説明

ポリウレタン系硬化性組成物

【課題】絶縁保護被膜、ソルダーレジスト等への使用が可能な電気絶縁性に優れた絶縁保護膜用の硬化物及びその硬化物を得るために必要な硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】少なくとも下記式(1)


で示されるモノマーユニットとオレフィンよりなるモノマーユニットを含む共重合体ポリオールからなる成分(A)、及びイソシアナト基及び/またはブロックイソシアナト基を有し、かつ1分子中のイソシアナト基及びブロックイソシアナト基の総数が2以上である化合物からなる成分(B)を必須成分とする硬化性組成物、その組成物を硬化して得られる硬化物及び電気絶縁性被膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の共重合体ポリオールと1分子中にイソシアナト基(isocyanato-,−N=C=O)及び/またはブロックイソシアナト基を2個以上有する化合物を必須成分とする新規な硬化性組成物に関するものである。さらに、本発明は、前記組成物を硬化して得られる硬化物及びその硬化物を用いた電気絶縁性材料に関するものでもある。
本発明の硬化性組成物及びその組成物を硬化して得られる硬化物は、絶縁保護被膜、ソルダーレジスト等への使用に有用である。
【背景技術】
【0002】
電気機器の小型化、軽量化、高性能化にともない、プリント基板上の隣り合う配線間の距離が狭くなってきている。
例えば、COF(chip on film)実装方式に使用される回路パターン形成方法に目を向けると、現在、COF実装方式で広く一般的に使用されている配線はサブトラクティブ法で生産されたものである。これらのサブトラクティブ法で生産された配線用の絶縁被膜としては、例えば、特開2007−039673号公報(特許文献1)や特開2007−308710号公報(特許文献2)等を挙げることができる。
【0003】
しかし、セミアディティブ法の発展に伴い、さらに狭ピッチ(例えば、20μmピッチ以下)になることが予想されている。このさらなる狭ピッチ化に伴い、電気絶縁性能がより良好な絶縁被膜用樹脂の開発が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−039673号公報
【特許文献2】特開2007−308710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では上記のような要求に応えるために、従来品よりも電気絶縁性能の優れた絶縁保護膜用の硬化物及びその硬化物を得るために必要な硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく研究を重ねた結果、特定の共重合体ポリオールと1分子中に2個以上のイソシアナト基及び/またはブロックイソシアナト基を有する化合物を必須成分とする硬化性組成物を硬化して得られる硬化物が優れた電気絶縁性能を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の[1]〜[11]に関する。
[1]モノマーユニットとして、少なくとも下記式(1)
【化1】

及び下記式(2)
【化2】

(式中、Rは炭素数2〜20の脂肪族炭化水素基を表わし、分岐していても、環状構造を含んでいてもよい。)
で示される構造をモノマーユニットとして含む共重合体ポリオールからなる成分(A)、及びイソシアナト基及び/またはブロックイソシアナト基を有し、かつ1分子中のイソシアナト基及びブロックイソシアナト基の総数が2以上である化合物からなる成分(B)を必須成分とする硬化性組成物。
[2]成分(B)が少なくともブロックイソシアナト基を有している化合物である前記1に記載の硬化性組成物。
[3]成分(A)が式(1)及び式(2)で示される構造のみをモノマーユニットとする共重合体ポリオールである前記1または2に記載の硬化性組成物。
[4]成分(A)中のモノマーユニットである式(2)中のRで表わされる炭素数2〜20の脂肪族炭化水素基が、炭素数2〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基である前記1〜3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
[5]成分(A)の水酸基価が10〜300mgKOH/gである前記1〜4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
[6]成分(B)が、脂環、芳香環及び複素環の群より選ばれる少なくとも1種以上の環構造を分子内に有し、かつ、イソシアナト基及び/またはブロックイソシアナト基を有しかつ1分子中のイソシアナト基及びブロックイソシアナト基の総数が2以上である化合物である前記1〜5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
[7]成分(A)中の水酸基と、成分(B)中のイソシアナト基とブロックイソシアナト基の総数のモル比が、5:1〜1:5の範囲である前記1〜6のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
[8]さらに、硬化触媒を含有する前記1〜7のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
[9]さらに、無機化合物を含有する前記1〜8のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
[10]前記1〜9のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化して得られる硬化物。
[11]前記1〜9のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化してなる電気絶縁性被膜。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電気絶縁性の良好な硬化物を得ることができる硬化性組成物を提供できる。本発明の硬化性組成物はプリント基板の絶縁保護被膜、ソルダーレジスト等への使用に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を具体的に説明する。
[硬化性組成物]
本発明の硬化性組成物は、モノマーユニットとして、少なくとも下記式(1)
【化3】

