説明

ポリウレタン弾性糸およびその製造方法

【課題】 長期にわたって安定紡糸ができ、耐塩素性に優れ、かつ、編み目等のムラや染色ムラが無く良好な品位を有する生地を提供できるポリウレタン弾性糸およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンからなるポリウレタン弾性糸であって、下記(a−1)〜(a−3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の共重合体(a)と、下記(b−1)〜(b−4)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物(b)とを含有しているポリウレタン弾性糸とする。
(a−1)ビニルアルコールとビニルアセタールとの共重合体
(a−2)酢酸ビニルとビニルアセタールとの共重合体
(a−3)ビニルアルコールと酢酸ビニルとビニルアセタールとの共重合体
(b−1)ハイドロタルサイト類化合物
(b−2)ハンタイトとハイドロマグネサイトの混合物
(b−3)Ca、Mg、AlもしくはBaから選ばれた金属の炭酸塩、酸化物、および水酸化物
(b−4)Ca、Mg、AlもしくはBaから選ばれた金属の2種以上からなる複合酸化物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン弾性糸およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン系弾性繊維とポリアミド系繊維やポリエステル繊維とを交編または交織し染色した布帛を用いた水着は、プール中で活性塩素濃度0.5〜3ppmの塩素水に繰り返し暴露されると、ポリウレタン系弾性繊維の弾性機能が著しく損なわれて糸切れしたり、ポリアミド系繊維に染着した染料が変退色することが知られている。
【0003】
ポリウレタン系弾性繊維の耐塩素性を改善するためには、脂肪族ポリエステルジオールを原料に用いたポリエステル系ポリウレタン弾性繊維が好ましいが、それでも耐塩素性は不十分であった。しかも、脂肪族ポリエステルは生物活性が高いため、ポリエステル系ポリウレタン系弾性繊維は黴に侵され易いという欠点があり、使用中または保管中に水着の弾性機能が低下し、糸切れが生じ易いという問題点がある。
【0004】
一方、生物活性が極めて少ないポリエーテルジオールを原料に用いたポリエーテル系ポリウレタン弾性繊維は黴による脆化のおそれは少ないが、耐塩素性がポリエステル系ポリウレタン弾性繊維よりも劣るという問題点がある。
【0005】
そのため、ポリエーテル系ポリウレタン弾性繊維の耐塩素性を改善するために、各種の添加剤、すなわち無機系塩素劣化防止剤が提案されている。
【0006】
例えば、無機系塩素劣化防止剤として、酸化亜鉛(特許文献1参照)、酸化マグネシウムや酸化アルミニウム等(特許文献2参照)、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等(特許文献3参照)、酸化マグネシウムと酸化亜鉛の固溶体(特許文献4参照)、酸化亜鉛の結晶にアルミニウムが固溶した酸化亜鉛系固溶体(特許文献5参照)、亜鉛とアルミニウムの複合酸化物(特許文献6参照)、また、フンタイト及びハイドロマグネサイトの鉱物混合物(特許文献7参照)が開示されている。
【0007】
これら耐塩素剤の中で耐塩素性能としては、酸化亜鉛等の亜鉛を含むものが最も高く、塩素水に連続的に浸漬した際の糸切れまでの時間が最も長い。しかしながら、これら酸化亜鉛等の亜鉛を含む化合物は、染色工程で亜鉛成分の流出が見られ、亜鉛イオンと染色浴中に溶け出したその他の滑剤や薬剤とが反応し、染色を不均一にすることがある。また、これら亜鉛化合物で汚染された排水による環境問題の懸念もある。これらを防ぐため、ハイドロタルサイトやその他金属の炭酸塩、酸化物等を添加した場合、その耐塩素水性能は酸化亜鉛等と比較すると満足なレベルではない。また、酸化亜鉛も含めこれら無機系耐塩素剤は、共通して、溶媒中および紡糸ポリマー溶液中に均一分散させることが難しく、そのため紡糸性の悪化や、紡糸した糸の繊度が不均一になることから生地品位を悪化させることがある。
【0008】
一方で、ポリウレタン弾性繊維にポリビニルアルコールおよび/またはその共重合体を添加する技術が開示されている(特許文献8参照)。これによると、ポリビニルアルコールおよび/またはその共重合体とその他無機物とを同時に添加する技術の記載があるが、これを用いても前述した無機系耐塩素剤の分散性を高めるには至らず、紡糸性、生地品位を満足なレベルにするには至っていない。
【0009】
また、スルホン酸基を含む重合体および金属化合物を含有させ、伸度、回復性、耐熱性、耐薬品性を向上させる技術も開示されているが(特許文献9参照)、金属化合物の分散性が満足なレベルではなく、紡糸性や生地品位にはさらなる改善の余地があった。
【特許文献1】特公昭60−43444号公報
【特許文献2】特公昭61−35283号公報
【特許文献3】特開2008−196067公報
【特許文献4】特許第3228351号公報
【特許文献5】特開2002−121537公報
【特許文献6】特開平10−292225号公報
【特許文献7】特表平10−508916号公報
【特許文献8】特開2002−249929号公報
【特許文献9】特開2010−150677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決し、長期にわたって安定紡糸ができ、耐塩素性に優れ、かつ、編み目などのムラや染色ムラが少ない良好な品位を有する生地を提供することが可能なポリウレタン弾性糸およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のポリウレタン弾性糸は、前記の目的を達成するため、以下のいずれかの手段を採用する。
(1) ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンからなるポリウレタン弾性糸であって、下記(a−1)〜(a−3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の共重合体(a)と、下記(b−1)〜(b−4)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物(b)とを含有しているポリウレタン弾性糸。
(a−1)ビニルアルコールとビニルアセタールとの共重合体
(a−2)酢酸ビニルとビニルアセタールとの共重合体
(a−3)ビニルアルコールと酢酸ビニルとビニルアセタールとの共重合体
(b−1)ハイドロタルサイト類化合物
(b−2)ハンタイトとハイドロマグネサイトの混合物
(b−3)Ca、Mg、AlもしくはBaから選ばれた金属の炭酸塩、酸化物、および水酸化物
(b−4)Ca、Mg、AlもしくはBaから選ばれた金属の2種以上からなる複合酸化物
(2) 前記共重合体(a)と前記金属化合物(b)との成分比(重量%比)が(a)/(b)=1/9〜4/6である、前記(1)に記載のポリウレタン弾性糸。
(3) 前記共重合体(a)が下記式(1)に示す構造を有している、前記(1)または(2)に記載のポリウレタン弾性糸。
【0012】
【化1】

【0013】
(但し、Rは水素又はアルキル基。各構造単位はブロック共重合でもランダム共重合でもよい。)
(4) 前記式(1)に示す共重合体(a)は、x+y≧70mol%で、且つ、x≧40mol%である、前記(3)に記載のポリウレタン弾性糸。
(5) ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンを含む紡糸原液に、下記(a−1)〜(a−3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の共重合体(a)を分散剤として含有する、下記(b−1)〜(b−4)の群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物(b)の分散液を含有させて、紡糸を行うポリウレタン弾性糸の製造方法。
(a−1)ビニルアルコールとビニルアセタールとの共重合体
(a−2)酢酸ビニルとビニルアセタールとの共重合体
(a−3)ビニルアルコールと酢酸ビニルとビニルアセタールとの共重合体
(b−1)ハイドロタルサイト類化合物
(b−2)ハンタイトとハイドロマグネサイトの混合物
(b−3)Ca、Mg、AlもしくはBaから選ばれた金属の炭酸塩、酸化物、および水酸化物
