説明

ポリイミドフィルム

【課題】高弾性率、寸法安定性、及び低い吸収率、吸湿膨脹係数、線膨脹係数を有するポリイミドフィルムを提供すること。
【解決手段】本発明は絶縁材料として使用されるポリイミドフィルムに関するもので、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの単量体を重合反応させてポリイミド系樹脂を製造することにおいて、酸無水物単量体として4、4’−オキシジフタル酸二無水物と共に芳香族または脂肪族テトラカルボン酸二無水物を1種以上使用し、ジアミン単量体としてp−フェニレンジアミンと共に屈曲性ジアミンを1種以上使用して溶液重合により製造されたポリアミド酸をイミド化させることで熱膨張係数、引張係数、強度及び誘電強度、体積抵抗などの電気的特性に優れたポリイミドフィルム及びそれを適用したTABテープ及びフレキシブルプリント回路を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリイミドフィルムに関し、さらに詳しくは、弾性率が十分に高く、吸収率が低く、吸湿膨脹係数が小さく、線膨脹係数が小さく、寸法安定性が高いなどの特徴を有し、フレキシブルプリント接続盤(flexible print connection board)を含む各種電気/電子機器などの絶縁フィルム、半導体パッケージング、磁気記録フィルム、ハードディスクサスペンション連結基板(hard disk suspension connection base)に使用可能なポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にポリイミド樹脂とは、芳香族テトラカルボン酸またはその誘導体と芳香族ジアミンまたは芳香族ジイソシアネートとを溶液重合してポリアミド酸誘導体を製造した後、高温で環化脱水させイミド化して製造される高耐熱性樹脂を称する。ポリイミド樹脂は、用いられた単量体の種類によって様々な分子構造を有することが可能で、一般の芳香族テトラカルボン酸成分としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)または3、3’、4、4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を使用して、芳香族ジアミン成分としてはパラ−フェニレンジアミン(p−PDA)、メタ−フェニレンジアミン(m−PDA)、4、4−オキシジアニリン(ODA)、4、4−メチレンジアニリン(MDA)、2、2−ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(HFDA)等の芳香族ジアミンを使用している。
【0003】
ほとんどのポリイミド樹脂は不溶、不融の超高耐熱性樹脂であって、耐熱酸化性、耐熱特性(約260℃の長期使用可能温度、約480℃の短期使用可能温度)、耐放射線性、低温特性、耐薬品性などに優れた特性を持っていて耐熱先端素材として幅広く利用されているが、ポリイミド樹脂内の高い芳香族環密度によって可視光線領域における低い光透過度及び黄色系列の色を表し、高い誘電常数及び低い接着特性、他の機能性高分子フィルムに比べて吸湿性に落ちる短所を有するため透明性の要求される分野への適用が非常に難しいという短所があった。
【0004】
また、近来使われているポリイミドフィルムの場合、一般の回路基板絶縁用として用いられる他のフィルムに比べて柔軟性に優れるためフレキシブルプリント配線板(以下、FPCと略称する)に活用して主に小型家電機器、薄膜の回路板を必要とする移動用電子機器、カメラ内部の狭い空間などに折り畳まれて使われてきた。しかし、最近FPCはフレキシブルディスクドライブ(FDD)、ハードディスクドライブ(HDD)、複写機、プリンタなどの駆動部にも幅広く使われるため、FPCの摺動曲げ特性をさらに向上させることが要求されている。FPCは樹脂フィルムを基材とし、この樹脂フィルムを基材フィルムとも呼ぶ。この基材フィルムとしては、摺動性及び屈曲性を向上させる目的で、化学構造的に屈曲性の高いポリイミドを含むポリイミドフィルムを使用することができる。
【0005】
ところが、一般に屈曲性の高いポリイミドは、熱膨張性が高い、つまり吸湿膨脹係数が大きく線膨脹係数も大きいので、ポリイミドフィルムを基材フィルムとして使用したFPCにはカールやねじりが発生しやすいという欠点がある。従って、フレキシブルプリント接続盤用の基材フィルムとして使われるポリイミドフィルムは、弾性率が高く、吸湿膨脹係数が小さく、線膨脹係数が小さいことが要望される。しかし、反対に線膨脹係数の低いポリイミド樹脂によりフィルムを形成し、それを基材フィルムとして使用した場合はフィルム自らの柔軟性が失われるので、基材フィルムが非常に脆弱になり、得られるFPCの屈曲性までも低下されてしまう欠点が発生する。特に、寸法安定性の高い板基材フィルムをプラズマディスプレイ(PDP)用のフレキシブルプリント接続盤として使用すべきであるが、それは上記フィルムが他の用途のためのものと比べて大きい面積に使用しなければならないからである。
【0006】
上記したように電気/電子機器に使われるポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物を4、4’−オキシジアニリンにより重縮合させることで得られたポリイミドを使用してきたが、それは上記ポリイミドが耐熱性及び電気絶縁性に優れ、高温で使われる機器に使用することができるからである。また、寸法安定性の高い利点を利用して、それらポリイミドにより作られたフィルムをフレキシブルプリント接続盤などに使用する。
【0007】
一方、ジアミン成分としてp−フェニレンジアミンを使用してピロメリット酸二無水物、4、4’−オキシジアニリン及びp−フェニレンジアミンにより構成された3−成分ポリイミドを提供することによって弾性率を増加させる試みが行なわれた。例えば、特開昭60−210629号公報、特開昭64−16832号公報、特開昭64−16833号公報、特開昭64−16834号公報、特開平1−131241号公報及び特開平1−131242号公報が挙げられる。
【0008】
また、上記言及された3−成分に3、3’、4、4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を加えることによって弾性率を追加増進させた4−成分ポリイミドを提供する試みもあった。例えば、JP−A−59−164382及びJP−A−61−111359にはそのような4−成分ポリイミドが記載されている。
【0009】
また、上記単量体を調節された順に重合段階に加えることで上記4−成分ポリイミドの物性を改善させようとする試みが、例えば、特開平5−25273号公報に報告された。また、特開昭63−189490号公報、特開平3−60182号公報、JP−A−9−77871号公報、特開平10−36506号公報及び特開平11−54862号公報には、p−フェニレンビス(トリメリト酸モノエステル酸無水物)と類似した構造を有する酸を使用することが報告された。
