシクロヘキシルメタンとして市販されている(CAS No.1761−71-3)。
【0063】
既に説明したように、成分Bは、非晶質ポリアミドおよび/またはコポリアミドを二者択一的にまたは共に含有してもよく、この場合、好ましくは4J/g未満の融解エンタルピーを示す(示差走査熱量測定系(DSC)を使用して測定する)。好ましくは、成分Bは、+120℃よりも高く、好ましくは+140℃よりも高く、より好ましくは+150℃よりも高いガラス転移温度を示す。
【0064】
さらに好ましい実施態様において、成分Bは、脂肪族および/または脂環式ジアミンに基づく非晶質ポリアミドおよび/またはコポリアミドである。好ましくはMACMI/12型の非晶質ポリアミドが使用され、この場合、ラウロラクタムの含有量は、好ましくは35モルパーセントより低く、特に20モルパーセントより低い。いずれの場合においても、表記「I」はイソフタル酸を表す。したがって、成分Bは、8個〜18個の炭素原子を有する芳香族のジカルボン酸、または6個〜36個の炭素原子を有する脂肪族のジカルボン酸に基づくポリアミド、あるいはこのようなホモポリアミドおよび/またはコポリアミドの混合物であってもよい。しかしながら、TPS(テレフタル酸)および/またはIPS(イソフタル酸)が関連する芳香族のジカルボン酸と、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸に基づくポリアミドが好ましい。(透明な)ホモポリアミドおよび/またはコポリアミドは、以下のものを含有する群から選択されるポリアミドが有利である:
【0065】
PA6I/6T、PA TMDT、PA NDT/INDT、PA 6I/MACMI/MACMT、PA 6I/PACMT、PA 6I/6T/MACMI、PA MACMI/MACM36およびPA6I;ラクタム含有ポリアミド、例えばPA12/PACMI、PA12/MACMI、PA12/MACMT、PA6/6IおよびPA6/IPDT等、およびこれらのポリアミドの任意の混合物。さらに、以下の系も可能である:PA MACM12、PA MACM18またはPA PACM12、PA MACM12/PACM12、PA MACM18/PACM18、PA6I/PACMI/PACMT、またはこれらから形成される混合物。ポリアミドの名称または略称は、ISO1874-1に従って与えられる(上記各モノマーの詳細を参照)。例えば、「I」はイソフタル酸、「T」はテレフタル酸、「TMD」はトリメチルヘキサメチレンジアミン、「IPD」はイソホロンジアミンを表す。さらに、ホモポリアミドおよび/またはコポリアミドは、少なくとも1種のジカルボン酸と、芳香族コアを有する少なくとも1種のジアミンに基づくポリアミド、好ましくは、MXD(メタ-キシレンジアミン)と、芳香族および/または脂肪族のジカルボン酸に基づくポリアミドが有利に可能であり、同様に、PA6I/MXDIが好ましい。
【0066】
本発明によるポリアミド混合物系成形材料のポリアミド混合物の成分Cは、PA6、PA46およびPA66などの、単量体単位あたり平均して最大6個の炭素原子を有するポリアミドに関連する。これらのポリアミドは半結晶性である。
【0067】
本発明によるポリアミド混合物系成形材料の成分Dは、ハードセグメントとソフトセグメントからなるポリアミドエラストマー、例えば、ポリエーテルアミド、ポリエステルエーテルアミドおよび/またはポリエステルアミドなどに関する。本発明に関して選択されるポリアミドエラストマーのハードセグメントは、ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸に基づく。これらは、例えばアミノカプロン酸、アミノウンデカン酸、アミノラウリン酸、カプロラクタム、ラウロラクタムまたはこれらの混合物に基づく。ソフトセグメントの例には以下のものが含まれる:ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシエチレンジオール、ポリオキシエチレンジカルボン酸、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシプロピレンジカルボン酸、ポリオキシテトラメチレンジアミン、ポリオキシテトラメチレンジオール、ポリオキシテトラメチレンジカルボン酸、ポリカプロラクトンジオール、C36−ダイマー−脂肪−ジオール、200〜3000g/モルの範囲の数平均モル質量を有するポリオキシアルキレンジオール(直鎖状または分枝鎖状のC〜C-アルキレン)、これらのコポリマーまたは混合物、ならびに上記ジオールを含むコポリマー。特に、A、Bが相互に独立してアミンまたはアルコール残基またはカルボン酸を示し、X、Y、Zが相互に独立して、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシテトラメチレンからなる単量体単位、オリゴマー単位またはポリマー単位を示すA−X−Y−Z−B構造のポリエーテル誘導体が含まれる。このようなポリエーテルセグメントは、フンツマン社製の商品名「エラスタミン(Elastamin)」として市販されている。
