説明

ポリイミドフィルムおよび成形体

【課題】成形性、加工性、難燃性が向上し、照明機器用反射体基材および立体配線板基材として好適なポリイミドフィルムおよびこれを用いた成形体の提供。
【解決手段】限界酸素指数(LOI)が33%以上であり、且つガラス転移温度(Tg)が250℃以上300℃以下であるポリイミドフィルムおよびこのポリイミドフィルムを用いた成形体1。また、この成形体は反射面を形成する本体部2、外フランジ部4および内フランジ部6を有する照明機器用反射体が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性に優れたポリイミドフィルムおよびこれを用いた成形体に関し、さらに詳しくは、成形性、加工性、難燃性が向上し、照明機器用反射体基材および立体配線板基材として好適なポリイミドフィルムおよびこれを用いた成形体、とくに照明機器用反射体基材および立体配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のヘッドランプ(前照灯)やフォグランプには、光源としてハロゲン球、キセノン球等の電球が使用され、その口金部付近の温度は200℃以上になることが知られており、このために反射体(ランプリフレクタ)の反射基材としては、ガラス、金属あるいはガラス繊維や炭酸カルシウムなどの無機強化材を混入することにより耐熱性を向上させたプラスチックが使用されている。
【0003】
しかしながら、ガラスを反射基材に使用した場合は、重量が大きいことおよび破損しやすいことなどの問題があった。一方、金属および強化樹脂成形体を反射基材に用いた場合には、反射鏡面性能(平滑性)を向上させるために、反射物質を蒸着する前に樹脂コート等の2次加工を必要とし、製造工数が多いこと等の問題を有していた。強化樹脂成形体を基材とするものについては、基材強度の観点、成形技術上の制約等から総統の肉厚を必要とするため、基材自体の放熱性が低く、プロジェクター型等の蓄熱しやすい構造を持つランプにおいては、形状保持に耐熱的な不安があり、またハウジング内の温度上昇を助長して電球の寿命を短くする問題があった。さらに、ランプの点灯加熱時に塩素化合物などのガスを発生し、ヘッドランプなどの全面レンズに付着凝固してレンズを曇らせ、ランプ性能を低下させる問題も包含していた。
【0004】
一方、アルニウム蒸着により鏡面処理されたフィルムシートからなるシート製反射体(例えば、特許文献1参照)が知られており、このシート製反射体は鏡面性を得るための脱脂などの前処理が不要であることが開示されているが、ここで用いられるフィルムシートは耐熱性に劣るポリエチレン製であることから、このシート製反射体をハロゲン球などの高発熱ランプを用いたヘッドランプなどの反射体として適用することは、耐熱形状保持力の点で不可能であった。
【0005】
また、ポリイミド樹脂およびポリエーテルケトン樹脂製フィルムからなる反射体基材に、可視光反射赤外線透過多層膜を形成した反射鏡(例えば、特許文献2参照)が知られており、この反射鏡は破損しにくさなどに加え、ポリイミド樹脂などを使用することによりハロゲン球などの発熱にも耐え得るものであることが開示されているが、この反射鏡は可視光反射赤外線透過多層膜を基材上に形成したものであって、自動車用ヘッドランプおよびフォグランプの反射体としては実用できないものであった。
【0006】
さらに、芳香族ポリイミドフィルムまたは芳香族ポリアミドフィルムの成形体からなる照明機器用反射体基材(例えば、特許文献3参照)が知られている。この反射体基材は、破損しにくさなどに加え、ポリイミドフィルムなどを使用することによりハロゲン球などの発熱にも耐え得るものではあるが、この照明機器用反射体基材として非熱可塑性フィルムあるいはガラス転移点の高い熱可塑性フィルムを使用した場合には、成形加工時のフィルムに対する必要な加熱温度が高く、温度条件管理が困難であるため、真空成形には適さず、また金型加熱加圧方式による成形においては、型加熱や冷却に長時間を要すため成形時間が長くなり、コスト面、量産面で実用に適さないばかりか、逆にガラス転移点の低い熱可塑性フィルムを使用した場合には、得られる照明機器用反射体基材の耐熱性が劣るという問題があった。
【0007】
かかる実情に鑑み、本発明者らは検討を続けた結果、特定の熱可塑性芳香族ポリイミドフィルムの成形体からなる照明機器用反射体基材(例えば、特許文献4参照)を先に提案した。この照明機器用反射体基材は、軽量で表面平滑性、安全性、成形性、耐熱性および取扱性がすぐれ、かつ、反射層形成時の前処理が不要で大量生産に適し、軽量で鏡面性が高く、耐熱性、放熱性、安全性および取扱性がすぐれると共に、低コストかつ高品質であるという特性を備えるものである。しかし、この照明機器用反射体基材は、UL94の難燃性試験において不合格であることから、上記の特性に加えてさらに難燃性を付与した照明機器用反射体基材の実現が求められていた。