【0010】
上述したように、電気/電子機器に使われるポリイミドフィルムに対する要求事項が益々増えるに連れ、それらの要求事項を充足させようとする各種研究が行われてきた。しかし、今まで、十分に優れた特徴(例えば、弾性率が十分に高くて、吸収率が低く、吸湿膨脹係数が小さく、線膨脹係数が小さく、寸法安定性が高い特徴)を有するポリイミドフィルムは提案されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記した問題点に鑑みてなされたもので、4、4’−オキシジフタル酸二無水物とピロメリット酸二無水物を必須成分とする酸無水物単量体と、p−フェニレンジアミンと屈曲性ジアミン成分を含む芳香族ジアミン単量体から得られたポリイミドフィルムが、十分な熱膨張性、吸収・吸湿性、及び弾性率を兼ね備え、カールやねじりの発生をより有効に回避できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明の目的は、高弾性率、寸法安定性、及び低い吸収率、吸湿膨脹係数、線膨脹係数を有するポリイミドフィルムを提供することにある。
【0013】
上記のような目的を達成するため、本発明に係るポリイミドフィルムは、4、4’−オキシジフタル酸二無水物、及びピロメリット酸二無水物の単独または他の芳香族テトラカルボン酸二無水物の中から選択された1種以上の酸無水物との混合物を含む酸成分と、p−フェニレンジアミン、及び主鎖中にエーテル基、メチレン基などが2個のアミノ基の窒素原子とこれらと結合する炭素原子間に連結基として存在するか、2個のアミノ基の窒素原子とこれらと結合する炭素原子が一直線に並ばない構造を有するジアミン化合物の中から選択された1種以上のジアミン化合物を反応させて得られるポリアミド酸から製造されたことを特徴とする。
【0014】
本発明のポリイミドフィルムは、4、4’−オキシジフタル酸二無水物の含有量が酸無水物全量の10〜80モル%であることが好ましい。より好ましくは、4、4’−オキシジフタル酸二無水物の含有量は酸無水物全量の20〜60モル%である。
【0015】
本発明のポリイミドフィルムでは、ジアミン化合物がp−フェニレンジアミン、及び4、4’−ジアミノジフェニルメタンを含むことが好ましい。
【0016】
さらに本発明の他のポリイミドフィルムでは、ジアミン化合物がp−フェニレンジアミン、及び4、4’−オキシジアニリンを含むことが好ましい。
【0017】
p−フェニレンジアミンの含有量は、ジアミン化合物全量の10〜70モル%、好ましくは20〜60モル%であることが好ましい。
【0018】
また、本発明のポリイミドフィルムでは、50〜300℃における平均線膨脹係数が6〜30ppm、弾性率は2.0GPa以上、吸湿膨脹係数は13ppm以下であることが好ましい。
【0019】
このように得られたポリイミドフィルム上に接着剤層及び保護層が形成されたTABテープにも本発明の特徴があって、ポリイミドフィルムの少なくとも一面に金属導電層が積層されたフレキシブルプリント回路にも本発明の特徴がある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このような本発明をさらに詳細に説明すれば次の通りである。
【0021】
<ポリイミドの合成に使われる単量体成分>
本発明に係るポリイミドフィルムは、主に芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物から合成されるポリアミド酸をイミド化することで得られるポリイミドを使用する。即ち、本発明に用いられるポリイミドは、前駆体のポリアミド酸を重合(合成)した後、それをイミド化することで得られる。ここで、上記“主に芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物から合成されるポリアミド酸”というのは、ポリアミド酸の原料である酸成分中、芳香族テトラカルボン酸二無水物の含有割合が最も大きく、ジアミン成分中、芳香族ジアミンの含有割合がもっとも大きいことを意味する。言い換えると、本発明では前駆体のポリアミド酸の重合には酸成分として芳香族テトラカルボン酸二無水物を含み、ジアミン成分として芳香族ジアミンを含んで、これらの成分が最も多く使われると良くて、その他の酸成分やジアミン成分が使われることもできる。
【0022】
以下、ポリアミド酸の単量体成分である酸成分及びジアミン成分に関して具体的に説明する。
【0023】
<酸成分(酸二無水物成分)>
本発明に係るポリイミドフィルムにおいては、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の原料中、酸成分として少なくとも4、4’−オキシジフタル酸二無水物が使われる。
【0024】
酸成分として4、4’−オキシジフタル酸二無水物を使用する場合の具体的な使用量は特に限定されないが、全体芳香族テトラカルボン酸二無水物成分を100モル%とした場合に10〜80モル%、好ましくは20〜60モル%の範囲内で使用する。
【0025】
上記範囲内で4、4’−オキシジフタル酸二無水物を使用することによって線膨脹係数と弾性率との調和を図り得ることが可能になり、上記範囲の上限以下にすることで吸湿膨脹係数を低くすることが可能になる。
【0026】
また、本発明ではピロメリット酸二無水物の単独または他の芳香族テトラカルボン酸二無水物の中から選択された1種以上との混合物を酸無水物成分として併用し、ここで芳香族テトラカルボン酸二無水物としては2、3、6、7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1、2、5、6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2、2’3、3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2、2−ビス(3、4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3、4、9、10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3、4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1、1−ビス(2、3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1、1−ビス(3、4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2、3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3、4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3、4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビスフェノールAビス(トリメリト酸モノエステル無水物)、3、3’、4、4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物または3、3’、4、4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などを使用することが可能で、それらは単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。ピロメリット酸二無水物の単独または上記他の芳香族テトラカルボン酸二無水物との混合物の使用量は特に限定されないが、全体芳香族テトラカルボン酸二無水物の成分を100モル%にした場合、20〜90モル%、好ましくは40〜80モル%の範囲内で使用する。特に、ピロメリット酸二無水物の含量は、全体芳香族テトラカルボン酸二無水物の成分を100モル%とした場合に30〜90モル%であることが好ましい。
