説明

ポリイミドフィルムの製造装置、製造方法及びポリイミドフィルム

【課題】高価なダイおよび塗布液支持体を用いず、また複雑な製造設備によらずに均一な厚みを有し、フィルム破断を起こすことなく、連続生産が可能で、安定した製造ができる、厚みが10μm以下のポリイミドフィルム製造装置およびその製造方法と、それらから得られるポリイミドフィルムを提供すること。
【解決手段】スリットダイ、ポリイミド前駆体溶液の塗布液支持体及び加熱イミド転化装置を備え、前記スリットダイには、該スリットダイの先端部と前記塗布液支持体表面との間隔を一定に保持するための間隔調整機構が備え付けられ、前記加熱イミド転化装置は、ポリイミド前駆体ゲルフィルムをロール表面に接触させてイミド転化を完結するための、少なくとも1個の加熱ロールを備えているポリイミドフィルム製造装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドフィルムの製造装置およびその製造方法、とそれらから得られたポリイミドフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは耐熱性に最も優れたフィルムとして高い評価を得ており、フレキシブルプリント基板、TAB用テープ、携帯電話用振動膜、スピーカー用振動膜などに代表される電子機器・部品などの用途に使用されている。
【0003】
近年、これら電子機器・部品の小型化、軽量化が求められるに従い、使用されるポリイミドフィルムにおいてはさらなる薄膜化が求められている。具体的には、10μm以下の膜厚を有するポリイミドフィルム、さらには5μm以下の膜厚を有する超薄膜ポリイミドフィルムである。
【0004】
従来、ポリイミドフィルムを得る方法としては、ポリイミド溶液あるいはポリイミド前駆体溶液を、塗布液支持体、例えばエンドレススチールベルトや加熱ロール上に流延し、溶液を乾燥して自己支持性のあるポリイミド前駆体ゲルフィルムを形成し、塗布液支持体上から剥離後、テンターによりフィルムの両端部(耳)を把持して搬送しながら熱処理する方法が用いられている。
【0005】
しかしながら、膜厚が10μmを下回るような薄膜ポリイミドフィルムにおいては、フィルムの厚みが薄いことと同時に厚みの均一性が要求されるが、従来方法により製造された薄膜ポリイミドフィルムは、長さ方向(MD)や幅方向(TD)に、厚み変動が発生しやすいという問題がある。
【0006】
これらの薄膜ポリイミドフィルムは、通常、ポリイミド前駆体溶液を塗布液支持体上に押し出し、均一な厚さに付着させ、その支持体上で乾燥させたのち、その支持体から自己支持性を有するポリイミド前駆体ゲルフィルムを剥離した後、ポリイミド前駆体ゲルフィルムを、イミド化が完結する温度まで段階的に焼成することにより、得ることができる。ポリイミド前駆体溶液を塗布液支持体に押し出す際に、塗膜が均一になっていないと得られた薄膜ポリイミドフィルムの膜厚に厚み変動を生じるため、塗膜の均一性が重要になる。熱可塑性ポリイミドフィルムの場合は、フィルムが可塑性を獲得する温度において延伸処理を施す等により、前記の厚み変動を改善することも可能であるが、非熱可塑性ポリイミドフィルムにおいては、可塑性を発現することがなく、厚み変動が改善できる程度まで延伸処理を施すことが困難であるため、ポリイミド前駆体溶液を塗布液支持体に押し出したときの塗膜の均一性がより重要になる。
【0007】
従来の製造方法において、ダイおよび塗布液支持体の加工精度向上、およびダイと塗布液支持体との位置を機械的に調整することでなされていた。しかしながらこれらの方法では、ダイおよび塗布液支持体の加工価格が非常に高くなるだけでなく、製造設備において非常に複雑な構造を必要とし、製造設備が高価なものになってしまい、それにも関わらず、厚みの均一性が十分でないという問題があった。
【0008】
さらに、膜厚が10μmを下回るような薄膜ポリイミドフィルムにおいては、ポリイミド前駆体ゲルフィルムの両端部をテンターで把持して搬送しながら熱処理を行なうと、その薄さゆえに熱処理時の収縮にフィルム強度が耐えられず、端部から破壊がおこるという問題がある。
【0009】
薄膜ポリイミドフィルムを製造する方法がいくつか開示されている。例えば特許文献1によると、原料モノマーを基板上に蒸着させてフィルムを形成する方法により10μm以下の超薄膜ポリイミドフィルムを製造することができる。さらに、特許文献2、3によると、ラングミュア・ブロジェット法によってポリイミド単分子膜を得た後これを積層し所定の膜厚に成型する方法が示されている。
【0010】
しかしながら、これらは、連続的な生産に適さず、また安定した製造がしづらいという問題がある。すなわち現在において、薄膜ポリイミドフィルムを安価で、かつ安定した製造する方法はない。
【特許文献1】特開平04−080235
【特許文献2】特開平03−139522
【特許文献3】特開昭63−019212
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、フィルム厚みが10μm以下である薄膜ポリイミドフィルムの製造方法において、高価なダイおよび塗布液支持体を用いず、また複雑な製造設備によらずに均一な厚みを有し、テンターの把持によるフィルムの破断をきたすことなく、連続生産が可能で、安定した製造ができる、薄膜ポリイミドフィルムの製造装置およびその製造方法と、それらから得られる薄膜ポリイミドフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意検討した結果、高価なダイおよび塗布液支持体を用いず、また複雑な製造設備によらずに、均一な厚みを有する薄膜ポリイミドフィルムの製造ができることを見出した。
【0013】
すなわち本発明は下記の構成からなる。
【0014】
ポリイミド前駆体溶液をスリットダイから支持体上に連続的に塗布した後、加熱イミド転化して、ポリイミドフィルムを製造する装置であって、前記装置はスリットダイ、ポリイミド前駆体溶液の塗布液支持体及び加熱イミド転化装置を備え、前記スリットダイの先端部と前記塗布液支持体表面との間隔を一定に保持するための間隔調整機構が備え付けられていることを特徴とするポリイミドフィルム製造装置である。
【0015】
前記間隔調整機構は、該スリットダイの先端部と前記塗布液支持体表面との間隔を検出するための接触ガイドまたは距離センサーを備えていることを特徴とするポリイミドフィルム製造装置である。
【0016】
前記塗布液支持体が、回転ドラムであるポリイミドフィルム製造装置である。
【0017】
前記加熱イミド転化装置は、ポリイミド前駆体ゲルフィルムをロール表面に接触させてイミド転化を完結するための、少なくとも1個の加熱ロールを備えているポリイミドフィルム製造装置である。
【0018】
前記ポリイミド前駆体ゲルフィルムを、加熱ロール表面に圧接させるためのニップローラーが設けられているポリイミドフィルム製造装置である。
【0019】
前記接触ガイドまたは距離センサーで前記スリットダイ先端部と前記塗布液支持体表面との間隔を検知しながら前記スリットダイからポリイミド前駆体溶液を前記塗布液支持体表面に塗布するポリイミド製造装置を用いたポリイミドフィルムの製造方法である。
【0020】
前記スリットダイ先端部の温度が0度C以上40度C以下であるポリイミドフィルムの製造方法である。
【0021】
前記ポリイミド前駆体溶液の23度Cの粘度が50Psから5000Psであるポリイミドフィルムの製造方法である。
【0022】
前記塗布液支持体表面の温度が40度C以上200度C以下であるポリイミドフィルムの製造方法である。
【0023】
前記スリットダイからポリイミド前駆体溶液を前記塗布液支持体表面に塗布する塗布速度が50mm/分以上であるポリイミドフィルムの製造方法である。
【0024】
前記塗布液支持体上で乾燥させた自己支持性を有するポリイミド前駆体ゲルフィルムを前記塗布液支持体上から剥離し、前記加熱イミド転化装置に導き、表面温度が150度C以上の少なくとも1個の加熱ロール表面に前記ポリイミド前駆体ゲルフィルムを接触させ段階的にイミド転化させるポリイミドフィルムの製造方法である。
【0025】
