説明

ポリアルキレンカーボネートを製造するための方法

本発明は、金属−有機骨格材料を含有する少なくとも1種の触媒の存在下で、二酸化炭素、または酸化炭素を誘導する任意の物質の存在下での酸化アルケンまたは酸化アルケン前駆体の開環によって得ることが可能な交互重合体であるポリアルキレンカーボネートを製造するための方法に関し、この場合、この方法は、前記骨格材料が、孔および金属イオンおよび少なくとも二座の有機化合物を含有し、その際、二座の有機化合物は、金属イオンに対して配位結合していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属−有機骨格(framework)材料を含有する少なくとも1種の触媒の存在下で、二酸化炭素、または酸化炭素を誘導する任意の物質の存在下での酸化アルケンまたは酸化アルケン前駆体の開環によって得ることが可能な交互重合体であるポリアルキレンカーボネートを製造するための方法に関し、この場合、この方法は、前記骨格材料が、孔および金属イオンおよび少なくとも二座の有機化合物を含有し、その際、二座の有機化合物は、金属イオンに対して配位結合していることを特徴とする。
【0002】
アルキレン酸化物、たとえばプロピレンオキシド(PO)と二酸化炭素との接触反応は、種々の生成物、たとえば塗料中で溶剤として使用される環式プロピレンカーボネートを生じる。他の重要な生成物は、ポリプロピレンカーボネートであり、この場合、これらは、二酸化炭素の存在下で前記アルキレンオキシド(エポキシド)の開環反応から得られる交互重合体である。
【0003】
ポリアルキレンカーボネートは有用な材料であり、それというのもその性質、たとえば清浄な燃焼性、透明性、良好な気体遮断性、ブレンド中の引張強さの改善の理由からである。これらのポリマーは、二酸化炭素およびオキシラン(エポキシド)の交互共重合から得ることができる。この方法は、実施のために触媒を必要とする。これらの触媒は、分子状であって、かつ適切な有機溶剤中で可溶であってもよいか、あるいは不均一系触媒であってもよい。
【0004】
従来技術によれば、いくつかの系が、エポキシドと二酸化炭素との共重合中で触媒として使用される。これらの触媒は、金属−アルキル化合物、たとえばジエチル亜鉛またはトリメチルアルミニウムから製造される化合物または化合物の混合物である(たとえば、J.Am. Chem. Soc. 2000, 122, 12487 by Darensbrough, Wildeson, Yarbrough, Reibenspies or Polym, Master. Sci. Eng. 1996, 74, 431, by Darensbrough)。製造における共反応化合物は、一般には、ブレンステッド酸の特性を有する化合物、特にフェノール、アルコール、カルボン酸(参照、たとえばPolymer 2002, 43, 4535-43,Hsu, Tan)、アセトネート、ケト−イミネート(参照、たとえばAngew. Chem.. Int. Ed. 2002, 41 (14) 2599, Moore D. R. Cheng M. Lobkovsky EB. Coates GW)である。金属アミド、たとえばZn(ジ(ビストリメチルシリルアミド))も同様に適用される。金属アルキル化合物およびアミドは高価であり、かつ空気に対して敏感であり、部分的に自己発火性である。したがって、これらを工業的規模で使用するのは困難である。
【0005】
クロム触媒は、たとえばHolmesらによって、Macromolecules (2000)33, 303で記載されている。しかしながら、クロム触媒残分は簡単には除去できるものではなく、かつ着色したポリマー生成物を生じる。さらにこのような触媒は、環式化合物を形成する高い傾向を示す。また金属塩を触媒前駆体として使用されてもよいが、しかしながらこれらの化合物を含有する触媒は、依然として、有用な製造方法に必要な触媒活性を欠失している。
【0006】
一般に、従来技術から公知のZnを含有する触媒の活性および生産性ならびに安全な混和性は制限される。さらに、従来公知の触媒は、元来、分子状であり、それ自体は有孔の骨格を形成するものではないが、このような骨格は、工業的規模の反応器におけるこれらの反応実施のために特に有利である。すなわち、これらは、商品化される場合に、重合反応のために使用されるべき新規触媒について要求されるものである。
【0007】
したがって、多くの使用可能な中心を有する固体触媒を開発することは重要であり、この場合、これらの触媒は、ポリマー生成物混合物から濾過または沈殿によって除去することが可能であってもよい。たとえば、最も活性の固体触媒の一つは、グルタル酸およびZnOからReeによって製造されたZnグルタレートであり、20m/gを下廻るBET表面積を有する。高い表面積の触媒を開発することが重要であることは明らかである。
【0008】
