説明

ポリイミドフィルムの製造方法及びポリイミドフィルムロール

【課題】フィルム品位に優れたポリイミドフィルムを得ることを課題とする。
【解決手段】本発明のテトラカルボン酸類(無水物、酸、およびアミド結合性誘導体を総称して類という、以下同)とジアミン類(アミン、およびアミド結合性誘導体を総称して類という、以下同)とを反応させて得られるポリアミド酸溶液であるドープを流延、塗布膜形成、乾燥、熱処理(イミド化)して得られるポリイミドフィルムであって、塗布膜の単位面積当たりの重量をその中に含まれる溶媒の吸収を赤外吸収方式の厚さ計で測定・管理することによって、得られるポリイミドフィルムの単位面積当たりの重量を制御することを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平面性や巻き品位良好なポリイミドフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高分子フィルムの製造方法として、流延製膜方法は公知である。流延製膜方法は、溶媒に高分子化合物を溶解してなる溶液を支持体上に塗布することで支持体上に前記高分子化合物を含む塗膜を形成する工程と、前記支持体上の塗膜を乾燥する工程とを少なくとも有する方法であり、この流延製膜方法は、実験室規模から工業的規模にいたる様々な規模にて広く実施されている(特許文献1、参照)。
【0003】
流延製膜法が工業的規模で行われる場合には、支持体として鏡面研磨した金属ロールや所謂エンドレスベルトが用いられる(特許文献2、参照)。
支持体として金属のベルトを用いる方法は、塗布後の乾燥工程長を長くすることが容易であるため、流延製膜法において広く用いられている。流延製膜法の生産性を上げるためには乾燥速度を上げることが効果的であり、そのためには、乾燥温度を高くする、乾燥風量を大きくする、という手段を講じることが考えられる。しかし、乾燥温度を高くしすぎると、乾燥時の溶媒の揮発速度が上がりすぎ、気泡を発生することがある。また、乾燥風量を大きくしすぎると、塗膜表面に風紋状のシワが発生することや、支持体ベルト自体の風による振動に起因する塗膜全体のウネリが発生することがある。このように、得られるフィルムの品質という観点からは、上述の手段は必ずしも効果的ではない。
【0004】
このように、流延製膜法において生産性とフィルムの品質とを共に向上させるのは困難
であったが故に、従来は、高品質のフィルムを生産する場合には乾燥速度を落とす、換言
すると、長時間かけて緩やかに乾燥せざるをえなかった。また、ポリアミック酸溶液に、無水酢酸と有機アミン化合物を添加し、次いで得られた溶液を水の濃度1〜4000ppmの雰囲気下である、極端に乾燥した雰囲気にて、支持体上に流延して支持体とともに加熱して、ゲル状フィルムを得、得られたゲル状フィルムを支持体から分離して必要に応じ洗浄した後、同時二軸延伸又は逐次ニ軸延伸し、得られた二軸延伸フィルムを、必要に応じ洗浄して溶媒を除去した後、熱処理に付して二軸配向ポリイミドフィルムを形成するポリイミドフィルムの製造方法(特許文献3、参照)が提案されている。
【0005】
作製するフィルムの厚みについては、オンライン方式の厚さ計を用いて管理することが知られている。また、センサーについても、多種多様であり、特許文献4では、赤外方式にて、膜厚を測定している例がある。しかし、特許文献4においてはポリイミドが特徴的な赤外線吸収波長を示す官能基を含むポリイミドを主成分としたものに限られ、全てのポリイミドフィルムに適用可能な技術は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−260715号公報
【特許文献2】特開平09−207151号公報
【特許文献3】特開2004−338255号公報
【特許文献4】WO2006/64700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、電子部品の基材や絶縁材などとして好適である平面性および均質性に優れ、しかも高温処理しても変質しない耐熱性に優れたポリイミドフィルムを、単位面積当たりの重量の変動が大きいという課題を解消し、平面性良好でかつ、巻き品位良好な寸法安定性に優れ、ポリイミドフィルム全般に適用可能なポリイミドフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、以下の構成によるものである。
1.テトラカルボン酸類とジアミン類とを反応させて得られるポリアミド酸溶液であるドープを流延、塗布膜形成、乾燥、熱処理(イミド化)して得られるポリイミドフィルムの製造方法であって、塗布膜形成後乾燥前の単位面積当たりの重量をその中に含まれる溶媒の吸収により赤外吸収方式の厚さ計で測定・管理することによって、得られるポリイミドフィルムの単位面積当たりの重量を制御することを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。
2.1に記載のポリイミドフィルムの製造方法であって、赤外線の波長領域が1μm以上5μm以下の範囲内で、前記赤外吸収方式の厚さ計で測定・管理することによって、そのポリアミド酸溶液の流延直後に、0.1g/m2以上1.0g/m2以下となるように単位面積あたりの重量を制御したポリイミドフィルムの製造方法。
3.ジアミン類が、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類である1又は2記載のいずれかの製造方法で製造されたポリイミドフィルム。
4.1〜2いずれかに記載の製造方法で製造されたポリイミドフィルムをロール状に巻き取ったフィルムロールであって、幅500mm以上、長さ100m以上を有するポリイミドフィルムロール。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリイミドの前駆体溶液(ポリアミド酸溶液)を供給タンクにおいて貯留する工程、配管を通して支持体上に流延・塗布するまで送液する工程、支持体上に流延・塗布し乾燥する工程を少なくとも有する流延製膜式ポリイミドフィルム製造方法において、塗膜の単位面積あたりの重量が0.1g/m2以上0.5g/m2以下に制御するポリイミドフィルムが、塗布膜の厚さをその中に含まれる溶媒の吸収を赤外吸収方式の厚さ計で測定・管理することによって、得られたポリイミドフィルムの厚さを制御することを特徴とするポリイミドフィルムの製法であり、厚さ斑による収率の低下やたるみなどの品位不良が発生し易い課題を解消することができ、結果的に製造されたポリイミドフィルム、および寸法安定性に優れたポリイミドフィルムが得られ、このポリイミドフィルムは高温における安定性特に寸法安定性に優れ、平面性および巻き品位良好なフィルムであることから、高温での電子部品製造や、電子部品の高温時使用においても寸法の狂いがなく、電子部品などの軽少短薄に貢献することができ、工業的な意義は大きい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリイミドフィルムは、テトラカルボン酸類(無水物、酸、およびアミド結合性誘導体を総称して類という、以下同)とジアミン類(アミン、およびアミド結合性誘導体を総称して類という、以下同)とを反応させて得られるポリアミド酸溶液を流延、乾燥、熱処理(イミド化)してフィルムとなす方法で得られるポリイミドフィルムである。これらの溶液に用いられる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、特にポリイミド前駆体であるポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液、N,N−ジメチルアセトアミド溶液を使用する流延製膜方法による場合に最も好ましく適用し得る。
【0011】
本発明におけるポリイミドフィルムは、特に限定されるものではないが、芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類との組み合わせが好ましく、下記の芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類との組み合わせがより好ましい例として挙げられる。
A.ベンザオキサゾ−ル骨格を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
B.ジアミノジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類とピロメリット酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
C.フェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類とビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
D.上記のABCの一種以上の組み合わせ。
中でもA.の組み合わせが好ましい。
【0012】
本発明におけるジアミノジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類としては、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)、3,3′−ジアミノジフェニルエーテルおよび3,4′−ジアミノジフェニルエーテルおよびそれらの誘導体が挙げられ、本発明におけるフェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミンおよびそれらの誘導体が挙げられ、本発明におけるベンザオキサゾ−ル骨格を有するジアミンとしては、下記具体例で示すジアミンが挙げられるが、これらのジアミンは全ジアミンの70モル%以上より好ましくは80モル%以上使用することが好ましい。
ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類としては、具体的には以下のものが挙げられる。
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