前記段階的にとは、前記加熱ロールの温度を徐々に上げていき、ポリイミド前駆体ゲルフィルムにかかる熱を徐々に加え、焼成することを意味する。段階的な焼成方法としては、具体的には、所定の温度に設定した加熱ロールにフィルムを接触させる方法がある。加熱ロールが複数ある場合は、段階的に温度が高くなるように、適宜温度設定をしておくとよい。段階的な焼成において、その焼成開始温度は、具体的には150℃以上がよい。段階的に温度を上げる際の温度勾配については特に限定されることはなく、一定の昇温速度で徐々に熱を加えてもよいし、いくつかの温度ステップに分けて熱を加えてもよい。また別の段階的な焼成方法としては、金属エンドレスベルトを用いた方法なども採用することができる。この場合は、金属エンドレスベルトの進行方向に向かって段階的に温度を高くしていくとよい。一定の昇温速度で徐々に熱を加える場合は、1度C/分〜200度C/分の昇温速度で徐々に熱を加えるとよく、好ましくは、10度C/分〜100度C/分の昇温速度になる。昇温速度が1度C/分以上であれば、生産性を損なうことなくフィルムを製造でき、昇温速度が200度C/分以下であれば、溶媒揮発に伴うシワやフクレといった外観上の不良を発生させることなくフィルムを製造できる。
【0026】
前記ポリイミド前駆体ゲルフィルムにかかる張力が1.1Kgf/mm2以下であるポリイミドフィルムの製造方法である。
【0027】
厚みが1μm以上10μm以下であるポリイミドフィルムである。
【発明の効果】
【0028】
本発明にかかるフィルム厚みが10μm以下の薄膜ポリイミドフィルムの製造装置およびその製造方法、とそれらから得られた薄膜ポリイミドフィルムは、前述したように、前記ポリイミド前駆体溶液を塗布するスリットダイと塗布液支持体との距離を一定に保持する間隔調整機構が設置され、かつポリイミドフィルムの幅方向(TD)に自由に動くスリットダイから、ポリイミド前駆体溶液を塗布液支持体表面に押し出し、均一な厚さに付着させ、その塗布液支持体上で乾燥させる工程と、その塗布液支持体上で乾燥させた自己支持性を有するポリイミド前駆体ゲルフィルムを剥離し、1個以上の150℃以上に加熱した加熱ロール表面にポリイミド前駆体ゲルフィルムを接触させた状態で段階的に焼成する工程を有することを特徴としている。このことによって、膜厚が均一な、テンターの把持による破壊も起こらない、薄膜ポリイミドフィルムが、安定して連続製造できるという効果があり、高品質な薄膜ポリイミドフィルムの製造方法および製造装置、とそれらから得られた薄膜ポリイミドフィルムは、工業的に極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の実施形態について説明すると以下のとおりであるが、これに限定するものではない。
【0030】
本発明は、ポリイミド前駆体溶液を塗布するスリットダイに、塗布液支持体とスリットダイの距離を一定に保持する、間隔調整機構を設置し、ポリイミド前駆体溶液をスリットダイから塗布液支持体表面に押し出し、均一な厚さに付着させ、その支持体上で乾燥させ自己支持性のあるポリイミド前駆体ゲルフィルムを、前記支持体から剥離し、ポリイミド前駆体ゲルフィルムを150℃以上で、連続的に搬送、焼成する。
【0031】
<ポリイミド前駆体溶液調整>
芳香族ジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸成分とを有機極性溶媒中にて反応せしめ、ポリイミド前駆体溶液を調整する。
【0032】
本発明の芳香族ジアミン成分としては、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,4−ジアミノトルエン、3,4’ −ビフェニルジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’ −ビフェニルジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,6−ジアミノトルエン、4,4’−ビフェニルジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)プロパン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,5−ジアミノトルエン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)プロパン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、3,3’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,5−ジアミノトルエン、3,3’−ヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、1,3−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ジアミノベンゾアニリド、メチレンジアニリンが挙げられ、これらは単独であるいは混合して用いることができる。
【0033】
また、本発明の芳香属テトラカルボン酸二無水物としては、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリト酸、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ジフェニルスルホキシドテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ジフェニル(2,2−イソプロピリデン)テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルスルホキシドテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルスルホントラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ジフェニルスルメタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニル(2,2−イソプロピリデン)テトラカルボン酸二無水物、4,4'‐(ヘキサフルオロイソプロピル)フタル酸二無水物、ビスフェノール酸二無水物などが挙げられ、これらは単独であるいは混合して用いることができる。
【0034】
本発明において有用な極性有機溶媒は、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、γ−ブチロラクトン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、ジエトキシエタン、ジメチルスルホキシド、スルホランなどが挙げられる。好ましい溶媒はN,N−ジメチルアセトアミドである。これらの溶媒を単独で又は混合物として、あるいはトルエン、キシレン、すなわち芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、すなわちアルコールなどの他の溶媒と混合して用いることができる。
【0035】
本発明のポリイミド前駆体溶液の23度Cの粘度は50Ps以上5000Ps以下であることが好ましい。本発明におけるポリイミドフィルムの製造工程において、粘度が50Ps未満では、塗膜がはじいたりして均一な塗膜が得ることができず、粘度が5000Psを超えると、気泡がかみやすくなり、均一な塗膜が得ることができない。
【0036】
前記ポリイミド前駆体の分子量は、芳香属テトラカルボン酸二無水物と芳香属ジアミンの混合割合を変えることによって、所望の分子量のポリイミド前駆体を得ることができる。本発明において好ましい分子量を得るための混合割合は80:100〜99:100である。前記混合割合はテトラカルボン酸二無水物、あるいは芳香属ジアミンのいずれが多くても、あるいは少なくてもよい。
【0037】
なお、ポリイミドフィルムを製造するにあたり、必要に応じて、易滑剤、レベリング剤、消泡剤、イミド化剤などの添加材を添加することもできる。
【0038】
また、ポリイミドフィルムを製造するにあたり、必要に応じて、金属やセラミックス等の機能性フィラーや充填材を添加することもできる。
