説明

ポリアミノ酸誘導体及び共重合体の製造方法

【課題】アミノ酸から、少ない工程で、かつ、温和な条件下でポリアミノ酸誘導体を製造する方法の提供。
【解決手段】(a)アミノ酸カーバメート化合物をアミン化合物の存在下に重縮合させてポリアミノ酸を得、(b)得られたポリアミノ酸と不飽和カルボン酸等の末端修飾剤とを反応させることにより、末端に不飽和基等にて修飾して、末端変性のポリアミノ酸誘導体を得、末端が不飽和基の時は、マクロモノマーとして、単量体と付加共重合できるポリアミノ酸誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミノ酸誘導体及び共重合体の新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミノ酸及び重合体は、医薬品、化粧品、それらの中間体、バインダー等に用いられる極めて有用な化合物である。従って、現在、その製造方法について盛んに研究がなされており、その原料であるポリアミノ酸の製造方法としては、以下のような方法が知られている。
【0003】
(1)アミノ酸エステルの重縮合について、単純なアミノ酸エステルでは、大量のジケトピペラジンを生成するが、セチルエステルでは、ジケトピペラジンを生成せず、オリゴマーを生成することが知られている(非特許文献1)。しかし、この方法は、化学合成されたラセミ化グリシンにのみ適用されているという問題がある。
【0004】
(2)アミノ酸N−カルボキシ無水物(NCA)の開環重合は、一般的なポリアミノ酸の合成方法として知られており、高分子量体が合成可能である。しかし、アミノ酸原料としてNCA誘導体を合成する工程と、NCA誘導体を重合させる工程とが必要であり、NCAを合成する段階で、有毒なホスゲンを必要とするという問題がある。
【0005】
(3)ポリスクシンイミドの加水分解方法は、高分子量のポリアスパラギン酸を合成する方法として知られている(非特許文献2〜4)。しかし、アスパラギン酸およびポリ−β−アラニンに特異的な方法であり、他のアミノ酸には応用できないという問題がある。
【0006】
(4)ポリアミノ酸の重縮合反応を溶融塩化合物中で行うことにより、分子量が数十万のポリアミノ酸を得る方法が知られている(特許文献1)。しかし、130℃〜170℃の温度範囲で加熱する必要があり、加熱によるラセミ化を引き起こしやすいという大きな問題がある。
また、これについては類似の出願についても既に公開がなされているが、同様の大きな問題がある(特許文献2)。
【0007】
(5)トリフェニルホスファイト/塩化リチウム/ポリビニルピロリドン中での直接重縮合法により、80℃という低温で高分子量のポリアミノ酸(ポリロイシンほか)を得る方法が知られている(非特許文献5)。しかし、トリフェニルホスファイトを多量に用いる、ポリビニルピロリドンと生成物との分離が難しい、という大きな問題がある。
【0008】
(6)銅錯体により制御された活性エステル法によるポリアミノ酸の合成は高分子量ポリアミノ酸および分子量を制御したポリアミノ酸を合成するうえで有効な方法である(非特許文献6)。しかし、原料合成のためのカルボン酸保護にまでの工程が極めて迂遠であるという問題がある。
【0009】
(7)イットリウム触媒を用いた活性エステルアミノ酸の重縮合が知られている(非特許文献7)。しかし、ルイス酸としてのイットリウムトリフラートが不可欠であり、工業的な応用は難しい。
【0010】
【非特許文献1】Baniel, A., Frankel, M.,Friedrich, I., Katchalsky, A., J. Org. Chem., 13, 791-795 (1948)
【非特許文献2】Vegotsky, A., Harada, K., Fox, K., J.Am. Chem. Soc,, 80, 3361-3366 (1958)
【非特許文献3】Harada,K.,J.Org.Chem.,24,1662-1666(1959)
【非特許文献4】Kovacs, J., Kovacs, H. N.,Koenyves, I., Csaszar, J.,Vajda. T., Mix, H., J. Org. Chem., 26,1084-1091 (1961)
【特許文献1】特開2004−307558号公報
【特許文献2】特開平7−196790号公報
【非特許文献5】Higashi, F., Sano, K., Kakinoki, H., J. Polym.Sci.; Chem. Ed., 18, 1841-1846 (1980)
【非特許文献6】Naka, K., Nemoto, T., Chujo, Y., J. Polym. Sci.;Part A: Polym. Chem., 41, 1504-1510 (2003)
【非特許文献7】Ando, D., Nemoto, T., Naka, K., Chujo, Y., Polym. Prepr. Jpn, 53,251 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、アミノ酸からポリアミノ酸の共重合体になり得るポリアミノ酸誘導体を製造する方法については、これまで実用的な製造方法が知られていない。
従って、本発明の課題は、アミノ酸から、少ない工程で、かつ、温和な条件下でポリアミノ酸誘導体を製造する方法を提供することにある。また、末端に重合性不飽和基を有するポリアミノ酸誘導体を用いて共重合体を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ポリアミノ酸誘導体の製造方法について創意工夫を重ねた結果、アミノ酸カーバメート化合物を重縮合させてポリアミノ酸を得た後に、得られたポリアミノ酸と末端修飾剤とを反応させることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
(1)すなわち、本発明は、(a)アミノ酸カーバメート化合物を重縮合させてポリアミノ酸を得、
(b)得られたポリアミノ酸と末端修飾剤とを反応させることを特徴とするポリアミノ酸誘導体の製造方法を提供するものである。
【0014】
(2)また、本発明は、アミノ酸カーバメート化合物が、下記式(C)