【0015】
【化3】

【0016】
【化4】

【0017】
【化5】

【0018】
【化6】

【0019】
【化7】

【0020】
【化8】

【0021】
【化9】

【0022】
【化10】

【0023】
【化11】

【0024】
【化12】

【0025】
【化13】

これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。
また、上記以外の芳香族ジアミン類としては、下記の芳香族ジアミン類が本発明において全アミンの30モル%未満、より好ましくは20モル%未満であれば使用できる。
【0026】
4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン。
【0027】
3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン。
【0028】
4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)
ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン。
【0029】
1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス
[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル。
【0030】
4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン。
【0031】
1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン。
【0032】
1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリル、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類および上記芳香族ジアミン類の芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシ基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシ基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシ基で置換された芳香族ジアミン類等が挙げられる。
該芳香族ジアミン類は、単独であっても二種以上を用いることも可能である。
【0033】
本発明において用いられる芳香族テトラカルボン酸類は、好ましくは芳香族テトラカルボン酸無水物類であり、下記化14、化15は、全酸成分の70モル%以上使用することが好ましく、80モル%以上使用することがさらに好ましい。これら以外に使用できるものは、具体的には、以下のものが挙げられるが、これらは全酸成分の30モル%未満、より好ましくは20モル%未満で使用する。
【0034】
【化14】