及び下記式(2)
【化4】

(式中、Rは炭素数2〜20の脂肪族炭化水素基を表わし、分岐していても、環状構造を含んでいてもよい。)
で示される構造をモノマーユニットとして含む共重合体ポリオールからなる成分(A)、及びイソシアナト基及び/またはブロックイソシアナト基を有し、かつ1分子中のイソシアナト基及びブロックイソシアナト基の総数が2以上である化合物からなる成分(B)を必須成分とする硬化性組成物である。
さらに、本発明の絶縁性被膜は、本発明の硬化性組成物を硬化して得られる硬化物である。
【0010】
[成分(A)]
本発明の硬化性組成物の必須成分である成分(A)は、モノマーユニットとして、少なくとも前記式(1)及び前記式(2)で示される構造をモノマーユニットとして含む共重合体ポリオールである。
【0011】
式(2)におけるRは炭素数2〜20の脂肪族炭化水素基を表わす。この脂肪族炭化水素基は直鎖状でも、分岐していても、あるいは環状構造を含んでいてもよい
【0012】
直鎖状の脂肪族炭化水素基の例としては、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ぺンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、n−エイコシル基等が挙げられる。
【0013】
分岐を有する脂肪族炭化水素基の例としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、イソオクチル基、イソデシル基等が挙げられる。
【0014】
環状構造を含む脂環式炭化水素基の例としては、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、デカヒドロナフタレニル基等が挙げられる。
【0015】
これらの中でもRとしては、炭素数2〜10の直鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の脂環式炭化水素基が電気絶縁特性と各種樹脂への相溶性向上の面で好ましい。特に好ましいものとしては、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基等の炭素数6〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基である。
【0016】
成分(A)の共重合体ポリオールは式(1)で示される構造と式(2)で示される構造を含む共重合体であれば他に制限はない。式(1)で示されるモノマーユニットはアリルアルコールをモノマーとして得られたものでもよいし、他のモノマーを重合した後、変性して得られたものでもよい。後者としては酢酸アリルを共重合し、加水分解したものが挙げられる。
【0017】
また、本発明の効果を損なわない範囲で不飽和基含有カルボン酸エステル等の第三のモノマーが共重合されていてもよい。第三のモノマーは2種以上を併用してもよい。
第三のモノマーとしては、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン、4−ビニル−1−シクロヘキセン、酢酸アリル、プロパン酸アリル等が挙げられる。
【0018】
本発明の必須成分である成分(A)の共重合体ポリオールにおいて、式(1)で示されるモノマーユニットと式(2)で示されるモノマーユニット及び不飽和基含有カルボン酸エステル等の第三のモノマーユニットの共重合様式は重合条件により、ランダム、ブロック、交互のいずれをもとり得るが、各樹脂への相溶性向上の観点からは、ランダムであることが望ましい。
【0019】
成分(A)の共重合体ポリオールにおける、式(1)及び式(2)で示されるモノマーユニットの組成及び第三のモノマーユニット(例えば、不飽和基含有カルボン酸エステルユニット)の組成は共重合体ポリオール重合時の式(1)で示されるモノマーユニットに相当するアリルアルコールと式(2)で示されるモノマーユニットに相当するオレフィン化合物及び第三のモノマー(例えば、不飽和基含有カルボン酸エステル)の仕込み比により制御できる。硬化反応性と電気絶縁性を両立させる観点から式(2)で示されるモノマーユニットは50〜97mol%であることが好ましく、式(1)で示されるモノマーユニットは3〜50mol%であることが好ましい。式(2)で示されるモノマーユニットが50mol%未満であると、後述の本発明の硬化物の電気絶縁性能が低くなり好ましくない。式(2)で示されるモノマーユニットが97mol%を超えると、式(1)で示されるモノマーユニットが3mol%未満となり、硬化反応に関与する水酸基の量が著しく少なくなり好ましくない。
【0020】
成分(A)の共重合体ポリオールの水酸基価は、成分(B)のイソシアナト基及び/またはブロックイソシアナト基を有する化合物との反応性と硬化物の電気絶縁性を両立させる観点から10〜300mgKOH/gであることが好ましく、さらに好ましくは、60〜250mgKOH/gである。共重合体ポリオールの水酸基価が10mgKOH/g未満のときには硬化反応に関与する水酸基の量が著しく少なくなり、300mgKOH/gを超えると後述の硬化物の電気絶縁性能が低くなり好ましくない。なお、水酸基価はJIS K0070に記載の方法に準じて測定した値である。
【0021】
成分(A)の共重合体ポリオールのゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定したポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に特に制限はないが、他成分との相溶性を考慮するとMn=500〜8000であることが好ましい。ポリスチレン換算数平均分子量(Mn)が500未満の場合、成分(B)として、ジイソシアネート化合物やイソシアナト基が保護されたブロックジイソシアネート化合物を使用した場合には、後述の硬化物の耐溶剤性が悪化する場合があり、8000を超えると液体状樹脂との相溶性が悪くなる場合がある。
【0022】
[成分(A)の共重合体ポリオールの製造方法]
次に、成分(A)の共重合体ポリオールの製造方法について説明する。本発明の必須成分である成分(A)の共重合体ポリオールは以下に示す方法で製造することができる。
【0023】
成分(A)の共重合体ポリオールは、式(1)で示されるモノマーユニットに相当するアリルアルコールと式(2)で示されるモノマーユニットに相当するオレフィン化合物、及び必要に応じて第三のモノマー(例えば、不飽和基含有カルボン酸エステル)をラジカル重合開始剤の存在下に共重合させることにより製造される。
【0024】
成分(A)の共重合体ポリオールの製造方法において用いられる式(2)で示されるモノマーユニットに相当するオレフィン化合物は、ラジカル重合可能なものであれば特に制限はないが、共重合体ポリオールの詳細な説明部分で記述した構造をオレフィン化合物の形で表現すると、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−トリコセン等の直鎖状末端オレフィン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ヘプテン、3−メチル−1−ノネン、3−メチル−1−ウンデセン等の分岐を有する末端オレフィン、シクロヘキシルエチレン、3−シクロヘキシル−1−プロペン、4−シクロヘキシル−1−ブテン、デカヒドロナフタレニルエチレン等の環状構造を含む末端オレフィン等が挙げられる。
これらの中でも、硬化物の電気絶縁特性の観点からは、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン及び1−ヘキサデセンが特に好ましい。
【0025】
この共重合反応において、アリルアルコール及びオレフィン化合物の使用量は、通常はオレフィン化合物1モルに対してアリルアルコールを0.05〜2.0モル用いるのが好ましく、0.10〜1.0モルが特に好ましい。アリルアルコールが0.05モル未満の場合は得られる共重合体ポリオールの水酸基価が低くなり、後述の硬化物の架橋密度が低下する。また、2.0モルを超えると共重合体ポリオールの分子量が低下する。