有望な、新規かつ二者択一的な方法において、一般に、ミクロ−および/またはメソ孔を有する触媒活性材料を製造するために、金属イオンおよび分子状の有機構成単位を、いわゆる金属−有機骨格(MOFs)を形成するために使用する。金属−有機骨格材料自体は、たとえばUS5648508、EP−A−0709253、M.O’Keeffeら、J.Sol.State Chem.,152(2000)第3〜20頁、H.Liら、Nature402(1999)第276頁以降、M.Eddaoudiら、Topics in Catalysis9(1999)第105〜111頁、B.Chenら、Science291(2001)第1021〜23頁に記載されている。
【0009】
これらの新規材料の利点として、特に触媒中での適用に関しては以下のとおりである:
(i)孔径は、現在使用されているゼオライトよりも大きいものを実現することができ、
(ii)内部表面積は、現在使用されている有孔材料よりも大きいものであって、
(iii)孔径および/またはチャネル構造は、広い範囲に亘って調整することができ、
(iv)内部表面を形成する有機骨格成分は容易に官能化することができ、
(v)本発明による金属−有機骨格は、ホスト、溶剤または任意の他の付加的な物質が存在しない場合であっても安定であり、特に骨格は、その形状および寸法を圧潰および/または浸透および/または変更することはない。これは、本発明による材料が、触媒として使用されてもよい他の金属有機材料とは異なる点である。
【0010】
しかしながら、これらの新規有孔材料は、それ自体が記載されているにすぎない。共重合反応のため、特にエポキシドと二酸化炭素との重合のためのこれらの触媒活性材料の使用については、いまだ開示されていない。関連する出願において、成形体として(US出願10/157182)およびエポキシド化反応のための(US出願10/157494)これらの新規有孔材料の使用が記載されている。本発明の内容において、Znが活性金属イオンとして前記骨格中に容易に形成されることは特に重要である。
【0011】
本発明の課題は、二酸化炭素または任意の酸化炭素から誘導される物質の存在下での酸化アルケンまたは酸化アルケン前駆体の反応のための方法および触媒を提供することであり、その際、前記反応は、新規の、より効果的な材料を、従来技術による触媒材料に加えて、または触媒材料とは別に含むものである。
【0012】
本発明の課題は、触媒の存在下で、二酸化炭素または任意の酸化炭素から誘導された任意の物質の存在下で、酸化アルケンまたは酸化アルケン前駆体を反応させるための方法を提供することによって解決され、その際、前記触媒は、孔および少なくとも1種の金属イオンならびに少なくとも1種の少なくとも二座の有機化合物を含有する金属−有機骨格材料を含み、この場合、少なくとも二座の有機化合物は、前記金属イオンと配位結合するものであって、かつ前記骨格材料は、他の材料が存在しない場合であってもその寸法および形状を維持するものである。
本発明の好ましい実施態様
前記に示したように、金属有機骨格材料は、たとえばUS5748508、EP−A−0709253、M.O’Keeffeら、J.Sol.State Chem.,152(2000)第3〜20頁、H.Liら、Nature402(1999)第276頁以降、M.Eddaoudiら、Topics in Catalysis9(1999)第105〜111頁、B.Chenら、Science291(2001)第1021〜23頁に記載されている。前記材料を製造するための比較的廉価な方法は、DE10111230.0に記載されている。これらの刊行物の内容は、本発明の内容において十分反映されている。
【0013】
本発明において使用する触媒は、少なくとも1種の金属有機骨格材料、たとえば以下の金属の少なくとも1種である。
【0014】
本発明において使用されるような金属−有機骨格材料は、孔、特にミクロ−および/またはメソ孔を有する。それぞれミクロ孔は、2nmまたはそれを下廻る直径を有する孔であり、かつメソ孔は、2nm〜50nmの範囲の直径を有する孔であり、これらは、inPure Applied Chem.45,第71頁以降、特に第79頁(1976)に定義されている。ミクロ−/メソ孔は、DIN66131および/またはDIN66134による77Kで窒素を吸収する金属−有機骨格材料の能力を測定するための吸収装置によってモニタリング可能である。
【0015】
たとえば、等温曲線のIタイプ−型は、ミクロ孔の存在を示す[たとえば、M.Eddaoudiら、Topics in Catalysis9(1999)]。好ましい実施態様において、Langmuirモデル(DIN66131、66134)によって算定されたような比表面積は、5m/gを上廻り、好ましくは10m/gを上廻り、より好ましくは50m/gを上廻り、特に好ましくは500m/gを上廻り、かつ3000m/gを上廻る範囲に増加してもよい。
【0016】
本発明において使用され、特に挙げられるべき骨格材料の範囲内での金属成分としては、元素周期律表の主族または副族の金属イオン、特にIa、IIa、IIIa、IVa〜VIIIaおよびIb〜VIbの群からの金属イオンである。特にこれらの金属成分において、
【0017】
【化1】

