説明

ポリイソシアナート及びポリオールを含む被覆用組成物

本発明は、a.ポリイソシアナート、b.分子あたり3個を超えるヒドロキシル基の平均官能性を有するポリオール、c.イソシアナート基及びヒドロキシル基の付加反応のための金属系硬化触媒、並びに、d.メルカプトカルボン酸を含む非水性の被覆用組成物であって、カルボン酸のカルボニル基がπ電子系と共役しているカルボン酸を含有しない非水性の被覆用組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアナート、ポリオール、イソシアナート基及びヒドロキシル基の付加反応のための金属系触媒、並びに、チオール官能性化合物を含む被覆用組成物に関する。本発明はまた、本発明の被覆用組成物を調製するための部品のキット、及び、本発明の組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2007/020270号は、ポリイソシアナート、ポリオール、イソシアナート基及びヒドロキシル基の付加反応のための金属系触媒、チオール官能性化合物、並びに、カルボン酸を含む被覆用組成物であって、カルボン酸のカルボニル基がπ電子系と共役している被覆用組成物を記載する。
【0003】
英国特許第2188327A号はポリオール/ポリイソシアナートの被覆用組成物に関し、より具体的には、そのために効果的である触媒系に関する。触媒系は、金属触媒と、モル過剰の錯化剤との反応生成物を含む。錯化剤はメルカプト化合物又はポリフェノールである。この文献は、三官能性ポリオール、ポリイソシアナート、ジブチルスズジラウラート及び様々なメルカプタンを含有する被覆用組成物を開示する。カルボキシル官能性を有するメルカプタンが配合物の可使時間を短くすることが報告される。
【0004】
受け入れられ得る特性を有する塗膜を公知の組成物から調製することができるが、大きい又は非常に大きい不揮発物含有量、すなわち、揮発性有機化合物(VOC)の低い含有量が要求される場合には特に、可使時間、外観特性、硬化速度及び硬化塗膜の硬度のバランスをさらに改善することが求められ続けている。さらに、実際には、様々な塗膜が、周囲温度及び大気水分の様々な条件のもとで塗布される。望ましい特性の改善されたバランスが、様々な塗布条件のもとで達成されなければならない。より少ない量の硬化触媒を使用することにより、閉じ込められた溶媒及び/又はガスによって引き起こされる塗膜欠陥の危険性が低下する。しかしながら、そのような使用は、垂れ下り及び/又は汚れがちな積み荷の危険性とともに、塗膜のより長い乾燥時間及び低下した硬度もまたもたらす。より長い乾燥時間は、被覆操作の大きい処理量を考慮して望ましくない。さらに、短い乾燥時間を得るために大きい硬化触媒負荷量を含む低VOC被覆用組成物は、乾燥途中の塗膜における泡の安定化に悩まされ、このため、ピンホールが、乾燥した塗膜層において生じる。ピンホールは塗膜層の外観及び耐久性を損なう。従って、大きい硬化速度、長い可使時間、低いVOC含有量、並びに、硬化した塗膜の良好な外観及び硬度の非常に良好なバランスを、公知の被覆用組成物により達成することができない。
【0005】
従って、本発明では、良好な外観特性(特に、ピンホールに対する低い感受性)及び良好な硬度を有する塗膜をもたらす様々な特性の好都合なバランス、すなわち、塗布粘度における揮発性有機溶媒の低い含有量、大きい硬化速度及び長い可使時間の好都合なバランスを有する被覆用組成物を提供することが探索される。加えて、そのような被覆用組成物はまた、自動車車両の外面仕上げのために要求される他の特性(例えば、柔軟性、耐ひっかき性、光沢、耐久性、並びに、化学物質及びUV線に対する抵抗性など)を示す硬化した塗膜を提供しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/020270号
【特許文献2】英国特許第2188327A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、
a.ポリイソシアナート、
b.分子あたり3個を超えるヒドロキシル基の平均官能性を有するポリオール、
c.イソシアナート基及びヒドロキシル基の付加反応のための金属系硬化触媒、及び
d.メルカプトカルボン酸
を含む非水性の被覆用組成物であって、カルボン酸のカルボニル基がπ電子系と共役しているカルボン酸を含有しない非水性の被覆用組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の被覆用組成物は、良好な外観特性(特に、ピンホールに対する低い感受性)及び良好な硬度を有する被覆をもたらす様々な特性の好都合なバランス、すなわち、塗布粘度における揮発性有機溶媒の低い含有量、大きい硬化速度及び長い可使時間の好都合なバランスを提供する。加えて、本発明の被覆用組成物はまた、自動車車両の外面仕上げのために要求される他の特性(例えば、柔軟性、耐ひっかき性、光沢、耐久性、並びに、化学物質及びUV線に対する抵抗性など)を示す硬化した塗膜を提供する。
【0009】