【0026】
第三のモノマーを用いる場合、例えば不飽和基含有カルボン酸エステルを用いる場合の使用量は、通常はオレフィン化合物1モルに対して0.2モル以下で用いるのが好ましく、0.1モル以下が特に好ましい。第三のモノマーとしての不飽和基含有カルボン酸エステルが0.2モルを超えると、組み合わせる成分(B)の種類によっては、共重合体ポリオールの耐加水分解性が劣る場合があるので好ましくない。
【0027】
この共重合反応は無溶媒で行ってもよいし、基質と反応しない溶媒を使用してもよい。溶媒としては、キシレン、トルエン、ベンゼン、t−ブチルベンゼン等の炭化水素系溶媒、アセトン等のケトン系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独もしくは2種類以上を併用することもできる。
【0028】
この共重合反応はラジカル重合開始剤を用いて実施することができる。熱、紫外線、電子線、放射線等によってラジカルを生成するものであれば、いずれのラジカル重合開始剤も使用できる。
【0029】
熱ラジカル重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等のアゾ系化合物;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド等のケトンパーオキシド類;ベンゾイルパーオキシド、デカノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類;ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチルー2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキシド、2,5−ジメチルー2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキシド類;1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類;t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーオキシエステル類;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロプルカーボネート等のパーオキシカーボネート類;過酸化水素等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの熱ラジカル重合開始剤は2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記の熱ラジカル重合開始剤の中で好ましいものとしては、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチルー2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキシド、2,5−ジメチルー2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3である。
【0031】
紫外線、電子線、及び放射線によるラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等のアセトフェノン誘導体;ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−トリメチルシリルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン誘導体;ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン誘導体;メチルフェニルグリオキシレート、ベンゾインジメチルケタール、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの紫外線、電子線、及び放射線ラジカル重合開始剤は2種以上を併用してもよい。
【0032】
これらの重合開始剤の使用量は、反応温度やアリルアルコールと式(2)で示されるモノマーユニットに相当するオレフィン化合物の組成比によって異なるため一概に限定することはできないが、アリルアルコールと共重合させる式(2)で示されるモノマーユニットに相当するオレフィン化合物との総量100質量部に対して0.1〜15質量部が好ましく、1〜10質量部が特に好ましい。ラジカル重合開始剤の添加量が0.1質量部未満の場合は重合反応が進行しにくく、15質量部を超えて添加することは経済上好ましくない。
【0033】
反応温度(重合温度)は重合開始剤の種類に応じて適宜選択すればよく、段階的に温度を変えて反応(重合)させてもよい。紫外線等による重合であれば、室温でも可能である。熱重合の場合は重合開始剤の分解温度に対応して適宜決めることが望ましく、一般的には50〜180℃の範囲が好ましく、70〜170℃が特に好ましい。50℃未満では極端に反応が遅くなり、180℃を超えると、ラジカル開始剤の分解が速くなりすぎ、かつ連鎖移動も速くなるので共重合体ポリオールの分子量が低下する。
【0034】
反応終了後、生成物である共重合体ポリオールは、公知の操作、処理方法(例えば、中和、溶媒抽出、水洗、分液、溶媒留去、再沈殿等)により後処理して単離される。
【0035】
なお、アリルアルコールの代わりに酢酸アリルを用いて、ラジカル共重合した後、加水分解することにより共重合体ポリオールとしてもよい。加水分解は、共重合後のポリマーを酸あるいはアルカリ水溶液で処理することで可能である。
【0036】
[成分(B)]
本発明の必須成分である成分(B)は、イソシアナト基及び/またはブロックイソシアナト基を有しかつ1分子中のイソシアナト基及びブロックイソシアナト基の総数が2以上である化合物である。
【0037】
本明細書に記載の「イソシアナト基及び/またはブロックイソシアナト基を有し」とは、イソシアナト基のみを有していても、ブロックイソシアナト基をのみを有していても、あるいはイソシアナト基とブロックイソシアナト基を両方有していてもよいことを意味する。また、「1分子中のイソシアナト基及びブロックイソシアナト基の総数が2以上である」とは、イソシアナト基とブロックイソシアナト基とをあわせて1分子中に2個以上有することを意味するものであり、イソシアナト基のみを1分子中に2個以上有していても、ブロックイソシアナト基のみを1分子中に2個以上有していても、あるいはイソシアナト基を1個以上有し、かつブロックイソシアナト基を1個以上有していてもよいことを意味する。
【0038】
1分子中に2個のイソシアナト基を有する化合物としては、具体的には2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,9−ノナメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、2,2'−ジエチルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3'−メチレンジトリレン−4,4'−ジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート、テトラクロロフェニレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素化1,3−キシリレンジイソシアネート、水素化1,4−キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネートが挙げられる。
【0039】
また、1分子中に3個のイソシアネートを有する化合物としては、例えば、トリフェニルメタントリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0040】
また、1分子中に3個以上のイソシアネートを有する化合物としては、リシントリイソシアネート、下記式(3)で示される脂肪族系イソシアヌレート型ポリイソシアネート及び下記式(4)で示される環状脂肪族系イソシアヌレート型ポリイソシアネートを挙げることができる。
【化5】