【0027】
<ジアミン成分>
本発明に係るポリイミドフィルムにおいては、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の原料中、ジアミン成分として少なくとも芳香族ジアミンが使われる。
【0028】
本発明では、上記芳香族ジアミン成分として直線性ジアミンと屈曲性ジアミンの2種が全て含まれることが好ましい。
【0029】
ここで、上記“直線性ジアミン”とは、エーテル基、メチレン基、プロパルギル基、ヘキサフルオロプロパルギル基、カルボニル基、スルホン基、スルフィド基のような屈曲基を主鎖の中に包含せず、2個のアミノ基の窒素原子とそれらが結合している炭素原子が一直線に並んだ構造を有するジアミン化合物を意味する。上記直線性ジアミンの具体的な例としては、p−フェニレンジアミン及びその核置換化合物、ベンジジン及びその核置換化合物などが挙げられるが、特に限定されるものではない。上記直線性ジアミンは1種だけを用いてもよいし、2種以上を適切に組み合わせて用いることもできる。これらの中でもp−フェニレンジアミンは必須成分として使用することがより好ましい。これに伴い、加工性、取り扱い性、特性調和面で優れたポリイミドフィルムを得ることができる。
【0030】
また、“屈曲性ジアミン”とは、主鎖の中にエーテル基、メチレン基などが2個のアミノ基の窒素原子とこれらと結合する炭素原子間に連結基により存在するか、2個のアミノ基の窒素原子とこれらと結合する炭素原子が一直線に並ばない構造を持つジアミン化合物の中から選択されたジアミン化合物を意味する。
【0031】
上記直線性ジアミン及び屈曲性ジアミンにおいて“一直線”とは、通常ジアミン化合物を立体的構造に表現した時180゜に平行に存在するものを意味すると解釈される。
【0032】
上記屈曲性ジアミンの具体的な例としては、4、4’−オキシジアニリン、1、3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1、3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4、4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4、4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、4、4’−ジアミノジフェニルプロパン、4、4’−ジアミノジフェニルメタン、4、4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3、3’−ジアミノジフェニルスルホン、4、4’−ジアミノジフェニルスルホン、3、3’−オキシジアニリン、3、4’−オキシジアニリン、2、4’−オキシジアニリン、4、4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4、4’−ジアミノジフェニルシラン、4、4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4、4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4、4’−ジアミノジフェニルN−フェニルアミン、1、3−ジアミノベンゼン、1、2−ジアミノベンゼンなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。このような屈曲性ジアミンは1種だけを使用することも、2種以上を適切に組み合わせて使用することもできる。これらの中でも4、4’−ジアミノジフェニルメタンまたは4、4’−オキシジアニリンを使用することが好ましい。これに伴い、多様な物性の調和に優れたポリイミドフィルムを得ることができる。上記芳香族ジアミン中、直線性ジアミン及び屈曲性ジアミンの使用量は特に限定されないが、全体芳香族ジアミン成分を100モル%にすると、直線性ジアミン、特にp−フェニレンジアミンは10〜70モル%の範囲内で使われることが好ましく、20〜60モル%の範囲内で使われることがより好ましい。
【0033】
同様に、全体芳香族ジアミン成分を100モル%にした場合、屈曲性ジアミンは30〜90モル%の範囲内で使われることが好ましく、40〜90モル%の範囲内で使われることがより好ましい。
【0034】
上記直線性ジアミン及び上記屈曲性ジアミンの上記ポリイミド分子(ポリアミド酸分子)中における分布は特に限定されないが、ランダムに分布することが好ましい。従って、高い弾性率及び低い線膨脹係数を両立させることが容易になる。また、本発明では得られるポリイミドフィルムに要求される物性などに応じて上記ジアミン成分として芳香族ジアミン以外のジアミン(他のジアミン)を使用することができる。このような他のジアミンの使用量も特に限定されるものではない。
【0035】
<有機溶剤>
上記のような酸無水物成分及び芳香族ジアミンによりポリアミド酸溶液を製造するために使われる有機溶媒、即ち、ポリアミド酸の重合に使われる重合用溶媒は、ポリアミド酸を溶解する溶媒であれば特に限定されない。具体的な一例としては、アミド系溶媒、即ち、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセタミド、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられ、この中でもN、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセタミドがより好ましく使用される。これら有機溶媒は単独で使用することが一般的であるが、必要によって2種以上を適切に組み合わせて使用することができる。また、上記ポリアミド酸溶液の組成に対しては特に限定されないが、有機溶媒中にポリアミド酸が5〜35重量%の範囲内に溶解されていることが好ましく、10〜30重量%であることがより好ましい。これらの範囲内に使用すると適当な分子量及び溶液粘度を得ることができる。
【0036】
<充填剤>