本発明の被覆用組成物において使用される好適なイソシアナート官能性架橋剤が、少なくとも2つのイソシアナート基を含むイソシアナート官能性化合物である。好ましくは、イソシアナート官能性架橋剤はポリイソシアナートであり、例えば、脂肪族、脂環族又は芳香族のジイソシアナート、トリイソシアナート又はテトライソシアナートなどである。ジイソシアナートの例には、1,2−プロピレンジイソシアナート、トリメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、2,3−ブチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、オクタメチレンジイソシアナート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、ドデカメチレンジイソシアナート、ω,ω’−ジプロピルエーテルジイソシアナート、1,3−シクロペンタンジイソシアナート、1,2−シクロヘキサンジイソシアナート、1,4−シクロヘキサンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、4−メチル−1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、trans−ビニリデンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアナート、(Desmodur(登録商標)W)、トルエンジイソシアナート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、キシリレンジイソシアナート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアナート(TMXDI(登録商標))、1,5−ジメチル−2,4−ビス(2−イソシアナトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,4−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、4,4’−ジイソシアナト−ジフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジイソシアナト−ジフェニル、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジイソシアナト−ジフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアナト−ジフェニル、4,4’−ジイソシアナト−ジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナト−ジフェニルメタン及びジイソシアナトナフタレンが含まれる。トリイソシアナートの例には、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、1,8−ジイソシアナト−4−(イソシアナトメチル)オクタン及びリシントリイソシアナートが含まれる。ポリイソシアナートの付加物及びオリゴマー、例えば、ビウレット、イソシアヌラート、アロファナート、ウレトジオン、ウレタン及びそれらの混合物などもまた含まれる。そのようなオリゴマー及び付加物の例が、2分子のジイソシアナート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアナート又はイソホロンジイソシアナートなど)のジオール(例えば、エチレングリコールなど)への付加物、3分子のヘキサメチレンジイソシアナートの、1分子の水への付加物(これは、BayerのDesmodur Nの商品名で入手可能である)、1分子のトリメチロールプロパンの、3分子のトルエンジイソシアナートへの付加物(これは、BayerのDesmodur Lの商品名で入手可能である)、1分子のトリメチロールプロパンの、3分子のイソホロンジイソシアナートへの付加物、1分子のペンタエリトリトールの、4分子のトルエンジイソシアナートへの付加物、3モルのm−α,α,α’,α’−テトラメチルキシレンジイソシアナートの、1モルのトリメチロールプロパンへの付加物、1,6−ジイソシアナトヘキサンのイソシアヌラート三量体、イソホロンジイソシアナートのイソシアヌラート三量体、1,6−ジイソシアナトヘキサンのウレトジオン二量体、1,6−ジイソシアナトヘキサンのビウレット、1,6−ジイソシアナトヘキサンのアロファナート、及び、それらの混合物が含まれる。さらに、イソシアナート官能性モノマー(例えば、α,α’−ジメチル−m−イソプロペニルベンジルイソシアナートなど)の(コ)ポリマーが使用に好適である。
【0010】
本発明の被覆用組成物はさらに、分子あたり3個を超えるヒドロキシル基の平均官能性を有するポリオールを含む。これらは、モノマー、オリゴマー、ポリマー及びそれらの混合物であり得る。オリゴマー及びポリマーが一般に好ましい。好適なポリマーの例には、ポリエステルポリオール、ポリアクリラートポリオール、ポリカルボナートポリオール、ポリウレタンポリオール、メラミンポリオール、並びに、それらの混合物及び混成物が含まれる。様々なそのようなポリマーが一般に当業者には公知であり、また、市販されている。好適なポリエステルポリオール、ポリアクリラートポリオール及びそれらの混合物が、例えば、国際特許出願第96/20968号及び欧州特許出願第0688840A号に記載される。好適なポリウレタンポリオールの例が国際特許出願第96/040813号に記載される。