【0068】
既に記載したように、ポリアミドエラストマーは、ポリアミド(=ハードセグメントまたはハードブロック)と、ポリエーテル単位および/またはポリエステル単位などのソフトセグメント単位とを含有する。該ポリアミドエラストマーは、例えば、反応性の末端基を有する各単位の重縮合によって生成される。ポリアミド単位(ポリアミドセグメント)は、セグメントAの一末端または両末端において、カルボキシル末端および/またはアミン末端であってもよい。ソフトセグメントは、構造にもよるが、例えば、アミン末端、カルボキシル末端またはヒドロキシル末端である。好ましいソフトセグメント単位は、エステルまたはポリエステルおよびポリエーテル単位である。好ましくは、エステル単位またはポリエステル単位は、カルボキシル末端またはヒドロキシル末端であり、一方で、好ましくは、ポリエーテル単位は、ヒドロキシル末端基、カルボキシル末端基またはアミノ末端基を有する。このことは、ハードセグメントとソフトセグメントを結合させるための以下の可能性をもたらす。
【0069】
(1)ポリアミド単位はカルボキシル基を末端基とし、エステルまたはポリエステル単位はヒドロキシル基を末端基とする場合。その結果、生成されるコポリマーはポリエステルアミドである。
【0070】
(2)ポリアミド単位がカルボキシル基を末端基とし、ソフトセグメントがアミン基を末端基とする場合。その結果、ソフトセグメントがポリエーテルである典型例において、生成されるコポリマーはポリエーテルアミドである。
【0071】
(3)ポリアミド単位がカルボキシル基を末端基とし、ソフトセグメントがヒドロキシル基を末端基とする場合。その結果、ソフトセグメントがポリエーテルである典型例において、生成されるコポリマーはポリエーテルエステルアミドであり。
【0072】
(4)ポリアミド単位がカルボキシル基を末端基とし、ソフトセグメントがアミノ基を末端基とし、さらに存在するソフトセグメントがヒドロキシル基を末端基とする場合。その結果、ソフトセグメントがポリエーテルである典型例において、生成されるコポリマーはブロック・コポリエーテル−エステル−エーテルアミドである。
【0073】
(5)ポリアミド単位がアミン基を末端基とし、ソフトセグメントがカルボキシル基を末端基とする場合。その結果、ソフトセグメントがポリエーテルである典型例において、生成されるコポリマーはポリエーテルアミドである。
【0074】
(6)ポリアミド単位がアミン基を末端基とし、ソフトセグメントおよび更なるポリエステル単位がカルボキシル基を末端基とする場合。その結果、ソフトセグメントがポリエーテルである典型例において、生成されるコポリマーはポリエーテル−エステル−エステルアミドである。
【0075】
(7)ポリアミド単位がアミン基を末端基とし、ソフトセグメントがカルボキシル基を末端基とする場合。その結果、ソフトセグメントがポリエーテルである典型例において、生成されるコポリマーはポリエーテルアミドである。
【0076】
上記の可能性は、単なる例に過ぎず、本発明に関して最終的または限定的な方法ではないことを理解するべきである。
【0077】
ポリアミドエラストマーの生成は、ポリアミドエラストマーの種類に基づいて、種々の負圧下で行われる。強力な真空ポンプを具備する特別なオートクレーブが、この目的のために必要とされる。欧州特許出願公開第1329481号A2明細書および独国特許出願公開第10322005号A1明細書は、ポリアミドエラストマーを生成するために、真空または28mbarの全圧が必要であると教示している。本発明による特定の実施態様において、耐衝撃性成分であるポリアミドエラストマーは、300mbar以上の全圧下で、常套の重合用オートクレーブ内で生成される。
【0078】
好ましくは、本発明によるポリアミド混合物系成形材料は、成分Eがエチレン−α−オレフィン−コポリマー、特に好ましくはEPMエラストマーおよび/またはEPDMエラストマー(エチレン-プロピレン-ゴムまたはエチレン-プロピレン-ジエン-ゴム)であることを特徴とする。例えば、エラストマーは、20〜96重量%のエチレン、好ましくは25〜85重量%のエチレンを含有するエチレン−C3-12−α−オレフィン−コポリマーに基づくものであってもよい。特に好ましくは、C3-12−α−オレフィンは、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンおよび/または1−ドデセンから成る群から選択され、特に好ましくは、成分Eはエチレン-プロピレン-ゴムおよび/またはLLDEP(直鎖状低密度ポリエチレン)および/またはVLDPE(超低密度ポリエチレン)である。
【0079】