(b−4)Ca、Mg、AlもしくはBaから選ばれた金属の2種以上からなる複合酸化物
(6) 前記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸または前記(5)に記載の製法により得られたポリウレタン弾性糸を使用してなる布帛。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、安定した連続紡糸が可能であり、耐塩素脆化性に優れ、編目等のムラや染色ムラが少ない良好な品位を有する生地を提供することができる、特に水着用途に好適に使用されるポリウレタン系弾性糸を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明におけるポリウレタンは、ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンからなる弾性糸であれば任意のものでよく、特に限定されるものではない。また、その合成法も特に限定されるものではない。
【0016】
すなわち、例えば、ポリマージオールとジイソシアネートと低分子量ジアミンからなるポリウレタンウレアであってもよく、また、ポリマージオールとジイソシアネートと低分子量ジオールからなるポリウレタンウレタンであってもよい。また、鎖伸長剤として水酸基とアミノ基を分子内に有する化合物を使用したポリウレタンウレアであってもよい。なお、本発明の効果を妨げない範囲で3官能性以上の多官能性のグリコールやイソシアネート等が使用されることも好ましい。
【0017】
ここで、本発明におけるポリウレタンを構成する代表的な構造単位について述べる。
【0018】
ポリウレタンを構成する構造単位のポリマージオールとしては、ポリエーテル系ジオール、ポリエステル系ジオール、ポリカーボネートジオール等が好ましい。そして、特に柔軟性、伸度を糸に付与する観点からポリエーテル系ジオールが使用されることが好ましい。
【0019】
ポリエーテル系ジオールは、次の一般式で表される単位を含む共重合ジオール化合物を含むことが好ましい。
【0020】
【化2】

【0021】
(但し、a、cは1〜3の整数、bは0〜3の整数、R1、R2はH又は炭素数1〜3のアルキル基)
このポリエーテル系ジオール化合物としては、具体的には、ポリエチレングリコール、変性ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略す)、テトラヒドロフラン(以下、THFと略す)および3−メチル−THFの共重合体である変性PTMG、THFおよび2,3−ジメチル−THFの共重合体である変性PTMG、THF及びネオペンチルグリコールの共重合体である変性PTMG、THFとエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドが不規則に配列したランダム共重合体等が挙げられる。これらポリエーテル系グリコール類の1種を使用してもよいし、また2種以上混合もしくは共重合して使用してもよい。その中でもPTMGまたは変性PTMGが好ましい。
【0022】
また、ポリウレタン糸における耐摩耗性や耐光性を高める観点からは、ブチレンアジペート、ポリカプロラクトンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとポリプロピレンポリオールの混合物をアジピン酸等と縮重合することにより得られる側鎖を有するポリエステルジオールなどのポリエステル系グリコールや、3,8−ジメチルデカン二酸及び/又は3,7−ジメチルデカン二酸からなるジカルボン酸成分とジオール成分とから誘導されるジカルボン酸エステル単位を含有するポリカーボネートジオール等が好ましく使用される。
【0023】
また、こうしたポリマージオールは単独で使用されてもよいし、2種以上を混合もしくは共重合して使用されてもよい。
【0024】
本発明に使用されるポリマージオールの分子量は、弾性糸にした際の伸度、強度、耐熱性などを所望水準とするために、数平均分子量で1000〜8000が好ましく、1800〜6000がより好ましい。この範囲の分子量のポリマージオールが使用されることにより、伸度、強度、弾性回復力、耐熱性に優れた弾性糸を得ることができる。
【0025】
次に、ポリウレタンを構成する構造単位のジイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)、トリレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートベンゼン、キシリレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが、特に耐熱性や強度の高いポリウレタンを合成するのに好適である。さらに脂環族ジイソシアネートとして、例えば、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,6−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロキシリレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート、オクタヒドロ1,5−ナフタレンジイソシアネートなどが好ましい。脂肪族ジイソシアネートは、特にポリウレタン糸の黄変を抑制する際に有効に使用できる。そして、これらのジイソシアネートは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
次に、ポリウレタンを構成する構造単位の鎖伸長剤としては、低分子量ジアミンおよび低分子量ジオールのうち少なくとも1種を使用するのが好ましい。なお、エタノールアミンのような水酸基とアミノ基を分子中に有するものであってもよい。
【0027】
好ましい低分子量ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン(以下、EDAと略す)、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p,p’−メチレンジアニリン、1,3−シクロヘキシルジアミン、ヘキサヒドロメタフェニレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)フォスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらの中から1種または2種以上が使用されることも好ましい。特に好ましくはエチレンジアミンである。エチレンジアミンを用いることにより伸度および弾性回復性、さらに耐熱性に優れた糸を得ることができる。これらの鎖伸長剤に架橋構造を形成することのできるトリアミン化合物、例えば、ジエチレントリアミン等を効果を失わない程度に加えてもよい。
【0028】
また、低分子量ジオールとしては、エチレングリコール(以下、EGと略す)、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、1−メチル−1,2−エタンジオールなどが代表的なものである。これらの中から1種または2種以上が使用されることも好ましい。特に好ましくはエチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオールである。これらを用いると、ジオール伸長のポリウレタンとしては耐熱性が高く、また、強度の高い糸を得ることができるのである。
【0029】
さらに、本発明におけるポリウレタンには、末端封鎖剤が1種または2種以上混合使用されることも好ましい。末端封鎖剤として、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルメチルアミン、イソブチルメチルアミン、イソペンチルメチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミンなどのモノアミン、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アリルアルコール、シクロペンタノールなどのモノオール、フェニルイソシアネートなどのモノイソシアネートなどが好ましい。
【0030】
また、本発明において、ポリウレタンの分子量は、耐久性や強度の高い繊維を得る観点から、数平均分子量として40000以上150000以下の範囲であることが好ましい。なお、分子量はGPCで測定しており、ポリスチレンにより換算した値である。
【0031】
