説明

ポリウレタンフォームの製造方法およびポリウレタンフォーム

【課題】
成形性に優れ、均質で微細な気泡を有するポリウレタンフォームの製造方法およびポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】
分子量2000のポリプロピレングリコールに対する溶解性が窒素ガスよりも高く、炭酸ガスよりも低いガスをポリオールからなる原料組成物に対し1〜50体積%の割合でガスローディングした第1の原料組成物と、ポリイソシアネートからなる第2の原料組成物を混合器に供給する工程、および混合した原料組成物を該混合器から金型に注入する工程、から製造することを特徴とするポリウレタンフォームの製造方法
独立気泡を有する厚さ10mm以上のポリウレタンフォームであって、該ポリウレタンフォームの密度の最大値と最小値の差が0.05g/cm以下であることを特徴とするポリウレタンフォーム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスローディングした原料組成物を用いてポリウレタンフォームを製造する製造方法およびポリウレタンフォームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタンフォームは種々の方法で製造されている。例えば、(1)気化可能な液体を予め原料に添加しておき、重合反応時の加熱や発熱により当該液体を気化させポリウレタンの硬化過程において発泡させる易気化物質(常温で液体)による発泡プロセス、(2)加圧・攪拌等により気体を予め原料に混合させてポリウレタンの硬化過程において発泡させる気体の溶解・析出による発泡プロセス(ガスローディング発泡)、(3)ポリウレタンの硬化過程において気体(気泡)を混合・攪拌させて発泡させる気泡吹き込みによる機械的発泡プロセス、(4)ポリウレタンの硬化過程においてポリオール中に添加した水とイソシアネートとの反応により発生する炭酸ガス(CO2)により発泡させる化学的発泡プロセス、などが知られている。
【0003】
(2)のガスローディング発泡におけるローディングガスとしては、炭酸ガス、窒素ガス、乾燥空気(大気圧露点温度−50〜−30℃)が使用されている(特許文献1)。しかしながら、窒素ガスを予め原料組成物中にガスローディングした場合、成形性が不十分で、フォーム密度が必ずしも均一でないという問題点があった。また、炭酸ガスを使用し、予め原料組成物中に炭酸ガスをガスローディングすると、硬化触媒として用いるアミン触媒との間で中和が起こり、硬化速度が不安定になったり、フォーム密度が不均一になるという問題点があった。また、炭酸ガスは原料組成物に対する容易に溶解するため、ガスローディング量の制御が難しく、安定したフォーム密度を得ることが困難であった。
【特許文献1】特開平11−293027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明の目的は、成形性に優れ、均質で微細な気泡を有するポリウレタンフォームの製造方法およびポリウレタンフォームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)分子量2000のポリプロピレングリコーリルに対する溶解性が窒素ガスよりも高く、炭酸ガスよりも低いガスをポリオールからなる原料組成物に対し1〜50体積%の割合でガスローディングした第1の原料組成物と、ポリイソシアネートからなる第2の原料組成物を混合器に供給する工程、および混合した原料組成物を該混合器から金型に注入する工程、から製造することを特徴とするポリウレタンフォームの製造方法。
(2)独立気泡を有する厚さ10mm以上のポリウレタンフォームであって、該ポリウレタンフォームの密度の最大値と最小値の差が0.05g/cm以下であることを特徴とするポリウレタンフォーム。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリウレタンフォームの製造方法によれば、液流れ性が高いため成形し易く、微細な気泡がフォーム全体に均質に生成するため密度分布の小さなフォームを製造することができる。また、このポリウレタンフォームは、研磨用部材としての用途に使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明におけるガスローディングとは、ポリオールからなる第1の原料組成物に対して外部からガスを添加して強制的に抱き込ませる(ロードする)処理を言う。ガスローディングの方法は特に限定されないが、ガスを原料組成物に対して直接吹き込む(バブリングする)方法、タンクなどの容器に原料組成物を注入後タンク上部からガスで加圧し(ガス背圧をかける)原料組成物表面からガスを溶解させる方法、ガス背圧をかけるとともに原料組成物を攪拌してガスを溶解させる方法、などを挙げることができる。このうち、短時間にガスを溶解させることができることから、ガス背圧をかけるとともに原料組成物を攪拌する方法が好ましく用いられる。