(mは1〜30の整数である。)
【化6】

(nは1〜30の整数である。)
これら1分子中に2個以上のイソシアナト基を有する化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
1分子中に2個以上のイソシアナト基を有する化合物の中で好ましいものは、脂環、芳香環及び複素環の群より選ばれる少なくとも1種以上の環構造を分子内に有する2個以上のイソシアナト基を有する化合物であり、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3'−メチレンジトリレン−4,4'−ジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート、テトラクロロフェニレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素化1,3−キシリレンジイソシアネート、水素化1,4−キシリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、前記式(3)で示される化合物及び式(4)で示される化合物を挙げることができる。上記の1分子中に2個以上のイソシアナト基を有する化合物の中で特に好ましいものとしては、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、式(3)で示される化合物及び式(4)で示される化合物を挙げることができる。
【0042】
また、1分子中に2個以上のブロックイソシアナト基を有する化合物としては、前記の1分子中に2個以上のイソシアナト基を有する化合物に熱解離性ブロック剤を付加した化合物が挙げられ、これらの化合物を1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
また、1分子中に1個以上のイソシアナト基と1個以上のブロックイソシアナト基とを有する化合物としては、前記1分子中に2個以上のイソシアナト基を有する化合物の一部のイソシアナト基に熱解離性ブロック剤を付加した化合物が挙げられ、これらの化合物を1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
熱解離性ブロック剤を付加される1分子中に2個以上のイソシアナト基を有する化合物の中で好ましいものとしては、前記の脂環、芳香環及び複素環の群より選ばれる少なくとも1種以上の環構造を分子内に有する2個以上のイソシアナト基を有する化合物が挙げられる。
【0045】
熱解離性ブロック剤は、活性水素化合物である。その例としては、例えば、ケトオキシム誘導体、ラクタム誘導体等を挙げることができ、その他にフェノール、活性メチレン、アルコール、メルカプタン、酸アミド、イミド、イミダゾール、尿素、カルバミン酸塩等の化合物の誘導体を挙げることができる。それらの具体例としては、例えば次のものが挙げられる。
【0046】
ケトオキシム誘導体:メチルエチルケトンオキシム、ブタノンオキシム、ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、メチルアミルケトンオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、メチルヘキサノンオキシム等。
【0047】
ラクタム誘導体:ε−カプロラクタム、δ−カプロラクタム、β−ブチロラクタム、β−プロピオラクタム等。
【0048】
フェノール誘導体:フェノール、ブチルフェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ノニルフェノール、イソプロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、チモール、p−ニトロフェノール、p−ナフトール、p−クロロフェノール、p−tert−オクチルフェノール等。
【0049】
活性メチレン誘導体:アセト酢酸エチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、マロン酸ジメチル、アセチルアセトン等。
アルコール誘導体:メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、2−エチルヘキサノール等。
メルカプタン誘導体:ブチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオフェノール等。
【0050】
酸アミド誘導体:アセトアニリド、アセトアニシジド、酢酸アミド、アクリルアミド、ベンズアミド等。
イミド誘導体:コハク酸イミド、マレイン酸イミド等。
イミダゾール誘導体:2−フェニルイミダゾリン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール等。
尿素誘導体:尿素、チオ尿素、エチレン尿素、ジフェニル尿素等。
カルバミン酸塩誘導体:N−フェニルカルバミン酸フェニル、2−オキサゾリドン等。
【0051】
これらの中で好ましいものは、ノニルフェノール、t−ブチルフェノール、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ε−カプロラクタム、アセト酢酸エチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチルであり、オキシム系と活性メチレン系、2種の活性メチレン系化合物の使用等2種以上混合してもよい。
【0052】
イソシアナト基を有する化合物と熱解離性ブロック剤とのブロック化反応は、溶剤の存在の有無に関わらず行うことができる。溶剤を用いる場合、イソシアナト基に対して不活性な溶剤を用いる必要がある。
反応温度は、熱解離性ブロック剤の種類によって異なるが、一般に−20〜150℃で行うことができるが、好ましくは0〜100℃である。150℃を越える温度では副反応を起こす可能性があり、他方、−20℃未満になると反応速度が小さくなり不利である。
【0053】
[硬化性組成物]
本発明の硬化性組成物は成分(A)、成分(B)及び必要に応じて加えてもよいその他の成分を公知の方法で混合することにより得ることができる。その他の成分としては、硬化触媒、成分(A)以外のポリオール化合物、耐熱性や難燃性を付与する無機化合物、組成物の粘度を調整するための有機溶媒、消泡剤及びその他の一般的な添加剤が挙げられる。
【0054】
本発明の硬化性組成物において、成分(A)中の水酸基の数と、成分(B)中のイソシアナト基とブロックイソシアナト基の総数の比は、必要とする硬化物の物性により決定されるが、通常、5:1〜1:5である。好ましくは2:1〜1:2であり、さらに好ましくは、1.5:1〜0.7:1である。当該比が5:1〜1:5の範囲外であると硬化膜の強度や電気絶縁性能が低下する場合がある。
【0055】
[硬化触媒]
本発明の硬化性組成物においては、必要に応じて、成分(A)と成分(B)の硬化反応を促進する硬化触媒を使用することができる。
硬化触媒としては、錫、亜鉛等の有機金属塩、3級アミン系化合物及び4級アンモニウム塩等を挙げることができる。
【0056】
錫の有機金属塩の具体例としては、モノブチル錫トリオクチル酸塩、モノオクチル錫トリ酢酸塩、モノオクチル錫トリオクチル酸塩、モノオクチル錫トリラウリン酸塩、インルプピオ、モノオクチル錫トリ安息香酸塩、モノラウリル錫トリオクチル酸塩、モノフェニル錫トリオクチル酸塩、モノブチル錫ジオクチル酸塩・モノハイドロオキシド、キシド、モノオクチル錫ジ酢酸塩・モノハイドロオキシド、モノラウリル錫ビスメトキシ安息香酸塩・モノハイドロオキシド、モノオクチル錫モノ酢酸塩・ジクロライド、モノフェニル錫ジ安息香酸塩・モノクロライド、モノフェニル錫ジ安息香酸塩・オキシド(+)、ジブチル錫ジ酢酸塩、ジブチル錫ジカプロン酸塩、ジブチル錫ジラウリン酸塩、ジオクチル錫ジ酢酸塩、ジオクチル錫ジオクチル酸塩、ジオクチル錫ジラウリン酸塩、オクチル錫ジ安息香酸塩、ジオクチル錫ビスメトキシ安息香酸塩、ジラウリル錫ジラウリン酸塩、ジラウリル錫ジオクチル酸塩、ビス(ジブチル錫モノ酢酸塩)オキシド、ビス(ジオクチル錫モノ酢酸塩)オキシド、ビス(ジメチル錫モノアセト酢酸塩)サルファイド、ビス(ジブチル錫モノラウリン酸塩)サルファイド、ビス(ジブチル錫モノ酢酸塩)アジピン酸塩、ビス(ジオクチル錫モノ酢酸塩)マレイン酸塩、ビス(ジブチル錫モノアセト酢酸塩)フタル酸塩、ビス(ジラウリル錫モノ安息香酸塩)フタル酸塩、(ジオクチル錫モノ酢酸塩)チオジプロピオン酸塩等が挙げられる。