そして、本発明の弾性糸を構成するポリウレタンとして特に好ましいものは、工程通過性も含め、実用上の問題がなく、かつ、高耐熱性に優れたものを得る観点から、ジオールとジイソシアネートからなり、かつ高温側の融点が150℃以上300℃以下の範囲となるものである。ここで、高温側の融点とは、DSCで測定した際のポリウレタンまたはポリウレタンウレアのいわゆるハードセグメント結晶の融点が該当する。
【0032】
即ち、ポリマージオールとして分子量が1000以上8000以下の範囲にあるPTMG、ジイソシアネートとしてMDI、鎖伸長剤としてエチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオール、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミンからなる群から少なくとも1種選ばれたものが使用されてポリウレタンが合成され、かつ、高温側の融点が150℃以上300℃以下の範囲であるポリウレタンから製造された弾性糸は、特に伸度が高くなり、さらに上記のように、工程通過性も含め、実用上の問題はなく、かつ、高耐熱性に優れるので好ましい。
【0033】
本発明のポリウレタン弾性糸は、下記(a−1)〜(a−3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の共重合体(a)と、下記(b−1)〜(b−4)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物(b)とを含有することを特徴とするものである。
<共重合体(a)>
(a−1)ビニルアルコールとビニルアセタールとの共重合体
(a−2)酢酸ビニルとビニルアセタールとの共重合体
(a−3)ビニルアルコールと酢酸ビニルとビニルアセタールとの共重合体
<金属化合物(b)>
(b−1)ハイドロタルサイト類化合物
(b−2)ハンタイトとハイドロマグネサイトの混合物
(b−3)Ca、Mg、AlもしくはBaから選ばれた金属の炭酸塩、酸化物、および水酸化物
(b−4)Ca、Mg、AlもしくはBaから選ばれた金属の2種以上からなる複合酸化物
(a−1)〜(a−3)に示す共重合体(a)は、一般的にポリ酢酸ビニルのアセチル基の一部または全体が加水分解されることによって水酸基に変換されて製造されるビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体を、アルデヒドでアセタール化して得られる。
【0034】
具体的には、次の一般式に示すような構造を有しているものであることが好ましく、例えばビニルアルコール−酢酸ビニル−ビニルホルマール共重合体、ビニルアルコール−酢酸ビニル−ビニルブチラール共重合体等がより好ましい。
【0035】
【化3】

【0036】
(但し、Rは水素又はアルキル基。各構造単位はブロック共重合でもランダム共重合でもよい。)
上記一般式で示される物質においては、溶媒への親和性を良好にし、金属化合物をより均一に分散させるために、x+y≧70mol%で、且つ、x≧40mol%であることが好ましい。
【0037】
さらに、共重合体(a)の数平均分子量は、金属化合物をより均一に分散させるために、1000以上100000以下の範囲が好ましい。ここでの数平均分子量はGPCで測定して求めることができ、ポリスチレン換算値である。
【0038】
一方、金属化合物(b)としては、上述したように(b−1)〜(b−4)の少なくとも1種を含有させることが必要である。例えば、ハイドロタルサイト類化合物としては、MgAl(OH)16CO・4HOやMg4.5Al(OH)13CO・3.5HO等が好ましい。また、ハンタイトとハイドロマグネサイトの混合物であるMgCa(CO及びMg(CO・Mg(OH)・4HOの混合物も好ましい。また、Ca、Mg、AlもしくはBaから選ばれた金属の炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等が好ましい。酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等が好ましく、水酸化物としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が好ましい。複合酸化物としては、MgO・Al等が好ましい。
【0039】
上記金属化合物(b)の中でも、特には、ハイドロタルサイト類化合物MgAl(OH)16CO・4HO、ハンタイトとハイドロマグネサイトの混合物、複合酸化物MgO・Alが好ましい。こうした金属化合物(b)を含有させることにより、耐塩素水性の効果を高めることができる。
【0040】
ここで、本発明においては、金属化合物(b)ととともに共重合体(a)を同時に含有せしめることで、金属化合物(b)の含有量を高めつつも該金属化合物(b)を均一に分散配合することができる。そのため、耐塩素性に優れ、かつ、長期にわたって安定紡糸されることで染色ムラも抑制でき、良好な品位を有する生地を提供することが可能なポリウレタン弾性糸となる。この効果を十分なものとし、かつ、繊維の物理的特性に悪影響を与えない観点から、共重合体(a)と金属化合物(b)の成分比(重量%比)は、(a)/(b)=1/9〜4/6の範囲が好ましく、さらには(a)/(b)=1.5/8.5〜3/7の範囲が好ましい。また同様の理由から、金属化合物(b)はポリウレタン系弾性糸の重量に対して0.1〜10重量%含有されるのが好ましく、1〜6重量%含有されるのがより好ましい。
【0041】
金属化合物(b)は、ポリウレタン系弾性糸の紡糸溶液中に配合されるので、紡糸安定性の観点から、平均粒径2μm以下の微細な粉末であることが好ましく、平均粒径1μm以下の微細な粉末であることがより好ましい。
【0042】
また、この金属化合物(b)の糸中への分散性をさらに向上させ、紡糸を安定化させる等の目的で、例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、リン酸エステル、ポリオール系有機物等の有機物、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、水ガラス、脂肪酸金属塩またはこれらの混合物で表面処理された金属化合物(b)を用いることも好ましい。
【0043】
さらに、本発明において、ポリウレタン弾性糸やポリウレタン紡糸液中に、各種安定剤や顔料などが含有されていてもよい。例えば、耐光剤、酸化防止剤などに2,6−ジ−tブチル−pクレゾール(BHT)や住友化学工業株式会社製の“スミライザーGA−80”(製品名)などのヒンダードフェノール系薬剤、各種のチバガイギー社製“チヌビン”(登録商標)などのベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系薬剤、住友化学工業株式会社製の“スミライザーP−16”(製品名)などのリン系薬剤、各種のヒンダードアミン系薬剤、酸化鉄、酸化チタン、カーボンブラックなどの各種無機顔料、フッ素系またはシリコーン系樹脂粉体、ステアリン酸マグネシウムなどの金属石鹸、また、銀やこれらの化合物などを含む殺菌剤、消臭剤、またシリコーン、鉱物油などの滑剤、硫酸バリウム、酸化セリウム、ベタインやリン酸系などの各種の帯電防止剤などが含まれることも好ましく、またこれらとポリマとを反応させることも好ましい。そして、特に光や各種の酸化窒素などへの耐久性をさらに高めるには、酸化窒素補足剤が使用されることも好ましい。
【0044】
また、耐熱性向上や機能性向上の観点から、無機物や無機多孔質(例えば、竹炭、木炭、カーボンブラック、多孔質泥、粘土、ケイソウ土、ヤシガラ活性炭、石炭系活性炭、ゼオライト、パーライト等)を、本発明の効果を阻害しない範囲内で添加されてもよい。
【0045】
これらのその他の添加剤は、ポリウレタン溶液と前記した共重合体(a)、金属化合物(b)との混合により紡糸原液を調製する際に添加してもよいし、また、混合前のポリウレタン溶液中や分散液中に予め含有させておいてもよい。これら添加剤の含有量は目的等に応じて適宜決定される。
【0046】
次に本発明のポリウレタン弾性糸の製造方法について詳細に説明する。
【0047】
本発明の製造方法においては、ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質するポリウレタンを含む紡糸原液に、上記の(a−1)〜(a−3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の共重合体(a)を分散剤として含有する、(b−1)〜(b−4)の群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物(b)の分散液を含有させて、紡糸を行う。