【0008】
本発明におけるガスローディング量とは、ガスローディングした原料組成物を0.098MPa(大気圧)に放置した時に原料組成物から放出されるガス体積vの原料組成物体積Vに対する百分率v/V×100の値を言う。ガスローディングした原料組成物の体積Vが、圧力0.098MPaにおいて原料組成物および気体の合計体積がVであれば、原料組成物の蒸気圧が無視できる程度に小さい場合には、v=V−Vであるから、ガスローディング量Lは、L=v/V×100=(V−V)/V×100により得られる。加圧ガスローディングの場合においては、圧力pからp'に変化したときに原料組成物から放出されるガス体積vは、圧力pにおけるガス溶解量をvpと記せば、v=vp−vp'と記すことができるから、そのガスローディング量L(%)は、L=v/V×100=(vp−vp')/V×100と表現できる。ここにおいて、p'=0.098MPaである。
【0009】
ガスローディング量の測定方法としては、ガスローディング済み原料組成物を体積V採取し、続いて圧力を0.098MPaとなるように保ちその時の体積Vを測定する。圧力変化に伴うガス溶解量の差vはv=V−Vであるから、ガスローディング量L(%)はL=(V−V)/V×100から算出することができる。第1の原料組成物に対するガスローディング量としては、1〜50体積%が必要であり、3〜20%が好ましい。ガスローディング量が1体積%よりも小さい場合、ガスローディングによる発泡が不十分となり所望の微細な気泡を特定量含有するフォームが得られない。一方、ガスローディング量が50体積%以上の場合、ガスが原料組成物中に溶解することができず、その一部がmmオーダーの直径の気泡として存在するためフォーム中に微細な気泡に混じって極端に大きな気泡を有するフォームが形成されてしまう。
【0010】
本発明において、ガスの溶解性とは、40℃においてp=0.392MPa(4.0kg/cm)におけるガスローディング量L
L(%)=(vp−vp')/V×100
を言う。ここにおいて、p=0.392MPaであり、p'=0.098MPaである。原料組成物に対するガスの溶解性は、40℃における当該ガスの原料組成物に対する溶解量について、0.098MPaおよび0.392MPaの場合の飽和溶解量の差で定義される。ガスの溶解性が高いとはそれぞれの圧力におけるガス溶解量の差から求めたガスローディング量L(%)の値が大きいことを指す。
【0011】
ガスの溶解性の測定方法は、ポリオールとしてポリプロピレングリコール(分子量2000)を選択して行う。具体的には、PP−2000(三洋化成工業(株)製)またはユニオールD−2000(日本油脂(株)製)を挙げることができる。ポリプロピレングリコール(分子量2000)を40℃で温調し、ガス背圧0.392MPaをかけて原料組成物を攪拌し飽和量のガスをガスローディングする。ガスローディング後、原料貯留槽内に泡のかみ込みがなく、完全に溶解していることを確認する。ガスローディングしたポリプリプレングリコールを0.392MPaにおいて体積V採取し、続いて圧力を0.098MPaとなるように保ってその体積Vを測定する。圧力変化に伴うガス溶解量の差vはv=V−Vであるから、ガス溶解性を示す値であるガスローディング量L(%)はL=(V−V)/Vから算出することができる。
【0012】
第1の原料組成物にガスローディングされたガスは、混合器において第2の原料組成物と衝突混合され、金型に注入される。混合された瞬間からポリオールとポリイソシアネートによる硬化反応が進行する。また、注入時、加圧状態から一気に大気圧状態に移行することにより多数の微細な気泡を発現し、ポリウレタンの硬化に伴って気泡が固定化されフォームを形成する。本発明においては、40℃において0.392MPaと0.098MPaにおけるガスの溶解量の差に注目してガス溶解性を定義したが、加圧する圧力が変化しても0.098〜1.0MPaの範囲であればガス種によるガス溶解量の差(すなわちポリウレタンフォーム中の気泡生成に寄与するガスの量)の順序は変わらない。原料組成物に対するガスローディングの圧力は0.098〜1.0MPaが必要であり、0.5〜1.0MPaがさらに好ましい。1.0MPaを越えると溶解状態の維持に必要な加圧設備が過大となるため実際の使用に適さない。
【0013】
ポリプロピレングリコール(分子量2000)に対するガス溶解量は小さい順に挙げると、窒素、水素、酸素、アルゴン、炭酸ガスの順である。本発明におけるローディングガスとしては、原料組成物に対するガス溶解量が窒素よりも大きく、炭酸ガスよりも小さいガスであれば特に限定されないが、不活性ガスであるアルゴンが好ましく用いられる。
【0014】
第2の原料組成物に対しても第1の原料組成物と同様にガスローディングしてもよい。