あるいは、またはさらに(例えば混合物の場合)、成分Eは、好ましくは25〜85重量%のエチレンを含有し非共役ジエンが最大10重量%以下の範囲で存在する非共役ジエン含有のエチレン−C3-12−α−オレフィンに基づく、ターポリマーであってもよい。特に好ましくは、C3-12−α−オレフィンは、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンおよび/または1−ドデセンから成る群から選択されるオレフィンに関連し、および/または、好ましくは、非共役のジエンは、ビシクロ(2.2.1)ヘプタジエン、ヘキサジエン−1,4、ジシクロペンタジエンおよび/または特に5−エチリデンノルボルネンから成る群から選択される。
【0080】
また、成分Eに関して、エチレン−アクリレートコポリマーを選択してもよい。成分Eに関してさらに可能な形態は、エチレン−ブチレンコポリマー、ニトリルゴム(例えばNBR、H−NBR)、シリコンゴム、EVAおよび国際特許出願公開第2005/033185号A1明細書に記載されているマイクロゲル、あるいはこのような系を含有する混合物(ブレンド)である。
【0081】
好ましくは、成分Eは、ポリアミドと充分に良好な結合性を示す濃度で、主鎖ポリマーと、不飽和ジカルボン酸無水物、不飽和ジカルボン酸または不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステルとの熱反応またはラジカル反応により導入される酸無水物基を含有する。好ましくは、この目的に関する試薬は以下の群から選択される:マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノブチルエステル、フマル酸、アコニット酸、および/またはイタコン酸無水物。好ましくは、0.1〜4.0重量%の不飽和酸無水物が耐衝撃性成分E上にグラフト化され、あるいは、不飽和ジカルボン酸無水物またはその前駆体が別の不飽和モノマーと共にグラフト化される。一般に、グラフト化度は、好ましくは0.1〜1.0%の範囲、特に好ましくは0.3〜0.7%の範囲である。
【0082】
また、エチレン−プロピレンコポリマーとエチレン−ブチレンコポリマーの混合物も成分Eとして好ましく使用でき、この場合、無水マレイン酸によるグラフト化度(MAHグラフト化度)は、0.3〜0.7%である。このような生成物は、三井化学社(日本)製の商品名「タフマーMC201」として市販されている。
【0083】
成分Eに関して使用可能な上述の系は、混合物の状態で使用してもよい。市販されている添加剤、例えば、安定剤(例えば、無機および有機のUV安定剤および熱安定剤)、柔軟剤、ラジカル捕獲剤、成核剤、補助剤、染料、難燃剤、充填剤、機能性物質、滑剤、帯電防止剤(例えばすす)、補強剤(例えば、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、ガラス粒子)および/または顔料、あるいはこれらの組合せまたは混合物などは、必要に応じてポリアミド混合物系成形材料に混合される。ガラス繊維に関しては、円形断面状のものおよび/または偏平(非円形)断面状のものを使用できる。
【0084】
欧州特許出願公開第1416010号A2明細書は、例えばポリアミドナノ複合材料の生成方法を開示し、この方法によると、有機的に改質された層状珪酸塩を、ポリアミドナノ複合材料の溶融物中に、最大10重量%(好ましくは2.5〜6重量%)の限界濃度で添加できる。100nm以下の平均粒径を有する剥離した層状珪酸塩が無機物として使用されている。三層型(2:1)の好ましく使用されるフィロ珪酸塩(層状珪酸塩)は、マイカ(例えば、モスコバイト、パラゴナイト、金雲母、黒雲母、レピドライト、マーガライト)、スメクタイト(例えば、モンモリノナイト、ヘクトライト)およびバーミキュライトを含有する。このように有機的に改質された層状珪酸塩は、射出成形部品および押出パイプにおける補強剤として使用できる。
【0085】
好ましくは、本発明によるポリアミド混合物系成形材料は、成形品の生産、特に押出品または射出成形品の生産に使用される。成形品は、好ましくは押出パイプまたは押出ラインであり、特に好ましくは単一層として成形される。
【0086】
円形または偏平状のガラス繊維および/または層状珪酸塩に加えて、更なる充填剤、例えばガラスパール、滑石、CaCOまたはカオリン粒子を、射出成形成分および押出パイプ中に混合してもよい。自動車用のラインには以下のものが含まれる:ブレーキブースターライン、冷却水用ライン、吸気用ライン、加熱用ライン、排気用ライン、油圧式または空気式のブレーキライン。自動車用の全ての媒体ラインは、例えば、ブレーキブースターライン、ターボ過給機用のブローバイラインおよび真空制御ラインを対象としてもよい。オイル用ラインおよびパワーステアリング用ラインを対象としてもよい。
【0087】
固定構造物用のラインには以下のものが含まれる:排水用ライン、雨水用ライン、空気圧ポスト用ライン、暖房オイル用ライン、長距離暖房用ライン、冷水用ライン、熱水用ラインおよび飲料水用ライン、ならびに電線用保護パイプ。
【実施例】
【0088】
以下の例は、実施例を介してより詳細に、本発明によるポリアミド混合物系成形材料を製造することについて説明するが、決してこれらに限定されない。
【0089】
以下の化学系が使用できる:
成分A=単量体単位あたり平均して少なくとも8個の炭素原子を有する半結晶性ポリアミド;
