説明

ポリイミド化合物およびその製法

【課題】単独での高屈折率を有する新規なポリイミド化合物および製法の提供。
【解決手段】硫黄連結基あるいは硫黄連結基と2価の芳香族基を含有してなる芳香族ジアミンと、硫黄連結基と2価の芳香族基を含有するか、あるいは硫黄連結基と2価の芳香族基とチオカルボニル連結基を含有する芳香族酸2無水物を等モル反応させることによって得るポリイミド前駆体をイミド化することで得るポリイミド化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム等の電子材料等に利用される高屈折率を有する新規なポリイミド化合物およびその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、光学分野、電子分野において、プラスチック材料が用いられており、そのプラスチック材料の一つとして、ポリイミド化合物が汎用されている。このような分野におけるポリイミド化合物には、高い屈折率を有することが要求されている。
【0003】
そして、上記ポリイミド化合物の屈折率を上げる目的で、例えば、酸化チタン等の高屈折率金属酸化物をナノサイズで樹脂中に分散させる方法が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−354853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1において、ポリイミド化合物そのものの屈折率が低いと、全体の屈折率を高くするために、分散させる金属酸化物の配合量を多くする必要が生じ、結果、樹脂組成物が脆くなり、耐久性が損なわれる等の問題が生じる。
【0005】
一方、上記のような高屈折率の金属酸化物を添加しない場合、すなわち、従来のポリイミド化合物単独では、通常、屈折率は1.7未満であり、要求される高屈折率には不充分な値であった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、単独での高屈折率を有する新規なポリイミド化合物およびその製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、下記の一般式(1)で表される繰り返し構造単位を有するポリイミド化合物を第1の要旨とする。
【化1】

【0008】
また、本発明は、上記ポリイミド化合物の製法であって、下記の一般式(2)で表される酸二無水物と、下記の一般式(3)で表されるジアミノ化合物とを、等モルにて反応させることによりポリイミド前躯体を作製し、ついで、このポリイミド前躯体をイミド化するポリイミド化合物の製法を第2の要旨とする。
【化2】

【化3】

【0009】
本発明者らは、高屈折率を有するポリイミド化合物を求め、鋭意検討を重ねた。そして、特殊な構造を有する様々な化合物を合成し、実験を重ねた結果、上記一般式(1)で表される繰り返し構造単位を有する新規なポリイミド化合物を用いると、上記のような所期の目的が達成されることを突き止め、本発明に到達した。すなわち、上記新規なポリイミド化合物は、上記特殊な骨格構造を有しており、これに基づき、高屈折率のものが得られることを見出したのである。そして、上記新規なポリイミド化合物は、前記一般式(2)で表される酸二無水物と、前記一般式(3)で表されるジアミノ化合物を用い、これらを反応させることにより目的とする上記新規なポリイミド化合物を合成することができるようになることも突き止めた。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明は、前記一般式(1)で表される繰り返し構造単位を有する特殊なポリイミド化合物である。この化合物は、特殊な骨格構造を有するため、このポリイミド化合物単独で高い屈折率を有することから、従来のように、屈折率を上げるために、金属酸化物等の添加物を配合する必要がなく、結果、耐久性が損なわれるという問題も生じない。したがって、本発明のポリイミド化合物は、高屈折率を備えることから、例えば、液晶ディスプレイ基材、光学フィルム、マイクロレンズ等の各種光学材料として有用である。
【0011】
さらに、前記一般式(1)中のYが、特定の2価の芳香族基であると、より一層高い屈折率を備えるようになる。
【0012】
そして、本発明のポリイミド化合物は、前記特定の酸二無水物と、前記特定のジアミノ化合物を用い、これらを反応させてポリイミド前躯体を作製し、このポリイミド前躯体をイミド化することにより、上記特殊な骨格構造となる繰り返し構造単位を有するポリイミド化合物を合成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
本発明のポリイミド化合物は、下記の一般式(1)で表される繰り返し構造単位を有する化合物である。なお、一般式(1)において、Xは下記の構造式(α)または構造式(β)で表される2価の有機基であるが、なかでも、構造式(α)で表される2価の有機基が好ましい。
【0015】
【化4】