【0015】
本発明の混合器は、少なくとも第1の原料組成物と第2の原料組成物を混合し、ウレタン化反応を開始させる装置を言う。混合器内で、原料組成物が十分かつ均一に攪拌できることが必要であり、正確に原料組成物の流入量、流出量を制御できることが必要である。攪拌方法としては、攪拌羽根による方法、原料組成物を対向したノズルから噴出させて衝突させる方法、攪拌エネルギーを持った物質(ガス)を混入する方法、などが挙げられる。樹脂化したポリウレタンが異物となって混合器内に残留しないようにセルフクリーニング方式の混合器が好ましい。
【0016】
本発明の金型は、原料組成物を注入し、硬化させてポリウレタンフォームの形状の一部または全部を規定する装置を言う。金型の材質は、金属が好ましいが、その一部が樹脂であったり、樹脂コートされていてもよい。
【0017】
本発明のポリウレタンフォームの製造においては、ガスローディングが可能な第1の原料組成物を蓄える第1の原料貯留槽、第1の貯留槽から混合器へ原料を送り込むポンプおよび第2の原料組成物を蓄える第2の原料貯留槽、第2の原料貯留槽から混合器へ原料組成物を送り込むポンプ、混合器、金型が必要である。また、貯留槽、金型は常温〜150℃の範囲で温度コントロールできることが好ましい。混合器へ原料を供給するポンプについては特に限定はないが、原料組成物を10MPa以上の高圧で混合器へ送り出せることが好ましい。
【0018】
本発明のポリウレタンフォームの密度は、フォームの最大値と最小値の差が0.05g/cm以下であることが必要である。密度の測定は、厚さ方向に2mmの厚さでスライスし、15×30×2mmに切り出し、乾燥重量とピクノメーターから得られる水中での体積から算出することができる。特定形状の閉じられた金型内で厚さ10mm以上のフォームを得る場合、一般に金型表面から離れたポリウレタン材料の内部では、反応硬化とローディングガスによる気泡生成が同時に進行し、無数の泡が保持されるため、発泡倍率の高いコア部が形成される。金型表面に接したポリウレタン材料の表面部では、反応熱が型に逃げて冷却されるため、コア部に比べて相対的にウレタン樹脂化反応が遅れ、発熱量が少なくなる。そのため、ポリオールに対する溶解性が高く維持され、少数の泡しか発生しない。しかも、この泡は内部からの発泡圧ににより押し潰されて縮小する。したがって、金型表面近傍は比較的発泡倍率が低い。このように、特に厚さ方向に発泡の程度が異なるため、密度分布が生じる。原料組成物に対する溶解性が制御された特定のローディングガスを用いることにより、理由は必ずしも明確ではないが密度分布の小さなポリウレタンフォームが得られる。特に好ましい実施態様として、以下を挙げることができる。ポリウレタンフォームの平均密度が0.6〜1.0g/cmであること、ポリウレタンフォームのC型硬度が50〜90度であること、ポリウレタンフォームの平均気泡径が20〜50μmであること、ポリウレタンフォームが研磨用部材または研磨用部材の原材料として使用されること、が好ましい。密度は日本工業規格JIS K 7112の方法にしたがって測定することができる。C型硬度は“アスカーC型高度計(高分子計器(株)製”により測定することができる。気泡径はレーザー顕微鏡や走査型電子顕微鏡などで観察し、その像を画像処理して画像中のすべての気泡について気泡径、気泡数、気泡径分布を求めることができる。このデータから平均気泡径、単位面積当たりの気泡数を算出できる。
【0019】
本発明においてポリオールとは、水酸基を2個以上有する化合物をいう。例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどから選ばれた1種または2種以上の混合物を挙げることができる。
【0020】
本発明において第1の原料組成物としては、主成分であるポリオールの他に、架橋剤、鎖延長剤、整泡剤、発泡剤、樹脂化触媒、泡化触媒、酸化防止剤、老化防止剤、充填剤、可塑剤、着色剤、防黴剤、抗菌剤、難燃剤、紫外線吸収剤を含有してもよい。
【0021】
第1の原料組成物の内、ポリオールは少なくとも50重量%以上、好ましくは70重量%以上含有する。また、水酸基の代わりにカルボキシル基、アミノ基などの活性水素を有する化合物をポリオールと併用することも可能である。
【0022】
架橋剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコール、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、ジエチルトルエンジアミン、ジエチレントリアミンなどのアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、などを挙げることができる。
【0023】
