説明

ポリイミドフィルムの製造法

【課題】 製造後の500m以上の長尺のポリイミドフィルムであって湾曲現象がほとんど生じないポリイミドフィルムおよびその製造法を提供する。
【解決手段】フィルムの長さが500m以上で、自己支持性フィルムをキュア炉内で加熱キュアし、その際の最高加熱温度以降のキュア炉内の加熱温度を調整することにより絶対値で表示されるフィルムの扇度が3以下に制御された、長尺状で幅広のポリイミドフィルム、キュア炉内における最高加熱温度:425〜525℃程度の温度以降のキュア炉内の冷却温度(Tc)として、次の条件を満足する温度
350[厚み/75]1/2>Tc>Th−200[1+(75−厚み)/75]
[但し、Th:最高加熱温度(℃)、厚み:μm]
を30秒間以上維持した後にキュア炉外で自然冷却するポリイミドフィルムの製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ポリイミド、特に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンとを必須成分として製造されるポリイミドからなり絶対値で表示されるフィルムの扇度が制御された、長尺状で幅広のポリイミドフィルムおよびその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリイミドフィルムは、耐熱性、耐寒性、耐薬品性、電気絶縁性、機械的強度等において優れた特性を有することから、種々の分野で広く利用されている。なかでも、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分とp−フェニレンジアミン成分とを必須成分とするポリイミドフィルムは、特に高耐熱性で耐薬品性に優れ高弾性率であることが知られている。従って、このようなタイプのポリイミドフィルムは、特にその優れた耐熱性、高弾性率に着目した場合、高精度が求められるテ−プ・オ−トメ−テッド・ボンディング(TAB)用フィルムキャリアテ−プの製造に用いる支持体として適しているということができる。
【0003】
そして、このTAB用フィルムキャリアテ−プの製造に用いる支持体用のポリイミドフィルムとしては、75μm以下の厚みのものが主として使用されている。
そして、従来は幅広のポリイミドフィルムから数本に分割し、フィルムの片面に耐熱性接着剤で銅箔を接着・積層した後に成形加工しており、工程中に分割したL位置、R位置のフィルムの湾曲が問題となることはなかった。その理由として、例えば508mm幅の幅広のポリイミドフィルムから、35mm幅にカットしたフィルムを十数本あるいは50mm弱の幅にカットしたフィルムを10本取得して接着・積層および加工しており、このような幅狭のフィルムではL位置、R位置のフィルムの湾曲の絶対値が小さいため問題とならないからである。
【0004】
しかし、TABを含めてポリイミドフィルムが使用される電子技術分野では、より高生産性でより低コストの要求から、例えば製造後の500m以上の長尺のポリイミドフィルムから3分割された508mm幅の幅広のポリイミドフィルムを用いて、約70mm幅で7本あるいは約100mm幅で5本という比較的幅広にカットしたフィルムを取得して使用する試みがなされており、このような比較的幅広のフィルムではL位置およびR位置のフィルムに生じる湾曲現象が問題となる。
この湾曲現象は高精度の観点からも、できるだけ小さいことが求められる。
【0005】
このように湾曲したフィルムは、前述の成形加工工程において搬送時にフィルムが蛇行する等の不具合が発生する。このフィルムの蛇行の程度が大きくなると、フィルムの搬送時にスプロケットホ−ルからフィルムがはずれ、成形加工できなくなることが指摘されている。
【0006】
BPDA−PPD系ポリイミドフィルムの物性を改良する試みは種々なされており、例えば、特許文献1にはビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンとから得られるポリイミドフィルムを低張力下に再熱処理して寸法安定なポリイミドフィルムを製造する方法が記載されている。また、特許文献2には線膨張係数比(送り方向/直行方向)および送り方向の線膨張係数が特定範囲内にあり寸法安定性に優れたポリイミドフィルムが記載されている。さらに、特許文献3〜5には、流延法での製膜時の芳香族ポリアミック酸フィルムの剥離性を改良する方法が記載されている。また、特許文献6にはビフェニルテトラカルボン酸類およびピロメリット酸類とフェニレンジアミンおよびジアミノジフェニルエ−テルとの3〜4成分系ポリイミドフィルムが記載され、特許文献7〜8には置換もしくは非置換の含窒素複素環化合物を添加する製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−264027号公報
【特許文献2】特公平4−6213号公報
【特許文献3】特公昭62−60416号公報
【特許文献4】特公昭63−5421号公報
【特許文献5】特公昭63−5422号公報
【特許文献6】特公平3−20130号公報
【特許文献7】特開平4−198229号公報
【特許文献8】特開平4−339835号公報
【0008】