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、Rは水素原子又は炭素数1以上の有機基、Yは水素原子又は電子吸引性基、mは1〜5の整数を示す。)
で表される化合物である上記(1)記載のポリアミノ酸誘導体の製造方法を提供するものである。
(3)また、本発明は、重縮合を反応温度10℃〜110℃で行う上記(1)又は(2)記載のポリアミノ酸誘導体の製造方法を提供するものである。
(4)また、本発明は、工程(a)をアミン化合物の存在下で行う上記(1)〜(3)いずれか1項に記載のポリアミノ酸誘導体の製造方法を提供するものである。
(5)また、本発明は、アミン化合物が1級アミンである上記(4)に記載のポリアミノ酸誘導体の製造方法を提供するものである。
(6)また、本発明は、末端修飾剤が、重合性不飽和基を有する化合物である上記(1)〜(5)のいずれか記載のポリアミノ酸誘導体の製造方法を提供するものである。
(7)また、本発明は、上記(6)の方法により得られる、末端に重合性不飽和基を有するポリアミノ酸誘導体を共重合させることを特徴とする共重合体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、少ない工程で、かつ、温和な条件下でアミノ酸からポリアミノ酸誘導体を製造することができる。また、末端に重合性不飽和基を有するポリアミノ酸誘導体を用いて共重合体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
ポリアミノ酸誘導体の製造方法
本発明のポリアミノ酸誘導体の製造方法は、(a)アミノ酸カーバメート化合物を重縮合させてポリアミノ酸誘導体を得、(b)得られたポリアミノ酸誘導体と末端修飾剤とを反応させることを特徴とする。
【0019】
本発明において、アミノ酸カーバメート化合物としては、下記式(C)
【0020】
【化2】

【0021】
(式中、Rは水素原子又は炭素数1以上の有機基、Yは各々独立に、水素原子又は電子吸引性基、mは1〜5の整数を示す。)で表される化合物であることが好ましい。
【0022】
式(C)中、Rは、水素原子または炭素数1以上の有機基であり、該有機基としては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、置換基を有していてもよいヘテロ環基及び置換基を有していてもよいヘテロ環アルキル基等が挙げられる。これらの有機基に置換し得る基としては、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシ基、エステル基、アルコキシカルボニル基及びアラルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0023】
ここで、R中のアルキル基としては、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル等の炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、炭素数3〜6のシクロアルキル基が挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜10のアリール基、例えばフェニル基、ナフチル基が挙げられる。アリールアルキル基としては、C6-10アリール‐C4-6アルキル基、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。ヘテロ環基としては、インドール、ピロリジン、イミダゾール、ピロール、ピペリジン、ジヒドロキノリン等が挙げられる。ヘテロ環アルキル基としては、前記へテロ環にC1-6アルキル基が結合した基が挙げられる。
【0024】
Rの具体例としては、例えば,メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチルなどのアルキル基;ベンジル、4−ヒドロキシベンジルなどのアリールアルキル基;ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、メルカプトメチル、カルボキシメチル、カルボキシエチル、アミノブチル、インドール、イミダゾイルなどの水酸基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基などの活性水素をアルキル基、ベンジル基などの有機基で置換した置換基を有するアルキル基;ベンジルオキシカルボニルメチル、2−ベンジルオキシカルボニルエチルなどのエステル基置換アルキル基などが挙げられ、イソブチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニルメチル、ベンジルオキシカルボニルエチルが好ましい。
【0025】
式(C)中、Yは、水素原子または電子吸引性置換基であり、水素原子;ニトロ基;塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;パーフルオロアルキル基(ここで、アルキル基としては、炭素数1〜8の直鎖状、分枝状、環状の飽和および不飽和アルキル基などが挙げられる。以下同じ);パークロロアルキル基;エステル基;アセチル基;シアノ;ベンゾイル基等が挙げられ、水素原子、ニトロ基、ハロゲン原子、ハロゲン置換アルキル基、スルホン酸エステル基が好ましく、水素原子、ニトロ基が特に好ましい。
【0026】