【0035】
【化15】

【0036】
【化16】

【0037】
【化17】

【0038】
【化18】

【0039】
【化19】

これらの芳香族テトラカルボン酸無水物類は単独でも二種以上を用いることも可能である。
【0040】
本発明においては、全テトラカルボンの30モル%未満より好ましくは10モル%未満であれば下記に例示される非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類を一種または二種以上を併用しても構わない。用いられる非芳香族テトラカルボン酸二無水物類としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等である。これらの非芳香族テトラカルボン酸二無水物類は単独でも二種以上を用いることも可能である。
【0041】
芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重合してポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられるが、なかでもN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましく適用される。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの重量が、通常5〜40質量%、好ましくは10〜20質量%となるような量が挙げられる。
【0042】
ポリアミド酸を得るための重合反応(以下、単に「重合反応」ともいう)の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して撹拌および/又は混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の重量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。本発明におけるポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)は、特に限定するものではないが1.5以上が好ましく、2.0以上がさらに好ましく、なおさらに2.5以上が好ましい。また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封止剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸の溶液を製造するのに有効である。さらに、以下述べるポリアミド酸の溶液を支持体上に流延・塗布するに際して予め減圧などの処理によって該溶液中の気泡や溶存気体を除去しておくことも、本発明のポリイミドフィルムを得るために有効な処理である。
【0043】
ポリアミド酸溶液を流延(塗布)する支持体は、ポリアミド酸溶液をフィルム状に成形するに足る程度の平滑性、剛性を有していればよく、表面が金属、プラスチック、ガラス、磁器などであるドラム又はベルト状回転体などが挙げられる。中でも、支持体の表面は好ましくは金属であり、より好ましくは錆びなくて耐腐食に優れるステンレスである。支持体の表面にはCr、Ni、Snなどの金属メッキを施してもよい。支持体表面は必要に応じて鏡面にしたり、あるいは梨地状に加工することができる。また支持体の差によって乾燥における風量や温度は適宜選択採用すればよく、支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、スキージコーティング、リバースコーティング、ダイコーティング、アプリケータコーティング、ワイヤーバーコーティング等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
【0044】
イミド化工程として、閉環(イミド化)触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)やポリアミド酸溶液に閉環触媒および脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒および脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を挙げることができる。
熱閉環法の熱処理温度は、150〜500℃が好ましく、熱処理温度がこの範囲より低いと充分に閉環されづらくなり、またこの範囲より高いと劣化が進行し、フィルムが脆くなりやすくなる。より好ましい態様としては、150〜250℃で3〜20分間処理した後に350〜500℃で3〜20分間熱処理するところの初期段階熱処理と後段階熱処理とを有する2段階熱処理工程が挙げられる。
閉環触媒をポリアミド酸溶液に加えるタイミングは特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。閉環触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどといった脂肪族第3級アミンや、イソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどといった複素環式第3級アミンなどが挙げられ、中でも、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種のアミンが好ましい。ポリアミド酸1モルに対する閉環触媒の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.5〜8モルである。