【0011】
さらなる例には、例えば、国際特許出願第93/17060号などに記載されるヒドロキシ官能性エポキシ樹脂、アルキド及びデンドリマーポリオールが含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1つの実施形態において、ポリオールは、分子あたり少なくとも4個のヒドロキシル基の平均官能性を有するか、又は、分子あたり少なくとも5個のヒドロキシル基の平均官能性を有する。一般に、ポリオールは、分子あたり最大でも20個のヒドロキシル基の平均官能性を有する。他の実施形態において、ポリオールは、分子あたり最大でも15個のヒドロキシル基の平均官能性、又は、分子あたり最大でも10個のヒドロキシル基の平均官能性を有する。
【0013】
本発明の被覆用組成物はさらに、潜在的なヒドロキシ官能性化合物を含むことができ、例えば、二環性オルトエステル基、スピロ−オルトエステル基又はスピロ−オルトシリカート基を含む化合物、或いは、二環性のアミドアセタールなどを含むことができる。これらの化合物及びそれらの使用が、国際特許出願第97/31073号、同第2004/031256号及び同第2005/035613号にそれぞれ記載される。
【0014】
1つの実施形態において、本発明の被覆用組成物は、分子あたり3個を超えるヒドロキシル基の平均官能性を有するポリエステルポリオールと、分子あたり3個を超えるヒドロキシル基の平均官能性を有するポリアクリラートポリオールとを含む。
【0015】
上記で述べられるように、本発明の被覆用組成物はまた、イソシアナート基及びヒドロキシル基の付加反応のための金属系触媒を含む。様々なそのような触媒が当業者には公知である。触媒は一般に、被覆用組成物の不揮発物に基づいて計算されるとき、0.001重量%〜10重量%の量で使用され、好ましくは0.002重量%〜5重量%の量で使用され、より好ましくは0.01重量%〜1重量%の量で使用される。金属系触媒における好適な金属には、亜鉛、コバルト、マンガン、ジルコニウム、ビスマス及びスズが含まれる。スズ系触媒、ビスマス系触媒及びジルコニウム系触媒が、特に良好に機能することが見出されている。被覆用組成物がスズ系触媒を含むことが好ましい。スズ系触媒の周知の例が、ジメチルスズジラウラート、ジメチルスズジベルサタート(diethyl tin diversities)、ジメチルスズジオレアート、ジブチルスズジラウラート、ジオクチルスズジラウラート及びオクタン酸スズである。
【0016】
上記で述べられるように、本発明の被覆用組成物はメルカプトカルボン酸を必須成分として含む。メルカプトカルボン酸は、メルカプト基もまた分子に有するカルボン酸である。何らかの理論によってとらわれることを望まないが、メルカプトカルボン酸が金属系触媒の金属原子とのキレート型錯体を形成し得ることが考えられる。そのような錯体形成はさらに、金属系触媒の一時的な不活性化を引き起こすことが考えられる。特に好都合な結果が2−メルカプトカルボン酸系化合物及び3−メルカプトカルボン酸系化合物により得られ得ることがさらに見出されている。これらのメルカプトカルボン酸は、塗布された塗膜のより長いオープンタイム(open time)をもたらし、これにより、閉じ込められた気泡が飛散するためのより多くの時間を残すことが見出されている。これらのメルカプトカルボン酸は金属系硬化触媒の金属原子のための二座配位子として作用することが考えられる。好適なメルカプトカルボン酸の例には、メチルチオグリコラート、2−メルカプト酢酸、メルカプトコハク酸、システイン、3−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトプロピオン酸、11−メルカプトウンデカン酸及び2,3−ジメルカプトコハク酸が含まれる。
【0017】
メルカプトカルボン酸は一般に、被覆用組成物の不揮発物に基づいて計算されるとき、0.1重量%〜18重量%の量で存在し、好ましくは0.2重量%〜10重量%の量で存在し、より好ましくは0.3重量%〜5重量%の量で存在する。メルカプトカルボン酸の実際の量は、用いられた金属系触媒のタイプ及び量、メルカプトカルボン酸のチオール当量重量、並びに、被覆用組成物の所望される特性プロフィルに依存する。いくつかの実施形態において、メルカプトカルボン酸を、組成物が金属系触媒の金属原子に関してモル過剰のチオール基を含むような量で使用することが有益であり得る。
【0018】
上記で述べられるように、メルカプトカルボン酸は、金属系硬化触媒の金属原子のための二座配位子として作用し、これにより、環状錯体を形成することが考えられる。金属系硬化触媒及びメルカプトカルボン酸を被覆用組成物において別々の成分として含むことの代わりに、メルカプトカルボン酸及び金属系硬化触媒を予備混合することもまた可能であることが見出されており、この場合、これらのメルカプトカルボン酸及び金属系硬化触媒は、混合したとき、そのようなものとして被覆用組成物に含まれていたと考えられる反応生成物を形成する。従って、別の実施形態において、本発明はまた、