アミノ酸カーバメート化合物の具体例としては、例えば、N−(フェノキシカルボニル)−γ−ベンジル−L−グルタメート、N−(フェノキシカルボニル)−L−フェニルアラニン、N−(フェノキシカルボニル)−β−ベンジル−L−アスパルテート、N−(フェノキシカルボニル)−L−ロイシン、N−(フェノキシカルボニル)−L−プロリン、N−(フェノキシカルボニル)−O−ベンジル−L−チロシン、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジル−L−グルタメート、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−β−ベンジル−L−アスパルテート、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−L−フェニルアラニン、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−L−ロイシン、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−L−プロリン、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−O−ベンジル−L−チロシンなどが挙げられ、N−(フェノキシカルボニル)−γ−ベンジル−L−グルタメート、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−β−ベンジル−L−アスパルテート、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−L−フェニルアラニン、N−(フェノキシカルボニル)−L−フェニルアラニン、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジル−L−グルタメートが好ましい。
【0027】
本発明におけるアミノ酸カーバメート化合物は、例えば、下記反応式(1)により製造できる。
【0028】
【化3】

【0029】
(式中、R、Y、mは前記と同じ。X1およびX2はそれぞれハロゲン原子を示す。)
【0030】
本発明の工程(a)のポリアミノ酸の製造方法は、例えば、下記式(2)
【0031】
【化4】

【0032】
(式中、R、Y、mは、前記と同じ。nは1以上の整数を示す。)
で表される。
すなわち、アミノ酸カーバメート化合物である化合物(C)を加熱すると、化合物(E)で表されるフェノール類と二酸化炭素を脱離して、アミド結合を形成して、(D)で表されるポリアミノ酸を生成する。
反応式(2)において、nとしては、得られた重合体の重合度を表しており、通常、得られた重合体は分子量分布を有しているため、1〜10,000の整数が好ましく、2〜8,000の整数がより好ましく、5〜5,000の整数がさらに好ましい。
【0033】
本発明の重縮合反応は、アミン化合物存在下で行うことが好ましく、アミン化合物としては、1級〜3級アミンが挙げられる。
【0034】
1級アミンの具体例としては、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、トリエチレンテトラミン、p−クロロベンジルアミン、p−(tert−ブチル)フェニルメチルアミン、アニリン、キトサンが挙げられ、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、p−クロロベンジルアミン、p−(tert−ブチル)フェニルメチルアミン、が好ましく、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、p−クロロベンジルアミン、p−(tert−ブチル)フェニルメチルアミンがより好ましい。
2級アミンの具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、モルホリンが挙げられ、ジエチルアミンがより好ましい。
3級アミンの具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンが挙げられ、トリエチルアミンがより好ましい。
【0035】
また、本発明に用いられる1〜3級アミンのうち、1級及び2級アミンが好ましく、炭素数1〜24の炭化水素基を有する1級及び2級アミン、環状アミン、芳香族アミン等がより好ましく、このうち、ポリアミノ酸の収率が良好であり、温和な条件でポリアミノ酸が得られ、アミン化合物由来の特定のC末端を持つ重合体が得られる点で、1級アミンがより好ましい。
【0036】
上記アミン化合物の添加量は、アミノ酸カーバメート化合物1molに対して、1×10-3mol〜1×10molが好ましく、1×10-2mol〜2×10-1molがより好ましい。
【0037】
また、本発明において、1級アミンを用いた場合は、得られるポリアミノ酸の分子量を調節できる。
すなわち、アミノ酸カーバメート化合物に対する1級アミンの添加量を多くすれば、ポリアミノ酸の分子量は小さくなる傾向があり、添加量を少なくすれば、ポリアミノ酸の分子量は大きくなる傾向がある。
【0038】
本発明の重縮合反応は、溶媒存在下または非存在下で行うことができるが、通常、アミノ酸カーバメート化合物の合成に用いられると同様の溶媒を用いることが好ましく、重縮合を促進し、高い収率と分子量を与える点で、高い誘電率と水素結合を持つ溶媒が特に好ましい。具体的には、アミド系溶剤、スルホキシド系溶剤などが好適な例として挙げられる。
溶媒の使用量は、生成するアミノ酸カーバメート化合物(C)100重量部に対し、20〜500重量部が好ましく、25〜200重量部程度がより好ましい。20重量部未満では、アミノ酸カーバメート化合物が十分に溶媒に溶解しない場合があり、一方、500重量部を超えると、反応速度が著しく低下する可能性がある。
【0039】
反応温度は、10〜110℃が好ましく、15〜70℃がより好ましく、20〜60℃がさらに好ましい。
反応時間は、0.1〜100時間が好ましく、0.5〜60時間がより好ましく、1〜50時間がさらに好ましい。
反応温度が10℃未満では、反応が十分に進行せず、一方、110℃を超えると、原料であるアミノ酸カーバメート化合物が分解する可能性がある。また、反応時間が0.1時間未満では、重合反応が十分に進行せず、一方、100時間を超えると、好ましくない2次的な反応が進行する場合がある。
【0040】
本発明の工程(a)により得られるポリアミノ酸は、その重量平均分子量は、500〜500,000が好ましく、1,000〜100,000がより好ましい、分子量分布(Mw/Mn)は、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。
【0041】
本発明において、1級アミンを用いた場合、下記式(F)で表されるポリアミノ酸が得られる。
【0042】
【化5】

【0043】
(式中、R2は、下記式(F−1)
【0044】
【化6】

【0045】
(式中、Rは前記と同じ。)
で表される基又は下記式(F−2)
【0046】
【化7】