【0039】
<ポリイミド前駆体ゲルフィルム形成>
本発明におけるポリイミド前駆体ゲルフィルム形成は、前記ポリイミド前駆体溶液を塗布するスリットダイと塗布液支持体との距離を一定に保持する間隔調整機構が設置され、かつ塗布液支持体の幅方向(TD)に自由に動くスリットダイから、ポリイミド前駆体溶液を塗布液支持体表面に押し出し、均一な厚さに付着させ、その塗布液支持体上で乾燥させることにより、ポリイミド前駆体溶液の有機溶剤の一部を揮発するとともに、ポリイミド前駆体の一部をイミド化させ、自己支持性を有するポリイミド前駆体ゲルフィルムを形成することによって行うことができ、その後支持体からポリイミド前駆体ゲルフィルムを剥離するとよい。前記塗布液支持体の幅方向に自由に動くスリットダイとは、塗布液支持体とスリットダイの距離を一定に保持するための構造である。通常の機械加工によると、精度良く機械加工された塗布液支持体においてさえ、数ミクロン〜数十ミクロンの芯振れが発生しており、それに起因する塗布液支持体とスリットダイとの距離変化が必ず起こるが、スリットダイが回転する機構を有することにより、塗布液支持体の芯振れによる影響を実質的に無くすことができる。
【0040】
前記間隔調整機構は、塗布液支持体とスリットダイの距離を一定に保持するための機構であり、該スリットダイの先端部と前記塗布液支持体表面との間隔を検出するための接触ガイドまたは距離センサーを備えている。接触ガイドおよび距離センサーは、塗布液支持体とスリットダイのクリアランスを大きくしたり小さくしたりするための調整機能を有している。接触ガイドを用いた機構は、所定の間隔に設定された少なくとも2つの接触ガイドを塗布液支持体表面の少なくとも2ヶ所に常に接触させた状態で、ポリイミド前駆体溶液を塗布する機構である。また、距離センサーを用いた機構は、スリットダイと塗布液支持体表面との距離を少なくとも2つの距離センサーで常に一定間隔になるよう検知しながら、ポリイミド前駆体溶液を塗布する機構である。
【0041】
前記塗布液支持体とスリットダイの距離を一定に保持する接触ガイドは、まず塗布液支持体とスリットダイのクリアランスを10μmから1000μmの間で調節することができる。塗布液支持体とスリットダイの距離を一定に保持した接触ガイドが設置されたスリットダイを、塗布液支持体に接触ガイドが接触するように配置し、スリットダイを塗布液支持体中心部方向に押しつける。また、スリットダイ全体は、後部にシリンダー等が取付けられ、塗布液支持体から接触ガイドが離れない程度の押し圧で押されている。これにより、ポリイミド前駆体溶液を塗布した塗布液支持体表面がわずかに位置ずれをおこしても、接触ガイドが位置ずれに追従し、スリットダイが幅方向(TD)に対して自由に動くため、スリットダイと塗布液支持体との距離を常に一定に保つことができる。
【0042】
ポリイミド前駆体溶液を塗布した後は、塗布液支持体上で乾燥させることにより、ポリイミド前駆体溶液の有機溶剤の一部を揮発するとともに、ポリイミド前駆体の一部をイミド化させ、自己支持性を有するポリイミド前駆体ゲルフィルムを形成することによって行うことができ、その後塗布液支持体からポリイミド前駆体ゲルフィルムを剥離するとよい。前記スリットダイの温度は0℃以上40℃以下が好ましく、さらには5℃以上30℃以下がより好ましい。0℃以上にすることで、空気中の水分結露による影響を受けることなく、スリットダイから塗布液支持体上にポリイミド前駆体溶液を押し出すことができる。また、スリットダイの温度を40℃以下にすることにより、スリットダイ内部でのポリイミド前駆体溶液からの有機溶媒揮発などをおさえることができ、安定した押し出しができる。
【0043】
前記スリットダイからポリイミド前駆体溶液を塗布液支持体表面に所定の厚みに塗布するときの塗布速度は、50mm/分以上であることが好ましい。50mm/分より遅いと、生産性が悪すぎるため、事業化を考えた場合に現実的ではない。
【0044】
前記塗布液支持体上での乾燥温度は40℃以上200℃以下が好ましく、さらに80℃以上150℃以下がより好ましい。乾燥温度を40℃以上にしておけば、有機溶媒の揮発速度を考慮した際に、生産性良くフィルムを製造できる。また、乾燥温度を200℃以下にすることにより、急激な溶媒揮発をさけることができ、それに起因するシワやフクレなどの外観不良をなくすことができる。乾燥時間は数秒から数十分、好ましくは1分から30分であり、熱処理温度との関係で適宜設定する。
【0045】
前述のようにして得られた乾燥後のポリイミド前駆体ゲルフィルムには、溶媒が残存しているが、本発明においてはこれを溶媒残存率として規定した。塗布時のポリイミド前駆体溶液中に存在する溶媒量を100重量%とし、ポリイミド前駆体ゲルフィルムを熱重量減少測定したときの重量減少量から溶媒残存率を算出した。乾燥後のポリイミド前駆体ゲルフィルムは続けてイミド化完結および残存溶媒の揮発などのために高温で熱処理することになるが、このときのポリイミド前駆体ゲルフィルムの溶媒残存率は、5重量%〜50重量%であることが好ましい。さらには、10重量%〜30重量%であることがより好ましい。溶媒残存率5重量%以上であれば、フィルムが靭性を失い、破断がおこることなく焼成ができ、溶媒残存率50重量%以下であればポリイミド前駆体ゲルフィルムが自己支持性を持つことができる。
【0046】
前記塗布液支持体はドラム形状およびエンドレススチールベルトなどが使用できる。
【0047】
前記塗布液支持体とスリットダイの距離を一定に保持する接触ガイドは特に限定しないが、耐熱性と滑り性のある部品が好ましく、ベアリングのような回転可能な円筒状部品がより好ましい。また前記塗布液支持体とスリットダイの距離を一定に保持する接触ガイドの材質は、金属製あるいは樹脂製のいずれでもよく、金属および樹脂の複合材であってもよい。
【0048】
<ポリイミド前駆体ゲルフィルムの焼成>
本発明におけるポリイミド前駆体ゲルフィルムの焼成は、150℃以上に加熱しておいた加熱ロール表面にポリイミド前駆体ゲルフィルムを接触させた状態で焼成する。
【0049】
加熱ロール表面にポリイミド前駆体ゲルフィルムを接触させた状態で焼成することによって、ポリイミド前駆体ゲルフィルムあるいは薄膜ポリイミドフィルムの破壊が起こらず、連続生産が可能で、安定した製造ができる。
【0050】
前記ポリイミド前駆体ゲルフィルムを熱によってイミド化する場合、焼成工程における第1段階目の温度は150℃以上250℃以下が好ましい。さらに150℃以上400℃以下の温度で、段階的に熱を与えることがより好ましく、段階的に熱を加える方法としては、前工程の温度に対して50℃から150℃温度を高くすることが好ましい。このことによって、この焼成工程において、適切な速度で残存溶媒の除去およびイミド化が進み、フクレやシワなどの外観上の欠陥が無い薄膜ポリイミドフィルムを得ることができる。
【0051】
前記ポリイミド前駆体ゲルフィルムを熱によってイミド化する場合、焼成工程における第1段階目の焼成を終えたフィルムの溶媒残存率が、0.5重量%〜20重量%であることが好ましい。さらには、1重量%〜10重量%であることがより好ましい。第1段階目の焼成によって溶媒残存率を0.5重量%以上にすれば、溶媒の揮発にともなうしわやフクレなどの外観上の変形を生じることがなく、第1段階目の焼成によって溶媒残存率を20重量%以下にすれば、続けて行なう第2段階目の焼成時の溶媒揮発にともなうシワやフクレなどの外観上の変形を生じることがない。
【0052】
前記150℃以上に加熱した加熱ロールに、追従して回転稼動するニップローラーを、加熱ロールに接触設置させ、前記ポリイミド前駆体ゲルフィルムを、ニップローラーを介して加熱ロールに接触させることが好ましい。本発明におけるニップローラーは、加熱ロールと接触しており、加熱ロールの回転稼動に追従して回転稼動する。また、ニップローラーは、ニップローラーとは軸を異にする支点を設けておき、ニップローラーの位置が変動するような構造にしておくのが好ましい。前記構造にしておくことで、加熱ロールおよびニップローラーの熱膨張による、ニップ圧力の増加を防止でき、ニップ圧を常に一定にすることができる。フィルムは加熱ロールとニップローラーの間を通過することになり、搬送時に発生したポリイミド前駆体ゲルフィルムのシワなどを伸ばしながら、加熱ロールに順次接触させることができ、外観上の不良がない、厚さの均一な薄膜ポリイミドフィルムを得ることができる。
