説明

ポリイミド樹脂成形体の製造方法およびポリアミック酸フィルム

【課題】寸法安定性が高く、厚みの小さいポリイミド樹脂の成形体を容易に製造することができる方法を提供する。
【解決手段】引張弾性率が900〜1500MPa、かつ伸びが30〜60%のポリアミック酸フィルムを、成形型にセットし、イミド化する、ポリイミド樹脂成形体の製造方法である。当該ポリアミック酸フィルムは、支持体上にポリアミック酸の溶液を塗布し、残存溶媒量が5〜18質量%となるまで乾燥したものであることが好ましい。当該製造方法によって得られるポリイミド樹脂成形体の好適な厚さは、10〜500μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド樹脂成形体の製造方法に関する。また、本発明は、ポリイミド樹脂成形体の製造に専ら用いられるポリアミック酸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリイミド樹脂材料は、その高い機械的強度、耐熱性等の理由から、宇宙航空分野から電気電子材料分野まで幅広い分野において活用されている。このポリイミド樹脂材料は、その用途に応じて、様々な形状、例えば、筒型、コップ型、傘型、ドーム型、波型等の形状に成形加工される。
【0003】
ポリイミド樹脂成形体の製造方法としては、例えば、単純には、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸の溶液を直接成形型に塗布し、イミド化する方法がある。当該製造方法によれば、形状追従性が良い薄手の成形体を得ることができ、また、破れおよびシワが発生し難い。しかし、成形型の曲率半径の小さい部分や角部分では、膜厚が薄くなったり、厚くなったりすることがあり、特に複雑な形状において、寸法安定性に欠けるという問題があった。
【0004】
一方で、特許文献1は、結晶性ポリイミドと非晶性ポリイミドの2層構造の粉末を、予備加熱後高温高圧成形することで、寸法安定性に優れたポリイミド樹脂成形体を製造することを提案している。しかしこの方法は、工程が煩雑であり、厚みの小さい成形体を得ることが困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4010594号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題点に鑑み、本発明は、寸法安定性が高く、厚みの小さいポリイミド樹脂の成形体を容易に製造することができる方法を提供することを目的とする。また、寸法安定性が高く、厚みの小さいポリイミド樹脂の成形体を容易に製造できる、成形体原料となるポリアミック酸フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成した本発明は、引張弾性率が900〜1500MPa、かつ伸びが30〜60%のポリアミック酸フィルムを、成形型にセットし、イミド化する、ポリイミド樹脂成形体の製造方法である。当該ポリアミック酸フィルムは、支持体上にポリアミック酸の溶液を塗布し、残存溶媒量が5〜18質量%となるまで乾燥したものであることが好ましい。当該製造方法によって得られるポリイミド樹脂成形体の好適な厚さは、10〜500μmである。
【0008】
本発明は別の側面から、引張弾性率が900〜1500MPa、かつ伸びが30〜60%である、ポリイミド樹脂成形体製造用ポリアミック酸フィルムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、厚さが小さく均一なフィルムを成形材料とすることができるため、寸法安定性が高く、厚さの小さいポリイミド樹脂の成形体を容易に製造することができる。得られるポリイミド樹脂成形体は、ポリイミド樹脂特有の高い機械的強度、耐熱性等を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明では、引張弾性率が900〜1500MPa、かつ伸びが30〜60%のポリアミック酸フィルムを用いる。引張弾性率が900MPa未満の場合には、フィルムが脆くなり、破断等が起きる可能性がある。引張弾性率が1500MPaを超えると、成形型にフィルムを固定するのに必要な力が高くなるとともに、絞り量が大きい場合には、シワが発生しやすくなる。また、伸びが30%未満の場合には、成形型の鋭角な面にフィルムが追従しにくくなり、所望の形状の成形体を得ることが困難となる。伸びが60%を超えると、成形型にセットする際にフィルムが不均一に伸びやすくなり、最終的に膜厚がバラつくおそれがある。引張弾性率は、好ましくは1000〜1400MPaである。伸びは、好ましくは35〜55%である。
【0011】
この引張弾性率および伸びは、例えば、JIS K6251(2004)に従い、引張試験機を用いて求めることができる。なお、本発明において「伸び」は、「破断伸び」を意味する。
【0012】