【0047】
で表される基を示し、R3は、前記1級アミン由来の基を示し、R及びnは、前記と同じ。)
【0048】
また、R2としては、ポリアミノ酸の選択性の点で、式(F−1)で表される基が好ましい。
また、R3としては、炭素数1〜24の炭化水素基が挙げられる。
【0049】
本発明において、目的生成物は、再沈殿等の方法で単離・精製することができる。N末端がアミンであるポリアミノ酸(R2が式(F−1)で表される基)を得る点で、単離・精製を省略することが好ましい。
【0050】
ポリアミノ酸の主鎖の伸長による製造方法
上記ポリアミノ酸の製造方法においては、(a)アミノ酸カーバメート化合物を重縮合させてポリアミノ酸を得、(a)’得られたポリアミノ酸とアミノ酸カーバメート化合物とを重縮合させることもできる。
【0051】
工程(a)及び(a)’において、好適なR、R3及びn、触媒の添加量、溶媒量、アミン化合物、反応温度、及び反応時間は、前記と同じである。
【0052】
工程(a)’において、アミノ酸カーバメート化合物は、上記と同じである。
【0053】
また、本発明のポリアミノ酸の主鎖の伸長による製造方法において、工程(a)’は、2回以上行うことができる。これにより、ポリアミノ酸の主鎖を2回以上にわたり伸長できる。
【0054】
ポリアミノ酸誘導体の製造方法
続いて、上記ポリアミノ酸の製造方法により得られたポリアミノ酸と末端修飾剤とを反応させてポリアミノ酸誘導体を得る工程(b)について説明する。
【0055】
本発明のポリアミノ酸誘導体の製造方法において、上記ポリアミノ酸の製造方法又はポリアミノ酸の主鎖の伸長による製造方法により得られたポリアミノ酸は、単離・精製して用いても、単離・精製せずに用いてもよい。
【0056】
末端修飾剤としては、通常用いられるものであれば特に限定されないが、末端に重合性不飽和基を有するポリアミノ酸誘導体を合成できる点で、重合性不飽和基を有する化合物が好ましい。ここで、重合性不飽和基としては、ビニル基、CH2=C(R4)COO−(R4は水素原子、フッ素原子、メチル基、又はフルオロメチル基である)で示される(フルオロ)(メタ)アクリルオキシ基、CH2=CHCONH−で示されるアクリルアミド基、CH2=CHC64−で示されるスチリル基、CH2=C(CN)−で示されるシアン化ビニル基、CH2=C(CN)COO−で示される2−シアノアクリルオキシ基等を好適例として挙げることができる。末端修飾剤としては、例えば、重合性不飽和基を有するカルボン酸又はその誘導体が好適に用いられる。具体的には、重合性不飽和基を有するカルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸等のα、β−不飽和カルボン酸が挙げられる。カルボン酸誘導体としては、α、β−不飽和カルボン酸の酸ハロゲン化物、α、β−不飽和カルボン酸の酸無水物、α、β−不飽和カルボン酸に重合開始剤が付加した化合物が挙げられる。α、β−不飽和カルボン酸の酸ハロゲン化物としては、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド等が挙げられ、α、β−不飽和カルボン酸の酸無水物等としては、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物が挙げられる。α、β−不飽和カルボン酸に重合開始剤が付加した化合物としては、アクリル酸4−(ジメチルスルファニル)フェニルメタンスルホン酸過酸化物塩、メタクリル酸4−(ジメチルスルファニル)フェニルメタンスルホン酸過酸化物塩等が挙げられる。
【0057】
本発明のポリアミノ酸誘導体の製造方法において、溶媒存在下/非存在下において反応させることができるが、溶媒存在下で反応させることが好ましい。好適な溶媒及び溶媒の使用量としては、上記ポリアミノ酸の製造方法と同様である。
【0058】
反応温度は、10〜110℃が好ましく、15〜70℃がより好ましく、20〜60℃がさらに好ましい。
反応時間は、0.1〜100時間が好ましく、1〜80時間がより好ましく、5〜70時間がさらに好ましい。
【0059】
また、本発明において得られたポリアミノ酸誘導体が、末端に重合性不飽和基を有するポリアミノ酸誘導体である場合には、マクロモノマーとして用いることができる。すなわち、得られたポリアミノ酸誘導体を公知の方法により重合させることで重合体を得ることができる。具体的には、得られたポリアミノ酸誘導体、及び共重合体の場合には共重合可能な他のモノマーを、溶媒中、ラジカル重合開始剤存在下、必要に応じて連鎖移動剤を使用し、窒素ガス気流下で溶剤還流させ溶液重合を行うことで重合体を得ることができる。
【0060】
共重合可能な他のモノマーは、重合性不飽和基を有するモノマーであればいずれでもよい。このような重合性の不飽和基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド及びそのN−アルキル置換体、例えばN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等のジアルキル(総炭素数2〜22)(メタ)アクリルアミド、スチレン、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(炭素数1〜22)基を有する(メタ)アクリル酸エステル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のヘテロ原子を有するアルキル(炭素数1〜22)基を有する(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(エチレングリコールの重合度が1〜30)等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。共重合しうる重合性の不飽和基を有するモノマーは上記のものを1種以上用いることができる。
【0061】
溶媒には、塩化メチレン、クロロホルム、酢酸エチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水等が用いられる。
【0062】