【0053】
前記焼成する工程において、ポリイミド前駆体ゲルフィルムにかかる張力が1.1kgf/mm以下であるが好ましい。ポリイミド前駆体ゲルフィルムにかかる張力が1.1Kgf/mm以下であれば、不必要なフィルムの変形やさらには、フィルムの破壊を防ぐことができる。
【0054】
前記加熱ロールはドラム形状もしくはエンドレススチールベルトなどが適宜使用される。ポリイミド前駆体ゲルフィルムに対して、段階的に温度を加えられる構造であればよい。例えば、加熱ロールを複数連結しフィルムを張架してもよい。また1個のドラムやエンドレススチールベルトの部分的に熱源を設け段階的に温度をかけられるようにしてもよい。段階的に加熱をすれば、いきなり高温にポリイミド前駆体ゲルフィルムを曝した場合のイミド化が一気に進みポリイミド前駆体ゲルフィルム内に包括されている有機溶剤が発泡し均一な成膜ができない状態を回避し、良好なポリイミドフィルムを得ることが可能となる。
【0055】
前記焼成する工程の加熱方法は、加熱ロール上のポリイミド前駆体ゲルフィルムに段階的に温度をかけられる方法であれば、どんな方法でも構わない。例えば、加熱ロールの外側に遠赤外線ヒーター、シーズヒーター、ニクロム線ヒーター等の熱源を設置しても良い。熱風循環炉や熱風発生器等の熱源を用いても良い。また、加熱ロール内にヒーターや加熱用媒体等の熱源を埋設しても良い。
【0056】
本発明にかかる製造方法により得られるポリイミドフィルムは、厚み5μmから数十μmのフィルムを意味し、用途に応じてその厚みを選択することができるのは勿論であるが、特にテンター焼成装置などによる製造方法では製造が困難な薄膜ポリイミドフィルムを得ることができる。
【0057】
また、本発明にかかる製造方法により得られるポリイミドフィルムは、膜厚ばらつきが非常に小さく、膜厚変動係数は20%以下に抑えることができる。
【0058】
本発明にかかるポリイミドフィルムの製造装置の一例を図1に示す。
【0059】
まず、乾燥工程10では、ミキサーで混合したポリイミド前駆体溶液をスリットダイ11によりフィルム状に押し出す工程を行い、反応硬化室においてはスリットダイより押し出されたフィルム状のポリイミド前駆体溶液を塗布液支持体12上にフィルム状に形成する。フィルム状に形成された前駆体は、塗布液支持体の回転により移動させられながら、加熱手段により加熱されてイミド化される。この乾燥工程10においては反応に伴って生成した生成物、主として有機溶媒等の可燃性の揮発成分が蒸発する。
【0060】
本発明にかかるポリイミドフィルムはその厚みが10μm以下であり、極めて薄いため、ポリイミド前駆体溶液を塗布液支持体上にフィルム状に形成する時に、スリットダイ11と塗布液支持体12の距離に僅かな変化があるだけで膜厚が大きくばらつくことになり、製品としての価値を大きく損なうことになる。
【0061】
ポリイミド前駆体溶液を押し出すスリットダイ11には、キャスティングドラムやエンドレスベルトとの距離を一定に保持する接触ガイドが設置されている。これにより、塗布液支持体の真円度にわずかなずれが存在していたとしても、スリットダイ11がそのずれに追従するため、常に一定の距離でポリイミド前駆体溶液が塗布されるようになる。
【0062】
また、スリットダイ11は、幅方向において自由に動くように回転軸が備えられており、これによって塗布液支持体の芯振れが生じたとしてもスリットダイ11がその芯振れに対しても追従するように幅方向の位置を変化させることが出来る。これらの機構を備えることにより、膜厚のばらつきが無いポリイミドフィルムを得ることができる。
【0063】
乾燥工程10での加熱手段は、樹脂から蒸散した可燃性の揮発成分に引火する危険を防止するため、あるいは樹脂自体が発火することを防止するために、雰囲気温度、およびベルトあるいはドラムの回転速度を調整しつつ加熱し、たとえば温風、熱風、放射熱、ベルト加熱を用いる。乾燥工程10での温度条件は、例えば100℃などの条件により、キャストされたフィルムに自己支持性が付与される。
【0064】
これらの工程により、ポリイミド前駆体ゲルフィルムをイミド化しながら、フィルムが自己支持性を有する程度まで加熱、乾燥を行なった後、塗布液支持体から引き剥がして、ポリイミド前駆体ゲルフィルム13を得る。
【0065】
前記ポリイミド前駆体ゲルフィルム13はシワやたわみなどが発生しないように搬送ローラー14を介して焼成工程15内に搬送、導入されて加熱処理される。例えば、焼成工程15は、第一加熱ロール16及び第二加熱ロール17で構成され、図1においては、これらの加熱ロールを回転駆動により稼動させることにより、フィルムが焼成工程内を移動する。熱キュアを行なう焼成工程15内において徐々に加熱することによりポリイミド前駆体ゲルフィルムをさらにイミド化する。
【0066】
前記ポリイミド前駆体ゲルフィルムは焼成工程15内に搬送されると第一加熱ロール16に接触する第一ニップローラー18を介して第一加熱ロール16上に乗せられる。第一ニップローラー18を設置することにより、しわやたるみなど製品として好ましくない外観の変形を生ずることなく焼成することができる。
【0067】
第一ニップローラー18は第一加熱ロール16と接触しており、互いに傷や磨耗などを発生させないために、シリコーンゴムなどの耐熱性のある弾性ローラーが好ましい。
【0068】
第一加熱ロール16同様に第二加熱ロールについても第二ニップローラー19が設置されており、これが第一ニップローラー18と同等の性能を有するため、外観の変形を生ずることなくフィルムの焼成ができる。
【0069】
焼成工程15の加熱方法は、加熱ロールの外側に遠赤外線ヒーターを用いている。
【0070】
焼成工程15内では、徐々に昇温して、フィルム中に残存する有機溶媒の揮発を完全に行ない、それと同時にポリイミドへのイミド化を完了させる。
【0071】
焼成工程15内における熱処理温度は、フィルムの膜厚、またポリイミド前駆体の反応に用いる有機溶媒の種類との関係により、熱処理温度が異なる。具体的には、初期設定温度は、例えば、最終膜厚5μmのフィルムにおいては、150℃から250℃が好ましい。この段階で、ポリイミド前駆体ゲルフィルムの乾燥が効果的に行なわれ同時にイミド化反応が進行する。
【0072】
その後、徐々に加熱し最高温度300℃以上500℃以下の温度範囲とすることが好ましい。さらに好ましくは350℃以上400℃以下の範囲となる。最高温度に達する温度勾配については、上記の温度範囲で熱処理を施せば、特に制限されない。熱処理時間は、数秒から数十分、好ましくは1分から20分であり、熱処理温度との関係で適宜設定される。
【0073】
温度勾配は、フィルム膜厚や乾燥の度合い等フィルムの状態に適応して設定され、特に限定されない。具体的に例を上げて説明すると、5μmの膜厚のフィルムでは、150℃以上250℃以下の温度範囲で10分、さらに300℃以上400℃以下の温度範囲で10分である。
【0074】
前記焼成工程15内において、完全にイミド化されたポリイミドフィルムは冷却工程20において冷却される。冷却工程20においては、最終焼成温度から段階的に温度を下げても良いし、室温にさらすことによりフィルムの温度を下げても良い。
【0075】
冷却工程20には冷却ローラー21が必要に応じて設置される。
【0076】
本発明におけるポリイミド前駆体溶液の塗布機構を示した一例を図2および図3に示す。
【0077】