【0008】
また、これまで照明機器用反射体基材以外にも電子基板用途に成形体を用い、立体配線基板への展開も模索されてきたが、UL94の難燃性試験において難燃性が不十分であり、難燃性が不十分であることから、これらの分野に展開することができなかった。
【特許文献1】実公昭62−10887号公報
【特許文献2】特公平5−88481号公報
【特許文献3】特開平10−96765号公報
【特許文献4】特開2001−083310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0010】
本発明の第1の目的は、軽量で表面平滑性、安全性、成形性、耐熱性、難燃性および取扱性がすぐれ、ランプリフレクタなどの照明機器用反射体基材および立体配線基板用基材として使用するのに適したポリイミドフィルムを提供することにある。
【0011】
また、本発明の第2の目的は、反射層形成時の前処理が不要で大量生産に適し、軽量で鏡面性が高く、耐熱性、放熱性、安全性および取扱牲がすぐれると共に、低コストかつ高品質の成形品、特に照明機器用反射体基材および立体配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため本発明によれば、スガ試験器製酸素指数方式 燃焼性試験器ON−2Mを使用し、JIS K7201「プラスチック―酸素指数による燃焼性の試験方法」に準じて測定した限界酸素指数(LOI)が33%以上であり、且つSIIナノテクノロジー株式会社製EXSTAR6000 DMSを用い、JIS−K7244−4 プラスチック−動的機械特性の試験方法−第4部:引張振動−非共振法に準じて測定したガラス転移温度(Tg)が250℃以上300℃以下であるポリイミドフィルムが提供される。
【0013】
なお、本発明のポリイミドフィルムにおいては、
1ユニットの平均分子量が450以上であるポリアミック酸を閉環させることにより得られたポリイミドからなること、
前記ポリイミドが、一般式(I)および/または(II)で示される構造単位を有すること、
【0014】
【化1】

前記一般式(I)で示される構造単位が全構成単位の50%以上であるポリイミドからなること、および
前記一般式(II)で示される構造単位が全構成単位の50%以上であるポリイミドからなること
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
【0015】
また、本発明の成形体は、上記のポリイミドフィルムを用いてなることを特徴とし、特に反射面を形成する本体部、外フランジ部および内フランジ部を有する照明機器用反射体基材および成形体上に回路パターンを形成してなる立体配線基板であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下に説明するとおり、従来のものにくらべ難燃性に優れ、かつ大量生産可能な加熱押し出し成形や真空成形が容易なポリイミドフィルムが得られる。
【0017】
したがって、このポリイミドフィルムからなる本発明の成形体は、とくに照明機器用反射体および立体配線板として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明について詳述する。
【0019】
まず、本発明のポリイミドフィルムについて説明する。
【0020】
本発明のポリイミドフィルムは、限界酸素指数が30%以上、より好ましくは35%以上であり、かつ、ガラス転移温度が250℃以上300℃以下、より好ましくは260℃以上290℃以下であることを特徴とする。
【0021】
限界酸素指数が30%未満ではフィルムの難燃性が低下し、またガラス転移温度が上記の範囲を外れるとフィルムの成形性が悪くなるため好ましくない。
【0022】
本発明のポリイミドフィルムは、1ユニットの重量平均分子量が490以上であるポリアミック酸を閉環させることによって得られたポリイミドからなることが望ましい。ポリイミドフィルムの化学構造に注目した場合、上記式(I)で示される構造単位を含んでいることが好ましく、この構造単位が全構成単位の50%以上であることがより好ましい。その他の構造単位については、特に限定されない。
【0023】