脱水剤をポリアミド酸溶液に加えるタイミングも特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などといった脂肪族カルボン酸無水物や、無水安息香酸などといった芳香族カルボン酸無水物などが挙げられ、中でも、無水酢酸、無水安息香酸あるいはそれらの混合物が好ましい。また、ポリアミド酸1モルに対する脱水剤の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.1〜4モルである。脱水剤を用いる場合には、アセチルアセトンなどといったゲル化遅延剤を併用してもよい。熱閉環反応であっても、化学閉環法であっても、支持体に形成されたポリイミドフィルムの前駆体(グリーンシート、フィルム)を完全にイミド化する前に支持体から剥離してもよいし、イミド化後に剥離してもよい。
【0045】
本発明におけるポリイミドフィルムの厚さは特に限定されないが、好ましくは3μm以上100μm以下である。
ポリイミドフィルムの長尺フィルムを工業的に安定的に製造することが困難であり、また得られたこれらのポリイミドフィルムはその厚さ斑が極端に大きく、例えば市販の7.5μmのポリイミドフィルムの厚さ斑は25%程度のものであり、寸法精度の要求される電子部品などにおいては品質上問題があった、本発明はこれらの課題を解決せんとするものである。
このポリイミドフィルムの厚さはポリアミド酸溶液を支持体に塗布する際の塗布量や、ポリアミド酸溶液の濃度によって容易に制御し得るが、その変動または制御不良が最終的ポリイミドフィルムの厚さ斑に影響し、特にフィルム厚さが薄くなるほどその斑が大きくなる傾向を有している。
本発明のポリイミドフィルムには、滑剤をポリイミド中に添加含有せしめるなどしてフィルム表面に微細な凹凸を付与しフィルムの滑り性を改善することが好ましい。
滑剤としては、無機や有機の0.03μm〜1μm程度の平均粒子径を有する微粒子が使用でき、具体例として、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、ピロ燐酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、粘土鉱物などが挙げられる。
【0046】
本発明において、これらのポリイミドフィルムを得る方法は、芳香族テトラカルボン酸類(無水物、酸、およびアミド結合性誘導体を総称して類という、以下同)と芳香族ジアミン類(アミン、およびアミド結合性誘導体を総称して類という、以下同)とを反応させて得られるポリアミド酸溶液であるドープを流延、塗布膜形成、乾燥、熱処理(イミド化)して得られるポリイミドフィルムであって、赤外線の波長領域が1μm以上5μm以下の範囲内で、そのポリアミド酸溶液の流延直後に、0.1g/m以上1.0g/m以下、より好ましくは、0.1g/m以上0.5g/mとなるように単位面積あたりの重量を制御したポリイミドフィルムであり、塗布膜の単位面積当たりの重量をその中に含まれる溶媒の吸収を赤外吸収方式の厚さ計(クラボウ製、商品名RX−100(透過型)またはRX−200(反射型)、測定面積7×13mm)で測定・管理することによって、得られるポリイミドフィルムの単位面積当たりの重量を制御することを特徴とするポリイミドフィルムであり、塗布膜はポリアミド酸溶液であるドープがダイなどから押し出されたものであって、従来はそのドープ中のポリイミドの吸収をチェックしてその量で膜厚さを測定し、制御管理するものが提案されていたが、本発明においては、このドープ中の溶媒の吸収を(赤外吸収方式で)検知することで、より正確に精度よく検知できる。これは、ポリマー自身の吸収を考慮しないため、同じ溶媒であるならば、他素材であっても、同様の測定が可能であり、広範囲に使用できるというメリットがある。また、ポリマーに比べ、溶媒の方が多量であるため、検知感度が良く、測定精度が高くなる。
なお、前記の「測定・管理する」とは、例えば樹脂塗布直後の厚さをオンライン厚さ計を用いて塗布厚みを計測し、既に定められている目標値に対して、ずれている場合は、補正をかけ目標値にあわせることで厚みを制御することを意味する。
【0047】
これらの溶液に用いられる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。本発明のポリイミドフィルムの製造方法では、特にポリイミド前駆体であるポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液、N,N−ジメチルアセトアミド溶液を使用する流延製膜方法による場合に最も好ましく適用し得る。
検知する吸収ピークは、赤外線波長領域内のいずれかの溶媒固有の吸収帯であれば、特に限定することはないが、本測定に関しては、近赤外領域の溶媒固有の吸収帯を選定した。
また、測定を行う環境としては、特に限定されるものではないが、使用する溶媒群が吸湿性が非常に高いため、空調設備を備えた環境下で温湿度をある程度コントロールできる設備内あれば問題はない。具体的には温度10℃以上40℃以下、好ましくは20℃以上30℃以下であることが望ましい。湿度5%Rh以上95%Rh以下、好ましくは25%Rh以上65%Rh以下であることが望ましい。
また、反応を伴う溶液製膜法では、フィルム厚さの管理は、最終段階での厚さを測定し、流延時にフィードバックをかける方法や中間体(乾燥された前駆体フィルム)の厚さを測定し、流延時にフィードバックをかける方法が採用されていたが、乾燥状態の差異などにより、正確な値を見込めない。これらの方法は、オンラインでは難しく、生産性の低下を招く場合が多い。赤外吸収方式で、ポリイミドではなく、溶媒の吸収を用いた厚み測定することで、反応を伴う溶液製膜法において、塗工直後の 厚さを制御することができ、フィードバックを早め、ロスを少なく効率よい製膜が可能となる。
【0048】