ここで図2は当該部分を上面からとらえた図であり、図3は当該部分を側面からとらえた図として示している。図3については、接触ガイド33、34を省略してあるが、これは側面図の説明を容易にするためであり、実際は接触ガイド33、34が設置されてある。スリットダイ31には距離を一定に保持する接触ガイド33、34が設置されており、これによりスリットダイ31と塗布液支持体32の距離が一定に保持されることになる。また、スリットダイ31には回転軸35が備えられており、これにより塗布液支持体32の幅方向に対して自由に動く機構を有することになる。回転軸35は固定板36に設置されており、エアーシリンダー37の前進によって、スリットダイ31と塗布液支持体32が接触ガイド33、34を介して接触することになる。ここで、塗布液支持体32は通常の機械加工によると、数ミクロン〜数十ミクロンの芯ぶれが発生しており、それに起因する塗布液支持体32とスリットダイ31との距離変化が発生した場合、エアーシリンダー37が前後することにより、スリットダイ31の位置が変化し、さらに幅方向への振れについても回転軸35を中心としてスリットダイ31が左右に首振りするため、スリットダイ31と塗布液支持体32の距離変化を実質的になくすことができる。
【0078】
スリットダイを固定する部分34前記ポリイミド前駆体溶液が押し出され、塗布液支持体32にフィルム状に形成されるが、スリットダイ31は塗布する塗布液支持体32との距離を一定に保持する接触ガイド33が設置され、かつ回転軸34を備えることにより、塗布液支持体32の幅方向(TD)に自由に動くスリットダイから、ポリイミド前駆体溶液を塗布液支持体32表面に押し出し、均一な厚さに付着させ、その塗布液支持体32上で乾燥させることにより、ポリイミド前駆体溶液の有機溶剤の一部を揮発するとともに、ポリイミド前駆体の一部をイミド化させ、自己支持性を有するポリイミド前駆体ゲルフィルムを形成することによって行うことができ、その後支持体からポリイミド前駆体ゲルフィルムを剥離するとよい。前記塗布液支持体の幅方向に自由に回転する構造により、以下のような機能を有する。通常の機械加工によると、精度良く機械加工された塗布液支持体においてさえ、が、スリットダイが回転する機構を有することにより、塗布液支持体の芯振れによる影響を実質的に無くすことができる。
【0079】
前記塗布液支持体32とスリットダイ31の距離を一定に保持する接触ガイド33、34は、スリットダイ32の両端部に設置されており、塗布液支持体32とスリットダイ31の距離を10μmから1000μmの間で調整することができる。
【0080】
以上、本発明にかかるポリイミドフィルムの製造装置の実施の形態の一例を説明したが、本発明はこれら実施の形態のみに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しえるものである。
【0081】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例および比較例における特性の測定方法および評価方法は下記の通りである。それぞれの結果を表1に示した。
【0082】

(1)粘度の測定 ポリイミド前駆体溶液を23±1度Cの温水バスに2時間放置し、ブルックフィールド粘度計LVTを用いて、粘度の測定を行った。
【0083】
(2)膜厚測定および変動係数(ばらつき)
(株)サンコウ電子研究所製渦電流式膜厚計EDY−1000を用いて膜厚を測定した。膜厚のばらつきを評価するため変動係数を求めた。変動係数の算出方法は、測定したフィルム膜厚からまず、標準偏差および平均膜厚を算出し、標準偏差を平均膜厚で除して、それに100%をかけることにより算出ができる。
【0084】
(3)フィルム張力の測定方法
ニレコ社製のテンションセンサーMB05Bおよびニレコ社製テンションコントローラModel TC900Vを用いてフィルムにかかる張力を測定した。測定場所は、焼成工程の直前で測定した。
【0085】
(4)端部破壊の評価
端部の破れ・破壊などが全くなければOK、端部の破れ・破壊などが少しでもあればNGとした。
【0086】
(5)成膜状態の評価
ハジキやアワなどの欠陥がなく、シワやヨレなど外観上の欠陥がない均一な成膜であればOKとした。ハジキやアワなどの欠陥や、シワやヨレなどの外観上の欠陥が少しでも確認出来た場合はNGとした。また、膜厚変動係数が25%より大きい場合もNGとした。
【実施例1】
【0087】
500mlのセパラブルフラスコにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)415gを入れ、ここにパラフェニレンジアミン(PPD)22.836g(0.21モル)と3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物(BPDA)60.921g(0.21モル)を投入し、常温常圧中で1時間反応させ、ポリイミド前駆体溶液を得た。このとき固形分量は17重量%、粘度は1000Psであった。
図1に示したポリイミドフィルム製造装置を用いた。塗布液支持体とスリットダイの距離を80μmに調整した接触ガイドが設置されたスリットダイを、塗布液支持体に接触ガイドが接触するように配置し、17±2℃でコントロールされた水でそのスリットダイを冷却しながら、作製したポリイミド前駆体溶液を100mm/分の速度で押し出して、支持体上に塗布した。このとき、上記スリットダイは塗布幅方向に自由に回転できるようにした。支持体上で、90℃で約10分加熱乾燥することで、自己支持性のあるポリイミド前駆体ゲルフィルムを得た。その後、230℃、350℃に加熱した、加熱ロールの表面に接触するように配置したローラーでポリイミド前駆体ゲルフィルムを加熱ロールに接触させながら、単位断面積あたりの張力を0.2kgf/mmで搬送し、焼成した。
得られたポリイミドフィルムの成膜状態は良好であり、フィルム両端およびフィルムにおいては亀裂等の欠陥がなかった。このポリイミドフィルムは平均膜厚5μm、膜厚変動係数10%であった。
【実施例2】
【0088】
500mlのセパラブルフラスコにNMP415gを入れ、ここに4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)34.403g(0.17モル)と3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物(BPDA)50.597g(0.17モル)を投入し、常温常圧中で1時間反応させ、ポリイミド前駆体溶液を得た。このとき固形分量は17重量%、粘度は800Psであった。
図1に示したポリイミドフィルム製造装置を用いた。塗布液支持体とスリットダイの距離を80μmに調整した接触ガイドが設置されたスリットダイを、塗布液支持体に接触ガイドが接触するように配置し、17±2℃でコントロールされた水でそのスリットダイを冷却しながら、作製したポリイミド前駆体溶液を50mm/分の速度で押し出して、支持体上に塗布した。このとき、上記スリットダイは塗布幅方向に自由に回転できるようにした。支持体上で、90℃で約20分加熱乾燥することで、自己支持性のあるポリイミド前駆体ゲルフィルムを得た。その後、230℃、350℃に加熱した、加熱ロールの表面に接触するように配置したローラーでポリイミド前駆体ゲルフィルムを加熱ロールに接触させながら、単位断面積あたりの張力を0.7kgf/mmで搬送し、焼成した。
得られたポリイミドフィルムの成膜状態は良好であり、フィルム両端およびフィルムにおいては亀裂等の欠陥がなかった。このポリイミドフィルムは平均膜厚7μm、膜厚変動係数9%であった。
【実施例3】
【0089】
500mlのセパラブルフラスコにNMP415gを入れ、ここに4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)40.670g(0.203モル)とピロメリット酸二無水物(PMDA)43.444g(0.199モル)を投入し、常温常圧中で1時間反応させ、ポリイミド前駆体溶液を得た。このとき固形分量は17重量%、粘度は1500Psであった。
図1に示したポリイミドフィルム製造装置を用いた。塗布液支持体とスリットダイの距離を90μmに調整した接触ガイドが設置されたスリットダイを、塗布液支持体に接触ガイドが接触するように配置し、17±2℃でコントロールされた水でそのスリットダイを冷却しながら、作製したポリイミド前駆体溶液を250mm/分の速度で押し出して、支持体上に塗布した。このとき、上記スリットダイは塗布幅方向に自由に回転できるようにした。支持体上で、90℃で約4分加熱乾燥することで、自己支持性のあるポリイミド前駆体ゲルフィルムを得た。その後、230℃、350℃に加熱した、加熱ロールの表面に接触するように配置したローラーでポリイミド前駆体ゲルフィルムを加熱ロールに接触させながら、単位断面積あたりの張力を1.1kgf/mmで搬送し、焼成した。