触媒としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N‘,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N‘,N’−テトラメチルプロパン−1,3−ジアミン、N,N,N‘,N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン、N,N,N‘,N“,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N‘,N“,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン、テトラメチルグアジニン、トリエチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチル−N‘−(2−ジメチルアミノ)−エチルピペラジン、N−メチルモルホリン、N’,N‘−ジメチルアミノエチルモルホリン、1,2−ジメチルイミダゾール、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N‘−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジン、N−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、エチレングリコールビス(3−ジメチル)アミノプロピルエーテルなどのアミン化合物、、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マーカブチド、ジブチル錫チオカルボキシレート、ジブチル錫ジマレエート、ジオクチル錫マーカブチド、ジオクチル錫チオカルボキシレートなどの錫化合物、アセチルアセトン金属塩などの金属錯体、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,3,5−トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、などのトリアジン類、2,4−ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−エチルヘキサン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、2−エチルアジリジン、などのアジリジン類などのアミン系化合物、3級アミンのカルボン酸塩などの4級アンモニウム化合物、ジアザビシクロウンデセン、ナフテン酸鉛、オクチル酸鉛などの鉛化合物、ナトリウムメトキシドなどのアルコラート化合物、カリウムフェノキシドなどのフェノラート化合物、などを挙げることができる。これらの触媒は、1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0024】
整泡剤としては、発泡体の製造において通常使用されている化合物を使用することができる。例えば、ジメチルシロキサン系、ポリエーテルジメチルシロキサン系、フェニルメチルシロキサン系などの整泡剤を使用することができる。
【0025】
発泡剤としては、水、HCFC−141b、HFC−116a、HFC−305fa、HFC−365mfcなどのハロゲン化炭化水素、シクロペンタン、イソペンタン、ノルマルペンタンなどの炭化水素類、ノナフロロブチルメチルエーテル、ノナフロロイソブチルメチルエーテル、ノナフロロブチルエチルエーテル、ノナフロロイソブチルエーテル、ペンタフロロエチルメチルエーテル、ヘプタフロロイソプロピルメチルエーテルなどのハイドルフルオロカーボン類を挙げることができる。これら発泡剤のうち、汎用性の点から水が好ましく用いられる。
【0026】
本発明においてポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、ナフタレンジイソシアネート、などの芳香族イソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、などの脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加TDI、水素添加MDI、などの脂環式ジイソシアネート、などを挙げることができる。これらポリイソシアネートから選ばれた1種または2種以上の混合物として使用することができる。
【0027】
本発明における第2の原料組成物は、上記ポリイソシアネートの他、これらポリイソシアネートをポリオールと予め混合・反応させて、一部の残存イソシアネート基を持つ、またはイソシアネート基を持たないプレポリマーを含有してもよい。第2に原料組成物のうち、イソシアネート基を有する化合物が主成分であり、少なくとも50重量%以上を含有する。
【0028】