【0018】
好ましい金属イオンおよびその詳細に関しては、EP−A0790253、特に第10頁1.8−30“The Metal Ions”に記載されている(参考のために示す)。本発明の内容において、Znは、金属成分として特に好ましい。
【0019】
EP−A0790253およびUS5648508で開示されているものに加えて、他の金属成分を使用することができ、たとえば、元素周期律表の主族または副族金属の硫酸塩、リン酸塩および他の錯体対イオン金属塩である。金属酸化物、混合酸化物および金属酸化物および/または定義された化学量論比を有するかまたは有しない混合酸化物の混合物が好ましい。前記の金属化合物のすべては、可溶性または不溶性であり、かつこれらは出発材料として粉末または成形体としてか、あるいはこれらの任意の組合せ物として使用することができる。
【0020】
少なくとも二座の有機化合物として、この場合、これらは、金属イオンと配位結合する能力を有するものであって、原則としてすべての化合物は、この目的のために適しており、かつ少なくとも二座であるという前記要求を十分に満たすものを使用することができる。前記有機化合物は、少なくとも2個の中心を有するものであって、この場合、これらは金属塩の金属イオン、特に前記に示された群の金属を用いて配位結合できるものである。 少なくとも二座の有機化合物に関しては、特に、
i)1〜10個の炭素原子を有するアルキル基部分構造、
ii)1〜5個のフェニル環を有するアリール基部分構造、
iii)1〜10個の炭化水素を有するアルキル基または1〜5個のフェニル環を有するアリール基から成るアルキルまたはアリールアミン部分構造、
を有する化合物が挙げられ、その際、前記部分構造は、少なくとも二座の官能基“X”の少なくとも1種と結合し、この場合、“X”は前記化合物の部分構造と配位結合しており、その際Xは、以下の群から選択される:
【0021】
【化2】