得られたポリイミドフィルムの成膜状態は良好であり、フィルム両端およびフィルムにおいては亀裂等の欠陥がなかった。このポリイミドフィルムは平均膜厚9μm、膜厚変動係数9%であった。
【実施例4】
【0090】
実施例1と同様のPPD/BPDAのポリイミド前駆体溶液を用い、塗布液支持体とスリットダイの距離を80μmに調整した接触ガイドが設置されたスリットダイを、塗布液支持体に接触ガイドが接触するように配置し、5±1℃でコントロールされた水でそのスリットダイを冷却しながら、作製したポリイミド前駆体溶液を100mm/分の速度で押し出して、支持体上に塗布した。このとき、上記スリットダイは塗布幅方向に自由に回転できるようにした。支持体上で、90℃で約10分加熱乾燥することで、自己支持性のあるポリイミド前駆体ゲルフィルムを得た。その後、200℃、330℃に加熱した、加熱ロールの表面に接触するように配置したローラーでポリイミド前駆体ゲルフィルムを加熱ロールに接触させながら、単位断面積あたりの張力を0.2kgf/mmで搬送し、焼成した。
得られたポリイミドフィルムの成膜状態は良好であり、フィルム両端およびフィルムにおいては亀裂等の欠陥がなかった。このポリイミドフィルムは平均膜厚8μm、膜厚変動係数10%であった。
【実施例5】
【0091】
実施例1と同様のPPD/BPDAのポリイミド前駆体溶液を用い、塗布液支持体とスリットダイの距離を80μmに調整した接触ガイドが設置されたスリットダイを、塗布液支持体に接触ガイドが接触するように配置し、35±2℃でコントロールされた水でそのスリットダイを冷却しながら、作製したポリイミド前駆体溶液を100mm/分の速度で押し出して、支持体上に塗布した。このとき、上記スリットダイは塗布幅方向に自由に回転できるようにした。支持体上で、90℃で約10分加熱乾燥することで、自己支持性のあるポリイミド前駆体ゲルフィルムを得た。その後、250℃、380℃に加熱した、加熱ロールの表面に接触するように配置したローラーでポリイミド前駆体ゲルフィルムを加熱ロールに接触させながら、単位断面積あたりの張力を0.2kgf/mmで搬送し、焼成した。
得られたポリイミドフィルムの成膜状態は良好であり、フィルム両端およびフィルムにおいては亀裂等の欠陥がなかった。このポリイミドフィルムは平均膜厚6μm、膜厚変動係数13%であった。
【実施例6】
【0092】
500mlのセパラブルフラスコにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)415gを入れ、ここにパラフェニレンジアミン(PPD)22.836g(0.21モル)と3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物(BPDA)60.921g(0.21モル)を投入し、常温常圧中で1時間反応させ、ポリイミド前駆体溶液を得た。このとき固形分量は17重量%、粘度は4500Psであった。
塗布液支持体とスリットダイの距離を80μmに調整した接触ガイドが設置されたスリットダイを、塗布液支持体に接触ガイドが接触するように配置し、17±2℃でコントロールされた水でそのスリットダイを冷却しながら、作製したポリイミド前駆体溶液を50mm/分の速度で押し出して、支持体上に塗布した。このとき、上記スリットダイは塗布幅方向に自由に回転できるようにした。支持体上で、90℃で約20分加熱乾燥することで、自己支持性のあるポリイミド前駆体ゲルフィルムを得た。その後、230℃、350℃に加熱した、加熱ロールの表面に接触するように配置したローラーでポリイミド前駆体ゲルフィルムを加熱ロールに接触させながら、単位断面積あたりの張力を0.2kgf/mmで搬送し、焼成した。
得られたポリイミドフィルムの成膜状態は良好であり、フィルム両端およびフィルムにおいては亀裂等の欠陥がなかった。このポリイミドフィルムは平均膜厚6μm、膜厚変動係数13%であった。
【実施例7】
【0093】
500mlのセパラブルフラスコにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)415gを入れ、ここにパラフェニレンジアミン(PPD)22.836g(0.21モル)と3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物(BPDA)55.118g(0.19モル)を投入し、常温常圧中で1時間反応させ、ポリイミド前駆体溶液を得た。このとき固形分量は17重量%、粘度は75Psであった。
塗布液支持体とスリットダイの距離を80μmに調整した接触ガイドが設置されたスリットダイを、塗布液支持体に接触ガイドが接触するように配置し、17±2℃でコントロールされた水でそのスリットダイを冷却しながら、作製したポリイミド前駆体溶液を50mm/分の速度で押し出して、支持体上に塗布した。このとき、上記スリットダイは塗布幅方向に自由に回転できるようにした。支持体上で、90℃で約20分加熱乾燥することで、自己支持性のあるポリイミド前駆体ゲルフィルムを得た。その後、230℃、350℃に加熱した、加熱ロールの表面に接触するように配置したローラーでポリイミド前駆体ゲルフィルムを加熱ロールに接触させながら、単位断面積あたりの張力を0.2kgf/mmで搬送し、焼成した。
得られたポリイミドフィルムの成膜状態は良好であり、フィルム両端およびフィルムにおいては亀裂等の欠陥がなかった。このポリイミドフィルムは平均膜厚6μm、膜厚変動係数12%であった。
【実施例8】
【0094】
実施例1と同様のPPD/BPDAのポリイミド前駆体溶液を用い、塗布液支持体とスリットダイの距離を70μmに調整した接触ガイドが設置されたスリットダイを、塗布液支持体に接触ガイドが接触するように配置し、17±2℃でコントロールされた水でそのスリットダイを冷却しながら、作製したポリイミド前駆体溶液を50mm/分の速度で押し出して、支持体上に塗布した。このとき、上記スリットダイは塗布幅方向に自由に回転できるようにした。支持体上で、55℃で約20分加熱乾燥することで、自己支持性のあるポリイミド前駆体ゲルフィルムを得た。その後、230℃、350℃に加熱した、加熱ロールの表面に接触するように配置したローラーでポリイミド前駆体ゲルフィルムを加熱ロールに接触させながら、単位断面積あたりの張力を0.2kgf/mmで搬送し、焼成した。
得られたポリイミドフィルムの成膜状態は良好であり、フィルム両端およびフィルムにおいては亀裂等の欠陥がなかった。このポリイミドフィルムは平均膜厚5μm、膜厚変動係数10%であった。
【実施例9】
【0095】
実施例1と同様のPPD/BPDAのポリイミド前駆体溶液を用い、塗布液支持体とスリットダイの距離を80μmに調整した接触ガイドが設置されたスリットダイを、塗布液支持体に接触ガイドが接触するように配置し、17±2℃でコントロールされた水でそのスリットダイを冷却しながら、作製したポリイミド前駆体溶液を250mm/分の速度で押し出して、支持体上に塗布した。このとき、上記スリットダイは塗布幅方向に自由に回転できるようにした。支持体上で、90℃で約10分加熱乾燥することで、自己支持性のあるポリイミド前駆体ゲルフィルムを得た。その後、230℃、350℃に加熱した、加熱ロールの表面に接触するように配置したローラーでポリイミド前駆体ゲルフィルムを加熱ロールに接触させながら、単位断面積あたりの張力を0.2kgf/mmで搬送し、焼成した。
得られたポリイミドフィルムの成膜状態は良好であり、フィルム両端およびフィルムにおいては亀裂等の欠陥がなかった。このポリイミドフィルムは平均膜厚5μm、膜厚変動係数13%であった。
【実施例10】
【0096】