本発明においては、上記方法が必須であり、この方法に、(1)前駆体フィルムを、フィルムの幅方向の両側端部におけるフィルム端部把持が、多数のクリップで挟み込むことやピンシートに設けられた多数のピンで突き刺すことによってなされ、幅方向およびまたは搬送方向に張設した状態でフィルムを搬送するテンター方式でイミド化させポリイミドフィルムを得る。
【0049】
また、本発明においては、ポリアミド酸溶液を支持体上に流延する際に真円度の高いバックアップロールを用いることで、塗工時の厚み斑を低減させ、特にMD方向の厚み斑を低減させることができる、バックアップロールの真円度は下記するロールの偏心量をもって表すものであり、その偏心量(μm)は3以下が好ましく、特に2以下が好ましい。
前記ピン部分補強によるフィルムへの厚み斑低減効果はTD方向の厚み斑抑制に効果が有る。
これらの方式においてはコーターのバックアップロールの偏心量を3(μm)以下好ましくは2(μm)以下に制御する方法が好ましい。バックアップロールの偏心量の測定は、バックアップロールの端面に、ダイヤルゲージを当接し、ゲージの変位量をバックアップロールの左端面、右端面、中心部を測定した値である。
より詳しく述べれば、ダイヤルゲージは静電容量式ダイヤルゲージ(尾崎製作所製、商品名PEACOCK、型式DG−205、測定範囲25mm、最小表示量0.001mm、精度0.003mm)を使用する。
ダイヤルゲージはマグネットチャックにてロールフレームに固定する。偏芯量測定は円周方向に8分割した箇所を、それぞれ繰り返し6回、測定する。測定時の環境は、温度、湿度が安定し、振動の無い環境で実施する。ロール駆動速度は、1m/分で実施する。
測定はフィルム無し、有りの両方で実施する。フィルム有りの場合、フィルムテンションは100N程度で実施する。
バックアップロールの偏心量の制御は、偏心量の大きい場合はバックアップロールのメッキ剥がし、切削加工、研磨加工、の工程を少なくとも経て偏心量の制御を実施する、また偏心量の小さい場合はバックアップロール研磨加工を実施して偏心量の制御を実施する。
バックアップロールの材質は、機械構造用炭素鋼(STKM、S45C)が好ましい。
バックアップロールの表面処理は、硬質クロムメッキが好ましい。ロールの直径は、φ200〜400程度が望ましい。軸受は寸法精度及び回転精度がJISB1514に規定される精度等級の4級以上の軸受を使用することが好ましい。
【0050】
本発明におけるポリイミドフィルムの厚さ斑は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは3%以下であることが好ましい。この厚さ斑が10%を超える場合はこのフィルムを電子部品の耐熱絶縁材として使用したとき電子部品の寸法精度に欠陥を生じせしめ、さらに電子部品の電気的品質に課題を多く抱えるものとなる。
本発明における厚さ斑の測定は、下記によるものである。
厚さ斑(%)=((最大値−最小値)/平均厚み)×100
測定については、幅方向および長手方向に測定した。
幅方向(TD)については、幅方向1cm間隔で全幅測定し、その間の平均および最大値、最小値を出し、上式を用いて計算した。
長手方向(MD)については、長手方向5cm間隔で5m分測定し、その間の平均および最大値、最小値を出し、上式を用いて計算した。
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
【0052】
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドン(又は、N,N−ジメチルアセトアミド)に溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。(ポリアミド酸溶液の調製に使用した溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドの場合は、N,N−ジメチルアセトアミドを使用してポリマーを溶解し、測定した。)
2.ポリイミドフィルムの厚さ
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1254D)を用いて測定した。
【0053】
3.ポリイミドフィルムの引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度
測定対象のポリイミドフィルムを、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。引張試験機(島津製作所製、オートグラフ(登録商標)、機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度を測定した。
4.フィルムの線膨張係数(CTE)
下記条件で伸縮率を測定し、30〜300℃までを15℃間隔で分割し、各分割範囲の伸縮率/温度の平均値より求めた。MD方向、TD方向の意味は上記と同様である。
装置名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
初荷重 ; 34.5g/mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0054】