これらの公知技術により得られるBPDA−PPD系ポリイミドフィルムは、製造時におけるキュア炉において両端部が把持されるため、両端部のMD方向の残留応力が大きくなり、得られた500m以上の長尺のポリイミドフィルムを3分割してユ−ザ−が前述のように比較的幅広にカットしたフィルムを多数取得して使用する場合にフィルムのL位置およびR位置において生じる湾曲現象が避けられない。
このため、ポリイミドフィルムを製造する際に、キュア炉内における把持部の幅の調整によって前記の湾曲を低減することが試みられた。
しかし、500m以上の長尺のポリイミドフィルムから3分割して300mm以上にカットした幅広のフィルムから更にユ−ザ−がカットして使用する場合に前記の湾曲が依然として問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明の目的は、製造後の500m以上の長尺のポリイミドフィルムであって、その3分割された幅広のフィルムを用いて、約5本以上にカットしたフィルムを多数取得してもフィルムのL位置およびR位置のフィルムに湾曲現象がほとんど生じないポリイミドフィルムおよびその製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明者らは、キュア炉内の冷却温度の勾配を変化させて、フィルムの湾曲を変化させることが可能であることを見出し、さらに研究した結果この発明を完成した。
すなわち、この発明は、フィルムの長さが500m以上で、ポリイミド前駆体溶液の自己支持性フィルムを加熱、イミド化して得られるポリイミドフィルムであって、自己支持性フィルムをキュア炉内で加熱キュアし、その際の最高加熱温度以降のキュア炉内の加熱温度を調整することにより絶対値で表示されるフィルムの扇度が3以下に制御された、長尺状で幅広のポリイミドフィルムに関する。
また、この発明は、前記溶液組成物の薄膜を形成し、その薄膜を加熱乾燥することによって得られた自己支持性フィルムを、フィルム把持装置に両端部を把持させてキュア炉に挿入し、キュア炉内における最高加熱温度:425〜525℃程度の温度以降のキュア炉内の冷却温度(Tc)(℃)として、次の条件を満足する温度
350[厚み/75]1/2>Tc>Th−200[1+(75−厚み)/75]
[但し、Th:最高加熱温度(℃)、厚み:μm]
を30秒間以上維持した後にキュア炉外で自然冷却する、フィルムの長さが500m以上で、分割した各フィルムについての絶対値で表示される扇度が3以下である長尺状で幅広のポリイミドフィルムの製造法に関する。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、長尺のポリイミドフィルムであって、その3分割された幅広のフィルムを用いて、更に約5本以上にカットしたフィルムのL位置およびR位置のフィルムに生じる湾曲現象が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、長尺のポリイミドフィルムからフィルムを切り取り3分割した幅が508mmで長さ6mの試料について、ポリイミドフィルム製造の際に支持体に接する面のポリイミドフィルムの面であるA面を上側とし、フィルムのR側フィルムのR端を基線側として扇度を測定している一例を示すものである。
【図2】図2は、長尺のポリイミドフィルムからフィルムを切り取り3分割した幅が508mmで長さ6mの試料について、ポリイミドフィルム製造の際に支持体に接する面のポリイミドフィルムの面であるA面を上側とし、フィルムのR側フィルムのR端を基線側として扇度を測定している他の一例を示すものである。
【図3】図3は、長尺のポリイミドフィルムからフィルムを切り取り3分割した幅が508mmで長さ6mの試料について、ポリイミドフィルム製造の際に支持体に接する面のポリイミドフィルムの面であるA面を上側とし、フィルムのL側フィルムのL端を基線側として扇度を測定している一例を示すものである。
【0013】
【図4】図4は、長尺のポリイミドフィルムからフィルムを切り取り3分割した幅が508mmで長さ6mの試料について、ポリイミドフィルム製造の際に支持体に接する面のポリイミドフィルムの面であるA面を上側とし、フィルムのL側フィルムのL端を基線側として扇度を測定している他の一例を示すものである。
【図5】図5は、長尺のポリイミドフィルムからフィルムを切り取り3分割した幅が508mmで長さ6mの試料について、ポリイミドフィルム製造の際に支持体に接する面のポリイミドフィルムの面であるA面を上側とし、フィルムのC側フィルムのLC端を基線側として扇度を測定している一例を示すものである。
【図6】図6は、長尺のポリイミドフィルムからフィルムを切り取り3分割した幅が508mmで長さ6mの試料について、ポリイミドフィルム製造の際に支持体に接する面のポリイミドフィルムの面であるA面を上側とし、フィルムのC側フィルムのLC端を基線側として扇度を測定している他の一例を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下にこの発明の好ましい態様を列記する。
1)幅広のフィルムから幅が各々300〜600mmとなるように均等に3分割して絶対値で表示される扇度が1〜3である上記のポリイミドフィルム。
2)ポリイミドが、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二成分とp−フェニレンジアミン成分とからなる上記のポリイミドフィルム。
3)厚みが25〜75μmである上記のポリイミドフィルム。
