説明

ポリウレタン樹脂組成物およびポリウレタン支持パッド

【課題】高い圧縮率および圧縮回復率を示し、半導体装置またはディスプレイ装置に用いられる基板またはガラスなどの研磨工程に使用され、表面欠陥および粗度、うねり(waviness)を最小化できる支持パッドを提供可能なポリウレタン樹脂組成物および該樹脂組成物から得られるポリウレタン支持パッドを提供する。
【解決手段】エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールを特定比率で含むポリオールの残基とポリカルボン酸の残基を含む軟質部と、特定含有量のポリイソシアネート化合物の残基と鎖延長剤の残基を含む硬質部とを含むポリウレタン樹脂と、有機溶媒と、界面活性剤とを含むポリウレタン樹脂組成物および該樹脂組成物から形成されたポリウレタン支持パッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂組成物およびポリウレタン支持パッドに関し、より詳細には、内部に長くて大きい気孔が均一に含有され、高い圧縮率および圧縮回復率を示し、半導体装置またはディスプレイ装置に用いられる基板またはガラスなどの研磨工程に使用され、表面欠陥および粗度、うねり(waviness)を最小化できる支持パッドを提供可能なポリウレタン樹脂組成物および該樹脂組成物から得られるポリウレタン支持パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
高集積度を要求する半導体装置またはディスプレイ装置に用いられる基板は、微細で精密な表面が要求されるため、多様な平坦化方法が適用されている。特に、半導体素子またはディスプレイ装置の高集積化および高性能化の傾向に伴い、研磨パッドと被研磨体との間に研磨粒子および多様な化学成分を含むスラリー組成物を供給しながら、研磨パッドと被研磨体を相対的に移動させて研磨する方法が一般的に使用されている。このような研磨方法では、より精密な研磨のために、研磨または加工過程で一定の位置と姿勢を維持できるように前記被研磨体を支持パッド上に固定させている。
【0003】
一方、日本国特開第2006−334745号公報には、ポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤、触媒および撥水性付与剤を反応および硬化して得られるポリウレタン発泡体およびこれを用いて得られる研磨用支持パッドに関して示されている。しかし、前記ポリウレタン発泡体は、水、メチレンクロライドまたは炭酸ガスなどの発泡剤を用いて得られるものであって、このような発泡体は、相対的に高い硬度を有するか、内部に長くて大きい気孔を均一に形成させることが難しく、低い硬度領域で高い押出率および押出弾性率を確保することは容易でなかった。
【0004】
そして、以前の支持パッドは、内部に気孔が互いに異なる大きさを有し、不規則的に分布し、被研磨体に対するクッション性能と吸着力が良くなく、また、研磨過程で被研磨体が支持パッド上に強固に固定されず、精密な研磨が実施できないという問題があった。また、以前の支持パッドは、内部に形成された気泡が不均一な大きさおよび分布を示し、押出率および押出弾性率などの物性も良くないだけでなく、撥水機能も十分でなく、被研磨体が研磨または加工過程で離脱しやすいという問題を抱えていた。
【0005】
これにより、半導体装置またはディスプレイ装置に用いられる基板の、より精密で効率的な研磨を可能にする新たな支持パッドの開発が求められるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、内部に長くて大きい気孔が均一に含有され、高い圧縮率および圧縮回復率を示し、半導体装置またはディスプレイ装置に用いられる基板またはガラスなどの研磨工程に使用され、表面欠陥および粗度、うねり(waviness)を最小化できる支持パッドを提供可能なポリウレタン樹脂組成物を提供するためのものである。
【0007】
また、本発明は、前記ポリウレタン樹脂組成物から形成されるポリウレタン支持パッドを提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールを3:7〜7:3のモル比率で含むポリオールの残基とポリカルボン酸の残基を含む軟質部と、ポリイソシアネート化合物の残基と鎖延長剤の残基を含む硬質部とを含むポリウレタン樹脂と、ジメチルホルムアミド(DMF)およびメチルエチルケトン(MEK)からなる群より選択された1種以上を含む有機溶媒と、界面活性剤とを含み、前記ポリウレタン樹脂が、前記ポリイソシアネート化合物の残基20〜32重量%を含むポリウレタン樹脂組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記ポリウレタン樹脂組成物の湿式凝固物を含むポリウレタン支持パッドを提供する。
【0010】
以下、発明の具体的な実現例によるポリウレタン樹脂組成物(ポリウレタン支持パッド用材料)およびポリウレタン支持パッドに関してより詳細に説明する。
【0011】
本明細書において、「支持パッド」とは、半導体またはディスプレイ装置に用いられる基板の製造過程のうち、研磨工程で研磨対象膜をキャリアに密着または固定させる役割を果たすパッドを意味する。