また、ポリメリックMDIは、アニリンとホルマリンの縮合反応によって得られるポリフェニルメタンポリアミンをホスゲン化することにより得られる。そのため、ポリメリックMDIの組成は、縮合時の原料組成や反応条件により基本的に決定されるが、ベンゼン環を2個有する二核体とベンゼン環を3個以上有する多核体からなる。ポリメリックMDI中の二核体は、2,2’−MDI、2,4’−MDI、4,4’−MDIの3種類の異性体がある。二核体の異性体構成比は特に限定はないが、4,4’−MDIの含有量が50重量%以上が好ましい。
【0029】
本発明のポリウレタンフォームの製造は、混合器内で原料同士を衝突させて瞬時に混合する高圧注入機、混合器に供給された各原料を攪拌翼などによって機械的に混合するいわゆる低圧注入機に使用して、モールド成形、スラブ成形などに適用することができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例によってさらに詳しく説明するが、これらは本発明を限定するものではない。なお、評価方法は以下のようにして行った。
[平均気泡径]走査型電子顕微鏡“SEM2400”(日立製作所)にて研磨パッドの表面またはスライス面を倍率200倍で観察し、その画像を画像処理装置で解析することにより、画像中のすべての気泡径を計測し、その平均値を平均気泡径とした。
[密度]JIS K 7112記載の方法にしたがって、ピクノメーター(ハーバード型)を使用して測定した。
【0031】
(実施例1)
RIM成形機の第1原料貯留槽に分子量2000のポリプロピレングリコールを投入した。第1の原料貯留槽には高純度アルゴン(純度99.9%)ボンベを接続し、タンク内の攪拌翼を回転させながら背圧0.392MPaで加圧してアルゴンガスローディングを行った。アルゴンガスローディング、常圧まで放圧、の操作を3度繰り返してポリプロピレングリコールをアルゴンガス置換、アルゴンガスローディングした。その後、第1の原料貯留槽の背圧を0.392MPaとして、飽和量のアルゴンをローディングした後、そのガス溶解性を調べたところ、17.0%であった。
【0032】
次に、RIM成形機の第1原料貯留槽、第2原料貯留槽にそれぞれ以下の原料組成物を計量・混合し、投入した。第1および第2原料貯留槽には高純度アルゴン(純度99.9%)ボンベを接続し、タンク内の攪拌翼を回転させながら背圧0.392MPaで加圧してアルゴンガスローディングを行った。アルゴンガスローディング、常圧まで放圧、の操作を3度繰り返して原料組成物をアルゴンガス置換、アルゴンガスローディングした。
【0033】
次に、背圧(0.49MPa)をかけて攪拌翼にて所定のガスローディング量が得られるようにアルゴンガスをガスローディングした。
<第1原料タンク>
グリセリンのテトラヒドロフラン付加物 90重量部
ポリプロピレングリコール 5重量部
1,4−ブタンジオール 5重量部
トリエチルアミン 1.5重量部
ジメチルアミノエトキシエタノール 0.5重量部
ジメチルポリシロキサン/ポリ(エチレン
オキシド/プロピレンオキシド)共重合体 3重量部
精製水 0.2重量部
<第2原料タンク>
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)
50重量部
ポリメリックMDI 30重量部
間隙1.5mmのフイルムゲートを有する金型を使用して、厚さ15mm、長さ700mmのポリウレタンフォームを得た。樹脂の流動性が不足すると、樹脂の先端が金型奥まで到達せず、700mmの長さに満たない短いフォームが得られる。原料貯留槽温度(40℃)、吐出圧力(15MPa)、吐出速度(800g/秒)、金型温度(40℃)に設定して成形を行ない、樹脂流動性のパラメーターとしてフォーム長さを測定した。金型に樹脂を充填するので、フォーム最大長は700mmとなる。
【0034】
得られた厚さ15mmのフォームから表裏両面0.5mmを除き、厚さ14mmのフォームを2mm厚みで7枚にスライスし、厚み方向にシート−1、シート−2、シート−3、シート−4、シート−5、シート−6、シート−7とした。各シート内で対角線方向に3点、15×30×2mmの試料を打ち抜いて密度測定を行った。密度測定は、予め試料を70℃、12時間乾燥し、温調室で重量、体積を測定し、密度を算出した。評価結果を表1にまとめた。各シートの密度の値は、同一シート内の3点の平均値である。表層のシート−1およびシート−7と中央のシート−4の密度を示した。
【0035】
【表1】

【0036】
(比較例1)
第1の原料貯留槽に分子量2000のポリプロピレングリコールを投入し、背圧0.392MPaとして、飽和量の窒素ガスをガスローディングした後、そのガス溶解性を調べたところ、9.7%であった。
【0037】
次に、ローディングガスをアルゴンから窒素に変えたことを以外は実施例1と同様にして、フォーム長さ、密度分布の測定を行った。評価結果を表2にまとめた。
【0038】
【表2】

【0039】
(比較例2)