a.ポリイソシアナート、
b.分子あたり3個を超えるヒドロキシル基の平均官能性を有するポリオール、及び
c.i)イソシアナート基及びヒドロキシル基の付加反応のための金属系硬化触媒と、ii)メルカプトカルボン酸との反応生成物
を含む非水性の被覆用組成物であって、カルボン酸のカルボニル基がπ電子系と共役しているカルボン酸を含有しない非水性の被覆用組成物に関する。
【0019】
本発明による被覆用組成物において、イソシアナート官能基対ヒドロキシル基の当量比が好適には0.5〜4.0の間であり、好ましくは0.7〜3.0の間であり、より好ましくは0.8〜2.5の間である。一般に、被覆用組成物におけるヒドロキシ官能性バインダー対イソシアナート官能性架橋剤の重量比が、不揮発物含有量に基づいて、85:15〜15:85の間であり、好ましくは70:30〜30:70の間である。
【0020】
本発明の液状被覆用組成物は、低分子量のバインダー(これは必要な場合には1つ又はそれ以上の反応性希釈剤と組み合わされる)が使用されるときには特に、揮発性希釈剤を用いることなく使用及び塗布することができる。代替では、被覆用組成物は揮発性有機溶媒を必要な場合には含むことができる。好ましくは、被覆用組成物は、組成物全体に基づいて500g/l未満の揮発性有機溶媒を含み、より好ましくは、480g/l未満の揮発性有機溶媒を含み、最も好ましくは、420g/l以下の揮発性有機溶媒を含む。組成物の不揮発物含有量(これは通常、固形物含有量として示される)は好ましくは、組成物全体に基づいて50重量%を超え、より好ましくは54重量%を超え、最も好ましくは60重量%を超える。
【0021】
好適な揮発性有機希釈剤の例が、炭化水素(例えば、トルエン、キシレン、Solvesso100など)、ケトン、テルペン(例えば、ジペンテン又はパイン油など)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタンなど)、エーテル(例えば、エチレングリコールジメチルエーテルなど)、エステル(例えば、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ブチルなど)、又は、エーテルエステル(例えば、酢酸メトキシプロピル又はプロピオン酸エトキシエチルなど)である。これらの化合物の混合物もまた使用することができる。
【0022】
そうすることが所望されるならば、1つ又はそれ以上のいわゆる「規制免除溶媒」を被覆用組成物において含むことが可能である。規制免除溶媒は、スモッグを形成するための大気光化学反応に関与しない揮発性有機化合物である。規制免除溶媒は有機溶媒であり得るが、日光の存在下では窒素酸化物と反応するために非常に長い時間を要するので、合衆国環境保護局は、その反応性は無視できないと見なしている。塗料及び塗膜における使用について認可されている規制免除溶媒の例には、アセトン、酢酸メチル、パラクロロベンゾトリフルオリド(これはOxsol100の名称で市販されている)、及び、揮発性のメチルシロキサン系化合物が含まれる。酢酸第三級ブチルもまた、規制免除溶媒として見なされつつある。
【0023】
上記で記載される成分に加えて、他の化合物を本発明に従って被覆用組成物において存在させることができる。そのような化合物は、上記のヒドロキシ官能性化合物及び/又はイソシアナート官能性架橋剤と架橋し得る反応性基を必要な場合には含むバインダー及び/又は反応性希釈剤であり得る。そのような他の化合物の例が、ケトン樹脂、アスパルギル酸(aspergilla acid)エステル、及び、潜在性又は非潜在性のアミノ官能性化合物(例えば、オキサゾリジン系化合物、ケチミン系化合物、アルジミン系化合物、ジイミン系化合物、第二級アミン及びポリアミンなど)である。これらの化合物及び他の化合物が当業者には公知であり、とりわけ、米国特許第5214086号において言及される。
【0024】
本発明の被覆用組成物はさらに、被覆用組成物において一般に使用される他の成分、添加物又は補助剤を含むことができ、例えば、顔料、色素、界面活性剤、顔料分散助剤、均展剤、湿潤化剤、へこみ防止剤、消泡剤、垂れ下り防止剤、熱安定剤、光安定剤、UV吸収剤、酸化防止剤及びフィラーなどを含むことができる。
【0025】
本発明の被覆用組成物は、どのような基体に対しても塗布することができる。基体は、例えば、金属(例えば、鉄、スチール及びアルミニウム)、プラスチック、木材、ガラス、合成材料、紙、皮革又は他の塗膜層であり得る。他の塗膜層は本発明の被覆用組成物から構成され得るか、又は、異なる被覆用組成物であり得る。本発明の被覆用組成物は、透明被膜、下塗り、着色された上塗り、プライマー及びフィラーとしての特段の有用性を示す。本発明の被覆用組成物が透明被膜であるとき、本発明の被覆用組成物は好ましくは、色及び/又は効果を与える下塗りの上に塗布される。その場合、透明被膜が多層ラッカー被覆の最上層を形成する(例えば、典型的には自動車の外面に塗布される最上層など)。下塗りは水系の下塗り又は溶媒系の下塗りであってもよい。