ラジカル重合開始剤として、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、ペルオキソ−2−硫酸アンモニウムに代表されるヒドロ過酸化物類、過酸化ジt−ブチルに代表される過酸化ジアルキル類、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイルに代表される過酸化ジアシル類、メチルエチルケトンペルオキシドに代表されるケトンペルオキシド類、又は2,2−アゾ−2−アミジノプロパン二塩酸塩、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)に代表されるアゾ系重合開始剤等が挙げられ、全モノマーに対して0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜5重量%用いる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例を挙げて本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0064】
実施例1−1
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15mL容量の試験管に、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジルグルタメート(1) 805mg(2mmol)、n−ブチルアミン 4μL(0.04mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド 1mLを入れ、30℃で12時間撹拌することでポリアミノ酸を得た。反応溶液を少量サンプリングし、分子量を測定した。得られたポリアミノ酸を別途サイズ排除クロマトグラフィーによって分析したところ、数平均分子量Mnは9,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.94であった。
【0065】
実施例1−2
その後、得られたポリ(γ−ベンジルグルタメート)をN,N−ジメチルアセトアミド 2ml に溶解させたメタクリル酸4−(ジメチルスルファニル)フェニルメタンスルホン酸過酸化物塩(MA−DSP) 0.039g(0.012mmol)を加え30℃で48時間撹拌した。反応後、N,N−ジメチルアセトアミドを減圧留去し、残渣をクロロホルムで希釈し、反応溶液を1Lの分液ロートに移し、蒸留水と飽和食塩水でそれぞれ3回ずつ洗浄し、有機層を取り出して無水硫酸ナトリウムを加え1時間脱水した。1時間後、ろ紙を用いて硫酸ナトリウムをろ過し、得られた溶液をジエチルエーテルに再沈殿した。得られた白色固体を回収し乾燥させ、306mg(収率70%)のポリアミノ酸誘導体を得た。
【0066】
実施例1−2で得られたポリアミノ酸誘導体についてサイズ排除クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)は9,300、および分子量分布(Mw/Mn)は2.23であった。なお、得られたポリアミノ酸誘導体のスペクトルデータは以下の通りである:1H NMR (400 MHz, CDCl37.26 ppm): 0.85 (bs, 3H)、1.33 (bs, 2H)、1.52 (bs, 2H)、1.65 (m, 2H)、1.93-2.90 (br, 4H)、3.26 (m, 2H)、3.94 (bs, 1H)、5.05 (bs, 2H)、7.16-7.49 (m, 5H)、7.67-8.35(m, 1H).13C NMR (100.6 MHz, CDCl3, 76.9 ppm): 13.7, 18.2, 19.9, 25.4, 29.6, 30.6, 54.6, 56.9, 66.2, 118.6, 124.7, 128.0, 128.3, 135.9, 155.6, 167.7 171.9, 175.3. IR (KBr): 3293, 3033, 2953, 1734, 1653, 1626, 1652, 1454, 1390, 1214, 1170, 1057, 1004 cm-1.
【0067】
実施例2−1
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15mL容量の試験管に、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジルグルタメート(1) 805mg(2mmol)、n−ブチルアミン 20μL (0.2mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド 1mLを入れ、30℃で4時間撹拌した。4時間後、反応溶液を少量サンプリングし、転化率と分子量を測定した(転化率97%、Mn2,300、分子量分布2.51)。
【0068】
実施例2−2
その後、4時間後、N,N−ジメチルアセトアミド2mLに溶解させたメタクリル酸4−(ジメチルスルファニル)フェニルメタンスルホン酸過酸化物塩(MA−DSP)0.2g(0.06mmol)を加え30℃で48時間撹拌した。反応後、N,N−ジメチルアセトアミドを減圧留去し、残渣をクロロホルムで希釈し、反応溶液を1Lの分液ロートに移し、蒸留水と飽和食塩水でそれぞれ3回ずつ洗浄し、有機層を取り出して無水硫酸ナトリウムを加え1時間脱水した。1時間後、ろ紙を用いて硫酸マグネシウムをろ過し、得られた溶液をジエチルエーテルに再沈殿した。得られた白色固体を回収し乾燥させ、204mg(収率47%)のポリアミノ酸誘導体を得た。
【0069】
得られたポリアミノ酸誘導体についてサイズ排除クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)は2,900、および分子量分布(Mw/Mn)は2.11であった。
ポリアミノ酸誘導体のスペクトルデータは以下の通りである:1H NMR (400 MHz, CDCl37.26 ppm): 0.82 (bs, 3H)、1.24 (bs, 2H)、1.34 (bs, 2H)、1.68-2.88 (m, 6H)、3.80-4.40 (m, 1H)、4.95-5.19 (m, 2H)、5.31 (bs, 1H)、5.68 (bs, 1H)、7.16-7.49 (m, 5H)、7.67-8.35(m, 1H).