であり、その際、Rは1〜5個の炭素原子を有するアルキル基であるか、あるいは1〜2個のフェニル環から成るアリール基であり、かつCH(SH)、C(SH)、CH(NH、C(NH、CH(OH)、C(OH)、CH(CN)およびC(CN)である。
【0022】
特に挙げられるべきものは、飽和または不飽和の、単核または多核の芳香族ジ−、トリ−およびテトラカルボン酸および置換または非置換の、芳香族であり、その際、少なくとも1種のヘテロ原子は、芳香族ジ−、トリ−およびテトラカルボン酸を含有しているものであり、この場合、これらは1個またはそれ以上の核を有する。本発明の内容において好ましい二座有機化合物は、少なくとも2個のカルボキシ基および/または1個または2個のフェニル基を有するアリール基を含むアルキル基部分構造である。
【0023】
好ましいリガンドは、1,3,5−ベンゼントリカルボキシレート(BCT)である。他の好ましいリガンドはADC(アセチレンジカルボキシレート)、NDC(ナフタレンジカルボキシレート)、BDC(ベンゼンジカルボキシレート)、ATC(アダマンタンテトラカルボキシレート)、BTC(ベンゼントリカルボキシレート)、BTB(ベンゼントリベンゾエート)、MTB(メタンテトラベンゾエート)およびATB(アダマンタントリベンゾエート)である。
【0024】
少なくとも二座の有機化合物に加えて、本発明によって使用される骨格材料はさらに1種またはそれ以上の単座リガンドを含有し、この場合、これらは好ましくは以下の単座の物質および/またはこれらの誘導体から選択される:
a.1〜20個の炭素原子を有する直鎖、分枝、環式脂肪族基を含有する、アルキルアミンおよびこれらの相当するアルキルアンモニウム塩(およびこれらの相当する塩)、
b.1〜5個のフェニル環を有するアリールアミンおよびこれらの相当するアリールアンモニウム塩、
c.1〜20個の炭素原子を有する直鎖、分枝、または環式脂肪族基を含有する、アルキルホスホニウム塩、
d.1〜5個のフェニル環を有するアリールホスホニウム塩、
e.1〜20個の炭素原子を有する直鎖、分枝、または環式脂肪族基を含有する、アルキル有機酸および相当するアルキル有機アニオン(および塩)
f.1〜5個のフェニル環を有する、アリール有機酸およびこれらの相当するアリール有機アニオンおよび塩、
g.1〜20個の炭素原子を有する、直鎖、分枝または環式脂肪族基を含有する、脂肪族アルコール、
h.1〜5個のフェニル環を有するアリールアルコール、
i.以下の群からの無機アニオン:
硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、亜硫酸イオン、重亜硫酸イオン、燐酸イオン、燐酸水素イオン、燐酸二水素イオン、二燐酸イオン、三燐酸イオン、亜燐酸イオン、塩化物イオン、塩素酸イオン、臭化物イオン、臭素酸イオン、ヨウ化物イオン、ヨウ素酸イオン、炭酸イオン、重炭酸イオンおよび前記無機アニオンの相当する酸および塩、
j.アンモニア、二酸化炭素、メタン、酸素、エチレン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ナフタレン、チオフェン、ピリジン、アセトン、1−2−ジクロロエタン、メチレンクロライド、テトラヒドロフラン、エタノールアミン、トリエチルアミンおよびトリフルオロメチルスルホン酸。
【0025】
少なくとも二座の有機化合物および単座の物質に関しての詳細は、この場合、これらは、本発明において使用される骨格材料のリガンドから誘導されるものであるが、EP−A0790253に示されている(本明細書中において参考のために示す)。
【0026】
本発明の範囲内において、ここで記載されている種の骨格材料は、金属イオンとしてZn、二座リガンドとしてテレフタル酸から誘導されたリガンドを有するものであることが特に好ましい。前記骨格材料は、刊行物中においてMOF−5として知られている。
【0027】
本発明において使用される骨格材料の製造のためにそれぞれ有用な他の金属イオンおよび少なくとも二座の有機化合物および単座の物質、ならびにこれらの製造方法については、EP−A0790253、US5648508およびDE10111230.0に記載されている。
【0028】
MOF−5の製造のために特に有用な溶剤としては、さらに前記引用文献中で開示されている溶剤、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミドおよびN−メチルピロリドンを単独で、互いの組合せ物で、あるいは他の溶剤との組合せ物の形で使用することができる。骨格材料の製造の範囲内、特にMOF−5の製造の範囲内で、溶剤および母液を、結晶化の後に再循環させることで、コストおよび材料を削減する。
【0029】
金属−有機骨格の孔径は、適した有機リガンドおよび/または二座リガンド化合物(=リンカー)を選択することによって調整することができる。一般に、リンカーが大きければ大きいほど、孔径は大きくなる。ホストの不在下で、かつ少なくとも200°の温度で、金属−有機骨格によってなおも維持されている任意の孔径も可能である。0.2nm〜30nmの範囲の孔径が好ましく、その際、0.3〜3nmの孔径は特に好ましい。
【0030】
以下において、金属有機骨格材料(MOFs)の例が、前記の一般的な概念を例証するために提供される。しかしながら、これらの特定の例は、本発明の概略および範囲を制限することを意味するものではない。
【0031】
たとえば、金属−有機骨格材料の例はすでに合成され、かつ以下に特徴付けられている。さらにこれは、任意の等網状の(isoreticular)金属有機骨格材料(IR−MOFs)を含み、この場合、これらは、本発明の内容において使用されてもよい。種々の孔径および結晶密度を示しながらも同様の骨格トポロジーを有するこのような材料は、たとえばM.Eddouadiら、Science 295(2002)469に記載されており、この場合、それぞれの内容は本発明中に参考のために記載されるものである。
【0032】
使用される溶剤はこれらの材料の合成のために特に重要であり、表に示す。細胞パラメータの値は(角α、βおよびγならびに間隔a,bおよびcは、オングストロームで示す)、x−線回折によって得られ、かつ同様に表において示された空間群を示す。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
【表4】