【0016】
また、一般式(1)において、Rは−S−または−S−Y−S−であり、かつYは2価の芳香族基であるが、例えば、上記2価の芳香族基としては、その構成に、硫黄原子,酸素原子を含む、芳香族環を有する2価の芳香族基があげられる。
【0017】
上記一般式(1)中のYとしては、具体的には、下記に示す2価の芳香族基があげられる。
【0018】
【化5】

【0019】
なかでも、上記Yとしては、後述の一般式(3)で表されるジアミノ化合物に関連し、高屈折率,ポリイミドの強度という観点から、つぎに示す2価の芳香族基が好適なものとしてあげられる。
【0020】
【化6】

【0021】
本発明の、上記一般式(1)で表される繰り返し構造単位を有するポリイミド化合物は、下記の一般式(2)で表される酸二無水物と、下記の一般式(3)で表されるジアミノ化合物を合成原料とし、これらを反応させポリイミド前躯体を作製し、得られたこのポリイミド前躯体をイミド化することにより製造することができる。
【0022】
【化7】

【0023】
【化8】

【0024】
上記一般式(2)で表される酸二無水物としては、例えば、1,1′−チオビス[4−〔(3,4−ジカルボキシフェニル)チオ〕ベンゼン]二無水物、4,4′−(チオカルボキシリックジベンゼン)−ジベンゾエート−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物等があげられる。
【0025】
そして、上記1,1′−チオビス[4−〔(3,4−ジカルボキシフェニル)チオ〕ベンゼン]二無水物を一例にすると、つぎのようにして作製することができる。すなわち、4,4′−チオジベンゼンチオールと、4−ブロモ無水フタル酸、酸化銅(I)およびジメチルイミダゾリンを仕込み、不活性ガス気流下、170℃の温度条件下で反応を行う。反応終了後、室温に冷却することにより不純物を析出させ、上記不純物を濾過する。得られる濾液にアセトニトリルを滴下して、1,1′−チオビス[4−〔(3,4−ジカルボキシフェニル)チオ〕ベンゼン]二無水物を析出させ、無水酢酸中で110℃で1時間加熱する。つぎに、これを室温まで冷却し、濾過することにより、目的とする1,1′−チオビス[4−〔(3,4−ジカルボキシフェニル)チオ〕ベンゼン]二無水物を作製することができる。なお、本発明において、室温とは、一般的に、25±10℃程度の温度をいう。
【0026】
上記一般式(3)で表されるジアミノ化合物としては、例えば、4,4′−ジチオアニリン(ASD)、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェニルチオ)ベンゼン、1,4−ビス[(4−アミノフェニルチオ)フェニル]スルホン、4,4′−ビス(4−アミノフェニルチオフェニル)−スルフィド、4,4′−ビス(3−アミノフェニルチオフェニル)−スルフィド等があげられる。
【0027】
そして、上記1,4−ビス(4−アミノフェニルチオ)ベンゼンを例にすると、つぎのようにして作製することができる。すなわち、p−アミノチオフェノールと、1,4−ジブロモベンゼン、炭酸カリウムとN−メチルピロリドンを加え、150〜190℃の温度条件下で3〜7時間反応を行う。ついで、室温に冷却した後、反応液を水中に添加して、析出した固体を吸引濾過する。濾過した固体をメタノールで洗浄することにより目的とする1,4−ビス(4−アミノフェニルチオ)ベンゼンを作製することができる。
【0028】
また、上記4,4′−ビス(4−アミノフェニルチオフェニル)−スルフィドを例にすると、つぎのようにして作製することができる。すなわち、4,4′−チオジベンゼンチオールを、水素化ナトリウムをN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に懸濁した溶液に0℃で攪拌しながら加える。さらに、4−クロロニトロベンゼンを加え、150℃で16時間攪拌し、ついで室温まで冷却した後、1リットルの水に反応溶液を加え、攪拌する。得られた固体を、水およびアルコールにて洗浄した後、トルエンにて再結晶を行う。
【0029】