本発明の芳香族ポリイミドフィルムは、通常公知の方法により製造することができ、その一例を挙げれば、ポリアミック酸を溶液状態のまま支持体上にキャストして自己支持性のポリアミック酸フィルムを得た後、前記ポリアミック酸を加熱イミド化することによって製造することができる。
【0024】
上記のポリアミック酸溶液とは、1種類以上のジアミン成分と、1種類以上のテトラカルボン酸二無水物とを重合させることによって得られるものである。
【0025】
ポリアミック酸溶液の重合方法としては、ジアミン化合物を溶媒中に入れた後、反応成分に対して1種類以上のテトラカルボン酸二無水物が95〜105モル%となる比率で反応に必要な時間混合した後、さらにジアミン化合物を添加し、続いて1種類以上のテトラカルボン酸二無水物を全ジアミン成分と全テトラカルボン酸二無水物成分とがほぼ等量になるよう添加して重合する方法、および1種類以上のテトラカルボン酸二無水物を溶媒中に入れた後、反応成分に対してジアミン化合物が95〜105モル%となる比率で反応に必要な時間混合した後、1種類以上のテトラカルボン酸二無水物を添加し、続いてジアミン化合物を全ジアミン成分と1種類以上のテトラカルボン酸二無水物成分とがほぼ等量になるよう添加して重合する方法などが挙げられる。
【0026】
上記ポリアミック酸の具体例としては、ジアミノジフェニルエーテル、1,3ビス−(4アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、フェニレンジアミンなどの芳香族ジアミン成分と、ピロメリット酸酸二無水物に代表されるピロメリット酸類や、3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸またはその二無水物や3,3’−4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸またはその二無水物などの2個以上のベンゼン環を有する芳香族テトラカルボン酸類化合物とを、溶媒中で重合させることによって得られ、熱可塑性ポリイミドを生成するものが挙げられる。
【0027】
上記の重合で使用する溶媒としては、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンおよびジメチルスルホンなどが挙げられ、これらを単独あるいは混合して使用するのが好ましい。
【0028】
上記の重合で得られるポリアミック酸は、前記溶媒中に10〜30重量%の割合となるように調整するのが一般的である。
【0029】
次に、得られたポリアミック酸溶液から熱可塑性芳香族ポリイミドフィルムを得る方法の一例を説明する。
【0030】
まず、押出し口金を使用して、上記ポリアミック酸溶液を支持体上にキャストして自己支持性のポリアミック酸フィルムを得る。次いで、得られたポリアミック酸フィルムの端部を固定し、200℃から400℃の温度で熱処理を行うことによりポリイミドゲルフィルムを得る。
【0031】
なお、この熱処理工程において、2軸延伸を行うことが、ポリイミドフィルムの機械特性・等方性を向上させる上で好ましい。延伸倍率については、特に限定されるものではないが、フィルム走行方向に1.05〜1.5、フィルム走行方向に直行する方向に1.5から2.0の倍率で延伸するのが一般的である。
【0032】
また、上記において、キャストとは、ポリアミック酸を支持体上に展開することを意味する。キャストの一例としては、バーコート、スピンコート、あるいは任意の空洞形状を有するパイプ状物質からポリアミック酸を押し出し、支持体上に展開する方法が挙げられる。
【0033】
得られたポリアミック酸を環化させて熱可塑性芳香族ポリイミドフィルムにする際には、脱水剤と触媒を用いて脱水する化学閉環法、熱的に脱水する熱閉環法、あるいはその両者を併用した閉環法のいずれで行ってもよい。
【0034】
化学閉環法で使用する脱水剤としては、無水酢酸などの脂肪族酸無水物、フタル酸無水物などの酸無水物などが挙げられ、これらを単独あるいは混合して使用するのが好ましい。また、触媒としては、ピリジン、ピコリン、キノリンなどの複素環式第3級アミン類、トリエチルアミンなどの脂肪族第3級アミン類、N,N−ジメチルアニリンなどの第3級アミン類などが挙げられ、これらを単独あるいは混合して使用するのが好ましい。
【0035】
このようにして得られるポリイミドフィルムは厚みについては、特に限定される物ではないが、25μm〜250μmであることが好ましく、より好ましくは75μm〜125μmである。
【0036】
以下に、図面にしたがって、本発明の成形体である難燃性照明機器用反射体基材および難燃性照明機器用反射体についてさらに詳述する。
【0037】