PA610: ηrel=1.9〜2.25を示すポリアミド610[エムス−ケミAG社製(スイス)]
PA612: ηrel=2.0〜2.25を示すポリアミド612[エムス−ケミAG社製(スイス)]
【0090】
成分B=非晶質および/または微晶質ポリアミド:
PA MACMI/MACMT/12: ηrel=1.5〜1.6を示し、ガラス転移温度(Tg)が+190℃である非晶質ポリアミド[エムス−ケミAG社製(スイス)]
【0091】
成分C=単量体単位あたり平均して最大6個の炭素原子を有するポリアミド:
PA6: ηrel=3.35〜3.5を示すポリアミド6[エムス−ケミAG社製(スイス)]
PA66:RADIOPOL A45、ラディーチ化学社製(イタリア)(ηrel=2.7を示すポリアミド66)
【0092】
耐衝撃性成分:
成分D=ポリアミドエラストマー:
ポリアミドエラストマー: ηrel=1.75〜1.9を示し、ハードセグメントがPA6に基づくポリエーテルアミド[エムス−ケミAG社製(スイス)]
【0093】
成分E=非ポリアミド系エラストマー:
非ポリアミド系エラストマー: タフマーMC201、三井化学社製(日本)(無水マレイン酸でグラフト化されたエチレン−ブチレンコポリマーとエチレン−プロピレンコポリマーとの混合物)。
【0094】
いわゆる配合物またはポリアミド混合物系成形材料の製造は、ライストリッツ社製のミクロ27型2軸押出機(d=27mm、L/D=40、10ハウジング)を使用しておこなった。本発明によるポリアミド混合物系成形材料の全成分を、供給装置内(領域1)に投入した。成形材料を、150〜200rpm(1分間当りの回転数)のスクリュー速度、および+100℃〜+300℃の範囲のシリンダー温度、並びに1時間あたり12kgの処理量で調製し、その後粒状にした。該粒状物を別の工程に付す前に、+80℃で24時間乾燥させた。
【0095】
その後、混合物を、アルバーグ社製の万能型の320-210-750(ヒドロニカ)射出成形機を使用して、+220℃〜+280℃のシリンダー温度、および+20℃〜+80℃の成形温度で、所望の試験体に成形した。スクリュー速度は15〜400rpmであった。
【0096】
大きさが9×1.5mm〜12.5×2.1mmである試験用パイプの製造を、少なくとも1個の押出機、パイプ用の押出ダイ、真空タンクを有する較正装置および冷却槽を具備するノキア-メイルファー社製のパイプ押出装置と、それに続く引抜き装置および切断装置を使用して製造した。
【0097】
使用するポリアミド成形材料を、パイプの製造前に、+80℃で約8時間乾燥させた。予備乾燥した材料を、漏斗を介して3ゾーンスクリュー内に投入し、+220℃〜+280℃のシリンダー温度(マス温度:240℃〜280℃)で融解させて均質化し、いわゆるパイプ用押出しダイを介して押出した。可塑性を保持する予備成形品は、較正装置内の真空タンク中(全圧:100〜900mbar)で予備成形品を成形する較正装置(例えば、スリーブ較正装置)を介し、引抜き装置を用いて引き出される。次いで、成形されたパイプは、引抜き速度に応じた適切な時間冷却される(冷却区画の長さは5〜20mが好ましい)。所望の冷却後または冷却区画の通過後(冷却槽の温度を+10℃〜+20℃とした)、パイプを巻き取るか切断した。引抜き速度は20〜100m/分であった。各組成物を表2〜表4並びに表5および表6に示す。
【0098】
測定を以下の基準に従い、以下の試験対象物についておこなった:
引張弾性率: ISO527試験(引張速度1mm/分);ISO引張棒、規格:ISO/CD3167;A1型、170×20/10×4mm、温度+23℃
【0099】
引張強度および破断伸び:ISO527試験(引張速度50mm/分);ISO引張棒、規格:ISO/CD3167、A1型、170×20/10×4mm、温度+23℃
【0100】
シャルピー耐衝撃試験:ISO179/*eU、ISO試験棒、規格:ISO/CD3167、91型、80×10×4mm、温度+23℃
*1=非計装化
*2=計装化
【0101】
ノッチ付シャルピー衝撃試験:ISO179/*eU、ISO試験棒、規格:ISO/CD3167、91型、80×10×4mm、温度+23℃および−30℃;
*1=非計装化
*2=計装化
【0102】
ガラス転移温度(T):ISO規格11357-11-2;粒状物
【0103】
溶融温度(T):ISO規格11357-11-2;粒状物
【0104】
融解エンタルピー(ΔH):ISO規格11357-11-2;粒状物
【0105】
パイプの破裂圧力:DIN73378;+23℃
【0106】
示差走査熱量測定(DSC)を昇温速度20K/分で行った。
【0107】
温度20℃での、0.5重量%のm-クレゾール溶液(すなわち、100mlの溶液中に0.5gのPAが存在する)における、PA610、PA612、非晶質PA、ポリアミドエラストマーおよび配合物に関する相対粘度をDIN EN ISO307に従って測定した;1重量%の硫酸溶液(すなわち、100mlの溶液中に1gのPAが存在する)におけるPA6に関する相対粘度を同様に測定した。