【0057】
亜鉛の有機金属塩の具体例としては、亜鉛ジ酢酸塩、亜鉛ジオクチル酸塩、亜鉛ジラウリン酸塩、亜鉛ジミリスチン酸塩、亜鉛ビスアセト酢酸塩、亜鉛ジ安息香酸塩、ビス(亜鉛モノ酢酸塩)オキシド、ビス(亜鉛モノオクチル酸塩)オキシド、ビス(亜鉛モノラウリン酸塩)オキシド、亜鉛ジアセチルベンゾイルメタン、亜鉛ラウロイル・ベンゾイルメタン等が挙げられる。
【0058】
3級アミン系化合物の具体例としては、ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノトルイジン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5等が挙げられる。
【0059】
4級アンモニウム化合物の具体例として、2−ヒドロキシエチル・トリn−ブチルアンモニウム・2,2−ジメチルプロピオネート、2−ヒドロキシエチル・トリn−ブチルアンモニウム・2,2−ジメチルブタノエート、2−ヒドロキシプロピル・トリn−ブチルアンモニウム・2,2−ジメチルプロピオネート、2−ヒドロキシプロピル・トリn−ブチルアンモニウム・2,2−ジメチルブタノエート、2−ヒドロキシプロピル・トリn−ブチルアンモニウム・2,2−ジメチルペンタノエート、2−ヒドロキシプロピル・トリn−ブチルアンモニウム・2−エチル2−メチルプロピオネート、2−ヒドロキシプロピル・トリn−ブチルアンモニウム・2−エチル2−メチルブタノエート、2−ヒドロキシプロピル・トリn−ブチルアンモニウム・2−エチル2−メチルペンタノエート、2−ヒドロキシプロピル・トリn−オクチルアンモニウム・2,2−ジメチルプロピオネート、2−ヒドロキシプロピル・トリn−オクチルアンモニウム・2,2−ジメチルブタノエート、2−ヒドロキシプロピル・トリアミルアンモニウム・2,2−ジメチルブタノエート、2−ヒドロキシプロピル・トリアミルアンモニウム・2,2−ジメチルペンタノエート等が挙げられる
【0060】
硬化触媒の中で好ましいものとしては、ジブチル錫ジ酢酸塩、ジブチル錫ジカプロン酸塩、ジブチル錫ジラウリン酸塩、ジオクチル錫ジ酢酸塩、ジオクチル錫ジオクチル酸塩、ジオクチル錫ジラウリン酸塩、オクチル錫ジ安息香酸塩、ジオクチル錫ビスメトキシ安息香酸塩、ジラウリル錫ジラウリン酸塩、ジラウリル錫ジオクチル酸塩、ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノトルイジン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5を挙げることができる。
【0061】
硬化触媒の含有量は、本発明の硬化性組成物中の成分(A)、成分(B)及びその他のポリオール化合物の総量を100質量部とした場合に、0.01質量部〜10質量部の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、0.05質量部〜3質量部の範囲である。硬化触媒の含有量が0.01質量部未満であると触媒効果がみられない。また、硬化触媒の含有量が10質量部より多い場合には、硬化性組成物中の硬化触媒の存在割合が多くなり、その結果、硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0062】
[成分(A)以外のポリオール化合物]
本発明の硬化性組成物は成分(A)以外のポリオール化合物を含んでいてもよい。その際に使用できるポリオール化合物はイソシアナト基及び/またはブロックイソシアナト基を有し、かつ1分子中のイソシアナト基及びブロックイソシアナト基の総数が2以上である化合物と反応できるものであれば特に制限はない。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の直鎖脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、トリシクロデカンジメタノール等の脂環式構造の繰り返し単位を持つジオール、ビスフェノールA、キシリレンジオール等の芳香族ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の(ポリ)エーテルグリコール、ポリエチレンアジペート、ポリトリメチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチレンアジペート、ポリカプロラクタム等のポリエステルポリオール、さらに、本発明の共重合体ポリオールと多価カルボン酸の反応で得られるポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール等のジオールが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0063】
[無機化合物]
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、無機化合物を含んでいてもよい。無機化合物には、粉末状の無機化合物に有機化合物で物理的に被覆或いは有機化合物で化学的に表面処理した有機・無機の複合物も含まれる。
【0064】
本発明の硬化性組成物に使用される無機化合物としては、例えば、粉末、球状、ウイスカー状、鱗片状等の各種形状の無機物、あるいはそれら無機物に、有機化合物で物理的に被覆あるいは有機化合物で化学的に表面処理した有機・無機の複合物が挙げられる。
【0065】
無機化合物の具体例としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、ガラス粉、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナあるいはそれらの表面改質品等の公知のものが使用される。これらの無機化合物を2種類以上組み合わせて使用することもできる。
これらの中で、好ましいものとしては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、シリカ及びそれらの表面改質品であり、さらに好ましくは、硫酸バリウム、シリカ及びそれらの表面改質品である。
【0066】
これら無機化合物の含有量は、本発明の硬化性組成物の全質量から有機溶媒の質量を除いた質量を100質量部とした場合に、0.1質量部〜30質量部の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、1質量部〜20質量部の範囲である。これら無機化合物の含有量が0.1質量部未満であると添加した効果があまり見られない。また、30質量部より多い場合には、本発明の硬化物が脆くなることがある。
【0067】
[有機溶媒]
本発明の硬化性組成物においては、必要に応じて、有機溶媒を使用することができる。有機溶媒は本発明の硬化性組成物をプリント基板表面に塗工する際に粘度を下げて塗工性を改良するために使用する。塗工後、有機溶媒は乾燥除去される。
【0068】
有機溶媒としては、本発明の硬化性組成物中の成分(A)及び成分(B)を溶解するものであり、成分(A)や成分(B)と反応しない溶媒であれば、特に限定されるものではない。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等の酢酸エステル類、γ―ブチルラクトン等の環状エステル類、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒等を挙げることができる。また、これらの溶媒は、単独で使用しても、2種類以上の溶媒を混合して使用してもよい。