【0012】
発明の一実現例によれば、エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールを3:7〜7:3のモル比率で含むポリオールの残基とポリカルボン酸の残基を含む軟質部と、ポリイソシアネート化合物の残基と鎖延長剤の残基を含む硬質部とを含むポリウレタン樹脂と、ジメチルホルムアミド(DMF)およびメチルエチルケトン(MEK)からなる群より選択された1種以上を含む有機溶媒と、界面活性剤とを含み、前記ポリウレタン樹脂が、前記ポリイソシアネート化合物の残基20〜32重量%を含むポリウレタン樹脂組成物が提供できる。
【0013】
本発明者らの研究結果、ポリウレタン樹脂の軟質部および硬質部を主になす具体的な成分およびこれらの構成比を適切に調整すると、内部に長くて大きい気孔が均一に含有され、高い圧縮率および圧縮回復率を示し、半導体装置またはディスプレイ装置に用いられる基板またはガラスなどの研磨工程に使用され、表面欠陥および粗度、うねり(waviness)を最小化できる支持パッドを製造することができることを、実験を通して確認し発明に至った。
【0014】
具体的には、前記ポリウレタン樹脂は、軟質部と、硬質部とを含むことができ、前記軟質部は、エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールを3:7〜7:3のモル比率で含むポリオールの残基とポリカルボン酸の残基を含むことができ、前記硬質部は、前記ポリイソシアネート化合物の残基と鎖延長剤の残基を含むことができる。前記ポリウレタン樹脂は、前記軟質部と、硬質部とを含むことにより、一定の弾性を有することができる。
【0015】
本明細書において、「残基」とは、特定の化合物が化学反応に加えられた時、その化学反応の結果物に含まれ、前記特定の化合物に由来する一定の部分または単位を意味する。例えば、前記「ポリオール成分の残基」は、反応結果物のうち、ポリオール成分に由来する部分を意味する。
【0016】
後述する実施例から確認されるように、本発明者らは、前記ポリオールとして使用する具体的なアルコールの種類とその構成比率を調整することにより、製造されるポリウレタン樹脂の構造が変化することと、このようなポリウレタン樹脂を用いた支持パッドの有する物性が変化することを確認した。また、本発明者らは、使用されるポリイソシアネート化合物の含有量により、製造されるポリウレタン樹脂の硬度やこれより得られた支持パッドの圧縮率、圧縮回復率、内部構造および耐久性などに影響を与えることを確認した。
【0017】
つまり、本発明者らは、ポリウレタン樹脂の軟質部および硬質部を主になす具体的な成分およびこれらの構成比を特定し、支持パッドとして最適な物性を実現できるポリウレタン樹脂を製造した。
【0018】
一方、前記ポリカルボン酸は、炭素数4〜8のジカルボン酸を含むことができ、好ましくは、アジピン酸(adipic acid)であり得る。
【0019】
前記軟質部は、エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールを3:7〜7:3のモル比率で含むポリオールとポリカルボン酸との間の反応物を含むことができ、このような反応物は、ポリエステルポリオールであり得る。これにより、前記軟質部は、前記特定のポリエステルポリオールの残基を含むことができる。前記エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールのモル比率は、3:7〜7:3の範囲であり得、例えば、3:7、4:6、5:5、6:4、7:3またはこれらの間の比率であり得る。
【0020】
前記ポリエステルポリオールは、1,000〜5,000の重量平均分子量を有することができる。このようなポリエステルポリオールの分子量は、ポリウレタン樹脂の内部で軟質部の占める比率に影響を与えることができ、支持パッドの圧縮率、圧縮回復率または気孔の形態および大きさに影響を与えることができる。
【0021】
前記硬質部は、ポリイソシアネート化合物の残基と鎖延長剤の残基を含むことができる。前記ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート化合物の残基20〜32重量%、好ましくは21〜30重量%を含むことができる。
【0022】
前記ポリイソシアネート化合物の残基は、製造される支持パッドのモジュラス特性に影響を与える部分である。前記ポリウレタン樹脂でポリイソシアネート化合物に由来する部分の含有量が小さ過ぎると、ポリウレタン支持パッドの硬質部の含有量が過度に小さくなったり、製造されるパッドが十分な硬度や厚さを有しにくいことがあり、パッドの内部に気孔が十分に形成されなかったり、形成される気孔の形態や大きさが適切でないことがある。また、前記ポリウレタン樹脂でポリイソシアネート化合物に由来する部分の含有量が大き過ぎると、製造される支持パッドの硬度が過度に大きくなったり、その圧縮率または圧縮回復率が大きく低下することがある。
【0023】