実施例1と同様のPPD/BPDAのポリイミド前駆体溶液を用い、塗布液支持体とスリットダイの距離を80μmに調整した接触ガイドが設置されたスリットダイを、塗布液支持体に接触ガイドが接触するように配置し、17±2℃でコントロールされた水でそのスリットダイを冷却しながら、作製したポリイミド前駆体溶液を500mm/分の速度で押し出して、支持体上に塗布した。このとき、上記スリットダイは塗布幅方向に自由に回転できるようにした。支持体上で、90℃で約2分加熱乾燥することで、自己支持性のあるポリイミド前駆体ゲルフィルムを得た。その後、230℃、350℃に加熱した、加熱ロールの表面に接触するように配置したローラーでポリイミド前駆体ゲルフィルムを加熱ロールに接触させながら、単位断面積あたりの張力を0.2kgf/mmで搬送し、焼成した。
得られたポリイミドフィルムの成膜状態は良好であり、フィルム両端およびフィルムにおいては亀裂等の欠陥がなかった。このポリイミドフィルムは平均膜厚7μm、膜厚変動係数10%であった。
【実施例11】
【0097】
実施例1と同様のPPD/BPDAのポリイミド前駆体溶液を用いた。間隔調整機構に距離センサーを用いた装置を用い、塗布液支持体とスリットダイの距離を80μmになるように距離センサーを設定し、17±2℃でコントロールされた水でそのスリットダイを冷却しながら、作製したポリイミド前駆体溶液を100mm/分の速度で押し出して、支持体上に塗布した。このとき、上記スリットダイは塗布幅方向に自由に動く駆動機構を有し、距離センサーが変動を検知して、塗布液支持体とスリットダイの間隔が常に所定間隔の±5%以内に入るよう駆動機構と連動している。支持体上で、90℃で約10分加熱乾燥することで、自己支持性のあるポリイミド前駆体ゲルフィルムを得た。その後、230℃、350℃に加熱した、加熱ロールの表面に接触するように配置したローラーでポリイミド前駆体ゲルフィルムを加熱ロールに接触させながら、単位断面積あたりの張力を0.2kgf/mmで搬送し、焼成した。
得られたポリイミドフィルムの成膜状態は良好であり、フィルム両端およびフィルムにおいては亀裂等の欠陥がなかった。このポリイミドフィルムは平均膜厚7μm、膜厚変動係数10%であった。
【0098】
(比較例1)
実施例1と同様のPPD/BPDAのポリイミド前駆体溶液を用い、塗布液支持体とスリットダイの距離を80μmに調整した接触ガイドが設置されたスリットダイを、塗布液支持体に接触ガイドが接触するように配置し、17±2℃でコントロールされた水でそのスリットダイを冷却しながら、作製したポリイミド前駆体溶液を100mm/分の速度で押し出して、支持体上に塗布した。このとき、上記スリットダイは塗布幅方向に自由に回転できるようにした。支持体上で、90℃で約20分加熱乾燥することで、自己支持性のあるポリイミド前駆体ゲルフィルムを得た。その後、ピンテンターでポリイミドフィルムの両端を把持したまま、230℃、350℃に保った炉の中に搬送し、焼成した。
結果、フィルム搬送時にピンで把持された部分に応力集中が起こり、その部分を基点としてフィルムが破れてしまい、目的とするポリイミドフィルムを得ることができなかった。
【0099】
(比較例2)
実施例1と同様のPPD/BPDAのポリイミド前駆体溶液を用い、塗布液支持体とスリットダイの距離を80μmに調整した接触ガイドが設置されたスリットダイを、塗布液支持体に接触ガイドが接触するように配置し、17±2℃でコントロールされた水でそのスリットダイを冷却しながら、作製したポリイミド前駆体溶液を100mm/分の速度で押し出して、支持体上に塗布した。このとき、上記スリットダイの塗布幅方向に対し、自由に回転しないように規制した。支持体上で、90℃で約20分加熱乾燥することで、自己支持性のあるポリイミド前駆体ゲルフィルムを得た。その後、230℃、350℃に加熱した、加熱ロールの表面に接触するように配置したローラーでポリイミド前駆体ゲルフィルムを加熱ロールに接触させながら、単位断面積あたりの張力を0.2kgf/mmで搬送し、焼成した。
得られたポリイミドフィルムの状態は膜厚ムラがひどく、明らかに一方の端部は膜厚が厚くもう一方の端部は膜厚が薄い状態であり、薄い部分にシワが見られた。平均膜厚5μm、膜厚変動係数80%であった。
【0100】
(比較例3)
実施例1と同様のPPD/BPDAのポリイミド前駆体溶液を用い、塗布液支持体とスリットダイの距離を80μmに調整した接触ガイドが設置されたスリットダイを、塗布液支持体に接触ガイドが接触するように配置し、17±2℃でコントロールされた水でそのスリットダイを冷却しながら、作製したポリイミド前駆体溶液を100mm/分の速度で押し出して、支持体上に塗布した。このとき、上記スリットダイは塗布幅方向に自由に回転できるようにした。支持体上で、90℃で約20分加熱乾燥することで、自己支持性のあるポリイミド前駆体ゲルフィルムを得た。その後、230℃、350℃に加熱した、加熱ロールの表面に接触するように配置したローラーでポリイミド前駆体ゲルフィルムを加熱ロールに接触させながら、単位断面積あたりの張力を1.2kgf/mmで搬送し、焼成した。
結果、フィルム搬送時の張力により、焼成途中でフィルムの破壊が起こり、目的とするポリイミドフィルムを得ることができなかった。
【0101】
(比較例4)
実施例1と同様のPPD/BPDAのポリイミド前駆体溶液を用い、塗布液支持体とスリットダイの距離を80μmに調整した接触ガイドが設置されたスリットダイを、塗布液支持体に接触ガイドが接触するように配置し、0±1℃でコントロールされた水でそのスリットダイを冷却しながら、作製したポリイミド前駆体溶液を100mm/分の速度で押し出して、支持体上に塗布した。このとき、上記スリットダイは塗布幅方向に自由に回転できるようにした。支持体上で、90℃で約10分加熱乾燥することで、自己支持性のあるポリイミド前駆体ゲルフィルムを得た。その後、230℃、350℃に加熱した、加熱ロールの表面に接触するように配置したローラーでポリイミド前駆体ゲルフィルムを加熱ロールに接触させながら、単位断面積あたりの張力を0.2kgf/mmで搬送し、焼成した。
得られたポリイミドフィルムの状態は膜厚ムラがひどく、膜厚が厚い部分と薄い部分が混在していた。部分的に塗布不良が原因の縦スジが見られた。平均膜厚5μm、膜厚変動係数55%であった。
【0102】
(比較例5)
実施例1と同様のPPD/BPDAのポリイミド前駆体溶液を用い、塗布液支持体とスリットダイの距離を80μmに調整した接触ガイドが設置されたスリットダイを、塗布液支持体に接触ガイドが接触するように配置し、40±2℃でコントロールされた水でそのスリットダイを冷却しながら、作製したポリイミド前駆体溶液を100mm/分の速度で押し出して、支持体上に塗布した。このとき、上記スリットダイは塗布幅方向に自由に回転できるようにした。支持体上で、90℃で約10分加熱乾燥することで、自己支持性のあるポリイミド前駆体ゲルフィルムを得た。その後、230℃、350℃に加熱した、加熱ロールの表面に接触するように配置したローラーでポリイミド前駆体ゲルフィルムを加熱ロールに接触させながら、単位断面積あたりの張力を0.2kgf/mmで搬送し、焼成した。
得られたポリイミドフィルムの状態は膜厚ムラがひどく、膜厚が厚い部分と薄い部分が混在していた。部分的に塗布不良が原因の縦スジが見られた。平均膜厚7μm、膜厚変動係数60%であった。
【0103】
(比較例6)
500mlのセパラブルフラスコにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)415gを入れ、ここにパラフェニレンジアミン(PPD)22.836g(0.21モル)と3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物(BPDA)60.921g(0.21モル)を投入し、常温常圧中で1時間反応させ、ポリイミド前駆体溶液を得た。このとき固形分量は17重量%、粘度は5250Psであった。
塗布液支持体とスリットダイの距離を80μmに調整した接触ガイドが設置されたスリットダイを、塗布液支持体に接触ガイドが接触するように配置し、17±2℃でコントロールされた水でそのスリットダイを冷却しながら、作製したポリイミド前駆体溶液を50mm/分の速度で押し出して、支持体上に塗布した。このとき、上記スリットダイは塗布幅方向に自由に回転できるようにした。支持体上で、90℃で約20分加熱乾燥することで、自己支持性のあるポリイミド前駆体ゲルフィルムを得た。その後、230℃、350℃に加熱した、加熱ロールの表面に接触するように配置したローラーでポリイミド前駆体ゲルフィルムを加熱ロールに接触させながら、単位断面積あたりの張力を0.2kgf/mmで搬送し、焼成した。