【0070】
参考例A 塩基性化合物非存在下での重合の追跡
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15mL容量の試験管に、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジルグルタメート805mg(2mmol)とN,N−ジメチルアセトアミド 1mLを入れ、30℃で15時間攪拌した。撹拌終了後、反応溶液を少量取り、重クロロホルムで希釈し、1H−NMR測定を行った。その結果、原料であるN−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジルグルタメートのみが存在していることが明らかになった。
参考例B 塩基性化合物非存在下でのポリアミノ酸の製造
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15mL容量の試験管に、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジルグルタメート(1) 805mg(2mmol)とN,N−ジメチルアセトアミド 1mLを入れ、60℃で48時間攪拌した。撹拌終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、ジエチルエーテルに滴下し、再沈殿精製した。さらに、再沈殿溶液をメンブレンフィルターで濾過することにより、324mg(収率74%)のポリ(γ−ベンジルグルタメート)を得た。
サイズ排除クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)は15,400、および分子量分布(Mw/Mn)は2.89であった。
【0071】
試験例1 実施例、参考例における反応追跡
n−ブチルアミン添加による反応加速効果をより明確にするため、実施例1−1、2−1、参考例A、B及び参考例1の重合をNMRによって追跡した。この場合、定期的に反応溶液をシリンジでサンプリングし、これを重クロロホルムで希釈して1H−NMR測定を行い、転化率(Conversion)を算出した。これらの実施によって得られたTime-Conversionプロットを図1に示す。
図1の結果から反応温度30℃においてn−ブチルアミンアミン無添加では進行しない重合がn−ブチルアミン添加によって進行したことがわかる。
【0072】
試験例2 実施例において得られたポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)のMALDI−TOF質量分析
【0073】
実施例1-1で得られた重合終了直後の溶液をサンプリングし、単離生成する前のポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)のMALDI−TOF質量分析を行った。スペクトルを図2に示す。
図2の結果から、末端にアミノ基を有するポリアミノ酸が選択的に得られることがわかる。
【0074】
実施例1−2で得られたマクロモノマーのMALDI−TOF質量分析を行った。マクロモノマー1.5mgと2−(4’−ヒドロキシフェニルアゾ)安息香酸10mg、トリフルオロ酢酸ナトリウム10mgをテトラヒドロフラン1mLに溶解し、10分間室温で攪拌した。この溶液をマイクロシリンジで2μL取り、サンプルプレートに滴下して風乾した。このように調製したサンプルを用いてMALDI−TOF質量測定を行った。測定して得られたスペクトを図3に示す。
このスペクトルから、末端にメタクリロイル基を有するポリアミノ酸誘導体が効率よく得られたことが分かる。
【0075】
本願発明のポリアミノ酸誘導体の前駆体ポリアミノ酸の製造例を参考例1〜9に示す。
【0076】
参考例1 n−ブチルアミン存在下でのポリアミノ酸の製造(1)
【0077】
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15mL容量の試験管に、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジルグルタメート(1) 204mg(0.5mmol)、n−ブチルアミン 4μL(0.04mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド 0.25mLを入れ、60℃で48時間撹拌した。撹拌終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、ジエチルエーテルに滴下し、再沈殿精製した。さらに、再沈殿溶液をメンブレンフィルターで濾過することにより、86mg(収率78%)のポリ(γ−ベンジルグルタメート)を得た。
サイズ排除クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)は3,200、および分子量分布(Mw/Mn)は2.02であった。
【0078】
参考例2 n−ブチルアミン存在下でのポリアミノ酸の製造(2)
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15mL容量の試験管に、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジルグルタメート(1) 408mg(1mmol)、n−ブチルアミン 4μL(0.04mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド 0.5mLを入れ、60℃で48時間撹拌した。撹拌終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、ジエチルエーテルに滴下し、再沈殿精製した。さらに、再沈殿溶液をメンブレンフィルターで濾過することにより、206mg(収率94%)のポリ(γ−ベンジルグルタメート)を得た。
サイズ排除クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)は5,500、および分子量分布(Mw/Mn)は1.84であった。
【0079】
参考例3 n−ブチルアミン存在下でのポリアミノ酸の製造(3)
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15mL容量の試験管に、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジルグルタメート(1) 805mg(2mmol)、n−ブチルアミン 4μL(0.04mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド 1mLを入れ、60℃で48時間撹拌した。撹拌終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、ジエチルエーテルに滴下し、再沈殿精製した。さらに、再沈殿溶液をメンブレンフィルターで濾過することにより、412mg(収率94%)のポリ(γ−ベンジルグルタメート)を得た。
【0080】
サイズ排除クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)は8,400、および分子量分布(Mw/Mn)は1.81であった。
なお、得られたポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)のスペクトルデータを以下に示す:1H NMR (400 MHz, CDCl3, 7.26 ppm): δ= 0.89 (br, 3H), 1.33 (br, 2H), 1.49 (br, 2H), 1.57-2.86 (br, 4H), 3.21, (br, 2H), 3.96 (br, 1H), 5.05, (s, 2H), 7.27 (br, 5H). 13C NMR (100.6 MHz, CDCl3, 76.9 ppm): 13.7, 19.9, 25.4, 29.6, 30.6, 54.6, 56.9, 66.2, 124.7, 128.0, 128.3 135.9, 171.9, 175.3. IR (KBr): 3321, 3034, 1734, 1653, 1541, 1456, 1418, 1388, 1164, 1122, 958 cm-1.