4)ポリイミド前駆体溶液組成物が、無機フィラ−およびリン化合物を含有するものである上記のポリイミドフィルムの製造法。
5)ポリイミド前駆体が、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンとを有機極性溶媒中で重合して得られるものである上記のポリイミドフィルムの製造法。
6)ポリイミド前駆体溶液組成物が、15〜25重量%のポリマ−濃度である上記のポリイミドフィルムの製造法。
7)フィルムの長さが500m以上で、幅広のフィルムから幅が各々300〜600mmとなるように均等に3分割した各フィルムが、絶対値で表示される扇度が1〜3である上記のポリイミドフィルムの製造法。
【0015】
この明細書において扇度とは、長尺で幅広の製造後のポリイミドフィルムから長さ6mの試料を切り取り、3分割したフィルムについて、図1〜図6に示すように、ポリイミドフィルム製造の際にポリイミド前駆体溶液を流延した支持体に接する面のポリイミドフィルムの面であるA面を上側とし、3分割した製品の内のR側フィルムの場合はR端を基線側として、C側フィルムの場合はLC端を基線側として、L側フィルムの場合はL端を基線側として、基線からフィルム端部までの長さを扇度(フィルム長さ6m当たりの基線からの湾曲の最大値をmm単位で表示したもの)で表示する。
前記の扇度の符号(+、−)は、基軸に対して上にふくらんでいる場合を+、下にふくらんでいる場合を−とし、図1、図3および図5の場合は扇度は+、図2および図4の場合は扇度は−である。
【0016】
この発明におけるポリイミドとしては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および/またはピロメリット酸二無水物とp−フェニレンジアミンまたはp−フェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルとから得られるポリイミドが挙げられるが、この発明の効果を損なわない範囲で他の芳香族テトラカルボン酸成分、例えば2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物あるいは他の芳香族ジアミン成分、例えば1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、o−トリジン、m−トリジンなどの他の芳香族ジアミンで一部または全部を置き換えてもよい。
【0017】
この発明において、ポリイミドフィルムは、長さが500m以上、好適には1000m以上で、好適には幅が1000mm以上、厚みが25〜75μm、その中でも35〜75μmである。
ポリイミドフィルムの長さがこの下限より小さいと成形加工工程において生産性が低くなる。
また、ポリイミドフィルムは、引張弾性率(MD、TD)が6.0〜10.0GPaであり、線膨張係数(MD、TD)50〜200℃)が10〜25ppm/℃であることが高精度の要求されるフィルム材料として好ましい。
【0018】
この発明の方法において、先ず前記芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとをN,N−ジメチルアセトアミドやN−メチル−2−ピロリドンなどのポリアミック酸(ポリイミド前駆体)の製造に通常使用される有機極性溶媒中で、好ましくは10〜80℃で1〜30時間重合して、ポリマ−の対数粘度(測定温度:30℃、濃度:0.5g/100ml溶媒、溶媒:N−メチル−2−ピロリドン)が1.5〜5、ポリマ−濃度が15〜25重量%であり、回転粘度(30℃)が500〜4500ポイズであるポリアミック酸(イミド化率:5%以下)溶液を得る。
【0019】
次いで、例えば上記のようにして得られたポリアミック酸溶液に、好適には、リン化合物を、好ましくはこのポリアミック酸100重量部に対して0.01〜5重量部、特に0.01〜3重量部、その中でも特に0.01〜1重量部の割合で有機リン化合物、好適には(ポリ)リン酸エステル、リン酸エステルのアミン塩あるいは無機リン化合物を添加し、さらに好適には無機フィラ−あるいは有機フィラ−を、特にポリアミック酸100重量部に対して0.1〜3重量部のコロイダルシリカ、窒化珪素、タルク、酸化チタン、燐酸カルシウム(好適には平均粒径0.005〜2μm、特に0.005〜1μm)を添加してポリイミド前駆体溶液組成物を得る。
【0020】
このポリイミド前駆体溶液組成物を平滑な表面を有する金属製の支持体表面に連続的に流延して前記溶液の薄膜を形成し、その薄膜を乾燥する際に、120〜170℃、2〜20分間程度加熱乾燥することにより、固化フィルム中、前記溶媒及び生成水分からなる揮発分含有量が25〜40重量%程度の自己支持性フィルムを得る。この自己支持性フィルムにアミノシランカップリング剤などの表面処理剤を塗布処理してもよいし、これをさらに乾燥してもよい。
【0021】
次いで、この自己支持性フィルムをレ−ルに沿って駆動するチェ−ンに取り付けたフィルム把持装置に両端部を把持させて連続キュア炉(キュア炉)に挿入し、その際にキュア炉内における加熱ゾ−ンを複数設け、入り口ゾ−ンの温度として125℃〜175℃、次いで順次温度を多段が高くなるように加熱して最高加熱温度:425〜525℃程度、特に475〜500℃程度の温度が0.5〜30分間となる条件で該乾燥フィルムを加熱して乾燥およびイミド化して、残揮発物量0.4重量%以下程度で、イミド化を完了し、最高加熱温度以降のキュア炉内の冷却温度(Tc)(℃)として、次の条件を満足する温度350[厚み/75]1/2>Tc>Th−200[1+(75−厚み)/75]