【0037】
【表5】

【0038】
【表6】

【0039】
【表7】

【0040】
【表8】

【0041】
【表9】

【0042】
【表10】

【0043】
【表11】

ADC アセチレンジカルボン酸
NDC ナフタレンジカルボン酸
BDC ベンゼンジカルボン酸
ATC アダマンテートテトラカルボン酸
BTC ベンゼントリカルボン酸
BTB ベンゼントリベンゾエート
MTB メタンテトラベンゾエート
ATB アダマンテートテトラベンゾエート
ADB アダマンテートジベンゾエート
これら材料の合成例自体については、たとえばJ.Am.Chem.Soc.123(2001)第8241頁以降であるか、あるいはAcc.Chem.Res.31(1998)第474頁以降に記載されており、この場合、これらは十分に本発明の範囲内に包含されるものである。
【0044】
結晶化の母液からのMOF−5の分離は、従来公知の方法で固-液分離、遠心分離、抽出、濾過、フィルター濾過、クロスフロー濾過、凝集助剤(非イオン系、カチオンおよびアニオン系助剤)を用いてか、あるいは、pH移動助剤、たとえば塩、酸または塩基の添加による凝集、フロテーション、ならびに高められた温度および/または真空下での母液の蒸発および固体の濃縮によって、達成することができる。この工程で得られた材料は、典型的には微細な粉末であり、かつ場合によっては多くの実際の適用、たとえば触媒での適用に最適化され、その際、成形体であることが好ましい。したがって、粉末はプレスされるか、あるいは当業者に公知の方法で、特に、粉末を成形体に形付けることが可能な任意の工程で造粒または形成される。このような方法は、たとえばUS出願10/158182に開示されている。
【0045】
さらに、元素周期律表の主族および/または副族から選択された少なくとも1種の付加的な金属と接触させることで、すでに結晶化されている金属−有機骨格を含有する触媒を得ることが可能である。好ましい実施態様において、前記触媒を製造する目的のために、前記に示したような金属−有機骨格剤材料は、元素周期律表からの主族および/または副族の少なくとも1種の金属を含有する物質、好ましくは粉末、溶液または懸濁液と接触させる。
【0046】
本発明の内容における“接触させる”の用語は、少なくとも部分的に、少なくとも種の付加的な金属成分を含有する、前記に示すような金属−有機骨格触媒を生じる任意の方法に関する。金属−有機骨格を付加的な金属成分と接触させるための方法である限り、当業者に公知の任意の方法、特に、有孔材料の装填に関して知られている任意の方法が使用されてもよい。好ましい実施態様において、以下の方法を含むがこれらに限定されることはない:浸漬、被覆、噴霧、含浸、ソーキング、塗布、沈殿、共沈、混練、粉体混練。
【0047】
付加的な金属は、元素周期律表の主族または副族から成る群から、好ましくは副族の金属の群から、さらに好ましくはCu、Ag、Au、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptから成る群、特に好ましくはPd、Pt、Auから成る群から選択される。前記すべての物質の少なくとも2種の混合物が同様に含まれる。付加的なZnと触媒を接触させることは同様に可能である。
【0048】
本発明の開環反応において使用されるべきアルキレンオキシドとしては、任意の物質が使用されてもよく、この場合、これらはC−C−結合を介して、および付加的に一般的な酸素原子を介して連結される少なくとも2個の隣り合った炭素を含有する。この型の化合物はさらに「エポキシド」または「オキシラン」として知られている。このような任意のエポキシドは、本発明による反応のために使用することができる。
【0049】
前記オキシランとしては、エチレンオキシドと同様に置換されたエポキシドが好ましい。これらの化合物は一般式(II):
【0050】
【化3】