【0048】
かかる共重合体(a)を分散剤として含有する金属化合物(b)の分散液は、予めポリウレタンを含む紡糸溶液を作製しておき、その後で上記分散液を該紡糸溶液に添加するのが好ましい。
【0049】
ポリウレタン溶液、また、その溶液中の溶質であるポリウレタンを製造する方法は、溶融重合法、溶液重合法のいずれであってもよく、他の方法であってもよい。しかし、より好ましいのは溶液重合法である。溶液重合法の場合には、ポリウレタンにゲルなどの異物の発生が少ないので、紡糸しやすく、低繊度のポリウレタン糸を製造しやすい。また、溶液重合の場合、溶液にする操作が省けるという利点がある。
【0050】
そして本発明に特に好適なポリウレタンとしては、ポリマージオールとして分子量が1000以上8000以下のPTMGを用い、ジイソシアネートとしてMDIを用い、さらに、鎖伸長剤としてエチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオール、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミンのうちの少なくとも1種を使用して合成され、かつ、高温側の融点が200℃以上300℃以下の範囲のものが挙げられる。
【0051】
かかるポリウレタンは、例えば、DMAc、DMF、DMSO、NMPなどやこれらを主成分とする溶剤の中で、上記の原料を用い合成することにより得られる。例えば、こうした溶剤中に、各原料を投入、溶解させ、適度な温度に加熱し反応させてポリウレタンとする、いわゆるワンショット法、また、ポリマージオールとジイソシアネートを、まず溶融反応させ、しかる後に、反応物を溶剤に溶解し、前述のジオールと反応させてポリウレタンとする方法などが、特に好適な方法として採用され得る。
【0052】
鎖伸長剤にジオールを用いる場合、ポリウレタンの高温側の融点を150℃以上300℃以下の範囲内とするための代表的な方法としては、ポリマージオール、MDI、ジオールの種類と比率をコントロールすることが挙げられる。例えば、ポリマージオールの分子量が低い場合には、MDIの割合を相対的に多くすることにより、高温側の融点が高いポリウレタンを得ることができる。また、同様にジオールの分子量が低いときはポリマージオールの割合を相対的に少なくすることにより、高温側の融点が高いポリウレタンを得ることができる。ポリマージオールの分子量が1800以上の場合、高温側の融点を150℃以上にするには、(MDIのモル数)/(ポリマージオールのモル数)=1.5以上の割合で、重合を進めることが好ましい。
【0053】
なお、かかるポリウレタンの合成に際し、アミン系触媒や有機金属触媒等の触媒が1種もしくは2種以上混合して使用されることも好ましい。
【0054】
アミン系触媒としては、例えば、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ビス−2−ジメチルアミノエチルエーテル、N,N,N’,N’,N’−ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルグアニジン、トリエチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチル−N’−ジメチルアミノエチル−ピペラジン、N−(2−ジメチルアミノエチル)モルホリン、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルアミノヘキサノール、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0055】
また、有機金属触媒としては、オクタン酸スズ、二ラウリン酸ジブチルスズ、オクタン酸鉛ジブチル等が挙げられる。
【0056】
こうして得られるポリウレタン溶液におけるポリウレタンの濃度は、通常、30重量%以上80重量%以下の範囲が好ましい。
【0057】
本発明においては、かかるポリウレタン溶液に、上記共重合体(a)を分散剤として含有する金属化合物(b)の分散液を添加する。かかる分散液のポリウレタン溶液への添加方法としては、任意の方法が採用できる。その代表的な方法としては、スタティックミキサーによる方法、攪拌による方法、ホモミキサーによる方法、2軸押し出し機を用いる方法など各種の手段が採用できる。なお、上記分散液を添加した後、混合溶液の溶液粘度が添加前のポリウレタンの溶液粘度に比べ予想以上に高くなる現象が発生する場合がある。この現象を防止する観点から、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルメチルアミン、イソブチルメチルアミン、イソペンチルメチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミンなどのモノアミン、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アリルアルコール、シクロペンタノールなどのモノオール、フェニルイソシアネートなどのモノイソシアネートなどの末端封鎖剤を1種または2種以上混合して使用することも好ましい。
【0058】
また、前記分散液のポリウレタン溶液への添加の際に、前記した、例えば、耐光剤、耐酸化防止剤などの薬剤や顔料などを同時に添加してもよい。
【0059】
以上のように構成した紡糸原液を、たとえば乾式紡糸、湿式紡糸、もしくは溶融紡糸し、巻き取ることで、本発明のポリウレタン弾性糸を得ることができる。中でも、細物から太物まであらゆる繊度において安定に紡糸できるという観点から、乾式紡糸が好ましい。
【0060】
本発明のポリウレタン弾性糸の繊度、単糸数、断面形状などは特に限定されるものではない。例えば、糸は1単糸で構成されるモノフィラメントでもよく、また複数単糸で構成されるマルチフィラメントでもよい。糸の断面形状は円形であってもよく、また扁平であってもよい。
【0061】
そして、乾式紡糸方式についても特に限定されるものではなく、所望する特性や紡糸設備に見合った紡糸条件等を適宜選択して紡糸すればよい。
【0062】
たとえば、本発明のポリウレタン弾性糸の永久歪率と応力緩和の特性は、特にゴデローラーと巻取機の速度比の影響を受けやすいので、糸の使用目的に応じて適宜決定されるのが好ましい。すなわち、所望の永久歪率と応力緩和を有するポリウレタン弾性糸を得る観点から、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.15以上1.65以下の範囲として巻き取ることが好ましい。また、紡糸速度を高くすることによってポリウレタン弾性糸の強度を向上させることができるので、450m/分以上の紡糸速度をとることが、実用上好適な強度水準とするために好ましい。さらに工業生産の点を考慮すると、450〜1000m/分程度が好ましい。
【0063】
以上のようなポリウレタン弾性糸は、編成、織成、紐加工に好適であり、単独での使用はもとより、各種繊維との組み合わせにより、優れたストレッチ布帛とすることができる。特に上記ポリウレタン弾性糸は、金属化合物(b)ととともに共重合体(a)を同時に含有せしめることで、金属化合物(b)の含有量を高めつつも該金属化合物(b)を均一に分散配合することができる。そのため、耐塩素性に優れ、かつ、長期にわたって安定紡糸も可能となる。そして、この繊維を用いて布帛とした場合には、編み目等のムラや染色ムラも抑えられ、良好な品位を有する生地を提供することが可能となる。
【実施例】
【0064】
本発明を実施例によってさらに詳しく説明する。
【0065】
本発明におけるポリウレタン弾性糸の強度、伸度、永久歪率、応力緩和、耐塩素脆化能、染色ストレッチ布帛の外観品位の測定法を説明する。
【0066】
[永久歪率、応力緩和、破断強度、破断伸度]
インストロン4502型引張試験機を用い、ポリウレタン弾性糸を引張テストすることにより、永久歪率、応力緩和、破断強度、破断伸度を測定した。測定回数はn=3で測定し、それらの平均値を採用した。
【0067】
試長5cm(L1)の試料を50cm/分の引張速度で300%伸長を5回繰返し、5回目の300%伸長時の応力を(G1)とした。次に試料の長さを300%伸長のまま30秒間保持した。30秒間保持後の応力を(G2)とした。次に試料の伸長を回復せしめ応力が0になった際の試料の長さを(L2)とした。さらに6回目に試料が切断するまで伸長した。この破断時の応力を(G3)、破断時の試料長さを(L3)とした。以下、上記特性は下記式により算出される。