[但し、Th:最高加熱温度(℃)、厚み:μm]
を30秒間以上、好適には30秒〜3分間程度維持した後にキュア炉外で自然冷却することによって、フィルムの長さが1000m以上で、分割したフィルムについての絶対値で表示される扇度が3以下、好適には1〜3である長尺状で幅広のポリイミドフィルムを好適に製造することができる。
【0022】
この発明において、扇度を確認しながら扇度の最低値を維持するためにキュア炉内の前記の冷却温度を求めることができ、この冷却温度を採用することによって再現性良く扇度の小さいポリイミドフィルムを製造することができる。
この発明の製造法においては、前記のキュア炉内における最高加熱温度以降のキュア炉内の冷却温度(Tc)について前記の条件を満足する温度を採用して加熱することによって、キュア炉内の冷却温度の勾配を変化させて、扇度を変化させることが可能となるのである。
そして、この扇度が5以下のポリイミドフィルムからは、長尺のポリイミドフィルムであって、その3分割された幅広のフィルムを用いて、更に約5本以上にカットしたフィルムのL位置およびR位置のフィルムに生じる湾曲現象が少ないポリイミドフィルムを得ることはできない。
また、ポリイミドフィルムの寸法精度に影響を与える応力緩和処理やキュア炉テンタ−チェ−ンの幅の調整によってはフィルムの湾曲を低下させることは不可能である。
【0023】
上記のようにして加熱処理したポリイミドフィルムであって、キュア炉外で自然冷却したものを、好適には低張力下あるいは無張力下に200〜400℃程度の温度で 〜 分間加熱して応力緩和処理して、巻き取って、厚みが25〜75μm、その中でも30〜75μmで、引張弾性率(MD、TD)が6.0〜10.0GPaであり、線膨張係数(MD、TD)50〜200℃)が10〜25ppm/℃で寸法精度が改良され、長さが1000m以上で、分割したフィルムについての絶対値で表示される扇度が3以下、好適には1〜3である長尺状で幅広のポリイミドフィルムを好適に製造することができる。
【0024】
このようにして得られる扇度を制御したポリイミドフィルムは、プラズマ放電処理(真空あるいは常圧プラズマ放電処理)、コロナ放電処理などの少なくとも1つの放電処理、好適には真空プラズマ放電処理を行って、絶縁材料として、例えばFPCやTAB用の基板材料、中でもCSPやBGAと呼ばれるICパッケ−ジ用の絶縁材料用および積層多層回路基板用として好適に使用することができる。
【0025】
前記の放電処理は、フィルム表面を処理せずあるいはアセトン、イソプロピルアルコ−ル、エチルアルコ−ルなどの有機溶媒で処理した後行ってもよい。
前記の真空プラズマ放電処理を行う雰囲気の圧力は特に限定されないが、0.1〜1500Paの範囲が好ましい。
前記プラズマ処理を行う雰囲気のガス組成としては、特に限定されないが酸素を含有することが好ましい。あるいは、希ガスを少なくとも20モル%含有していてもよい。希ガスとしてはHe、Ne、Ar、Xeなどが挙げられるが、Arが好ましい。希ガスにCO2、N2、H2、H2Oなどを混合して使用してもよい。
前記プラズマ処理を行うプラズマ照射時間は1秒〜10分程度が好ましい。
【0026】
この発明によって得られる扇度を制御したポリイミドフィルムから銅張積層体を得るための接着剤としては、熱硬化性でも熱可塑性でもよく、例えばエポキシ樹脂、NBR−フェノ−ル系樹脂、フェノ−ル−ブチラ−ル系樹脂、エポキシ−NBR系樹脂、エポキシ−フェノ−ル系樹脂、ポリアミド−エポキシ系樹脂、エポキシ−ポリエステル系樹脂、エポキシ−アクリル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド−エポキシ−フェノ−ル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリイミド−エポキシ樹脂、ポリイミドシロキサン−エポキシ樹脂などの熱硬化性接着剤、またはポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系接着剤、ポリイミドシロキサン系接着剤などの熱可塑性接着剤が挙げられる。特に、ポリアミド−エポキシ系樹脂、ポリイミド−エポキシ樹脂系接着剤、ポリイミドシロキサン−エポキシ樹脂系接着剤などの熱硬化性接着剤、ポリイミド系接着剤、ポリイミドシロキサン系接着剤などの熱可塑性接着剤が好適に使用される。
【0027】
特に、作業性の点から熱硬化性接着剤シ−トを使用することが好ましい。
この接着剤シ−トを積層した後、好適にはPET(ポリエステルフィルム)であって剥離剤を処理した保護フィルムを積層することが好ましい。
通常は、この積層体をレ−ザ−加工やパンチング加工などの穴明け加工を施した後、銅箔(銅層)と積層して加熱圧着する。
【0028】
前記の銅箔としては、表面粗さRzが0.5μm以上で10μm以下、特に7μm以下である電解銅箔や圧延銅箔が使用される。このような銅箔はVLP、LP(またはHTE)として知られている。
銅箔の厚さは特に制限はないが、5〜35μm、特に5〜20μmであるものが好ましい。
また、銅箔以外の金属層も線膨張係数が銅箔と同等であれば同様に使用することができる。これらの金属(回路用)としては、銅、アルミニウム、金、これら金属の合金が挙げられる。