【0108】
+275℃でのメルトボリュームフローレイト(MVR)をISO1133に従って測定した。真空耐性を、940mbarの真空下、温度を徐々に昇温させた状態で測定した。破裂したパイプ上の温度を測定した。
【0109】
アントンパール社製のフィジカMCR301を使用して、1.5%の歪みと1Hzの振動数、および昇温速度を4K/分とする条件下で、寸法が40×10×1mmである試験対象物の剪断弾性率曲線を記録した。
【0110】
表中において特に言及しない限り、引張試験に関しては、試験対象物は乾燥した状態で使用した。この目的のために、射出成形後、試験対象物を、乾燥した環境下、室温にて、少なくとも48時間貯蔵した。パイプを試験の前に状態調節処理に付した。表2は、比較例VB1、VB2およびVB3の成形材料に関する基本的なデータを示す。
【0111】
【表2】


略記の意味は次の通りである;N/D=測定せず、N/B=破損せず
【0112】
VB1は、670MPaの弾性率を示し、切り欠き棒を用いたシャルピー試験(+23℃)で23KJ/mを示すポリアミド612エラストマーである。これに比べて、VB2およびVB3は極めて堅く、弾性率が2340MPaおよび2120MPaであり、+23℃での、ノッチ付シャルピー試験がVB1よりも、それぞれ9KJ/mおよび10KJ/m小さい。表3は、本発明による試験対象物V1、V2、V3およびV4の成形材料に関する基礎データを示す。
【0113】
【表3】


略記の意味は次の通りである;N/D=測定せず、N/B=破損せず
【0114】
本発明による試験対象物V1〜V4の成形材料のデータによると、混合物材料の適当な選択により、670MPa〜1130MPaの間に弾性率を設定できることが示されている。弾性率は、VB2およびVB3と比較して大幅に減少している。
【0115】
さらに、本発明における混合物によるノッチ付シャルピー試験値(+23℃)は>80KJ/mであり、この値は、比較例VB1〜VB3の値よりも高い。また、VB1〜VB3と比較して、ノッチ付シャルピー試験値(−30℃)が大幅に増加することは、特に注目すべきである。
【0116】
表4は、本発明による試験対象物V5、V6およびV7の成形材料に関する基礎データを示す。
【0117】
【表4】


略記の意味は以下の通りである;N/B=破損せず
【0118】
本発明による試験対象物V5〜V7の成形材料のデータによると、混合物材料の適当な選択により、1020MPa〜1250MPaの間に弾性率を設定できることが示されている。弾性率は、VB2およびVB3と比較して大幅に減少している。
【0119】
本発明における混合物によるノッチ付シャルピー試験値(+23℃)は>70KJ/mであり、この値は、VB1〜VB3の値よりも高い。また、ノッチ付シャルピー試験値(−30℃)が大幅に増加することは、特に注目すべきである。
【0120】
表5および6は、本発明による試験対象物V8、V9、V10、V11、V12およびV13の、別の成形材料に関する基礎データを示す。
【0121】
【表5】

【0122】
【表6】


略記の意味は次の通りである;N/D=測定せず、N/B=破損せず
【0123】
なお、表2〜6において記載されているポリアミド「PA MACMI/MACMT/12」は、商品名グリルアミド(登録商標)TR60(エムスーケミAG社製)として既知である。
【0124】
本発明による試験対象物V8〜V13に関する成形材料のデータによると、混合物材料の適当な選択により、1587MPa〜1940MPaの間に弾性率を設定できることが示されている。弾性率は、VB2およびVB3と比較して大幅に減少している。
【0125】
また、本発明における混合物によるノッチ付シャルピー試験値(+23℃)は>12KJ/mであり、この値は、VB1〜VB3の値よりも高い。VB1〜VB3と比較して、実施例V9〜V13におけるノッチ付シャルピー試験値(−30℃)が大幅に増加することは、注目すべきことである。
【0126】
これらの成形材料で作られたパイプについて更なる試験をおこなった。各結果を表7〜10に纏めた。表7は、ISO引張棒における種々の温度での弾性率を測定した結果を示す。
【0127】
【表7】


略記の意味は次の通りである;N/D=測定せず、N/M=VB1の融点が198℃であるため測定不可。
【0128】
VB1と比較して、−40℃での弾性率が減少し、+180℃での弾性率が同じまたは高い値を示すことは、特に注目すべきである。
【0129】
表8は、+150℃で貯蔵した場合のISO引張棒の熱劣化と、これらのISO引張棒が破損するまでの引張荷重の測定結果を示す。
【0130】
【表8】

【0131】
+150℃で1000時間貯蔵した後、V3は初期値の95%の破断点伸びを示し、一方で、VB1においては、すでに65%まで破断点伸びが減少していた。
【0132】
表9は、+150℃で貯蔵した場合のISO引張棒の熱劣化と、これらのISO引張棒が破断するまでの伸びの測定結果を示す。