さらに、得られたポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)1.5mg、2−(4'−ヒドロキシフェニルアゾ)安息香酸10mg、トリフルオロ酢酸ナトリウム10mgをテトラヒドロフラン1mlに溶解し、10分間室温で攪拌した。溶液(2μl)をサンプルプレートに滴下して風乾した。このように調製したサンプルを用いてMALDI−TOF質量分析を行った。スペクトルを図4に示す。図4の結果から、末端に環状アミド構造を有するポリアミノ酸が選択的に得られることがわかる。
【0081】
参考例3で得られたポリ(γ−ベンジルグルタメート)の1H NMRスペクトルにおいて、0.89、1.33、 1.49、3.21ppmに観察されたシグナルは用いたブチルアミンのブチル基がポリマー末端に導入されることにより観測されるシグナルであり、このことから一級アミンを用いることで、明確な末端構造を有するポリ(γ−ベンジルグルタメート)が合成できることがわかる。
【0082】
参考例4 n−ブチルアミン存在下でのポリアミノ酸の製造(4)
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15mL容量の試験管に、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジルグルタメート(1) 1630mg(4mmol)、n−ブチルアミン 4μL(0.04mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド2mLを入れ、60℃で48時間撹拌した。撹拌終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、ジエチルエーテルに滴下し、再沈殿精製した。さらに、再沈殿溶液をメンブレンフィルターで濾過することにより、769mg(収率88%)のポリ(γ−ベンジルグルタメート)を得た。
サイズ排除クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)は21,600、および分子量分布(Mw/Mn)は1.36であった。
【0083】
参考例1〜4の結果から、生成するポリ(γ−ベンジルグルタメート)のMnと[1]/[n−ブチルアミン]とがほぼ比例関係にあることがわかった。即ち、Mnはモノマーと開始剤の比によって制御可能であることがわかった。
【0084】
参考例5 イソブチルアミン存在下でのポリアミノ酸の製造
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15mL容量の試験管に、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジルグルタメート(1) 805mg(2mmol)、イソブチルアミン4μL(0.04mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド 1mLを入れ、60℃で48時間撹拌した。撹拌終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、ジエチルエーテルに滴下し、再沈殿精製した。さらに、再沈殿溶液をメンブレンフィルターで濾過することにより、407mg(収率93%)のポリ(γ−ベンジルグルタメート)を得た。
サイズ排除クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)は21,700、および分子量分布(Mw/Mn)は2.75であった。
【0085】
参考例6 p−クロロベンジルアミン存在下でのポリアミノ酸の製造
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15mL容量の試験管に、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジルグルタメート(1) 403mg(1mmol)、p-クロロベンジルアミン24μL(0.2mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド 0.5mLを入れ、60℃で48時間撹拌した。撹拌終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、ジエチルエーテルに滴下し、再沈殿精製した。さらに、再沈殿溶液をメンブレンフィルターで濾過することにより、191mg(収率87%)のポリ(γ−ベンジルグルタメート)を得た。
サイズ排除クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)は1,000、および分子量分布(Mw/Mn)は1.49であった。
【0086】
参考例7 p−(tert−ブチル)フェニルメチルアミン存在下でのポリアミノ酸の製造
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15mL容量の試験管に、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジルグルタメート(1) 403mg(1mmol)、p−(tert−ブチル)フェニルメチルアミン 35μL (0.2mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド 0.5mLを入れ、60℃で48時間撹拌した。撹拌終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、ジエチルエーテルに滴下し、再沈殿精製した。さらに、再沈殿溶液をメンブレンフィルターで濾過することにより、161mg(収率73%)のポリ(γ−ベンジルグルタメート)を得た。
サイズ排除クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)は1,000、および分子量分布(Mw/Mn)は1.50であった。
さらに、得られたポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)1.5mg、2−(4'−ヒドロキシフェニルアゾ)安息香酸10mg、トリフルオロ酢酸ナトリウム10mgをテトラヒドロフラン1mlに溶解し、10分間室温で攪拌した。溶液(2μl)をサンプルプレートに滴下して風乾した。このように調製したサンプルを用いてMALDI−TOF質量分析を行った。測定して得られたスペクトルを図5に示す。
図5の結果から、末端に環状アミド構造を有するポリアミノ酸が選択的に得られることがわかる。
【0087】
参考例8 ジエチルアミン存在下でのポリアミノ酸の製造
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15mL容量の試験管に、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジルグルタメート(1) 805mg(2mmol)、ジエチルアミン 4μL(0.04mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド 1mLを入れ、60℃で48時間撹拌した。撹拌終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、ジエチルエーテルに滴下し、再沈殿精製した。さらに、再沈殿溶液をメンブレンフィルターで濾過することにより、342mg(収率78%)のポリ(γ−ベンジルグルタメート)を得た。