本発明のポリイミドフィルムには、摺動性、熱伝導性、導電性、耐コロナ性、耐磨耗性、耐衝撃性のようなフィルムの様々な特性を改善させる目的で充填剤を添加することができる。
【0037】
充填剤としては特に限定されないが、好ましい例として、シリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などが挙げられる。また、上記充填剤の粒径は改質するべきフィルム特性や添加する充填剤の種類によって変動されるもので、特に限定されないが、一般には平均粒径が0.05〜100μmの範囲内のものが好ましく、0.1〜75μmの範囲内のものがより好ましく、0.1〜50μmの範囲内のものが更に好ましくて、0.1〜25μmの範囲内のものが特に好ましい。粒径が上記の範囲以内である場合、ポリイミドフィルムにおいて改質効果が現れやすくて、この範囲を上回らないとポリイミドフィルムにおいて良好な表面性、耐磨耗性などの機械的特性を得ることができる。また、上記充填剤の添加量に対しても改質するべきフィルム特性や充填剤粒径などによって変動できるものであって特に限定されない。一般に充填剤の添加量はポリイミド100重量部に対して0.01〜100重量部の範囲内のものが好ましく、0.01〜90重量部の範囲内のものがより好ましく、0.02〜80重量部の範囲内のものが更に好ましい。
【0038】
充填剤の添加方法は特に限定されないが、具体的には例えば、重合前または重合中に重合反応液に添加する方法、ポリアミド酸の重合完了後3本ロールなどを使用して充填剤を混ぜる方法、充填剤を含む分散液を準備してそれをポリアミド酸溶液に混合する方法などが挙げられる。その中でも、充填剤を含む分散液を準備してそれをポリアミド酸溶液に混合する方法、特に膜の製造直前に混合する方法を使用することが好ましい。そうすると、充填剤による製造ラインの汚染を最低にすることができる。上記充填剤を含む分散液を備える場合、ポリアミド酸の重合溶媒と同一溶媒を使用することが好ましい。また、充填剤を良好に分散させて更に分散状態を安定化させるために分散剤、増粘剤などをフィルムの物性に影響を与えない範囲内で使用することができる。
【0039】
<ポリアミド酸重合方法>
上記ポリアミド酸の重合(合成)方法は特に限定されるものではなく、従来の公知された方法を使用することができる。有機溶媒中に酸成分及びジアミン成分をほぼ等モル量(実質的に等モルの量)になるように溶解して反応させてポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の有機溶媒溶液(以下、ポリアミド酸溶液という)を製造することができる。反応させる時の条件は特に限定されないが、反応温度は−20℃〜80℃の範囲内が好ましく、反応時間は2時間〜48時間程度の範囲内が好ましい。また、反応時の雰囲気としてはアルゴンや窒素などの不活性雰囲気であることがより好ましい。
【0040】
上記ポリアミド酸の重合においては酸成分及びジアミン成分を反応させる手法の差から複数種の重合方法を使用することができる。具体的に例を挙げると、以下の1)〜5)に示したような重合方法を好ましく使用することができる。1)芳香族ジアミンを有機溶媒中に溶解し、この芳香族ジアミンと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法、2)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過小モル量の芳香族ジアミン化合物を有機溶媒中で反応させて両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。引続き、全体工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物とが実質的に等モルになるように芳香族ジアミン化合物を使用して重合させる方法、3)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機溶媒中で反応させて、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。引続き、ここに芳香族ジアミン化合物を追加添加し、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物とが実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を使用して重合する方法、4)芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機溶媒中に溶解及び/または分散させた後、実質的に等モルになるように芳香族ジアミン化合物を使用して重合させる方法、5)実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの混合物を有機溶媒中で反応させて重合する方法。
【0041】
<ポリイミドフィルムの製造方法>
本発明において上記ポリアミド酸溶液からポリイミドフィルムを製造する方法は特に限定されるものでなく、従来から公知された方法を使用することができる。イミド化の方法としては熱イミド化法と、化学イミド化法を挙げることができるが、化学イミド化法を使用することがより好ましい。
【0042】
化学イミド化法は、ポリアミド酸溶液に酢酸無水物などの酸無水物により代表される脱水剤と、イソキノリン、β−ピコリン、ピリジンなどの第3級アミン類等により代表されるイミド化触媒を何れかの工程に作用させる方法である。化学イミド化法に熱イミド化法を併用することもできる。加熱条件は、ポリアミド酸の種類、フィルムの厚さなどにより変動できる。これに伴い、熱的寸法安定性や機械的強度に優れたポリイミドフィルムを得ることができる。
【0043】
以下、本発明に係るポリイミドフィルムの製造方法の好ましい一例を説明するが、もちろん本発明の製造方法はこれに限定されるものではない。本発明に係るポリイミドフィルムの製造方法は、1)有機溶媒中で芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させてポリアミド酸溶液を得る工程、2)上記製造されたポリアミド酸溶液に一定量のテトラカルボン酸二無水物を投入して溶液の粘度を調節する工程、3)上記ポリアミド酸溶液に環化/脱水触媒を加えて化学的イミド化を進行する工程、4)上記ポリアミド酸溶液を含む膜製造ドーピング液をガラス板、アルミ箔、循環ステンレスベルト、ステンレスドラムなどの支持体上に流延する工程、5)上記膜製造ドーピング液を支持体上で80℃〜200℃、好ましくは100℃〜180℃の温度領域で加熱することで脱水剤及びイミド化触媒を活性化して部分的に硬化及び(または)乾燥させ、支持体から剥離してポリアミド酸フィルム(以下、ゲルフィルムと称す)を得た後、支持体からゲルフィルムを剥離する工程、及び6)且つ、ゲルフィルムを加熱して、残存するアミド酸をイミド化して乾燥させる工程、を含む。
【0044】