[式中、基Rは互いに独立して、水素、ハロゲン、−NO−、CN、−COORまたは1〜32個の炭素原子を有する炭水化物であり、その際、前記炭水化物基は、置換または非置換であってもよい]によって特徴付けられるものであってもよい。すべての基Rは、すべての基に関してかまたは少なくとも2個の基に関して、化合物(II)と同様であってもよい。同様に4個すべての基が異なっていてもよい。
【0051】
ジェミナルに置換されたエポキシドが好ましく、それと同時に、1−位のみで置換されたエポキシドが特に好ましい。特に、エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはシクロヘキセンオキシドの使用が好ましい。プロピレンオキシド(PO)の使用が特に好ましい。本発明において使用すべきエポキシド/オキシランに対するさらなる記載は、DE10236317.4に示されている(これらは本明細書中において参考のために示す)。
【0052】
ポリプロピレンカーボネートを製造するための反応条件および工程パラメータに関しては、本発明による金属−有機架橋触媒が官能性を維持するかぎりにおいて、ポリアルキレンカーボネート重合の分野に関して知られているすべての反応条件および/またはパラメータが可能である。
【0053】
特に、DE10147712.0およびDE10226742.2で記載された条件は、本発明において参考のために包含される。
【0054】
好ましい実施態様において、本発明による触媒を反応チャンバーに添加すると同時に冷却する。適切である場合には、エポキシドを、反応チャンバー中に触媒を添加する前に触媒の溶液/懸濁液に添加してもよい。さらに、エポキシドを反応チャンバー中に直接添加することは可能である。好ましくは、重合反応は不活性条件下で、すなわち、湿分および/または空気の排除下で実施する。
【0055】
重合反応は、連続的またはバッチ式に実施することができる。
【0056】
一般に、重合反応は、高められた圧力および/または高められた温度でする。しかしながら、生成物は、1バールのCO部分圧であっても形成される(周囲圧力)。反応チャンバーの範囲での圧力は、一般には気体COによって生じる。特定の適用において、前記圧力は、不活性媒体、たとえばArまたはNによって生じてもよい。典型的には、1〜250バール、好ましくは10〜150バール、さらに好ましくは15〜120バールの圧力範囲である。反応は−10℃〜200℃で実施され、その一方で20〜150℃の温度が好ましく、かつ40〜120℃の温度が特に好ましい。
【0057】
本発明は、これに制限されることはないが、以下の実施例を用いてさらに説明する。
【0058】