【0026】
本発明の被覆用組成物は、対象物(例えば、橋梁、パイプライン、工場施設及び工業用建築物、石油設備及びガス設備、又は、船舶など)を被覆するために好適である。本発明の組成物は、自動車及び大型輸送車両(例えば、列車、トラック、バス及び航空機など)を仕上げ及び再仕上げするために特に好適である。
【0027】
塗布された被覆用組成物は周囲温度で硬化させることができ、例えば、約10℃〜約40℃の間で硬化させることができる。代替では、硬化を高い温度で行うことができ、例えば、約40℃〜約80℃の範囲で行うことができる。約60℃の温度で硬化させることが、特に好都合であることが見出されている。そうすることが所望されるならば、本発明の被覆用組成物はオーブンで硬化させることできる。代替では、硬化を(近)赤外線によって支えることができる。高い温度での硬化の前に、塗布された被覆用組成物は必要に応じて、被覆用組成物に存在する揮発性溶媒の少なくとも一部分を蒸発させるためにフラッシュオフ(flash off)段階に供することができる。
【0028】
被覆用組成物の用語は、本明細書中で使用される場合、接着性組成物としてのその使用もまた包含することを理解しなければならない。
【0029】
ヒドロキシ官能性バインダー及びイソシアナート官能性架橋剤を含む被覆用組成物に関しては通常的であるように、本発明による組成物は、限定された可使時間を有する。従って、本発明の組成物は好適には、多成分組成物として提供され、例えば、二成分組成物として、又は、三成分組成物として提供される。従って、本発明はまた、本発明の被覆用組成物を調製するための部品のキットであって、
a)分子あたり3個を超えるヒドロキシル基の平均官能性を有するポリオールを含むバインダーモジュール、
b)ポリイソシアナートを含む架橋剤モジュール、及び
c)必要な場合には用いられるが、揮発性有機溶媒を含む希釈剤モジュール
を含み、イソシアナート基及びヒドロキシル基の付加反応のための金属系触媒と、メルカプトカルボン酸とが、前記モジュールの1つ又はそれ以上に関して個々に、又は、組合せで分布する、キットに関する。
【0030】
好ましい実施形態において、イソシアナート基及びヒドロキシル基の付加反応のための金属系触媒と、メルカプトカルボン酸とが、モジュールa)及びモジュールc)の1つ又はそれ以上に関して個々に、又は、組合せで分布する。組成物の成分を部品のキットの形態で提供することは、成分が、必要とされるモル比で提供され得るというさらなる利点を有する。従って、個々の成分の間違った混合比によって引き起こされる誤りの危険性が最小限に抑えられる。
【実施例】
【0031】
別途明言されない限り、液状被覆用組成物又は得られた塗膜薄膜の特性は、下記に記載されるように求めた。
【0032】
DINC4粘度をDINフローカップ(No.4)で測定した。粘度が秒の単位で与えられる。
【0033】
揮発性有機物含有量(VOC)を被覆用組成物の溶媒含有量から理論的に計算した。
【0034】
エナメル・ホールド・アウト(Enamel Hold Out)(EHO)を全体的な目視外観として求めた。それぞれのサンプルを1〜10の尺度で目視外観について評価した(1=非常に不良、10=優れている)。決定では、光沢、しわ、流れ、及び、像鮮明さ/像の明確度が考慮に入れられる。平均数字により、EHOが与えられる。ピンホール感受性を視覚的に求めた。それぞれのサンプルを、塗膜の同程度の層厚さで、1〜10の尺度で評価した(1=非常に不良、10=優れている)。
【0035】
温時粘着性を、60℃〜65℃での硬化サイクルが終了した5分後に手作業で求めた。それぞれのサンプルを、塗膜の同程度の層厚さで、1〜10の尺度で評価した(1=非常に不良、10=優れている)。
【0036】
オープンタイムをBK乾燥記録計により求めた。乾燥記録計による測定を、新たに塗布された塗膜の乾燥速度及びオープンタイムを示された温度で求めるために行った。乾燥記録計により、4つの異なる段階を区別することができる:
段階1:針跡が、閉じられた薄膜にリフローする。
段階2:針跡が規則的であり、閉じられた薄膜にリフローしない。塗膜が、基体に至るまで損なわれる。
段階3:針跡が不規則であり、基体に至るまでの損傷が付随して起こる。
段階4:針跡が再び規則的であり、しかし、塗膜は表面上の損傷のみを示す。段階4が終了したとき、損傷が全く認められない。
【0037】
乾燥記録計実験のために使用される塗膜層をK−Controle被覆装置により塗布した。
【0038】
Persoz硬度をISO1522に従って測定した。
【0039】
実験で使用された、2.8の官能性を有するポリエステルポリオールを、国際特許公開第2007/0020269号(22頁、実施例E2)に記載されるように調製した。
【0040】
実施例で使用されるポリアクリラートポリオールは、国際特許公開第2007/0020269号(19頁16行〜21頁、実施例A1〜実施例A4)に記載されるのと同様な方法においてであった。
【0041】
【表A】