この時、最終的に250〜550℃の温度で5〜400秒間加熱することが好ましい。この温度より高く(高いか)時間が長いとフィルムの熱による劣化が発生して問題が発生する。反対に、この温度より低く(低いか)時間が短いと所定の効果が発現しない場合がある。得られるポリイミドフィルムの厚さは特に限定されないが、特にTABテープやFPCの基材フィルムとして使用する場合には、フィルムの厚さは5〜250μmの範囲内であることが好ましく、10〜100μmの範囲内であることがより好ましい。
【0045】
<ポリイミドフィルムの物性>
本発明に係るポリイミドフィルムは、主に芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物から合成されるポリアミド酸(polyamic acid)をイミド化したポリイミドを使用して構成されるものである。この中、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物には4、4’−オキシジフタル酸二無水物及びピロメリット酸二無水物が含有され、上記芳香族ジアミンにはp−フェニレンジアミン及び屈曲性ジアミンが含有され、得られたポリイミドフィルムは次に示す3つの物性条件を満足するように組成比を設定した。
【0046】
条件A:50℃〜300℃における平均線膨脹係数が6〜30ppm/℃の範囲内である。条件B:弾性率が2.0GPa以上である。条件C:吸湿膨脹係数が13ppm以下である。
【0047】
上記ポリイミドフィルムは条件Aを満足することでFPCやFCCLに使われた場合にカールやねじりの発生が防止される。これに伴い、屈曲性が高いと同時に線膨脹係数もカールやねじりが生じない範囲内にあるポリイミドフィルムの提供が可能になる。また、上記ポリイミドフィルムの50℃〜300℃における平均線膨脹係数のより好ましい範囲は6ppm〜26ppm/℃の範囲内で、より好ましい範囲は6〜20ppm/℃の範囲内である。また、上記ポリイミドフィルムは条件Bを満足することでロールトウーロール(roll−to−roll)製造工程における寸法変化、更にはFPCやFCCLの使用時にフィルムのカールやねじりの発生が防止される。また、上記ポリイミドフィルムの弾性率のより好ましい範囲は3.0GPa〜8.0GPaの範囲内で、さらに好ましい範囲は3.0GPa〜6.0GPaの範囲内である。また、上記ポリイミドフィルムは条件Cを満足することで吸湿膨脹による銅箔との間の内部応力による寸法変化が防止される。また、上記ポリイミドフィルムの吸湿膨脹係数のより好ましい範囲は12ppm以下で、さらに好ましい範囲は10ppm以下である。本発明に係るポリイミドフィルムは、上記3つの条件を満足することでカールやねじりの発生しない熱膨張性と弾性率を兼備すると同時に、吸収・吸湿性を低下させることが可能で、吸湿による寸法変化を原因とするカールやねじりも発生しないポリイミドフィルムを提供することが可能になる。
【0048】
得られたフィルムに対する弾性率、熱膨張係数及び吸湿膨張係数の具体的な測定方法は次の通りである。
【0049】
(1)弾性率の測定
ポリイミドフィルムの弾性率の測定はASTM D882に準じて行われた。
【0050】
(2)熱膨張係数の測定
50℃〜300℃の平均線膨脹係数(CTE)の測定は、TA社のQ400を使用して行われた。サンプルサイズは幅4mm、長さ10mmに試片を裁断した後、5gの荷重を掛け、10℃/分で30℃から300℃まで昇温させた後、50℃〜100℃、100℃〜200℃及び200℃〜300℃における区間別熱膨張率から平均値で計算した。
【0051】
(3)吸湿膨脹係数(CHE)の測定
測定するフィルムを25℃、相対湿度50%の環境試験機に24時間放置して、フィルム寸法(L1)を測定した。次いで、そのフィルムを35℃、相対湿度90%の環境試験機に48時間放置してフィルム寸法(L2)を測定して、吸湿膨脹係数を下記の数式により算出した。
吸湿膨張係数(ppm)=(L1−L2)÷L1÷(90−50)×10
【0052】
<TABテープの製造>
本発明で製造されたポリイミドフィルムから、次のようにTABテープを製造して、カール量を測定した。
【0053】
ポリアミド樹脂(日本リルサン社製造プラタボンド Nipol 1072)50重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ユカシェルエポキシ社製造)エピコート828を20重量部、エピコート834を10重量部、エピコート5050を70重量部、4、4’−DDSを8重量部、Al(OH)を20重量部、KBM−403の分散剤などをトルエン/メチルエチルケトンの4/6混合溶液に25重量部になるようにして接着剤溶液を製造した。
【0054】
25μm厚さのポリイミドフィルム上に上記接着剤を乾燥させて厚さが15〜20μmになるように塗布し、150℃で2分間乾燥した。得られた接着剤付着ポリイミドフィルムを35mmの幅に切断した。26mm幅のPETフィルムを接着剤の塗布/乾燥されたポリイミドフィルムの中央部に接合させた後、90℃で2kg/cmの圧力で圧搾した。PETフィルムを剥離し、PETフィルムを剥離したポリイミドフィルムの面に、18μm厚さのRD銅箔をロール積層法により接合させ(エッチングのないTABテープ)165℃、2kg/cmの圧力で“銅付着テープ”を製作した。接着剤の硬化後、銅箔をエッチングにより完全に除去して“銅完全エッチングテープ”を得た。
【0055】
得られたそれぞれのテープに対して次のような方法によりカール量を測定した。
【0056】
カール量の測定
カール量の値は、上記した順に製造したTABテープを長さ40mm×幅35mmに切断して測定した。試験片を相対湿度60%、温度23℃で72時間放置した後平面上に静置して、四隅の浮き上がりの高さを測定した。カール量の値は四隅におけるデータの平均値で示した。
【0057】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
<実施例1>
N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)203.729gに4、4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)11.8962gと、p−フェニレンジアミン(PDA)4.3256gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。それに4、4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)15.511gをゆっくり添加し、1時間攪拌してODPAを完全に溶解させた。この溶液に3、3’、4、4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)6.4446gをゆっくり添加し1時間攪拌して完全に溶解させた後、ピロメリット酸二無水物(PMDA)6.5436gを更に添加して1時間攪拌し、23℃における溶液粘度2500ポアズ、固形分濃度18.0重量%のポリアミド酸溶液を得た。また、この時に添加された単量体成分のモル%を下記表1に示した。