【0029】
この発明のポリイミドフィルムを使用して銅箔との積層体(シ−ト)を形成するには、例えば、前記のようにして形成された薄膜状の接着剤を介して、ポリイミドフィルムと金属箔とを80〜200℃、特に150〜180℃の温度で加圧(0.2〜30kg/cm2)下にラミネ−ト(張り合わせ)して、積層体を何の支障もなく容易に連続的に製造することができる。
【0030】
また、銅層の積層は前記の接着剤によって行うことが好ましいが、蒸着および/または電気メッキなどによっておこなってもよい。
この場合には、金属蒸着または金属蒸着と金属メッキ層とで金属層を形成することが好ましい。この金属を蒸着する方法としては真空蒸着法、スパッタリング法などの蒸着法を挙げることができる。真空蒸着法において、真空度が、10−5〜1Pa程度であり、蒸着速度が5〜500nm/秒程度であることが好ましい。スパッタリング法において、特にDCマグネットスパッタリング法が好適であり、その際の真空度が13Pa以下、特に0.1〜1Pa程度であり、その層の形成速度が0.05〜50nm/秒程度であることが好ましい。得られる金属蒸着膜の厚みは10nm以上、1μm以下であり、そのなかでも0.1μm以上、0.5μm以下であることが好ましい。この上に好適には金属メッキにより肉厚の膜を形成することが好ましい。その厚みは、約1〜20μm程度である。
【0031】
金属薄膜の材質としては、種々の組み合わせが可能である。金属蒸着膜として下地層と表面蒸着金属層を有する2層以上の構造としてもよい。下地層としては、クロム、チタン、パラジウム、亜鉛、モリブデン、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、鉄などを単独で、あるいはこれらの金属の合金あるいはこれらの金属と銅との合金等が挙げられる。表面層(あるいは中間層)としては銅が挙げられる。蒸着層上に設ける金属メッキ層の材質としては、銅が使用される。金属メッキ層の形成方法としては、無電解メッキ法および電解メッキ法のいずれでもよい。また、真空プラズマ放電処理したポリイミドフィルムの片面に、クロム、チタン、パラジウム、亜鉛、錫、モリブデン、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、鉄などを単独で、あるいはこれらの金属の合金あるいはこれらの金属と銅との合金の下地金属層を形成し、その上に中間層として銅の蒸着層を形成した後、銅の無電解メッキ層を形成し(無電解メッキ層を形成することは発生したピンホ−ルをつぶすのに有効である。)、あるいは、金属蒸着層の厚みを大きくして、例えば0.1〜1.0μmとして銅などの無電解金属メッキ層を省略し、表面層として電解銅メッキ層を形成してもよい。
【0032】
以下にこの発明の実施例を示す。
【実施例】
【0033】
以下にこの発明の実施例を示す。
以下の各例において、ポリイミドフィルムの物性測定は以下の方法によって行った。なお、以下の測定値は特記した場合を除き25℃での測定値である。
線膨張係数(50〜200℃)測定:300℃で30分加熱して応力緩和したサンプルをTMA装置(引張りモ−ド、2g荷重、試料長10mm、20℃/分)で測定した。
引張弾性率:ASTM D882に従って測定(MD)
加熱収縮率:JIS C2318に従って測定(200℃)
【0034】
フィルムの湾曲性:長尺のポリイミドフィルムから3分割された幅広のフィルムを用いて、更に約5本以上にカットしたフィルムのL位置およびR位置のフィルムに生じる湾曲を幅60〜100mm、高さ5mmのガイド付きフィルム巻取り装置で搬送し、ガイドから外れずに搬送できたものは湾曲がなく、湾曲性評価を良好とする。また、ガイドから外れたものはフィルムが湾曲していると判断し、湾曲性評価を不良とする。
によって評価した。
【0035】
実施例1
反応容器に、N,N−ジメチルアセトアミド100重量部に、p−フェニレンジアミン5.897重量部および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物16.019重量部を加えて、窒素気流下、40℃で3時間攪拌し、重合反応させてポリマ−濃度18重量%、ポリマ−の対数粘度(測定温度:30℃、濃度:0.5g/100ml溶媒、溶媒:N,N−ジメチルアセトアミド)が1.8、溶液粘度1800ポイズ(30℃、回転粘度計)のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液に、ポリアミック酸100重量部に対して0.1重量部の割合でモノステアリルリン酸エステルトリエタノ−ルアミン塩および0.5重量部の割合(固形分基準)で平均粒径0.08μmのコロイダルシリカを添加して均一に混合して、ポリイミド前駆体溶液組成物を得た。
【0036】
このポリイミド前駆体溶液組成物を、Tダイのスリットより連続的に押出し、平滑な金属属支持体上に厚み0.4mmの薄膜を形成した。この薄膜を120〜160℃で10分間加熱後、支持体から剥離して、揮発分含有量が34.4重量%の自己支持性フィルムを形成し、さらにこれを乾燥し揮発分含有量を28.5重量%とした。