図1は、本発明の照明機器用反射体基材の一例を示す一部破断斜視図、図2は本発明の照明機器用反射体の一例を示す一部破断側面図である。
【0038】
なお、本発明における成形体とは、3次元形状に成形した物体を意味するものである。この成形体を反射体の基材として用いる場合は、反射体基材と表現するが、用途を限定した以外、両者に差異はない。
【0039】
図1に示したように、本発明の照明機器用反射体基材(難燃性成形体)1は、ガラス転移点温度が250℃以上300℃以下であり、UL94試験においてV0の難燃性能を有する上記熱可塑性ポリイミドフィルムを、加熱型押し成形または真空成形することにより得られた成形体からなり、反射部を形成する本体部2、外フランジ部4および内フランジ部6を有するものであって、この例は自動車用ヘッドランプのランプリフレクタベースとして構成したものである。
【0040】
この照明機器用反射体基材1においては、本体部2の表面平滑性はフィルムの時の平滑性をそのまま保持しており、反射層蒸着前に何らの前処理を施さずとも、投光機用反射面を得るに十分な性能を有している。
【0041】
なお、本体部2の強度が問題になるような場合には、プラスチックの射出成形樹脂、金属のプレス部品およびFRPなどによるフレームを、本体部2の外側に取り付けることにより容易に補強することができる。
【0042】
図1に示した実施例では、本体部2を単純な反射面形状としたが、目的に応じて、例えば本体部2を多面体とするなどの成形可能な形状であれば、任意の形状を選択することが可能である。
【0043】
また、図2に示した照明機器用反射体8は、図1に示した成形体1の内周面に、アルミニウムなどの反射材を公知の手段で蒸着することにより、反射層10を形成している。この反射層10の形成工程においては、反射体基材1がフィルム時の平滑性をそのまま保持しているため、樹脂コーティングや脱脂などの前処理を一切行う必要がない。
【0044】
なお、図2に示した照明機器用反射体2においては、内フランジ部6の中央に電球(図示せず)の差込口12を開口し、この差込口12の周囲に内フランジ6aを形成することにより、ランプリフレクタを構成している。
【0045】
図1に示した反射体基材(難燃性成形体)1においては、外フランジ部4を図2に示す照明機器用反射体8の最終形状に成形したが、工業的には1枚のフィルムに複数個の反射体基材1を並べて成形し、蒸着処理してから外フランジ部4の外形を整えながら切り離すようにすることもできる。
【0046】
そして、本発明の成形体1は、上記熱可塑性ポリイミドフィルムを加熱型押し成形、真空成形および高圧ガス吹付け成形するなどの手段で所望の形状に成形することにより得られるが、真空成形が最も簡便で、金型費用も安価で、多数個同時成形加工も可能であるため経済的には有利である。真空成形方法にはストレート法、ドレープ法、エアスリップ法、スナップバック法およびプラグアシスト法などがあるが、公知の方法であればいずれも適応可能である。
【0047】
この照明機器用反射体基材(成形体)1に反射材として蒸着させる金属としては、反射率の観点からアルミニウムまたは銀が最も適しているが、化学的に安定した金属化合物を適宜使用することができる。また、クロムおよびニッケルークロム合金などを反射材あるいはフィルムとの密着強度向上のための下地として使用することもできる。
【0048】
反射層10を形成するための蒸着手段としては、真空蒸着法、スパッタリング法、電子ビーム法およびイオンプレーティング法などを用いることができるが、本発明は特にこれらに限定するものではない。また、得られた反射層10上に、さらにコーティングや蒸着などにより保護膜を形成して使用してもよい。
【0049】
本発明の照明機器用反射体8の形状としては、ヘッドランプやフォグランプとして使用されるいかなる形状のものでもよく、反射層10が反射体基材1の反射必要部分にのみ形成されているものであってもよい。
【0050】
また、反射層10を反射体基材1に対して電球と反対側に形成することができ、この場合には反射層10を電球の外側に設けることによって、熱可塑性芳香族ポリイミドフィルムの原色である黄色を反射光として得ることができる。
【0051】
本発明の成形体は、それ自体の難燃性および耐熱牲がすぐれた特定の熱可塑性芳香族ポリイミドフィルムからなるため、その表面平滑性が良好で反射層形成時の前処理が不要であるばかりか、真空成形などの簡易な成形法により低コストに得ることができ、しかもきわめて軽量で破損し難いことから安全性および取扱性にすぐれるものである。
【0052】