【0059】
得られた溶液に溶液重量対比0.01〜10重量比の範囲で一定量の充填剤を分散し、攪拌しながら真空ポンプを利用して1時間脱泡した後、0℃に冷却させた。このポリアミド酸溶液100gに酢酸無水物11.4g、イソキノリン4.8g及びDMF33.8gにより構成される硬化剤を混合して、ステンレススチール材質の鋼板に流延塗布した。得られたポリアミド酸溶液が塗布されたアルミ箔を100℃で300秒間加熱してゲルフィルムを得た後、アルミ箔から剥離してフィルムの分離された縁部分をフレームに固定させた。固定されたフィルムを150℃、250℃、350℃、450℃で30秒〜240秒間加熱した後、遠赤外線オーブンで30秒〜180秒間さらに加熱処理した。
【0060】
このようにして得られた厚さ25μmのポリイミドフィルムを使用して上記方法に従ってTABテープを製造した。
【0061】
得られたポリイミドフィルムの弾性率、平均線膨脹係数、吸湿膨脹係数、及びTABテープのカール量を“銅付着テープ”と“銅完全エッチングテープ”に対して測定した。下記の表1及び表2に単量体成分のモル%及びポリイミドフィルム及びTABテープの特性を示した。
【0062】
<実施例2>
DMF198.5288gにMDA9.9135gとPDA5.407gを溶解してこの溶液を0℃に維持した。ここにODPA21.7154gをゆっくり添加し、1時間攪拌してODPAを完全に溶解させた。この溶液にPMDA6.5436gを更に添加して1時間攪拌し23℃における溶液粘度3100ポアズ、固形分濃度18.0重量%のポリアミド酸溶液を得た。また、この時に添加された単量体成分のモル%を下記表1に示した。上記ポリアミド酸溶液を使用したこと以外は上記実施例1と同様にして厚さ25μmのポリイミドフィルム及びTABテープを製造し、下記の表1及び表2に単量体成分のモル%及びポリイミドフィルム及びTABテープの特性を示した。
【0063】
また、以下で記述する<実施例3>〜<実施例15>は、各<実施例>毎に製造されたポリアミド酸の組成に差があるだけで<実施例1>と同様にして厚さ25μmのポリイミドフィルム及びTABテープを製造し、下記の表1及び表2に単量体成分のモル%及びポリイミドフィルム及びTABテープの特性を示した。
【0064】
<実施例3>
DMF199.2985gにMDA10.9gとPDA4.8663gを溶解してこの溶液を0℃に維持した。ここにODPA15.511gをゆっくり添加し、1時間攪拌してODPAを完全に溶解させた。この溶液にBTDA4.83345gをゆっくり添加し、1時間攪拌して完全に溶解させた後、PMDA7.6377gを更に添加し1時間攪拌して23℃における溶液粘度2700ポアズ、固形分濃度18.0重量%のポリアミド酸溶液を得た。下記の表1及び表2に単量体成分のモル%及びポリイミドフィルム及びTABテープの特性を示した。
【0065】
<実施例4>
DMF199.6231gにMDA9.9135gとPDA5.407gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。ここにODPA15.511gをゆっくり添加し、1時間攪拌してODPAを完全に溶解させた。この溶液にBTDA6.4446gをゆっくり添加し1時間攪拌して完全に溶解させた後、PMDA6.5436gを更に添加し1時間攪拌して23℃における溶液粘度2600ポアズ、固形分濃度18.0重量%のポリアミド酸溶液を得た。下記の表1及び表2に単量体成分のモル%及びポリイミドフィルム及びTABテープの特性を示した。
【0066】
<実施例5>
DMF204.8232gにMDA11.8962gとPDA4.3256gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。ここにODPA9.3066gをゆっくり添加し、1時間攪拌してODPAを完全に溶解させた。この溶液にBTDA12.8892gをゆっくり添加し、1時間攪拌して完全に溶解させた後、PMDA6.5436gを更に添加し1時間攪拌して23℃における溶液粘度2400ポアズ、固形分濃度18.0重量%のポリアミド酸溶液を得た。下記の表1及び表2に単量体成分のモル%及びポリイミドフィルム及びTABテープの特性を示した。
【0067】
<実施例6>
DMF207.4233gにMDA12.88755gとPDA3.7849gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。ここにODPA6.2044gをゆっくり添加し、1時間攪拌してODPAを完全に溶解させた。この溶液にBTDA16.1115gをゆっくり添加し1時間攪拌して完全に溶解させた後、PMDA6.5436gを更に添加し1時間攪拌して、23℃における溶液粘度2200ポアズ、固形分濃度18.0重量%のポリアミド酸溶液を得た。下記の表1及び表2に単量体成分のモル%及びポリイミドフィルム及びTABテープの特性を示した。
【0068】
<実施例7>
DMF198.1653gにMDA9.9135gとPDA5.407gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。ここにODPA9.3066gをゆっくり添加し、1時間攪拌してODPAを完全に溶解させた。この溶液にBTDA6.4446gをゆっくり添加し1時間攪拌して完全に溶解させた後、3、3’、4、4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)5.8844gをゆっくり添加し1時間攪拌してBPDAを完全に溶解させ、PMDA6.5436gを更に添加し1時間攪拌して23℃における溶液粘度2300ポアズ、固形分濃度18.0重量%のポリアミド酸溶液を得た。下記の表1及び表2に単量体成分のモル%及びポリイミドフィルム及びTABテープの特性を示した。
【0069】
<実施例8>
DMF185.6726gにMDA15.8616gとPDA2.1628gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。ここにODPA3.1022gをゆっくり添加し、1時間攪拌してODPAを完全に溶解させた。この溶液にPMDA19.6308gを更に添加し1時間攪拌して、23℃における溶液粘度2600ポアズ、固形分濃度18.0重量%のポリアミド酸溶液を得た。下記の表1及び表2に単量体成分のモル%及びポリイミドフィルム及びTABテープの特性を示した。
【0070】
<実施例9>
DMF194.7819gに4、4’−オキシジアニリン(ODA)18.0216gとPDA1.0814gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。ここにODPA6.2044gをゆっくり添加し、1時間攪拌してODPAを完全に溶解させた。この溶液にPMDA17.4496gを更に添加し1時間攪拌して、23℃における溶液粘度2600ポアズ、固形分濃度18.0重量%のポリアミド酸溶液を得た。下記の表1及び表2に単量体成分のモル%及びポリイミドフィルム及びTABテープの特性を示した。