前記ポリイソシアネート系化合物は、イソシアネート(isocyanate)基を複数有する化合物を意味する。このようなポリイソシアネート系化合物は、脂肪族、脂環族、アル脂肪族(araliphatic)、芳香族およびヘテロ環状官能基を含むポリイソシアネートであり得、化学式Q(NCO)nで表される。この時、前記nは、2〜4の整数であり、Qは、C原子を2〜18個、好ましくは6〜10個含有する脂肪族、脂環族、芳香族またはアル脂肪族炭化水素官能基であり得る。このようなポリイソシアネート系化合物の具体例としては、エチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,12−ドデカンジイソシアネート、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−イソシアネートメチル−シクロヘキサン、2,4−ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、2,6−ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、ヘキサヒドロ−1,3−フェニレンジイソシアネート、ヘキサヒドロ−1,4−フェニレンジイソシアネート、ペルヒドロ−2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ペルヒドロ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,4−ズロールジイソシアネート(DDI)、4,4’−スチルベンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート(TODI)、トルエン2,4−ジイソシアネート、トルエン2,6−ジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート(MDI)、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−イソシアネート(NDI)またはこれらの2以上の混合物などがある。
【0024】
前記鎖延長剤は、エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールを含むことができ、好ましくは、エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールを1:9〜9:1のモル比率、より好ましくは5:5〜9:1のモル比で含むことができる。前記エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールを鎖延長剤として用いることにより、特に、前記モル比率で用いることにより、前記ポリウレタン樹脂およびこれを用いた支持パッドが適正な密度または硬度を有することができ、一定の厚さ以上に製造することができ、最終製品で要求される圧縮率、弾性率、そして、密度および硬度などを確保することができる。
【0025】
前記ポリウレタン樹脂は、100,000〜900,000、好ましくは200,000〜600,000の重量平均分子量を有することができる。このようなポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、30%の固形分水準を基準としたものであり得る。前記範囲の分子量を有するポリウレタン樹脂を使用すると、多数の気孔が均一な大きさと均一な分布で形成され得る。
【0026】
前記樹脂組成物を用いて支持パッドを製造する過程では、沸点の高い溶媒を使用することが好ましく、具体的には、前記ポリウレタン樹脂組成物は、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン(MEK)、またはこれらの混合物を含む有機溶媒を含むことができ、好ましくは、ジメチルホルムアミドを含むことができる。このように、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン(MEK)、またはこれらの混合物を含む有機溶媒は、相対的に沸点が高く、ポリウレタン樹脂固形分の物性をそのまま維持することができる。また、前記有機溶媒は、高い親水性を有し、パッドの製造過程の凝固過程で水溶液と容易に置換することができ、これにより、支持パッドの内部に長くて大きい気孔を均一に形成することができる。
【0027】
このような有機溶媒は、前記ポリウレタン樹脂100重量部に対して、100〜600重量部で含まれる。
【0028】
前記ポリウレタン樹脂組成物は、凝固過程を通して内部に気孔が形成されたポリウレタン支持パッドを形成することができるが、このような気孔の形成は、ポリウレタン樹脂、水および有機溶媒の相分離現象による。具体的には、前記ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン(MEK)、またはこれらの混合物を含む有機溶媒に溶解したポリウレタン樹脂が一定の水溶液が満たされた凝固槽に浸漬されると、前記ポリウレタン樹脂と前記有機溶媒とが相分離され、相分離状態の有機溶媒は、水溶液または水と交替されながら気孔を形成する。このように気孔が形成された後、水洗過程および乾燥過程を通して残留する有機溶媒などを除去することにより、研磨装置の支持パッドの製造に使用可能なポリウレタン樹脂パッドが製造できる。