再結晶により得られた固体を、2−プロパノールと1,4−ジオキサンの混合溶剤に加え、窒素気流下、攪拌しながら60℃に加熱する。これに、パラジウムカーボン等の触媒を加えた後、ヒドラジン一水和物を滴下し、泡が出なくなるのを確認して上記触媒を加える。ついで、110℃に昇温して1時間反応させた後、触媒を除き、濾液を濃縮する。これに水を加え、攪拌して析出した固体を集め、水およびアルコールにて洗浄した後、トルエンにて再結晶を行い、目的とする、4,4′−ビス(4−アミノフェニルチオフェニル)−スルフィドを作製することができる。
【0030】
上記一般式(2)で表される酸二無水物と、上記一般式(3)で表されるジアミノ化合物の配合割合は、等モルに設定される。
【0031】
また、上記一般式(2)で表される酸二無水物と、上記一般式(3)で表されるジアミノ化合物とを合成原料とし、これらを反応させポリイミド前躯体を作製する際の反応温度条件としては、20〜80℃の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは20〜40℃の範囲である。
【0032】
そして、上記得られたポリイミド前躯体をイミド化する際のイミド化方法としては、例えば、加熱によるイミド化等があげられ、具体的には、150〜400℃の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは200〜300℃の範囲である。
【0033】
さらに、本発明のポリイミド化合物を製造する際には、通常、反応溶媒が用いられる。この反応溶媒は、特に限定することはないが、例えば、芳香族炭化水素(トルエン、キシレン等)、エーテル(テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル等)、非プロトン性極性溶媒(N−メチルピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)等が好適に用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0034】
このようにして得られる本発明のポリイミド化合物は、例えば、厚み約30μmのフィルムにおいて、波長589nmでの屈折率が1.70を超えるものが得られ、特に好適には屈折率が1.73以上の高屈折率のものが得られる。
【0035】
そして、このようにして得られる本発明のポリイミド化合物は、光学フィルムや光学レンズ等の各種光学部品の形成材料として、有効に利用することができる。
【0036】
つぎに、本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0037】
まず、各種酸二無水物を、以下のようにして合成した。
【0038】
〔合成1〕
〔1,1′−チオビス[4−〔(3,4−ジカルボキシフェニル)チオ〕ベンゼン]二無水物の合成〕
攪拌装置、冷却器および温度計を備え付けた500ml容積の四つ口フラスコに、4,4′−チオジベンゼンチオール12.5g(0.05モル)と、4−ブロモ無水フタル酸23.1g(0.10モル)、酸化銅(I)11.9g(0.05モル)およびジメチルイミダゾリン75gを仕込み、窒素ガスを緩やかに通じながら、170℃の温度条件下で6時間反応を行った。反応終了後、反応液を室温に冷却することにより不純物を析出させた。ついで、析出した不純物を濾過して除去して濾液を得た。得られた濾液にアセトニトリル300gを滴下して、1,1′−チオビス[4−〔(3,4−ジカルボキシフェニル)チオ〕ベンゼン]二無水物を析出させた。析出した固体を濾取し、20mlの無水酢酸中で110℃で1時間加熱した。つぎに、これを室温まで冷却して、濾過し、1,1′−チオビス[4−〔(3,4−ジカルボキシフェニル)チオ〕ベンゼン]二無水物を乾燥させることにより、下記の構造式(A)で表される1,1′−チオビス[4−〔(3,4−ジカルボキシフェニル)チオ〕ベンゼン]二無水物である黄色固体18.4g(0.34モル)を得た。なお、上記得られた黄色固体の確認は、NMR(ブルカー社製、AVANCE II300)を用いて行なった。
【0039】
【化9】