【0071】
<実施例10>
DMF188.4884gにODA16.0192gとPDA2.1628gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。ここにODPA4.6533gをゆっくり添加し、1時間攪拌してODPAを完全に溶解させた。この溶液にPMDA18.5402gを更に添加し1時間攪拌して、23℃における溶液粘度2800ポアズ、固形分濃度18.0重量%のポリアミド酸溶液を得た。下記の表1及び表2に単量体成分のモル%及びポリイミドフィルム及びTABテープの特性を示した。
【0072】
<実施例11>
DMF184.2927gにODA15.018gとPDA2.7035gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。ここにODPA3.1022gをゆっくり添加し、1時間攪拌してODPAを完全に溶解させた。この溶液にPMDA19.6308gを更に添加し1時間攪拌して、23℃における溶液粘度2700ポアズ、固形分濃度18.0重量%のポリアミド酸溶液を得た。下記の表1及び表2に単量体成分のモル%及びポリイミドフィルム及びTABテープの特性を示した。
【0073】
<実施例12>
DMF203.7203gにODA14.0168gとPDA3.2442gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。ここにODPA15.511gをゆっくり添加し、1時間攪拌してODPAを完全に溶解させた。この溶液にBTDA3.2223gをゆっくり添加し1時間攪拌して完全に溶解させた後、PMDA8.7248gを更に添加し1時間攪拌して、23℃における溶液粘度2400ポアズ、固形分濃度18.0重量%のポリアミド酸溶液を得た。下記の表1及び表2に単量体成分のモル%及びポリイミドフィルム及びTABテープの特性を示した。
【0074】
<実施例13>
DMF184.2927gにODA12.0144gとPDA4.3256gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。ここにODPA7.7555gをゆっくり添加し、1時間攪拌してODPAを完全に溶解させた。この溶液にPMDA16.359gを更に添加し1時間攪拌して、23℃における溶液粘度2500ポアズ、固形分濃度18.0重量%のポリアミド酸溶液を得た。下記の表1及び表2に単量体成分のモル%及びポリイミドフィルム及びTABテープの特性を示した。
【0075】
<実施例14>
DMF191.6805gにODA10.012gとPDA5.407gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。ここにODPA9.3066gをゆっくり添加し、1時間攪拌してODPAを完全に溶解させた。この溶液にBTDA6.4446gをゆっくり添加し1時間攪拌して完全に溶解させた後、PMDA10.906gを更に添加し1時間攪拌して、23℃における溶液粘度2200ポアズ、固形分濃度18.0重量%のポリアミド酸溶液を得た。下記の表1及び表2に単量体成分のモル%及びポリイミドフィルム及びTABテープの特性を示した。
【0076】
<実施例15>
DMF182.1949gにODA8.0096gとPDA6.4884gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。ここにODPA12.4088gをゆっくり添加し、1時間攪拌してODPAを完全に溶解させた。この溶液にPMDA13.0872gを更に添加し1時間攪拌して、23℃における溶液粘度2100ポアズ、固形分濃度18.0重量%のポリアミド酸溶液を得た。下記の表1及び表2に単量体成分のモル%及びポリイミドフィルム及びTABテープの特性を示した。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
上記表2に示したように、実施例1〜15により製造されて評価されたポリイミドフィルムは、50℃〜300℃における平均線膨脹係数が6ppm/℃以上、30ppm/℃以下で、弾性率が2.0GPa以上、吸湿膨脹係数が13ppm以下の優れた物性を示した。また、“銅付着テープ”におけるカール量は、全ての実施例で−0.5mm以下で、“完全エッチングテープ”におけるカール量も、全ての実施例で2.0mm以下であって、加工及び実装工程におけるカールから由来する欠点を解消できる値を示した。
【0080】
<比較例1>
DMF407.5gにODA21.48g、PDA11.06gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。ここにBPDA31.56gをゆっくり添加し2時間攪拌してBPDAを完全に溶解させた。この溶液にPMDA14.04gをゆっくり添加し1時間攪拌した後、BTDA13.83gを更に添加し1時間攪拌して、23℃における溶液粘度2800ポアズ、固形分濃度18.5重量%のポリアミド酸溶液を得た。
【0081】
このポリアミド酸溶液を使用した以外は実施例1と同様にして厚さ25μmのポリイミドフィルム及びTABテープを製造し、下記の表3に単量体成分のモル%及びポリイミドフィルム及びTABテープの特性を示した。
【0082】
また、本発明で記述する<比較例2>〜<比較例6>は、各<比較例>毎に製造されたポリアミド酸の組成に差があるだけで<実施例1>と同様にして厚さ25μmのポリイミドフィルム及びTABテープを製造して、下記表3に単量体成分のモル%及びポリイミドフィルム及びTABテープの特性を示した。
【0083】
<比較例2>
DMF407.5gにODA19.20g、PDA10.37gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。ここにBPDA28.21gをゆっくり添加し2時間攪拌してBPDAを完全に溶解させた。この溶液にTMHQ26.36gをゆっくり添加し1時間攪拌した後、PMDA8.36gを更に添加し1時間攪拌して、23℃における溶液粘度2800ポアズ、固形分濃度18.5重量%のポリアミド酸溶液を得た。下記表3に単量体成分のモル%及びポリイミドフィルム及びTABテープの特性を示した。
【0084】
<比較例3>
DMF407.5gにODA19.92gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。ここにPMDA16.49gをゆっくり添加し1時間攪拌してPMDAを完全に溶解させた。この溶液にPDA10.76gを溶解させた後17.57gのBPDAをゆっくり添加し2時間攪拌してBPDAを完全に溶解させた。また、TMHQ26.45gをゆっくり添加して1時間攪拌し、PMDA1.30gを更に添加し1時間攪拌して、23℃における溶液粘度3100ポアズ、固形分濃度18.5重量%のポリアミド酸溶液を得た。下記表3に単量体成分のモル%及びポリイミドフィルム及びTABテープの特性を示した。