前記ポリアミック酸フィルムの溶媒含有量は、フィルムの引張弾性率が900〜1500MPa、かつ伸びが30〜60%となる限り特に制限はないが、5〜18質量%であることが好ましい。フィルムがかかる範囲の溶媒を含有する場合には、引張弾性率が900〜1500MPaで伸びが30〜60%のフィルムとなりやすい。フィルムの溶媒含有量が5質量%未満の場合には、フィルムが硬直になって成形型に追従させるのが困難となる傾向にある。18質量%を超える場合には、フィルム表面にシワが発生しやすくなり、また溶媒の揮発によってフィルムが収縮して大きく変形するおそれがある。
【0013】
前記ポリアミック酸フィルムが含有する溶媒としては、特に制限はないが、ポリアミック酸の合成に用いる溶媒が好ましい。このような溶媒としては、極性溶媒が好適であり、具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等が例示できる。これらは、単独でまたは2種以上でフィルムに含まれていてもよい。また、これらの極性溶媒に加え、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、ベンゾニトリル、ジオキサン、ブチロラクトン、キシレン、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等が単独でまたは併せて混合されていてもよい。
【0014】
前記ポリアミック酸フィルムを構成するポリアミック酸は、酸二無水物とジアミンとを重合反応させて得られる構造を有する。酸二無水物の好適な例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。ジアミンの例としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン等が挙げられる。
【0015】
ポリアミック酸フィルムの厚さとしては、ポリイミド樹脂成形体の厚さが10〜500μmとなるような値に設定することが好ましい。成形体の厚さが、10μmより小さいと、剛性が不足し、折れや座屈が発生しやすくなる。一方、500μmを超えると、成形時の収縮量が大きく、細かい凹凸形状には追従しにくくなり、また割れも生じやすくなる。また、厚さの均一性は、高いほど好ましいが、成形体に要求される寸法安定性に応じて適宜選択すればよい。
【0016】
前記ポリアミック酸フィルムは、好適には、支持体上にポリアミック酸の溶液を塗布し、残存溶媒量が5〜18質量%となるまで乾燥することにより製造される。ここで残存溶媒量を、ポリアミック酸の種類に応じてこの範囲内で適宜調整することによって、引張弾性率が900〜1500MPaで伸びが30〜60%のポリアミック酸フィルムを容易に得ることができる。
【0017】
ポリアミック酸の溶液は、前述の溶媒中で、前述の酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得ることができる。なお、水の存在によってポリアミック酸が加水分解して低分子量化するため、ポリアミック酸の合成および保存は、無水環境下で行うことが好ましい。反応の際のモノマー濃度(溶媒中の酸二無水物とジアミンの合計の濃度)は、種々の条件に応じて適宜決定すればよいが、5〜30質量%が好ましい。反応温度は80℃以下に設定することが好ましく、より好ましくは5〜50℃である。反応時間は0.5〜10時間が好ましい。
【0018】
ポリアミック酸の溶液の粘度は、例えば10〜10000ポイズ(1〜1000Pa・s)、好ましくは50〜5000ポイズ(5〜500Pa・s)である(B型粘度計、23℃)。粘度が10ポイズ未満であると、いわゆるタレや塗布層のハジキが生じやすくなり、均一な塗膜厚を得難くなるおそれがある。一方、10000ポイズを超えると、塗布時に吐出する際に高い圧力をかける必要があり、またレベリング性、脱泡性に劣る傾向にある。
【0019】
支持体としては、ポリアミック酸に対して化学的に耐性があるもの、例えば、ガラス板等を選択すればよい。また、フィルムの厚さの均一性を高めたい場合には、表面の円滑性の高い支持体を選択すればよい。
【0020】
ポリアミック酸の溶液の支持体への塗布量は、最終的な成形体の厚さが10〜500μmとなるような量に設定することが好ましい。
【0021】
ポリアミック酸の溶液の乾燥条件は、乾燥後のポリアミック酸フィルムの引張弾性率が900〜1500MPa、かつ伸びが30〜60%となるような残存溶媒量となるように、温度、風速および時間条件を制御すればよい。
【0022】
ポリアミック酸フィルムの成形型へのセットの方法には特に制限はなく、例えば、成形型の内面にフィルムを沿わせてセットしてもよいし(成形型の内側にセット)、成形型をフィルムで覆い、成形型の外面にフィルムを沿わせてセットしてもよいし(成形型の外側にセット)、2枚の成形型でフィルムを挟んでセットしてもよい。
【0023】
イミド化は、イミド化温度以上まで加熱して行ってもよいし、化学的に脱水して行ってもよい。加熱によるイミド化の場合には、ポリイミドの組成や触媒の有無にもよるが、例えば、300〜400℃で10〜60分間加熱すればよい。