【0029】
一方、前記ポリウレタン樹脂組成物は、界面活性剤を含むことができるが、前記界面活性剤は、ポリウレタン樹脂に使用できることが知られている非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤またはこれらの混合物を含む。
【0030】
前記陰イオン性界面活性剤は、凝固する組成物の全領域にわたって水が均一に浸透できるようにし、ポリウレタン樹脂、水および有機溶媒の相分離が一定部分に集中しないようにすることができ、支持パッドの内部に気孔が非常に均一に形成できるようにする。このような陰イオン性界面活性剤は、前記ポリウレタン樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部で含むことができる。前記陰イオン性界面活性剤の含有量が小さ過ぎると、気孔が過度に小さく形成されたり、気孔の形態が長くならないことがあり、前記含有量が大き過ぎると、気孔が過度に大きく形成されたり、気孔の分布が均一にならないことがある。このような陰イオン性界面活性剤の例としては、コハク酸、炭素数9〜15のアルキルベンゼンスルホン酸またはその塩などがある。
【0031】
また、前記非イオン性界面活性剤は、前記ポリウレタン樹脂組成物の凝固速度を高めたり、気孔の形状を均一にすることができる。このような非イオン性界面活性剤は、前記ポリウレタン樹脂100重量部に対して、0.1〜10、好ましくは0.5〜5重量部で含まれる。前記非イオン性界面活性剤の含有量が高ければ、気孔の形状が不均一になり得、低過ぎると、凝固速度が過度に小さくなり得る。このような非イオン性界面活性剤の例としては、シリコン系高分子、シリコンオイル、グリセロール系高分子または炭化水素系高分子などを挙げることができる。
【0032】
前記ポリウレタン樹脂組成物は、支持パッドの吸着力を高めたり、パッドの表面を平坦にするために、シリコン系高分子をさらに含むことができる。前記ポリウレタン樹脂組成物は、撥水剤、充填剤、気孔の大きさ調整剤および顔料からなる群より選択された1種以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0033】
一方、前記ポリウレタン樹脂の合成では、上述したポリエステルポリオール、鎖延長剤およびポリイソシアネート系化合物の間の反応において一定の触媒を選択的に使用することができ、例えば、アミン系触媒、有機チタン化合物、有機錫化合物系触媒またはこれらの混合物などを使用することができる。この時、使用される触媒の量は、ポリウレタン樹脂全体の0.01wt%〜5wt%であり得る。前記触媒の好ましい例としては、有機錫化合物系触媒を挙げることができ、具体的には、錫(II)アセテート、錫(II)オクトエート、錫(II)エチルヘキソエートまたは錫(II)ラウレートなどのカルボン酸の錫(II)塩と、ジブチルチンオキシド、ジブチルチンジクロライド、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンマレートまたはジオクチルチンジアセテートなどの錫(IV)化合物を挙げることができる。
【0034】
一方、発明の他の実現例によれば、前記ポリウレタン樹脂組成物の湿式凝固物を含むポリウレタン支持パッドが提供できる。
【0035】
前記ポリウレタン樹脂組成物から製造されるポリウレタン支持パッドは、内部に長くて大きい気孔を均一に形成し、低い硬度、優れた押出率および高い押出弾性率を有することができる。また、前記ポリウレタン支持パッドは、内部に長くて大きい気孔が均一に形成され、研磨対象膜との間に生成された空気を容易に内部に伝達することができ、全領域に均一に分散させることができるため、研磨時に発生し得る不良を最小化することができる。
【0036】
前記ポリウレタン支持パッドは、前記ポリウレタン樹脂組成物が凝固して形成され得る。具体的には、前記ポリウレタン支持パッドは、前記ポリウレタン樹脂組成物を形成するステップと、前記ポリウレタン樹脂組成物を一定の基材や枠に塗布または投入してコーティング層を形成するステップと、前記コーティング層を凝固するステップと、前記組成物の凝固物を水洗、脱水および乾燥するステップとにより製造できる。
【0037】
前記コーティング層を凝固するステップでは、前記コーティング層が形成された基材や枠を、ジメチルホルムアミド(DMF)水溶液、メチルエチルケトン(MEK)水溶液またはこれらの混合物が満たされている凝固槽、例えば、1〜20%のDMF水溶液が満たされている凝固槽に投入して実施できる。前記凝固過程では、ポリウレタン樹脂内部の有機溶媒(例えば、ジメチルホルムアミドまたはメチルエチルケトン)が水と交替されながらポリウレタン樹脂が徐々に凝固し、これにより、多数の気孔が形成され得る。前記凝固槽内の有機溶媒の濃度を調整することにより、凝固時間や製造される支持パッド内の気孔の大きさを調整することができる。
【0038】
前記ポリウレタン支持パッドは、0.5〜3mm、好ましくは1〜2.5mmの厚さを有することができ、0.10〜0.50g/cm、好ましくは0.15〜0.30g/cmの密度を有することができる。