本発明の成形体照明機器用反射体は、それ自体の難燃性、耐熱性および表面平滑牲がすぐれた特定の熱可塑性ポリイミドフィルムの成形体からなる反射体基材上に蒸着による反射層を形成してなるため、反射層蒸着前に樹脂コーティングなどの前処理を行う必要がなくて、大量生産により低コストに得ることができ、しかもきわめて軽量で破損しにくく、ランプ点灯時に実用上障害となる脱ガスを生じないことから、放熱性、安全性および取扱性にすぐれるばかりか、難燃性、耐熱性および鏡面性が高く、ランプリフレクタとして高品質の性能を発揮するものである。
【0053】
また、本発明の成形体は放熱性、安全性、難燃性、耐熱性を利用し立体配線基板等の電気、電子用途にも応用が可能である。
【実施例】
【0054】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。実施例中のポリイミドフィルムの各特性は次の方法で評価した。
【0055】
(1)酸素指数(LOI)
酸素指数(LOI)は物質を酸素と窒素の混合ガス中で燃焼させ、その最低酸素濃度を測定し燃焼性を表示するものである。本実施例ではJIS K7201「プラスチック―酸素指数による燃焼性の試験方法」に準じて、スガ試験器製酸素指数方式 燃焼性試験器 ON−2Mを使用し測定を行った。
【0056】
(2)ガラス転移温度(Tg)
ガラス転移温度はSIIナノテクノロジー株式会社製EXSTAR6000 DMSを用い、JIS−K7244−4 プラスチック−動的機械特性の試験方法−第4部:引張振動−非共振法に準じて測定した。
【0057】
(3)ポリアミック酸1ユニットの平均分子量
投入したモノマーの量から計算した。
【0058】
(4)難燃性
UL94(高分子材料の難燃性試験)に準じて測定した。
【0059】
(5)成形性評価
各フィルムの成形は、高さ一定の四角錐の1辺長さの比、h/dが図3に示したように異なる4種の型を用いて、真空プラス圧空アシスト成形することにより比較した。成形性判定基準は、成形品高さ(L)/金型高さ(L0)=90%以上転写を◎、80%以上転写を○とし、それ以下は×とした。ただし、成形条件については、
フィルム予熱:Tg+40℃
成型温度:Tg(E”)温度
取り出し温度:Tg(E”)―50℃
とした。
【0060】
[実施例1]
DCスターラーを備えた500mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル17.962、N,N’−ジメチルアセトアミド159.4gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物26.39gを数回に分けて投入し、次に、30分後から1時間後にかけて3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物をN,N’−ジメチルアセトアミド中に均一に6%分散させた溶液を数回に分け投入し、ポリアミック酸の粘度を2500ポイズに調整した。
【0061】
得られたポリアミック酸の一部を、ガラス板上に流延しバーコーターを用いて均一な膜を形成した。これを100℃20分で処理し、ガラス板から剥離した後に金枠に固定し、200℃30分、300℃20分の条件で熱処理を行い熱可塑性芳香族ポリイミドフィルムを得た。このフィルムについて、酸素指数、ガラス転移温度、成形体の難燃性および成形性を評価した結果を表1に示す。
【0062】
[実施例2]
DCスターラーを備えた500mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル17.66、N,N’−ジメチルアセトアミド159.4gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。次ぎに3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物14.28gを数回に分けて投入し、次に、30分後から1時間後にかけてピロメリット酸二無水物12.12gを数回に分け投入し、次に、30分後から1時間後にかけて3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物をN,N’−ジメチルアセトアミド中に6%のピロメリット酸二無水物を溶解させた溶液を数回に分け投入し、ポリアミック酸の粘度を2500ポイズに調整した。
【0063】
得られたポリアミック酸の一部をガラス板上に流延しバーコーターを用いて均一な膜を形成した。これを100℃20分で処理し、ガラス板から剥離した後に金枠に固定し、200℃30分、300℃20分の条件で熱処理を行い熱可塑性芳香族ポリイミドフィルムを得た。 このフィルムについて、酸素指数、ガラス転移温度、成形体の難燃性および成形性を評価した結果を表1に示す。