破断強度(cN)=(G3)
応力緩和(%)=100×((G1)−(G2))/(G1)
永久歪率(%)=100×((L2)−(L1))/(L1)
破断伸度(%)=100×((L3)−(L1))/(L1)。
【0068】
[耐塩素脆化能]
次亜塩素酸ナトリウム液をイオン交換水で希釈して有効塩素濃度3ppm、さらに尿素濃度3ppmとし、硫酸の緩衝溶液でpH7.2に調整した塩素水を28℃に温度調節した恒温槽に試料糸を5gの荷重をかけて浸漬し、試料糸が切れるまでの時間を評価した。
測定はn=5で行い、その平均値を採用した。
【0069】
[耐塩素剤の脱落量]
pH5.7に調製した浴を130℃に加温し、試料糸5gを60分浸漬する。次に、ハイドロサルファイト、NaOH、精錬剤サンモールWX−24を加えた浴を80℃に加熱し、20分浸漬する。処理後の試料糸を900℃の電気炉で灰化し、重量を測定する。灰化物の重量から、金属化合物の重量(W1)に換算し、下記式により、耐塩素剤の脱落量を算出する。測定は、n=2で行い、その平均値を採用した。
脱落量(%)=100×(W0−W1)/(W0)
W0:金属化合物の理論含有量
[染色ストレッチ布帛の外観品位]
ストレッチ布帛を平坦な作業台上にしわが出来ないよう静置し、目視で観察し、次の基準を参考に点数を付けた。なお、判定は、5人以上で行い、平均点を採用した。
5点:たるみやスジ、糸切れが無く、実使用に全く問題ない。
3点:ややたるみはあるが、スジ、糸切れが無く実使用上問題ないと思われる。
0点:たるみ、糸切れ、スジがあり、使用不可である。
【0070】
[実施例1]
分子量1800のPTMG、MDI、エチレンジアミン、および末端封鎖剤としてジエチルアミンからなるポリウレタンウレア重合体(P1)のDMAc溶液(35重量%)を常法により重合し、ポリマ溶液P1とした。
【0071】
次に、共重合体(a)としてポリ酢酸ビニルを加水分解して得られたポリビニルアルコールの一部を、ブタノールでアセタール化して得たポリビニルアルコール/ビニルブチラール共重合体=3/7(上記(a−1)に該当)を用い、そのDMAc溶液を調製し、該DMAc溶液に、さらに金属化合物(b)としてハイドロタルサイト(戸田工業(株)製NAOX−19、上記(b−1)に該当)を加え、金属化合物分散液A1(35重量%)とした。共重合体(a)と金属化合物(b)との成分比(重量%比)は、(a)/(b)=2/8の割合とした。その調整には、水平ミルWILLY A.BACHOFEN社製DYNO−MIL KDLを用い、85%ジルコニアビーズを充填、50g/分の流速の条件で均一に微分散させた。
【0072】
さらに、酸化防止剤として、t−ブチルジエタノールアミンとメチレン−ビス−(4−シクロヘキシルイソシアネ−ト)の反応によって生成せしめたポリウレタン溶液(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2462、c1)と、p−クレゾ−ル及びジビニルベンゼンの縮合重合体(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2390、c2)とを2対1(重量比)で混合し、酸化防止剤DMAc溶液(濃度35重量%)を調整し、これをその他添加剤溶液C1(35重量%)とした。
【0073】
ポリマ溶液P1、金属化合物分散液A1、その他添加剤溶液C1を、それぞれ90.75重量%、6.25重量%、3重量%で均一に混合し、紡糸溶液D1とした。
【0074】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比1.20として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、40デシテックス、4フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。
【0075】
さらに次の方法でストレッチ織物を製作し、外観品位を評価した。ポリウレタン弾性糸と、ポリヘキサメチレンアジパミドを溶融紡糸して得られたポリアミド繊維(50デニール/17フィラメント)とを、トリコット機を用いて編成し、経編2wayトリコットを作製した。編み組織はハーフ、編立ては、フロントにポリアミド繊維、バックにポリウレタン弾性繊維を配し、28ゲージ、フロントランナー160cm、バックランナー80cm、の条件で行った。
【0076】
得られた2wayトリコット生機を精錬、リラックス、乾燥、ヒートセットして、染色を行った。染色は、染料としてIrgalan Black BGK(CHIBA Specialty Chemicals(株)、商品名)4.0%owf、均染剤としてニューボンSZ(日華化学(株)、商品名)2.0%owf、pHコントロール剤としてNCアシッドW(日華化学(株)、商品名)0.3g/Lの浴中にて、98℃で40分間処理した。この染色した2wayトリコットに天然タンニンを含むフィックス処理を行った。フィックス処理は、ハイフィックスSL(天然タンニン酸と吐酒石の配合物、大日本製薬(株)製 )5%owfの浴中にて、80℃で20分間処理し、2wayトリコットの染色布帛を作成した。
【0077】
このポリウレタン弾性糸の紡糸性、破断伸度、破断強度、永久歪率、応力緩和、耐塩素脆化性能、耐塩素剤の脱落量およびストレッチ織物の外観品位の評価結果を表2に示す。
【0078】
[実施例2]
共重合体(a)として実施例1で用いたポリビニルアルコール/ビニルブチラール共重合体=3/7(上記(a−1)に該当)を用い、そのDMAc溶液を調製し、該DMAc溶液に、さらに金属化合物(b)として炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製、上記(b−3)に該当)を加え、金属化合物分散液A2(35重量%)とした。
【0079】
実施例1で調製したポリマ溶液P1、金属化合物分散液A2、その他添加剤溶液C1を、それぞれ90.75重量%、6.25重量%、3重量%で均一に混合し、紡糸溶液D2とした。
【0080】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比1.20として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、40デシテックス、4フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。また、実施例1と同様に織物を製作し、外観品位を評価した。
【0081】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の紡糸性、破断伸度、破断強度、永久歪率、応力緩和、耐塩素脆化性能、耐塩素剤の脱落量およびストレッチ織物の外観品位の評価結果を表2に示す。
【0082】
[実施例3]
共重合体(a)としてポリ酢酸ビニルを加水分解して得られたポリ酢酸ビニル/ポリビニルアルコール共重合体のポリビニルアルコールを、ブタノールでアセタール化して得たポリ酢酸ビニル/ビニルブチラール共重合体=4/6(上記(a−2)に該当)を用い、そのDMAc溶液を調製し、該DMAc溶液に、さらに金属化合物(b)としてハンタイトとハイドロマグネサイト=50/50混合物(英国 Microfine Minerals Ltd.製、(b−2)に該当)を加え、金属化合物分散液A3(35重量%)とした。
【0083】
実施例1で調製したポリマ溶液P1、金属化合物分散液A3、その他添加剤溶液C1を、それぞれ90.75重量%、6.25重量%、3重量%で均一に混合し、紡糸溶液D3とした。
【0084】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比1.20として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、40デシテックス、4フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。また、実施例1と同様に織物を製作し、外観品位を評価した。
【0085】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の紡糸性、破断伸度、破断強度、永久歪率、応力緩和、耐塩素脆化性能、耐塩素剤の脱落量およびストレッチ織物の外観品位の評価結果を表2に示す。
【0086】