【0039】
また、前記ポリウレタン支持パッドは、上述した特定のポリウレタン樹脂組成物を用いて製造されることにより、20〜25のアスカーC硬度、好ましくは21〜23のアスカーC硬度を有することができる。
【0040】
前記ポリウレタン支持パッドは、25%〜50%の圧縮率および92%以上の圧縮弾性率を有することができる。
【0041】
前記ポリウレタン支持パッドは、100μm〜500μmの最長径を有する気孔を含むことができる。そして、前記気孔のうち互いに隣接する気孔の近接した最外郭部の距離が10μm〜50μmであり得る。前記ポリウレタン樹脂組成物の凝固物を含むポリウレタン樹脂内には、長い楕円形に類似する形態の気孔が均一に分布することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、内部に長くて大きい気孔が均一に含有され、高い圧縮率および圧縮回復率を示し、半導体装置またはディスプレイ装置に用いられる基板またはガラスなどの研磨工程に使用され、表面欠陥および粗度、うねり(waviness)を最小化できる支持パッドが提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例15のポリウレタン樹脂を用いた吸着パッド内の気孔の形状を示すものである。
【図2】実施例5のポリウレタン樹脂を用いた吸着パッド内の気孔の形状を示すものである。
【図3】実施例25のポリウレタン樹脂を用いた吸着パッド内の気孔の形状を示すものである。
【図4】実施例16のポリウレタン樹脂を用いた吸着パッド内の気孔の形状を示すものである。
【図5】実施例19のポリウレタン樹脂を用いた吸着パッド内の気孔の形状を示すものである。
【図6】実施例23のポリウレタン樹脂を用いた吸着パッド内の気孔の形状を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものであって、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0045】
<実施例:ポリウレタン樹脂およびディスプレイ用ガラス研磨支持パッドの製造>
1.ポリウレタン樹脂の製造
アジピン酸、エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールを、200℃の温度、500〜760mmHgの減圧条件および真空大気条件で反応させ、ポリエステルポリオールを合成した。この時、エチレングリコール:1,4−ブタンジオールのモル比と合成されたポリエステルポリオールの重量平均分子量は、下記の表2に記載されたとおりである。
【0046】
常圧(1atm)および常温(RT)下において、ジブチルチンジラウレートの存在下、前記合成されたポリエステルポリオール、鎖延長剤(エチレングリコール)およびDMFを反応器に入れ、80℃まで昇温した。反応温度の80℃まで昇温した時点で、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を投入し、2時間撹拌しながら反応溶液の粘度を調整し、ポリウレタン樹脂を製造した。
【0047】
2.ポリウレタン樹脂組成物および支持パッドの製造
下記の表1に記載された量で前記製造されたポリウレタン樹脂、DMF溶液、および添加剤を混合し、ペイントシェーカーで10分間高速撹拌した後、3000rpmで10分間遠心分離し、スラリー(slurry)状のポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0048】
前記得られたポリウレタン樹脂組成物を、PETフィルム上に2.00mmの厚さにコーティングした後、4Brix%濃度の凝固槽で凝固過程を進めた。以降、得られた凝固物を水洗、脱水、乾燥し、ポリウレタン支持パッドを製造した。
【0049】
具体的な凝固、水洗および脱水条件は、次のとおりである。
【0050】
*Coating工程set
−凝固time(min)/temp.(℃):30〜35/35〜37
−水洗time(回)/temp.(℃):12/65
−coating dam厚さ:2mm
【表1】

【0051】
1)SD−7、SD−11:非イオン性界面活性剤(ペンタカム)
2)8I、607、及びCB:添加剤
3)FAT−7:充填剤( ペンタカム)
4)DBSA:パラ−ドデシルベンゼンスルホン酸
5)PEG200:重量平均分子量200のポリエチレングリコール
【0052】
【表2】

前記表2に示されているように、エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールを特定比率で含むポリオールと特定含有量のポリイソシアネート化合物を用いて製造されるポリウレタン樹脂を使用すると、高い圧縮率および圧縮回復率、例えば、25%以上の圧縮率と92%以上の圧縮回復率を有する支持パッドが製造できることが確認された。
【0053】
そして、下記の図1〜6に示されているように、前記実施例のポリウレタン支持パッドの内部には、100μm〜500μmの最長径を有する気孔が均一に分布していることを確認することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂組成物であって、
エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールを3:7〜7:3のモル比率で含むポリオールの残基とポリカルボン酸の残基を含む軟質部と、
ポリイソシアネート化合物の残基と鎖延長剤の残基を含む硬質部とを含むポリウレタン樹脂と、
ジメチルホルムアミド(DMF)およびメチルエチルケトン(MEK)からなる群より選択された1種以上を含む有機溶媒と、及び
界面活性剤とを含んでなり、
前記ポリウレタン樹脂が、前記ポリイソシアネート化合物の残基20〜32重量%を含むことを特徴とする、ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリカルボン酸が、炭素数4〜8のジカルボン酸を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記軟質部が、1,000〜5,000の重量平均分子量を有するポリエステルポリオールの残基を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリイソシアネート化合物が、ジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,12−ドデカンジイソシアネート、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−イソシアネートメチル−シクロヘキサン、2,4−ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、2,6−ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、ヘキサヒドロ−1,3−フェニレンジイソシアネート、ヘキサヒドロ−1,4−フェニレンジイソシアネート、ペルヒドロ−2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ペルヒドロ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,4−ズロールジイソシアネート(DDI)、4,4’−スチルベンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート(TODI)、トルエン2,4−ジイソシアネート、トルエン2,6−ジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート(MDI)、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)およびナフタレン−1,5−イソシアネート(NDI)からなる群より選択された1種以上を含むことを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記鎖延長剤が、エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールを含むことを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリウレタン樹脂が、100,000〜900,000の重量平均分子量を有することを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤が、陰イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項8】
充填剤、撥水剤、気孔の大きさ調整剤および顔料からなる群より選択された1種以上の添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項9】
研磨装置の支持パッドの材料であることを特徴とする、請求項1〜8の何れか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜8の何れか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物の湿式凝固物を含むことを特徴とする、ポリウレタン支持パッド。
【請求項11】
30%以上の圧縮率および92%以上の圧縮弾性率を有することを特徴とする、請求項10に記載のポリウレタン支持パッド。
【請求項12】
100μm〜500μmの最長径を有する気孔を含むことを特徴とする、請求項10又は11に記載のポリウレタン支持パッド。
【請求項13】
前記気孔のうち互いに隣接する気孔の近接した最外郭部の距離が10μm〜50μmであることを特徴とする、請求項10〜12の何れか一項に記載のポリウレタン支持パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−23691(P2013−23691A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−158652(P2012−158652)
【出願日】平成24年7月17日(2012.7.17)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】