【0069】
[消泡剤]
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて、消泡剤を使用してもよい。消泡剤の具体例としては、例えば、BYK−077(ビックケミー・ジャパン(株)製)、SNデフォーマー470(サンノプコ(株)製)、TSA750S(GE東芝シリコーン(株)製)、シリコーンオイルSH−203(東レ・シリコーン(株)製)等のシリコーン系消泡剤、ダッポーSN−348(サンノプコ(株)製)、ダッポーSN−354(サンノプコ(株)製)、ダッポーSN−368(サンノプコ(株)製)等のアクリル重合体系消泡剤、サーフィノールDF−110D(日清化学工業(株)製)、サーフィノールDF−37(日清化学工業(株)製)等のアセチレンジオール系消泡剤、FA−630等のフッ素含有シリコーン系消泡剤等を挙げることができる。
これらの中で好ましい消泡剤は、シリコーン系消泡剤やフッ素含有シリコーン系消泡剤であり、さらに好ましくは、シルコーン系消泡剤である。
【0070】
[その他の添加剤成分]
さらに、硬化性組成物には、必要に応じて、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の公知の着色剤や、ヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系等の各種安定剤を加えてもよい。
【0071】
[硬化物]
次に、本発明の硬化物について説明する。
本発明の硬化物は、本発明の硬化性組成物を硬化して得ることができる。本発明の硬化物を得る方法は、本発明の硬化性組成物を硬化できる方法であれば、特に制限はない。ただし、成分(B)として、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物あるいは1分子中に1個以上のイソシアネート基と1個以上のブロックイソシアネート基とを有する化合物を使用し、さらに、成分(A)と成分(B)の硬化反応を促進する硬化触媒を使用する場合には、成分(B)のイソシアナト基と成分(A)の水酸基の反応が室温でも進行し、可使時間が短くなるので、その可使時間内で使用することが必要である。
【0072】
また、成分(B)として、イソシアナト基を有さず、1分子中に2個以上のブロックイソシアナト基を有する化合物を使用する場合には、本発明の硬化性組成物を硬化する条件は、ブロックイソシアナト基から熱解離性ブロック剤が解離して、イソシアナト基が生成できる温度以上の温度条件で硬化を行うことが望ましい。
【0073】
例えば、従来のメチルエチルケトオキシム等でブロックされたブロックイソシアネート類を用いた場合には、成分(B)の化合物中のブロックイソシアナト基の数によっても異なるが、通常110〜200℃の硬化温度が好ましく、さらに好ましくは、140〜160℃がさらに好ましい。
【実施例】
【0074】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに制限されるものではない。
実施例及び比較例で合成した物質の物性は、以下の通りに測定した。
1.FT−IR
使用機種:Spectrum GX(パーキンエルマー社製)、
測定方法:KBr板を用いて、液膜法で測定した。
2.1H−NMR,13C−NMR
使用機種:JEOL EX−400(400MHz,日本電子(株)製)、
測定方法:重水素化クロロホルムまたは重水素化メタノールに溶解し、内部標準物質にテトラメチルシランを使用して測定した。
3.ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
使用機種
カラム:Shodex GPC K−G+K−802+K−802.5+K−801(昭和電工(株)製)、
検出器:Shodex SE−61(昭和電工(株)製) RI検出器。
測定条件
溶媒:クロロホルム、テトラヒドロフラン、
測定温度:40℃、
流速:1.0ml/分、
試料濃度:1.0mg/ml、
注入量:1.0μl、
検量線:Universal Calibration curve、
解析プログラム:SIC 480II (システム インスツルメンツ(株)製)。
4.水酸基価
JIS K0070に記載の中和滴定法に準じて測定した。
5.酸価
JIS K0070に記載の中和滴定法に準じて測定した。
【0075】
[成分(A)の合成]
合成例1−1:アリルアルコールと1−デセンの共重合体(A−1)
温度計、撹拌子、及び冷却管を備えた三つ口フラスコを予め窒素置換しておき、それにアリルアルコール20.0g(昭和電工(株)製 0.344mol)と1−デセン160.15g(和光純薬工業(株)製 1.15mol)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル9.08g(和光純薬工業(株)製 0.055mol)を加えた。このフラスコをオイルバスに浸し、90℃まで昇温した後、3時間撹拌した。フラスコを70℃まで冷却し、減圧下、70℃で未反応のアリルアルコールと1−デセンを留去した。その後、フラスコを室温まで冷却し、内容物をメタノール200mlに溶解し、それを2000mlの水に加え、室温で30分撹拌した。撹拌を止め、10分静置した後、ろ過して触媒残渣を除き、ろ液より減圧下に80℃で水、メタノール及び低沸点物を除去して高粘性油状物(以下、「A−1」と記す。)25.6gを得た。
A−1の1H−NMR、13C−NMR及びIRスペクトルを測定し、目的の共重合体ポリオールであることを確認した。1H−NMR、13C−NMR及びIRスペクトル測定の結果をそれぞれ図1〜3に示す。また、この共重合体ポリオールの数平均分子量はMn=1320、水酸基価は125mgKOH/g、水酸基価から算出したアリルアルコールモノマーユニットの含有量は26.4mol%であった。
【0076】
合成例1−2:アリルアルコールと1−デセンの共重合体(A−2)
120mlのステンレス製オートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製)にアリルアルコール2.00g(0.0344mol)と1−デセン48.3g(0.344mol)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)2.52g(和光純薬工業(株)製,0.0099mol)を加え、フランジ部を取り付けた後、系内を窒素で3回置換した。次いで内容物を400rpmで撹拌しながら温度を上げ、130℃で5時間反応させた。
内容物を室温まで冷却後、脱圧を行った後、反応器を開けて内容物を取り出し、減圧下に100℃で未反応のアリルアルコール、1−デセン及び開始剤残渣を除去して高粘性油状物(以下、「A−2」と記す。)10.44gを得た。
A−2の1H−NMR、13C−NMR及びIRスペクトルを測定し、目的の共重合体ポリオールであることを確認した。また、この共重合体ポリオールの数平均分子量はMn=810、水酸基価は54mgKOH/g、
アリルアルコールモノマーユニットは12.5mol%であった。
【0077】
合成例1−3:アリルアルコールと1−デセンの共重合(A−3)
120mlのステンレス製オートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製)にアリルアルコール4.00g(0.0688mol)と1−デセン48.3g(0.344mol)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)2.62g(0.0103mol)を加え、フランジ部を取り付けた後、系内を窒素で3回置換した。次いで内容物を400rpmで撹拌しながら温度を上げ、130℃で5時間反応させた。
内容物を室温まで冷却後、脱圧を行った後、反応器を開けて内容物を取り出し、減圧下に100℃で未反応のアリルアルコール、1−デセン及び開始剤残渣を除去して高粘性油状物(以下、「A−3」と記す。)9.02gを得た。