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(日本触媒株式会社製)を1.22質量部、N−メチル−2−ピロリドン420質量部を、容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。予備分散液中の平均粒子径は0.11μmであった。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、223質量部の5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールを入れた。次いで、4000質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を420質量部と217質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて24時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Aが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は3.8dl/gであった。
【0055】
<実施例1>
ポリアミド酸溶液Aを、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡績株式会社製)の無滑材面上に、コンマコーターを用いてコーティングした(塗工幅1240mm、バックアップロールの真円度が2(μm)のものを使用)。
コンマコーターと乾燥機の間に設置した(塗布膜が乾燥機に入る前)、赤外吸収方式の厚さ計(クラボウ製、商品名RX−100(透過型)またはRX−200(反射型)、測定面積7×13mm)を用いて、単位面積あたりの重量測定をオンラインで実施し、目標となる重量と得られた重量との差を算出した。
乾燥機に入った塗膜は、90℃にて7.5分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して両端をカットし、厚さ8.2μm、幅1200mmのグリーンフィルムを得た。得られたグリーンフィルムに幅35mmの細幅長尺スリットフィルムA(易接着性細幅長尺スリットフィルムA)を両側端部に重ね合わせながら、ピンシートやブラシロール、押さえロール、支え治具の条件でピンテンターにて両端を把持し熱処理を行った。ピンは、ピンシートが並んだ際にピン間隔が一定となるように配置されており、ピン台座からのピン高さは8mm、ピンシート間隔は1140mmであり、ピンシートの長手方向の長さは95mm、幅方向の長さは35mmで、ピンシートの幅方向外側に設定した該台の長手方向の長さは95mm、幅方向の長さは15mmであり、該台の周囲は面取り加工を施した。また、ブラシロールは幅方向に2種類の素材を用いた2層構造を用い、内側にはコーネックス製で素線径φ0.3mmを配置し、外側には素線径φ0.5mmの金属素線を配置した。
(ピンシートの形状は平板形状、押さえロールとフィルム把持開始部との距離は150mm、支え治具はテフロン(登録商標)製バーを使用、支え治具とフィルム把持開始部との距離は170mm)
テンターの熱処理設定は以下の通りである。第1段が180℃で5分、昇温速度4℃/秒で昇温して第2段として460℃で5分の条件で2段階の加熱を施して、イミド化反応を進行させた。その後、5分間で室温にまで冷却し、フィルムの両側端部の細幅フィルムが重なっている部分をスリッターにて切り落とし、ロール状に巻き上げ、褐色を呈するポリイミドフィルムAを得た。熱処理中の搬送状態、得られたポリイミドフィルムの特性などの測定結果を表1に記載する。
表1記載の単位面積当たりの重量差とは、1平方メートル当たりの目標重量(経験値より設定)に対して、実測した重量との差である。
なお、フィルムの平面性、巻き品位および有効幅は、以下のように定義した。
まず得られたフィルムを清浄な表面を有する定盤に広げ、フィルム端部にてウネリにより定盤との間に空間が空いてしまう部分を平面性不良な部分として捉えた。
単位面積あたり、空間が空く部分がみられない〜1/4程度のものを○、1/4〜1/2のものを△、1/2以上のものを×とした。
巻き上げられたロールに皺が入らず、ストリークや端面ずれ等が発生しない、製品ロールの状態を巻き品位の良好な状態として定義した。
ロール面および端面を目視にて観察し、皺なく端部ずれがないものを○、皺が1〜2本、ずれ量が1mm以内かつ全体の2割以内であるものを△、皺が3本以上、ずれ量が1mm以上かつ全体の2割以上であるものを×とした。
また、ピン裂けは、フィルムの先頭から10m程度の部分にて、ピン部での幅方向、縦方向でのフィルム裂けを目視判定し、縦方向の隣どうしのピン穴(全部で500ヶ)が繋がるものが10ヶ以上あるものを×、10ヶ〜3ヶ程度のものを△、2ヶ以下のものを○とした
【0056】
<実施例2〜3>
ポリアミド酸溶液Aを使用し、塗工厚さ以外は実施例1と同様にしてそれぞれのポリイミドフィルムBとポリイミドフィルムCを得た。
同様にしてその評価をした。結果を表1に示す。
【0057】
<比較例1>
フィルム厚さ制御を、乾燥後の中間体(乾燥された前駆体フィルム)の厚さを、赤外吸収方式の厚さ計にて測定し、流延時にフィードバックをかける方法で実施した以外は、
実施例1と同様にしてポリイミドフィルムDを得た。同様にしてその評価をした。結果を表2に示す。
【0058】
<比較例2>
フィルム厚さ制御を、イミド化反応後での厚さを、赤外吸収方式の厚さ計にて測定し、次の流延時にフィードバックをかける方法で実施した以外は、
実施例1と同様にしてポリイミドフィルムEを得た。同様にしてその評価をした。結果を表2に示す。
【0059】
<比較例3>
フィルム厚さ制御を、乾燥後の中間体(乾燥された前駆体フィルム)を剥ぎ取り、接触式の厚さ計にてオフライン測定し、流延時にフィードバックをかける方法で実施した以外は、
実施例1と同様にしてポリイミドフィルムFを得た。同様にしてその評価をした。結果を表2に示す。
【0060】
<比較例4>
フィルム厚さ制御を、イミド化反応後での厚さを、接触式の厚さ計にてオフライン測定し、次の流延時にフィードバックをかける方法で実施した以外は、
実施例1と同様にしてポリイミドフィルムGを得た。同様にしてその評価をした。結果を表2に示す。