[実施例4]
共重合体(a)として実施例3で用いたポリ酢酸ビニル/ビニルブチラール共重合体=4/6(上記(a−2)に該当)を用い、そのDMAc溶液を調製し、該DMAc溶液に、さらに金属化合物(b)としてハイドロタルサイト(戸田工業(株)製NAOX−19)を900℃で焼成して得られた複合酸化物MgO・Al(上記(b−4)に該当)を加え、金属化合物分散液A4(35重量%)とした。
【0087】
実施例1で調製したポリマ溶液P1、金属化合物分散液A4、その他添加剤溶液C1を、それぞれ90.75重量%、6.25重量%、3重量%で均一に混合し、紡糸溶液D4とした。
【0088】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比1.20として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、40デシテックス、4フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。また、実施例1と同様に織物を製作し、外観品位を評価した。
【0089】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の紡糸性、破断伸度、破断強度、永久歪率、応力緩和、耐塩素脆化性能、耐塩素剤の脱落量およびストレッチ織物の外観品位の評価結果を表2に示す。
【0090】
[実施例5]
共重合体(a)として、各組成のモル比が2/3/5であるポリビニルアルコール/酢酸ビニル/ビニルホルマール共重合体(電気化学工業(株)製デンカホルマール、上記(a−3)に該当)を用い、そのDMAc溶液を調製し、該DMAc溶液に、さらに金属化合物(b)としてハイドロタルサイト(戸田工業(株)製NAOX−19、上記(b−1)に該当)を加え、金属化合物分散液A5(35重量%)とした。共重合体(a)と金属化合物(b)との成分比(重量%比)は、(a)/(b)=2/8の割合とした。
【0091】
ポリマ溶液P1、金属化合物分散液A5、その他添加剤溶液C1を、それぞれ90.75重量%、6.25重量%、3重量%で均一に混合し、紡糸溶液D5とした。
【0092】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比1.20として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、40デシテックス、4フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。また、実施例1と同様に織物を製作し、外観品位を評価した。
【0093】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の紡糸性、破断伸度、破断強度、永久歪率、応力緩和、耐塩素脆化性能、耐塩素剤の脱落量およびストレッチ織物の外観品位の評価結果を表2に示す。
【0094】
[実施例6]
共重合体(a)として各組成のモル比が1/4/5であるポリビニルアルコール/酢酸ビニル/ビニルブチラール共重合体(電気化学工業(株)製デンカブチラール、上記(a−3)に該当)を分散剤として用い、さらに金属化合物(b)として、ハイドロタルサイト(戸田工業(株)製NAOX−19、上記(b−1)に該当)を用い、実施例1と同じ方法でそのDMAc分散液を調製し、DMAc溶液A6(35重量%)とした。共重合体(a)と金属化合物(b)の成分比(重量%比)は、(a)/(b)=2/8の割合とした。
【0095】
実施例1で調整したポリマ溶液P1、上記の金属化合物の分散液A6、及び、その他添加剤溶液C1を、それぞれ90.75重量%、6.25重量%、3重量%で均一に混合し、紡糸溶液D6とした。
【0096】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比1.20として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、40デシテックス、4フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。また、実施例1と同様に織物を製作し、外観品位を評価した。
【0097】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の紡糸性、破断伸度、破断強度、永久歪率、応力緩和、耐塩素脆化性能、耐塩素剤の脱落量およびストレッチ織物の外観品位の評価結果を表2に示す。
[実施例7]
共重合体(a)として各組成のモル比が1/4/5であるポリビニルアルコール/酢酸ビニル/ビニルブチラール共重合体(電気化学工業(株)製デンカブチラール、上記(a−3)に該当)を分散剤として用い、さらに金属化合物(b)として、ハンタイトとハイドロマグネサイト=50/50混合物(英国 Microfine Minerals Ltd.製、(b−2)に該当)を用い、実施例1と同じ方法でそのDMAc分散液を調製し、DMAc溶液A7(35重量%)とした。共重合体(a)と金属化合物(b)の成分比(重量%比)は、(a)/(b)=2/8の割合とした。
【0098】
実施例1で調整したポリマ溶液P1、上記の金属化合物の分散液A7、及び、その他添加剤溶液C1を、それぞれ90.75重量%、6.25重量%、3重量%で均一に混合し、紡糸溶液D7とした。
【0099】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比1.20として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、40デシテックス、4フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。また、実施例1と同様に織物を製作し、外観品位を評価した。
【0100】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の紡糸性、破断伸度、破断強度、永久歪率、応力緩和、耐塩素脆化性能、耐塩素剤の脱落量およびストレッチ織物の外観品位の評価結果を表2に示す。
【0101】
[実施例8]
共重合体(a)として各組成のモル比が1/4/5であるポリビニルアルコール/酢酸ビニル/ビニルブチラール共重合体(電気化学工業(株)製デンカブチラール、上記(a−3)に該当)を分散剤として用い、さらに金属化合物(b)として、炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製、上記(b−3)に該当)を用い、実施例1と同じ方法でそのDMAc分散液を調製し、DMAc溶液A8(35重量%)とした。共重合体(a)と金属化合物(b)の成分比(重量%比)は、(a)/(b)=2/8の割合とした。
【0102】
実施例1で調整したポリマ溶液P1、上記の金属化合物の分散液A8、及び、その他添加剤溶液C1を、それぞれ90.75重量%、6.25重量%、3重量%で均一に混合し、紡糸溶液D8とした。
【0103】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比1.20として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、40デシテックス、4フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。また、実施例1と同様に織物を製作し、外観品位を評価した。
【0104】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の紡糸性、破断伸度、破断強度、永久歪率、応力緩和、耐塩素脆化性能、耐塩素剤の脱落量およびストレッチ織物の外観品位の評価結果を表2に示す。
【0105】
[実施例9]
共重合体(a)として各組成のモル比が1/4/5であるポリビニルアルコール/酢酸ビニル/ビニルブチラール共重合体(電気化学工業(株)製デンカブチラール、上記(a−3)に該当)を分散剤として用い、さらに金属化合物(b)として、ハイドロタルサイト(戸田工業(株)製NAOX−19)を900℃で焼成して得られた複合酸化物MgO・Al(上記(b−4)に該当)を用い、実施例1と同じ方法でそのDMAc分散液を調製し、DMAc溶液A9(35重量%)とした。共重合体(a)と金属化合物(b)の成分比(重量%比)は、(a)/(b)=2/8の割合とした。
【0106】