次いで、この自己支持性フィルムをレ−ルに沿って駆動するチェ−ンに取り付けたフィルム把持装置に両端部を把持させて連続キュア炉の挿入し、その際に各加熱ゾ−ン(各ゾ−ンの長さは均一)を次に示す温度分布としてキュア炉内で15分間加熱(一定速度で走行)し、加熱処理したポリイミドフィルムをキュア炉外で自然冷却したものを、低張力下(張力:20N)に300℃で3分間加熱して応力緩和処理して、巻き取って、長さ2700m、幅1600mm、厚み75μmの長尺で幅広のポリイミドフィルムを得た。
【0037】
1Z〜8Z:140℃〜450℃
9Z(最高加熱温度):480℃
10Z:390℃
11Z:300℃
外部温度:30℃
得られたポリイミドフィルムを3分割して、幅が約500mmのフィルムを得た。
このフィルムのR、CおよびLの扇度を測定した。
Rフィルム:扇度=+1.0
Cフィルム:扇度=+1.5
Lフィルム:扇度=+2.0
これらの各フィルムから幅約100mmのフィルムを切り取り、フィルムの湾曲性を評価した結果、いずれのフィルムも良好であった。
【0038】
実施例2
再現性をみるために、実施例1を繰り返し行って、長さ2700m、幅1600mm、厚み75μmの長尺で幅広のポリイミドフィルムを得た。
得られたポリイミドフィルムを3分割して、幅が約500mmのフィルムを得た。
このフィルムのR、CおよびLの扇度を測定した。
Rフィルム:扇度=+1.5
Cフィルム:扇度=+2.5
Lフィルム:扇度=+1.0
これらの各フィルムから幅約100mmのフィルムを切り取り、フィルムの湾曲性を評価した結果、いずれのフィルムも良好であった。
また、実施例1と実施例2との比較から、再現性は良好であることが確認された。
【0039】
実施例3
自己支持性フィルムをレ−ルに沿って駆動するチェ−ンに取り付けたフィルム把持装置に両端部を把持させて連続キュア炉に挿入し、その際に各加熱ゾ−ンを次に示す温度分布とした他は実施例1と同様にして、長さ2700m、幅1600mm、厚み50μmの長尺で幅広のポリイミドフィルムを得た。
【0040】
1Z〜8Z:140℃〜450℃
9Z(最高加熱温度):480℃
10Z:390℃
11Z:305℃
外部温度:30℃
【0041】
得られたポリイミドフィルムを3分割して、幅が約500mmのフィルムを得た。
このフィルムのR、CおよびLの扇度を測定した。
Rフィルム:扇度=+2.5
Cフィルム:扇度=0.0
Lフィルム:扇度=+0.5
これらの各フィルムから幅約100mmのフィルムを切り取り、フィルムの湾曲性を評価した結果、いずれのフィルムも良好であった。
【0042】
実施例4
Tダイのスリット巾を変えた他は実施例1と同様にして、ポリイミド前駆体組成物を金属属支持体上に厚み0.3mmの薄膜を形成し、この薄膜を120〜160℃で10分間加熱後、支持体から剥離して、揮発分含有量が35.5重量%の自己支持性フィルムを形成し、さらにこれを乾燥し揮発分含有量が27.5質量%とした。
次いで、この自己支持性フィルムをレ−ルに沿って駆動するチェ−ンに取り付けたフィルム把持装置に両端部を把持させて連続キュア炉の挿入し、その際に各加熱ゾ−ンを次に示す温度分布とし、キュア炉内で10分間加熱して、加熱処理したポリイミドフィルムをキュア炉外で自然冷却したものを、低張力下(張力:20N)に300℃で2分間加熱して応力緩和処理して、巻き取って、他は実施例2と同様にして、長さ3400m、幅1600mm、厚み50μmの長尺で幅広のポリイミドフィルムを得た。
【0043】
1Z〜6Z:180℃〜450℃
7Z(最高加熱温度):500℃
8Z:450℃
9Z:380℃
10Z:340℃
11Z:235℃
外部温度:30℃
得られたポリイミドフィルムを3分割して、幅が約500mmのフィルムを得た。
このフィルムのR、CおよびLの扇度を測定した。
Rフィルム:扇度=+2.5
Cフィルム:扇度=+2.0
Lフィルム:扇度=+3.0
これらの各フィルムから幅約100mmのフィルムを切り取り、フィルムの湾曲性を評価した結果、いずれのフィルムも良好であった。
【0044】
実施例5
自己支持性フィルムをレ−ルに沿って駆動するチェ−ンに取り付けたフィルム把持装置に両端部を把持させて連続キュア炉に挿入し、その際に各加熱ゾ−ンを次に示す温度分布とした他は実施例4と同様にして、長さ3400m、幅1600mm、厚み50μmの長尺で幅広のポリイミドフィルムを得た。
【0045】
1Z〜6Z:180℃〜450℃
7Z(最高加熱温度):500℃
8Z:450℃
9Z:380℃
10Z:340℃
11Z:260℃
外部温度:30℃
得られたポリイミドフィルムを3分割して、幅が約500mmのフィルムを得た。
このフィルムのR、CおよびLの扇度を測定した。
Rフィルム:扇度=+2.0
Cフィルム:扇度=+1.0
Lフィルム:扇度=+1.5
これらの各フィルムから幅約100mmのフィルムを切り取り、フィルムの湾曲性を評価した結果、いずれのフィルムも良好であった。
【0046】
実施例6
Tダイのスリット巾を変えた他は実施例1と同様にして、ポリイミド前駆体組成物を金属属支持体上に厚み0.2mmの薄膜を形成し、この薄膜を120〜160℃で10分間加熱後、支持体から剥離して、揮発分含有量が35.5重量%の自己支持性フィルムを形成し、この自己支持性フィルムのA面上に4質量%の濃度でシランカップリング剤(N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)含有N,N−ジメチルアセトアミド溶液前記溶液を薄く6g/m塗布し、80〜120℃の熱風で乾燥を行って、揮発分含有量を31.5重量%とした。