【0085】
<比較例4>
DMF407.5gにODA44.27gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。ここにPMDA48.23gをゆっくり添加し2時間攪拌してPMDAを完全に溶解させて、23℃における溶液粘度2800ポアズ、固形分濃度18.5重量%のポリアミド酸溶液を得た。下記表3に単量体成分のモル%及びポリイミドフィルム及びTABテープの特性を示した。
【0086】
<比較例5>
DMF407.5gにODA24.87g、PDA13.43gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。ここにPMDA54.19gをゆっくり添加し2時間攪拌してPMDAを完全に溶解させ、23℃における溶液粘度2900ポアズ、固形分濃度18.5重量%のポリアミド酸溶液を得た。下記表3に単量体成分のモル%及びポリイミドフィルム及びTABテープの特性を示した。
【0087】
<比較例6>
DMF489gにODA26.19g、PDA14.14gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。ここにBTDA42.14gをゆっくり添加し1時間攪拌した後、PMDA28.53gをゆっくり更に添加して2時間攪拌してPMDAを完全に溶解させ、23℃における溶液粘度3000ポアズ、固形分濃度18.5重量%のポリアミド酸溶液を得た。下記表3に単量体成分のモル%及びポリイミドフィルム及びTABテープの特性を示した。
【0088】
【表3】

【0089】
上記表3に示したように比較例1〜6で製造されて評価されたポリイミドフィルムは、100℃〜200℃における平均線膨脹係数、弾性率、吸湿膨脹係数中の1項目以上が本発明に係るポリイミドフィルムよりも明らかに物性が低下した。また、“銅付着テープ”におけるカール量は、比較例5、6において−0.55mm以下となっているが、吸湿膨張係数(CHE)の物性が13ppmを超過する値を示した。そして、“完全エッチングテープ”におけるカール量は,比較例4において3mm以上であるので、本発明に係るポリイミドフィルムに比べて物性が低下した。
【0090】
本発明に係るポリイミドフィルムは、以上のように、主に芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物から合成されるポリアミド酸を使用して得られるポリイミドフィルムであって、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物として4、4’−オキシジフタル酸二無水物を包含し、上記芳香族ジアミンとしてp−フェニレンジアミンを包含すると同時に50℃〜300℃における平均線膨脹係数が6ppm/℃以上、30ppm/℃以下で、弾性率が2.0GPa以上であると同時に吸湿膨脹係数が13ppm以下である。従って、カールやねじりが発生しない線膨脹係数及び弾性率を兼備すると同時に、吸湿による寸法変化を原因とするカールやねじりも発生しないポリイミドフィルムを提供することが可能になる。つまり、様々な電子機器で使われるFPCやTABテープへの加工工程で実装不良の原因であったカールやねじりの発生を防止できる効果がある。
【0091】
発明の詳細な説明において行われた具体的な実施形態または実施例はあくまでも本発明の技術内容を明確にするためのもので、そのような具体例に限定して狭意に解析されるものではなく、本発明の精神及び下記の特許請求事項の範囲内で多様に変更して実施することができる。
【発明の効果】
【0092】
以上で詳細に説明したように、本発明に従って4、4’−オキシジフタル酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、p−フェニレンジアミン及び屈曲性ジアミンを使用して得られるポリイミドフィルムをTABテープやFPCに使用する基材フィルムとして使用する場合、熱膨張性、吸収/吸湿性及び弾性率の調和が十分に得られ、カールやねじりの発生をより有効に抑制し得るポリイミドフィルム及びその製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸無水物及びジアミン化合物を反応させて得られるポリアミド酸であって、前記酸無水物は、4、4’−オキシジフタル酸二無水物と、ピロメリット酸二無水物及び他の芳香族テトラカルボン酸二無水物から選択された1種以上の酸無水物との混合物を含み、前記ジアミン化合物は、p−フェニレンジアミンと、HN−C結合同士間にエーテル結合、メチレン結合等を有するジアミン化合物、及びHN−C結合同士が一直線に並ばない構造を有するジアミン化合物から選択される1種以上のジアミン化合物とを含み、
50〜300℃における平均線膨脹係数が6〜30ppm、弾性率が2.0GPa以上、吸湿膨脹係数が13ppm以下であるポリイミドフィルム。
【請求項2】
4、4’−オキシジフタル酸二無水物の含有量は、酸無水物全量の10〜80モル%である請求項1記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
4、4’−オキシジフタル酸二無水物の含有量は、酸無水物全量の20〜60モル%である請求項1記載のポリイミドフィルム。
【請求項4】
ピロメリット酸二無水物の含有量は、酸無水物全量の30〜90モル%である請求項1記載のポリイミドフィルム。
【請求項5】
前記ジアミン化合物は、p−フェニレンジアミン、及び4、4’−ジアミノジフェニルメタンを含む請求項1記載のポリイミドフィルム。
【請求項6】
前記ジアミン化合物は、p−フェニレンジアミン、及び4、4’−オキシジアニリンを含む請求項1記載のポリイミドフィルム。
【請求項7】
p−フェニレンジアミンは、ジアミン化合物全量の10〜70モル%である請求項1、5又は6記載のポリイミドフィルム。
【請求項8】
p−フェニレンジアミンは、ジアミン化合物全量の20〜60モル%である請求項1、5又は6記載のポリイミドフィルム。
【請求項9】
請求項1記載のポリイミドフィルム上に接着剤層及び保護層を備えるTABテープ。
【請求項10】
請求項1記載のポリイミドフィルムの少なくとも一面に積層された金属導電層を備えるフレキシブルプリント回路。

【公表番号】特表2009−518500(P2009−518500A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544247(P2008−544247)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【国際出願番号】PCT/KR2006/005195
【国際公開番号】WO2007/066948
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(597114649)コーロン インダストリーズ インク (99)
【Fターム(参考)】