実施例1で調整したポリマ溶液P1、上記の金属化合物の分散液A9、及び、その他添加剤溶液C1を、それぞれ90.75重量%、6.25重量%、3重量%で均一に混合し、紡糸溶液D9とした。
【0107】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比1.20として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、40デシテックス、4フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。また、実施例1と同様に織物を製作し、外観品位を評価した。
【0108】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の紡糸性、破断伸度、破断強度、永久歪率、応力緩和、耐塩素脆化性能、耐塩素剤の脱落量およびストレッチ織物の外観品位の評価結果を表2に示す。
【0109】
[実施例10]
共重合体(a)として各組成のモル比が1/4/5であるポリビニルアルコール/酢酸ビニル/ビニルブチラール共重合体(電気化学工業(株)製デンカブチラール)を分散剤として用い、さらに金属化合物(b)として、ハイドロタルサイト(戸田工業(株)製NAOX−19)を加え、分散液を調製し、DMAc分散液A10(35重量%)とした。共重合体(a)と金属化合物(b)の成分比(重量%比)は、(a)/(b)=1.2/8.8の割合とした。
【0110】
実施例1で調整したポリマ溶液P1、金属化合物の分散液A10及びその他添加剤溶液C1を、それぞれ91.3重量%、5.7重量%、3重量%で均一に混合し、紡糸溶液D10とした。
【0111】
この紡糸溶液D10をゴデローラーと巻取機の速度比1.20として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、40デシテックス、4フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。また、実施例1と同様に織物を製作し、外観品位を評価した。
【0112】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の紡糸性、破断伸度、破断強度、永久歪率、応力緩和、耐塩素脆化性能、耐塩素剤の脱落量およびストレッチ織物の外観品位の評価結果を表2に示す。
【0113】
[実施例11]
共重合体(a)として各組成のモル比が1/4/5であるポリビニルアルコール/酢酸ビニル/ビニルブチラール共重合体(電気化学工業(株)製デンカブチラール)を分散剤として用い、さらに金属化合物(b)として、ハイドロタルサイト(戸田工業(株)製NAOX−19)を加え、分散液を調製し、DMAc分散液A11(35重量%)とした。共重合体(a)と金属化合物(b)の成分比(重量%比)は、(a)/(b)=3.8/6.2の割合とした。
【0114】
実施例1で調整したポリマ溶液P1、金属化合物の分散液A11及びその他添加剤溶液C1を、それぞれ88.9重量%、8.1重量%、3重量%で均一に混合し、紡糸溶液D11とした。
【0115】
この紡糸溶液D11をゴデローラーと巻取機の速度比を1.20として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、40デシテックス、4フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。また、実施例1と同様に織物を製作し、外観品位を評価した。
【0116】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の紡糸性、破断伸度、破断強度、永久歪率、応力緩和、耐塩素脆化性能、耐塩素剤の脱落量およびストレッチ織物の外観品位の評価結果を表2に示す。
[実施例12]
共重合体(a)として各組成のモル比が1/4/5であるポリビニルアルコール/酢酸ビニル/ビニルブチラール共重合体(電気化学工業(株)製デンカブチラール)を分散剤として用い、さらに金属化合物(b)として、ハイドロタルサイト(戸田工業(株)製NAOX−19)を加え、分散液を調製し、DMAc分散液A12(35重量%)とした。共重合体(a)と金属化合物(b)の成分比(重量%比)は、(a)/(b)=0.8/9.2の割合とした。
【0117】
実施例1で調整したポリマ溶液P1、金属化合物の分散液A12及びその他添加剤溶液C1を、それぞれ91.6重量%、5.4重量%、3重量%で均一に混合し、紡糸溶液D12とした。
【0118】
この紡糸溶液D12をゴデローラーと巻取機の速度比1.20として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、40デシテックス、4フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。また、実施例1と同様に織物を製作し、外観品位を評価した。
【0119】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の紡糸性、破断伸度、破断強度、永久歪率、応力緩和、耐塩素脆化性能、耐塩素剤の脱落量およびストレッチ織物の外観品位の評価結果を表2に示す。
【0120】
[実施例13]
共重合体(a)として各組成のモル比が1/4/5であるポリビニルアルコール/酢酸ビニル/ビニルブチラール共重合体(電気化学工業(株)製デンカブチラール)を分散剤として用い、さらに金属化合物(b)として、ハイドロタルサイト(戸田工業(株)製NAOX−19)を加え、分散液を調製し、DMAc分散液A13(35重量%)とした。共重合体(a)と金属化合物(b)の成分比(重量%比)は、(a)/(b)=4.4/5.6の割合とした。
【0121】
実施例1で調整したポリマ溶液P1、金属化合物の分散液A13及びその他添加剤溶液C1を、それぞれ88.0重量%、9.0重量%、3重量%で均一に混合し、紡糸溶液D13とした。
【0122】
この紡糸溶液D13をゴデローラーと巻取機の速度比を1.20として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、40デシテックス、4フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。また、実施例1と同様に織物を製作し、外観品位を評価した。
【0123】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の紡糸性、破断伸度、破断強度、永久歪率、応力緩和、耐塩素脆化性能、耐塩素剤の脱落量およびストレッチ織物の外観品位の評価結果を表2に示す。
【0124】
[実施例14]
共重合体(a)として各組成のモル比が4/3/3であるポリビニルアルコール/酢酸ビニル/ビニルブチラール共重合体(電気化学工業(株)製デンカブチラール、上記(a−3)に該当)を分散剤として用い、さらに金属化合物(b)として、ハイドロタルサイト(戸田工業(株)製NAOX−19)を加え、分散液を調製し、DMAc分散液A14(35重量%)とした。共重合体(a)と金属化合物(b)の成分比(重量%比)は、(a)/(b)=2/8の割合とした。
【0125】
実施例1で調整したポリマ溶液P1、金属化合物の分散液A14及びその他添加剤溶液C1を、それぞれ88.0重量%、9.0重量%、3重量%で均一に混合し、紡糸溶液D14とした。
【0126】
この紡糸溶液D14をゴデローラーと巻取機の速度比を1.20として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、40デシテックス、4フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。また、実施例1と同様に織物を製作し、外観品位を評価した。
【0127】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の紡糸性、破断伸度、破断強度、永久歪率、応力緩和、耐塩素脆化性能、耐塩素剤の脱落量およびストレッチ織物の外観品位の評価結果を表2に示す。
【0128】
[比較例1]
実施例1で調整したポリマ溶液P1、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液C1を、それぞれ、97重量%、3重量%の割合で均一混合し、紡糸溶液E1とした。この紡糸溶液E1をゴデローラーと巻取機の速度比を1.20として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、40デシテックス、4フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。また、実施例1と同様に織物を製作し、外観品位を評価した。