A−3の1H−NMR、13C−NMR及びIRスペクトルを測定し、目的の共重合体ポリオールであることを確認した。また、この共重合体ポリオールの数平均分子量はMn=780、水酸基価は89mgKOH/g、アリルアルコールモノマーユニットは19.6mol%であった。
【0078】
合成例1−4:アリルアルコールと1−オクテンの共重合(A−4)
120mlのステンレス製オートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製)にアリルアルコール6.00g(0.1032mol)と1−オクテン46.35g(和光純薬工業(株)製 0.410mol)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)2.62g(0.0103mol)を加え、フランジ部を取り付けた後、系内を窒素で3回置換した。次いで内容物を400rpmで撹拌しながら温度を上げ、130℃で5時間反応させた。
内容物を室温まで冷却後、脱圧を行った後、反応器を開けて内容物を取り出し、減圧下に100℃で未反応のアリルアルコール、1−オクテン及び開始剤残渣を除去して高粘性油状物(以下、「A−4」と記す。)6.98gを得た。
A−4の1H−NMR、13C−NMR及びIRスペクトルを測定し、目的の共重合体ポリオールであることを確認した。また、この共重合体ポリオールの数平均分子量はMn=670、水酸基価は158mgKOH/g、アリルアルコールモノマーユニットは27.4mol%であった。
【0079】
比較合成例1−1:C−1
撹拌機、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、ポリカーボネートジオールとしてC−1015N((株)クラレ製ポリカーボネートジオール、原料ジオールモル比:1,9−ノナンジオール:2−メチル−1,8−オクタンジオール=15:85、分子量964)71.3g、カルボキシル基を有するジヒドロキシル化合物として2,2−ジメチロールプロピオン酸(日本化成(株)製)12.1g、溶媒としてエチレングリコールメチルエーテルアセテート(ダイセル化学(株)製)126.4gを仕込み、反応液の温度を70℃で滴下ロートにより、ポリイソシアネートとしてデスモジュール−W(住化バイエルウレタン(株)製)43.0gを30分かけて滴下した。滴下終了後、80℃で1時間、90℃で1時間、100℃で3時間反応を行い、FT−IRによりNCO基に起因する2250cm-1付近の赤外吸収ピークがほぼ消失したことを確認した後、イソブタノール(和光純薬工業(株)製)1.21gを滴下し、さらに105℃にて1時間反応を行った。
得られたカルボキシル基含有ウレタン(以下、「C−1」と記す。)の数平均分子量は7460、固形分酸価は40.0mgKOH/gであった。
【0080】
比較合成例1−2:C−2
撹拌機、油水分離器付き冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた5リットルの四つ口フラスコに、PLACCELCD−220(ダイセル化学工業(株)製1,6−ヘキサンジオール系ポリカーボネートジオールの商品名)1000.0g(0.50モル)及び4、4’−ジフェニルメタンジイソシアネート250.27g(1.00モル)と、γ−ブチロラクトン833.51gを仕込み、140℃まで昇温し、140℃で5時間反応させ、化合物のジイソシアネートを得た。
さらに、この反応液に3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物358.29g(1.00モル)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート125.14g(0.50モル)及びγ−ブチロラクトン584.97gを仕込み、160℃まで昇温した後、5時間反応させて、樹脂(以下、「C−2」と記す。)を得た。C−2の数平均分子量は17,000であった。
【0081】
[ブロックイソシアナト基を有する化合物の合成]
合成例2−1:ブロックイソシアネートの合成(1)(B−1)
温度計、撹拌機、及び冷却管を備えた四ッ口フラスコを予め窒素置換しておき、その中に、バーノックDN−901S(DIC(株)製:脂肪族系イソシアヌレート型ポリイソシアネート、NCO含有量:23.0質量%)27.5g、メチルエチルケトン50.0gを加えた後、撹拌しつつ、温度を40℃に保ち、メチルエチルケトオキシム13,2g(0.152mol)を1時間かけて滴下した。その後、温度を40℃に保ち、撹拌を継続し、IR測定を行いながら反応を追跡した。IR測定で、NCO基に起因する2250cm-1付近の吸収ピークが無くなったことを確認し、イソシアナト基をブロックして目的のブロックイソシアナト基を含有する化合物(以下、「B−1」と記す。)を得た。
【0082】
合成例2−2:ブロックイソシアネートの合成(2)(B−2)
温度計、撹拌機、及び冷却管を備えた四ッ口フラスコを予め窒素置換しておき、その中に、デスモジュール Z 4470 MPA/X(住化バイエルウレタン(株)製:脂環族系イソシアヌレート型ポリイソシアネート、固形分濃度70質量%、NCO含有量:11.8質量%)35.0g、メチルエチルケトン50.0gを加えた後、撹拌しつつ、温度を40℃に保ち、メチルエチルケトオキシム8.60g(0.0987mol)を1時間かけて滴下した。その後、温度を40℃に保ち、撹拌を継続し、IR測定を行いながら反応を追跡した。IR測定で、NCO基に起因する2250cm-1付近の吸収ピークが無くなったことを確認し、イソシアナト基をブロックして目的のブロックイソシアナト基を含有する化合物(以下、「B−2」と記す。)を得た。
【0083】
[成分(A)を含む配合物の調整]
配合物:A1
共重合体ポリオール(A−1)20.0質量部に、アエロジルR−974(日本アエロジル(株)製,シリカ微粒子)1.00質量部を混合し、脱泡機能付き混練機(「あわとり練太郎」,(株)シンキー製,型式;AR−100)を用いて、撹拌30分、脱泡5分で混合した。その後、この混合物に、消泡剤として、SNデフォーマー470(サンノプコ(株)製)0.40質量部を加え、スパチュラを用いて均一に混合することによって、配合物A1を調整した。
【0084】
配合物:A2〜A4
共重合体ポリオール(A−2)、(A−3)及び(A−4)各5.0質量部に、それぞれアエロジルR−974(日本アエロジル(株)製,シリカ微粒子)0.25質量部を混合し、まず、粗混練し、次いで、脱泡機能付き混練機(あわとり練太郎,(株)シンキー製,型式;AR−100)を用いて、撹拌30分、脱泡5分で混合した。その後、この混合物に、消泡剤として、SNデフォーマー470、0.1質量部をそれぞれに加え、スパチュラを用いて均一に混合することによって、それぞれ、配合物A2、配合物A3及び配合物A4を調整した。
【0085】
比較配合物:C1
カルボキシル基含有ウレタン(C−1)100.0質量部に、アエロジルR−974、5.0質量部及びメラミン1.0質量部を加え、まず粗混練し、次いで、三本ロールミル((株)小平製作所製,型式 RIII−1RM−2)に3回通して混練りすることにより混合した。その後、この混合物に、消泡剤として、SNデフォーマー470、2.0質量部をそれぞれに加え、スパチュラを用いて均一に混合することによって、配合物C1を調整した。
【0086】
比較配合物:C2
樹脂(C−2)100.0質量部に、アエロジルR−974、5.0質量部を加え、まず粗混練し、次いで、三本ロールミルに3回通して混練りすることにより混合した。その後この混合物に、消泡剤として、SNデフォーマー470、2.0質量部を加え、スパチュラを用いて均一に混合することによって、配合物C2を調整した。
【0087】
配合部A1〜A4、比較配合物C1及びC2の組成(単位:質量部)を表1にまとめて記す。
【表1】