【0133】
【表9】

【0134】
+150℃で1000時間貯蔵した後、V3は初期値の51%の破断点伸びを示し、一方で、VB1における破断点伸びは、500時間の貯蔵後に、すでに初期値の50%を下回る値まで減少している。
【0135】
表10は、種々の寸法のパイプにおける、DIN73378(+23℃)に従って測定した破裂圧力を示す。
【0136】
【表10】

【0137】
パイプの耐真空性を試験する間に、940mbarの真空圧でラインの破裂温度を測定した。寸法が12.5×1.25mmであり、本発明による成形材料V3で作られた試験用ラインは、940mbarの真空圧の場合+166℃で破裂した。この破裂温度は、VB1の破裂温度よりも10℃高い。したがって、本発明による成形材料は、比較的高い温度で真空ラインとして使用される場合、特に自動車用のブレーキブースターラインとして使用される場合に、優れた利点と予期せぬ効果をもたらす。
【0138】
図1は、種々の成形材料で製造された成形品の剪断弾性率曲線のみを示すが、この図は本特許出願の開示範囲を限定するものではない。実際には、引張弾性率および弾性率も測定した。本発明によるポリアミド混合物系成形材料(例えばV2)で製造された成形品は、−30℃の温度で1400MPa以下の弾性率を示すことが明らかになった。さらに、測定結果によると、本発明によるポリアミド混合物系成形材料(例えばV2)で製造された成形品は、−40℃の温度で2400MPa以下の弾性率を示すことが明らかになった。好ましいポリアミド混合物系成形材料(例えばV7)で製造された成形品の場合、−40℃で2000MPa以下の弾性率を示し、特に好ましいポリアミド混合物系成形材料(例えばV3)の場合、1950MPa以下の弾性率を示した。
【0139】
また、本発明によるポリアミド混合物系成形材料(例えばV2)で製造された成形品において、比較的高い温度(例えば+120℃)で、引張弾性率および弾性率を測定した。これらの成形品は、+120℃の温度で少なくとも180MPa弾性率を示すことが明らかであった。好ましいポリアミド混合物系成形材料(例えばV7)で製造された成形品の場合、少なくとも150MPa弾性率を示し、特に好ましいポリアミド混合物系成形材料(例えばV3)の場合、少なくとも140MPaの弾性率を示した。
【0140】
好ましくは、本発明によるポリアミド混合物系成形材料で作られる成形品は、−40℃の温度で、2400MPa以下、好ましくは2000MPa以下、特に好ましくは1950MPa以下の弾性率を示すことで特徴づけられる。好ましくは、本発明によるポリアミド混合物系成形材料で作られる成形品は、+180℃の温度で少なくとも50MPa、好ましくは少なくとも75MPa、特に好ましくは少なくとも85MPaの弾性率を示すことで特徴づけられる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド混合物と、少なくとも1種の耐衝撃性成分とを含有するポリアミド混合物系成形材料であって、
該ポリアミド混合物が以下のポリアミドを含有することを特徴とし、
(A)単量体単位あたり平均して少なくとも8個の炭素原子を有し、>40J/gの融解エンタルピーを示す、20〜65重量%の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド、
(B)8〜25重量%の少なくとも1種の非晶質ポリアミドおよび/または4〜40J/gの範囲の融解エンタルピーを示す微晶質ポリアミド、および、
(C)単量体単位あたり平均して最大6個の炭素原子を有する、1〜20重量%の少なくとも1種のポリアミド;
ならびに該耐衝撃性成分が以下の成分を含有することを特徴とする、該ポリアミド混合物系成形材料:
(D)ハードセグメントとソフトセグメントで構成され、該ハードセグメントがラクタムおよび/またはアミノカルボン酸に基づく、10〜40重量%のポリアミドエラストマー、および
(E)0〜35重量%の非ポリアミド系エラストマー;
但し、重量%で表される全ての値は、必要に応じて市販の添加剤が補充されるポリアミド混合物系成形材料の総量に基づき、全体で100重量%となる。
【請求項2】
ポリアミド混合物と、少なくとも1種の耐衝撃性成分とを含有するポリアミド混合物系成形材料であって、
該ポリアミド混合物が以下のポリアミドを含有することを特徴とし、
(A)単量体単位あたり平均して少なくとも8個の炭素原子を有し、>40J/gの融解エンタルピーを示す、50〜85重量%の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド、
(B)2〜15重量%の少なくとも1種の非晶質ポリアミドおよび/または4〜40J/gの範囲の融解エンタルピーを示す微晶質ポリアミド、および、
(C)単量体単位あたり平均して最大6個の炭素原子を有する、2〜15重量%の少なくとも1種のポリアミド;
ならびに該耐衝撃性成分が以下のものを含有することを特徴とする、
該ポリアミド混合物系成形材料:
(D)ハードセグメントとソフトセグメントで構成され、該ハードセグメントがラクタムおよび/またはアミノカルボン酸に基づく、1〜20重量%のポリアミドエラストマー、および、
(E)0〜35重量%の非ポリアミド系エラストマー;
但し、重量%で表される全ての値は、必要に応じて市販の添加剤が補充されるポリアミド混合物系成形材料の総量に基づき、全体で100重量%となる。
【請求項3】
成分(B)の微晶質ポリアミドが4〜25J/gの範囲の融解エンタルピーを示すことを特徴とする請求項1または2に記載のポリアミド混合物系成形材料。
【請求項4】
成分Dのポリアミドエラストマーが、ポリエーテルアミド、ポリエステルエーテルアミドおよび/またはポリエステルアミドから成る群から選択されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド混合物系成形材料。
【請求項5】
ポリアミド混合物が以下のポリアミドからなることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド混合物系成形材料:
25〜50重量%の、成分(A)の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド、
10〜20重量%の、成分(B)の少なくとも1種の非晶質ポリアミドおよび/または微晶質ポリアミド、および
5〜10重量%の、成分(C)の少なくとも1種のポリアミド。
【請求項6】
ポリアミド混合物が以下のポリアミドからなることを特徴とする請求項2に記載のポリアミド混合物系成形材料:
55〜70重量%の、成分(A)の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド、
5〜10重量%の、成分(B)の少なくとも1種の非晶質ポリアミドおよび/または微晶質ポリアミド、および
5〜10重量%の、成分(C)の少なくとも1種のポリアミド。
【請求項7】
単量体単位あたり平均して少なくとも8個の炭素原子を有する成分(A)の少なくとも1種のポリアミドが、以下のポリアミドを含有する群から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミド混合物系成形材料:
PA11、PA12、PA610,PA612、PA1010、PA106、PA106/10T、PA614およびPA618。
【請求項8】
成分(B)の少なくとも1種の非晶質ポリアミドおよび/または微晶質ポリアミドが以下のポリアミドを含有する群から選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のポリアミド混合物系成形材料:
PA MACMI/MACMT/12、PA MACMI/12およびPA PACM12、PA6I/6T、PA TMDT、PA NDT/INDT、PA 6I/MACMI/MACMT、PA 6I/6T/MACMI、PA MACM12/PACM12、PA MACMI/MACM36、PA6I;PA12/PACMI、PA12/MACMI、PA12/MACMT、PA6I/PACMT、PA6/6IおよびPA6/IPDT;PA MACM12、PA MACM18、PA PACM12、PA MACM12/PACM12、PA MACM18/PACM18、PA6I/PACMI/PACMT;PA6I/MXDI、およびこれらのポリアミドの任意の混合物。
【請求項9】
ポリアミドPA MACMI/MACMT12が以下のものにより生成されることを特徴とする、請求項8に記載のポリアミド混合物系成形材料:
− 30〜45重量部のMACMI
− 30〜45重量部のMACMT、および
− 10〜40重量部のLC12。
【請求項10】
単量体単位あたり平均して最大6個の炭素原子を有する、成分(C)の少なくとも1種のポリアミドが、PA6、PA46、PA66のポリアミドを含有する群から選択されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載のポリアミド混合物系成形材料。
【請求項11】
ポリアミド混合物が以下のポリアミドから成ることを特徴とする、請求項5に記載のポリアミド混合物系成形材料:
(A)25〜50重量%のPA610、
(B)10〜20重量%のPA MACMI/MACMT/12、および
(C)5〜10重量%のPA6。
【請求項12】
ポリアミド混合物が以下のポリアミドから成ることを特徴とする、請求項6に記載のポリアミド混合物系成形材料:
(A)55〜70重量%のPA610、
(B)5〜10重量%のPA MACMI/MACMT/12、および
(C)5〜10重量%のPA6。
【請求項13】
ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸に基づくハードセグメントを有する、成分(D)のポリアミドエラストマーが、ポリエーテルアミド、ポリエステルエーテルアミドおよび/またはポリエステルアミドを含有する群から選択され、好ましくは、該ポリアミドエラストマーがPA6、PA11またはPA12セグメントから構成されるハードブロックを含有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載のポリアミド混合物系成形材料。