【実施例1】
【0042】
6つの透明被膜組成物を、成分を表1に示されるような重量割合で混合することによって調製した。イソシアナート基対ヒドロキシル基のモル比を1.25:1に調整した。表1の透明被膜組成物はすべて、下記の添加物を含有した:
0.6重量部のTinuvin1130
1.1重量部のTinuvin292
0.1重量部のBYK331
0.1重量部のBYK355
【0043】
【表1】

【0044】
これらの透明被膜組成物は、2つの異なるDBTLブロッキング系、すなわち、PTMP/安息香酸(E1.1、E1.2)及び2−MPA(E1.3〜E1.6)に基づいた。サンプルE1.5及びサンプルE1.6において、2−MPAの量がサンプルE1.3及びサンプルE1.4における量の半分であった。サンプルE1.2、サンプルE1.4及びサンプルE1.6において、DBTLの量を増大させた。2−MPAを、安息香酸と比較して等モル量で使用した。PTMPを等モルのSH量で使用した。
【0045】
【表2】

【0046】
表2から、サンプルE1.1及びサンプルE1.2の粘度増大が時間において最も速いことを推測することができる。サンプルE1.3及びサンプルE1.4が時間において最も遅い粘度増大を有し、次いでサンプルE1.5及びサンプルE1.6である。
【0047】
2−MPAのブロッキング挙動が、PTMP/安息香酸触媒ブロッキング系よりも良好である。より多量のDBTL及び半分量の2−MPA(サンプルE1.6)を用いる場合でさえ、粘度増大はサンプルE1.1の場合よりも遅い。より遅い粘度増大により、可使時間がより長いことが示される。加えて、2−MPAをPTMP/安息香酸に優先して使用することが経済的観点から好まれる。
【0048】
60℃及び20℃における乾燥記録計実験は表2の粘度増大実験と一致している。サンプルE1.3が最も長いオープンタイム(最も遅い粘度増大)を有する。長いオープンタイムは、空気及び溶媒を塗膜層から飛散させるために好都合である。サンプルE1.1、サンプルE1.3及びサンプルE1.5が直接に比較可能である。
【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【実施例2】
【0051】
透明被膜組成物を、成分を表5に示されるような重量割合で混合することによって調製した。イソシアナート基:ヒドロキシル基のモル比を1.03:1に調整した。下記の表5の透明被膜組成物は下記の添加物を含有した:
0.6重量部のTinuvin1130
1.0重量部のTinuvin292
0.1重量部のBYK331
1.0重量部のBYK392
【0052】
【表5】

【0053】
これらの透明被膜組成物は、4つの異なるDBTLブロッキング成分、すなわち、2−MPA(E2.1、本発明に従う)、PTMP(E2.2、比較例)、PTMP/安息香酸(E2.3、比較例)及び2−メルカプトエタノール(E2.4、比較例)に基づいた。触媒ブロッキング剤を等モル量で使用したか、又は、PTMPの場合には、等モルSH量によって置き換えた。
【0054】
透明被膜組成物を、混合の30分後に、25℃及び75%〜80%の相対湿度で被覆ロボットによって噴霧した。アルミニウム製パネルを基体として使用した。基体を、クロム酸塩非含有エッチプライマー、非サンダー仕上げ用フィラー及び水系メタリック下塗りにより連続的に予備被覆した。塗膜が塗布されると、パネルを、中間のフラッシュオフ時間を伴うことなく、60℃で保たれるオーブンに直ちに移した。
【0055】
【表6】

【0056】
本発明によるサンプルE2.1が、4つのサンプルの中で最も良いと判定された。エナメル・ホールド・アウト及び流れが比較例の場合よりも良好であった。サンプルE2.1の温時粘着性が7であると評価された。サンプルE2.2〜サンプルE2.4の温時粘着性が8であると評価された。
【0057】
2−MPAを含有する配合物E2.1は、20℃及び60℃の両方において最も長いオープンタイムを有する。長いオープンタイムは、塗膜の流れのために、また、空気及び溶媒を塗膜層から飛散させるために好都合である。溶媒及び空気の適正な飛散がEHOのために好都合である。
【0058】
【表7】

【0059】
【表8】

【実施例3】
【0060】
5つの透明被膜組成物を、成分を表9に示されるような重量割合で混合することによって調製した。
【0061】
下記の表9の透明被膜組成物は下記の添加物を含有した:
0.6重量部のTinuvin1130
1.1重量部のTinuvin292
0.1重量部のBYK331
0.1重量部のBYK355
【0062】
【表9】

【0063】
これらの透明被膜組成物は、5つの異なるDBTLブロッキング成分、すなわち、2−MPA(E3.1、本発明に従う)、E2−MPA(E3.2、比較例)、E3−MPA(E3.3、本発明に従う)、E3−MPA(E3.4、比較例)及びTGA(E3.5、本発明に従う)に基づいた。すべてのブロッキング剤を等モル量で使用した。従って、すべてのブロッキング剤が直接に比較可能である。
【0064】
下記において、DINカップ4によって測定されるサンプルE3.1〜サンプルE3.5の20℃における粘度発達がまとめられる。
【0065】
【表10】

【0066】
表10から、サンプルE3.1が75分後に最も低い粘度を有することが明白である。2−メルカプトカルボン酸を含有する本発明の組成物(E3.1及びE3.5)は、2−メルカプトカルボン酸官能性のエチルエステルを含有する比較用配合物(E3.2)と比較して、75分後により低い粘度を有する。粘度発達の同じ傾向が、サンプルE3.3(最も遅い)と、サンプルE3.4(最も速い)との間において認められる。サンプルE3.1、サンプルE3.3及びサンプルE3.5により、近くに近接しているチオール官能性及びカルボン酸官能性が、良好な触媒ブロッキング挙動のために有益であることが明らかにされる。この現象は、最も可能性のあるものとして、触媒に対するチオール−カルボン酸配位子の二座配位によって説明することができる。
【0067】
60℃における乾燥記録計実験は、可使時間実験の場合と同じ観測結果を示す。例えば、2−MPAを含有する配合物が最も遅い粘度発達を有する。
【0068】
【表11】

【実施例4】
【0069】
Lesonal(商標)HS420上塗りラインを使用して、2つの車体再吹き付け塗装を製造物の技術データシートに従って行った。Lesonal HS420上塗りラインは、自動車再仕上げ市場のために特に設計される、420gr/l以下の溶媒系ポリエステル/ポリアクリラートポリオール−イソシアナート上塗りシステムである。ポリエステルポリオール:f(OH)=4.4;NVC=80%;t=−2℃。ポリアクリラートポリオール:f(OH)=4.1;NVC=74%;t=20℃。赤色のRAL3020をA成分として選択し、Lesonal(商標)HS420上塗りトナー組合せから調製した。有機の着色された(例えば、赤色/青色)A成分は、大きいピンホール感受性を有することが公知である。Lesonal(商標)HS420硬化剤を両方のサンプルのための硬化剤として使用した。一方の上塗り用の、直ちに噴霧可能な混合物がサンプルE4.1(比較例)により仕上げられ、もう一方のサンプルがサンプルE4.2(本発明に従う)により仕上げられた。
【0070】
【表12】