【0088】
実施例1:
配合物(A1)5.35質量部とジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(住化バイエルウレタン(株)製 商品名:デスモジュールW)1.46質量部及び硬化触媒であるジブチル錫ジラウリン酸塩(和光純薬工業(株)製)をスパチュラを用いて混合し、各成分が均一に混合されるまで撹拌して硬化性組成物を得た。この組成物をすぐに後述の長期電気絶縁信頼性試験の評価用サンプルの製造に使用した。
【0089】
実施例2〜実施例5、比較例1及び比較例2:
表2に示す配合量(単位:質量部)に従い、実施例1と同様の方法で硬化性組成物を得、長期電気絶縁信頼性試験の評価用サンプルの製造に使用した。また、配合物中の水酸基とイソシアナト基のモル比を表3に示す。
【表2】

【表3】

【0090】
[長期電気絶縁信頼性試験]
実施例1〜実施例5、比較例1及び比較例2で製造された硬化性組成物をガラス棒を用いて、約16μmの厚さ(乾燥・硬化後)になるように、フレキシブル銅張り積層板(商品名:UPISEL−N BE1310(グレード名)、宇部興産(株)製)をエッチングして製造した櫛形基板(銅配線幅/銅配線間幅=50μm/50μm)に塗布し(配線接続部は除く)、80℃で1時間、熱風循環式乾燥機を用いて乾燥させた。
次に、150℃で3時間加熱することにより、前記櫛形基板(銅配線幅/銅配線間幅=50μm/50μm)上に硬化被膜を形成させることにより、試験片(図5参照)を作製した。
この試験片の両配線接続部に、バイアス電圧100Vを印加し、温度120℃、湿度95%RHの条件での温湿度定常試験を、MIGRATION TESTER MODEL MIG−8600(IMV(株)製)を用いて行った。上記温湿度定常試験をスタートしてから0時間、50時間後、100時間後、150時間後、200時間後、250時間後及び300時間後の抵抗値を表4及び図4に示す。
【表4】

また、上記試験片を用いて、バイアス電圧100Vを印加し、温度85℃、湿度85%RHの条件での温湿度定常試験を、MIGRATION TESTER MODEL MIG−8600(IMV(株)製)を用いて行った。上記温湿度定常試験をスタートしてから500時間後及び1000時間後の抵抗値を表5に示す。
【表5】

【0091】
表4及び表5の結果より、本発明の硬化性組成物の硬化物は、高いレベルでの長期絶縁信頼性を有することがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】合成例1−1で得られたA−1の1H−NMRスペクトルである。
【図2】合成例1−1で得られたA−1の13C−NMRスペクトルである。
【図3】合成例1−1で得られたA−1のIRスペクトルである。
【図4】表4の結果をグラフ化したものである。
【図5】実施例で用いた試験片の概念図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマーユニットとして、少なくとも下記式(1)
【化1】

及び下記式(2)
【化2】

(式中、Rは炭素数2〜20の脂肪族炭化水素基を表わし、分岐していても、環状構造を含んでいてもよい。)
で示される構造をモノマーユニットとして含む共重合体ポリオールからなる成分(A)、及びイソシアナト基及び/またはブロックイソシアナト基を有し、かつ1分子中のイソシアナト基及びブロックイソシアナト基の総数が2以上である化合物からなる成分(B)を必須成分とする硬化性組成物。
【請求項2】
成分(B)が少なくともブロックイソシアナト基を有している化合物である請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
成分(A)が式(1)及び式(2)で示される構造のみをモノマーユニットとする共重合体ポリオールである請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
成分(A)中のモノマーユニットである式(2)中のRで表わされる炭素数2〜20の脂肪族炭化水素基が、炭素数2〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
成分(A)の水酸基価が10〜300mgKOH/gである請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
成分(B)が、脂環、芳香環及び複素環の群より選ばれる少なくとも1種以上の環構造を分子内に有し、かつ、イソシアナト基及び/またはブロックイソシアナト基を有しかつ1分子中のイソシアナト基及びブロックイソシアナト基の総数が2以上である化合物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
成分(A)中の水酸基と、成分(B)中のイソシアナト基とブロックイソシアナト基の総数のモル比が、5:1〜1:5の範囲である請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
さらに、硬化触媒を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
さらに、無機化合物を含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化して得られる硬化物。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化してなる電気絶縁性被膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−106067(P2010−106067A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277062(P2008−277062)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】