サイズ排除クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)は22,800、および分子量分布(Mw/Mn)は2.39であった。
さらに、得られたポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)を1.5mg、2−(4'−ヒドロキシフェニルアゾ)安息香酸10mg、トリフルオロ酢酸ナトリウム10mgをテトラヒドロフラン1mlに溶解し、10分間室温で攪拌した。溶液(2μl)をサンプルプレートに滴下して風乾した。このように調製したサンプルを用いてMALDI−TOF質量分析を行った。測定して得られたスペクトルを図6に示す。
ジエチルアミンが末端に導入されたポリアミノ酸が一部生成しているものの、その他、末端構造が明確でないポリアミノ酸も生成していることが確認された。
【0088】
参考例9 トリエチルアミン存在下でのポリアミノ酸の製造
窒素雰囲気下、三方コックを取り付けた15mL容量の試験管に、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジルグルタメート(1) 805mg(2mmol)、トリエチルアミン 5.5μL(0.04mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド 1mLを入れ、60℃で48時間撹拌した。撹拌終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、ジエチルエーテルに滴下し、再沈殿精製した。さらに、再沈殿溶液をメンブレンフィルターで濾過することにより、355mg(収率81%)のポリ(γ−ベンジルグルタメート)を得た。
サイズ排除クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)は25,000、および分子量分布(Mw/Mn)は2.14であった。
なお、得られたポリ(γ−ベンジルグルタメート)のスペクトルデータは以下の通りである:1H NMR (400 MHz, CDCl3, 7.26 ppm): δ= 1.57-2.86 (br, 4H), 3.96 (br, 1H), 5.05, (s, 2H), 7.27 (br, 5H).
【0089】
参考例10 n−ブチルアミンの添加による末端にアミノ基を有するポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)の合成と、モノマーの再添加によるポリマー再生長
Step 1. N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジルグルタメート(1) 805mg(2mmol)、n−ブチルアミン 4μL (0.04mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド 1mLを12時間、30℃で反応させた。12時間後、反応溶液を少量シリンジでサンプリングし、転化率と分子量を測定した(転化率93%、Mn8,000、分子量分布1.99)。生成したポリマーをPre-polymer (a)とする。
Step 2. 上記の反応溶液に対して、1(805mg;2mmol)のN,N−ジメチルアセトアミド溶液(1mL)をシリンジで加えた。12時間後、反応溶液を少量シリンジでサンプリングし、転化率と分子量を測定した(転化率90%、Mn12,700、分子量分布1.71)。ここで生成したポリマーをPost-polymer (b)とする。
Step 3. 上記の反応溶液に対して、1(805mg;2mmol)のN,N−ジメチルアセトアミド溶液(1mL)をシリンジで加えた。12時間後、反応溶液を少量シリンジでサンプリングし、転化率と分子量を測定した(転化率83%、Mn15,400、分子量分布1.70)。ここで生成したポリマーをPost-polymer (c)とする。合成経路を以下に示す。Pre-polymer (a)、Post-polymer (b)、Post-polymer (c)のSEC曲線を、図7に示す。
図7の結果から、一段階目の重合が終了した後、さらにモノマーを追加することで、ポリアミノ酸の鎖長を伸ばすことが可能であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】得られたTime-Conversionプロットを示す図である。
【図2】試験例2(実施例1−1で得られたポリアミノ酸)のMALDI-TOF質量分析スペクトルを示す図である。
【図3】試験例2(実施例1−2で得られたポリアミノ酸誘導体)のMALDI-TOF質量分析スペクトルを示す図である。
【図4】参考例3のMALDI-TOF質量分析スペクトルを示す図である。
【図5】参考例7のMALDI-TOF質量分析スペクトルを示す図である。
【図6】参考例8のMALDI-TOF質量分析スペクトルを示す図である。
【図7】生成したポリペプチドのSEC曲線を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アミノ酸カーバメート化合物を重縮合させてポリアミノ酸を得、
(b)得られたポリアミノ酸と末端修飾剤とを反応させることを特徴とするポリアミノ酸誘導体の製造方法。
【請求項2】
アミノ酸カーバメート化合物が、下記式(C)
【化1】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1以上の有機基、Yは水素原子又は電子吸引性基、mは1〜5の整数を示す。)
で表される化合物である請求項1記載のポリアミノ酸誘導体の製造方法。
【請求項3】
重縮合を反応温度10℃〜110℃で行う請求項1又は2記載のポリアミノ酸誘導体の製造方法。
【請求項4】
工程(a)をアミン化合物の存在下で行う請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミノ酸誘導体の製造方法。
【請求項5】
アミン化合物が1級アミンである請求項4いずれかに記載のポリアミノ酸誘導体の製造方法。
【請求項6】
末端修飾剤が、重合性不飽和基を有する化合物である請求項1〜5のいずれか記載のポリアミノ酸誘導体の製造方法。
【請求項7】
請求項6の方法により得られる末端に重合性不飽和基を有するポリアミノ酸誘導体を共重合させることを特徴とする共重合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−59365(P2010−59365A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228870(P2008−228870)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】