【0071】
2つの車体再吹き付け塗装を35℃及び25%の湿度で噴霧ブースにおいて行った。
使用された車体は、通常サイズの5ドア乗用車と類似していた。2つのサンプルを、直ちに噴霧可能な組成物を調製した15分後に噴霧した。上塗りを、5分〜10分のフラッシュオフを層の間に伴って2層で塗布した。上塗りが塗布された後、フラッシュオフ時間はなく、塗布された塗膜を60℃〜65℃で35分間硬化させた。
【0072】
【表13】

【0073】
表13における結果は、サンプルE4.1を上回るサンプルE4.2のピンホール感受性、EHO、噴霧性及び流れにおける改善を明らかにする。
【実施例5】
【0074】
工業的様式(例えば、エアレス/静電装置)での420g/lの上塗りの塗布は、あまりにも著しい量の空気が上塗りに閉じ込められるので問題を引き起こす可能性がある。空気の閉じ込めはピンホールを硬化期間中に生じさせる。本実施例は、本発明によるより薄いサンプルE5.2の利点が、公知の触媒ブロッキング化合物に基づく比較例E5.1を上回っていることが示される。これら2つのサンプルを、Sikkens(商標)Autocoat BT LV351(商標)上塗り及びHi Flo硬化剤と一緒に使用した。Sikkens(商標)Autocoat BT LV351(商標)は、溶媒系の420g/lのポリエステル/ポリアクリラートポリオール−イソシアナート上塗り系である。ポリエステルポリオール:f(OH)=4.4;NVC=80%;t=−2℃。ポリアクリラートポリオール:f(OH)=4.1;NVC=74%;t=20℃。直ちに噴霧可能な混合物を製造物の技術データシートに従って調製した。赤色のRal3020をA成分として選択し、Sikkens(商標)Autocoat BT LV351(商標)の上塗りトナー組合せから調製した。有機の着色された上塗り(例えば、赤色/青色)は、比較的大きいピンホール感受性を有することが公知である。これら2つの直ちに噴霧可能な混合物の塗布を、サンダー仕上げ用フィラーが予備被覆されたスチール製パネルに対して行った。その後、2つのサンプルを、Gracoエアレス噴霧装置により塗布し、直ちに60℃で30分間硬化させた。フラッシュオフ時間を全く使用しなかった。
【0075】
【表14】

【0076】
【表15】

【0077】
表15における結果は、本発明による塗膜E5.2のピンホール感受性における改善を明瞭に明らかにする。温時粘着性は、硬化が、比較例E5.1の場合とほとんど同じレベルであることを示す。従って、様々な特性のバランスが改善されていることが明らかにされている。
【実施例6】
【0078】
実施例6は、被覆用組成物において使用されるポリオールの官能性の影響を明らかにする。実施例E6.1は、6.2個のヒドロキシル基の平均官能性を有するアクリル系ポリオールを含有する本発明による一例である。実施例E6.2は、実施例E6.1のアクリル系ポリオールが、3.0個のヒドロキシル基の平均官能性を有するアクリル系ポリオールにより置き換えられた比較例である。これらの実施例において使用されるアクリル系ポリオールのそれ以外の性質(特に、ガラス転移温度及び分子量)は同じであった。実施例E6.1及び実施例E6.2におけるアクリル系ポリオールの量は、ヒドロキシル基の総量が両方の組成物において同じであるように選択された。添加物の量は、不揮発物含有量に対するそれらの割合が両方の組成物において同じであるように選択された。従って、これらの被覆用組成物及び塗膜における何らかの違いは、官能性における違いに起因すると考えられ得る。組成物の成分が表16において重量部でまとめられる。
【0079】
【表16】

【0080】
表17において、DINカップ4によって測定されるサンプルE6.1及びサンプルE6.5の20℃における粘度発達がまとめられる。
【0081】
【表17】

【0082】
表17から、本発明によるサンプルE6.1が、比較用サンプルE6.2よりも低い開始粘度を有すること、さらに、サンプルE6.2の粘度がより速く増大することを推測することができる。本発明による透明被膜サンプルE6.1は比較用サンプルE6.2よりも長時間にわたって処理され得ると結論することができる。
【0083】
20℃及び60℃におけるサンプルE6.1及びサンプルE6.2からの塗布された塗膜の乾燥速度を、BK乾燥記録計を使用して求めた。結果が表18にまとめられる。
【0084】
【表18】