【請求項14】
成分(E)の非ポリアミド系エラストマーが、エチレン−α-オレフィン−コポリマー、エチレン−C3-12−α−オレフィンコポリマー、非共役ジエン−エチレン−C3-12−α−オレフィンターポリマー、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)およびアクリレートを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載のポリアミド混合物系成形材料。
【請求項15】
エチレン−α-オレフィン−コポリマーが、EPエラストマー(エチレンプロピレンゴム)および/またはEPDMエラストマー(エチレンプロピレンジエンゴム)であり、エチレン−C3-12−α−オレフィンコポリマーのオレフィンが、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンおよび/または1−ドデセンから成る群から選択され、非共役ジエンがビシクロ(2.2.1)ヘプタジエン、ヘキサジエン−1,4、ジシクロペンタジエンおよび5−エチリデンノルボルネンから成る群から選択されることを特徴とする、請求項14に記載のポリアミド混合物系成形材料。
【請求項16】
エチレン−α-オレフィン−コポリマーが、無水マレイン酸でグラフト化されたエチレン−ブチレンコポリマーとエチレン−プロピレン−コポリマーとの混合物であることを特徴とする請求項14に記載のポリアミド混合物系成形材料。
【請求項17】
繊維および有機的に改質された層状珪酸塩を含有する群から選択される充填材が該混合物に混合され、
該繊維としてガラス繊維が選択され、該ガラス繊維が20重量%以下の量でポリアミド混合物系成形材料に混合され、
該有機的に改質された層状珪酸塩がマイカ、スメクタイトおよびバーミキュライトを含有する群から選択され、該有機的に改質された層状珪酸塩が15重量%以下の量でポリアミド混合物系成形材料に混合されることを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載のポリアミド混合物系成形材料。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載のポリアミド混合物系成形材料を生産する方法であって、ポリアミド混合物の成分(A、B、C)と耐衝撃性成分(D)のポリアミドエラストマーの各ポリアミドが、300mbar以上の全圧下で、常套の重合用オートクレーブ内で生産されることを特徴とする該方法。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれかに記載のポリアミド混合物系成形材料で生産される成形品であって、−30℃の温度で1400MPa以下の弾性率を示すことを特徴とする該成形品。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれかに記載のポリアミド混合物系成形材料で生産される成形品であって、−40℃の温度で、2400MPa以下、好ましくは2000MPa以下、特に好ましくは1950MPa以下の弾性率を示すことを特徴とする該成形品。
【請求項21】
請求項1〜17のいずれかに記載のポリアミド混合物系成形材料で生産される成形品であって、+180℃の温度で、少なくとも50MPa、好ましくは少なくとも75MPa、特に好ましくは少なくとも85MPaの弾性率を示すことを特徴とする該成形品。
【請求項22】
自動車用ラインおよび固定構造物用ラインを含む群から選択されるパイプとして配設され、好ましくは、該パイプが単一層の押出パイプとして配設されることを特徴とする請求項19〜21のいずれかに記載の成形品。
該成形品。
【請求項23】
自動車用のラインが、ブレーキブースターライン、冷却水用ライン、吸気用ライン、加熱用ライン、排気用ライン、油圧式または空気式のブレーキラインを含むことを特徴とする請求項22に記載の成形品。
【請求項24】
固定構造物用のラインが、排水用ライン、雨水用ライン、空気圧ポスト用ライン、暖房オイル用ライン、長距離暖房用ライン、冷水用ライン、熱水用ラインおよび飲料水用ライン、ならびに電線用保護パイプを含むことを特徴とする請求項22に記載の成形品。
【請求項25】
射出成型したブレーキブースター、燃料フィルターまたはエアフィルターの部品として配設されることを特徴とする請求項19〜24のいずれかに記載の成形品。

【公開番号】特開2011−32469(P2011−32469A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−159358(P2010−159358)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(505343930)エムス−パテント アクチエンゲゼルシャフト (10)
【Fターム(参考)】