説明

ポリウレタン誘導体からなる生体適合性材料

【課題】熱可塑性でフィルムやチューブへの熱成形性に優れ、さらに、血小板や血液中の蛋白質の付着が少ない生体適合性材料を提供する。
【解決手段】環状四糖およびジオール化合物をジイソシアネート化合物と反応させることで製造される環状四糖を含むポリウレタンを利用する。具体的には、一般式[1]:

−{[CO−NH−R−NH−CO]−[O−R2−O]}m−#


#−{[CO−NH−R−NH−CO]−[O−CTS−O]}n− [1]

(OH)10
[式中、CTSは、環状四糖:サイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の骨格を表す]で表される環状四糖を含むポリウレタンを用いることを特徴とする生体適合性材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状四糖を含むポリウレタン誘導体を用いることを特徴とする生体適合性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは、基本的に2種類の主原料であるポリオールとジイソシアネートとを付加重合させることによって生成されるポリマーである。その用途としては、クッション材、断熱材、シーリング材、防水材、床材、舗装材、塗料、接着剤、合成皮革、弾性繊維、スポーツ品部材、包帯、ギブス、カテーテルなどが挙げられ、自動車、電気製品、土木建築、生活用品、医療などの幅広い分野で使われている。
【0003】
最近では、ポリウレタンの高機能化として吸水性や抗血栓性等を付与するのみならず化石資源の使用低減により地球環境への影響を減らすためにバイオマス物質である単糖、二糖、オリゴ糖や多糖等の糖類を含有させた、生分解性を付加したポリウレタンが開発されている。
【0004】
例えば、環状のオリゴ糖を含有するポリウレタンとしてシクロデキストリンを含むポリウレタン(例えば、特許文献1、特許文献3)、デンプンおよびその変性体である糖蜜あるいは多糖を含むポリウレタン(例えば、特許文献2、特許文献5)、単糖、二糖、オリゴ糖や多糖を含有するポリウレタン(例えば、特許文献4)、アシル化された単糖、二糖、オリゴ糖や多糖を側鎖に含有するポリウレタンおよびその脱アシル化ポリウレタン(例えば、特許文献6)が開示されている。なかでも特許文献6の脱アシル化ポリウレタンは市販のポリウレタンに較べて、血小板が粘着せず生体適合性があることが示されている。
【0005】
一方、最小の環状オリゴ糖である環状四糖の一種である、サイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}(下式参照)の種々の誘導体が知られている(例えば、特許文献7)。
【0006】
【化2】

【特許文献1】特開平5−86103
【特許文献2】特開平5−186556
【特許文献3】特開平7−53658
【特許文献4】特開平9−12588
【特許文献5】特開平9−104737
【特許文献6】特開平11−71391
【特許文献7】特開2003−160595
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、上記特許文献6に開示されている単糖、二糖、オリゴ糖や多糖を側鎖に有するポリウレタンは市販のポリウレタンに較べて、血小板が粘着せず生体適合性があることが示されている一方、これらの糖を側鎖に導入するために、製造が煩雑で製造コストが高くなる問題点がある。
【0008】
本発明の目的は、上記の従来品よりも製造が簡便でかつ製造コストが安価なポリウレタン誘導体からなる生体適合性材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記問題点に鑑み鋭意検討した結果、環状四糖とポリオールとジイソシアネートとの反応により得られる環状四糖を含む新規ポリウレタン誘導体が生体適合性材料に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記一般式[1]:

−{[CO−NH−R−NH−CO]−[O−R2−O]}m−#



#−{[CO−NH−R−NH−CO]−[O−CTS−O]}n− [1]

(OH)10

[式中、R1は、炭素数4〜16の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜16の2価の芳香族炭化水素基、又は炭素数7〜16の2価の芳香族置換基含有炭化水素基、R2は、同一又は異なる、炭素数2〜12のオキシアルキレン基及び/又は炭素数2〜6のアルキレン基を合計1〜100単位含有する2価の有機基、CTSは、環状四糖:サイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の下記式の骨格を表す(式中、*は水酸基の結合位置を表す)。
【0010】
【化3】