【0040】
〔合成2〕
〔4,4′−(チオカルボキシリックジベンゼン)−ジベンゾエート−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物の合成〕
合成例1と同様の製造装置を用い、無水トリメリット酸クロリド8.42g(0.02モル)をトルエン30ml中、窒素気流下、70℃で攪拌溶解した。ついで、4,4′−チオジベンゼンチオール2.5g(0.01モル)、ピリジン1.6g(0.02モル)をトルエン20mlに溶解した液を5分間かけて、反応溶液に滴下した。そして、110℃に昇温し、2時間攪拌した後、吸引濾過にて無水トリメリット酸クロリドとピリジンの塩酸塩を除去し、濾液を濃縮して得られた固形分に無水酢酸10mlを加え、130℃で1時間加熱した。ついで、0℃まで濃縮して得られた固体を吸引濾過にて集め、乾燥することにより、目的とする下記の構造式(B)で表される4,4′−(チオカルボキシリックジベンゼン)−ジベンゾエート−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物5.3g(0.09モル)を得た。なお、上記得られた固体の確認は、合成例1と同様にして行なった。
【0041】
【化10】

【0042】
つぎに、各種ジアミノ化合物を、以下のようにして合成した。
【0043】
〔合成例3〕
〔4,4′−ビス(4−アミノフェニルチオフェニル)−スルフィドの合成〕
合成例1と同様の製造装置を用い、4,4′−チオジベンゼンチオール25g(0.1モル)を、水素化ナトリウム(60%濃度)8g(0.12モル)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)200mlに懸濁した溶液に0℃で攪拌しながら加えた。さらに、4−クロロニトロベンゼン33g(0.21モル)を加え、150℃で16時間攪拌した。ついで、室温まで冷却した後、1リットルの水に反応溶液を加え、攪拌した。得られた固体を吸引濾過にて集め、水1リットル、メタノール500mlにて洗浄した後、トルエンにて再結晶を行い、48gの黄色の固体を得た。
【0044】
得られた固体9.84g(0.02モル)を2−プロパノール70mlと1,4−ジオキサン70mlの混合溶剤に加え、窒素気流下、攪拌しながら60℃に加熱した。0.15gのパラジウムカーボン(触媒)を加えた後、9g(0.1モル)のヒドラジン一水和物を30分かけて滴下した。泡が出なくなるのを確認して0.1gずつ上記触媒を足していき、最終的に1gの触媒を使用した。ついで、110℃に昇温して1時間反応させた後、吸引濾過にて触媒を除き、濾液を濃縮した。これに水を500ml加え、攪拌して析出した固体を集め、水300ml、メタノール300mlにて洗浄した後、トルエンにて再結晶を行い、目的とする、下記の構造式(C)で表される4,4′−ビス(4−アミノフェニルチオフェニル)−スルフィド8g(0.019モル)を得た。なお、上記得られた固体の確認は、合成例1と同様にして行なった。
【0045】
【化11】

【0046】
〔合成例4〕
〔4,4′−ビス(3−アミノフェニルチオフェニル)−スルフィドの合成〕
合成例1と同様の製造装置を用い、4,4′−チオジベンゼンチオール10.2g(0.04モル)を、水素化ナトリウム(60%濃度)3.72g(0.09モル)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100mlに懸濁した溶液に0℃で攪拌しながら加えた。そして、酸化銅(I)6.28g(0.044モル)を加え、140℃で1時間攪拌した。さらに、3−ブロモニトロベンゼン16.2g(0.08モル)を加え、150℃で16時間攪拌した。ついで、室温まで冷却した後、1リットルの水に反応溶液を加え、攪拌した。得られた固体を吸引濾過にて集め、水1リットル、メタノール500mlにて洗浄した後、トルエンにて再結晶を行い、16gの黄色の固体を得た。
【0047】
得られた固体9.84g(0.02モル)を2−プロパノール70mlと1,4−ジオキサン70mlの混合溶剤に加え、窒素気流下、濃塩酸21mlを加えた。そして、攪拌しながら60℃に加熱した。0.15gのパラジウムカーボン(触媒)を加えた後、亜鉛8g(0.12モル)を、反応溶液の温度が60℃を超えないようにゆっくりと加えた。ついで、これにアンモニア水を加え、pHを7に調整した後、水500mlを加え、攪拌して析出した固体を集め、水300ml、メタノール300mlにて洗浄した後、トルエンにて再結晶を行い、目的とする、下記の構造式(D)で表される4,4′−ビス(3−アミノフェニルチオフェニル)−スルフィド6.3g(0.015モル)を得た。なお、上記得られた固体の確認は、合成例1と同様にして行なった。
【0048】
【化12】