【0061】
<比較例5>
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(日本触媒株式会社製)を7.6質量部、N−メチル−2−ピロリドン390質量部を容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、200質量部の4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを入れた。次いで、3800質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を390質量部と217質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて5時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Bが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は3.7dl/gであった。ポリアミド酸溶液Bを用いて、実施例1と同様にしてポリイミドフィルムHを得た。同様にしてその評価をした。結果を表2に示す。
【0062】
<比較例6>
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(日本触媒株式会社製)を3.7質量部、N−メチル−2−ピロリドン420質量部を容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、108質量部のp−フェニレンジアミンを入れた。次いで、3600質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を420質量部と292.5質量部の3,3’、4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物を加えて、25℃にて12時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Cが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は4.5dl/gであった。ポリアミド酸溶液Cを用いて、実施例1と同様にしてポリイミドフィルムIを得た。同様にしてその評価をした。結果を表2に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
(フィードバック時間)
作製しているフィルムの厚さが、管理幅を超えた場合、管理幅内に収まるように厚みを調整する必要が出てくるが、この厚さエラーを検知してから、修正完了するまでの時間をフィードバック時間と定義する。この時間が短いほど、ロスも少なくなる。
【0065】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の芳香族テトラカルボン酸類(無水物、酸、およびアミド結合性誘導体を総称して類という、以下同)と芳香族ジアミン類(アミン、およびアミド結合性誘導体を総称して類という、以下同)とを反応させて得られるポリアミド酸溶液であるドープを流延、塗布膜形成、乾燥、熱処理(イミド化)して得られるポリイミドフィルムであって、赤外線の波長領域が1μm以上5μm以下の範囲内で、そのポリアミド酸溶液の流延直後に、0.1g/m2以上0.5g/m2以下となるように単位面積あたりの重量を制御したポリイミドフィルムが安定的生産が可能となり、得られたポリイミドフィルムは厚さ斑の少ない均一性に優れたフィルムとなり、さらに皺や歪みなどの発生による品質不良が発生し易い課題を解消することができ、この方法を採用することで得られるポリイミドフィルムを利用したフレキシブル回路などの電子部品の寸法精度と品質の向上に寄与することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸類とジアミン類とを反応させて得られるポリアミド酸溶液であるドープを流延、塗布膜形成、乾燥、熱処理(イミド化)して得られるポリイミドフィルムの製造方法であって、塗布膜形成後乾燥前の単位面積当たりの重量をその中に含まれる溶媒の吸収により赤外吸収方式の厚さ計で測定・管理することによって、得られるポリイミドフィルムの単位面積当たりの重量を制御することを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法であって、赤外線の波長領域が1μm以上5μm以下の範囲内で、前記赤外吸収方式の厚さ計で測定・管理することによって、そのポリアミド酸溶液の流延直後に、0.1g/m2以上1.0g/m2以下となるように単位面積あたりの重量を制御したポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項3】
ジアミン類が、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類である請求項1又は2記載のいずれかの製造方法で製造されたポリイミドフィルム。
【請求項4】
請求項1〜2いずれかに記載の製造方法で製造されたポリイミドフィルムをロール状に巻き取ったフィルムロールであって、幅500mm以上、長さ100m以上を有するポリイミドフィルムロール。

【公開番号】特開2011−236262(P2011−236262A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106192(P2010−106192)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】