【0064】
[実施例3]
DCスターラーを備えた500mlセパラブルフラスコ中に、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル15.56g、N,N’−ジメチルアセトアミド159.4gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。3,4,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸24.29gを数回に分けて投入し、次に、30分後から1時間後にかけて3,4,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物をN,N’−ジメチルアセトアミド中に6%3,4,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸を溶解させた溶液を数回に分け投入し、ポリアミック酸の粘度を2500ポイズに調整した。
【0065】
得られたポリアミック酸の一部をガラス板上に流延しバーコーターを用いて均一な膜を形成した。これを100℃20分で処理し、ガラス板から剥離した後に金枠に固定し、200℃30分、300℃20分の条件で熱処理を行い熱可塑性芳香族ポリイミドフィルムを得た。このフィルムについて、酸素指数、ガラス転移温度、成形体の難燃性および成形性を評価した結果を表1に示す。
【0066】
[実施例4]
DCスターラーを備えた500mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル15.56g、N,N’−ジメチルアセトアミド159.4gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。3,4,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物24.29gを数回に分けて投入し、次に、30分後から1時間後にかけて3,4,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物をN,N’−ジメチルアセトアミド中に6%の3,4,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を溶解させた溶液を数回に分け投入し、ポリアミック酸の粘度を2500ポイズに調整した。
【0067】
得られたポリアミック酸の一部をガラス板上に流延しバーコーターを用いて均一な膜を形成した。これを100℃20分で処理し、ガラス板から剥離した後に金枠に固定し、200℃30分、300℃20分の条件で熱処理を行い熱可塑性芳香族ポリイミドフィルムを得た。 このフィルムについて、酸素指数、ガラス転移温度、成形体の難燃性および成形性を評価した結果を表1に示す。
【0068】
[比較例1]
DCスターラーを備えた500mlセパラブルフラスコ中に、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン24.87g、N,N’−ジメチルアセトアミド159.4gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。3,4,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸7.81gを数回に分けて投入し、次に、30分後から1時間後にかけてピロメリット酸二無水物を7.53gを数回に分けて投入し、次に3,4,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物をN,N’−ジメチルアセトアミド中に6%の3,4,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸を溶解させた溶液を数回に分け投入し、ポリアミック酸の粘度を2500ポイズに調整した。
【0069】
得られたポリアミック酸の一部をガラス板上に流延しバーコーターを用いて均一な膜を形成した。これを100℃20分で処理し、ガラス板から剥離した後に金枠に固定し、200℃30分、300℃20分の条件で熱処理を行い熱可塑性芳香族ポリイミドフィルムを得た。 このフィルムについて、酸素指数、ガラス転移温度、成形体の難燃性および成形性を評価した結果を表1に示す。
【0070】
[比較例2]