例1:金属−有機骨格材料の製造
ビーカー中に、ジヒドロキシテレフタル酸2.43gおよび硝酸亜鉛四水和物 9.66gを、ジエチルホルミアミド 282.2g中に溶解し、かつ250ml容量の2種のテフロンコートされたオートクレーブに添加した。得られた溶液は黄緑色であった。これに、トリエチルアミン1.24gを滴加した(オートクレーブ当たり)。ゲル形状の白い物質が得られた。
【0059】
これらのバッチは、105℃の温度で20時間に亘って結晶化した。反応生成物は、黄橙色溶液の範囲内で黄色の結晶を含有していた。
【0060】
このようにして得られた結晶を、溶液と一緒にビーカー中に添加した。この懸濁液を窒素雰囲気下で濾過し、かつクロロホルムで3回に亘ってリンスした。リンスした後に、結晶を真空フラスコ中に移し(窒素雰囲気下で)、かつ高い圧力を適用することによって活性化した(ターボ分子ポンプ)。収量は5.9gであった。このようにして得られた材料は、図1に示したX−線回折図を示した。
【0061】
図1は、度の単位で、水平軸(x−軸)上でX−線回折角2θを示し、その一方で垂直軸(y−軸)は、対数スケールで、かつ任意の単位で回折強度を示した。
【0062】
例1:金属−有機骨格材料の製造
種々のリガンドを用いての金属有機骨格材料は、以下の工程によって得ることができる:
反応フラスコ中に、3.67gのベンゼントリカルボン酸および19.26gの硝酸亜鉛四水和物を、ジエチルホルムアミド261.5g中に溶解した。混合物を130°に加熱すると同時に撹拌し、かつ前記温度を1.5時間に亘って維持し、結晶化を誘導した。
【0063】
得られた懸濁液を窒素雰囲気下で濾過し、かつクロロホルムで3回に亘ってリンスした。リンスした後に、結晶を真空フラスコ中に移し(窒素雰囲気下および室温で)、かつ高いバキュームを適用することによって活性化させた(ターボ分子ポンプ)。収量は10gであった。このようにして得られた結晶材料は、図2に示したX−線回折図を示した。
【0064】
図2は、水平軸(x−軸)上で、x線回折角2θを°の単位で示し、その一方で垂直軸(y−軸)は、対数スケールで、かつ任意の単位で回折強度を示した。
【0065】
例2:二者択一的な共重合反応中での例1および例2の触媒材料の使用
驚くべきことに、例1および例2の触媒は、二者択一的な共重合反応のための活性触媒であることが見出された。
【0066】
CO圧20バールでのトルエン(0.5ml)中のPO(2ml)の反応は、CO減少の結果としての圧力低下をモニタリングすることによって実施した。3時間の反応後に、得られたポリマーを非溶剤中で沈殿し、かつ単離した。収量はPO含量に対して25質量%までであることが見出された。
【0067】
NMRおよびSECによるポリマー分析は、現実のポリマーカーボネートが60000〜75000g/質量平均分子量で、(>80%炭酸結合)、8を下廻る分散指数で形成されることを示した。これらの数字は、改善のための余地を示唆するとはいえ、活性および収率が、MOFの特定構造の作用であるといった事実は、特定のMOF−ベース触媒を調整することによって、共重合反応のための高い活性触媒が見出されるであろうことを教示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】例1の結果を示すX線回折図
【図2】例2の結果を示すX線回折図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の存在下で、二酸化炭素または二酸化炭素誘導物質ならびに酸化アルケンまたは酸化アルケン前駆体から、ポリアルキレンカーボネートを製造するための方法において、触媒が、孔および少なくとも1種の金属イオンならびに前記金属イオンと配位結合している少なくとも1種の少なくとも二座の有機化合物を含有する、金属−有機骨格材料を含むことを特徴とする、二酸化炭素または二酸化炭素誘導物質ならびに酸化アルケンまたは酸化アルケン前駆体から、ポリアルキレンカーボネートを製造するための方法。
【請求項2】
金属−有機骨格触媒の金属イオンが、
【化1】

のイオンから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属−有機骨格触媒が、金属イオン成分としてZn2+を含有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも二座の有機化合物が、少なくとも2個のカルボキシ基および/または少なくとも2個のカルボキシ基を有する1個または2個のフェニル環を有するアリール基を含む、アルキル基部分構造の群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも二座の有機化合物が、テレフタル酸または2,5−ジヒドロキシテレフタル酸から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
酸化アルケンが、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびシクロヘキセンオキシドから成る群から選択される、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−503946(P2006−503946A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−545938(P2004−545938)
【出願日】平成15年10月22日(2003.10.22)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011704
【国際公開番号】WO2004/037895
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【出願人】(597015922)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン (15)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of Michigan
【Fターム(参考)】