【実施例1】
【0049】
攪拌機、還流冷却器および窒素導入管を備えた容器に、4,4′−ジチオアニリン(ASD)1.08g(5ミリモル)を、N,N−ジメチルアセトアミド7.97gを加え、このジアミノ化合物が溶解するまで攪拌を行なった。ついで、合成例1にて合成した1,1′−チオビス[4−〔(3,4−ジカルボキシフェニル)チオ〕ベンゼン]二無水物2.71g(5ミリモル)を加え、室温(25℃)にて16時間攪拌し、ポリアミド酸溶液を得た。この溶液をガラス板上にキャストし、100℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間、250℃で1時間乾燥して、熱イミド化を行い、膜厚約30μmの、下記の構造式(1a)で表される繰り返し構造単位を有するポリイミドフィルムを得た。乾燥して得られたポリイミドフィルムは目視において淡黄色であり、アッベ屈折率計(アタゴ社製)にて測定した屈折率は589nmにおいて1.756であった。なお、上記繰り返し構造単位の確認は、NMR(ブルカー社製、AVANCE II300)を用いて行なった。
【0050】
【化13】

【実施例2】
【0051】
実施例1と同様の合成装置を用い、ASDに代えて、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン1.24g(5ミリモル)を用いた。それ以外は実施例1と同じ条件で反応を行ない、下記の構造式(1b)で表される繰り返し構造単位を有するポリイミドフィルムを得た。乾燥して得られたポリイミドフィルムは目視において透明であり、アッベ屈折率計(アタゴ社製)にて測定した屈折率は589nmにおいて1.731であった。なお、上記繰り返し構造単位の確認は実施例1と同様にして行なった。
【0052】
【化14】

【実施例3】
【0053】
実施例1と同様の合成装置を用い、ASDに代えて、1,4−ビス(4−アミノフェニルチオ)ベンゼン2.32g(5ミリモル)を用いた。それ以外は実施例1と同じ条件で反応を行ない、下記の構造式(1c)で表される繰り返し構造単位を有するポリイミドフィルムを得た。乾燥して得られたポリイミドフィルムは目視において透明であり、アッベ屈折率計(アタゴ社製)にて測定した屈折率は589nmにおいて1.758と非常に高い値であった。なお、上記繰り返し構造単位の確認は実施例1と同様にして行なった。
【0054】
【化15】

【実施例4】
【0055】
実施例1と同様の合成装置を用い、ASDに代えて、1,4−ビス[(4−アミノフェニルチオ)フェニル]スルホン1.62g(5ミリモル)を用いた。それ以外は実施例1と同じ条件で反応を行ない、下記の構造式(1d)で表される繰り返し構造単位を有するポリイミドフィルムを得た。乾燥して得られたポリイミドフィルムは目視において透明であり、アッベ屈折率計(アタゴ社製)にて測定した屈折率は589nmにおいて1.745であった。なお、上記繰り返し構造単位の確認は実施例1と同様にして行なった。
【0056】
【化16】

【実施例5】
【0057】
実施例1と同様の合成装置を用い、ASDに代えて、合成例3にて合成した4,4′−ビス(4−アミノフェニルチオフェニル)−スルフィド2.16g(5ミリモル)を用いた。それ以外は実施例1と同じ条件で反応を行ない、下記の構造式(1e)で表される繰り返し構造単位を有するポリイミドフィルムを得た。乾燥して得られたポリイミドフィルムは目視において淡黄色であり、アッベ屈折率計(アタゴ社製)にて測定した屈折率は589nmにおいて1.761と非常に高い値であった。なお、上記繰り返し構造単位の確認は実施例1と同様にして行なった。
【0058】
【化17】