得られたポリイミドフィルムの状態は膜厚ムラがひどく、膜厚が厚い部分と薄い部分が混在していた。部分的に塗布不良が原因の縦スジが見られた。平均膜厚11μm、膜厚変動係数80%であった。
【0104】
(比較例7)
500mlのセパラブルフラスコにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)415gを入れ、ここにパラフェニレンジアミン(PPD)22.836g(0.21モル)と3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物(BPDA)55.118g(0.19モル)を投入し、常温常圧中で1時間反応させ、ポリイミド前駆体溶液を得た。このとき固形分量は17重量%、粘度は45Psであった。
塗布液支持体とスリットダイの距離を80μmに調整した接触ガイドが設置されたスリットダイを、塗布液支持体に接触ガイドが接触するように配置し、17±2℃でコントロールされた水でそのスリットダイを冷却しながら、作製したポリイミド前駆体溶液を50mm/分の速度で押し出して、支持体上に塗布した。このとき、上記スリットダイは塗布幅方向に自由に回転できるようにした。支持体上で、90℃で約20分加熱乾燥することで、自己支持性のあるポリイミド前駆体ゲルフィルムを得た。その後、230℃、350℃に加熱した、加熱ロールの表面に接触するように配置したローラーでポリイミド前駆体ゲルフィルムを加熱ロールに接触させながら、単位断面積あたりの張力を0.2kgf/mmで搬送し、焼成した。
得られたポリイミドフィルムの状態は膜厚ムラがひどく、膜厚が厚い部分と薄い部分が混在していた。部分的に塗布不良が原因の縦スジが見られた。平均膜厚8.5μm、膜厚変動係数45%であった。
【0105】
(比較例8)
実施例1と同様のPPD/BPDAのポリイミド前駆体溶液を用い、塗布液支持体とスリットダイの距離を80μmに調整した接触ガイドが設置されたスリットダイを、塗布液支持体に接触ガイドが接触するように配置し、17±2℃でコントロールされた水でそのスリットダイを冷却しながら、作製したポリイミド前駆体溶液を50mm/分の速度で押し出して、支持体上に塗布した。このとき、上記スリットダイは塗布幅方向に自由に回転できるようにした。支持体上で、40℃で約20分加熱乾燥することで、自己支持性のあるポリイミド前駆体ゲルフィルムを得た。その後、230℃、350℃に加熱した、加熱ロールの表面に接触するように配置したローラーでポリイミド前駆体ゲルフィルムを加熱ロールに接触させながら、単位断面積あたりの張力を0.2kgf/mmで搬送し、焼成した。
得られたポリイミドフィルムの状態は膜厚ムラがひどく、膜厚が厚い部分と薄い部分が混在していた。部分的に塗布不良が原因の縦スジが見られた。平均膜厚9μm、膜厚変動係数80%であった。
【0106】
(比較例9)
実施例1と同様のPPD/BPDAのポリイミド前駆体溶液を用い、塗布液支持体とスリットダイの距離を80μmに調整した接触ガイドが設置されたスリットダイを、塗布液支持体に接触ガイドが接触するように配置し、17±2℃でコントロールされた水でそのスリットダイを冷却しながら、作製したポリイミド前駆体溶液を250mm/分の速度で押し出して、支持体上に塗布した。このとき、上記スリットダイは塗布幅方向に自由に回転できるようにした。支持体上で、200℃で約4分加熱乾燥することで、自己支持性のあるポリイミド前駆体ゲルフィルムを得た。その後、230℃、350℃に加熱した、加熱ロールの表面に接触するように配置したローラーでポリイミド前駆体ゲルフィルムを加熱ロールに接触させながら、単位断面積あたりの張力を0.2kgf/mmで搬送し、焼成した。
得られたポリイミドフィルムの状態は膜厚ムラがひどく、膜厚が厚い部分と薄い部分が混在していた。部分的に塗布不良が原因の縦スジが見られた。平均膜厚9μm、膜厚変動係数65%であった。
【表1】



【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の一例を示したポリイミドフィルム製造装置
【図2】本発明の一例を示したポリイミド前駆体溶液塗布機構(上面図)
【図3】本発明の一例を示したポリイミド前駆体溶液塗布機構(側面図)
【符号の説明】
【0108】
10 乾燥工程
11 スリットダイ
12 塗布液支持体
13 ポリイミド前駆体ゲルフィルム
14 搬送ローラー
15 焼成工程
16 第一加熱ロール
17 第二加熱ロール
18 第一ニップローラー
19 第二ニップローラー
20 冷却工程
21 冷却ローラー
31 スリットダイ
32 塗布液支持体
33 接触ガイド
34 接触ガイド
35 回転軸
36 スリットダイホルダー
37 エアーシリンダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド前駆体溶液をスリットダイから支持体上に連続的に塗布した後、加熱イミド転化して、ポリイミドフィルムを製造する装置であって、
前記装置はスリットダイ、ポリイミド前駆体溶液の塗布液支持体及び加熱イミド転化装置を備え、
前記スリットダイの先端部と前記塗布液支持体表面との間隔を一定に保持するための間隔調整機構が備え付けられていることを特徴とするポリイミドフィルム製造装置。
【請求項2】
前記間隔調整機構は、該スリットダイの先端部と前記塗布液支持体表面との間隔を検出するための接触ガイドまたは距離センサーを備えていることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルム製造装置。
【請求項3】
前記塗布液支持体が、回転ドラムである請求項1〜2のいずれかに記載のポリイミドフィルム製造装置。
【請求項4】
前記加熱イミド転化装置は、ポリイミド前駆体ゲルフィルムをロール表面に接触させてイミド転化を完結するための、少なくとも1個の加熱ロールを備えている請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミドフィルム製造装置。
【請求項5】
前記ポリイミド前駆体ゲルフィルムを、加熱ロール表面に圧接させるためのニップローラーが設けられている請求項4に記載のポリイミドフィルム製造装置。
【請求項6】
前記接触ガイドまたは距離センサーで前記スリットダイ先端部と前記塗布液支持体表面との間隔を検知しながら前記スリットダイからポリイミド前駆体溶液を前記塗布液支持体表面に塗布する請求項1〜5のいずれかに記載のポリイミド製造装置を用いたポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記塗布液支持体上で乾燥させた自己支持性を有するポリイミド前駆体ゲルフィルムを前記塗布液支持体上から剥離し、前記加熱イミド転化装置に導き、表面温度が150度C以上の少なくとも1個の加熱ロール表面に前記ポリイミド前駆体ゲルフィルムを接触させ段階的にイミド転化させる請求項6に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記ポリイミド前駆体ゲルフィルムにかかる張力が1.1Kgf/mm2以下である請求項7に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造装置及び請求項6〜8のいずれかに記載の方法で製造されるポリイミドフィルム。
【請求項10】
厚みが1μm以上10μm以下である請求項9に記載のポリイミドフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−142999(P2009−142999A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319508(P2007−319508)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(391059399)株式会社アイ.エス.テイ (102)
【Fターム(参考)】