次いで、この自己支持性フィルムをレ−ルに沿って駆動するチェ−ンに取り付けたフィルム把持装置に両端部を把持させて連続キュア炉の挿入し、その際に各加熱ゾ−ンを次に示す温度分布とし、キュア炉内で8分間加熱して、加熱処理したポリイミドフィルムをキュア炉外で自然冷却したものを、低張力下(張力:25N)に285℃で1.5分間加熱して応力緩和処理して、巻き取った他は実施例4と同様にして、長さ3000m、幅1600mm、厚み35μmの長尺で幅広のポリイミドフィルムを得た。
【0047】
1Z〜6Z:140℃〜450℃
7Z(最高加熱温度):490℃
8Z:410℃
9Z:380℃
10Z:360℃
11Z:190℃
外部温度:30℃
得られたポリイミドフィルムを3分割して、幅が約500mmのフィルムを得た。
このフィルムのR、CおよびLの扇度を測定した。
Rフィルム:扇度=−0.5
Cフィルム:扇度=+1.0
Lフィルム:扇度=−1.0
これらの各フィルムから幅約100mmのフィルムを切り取り、フィルムの湾曲性を評価した結果、いずれのフィルムも良好であった。
【0048】
比較例1(従来技術)
自己支持性フィルムをレ−ルに沿って駆動するチェ−ンに取り付けたフィルム把持装置に両端部を把持させて連続キュア炉の挿入し、その際に各加熱ゾ−ンを次に示す温度分布とした他は実施例1と同様にして、長さ2700m、幅1600mm、厚み75μmの長尺で幅広のポリイミドフィルムを得た。
1Z〜8Z:140℃〜450℃
9Z(最高加熱温度):480℃
10Z:390℃
11Z:270℃
外部温度:30℃
【0049】
得られたポリイミドフィルムを3分割して、幅が約500mmのフィルムを得た。
このフィルムのR、CおよびLの扇度を測定した。
Rフィルム:扇度=+7.5
Cフィルム:扇度=+3.5
Lフィルム:扇度=+5.0
これらの各フィルムから幅約100mmのフィルムを切り取り、フィルムの湾曲性を評価した結果、R、C、Lの各フィルムは不良であった。
【0050】
比較例2
自己支持性フィルムをレ−ルに沿って駆動するチェ−ンに取り付けたフィルム把持装置のレ−ルパタ−ンをL側に平行移動して両端部を把持させた他は比較例1と同様にして、長さ2700m、幅1600mm、厚み75μmの長尺で幅広のポリイミドフィルムを得た。
得られたポリイミドフィルムを3分割して、幅が約500mmのフィルムを得た。
このフィルムのR、CおよびLの扇度を測定した。
Rフィルム:扇度=+5.5
Cフィルム:扇度=+2.0
Lフィルム:扇度=+6.0
これらの各フィルムから幅約100mmのフィルムを切り取り、フィルムの湾曲性を評価した結果、RおよびLの各フィルムは不良であった。
【0051】
比較例3
自己支持性フィルムをレ−ルに沿って駆動するチェ−ンに取り付けたフィルム把持装置のレ−ルパタ−ンをR側に平行移動して両端部を把持させた他は比較例1と同様にして、長さ2700m、幅1600mm、厚み75μmの長尺で幅広のポリイミドフィルムを得た。
得られたポリイミドフィルムを3分割して、幅が約500mmのフィルムを得た。
このフィルムのR、CおよびLの扇度を測定した。
Rフィルム:扇度=+5.5
Cフィルム:扇度=+1.5
Lフィルム:扇度=+6.0
これらの各フィルムから幅約100mmのフィルムを切り取り、フィルムの湾曲性を評価した結果、RおよびLの各フィルムは不良であった。
【0052】
比較例4
レ−ルに沿って駆動するチェ−ンに取り付けたフィルム把持装置の位置を巻取り機側に移動させて、自己支持性フィルムの両端部を把持させた他は比較例1と同様にして、長さ2700m、幅1600mm、厚み75μmの長尺で幅広のポリイミドフィルムを得た。
得られたポリイミドフィルムを3分割して、幅が約500mmのフィルムを得た。
このフィルムのR、CおよびLの扇度を測定した。
Rフィルム:扇度=+6.0
Cフィルム:扇度=+3.0
Lフィルム:扇度=+5.0
これらの各フィルムから幅約100mmのフィルムを切り取り、フィルムの湾曲性を評価した結果、RおよびLの各フィルムは不良であった。
【0053】
実施例7
実施例1〜3で得られたポリイミドフィルムについて、Ar/He/H/Oガス流通下、放電密度6.2kw・min/mの条件でフィルムの両面を低温プラズマ放電処理した。
この低温プラズマ放電処理ポリイミドフィルムと剥離処理した厚み20μmのPETフィルムと厚み25μmのポリイミドシロキサン−エポキシ熱硬化型接着剤との積層シ−トとを積層して、接着剤積層体を得た。
この、接着剤積層体からPETフィルムを引き剥がして、18μmの電解銅箔(三井金属鉱業株式会社製、3EC−VLP、Rz約6μm、幅40mm)と、180℃、360分間、20kg/cm2プレスして、銅張積層体を得た。
また、この低温プラズマ放電処理ポリイミドフィルムおよび銅張積層体の評価結果を次に示す。
【0054】
フィルム厚み:75μm
50〜200℃の線膨張係数M(MD):18〜21x10-6cm/cm/℃
50〜200℃の線膨張係数M(TD):20〜23x10-6cm/cm/℃
引張弾性率(MD):6.0〜8.0GPa
引張弾性率(TD):6.0〜8.0GPa
接着強度:1.3kgf/cm