【実施例6】
【0059】
実施例1と同様の合成装置を用い、ASDに代えて、合成例4で合成した4,4′−ビス(3−アミノフェニルチオフェニル)−スルフィド2.16g(5ミリモル)を用いた。それ以外は実施例1と同じ条件で反応を行ない、下記の構造式(1f)で表される繰り返し構造単位を有するポリイミドフィルムを得た。乾燥して得られたポリイミドフィルムは目視において淡黄色であり、アッベ屈折率計(アタゴ社製)にて測定した屈折率は589nmにおいて1.758と非常に高い値であった。なお、上記繰り返し構造単位の確認は実施例1と同様にして行なった。
【0060】
【化18】

【実施例7】
【0061】
実施例1と同様の合成装置を用い、1,4−ビス(4−アミノフェニルチオ)ベンゼン0.81g(2.5ミリモル)に、N,N−ジメチルアセトアミド4.18gを加え、このジアミノ化合物が溶解するまで攪拌を行なった。ついで、合成例2にて合成した4,4′−(チオカルボキシリックジベンゼン)−ジベンゾエート−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物1.26g(2.5ミリモル)を加え、室温(25℃)にて16時間攪拌し、ポリアミド酸溶液を得た。この溶液をガラス板上にキャストし、100℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間、250℃で1時間乾燥して、熱イミド化を行い、膜厚約30μmの、下記の構造式(1g)で表される繰り返し構造単位を有するポリイミドフィルムを得た。乾燥して得られたポリイミドフィルムは目視において淡黄色であり、アッベ屈折率計(アタゴ社製)にて測定した屈折率は589nmにおいて1.731であった。なお、上記繰り返し構造単位の確認は実施例1と同様にして行なった。
【0062】
【化19】

【実施例8】
【0063】
実施例1と同様の合成装置を用い、1,4−ビス(4−アミノフェニルチオ)ベンゼンに代えて、合成例3で合成した4,4′−ビス(4−アミノフェニルチオフェニル)−スルフィド1.08g(2.5ミリモル)を用いた。それ以外は実施例7と同じ条件で反応を行ない、下記の構造式(1h)で表される繰り返し構造単位を有するポリイミドフィルムを得た。乾燥して得られたポリイミドフィルムは目視において淡黄色であり、アッベ屈折率計(アタゴ社製)にて測定した屈折率は589nmにおいて1.738であった。なお、上記繰り返し構造単位の確認は実施例1と同様にして行なった。
【0064】
【化20】

【0065】
以上のように、実施例品である特殊な繰り返し構造単位を有するポリイミドフィルムはいずれも屈折率が1.730を超える高い値であり、これら特殊な骨格構造を有するポリイミド化合物単独で高い屈折率を有するものが得られたことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のポリイミド化合物は、各種光学材料、例えば、液晶ディスプレイ基材等の光学フィルム、マイクロレンズ等の光学レンズ等各種形成材料等に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表される繰り返し構造単位を有するポリイミド化合物。
【化1】

【請求項2】
上記一般式(1)中のYが、下記に示す2価の芳香族基のいずれか一つである請求項1記載のポリイミド化合物。
【化2】

【請求項3】
請求項1または2記載のポリイミド化合物の製法であって、下記の一般式(2)で表される酸二無水物と、下記の一般式(3)で表されるジアミノ化合物とを、等モルにて反応させることによりポリイミド前躯体を作製し、ついで、このポリイミド前躯体をイミド化することを特徴とするポリイミド化合物の製法。
【化3】

【化4】

【請求項4】
上記一般式(3)中のYが、下記に示す2価の芳香族基のいずれか一つである請求項3記載のポリイミド化合物の製法。
【化5】


【公開番号】特開2007−332185(P2007−332185A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162525(P2006−162525)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】