第1の原料貯留槽に分子量2000のポリプロピレングリコールを投入し、背圧0.392MPaとして、飽和量の炭酸ガスをガスローディングした後、そのガス溶解性を調べたところ、173%であった。
【0040】
次に、ローディングガスをアルゴンから炭酸ガスに変えたことを以外は実施例1と同様にして、フォーム長さ、密度分布の測定を行った。評価結果を表3にまとめた。
【0041】
【表3】

【0042】
(実施例2)
実施例1において、ガスローディング量を10.1%とした厚み15mmの成形品のシート−4(厚み方向中央部)の諸特性を測定した。密度0.838g/cm、C型硬度82度、平均気泡径34μmであった。
【0043】
この発泡ポリウレタンシートをアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を添加したメチルメタアクリレートに15時間浸漬し、その後膨潤した発泡ポリウレタンシートをガラス板に挟み込んで70℃で24時間保持した。ガラス板を取り除いた後、真空乾燥を行った。得られた硬質発泡シートの両面を研削して厚み1.25mmの研磨パッドを作製した。シリカ系スラリーを用いて研磨を行ったところ、SiO膜の研磨レートは2300オングストローム/分であった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明のポリウレタンフォームの製造方法によれば、成形時の流動性が高く、密度分布の小さな、均質で微細な気泡を有するポリウレタンフォームを得ることができる。また、このポリウレタンフォームは、研磨用部材としての用途に使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量2000のポリプロピレングリコールに対する溶解性が窒素ガスよりも高く、炭酸ガスよりも低いガスをポリオールからなる原料組成物に対し1〜50体積%の割合でガスローディングした第1の原料組成物と、ポリイソシアネートからなる第2の原料組成物を混合器に供給する工程、および混合した原料組成物を該混合器から金型に注入する工程、から製造することを特徴とするポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項2】
3〜20体積%の割合で溶解性が窒素ガスよりも高く、炭酸ガスよりも低いガスを第1の原料組成物にガスローディングしたことを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項3】
0.5〜1.0MPaの加圧下において、溶解性が窒素ガスよりも高く、炭酸ガスよりも低いガスを第1の原料組成物にガスローディングしたことを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項4】
第1の原料組成物と第2の原料組成物をそれぞれ独立に10MPa以上に加圧して混合器へ供給することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項5】
溶解性が窒素ガスよりも高く、炭酸ガスよりも低いガスがアルゴンガスであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項6】
第1の原料組成物が水を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項7】
独立気泡を有する厚さ10mm以上のポリウレタンフォームであって、該ポリウレタンフォームの密度の最大値と最小値の差が0.05g/cm以下であることを特徴とするポリウレタンフォーム。
【請求項8】
ポリウレタンフォームの平均密度が0.6〜1.0g/cmであることを特徴とする請求項7に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項9】
ポリウレタンフォームのC型硬度が50度〜90度であることを特徴とする請求項7または8に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項10】
ポリウレタンフォームの平均気泡径が20〜50μmであることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載のポリウレタンフォーム。
【請求項11】
該ポリウレタンフォームが研磨用部材または研磨用部材の原材料として使用されることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載のポリウレタンフォーム。

【公開番号】特開2006−206793(P2006−206793A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22726(P2005−22726)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】