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド前駆体溶液を平滑な表面を有する支持体表面に連続的に流延して前記溶液組成物の薄膜を形成し、その薄膜を加熱乾燥することによって得られた自己支持性フィルムを、フィルム把持装置に両端部を把持させてキュア炉に挿入し、キュア炉内における最高加熱温度:425〜525℃程度の温度以降のキュア炉内の冷却温度(Tc)として、次の条件を満足する温度
350[厚み/75]1/2>Tc>Th−200[1+(75−厚み)/75]
[但し、Th:最高加熱温度(℃)、厚み:μm]
を30秒間以上維持した後にキュア炉外で自然冷却し、
前記キュア炉内の冷却は、冷却温度の勾配を変化させるようになっており、
Tcは300〜390℃の範囲である、
フィルムの長さが500m以上で、幅広のフィルムから幅が各々300〜600mmとなるように均等に3分割した各フィルムについての絶対値で表示される扇度が3以下である長尺状で幅広のポリイミドフィルムの製造法。
【請求項2】
前記30秒間以上維持する冷却ゾーンは2分割されており、
前記最高加熱温度後の第1冷却ゾーンの温度は390℃であり、第1冷却ゾーンに続く第2冷却ゾーンの温度は300〜305℃である請求項1記載のポリイミドフィルムの製造法。
【請求項3】
ポリイミド前駆体溶液を平滑な表面を有する支持体表面に連続的に流延して前記溶液組成物の薄膜を形成し、その薄膜を加熱乾燥することによって得られた自己支持性フィルムを、フィルム把持装置に両端部を把持させてキュア炉に挿入し、キュア炉内における最高加熱温度:425〜525℃程度の温度以降のキュア炉内の冷却温度(Tc)として、次の条件を満足する温度
350[厚み/75]1/2>Tc>Th−200[1+(75−厚み)/75]
[但し、Th:最高加熱温度(℃)、厚み:μm]
を30秒間以上維持した後にキュア炉外で自然冷却し、
前記キュア炉内の冷却は、冷却温度の勾配を変化させるようになっており、
前記30秒間以上維持する冷却ゾーンは4分割されており、
Tcは190〜450℃の範囲である、
フィルムの長さが500m以上で、幅広のフィルムから幅が各々300〜600mmとなるように均等に3分割した各フィルムについての絶対値で表示される扇度が3以下である長尺状で幅広のポリイミドフィルムの製造法。
【請求項4】
前記最高加熱温度後の第1冷却ゾーンの温度は410〜450℃であり、
第1冷却ゾーンに続く第2冷却ゾーンの温度は380℃であり、
第2冷却ゾーンに続く第3冷却ゾーンの温度は340〜360℃であり、
第3冷却ゾーンに続く第4冷却ゾーンの温度は190〜260℃である、
請求項3記載のポリイミドフィルムの製造法。
【請求項5】
ポリイミド前駆体溶液を平滑な表面を有する支持体表面に連続的に流延して前記溶液組成物の薄膜を形成し、その薄膜を加熱乾燥することによって得られた自己支持性フィルムを、フィルム把持装置に両端部を把持させてキュア炉に挿入し、キュア炉内における最高加熱温度:425〜525℃程度の温度以降のキュア炉内の冷却温度(Tc)として、次の条件を満足する温度
350[厚み/75]1/2>Tc>Th−200[1+(75−厚み)/75]
[但し、Th:最高加熱温度(℃)、厚み:μm]
を30秒間以上維持した後にキュア炉外で自然冷却し、
前記キュア炉内の冷却は、冷却温度の勾配を変化させるようになっており、
Tcは190℃から450℃の範囲であり、
前記30秒間以上維持する冷却ゾーンのうちの最終ゾーンの温度は190℃から305℃(ただし270℃を除く)である
フィルムの長さが500m以上で、幅広のフィルムから幅が各々300〜600mmとなるように均等に3分割した各フィルムについての絶対値で表示される扇度が3以下である長尺状で幅広のポリイミドフィルムの製造法。
【請求項6】
前記30秒間以上維持する冷却ゾーンのうちの最終ゾーンの温度は300〜305℃である請求項5記載のポリイミドフィルムの製造法。
【請求項7】
前記30秒間以上維持する冷却ゾーンのうちの最終ゾーンの温度は190〜260℃である請求項5記載のポリイミドフィルムの製造法。
【請求項8】
ポリイミド前駆体溶液が、無機フィラ−およびリン化合物を含有するものである請求項1から7のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造法。
【請求項9】
ポリイミド前駆体が、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンとを有機極性溶媒中で重合して得られるものである請求項1から8のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造法。
【請求項10】
前記キュア炉でポリイミドフィルムを加熱して応力緩和処理を行う請求項1から9のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−41560(P2012−41560A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261424(P2011−261424)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【分割の表示】特願2005−162341(P2005−162341)の分割
【原出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】