【0085】
本発明による透明被膜サンプルE6.1の全体的な乾燥時間が、20℃及び60℃の両方においてE6.2よりも短い。このことは、上記で明らかにされるように、サンプルE6.1のポットにおける粘度増大がより遅いので、特に驚くべきことである。
【0086】
透明被膜組成物を、混合の20分後に、22℃及び45%の湿度で被覆ロボットによって噴霧した。スチール製パネルを基体として使用した。基体を、サンダー仕上げ用フィラー及び水系の濃黒色下塗りにより連続して予備被覆した。塗膜が塗布されると、パネルを、60℃で保たれるオーブンに移される前に、5分間のフラッシュオフ時間のために放置した。透明被膜パネルを40分間硬化させ、判定の前に24時間放置した。
【0087】
【表19】

【0088】
表19から、透明被膜配合物E6.1が、サンプルE6.2と比較して、より良好な目視特性及びより少ない欠陥を有することを推測することができる。本発明によるサンプルE6.1は、エナメル・ホールド・アウト及び垂れ下りについてより良好であると評価された。著しい違いが溶媒ポップ(ピンホール)感受性において認められた。比較用の透明被膜E6.2は、(10段階で)平均して6〜7と判定され、一方、サンプルE6.1は平均して9〜10と判定された。
【0089】
実施例6の結果から、本発明によるサンプルE6.1は、比較サンプルE6.2よりも遅い粘度増大(すなわち、長い可使時間)、速い乾燥及び良好な目視特性を示すと結論することができる。これらのサンプルの間における唯一の違いが、両方のサンプルにおいて使用されるポリオールの官能性である。従って、サンプルE6.1の改善された特性は、分子あたり3個を超えるヒドロキシル基の平均官能性を有するポリオールの使用に起因すると考えられ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.ポリイソシアナート、
b.分子あたり3個を超えるヒドロキシル基の平均官能性を有するポリオール、
c.イソシアナート基及びヒドロキシル基の付加反応のための金属系硬化触媒、及び
d.メルカプトカルボン酸
を含む非水性の被覆用組成物であって、カルボン酸のカルボニル基がπ電子系と共役しているカルボン酸を含有しない非水性の被覆用組成物。
【請求項2】
a.ポリイソシアナート、
b.分子あたり3個を超えるヒドロキシル基の平均官能性を有するポリオール、及び
c.i)イソシアナート基及びヒドロキシル基の付加反応のための金属系硬化触媒と、ii)メルカプトカルボン酸との反応生成物
を含む非水性の被覆用組成物であって、カルボン酸のカルボニル基がπ電子系と共役しているカルボン酸を含有しない非水性の被覆用組成物。
【請求項3】
イソシアナート基及びヒドロキシル基の付加反応のための前記触媒が、スズ、ビスマス、ジルコニウム及びそれらの混合物から選択される金属に基づく、請求項1又は2に記載の被覆用組成物。
【請求項4】
金属系触媒の量が、組成物の不揮発物に基づいて計算されるとき、0.001重量%〜10重量%の範囲である、請求項1から3のいずれか一項に記載の被覆用組成物。
【請求項5】
前記メルカプトカルボン酸が、2−メルカプトカルボン酸、3−メルカプトカルボン酸及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の被覆用組成物。
【請求項6】
メルカプトカルボン酸の量が、組成物の不揮発物に基づいて計算されるとき、0.1重量%〜18重量%の範囲である、請求項1に記載の被覆用組成物。
【請求項7】
成分b)がポリエステルポリオール及びポリアクリラートポリオールを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の被覆用組成物。
【請求項8】
揮発性有機溶媒を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の被覆用組成物。
【請求項9】
揮発性有機溶媒の量が被覆用組成物あたり420g/lを超えない、請求項8に記載の被覆用組成物。
【請求項10】
請求項1に記載される被覆用組成物を調製するための部品のキットであって、
a)分子あたり3個を超えるヒドロキシル基の平均官能性を有するポリオールを含むバインダーモジュール、
b)ポリイソシアナートを含む架橋剤モジュール、及び
c)場合により、揮発性有機溶媒を含む希釈剤モジュール
を含み、イソシアナート基及びヒドロキシル基の付加反応のための金属系触媒と、メルカプトカルボン酸とが、前記モジュールの1つ又はそれ以上に関して個々に、又は、組合せで分布する、キット。
【請求項11】
イソシアナート基及びヒドロキシル基の付加反応のための前記金属系触媒と、前記メルカプトカルボン酸とが、モジュールa)及びモジュールc)の1つ又はそれ以上に関して個々に、又は、組合せで分布する、請求項10に記載の部品のキット。
【請求項12】
自動車及び輸送車両の仕上げ及び再仕上げにおける塗膜層を形成するための、請求項1から9のいずれか一項に記載される被覆用組成物の使用。
【請求項13】
前記形成された塗膜層が多層ラッカー被覆における層である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記形成された塗膜層が多層ラッカー被覆における上塗り層である、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
a)請求項1から9のいずれか一項に記載される被覆用組成物を基体に塗布する工程、及び
b)前記被覆用組成物を40℃〜80℃の範囲における温度で硬化させる工程
を含む、基体を被覆する方法。

【公表番号】特表2012−506467(P2012−506467A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532604(P2011−532604)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063644
【国際公開番号】WO2010/046333
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(500286643)アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ (67)
【Fターム(参考)】