【0024】
化学的に脱水する場合には、ポリアミック酸フィルム作製時のポリアミック酸の溶液に脱水剤を添加しておけばよい。脱水剤として、例えば、有機カルボン酸無水物、N,N’−ジアルキルカルボジイミド類、低級脂肪酸ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸無水物、アリールホスホン酸ジハロゲン化物、チオニルハロゲン化物等を用いることができ、これらの中でも、有機カルボン酸無水物が好ましい。有機カルボン酸無水物の例としては、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、吉草酸無水物、およびこれらの分子間無水物が挙げられる。また、芳香族モノカルボン酸の無水物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等の無水物、および炭酸、蟻酸および脂肪族ケテン類(ケテンおよびジメチルケテン)の無水物などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上の混合物として用いることができ、中でも、無水酢酸が好ましい。
【0025】
脱水剤の量は、フィルムを構成するポリアミック酸のアミド酸単位1モルに対して0.5〜4モルが好ましく、特には1〜3モルが好ましい。脱水剤の量が当該アミド酸単位1モルに対して0.5モルより少ない場合には、イミド化反応が十分に進行せず、得られるポリイミドの機械物性が大きく低下するおそれがある。一方、脱水剤の量が4モルより多い場合には、余分な脱水剤を蒸発させるために温度を上げる必要があるため、結果として得られるポリイミドフィルムの機械物性が大きく低下するおそれがある。
【0026】
また、イミド化を促進するために3級アミンを添加してもよく、3級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリン、ルチジン等が挙げられ、好ましくは、ピリジン、β−ピコリン、γ−ピコリン、キノリン、イソキノリンである。3級アミンの量は、フィルムを構成するポリアミック酸のアミド酸単位1モルに対して0.1〜2モル、さらに好ましくは0.2〜1モルである。3級アミンの量が当該アミド酸単位1モルに対して0.1モルより少ない場合には、得られるポリイミドの機械物性が大きく低下するおそれがある。2モルを超える量ではフィルム中に3級アミンが残留するおそれがあり、余分な3級アミンを蒸発させるために温度を上げる必要がある。
【0027】
ポリアミック酸フィルムには、ポリイミド樹脂成形体に要求される機能に応じてフィラーが添加されていてもよい。一般に、フィラーの添加量は1〜50質量%である。添加量が1質量%未満では、フィラーの機能が発現しにくく、50質量%を超えると、機械的強度の低下だけでなく、外観ムラが発生するおそれがある。フィラーの種類に関しては、例えばフィルムの誘電率を上げたい場合には、カーボン、チタン酸バリウム等を、熱伝導率を上げたい場合には、窒化ホウ素、炭素繊維等を、摺動性を上げたい場合には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはその変性物、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素樹脂を添加することが好ましい。
【0028】
上記のようにして、ポリアミック酸フィルムを成形型にセットし、イミド化することによってポリイミド樹脂成形体を得ることができる。一枚のフィルムを用いているため、成形体として不要な部分が生じる場合があるが、この不要な部分については適宜切断等して除去すればよい。本発明の製造方法では、厚さが小さく均一なフィルムを成形に用いることができるため、寸法安定性が高く、厚さの小さいポリイミド樹脂の成形体を容易に得ることができる。この本発明の効果を十分に発揮させる観点からは、ポリイミド樹脂成形体の厚さは、10〜500μmであることが好ましい。
【0029】
本発明は、別の側面から、引張弾性率が900〜1500MPa、かつ伸びが30〜60%である、ポリイミド樹脂成形体製造用ポリアミック酸フィルムであり、当該ポリアミック酸フィルムについては、上記製造方法に用いるフィルムと同様である。
【実施例】
【0030】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0031】
まず、本実施例で採用した評価方法について説明する。
引張弾性率および伸び
JIS K6251(2004)に従って測定した。引張試験機にはテンシロンUTM1000(オリエンテック製)を用い、サンプルはダンベル状3号形、チャック間距離は30mm、引張速度は100mm/分とした。
【0032】
ポリイミド樹脂成形体の厚さ
1/1000mmダイヤルゲージを用いて測定した。成形体がお皿型の場合には、底面の中心1点、底面の外周付近4点(約π/2おき)、側面4点(π/2おき)の計9点を測定した。波型の場合には、山部1点、谷部1点、山部と谷部の中間点3点の計5点を測定した。厚さは、変動係数(%)=(標準偏差/平均)×100より評価した。