【0129】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の紡糸性、破断伸度、破断強度、永久歪率、応力緩和、耐塩素脆化性能、耐塩素剤の脱落量およびストレッチ織物の外観品位の評価結果を表2に示す。
【0130】
[比較例2]
金属化合物(b)として、酸化亜鉛(本荘ケミカル(株)製)を用い、分散剤としてポリエーテルエステル酸アミン塩を用い、DMAcに分散させ、分散液A15(35重量%)とした。実施例1で調整したポリマ溶液P1、上記の金属化合物分散液A15及び実施例1で調整したその他添加剤溶液添加剤溶液C1を、それぞれ、90.75重量%、6.25重量%、3重量%の割合で均一混合し、紡糸溶液E2とした。
【0131】
この紡糸溶液E2をゴデローラーと巻取機の速度比を1.20として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、40デシテックス、4フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。また、実施例1と同様に織物を製作し、外観品位を評価した。
【0132】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の紡糸性、破断伸度、破断強度、永久歪率、応力緩和、耐塩素脆化性能、耐塩素剤の脱落量およびストレッチ織物の外観品位の評価結果を表2に示す。
【0133】
[比較例3]
金属化合物(b)として、ハイドロタルサイト(戸田工業(株)製NAOX−19)を用い、分散剤としてポリビニルアルコールを用い、DMAcに分散させ、分散液A16(35重量%)とした。実施例1で調整したポリマ溶液P1、上記の金属化合物分散液A16及び実施例1で調整したその他添加剤溶液添加剤溶液C1を、それぞれ、90.75重量%、6.25重量%、3重量%の割合で均一混合し、紡糸溶液E3とした。
【0134】
この紡糸溶液E3をゴデローラーと巻取機の速度比を1.20として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、40デシテックス、4フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。また、実施例1と同様に織物を製作し、外観品位を評価した。
【0135】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の紡糸性、破断伸度、破断強度、永久歪率、応力緩和、耐塩素脆化性能、耐塩素剤の脱落量およびストレッチ織物の外観品位の評価結果を表2に示す。
【0136】
[比較例4]
金属化合物(b)として、ハイドロタルサイト(戸田工業(株)製NAOX−19)を用い、分散剤としてポリビニルアルコールスルホン酸変性物を用い、DMAcに分散させ、分散液A17(35重量%)とした。実施例1で調整したポリマ溶液P1、上記の金属化合物分散液A17及び実施例1で調整したその他添加剤溶液C1を、それぞれ、90.75重量%、6.25重量%、3重量%の割合で均一混合し、紡糸溶液E4とした。
【0137】
この紡糸溶液E4をゴデローラーと巻取機の速度比を1.20として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、40デシテックス、4フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。また、実施例1と同様に織物を製作し、外観品位を評価した。
【0138】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の紡糸性、破断伸度、破断強度、永久歪率、応力緩和、耐塩素脆化性能、耐塩素剤の脱落量およびストレッチ織物の外観品位の評価結果を表2に示す。
【0139】
【表1】

【0140】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明のポリウレタン弾性糸は、連続紡糸安定性や耐塩素性のみならず、高強伸度、高回復性、耐アルカリ性、各種薬剤への耐性、高耐熱性を有するものであり、さらに、透明度も高い。したがって、この弾性糸を使用した布帛は、水着のみならず、一般の衣服などにも好適に用いられ、それらは脱着性、フィット性、着用感、染色性、耐変色性、外観品位などに優れたものとなる。その布帛の具体的用途としては、ソックス、ストッキング、丸編、トリコット、水着、スキーズボン、作業服、煙火服、ゴルフズボン、ウエットスーツ、ブラジャー、ガードル、手袋等の各種繊維製品、締め付け材料、さらには、紙おしめなどサニタリー品の漏れ防止用締め付け材料、防水資材の締め付け材料、似せ餌、造花、電気絶縁材、ワイピングクロス、コピークリーナー、ガスケットなどが挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンからなるポリウレタン弾性糸であって、下記(a−1)〜(a−3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の共重合体(a)と、下記(b−1)〜(b−4)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物(b)とを含有しているポリウレタン弾性糸。
(a−1)ビニルアルコールとビニルアセタールとの共重合体
(a−2)酢酸ビニルとビニルアセタールとの共重合体
(a−3)ビニルアルコールと酢酸ビニルとビニルアセタールとの共重合体
(b−1)ハイドロタルサイト類化合物
(b−2)ハンタイトとハイドロマグネサイトの混合物
(b−3)Ca、Mg、AlもしくはBaから選ばれた金属の炭酸塩、酸化物、および水酸化物
(b−4)Ca、Mg、AlもしくはBaから選ばれた金属の2種以上からなる複合酸化物
【請求項2】
前記共重合体(a)と前記金属化合物(b)との成分比(重量%比)が(a)/(b)=1/9〜4/6である、請求項1に記載のポリウレタン弾性糸。
【請求項3】
前記共重合体(a)が下記式(1)に示す構造を有している、請求項1または2に記載のポリウレタン弾性糸。
【化1】

(但し、Rは水素又はアルキル基。各構造単位はブロック共重合でもランダム共重合でもよい。)
【請求項4】
前記式(1)に示す共重合体(a)は、x+y≧70mol%で、且つ、x≧40mol%である、請求項3に記載のポリウレタン弾性糸。
【請求項5】
ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンを含む紡糸原液に、下記(a−1)〜(a−3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の共重合体(a)を分散剤として含有する、下記(b−1)〜(b−4)の群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物(b)の分散液を含有させて、紡糸を行うポリウレタン弾性糸の製造方法。
(a−1)ビニルアルコールとビニルアセタールとの共重合体
(a−2)酢酸ビニルとビニルアセタールとの共重合体
(a−3)ビニルアルコールと酢酸ビニルとビニルアセタールとの共重合体
(b−1)ハイドロタルサイト類化合物
(b−2)ハンタイトとハイドロマグネサイトの混合物
(b−3)Ca、Mg、AlもしくはBaから選ばれた金属の炭酸塩、酸化物、および水酸化物
(b−4)Ca、Mg、AlもしくはBaから選ばれた金属の2種以上からなる複合酸化物
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタン弾性糸または請求項5に記載の製法により得られたポリウレタン弾性糸を使用してなる布帛。

【公開番号】特開2012−132130(P2012−132130A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287165(P2010−287165)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(502179282)東レ・オペロンテックス株式会社 (100)
【Fターム(参考)】