DCスターラーを備えた500mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノフェニルエーテル19.43g、N,N’−ジメチルアセトアミド159.4gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。ピロメリット酸二無水物を9.24gを数回に分けて投入し、次にN,N’−ジメチルアセトアミド中に6%のピロメリット酸二無水物を溶解させた溶液を数回に分け投入し、ポリアミック酸の粘度を2500ポイズに調整した。
【0071】
得られたポリアミック酸の一部をガラス板上に流延しバーコーターを用いて均一な膜を形成した。これを100℃20分で処理し、ガラス板から剥離した後に金枠に固定し、200℃30分、300℃20分の条件で熱処理を行い熱可塑性芳香族ポリイミドフィルムを得た。 このフィルムについて、酸素指数、ガラス転移温度、成形体の難燃性および成形性を評価した結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の成形体、特に難燃性照明機器用反射体は、それ自体の難燃性、耐熱性および表面平滑牲が優れた特定の熱可塑性芳香族ポリイミドフィルムの成形体からなる反射体基材上に蒸着による反射層を形成してなるため、反射層蒸着前に樹脂コーティングなどの前処理を行う必要がなくて、大量生産により低コストに得ることができ、しかもきわめて軽量で破損しにくく、ランプ点灯時に実用上障害となる脱ガスを生じないことから、放熱性、安全性および取扱性にすぐれるばかりか、難燃性、耐熱性および鏡面性が高く、高品質の性能を発揮するものであり、自動車のヘッドランプやフオグランプあるいは大型投光器などのランプリフレクタとして有利に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は本発明の成形体(照明機器用反射体基材)の一例を示す一部破断斜視図である
【図2】図2は本発明の成形体(照明機器用反射体)の一例を示す一部破断側面図である。
【図3】図3は成形性評価のための金型モデル図である。
【符号の説明】
【0075】
1 成形体(照明機器用反射体基材)
2 本体部
4 外フランジ部
6 内フランジ部
6a 内フランジ
8 照明機器用反射体
10 反射層
12 電球差し込み口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スガ試験器製酸素指数方式燃焼性試験器ON−2Mを使用し、JIS K7201「プラスチック―酸素指数による燃焼性の試験方法」に準じて測定した限界酸素指数(LOI)が33%以上であり、且つSIIナノテクノロジー株式会社製EXSTAR6000 DMSを用い、JIS−K7244−4 プラスチック−動的機械特性の試験方法−第4部:引張振動−非共振法に準じて測定したガラス転移温度(Tg)が250℃以上300℃以下であるポリイミドフィルム。
【請求項2】
1ユニットの平均分子量が450以上であるポリアミック酸を閉環させることにより得られたポリイミドからなる請求項1記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
前記ポリイミドが、一般式(I)および/または(II)で示される構造単位を有する請求項1または2記載のポリイミドフィルム。
【化1】

【請求項4】
前記一般式(I)で示される構造単位が全構成単位の50%以上であるポリイミドからなる請求項1〜3のいずれか1項記載のポリイミドフィルム。
【請求項5】
前記一般式(II)で示される構造単位が全構成単位の50%以上であるポリイミドからなる請求項1〜3のいずれか1項記載のポリイミドフィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載のポリイミドフィルムを用いた成形体。
【請求項7】
反射面を形成する本体部、外フランジ部および内フランジ部を有する照明機器用反射体基材である請求項6記載の成形体。
【請求項8】
成形体上に回路パターンを形成してなる立体配線基板である請求項6記載の成形体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−291099(P2008−291099A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137339(P2007−137339)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000219266)東レ・デュポン株式会社 (288)
【Fターム(参考)】