【0033】
実施例1
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、これと略当量のp−フェニレンジアミンを溶解させた(モノマー濃度20質量%)。この溶液を室温で攪拌し、70℃に加温しつつ攪拌してアミド化し、23℃におけるB型粘度計による粘度が200Pa・sのポリアミック酸溶液を作製した。
【0034】
次に、このポリアミック酸溶液をガラス板に0.5mmの厚さとなるように塗布した後、130℃で30分間加熱して乾燥し、ポリアミック酸フィルムを作製した。このポリアミック酸フィルムの残存NMP量は15質量%、引張弾性率は1280MPa、伸びは48%であった。
【0035】
このフィルムを円筒形(Φ70mm)の成形型に被せ、フィルムが成形型の円筒側面上に沿うようにしてセットした。これを350℃で20分間加熱してイミド化を行い、底面と側面を有するお皿型の成形体を得た。膜厚を測定したところ、変動係数は3%であった。
【0036】
実施例2
実施例1で得られたポリアミック酸フィルムを、メッシュタイプの波型の成形型に挟み込んだ。これを350℃で20分間加熱してイミド化を行い、波型のフィルム成形体を得た。膜厚を測定したところ、変動係数は1%であった。
【0037】
比較例1
実施例1で得られたポリアミック酸溶液を、ガラス板に0.5mmの厚さとなるように塗布した後、130℃で20分間加熱して乾燥し、ポリアミック酸フィルムを作製した。このポリアミック酸フィルムは、冷却後に表面にシワが見られた。このポリアミック酸フィルムの残存NMP量は20質量%、引張弾性率は660MPa、伸びは35%であった。
【0038】
このフィルムを円筒形(Φ70mm)の成形型に被せ、フィルムが成形型の円筒側面上に沿うようにしてセットした。これを350℃で20分間加熱してイミド化を行い、底面と側面を有するお皿型の成形体を得たが、収縮ムラが大きく、膜厚を測定したところ、変動係数は8%であった。
【0039】
比較例2
実施例1で得られたポリアミック酸溶液を、ガラス板に0.5mmの厚さとなるように塗布した後、200℃で20分間加熱して乾燥し、ポリアミック酸フィルムを作製した。このポリアミック酸フィルムの残存NMP量は4質量%、引張弾性率は2170MPa、伸びは60%であった。
【0040】
このフィルムを円筒形(Φ70mm)の成形型に被せ、フィルムが成形型の円筒側面上に沿うようにしてセットした。これを350℃で20分間加熱してイミド化を行ったところ、フィルムの柔軟性が十分でないため型への追従性に欠け、成形型の円筒側面上の部分で大きな寄りシワが発生して、きれいな側面を有するお皿型成形体が得られなかった。
【0041】
比較例3
有底の円筒形容器(Φ70mm)を、逆さまにして(底面が上側になるようにして)置いた。実施例1で得られたポリアミック酸溶液を、円筒形容器の底面の上(上面)に載せ、容器を傾けることにより、容器の側面の上部にポリアミック酸溶液がつたうようにした。容器を傾ける方向を360°変えていき、円筒形容器の上面と、側面の上部にポリアミック酸溶液が塗布されるようにした。これを、130℃で30分間乾燥した後、350℃で20分間加熱してイミド化を行った。得られた成形体の膜厚を測定したところ、変動係数は45%であった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、寸法安定性が高く、厚さの小さいポリイミド樹脂の成形体を種々の形状で得ることができ、当該成形体は、薄手のポリイミド樹脂成形体が用いられる各種分野に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引張弾性率が900〜1500MPa、かつ伸びが30〜60%のポリアミック酸フィルムを、成形型にセットし、イミド化する、ポリイミド樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
前記ポリアミック酸フィルムが、支持体上にポリアミック酸の溶液を塗布し、残存溶媒量が5〜18質量%となるまで乾燥したものである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ポリイミド樹脂成形体の厚さが、10〜500μmである請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
引張弾性率が900〜1500MPa、かつ伸びが30〜60%である、ポリイミド樹脂成形体製造用ポリアミック酸フィルム。

【公開番号】特開2010−201871(P2010−201871A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52430(P2009−52430)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】