【0011】
m、nは繰り返し単位数であり、mは0〜1000、nは1〜1000の整数を表し、n/(m+n)は0.01〜1の範囲の数である。R、Rが複数ある場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]で表される環状四糖を含むポリウレタンを用いる生体適合性材料である。好ましくは、血液と接触する用途、具体的には、血液チューブ、血液バック、カテーテル、または血液分離フィルターの用途で使用されることを特徴とする上記生体適合性材料である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の環状四糖を含むポリウレタンは、熱可塑性でフィルムやチューブなどへの熱成形性に優れる。さらに、これらは、生体適合性があり、血小板や血液中の蛋白質の付着がないので生体材料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の生体適合性材料は、上記一般式[1]で表される環状四糖を含むポリウレタンである。
【0014】
上記一般式[1]において、R1は、炭素数4〜16の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜16の2価の芳香族炭化水素基、又は炭素数7〜16の2価の芳香族基置換炭化水素基である。これらの基において、鎖式構造を有する時は、直鎖であっても分岐していてもよい。R1基の具体的なものとしては、例えば、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、ヘキサデカメチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、フェニレン基、ナフチレン基等の2価の基、あるいは、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ビフェニル基、メチレンビスフェニル基、エチレンビスフェニル基などの1価の炭化水素基の芳香環に結合する水素原子を1個除いたものが挙げられる。これらのうち、メチレンビスフェニル基、メチルフェニル基、ヘキサメチレン基が好ましい。
【0015】
上記一般式[1]において、R2は、同一又は異なる、炭素数2〜12のオキシアルキレン基及び/又は炭素数2〜6のアルキレン基を合計1〜100単位含有する2価の有機基である。このようなものとしては、例えば、同一又は異なる炭素数2〜12のオキシアルキレン基を合計1〜100単位含有する2価の有機基、同一又は異なる炭素数2〜6のアルキレン基を合計1〜100単位含有する2価の有機基、同一又は異なる炭素数2〜12のオキシアルキレン基及び同一又は異なる炭素数2〜6のアルキレン基を合計1〜100単位含有する2価の有機基であってよい。R2は、具体的には、例えば、(1)−(BO)h-1−B−基(ただし、Bは、炭素数2〜12のアルキレン基を表し、hはオキシアルキレン基の平均付加モル数で1〜100の数を表す。Bが複数ある場合、同一でも異なっていてもよい。)であり、これらの繰り返し単位基BOは直鎖であっても分岐していてもよい。このような繰り返し単位基BOの具体的なものとしては、例えば、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、トリメチレンオキシ基、ブチレンオキシ基、テトラメチレンオキシ基などのアルキレンオキシ基を挙げることができる。また、R2は、例えば、(2)エチレンアジペート基、プロピレンアジペート基、ブチレンアジペート基、ヘキサメチレンアジペート基、ネオペンチルアジペート基などのアルキレンエステル基、または、ヘキサメチレンカーボネート基などのアルキレンカーボネート基や開環カプロラクトン基などの繰り返し単位を有するものであってもよい(具体的には、ポリエチレンアジペートジオール等から両端のOHを除いた2価の基等)。さらに、R2は、例えば、(3)−(E)−基(ただし、Eは炭素数2〜6の2価の炭化水素基を表し、iは平均付加モル数で1〜100の数を表す。Eが複数ある場合、同一でも異なっていてもよい。)であってもよく、Eで表される繰り返し単位基は直鎖であっても分岐していてもよく、また飽和基であっても不飽和基であってもよい、また水素原子が他の原子または置換基で置換されていても良い。このような繰り返し単位基の具体的なものとしては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、ノナメチレン基、−CH−CF−CF−CF−CF−CH−基、ブタジエニレン基、水添ブタジエニレン基、水添イソプレンの両鎖端の炭素原子から水素原子を1個ずつ除いて誘導される基、ポリジメチルシロキシジメチルシリル−n−プロピルビスエトキシ基等の2価の基などが挙げられる。これらのうち、R2は、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、エチレンアジペート基、プロピレンアジペート基、ヘキサメチレンカーボネート基、開環カプロラクトン基の繰り返し単位を有するもの、トリメチレン基、テトラメチレン基、−CH−CF−CF−CF−CF−CH−基、水添ブタジエニレン基、水添イソプレンの両鎖端の炭素原子から水素原子を1個ずつ除いて誘導される基、ポリジメチルシロキシジメチルシリル−n−プロピルビスエトキシ基が好ましい。なお前記R2の各々B、Eで表される基は、各々hまたはiの数だけ繰り返されるが、この場合同じ基の繰り返しでもよいし、異なる組み合わせであってもよい。また、hは1〜100の整数を表す。
【0016】
上記一般式[1]においてCTSは環状四糖:サイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の骨格を表し、*部は水酸基の結合位置を表す。
【0017】
上記一般式[1]において、m,nは繰り返し単位数であり、mは0〜1000、ポリマー強度、ポリマー成形性の観点から、好ましくは10〜1000であり、nは1〜1000,血液適合性の観点から、好ましくは10〜1000の整数を表し、n/(m+n)は0.01〜1,血液適合性、ポリマー強度、ポリマー成形性のバランスの観点から、好ましくは0.02〜0.80の範囲の数である。なお、一般式[1]における繰り返し単位の配列は規則的であっても不規則的であってもよい。
【0018】
本発明の生体適合性材料である、環状四糖を含むポリウレタンは例えば、次のように製造できる。
一般式[2]:

HO−CTS−OH

(OH)10

[式中、CTSは、前記と同じ]

で表される環状四糖と一般式[3]:

HO−R2−OH

[式中Rは、前記と同じ]

で表されるジオールを一般式[4]:

O=C=N−R−N=C=O

[式中Rは、前記と同じ]

で表されるジイソシアネートと反応させる。または、上記一般式[2]で表される環状四糖と上記一般式[4]で表されるジイソシアネートとを反応させる。この際、一般式[2]で表されるアシル化環状四糖と一般式[3]で表されるジオールの混合物と一般式[4]で表されるジイソシアネートとを反応させてもよいし(ワンショット法)、あるいは、まず一般式[3]で表されるジオールと一般式[4]で表されるジイソシアネートとを反応させプレポリマーとし、ついで一般式[2]で表される環状四糖を反応させてもよいし(プレポリマー法1)、または、まず一般式[2]で表される環状四糖と一般式[4]で表されるジイソシアネートとを反応させプレポリマーとし、ついで一般式[3]で表されるジオールを反応させてもよい(プレポリマー法2)。またその際には、一般式[3]で表されるジオールは1種もしくは2種以上の異なったものを反応させてもよい。ジオールを使用しない場合も上述に準じて行うことができる。
【0019】
本発明に用いられる前記一般式[4]のジイソシアネートは、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、あるいは両末端にイソシアネート基を有するプレポリマー等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。
【0020】
また一般式[3]で表されるジオールは、一級水酸基を有するジオールであれば特に制限はない。具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジオール等の低分子量のジオール;ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体、テトラヒドロフラン−エチレンオキシド共重合体、テトラヒドロフラン−プロピレンオキシド共重合体などのポリエーテル系ジオール、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリジエチレンアジペートグリコール、ポリプロピレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコール、ポリヘキサメチレンアジペートグリコール、ポリネオペンチルアジペートグリコール、ポリカプロラクトングリコールなどのポリエステル系ジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートグリコールなどのポリカーボネート系ジオール、ポリブタジエングリコール、水添ポリブタジエングリコール、水添ポリイソプレングリコールなどのポリオレフィン系グリコール、ビス(ヒドロキシエトキシ−n−プロピルジメチルシリル)ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン系ジオール、などの高分子量のジオールを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。
【0021】
ポリウレタンを製造する際の溶媒としては、反応物および生成するポリウレタンを溶解し得るものであればよい。具体的には、たとえば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等の有機溶媒単独もしくはそれらの混合溶媒が挙げられる。
【0022】
ポリウレタンを製造する際には、窒素等乾燥不活性ガスを通じながら、一般式[4]のジイソシアネートの溶液中に、前記一般式[2]の環状四糖と、該当する場合は、一般式[3]のジオールを添加する。仕込みモル比は、一般式[4]の化合物:一般式[3]の化合物:一般式[2]の化合物が、3:0〜2.99:0.01〜3が好ましく、より好ましくは、3:0.2〜2.5:0.5〜2.8である。反応温度は10〜150℃が好ましく、より好ましくは、20〜120℃で、反応時間は1〜10時間が好ましく、より好ましくは、2〜6時間である。
【0023】
反応終了後、反応溶液をメタノール、アセトン等の有機溶媒に投入し、濾過、洗浄、必要に応じて再沈殿精製を繰り返して得られた固体分を室温〜100℃で1〜24時間程度減圧乾燥して一般式[1]で表される本発明のポリウレタンを得ることができる。
【0024】
このようにして得られる一般式[1]で表される環状四糖を含有するポリウレタンは、生体適合性に優れることから、生体適合性材料として使用できる。好ましくは、血小板や血液中のタンパク質が付着しにくいという特性を有しているため、血液が接触する用途、例えば、血液チューブ、血液バック、カテーテル、または血液分離フィルターなどの用途に適している。
【実施例】
【0025】
次に本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
重合に使用するモノマー化合物を次のように略称する。
【0027】
CTS=環状四糖
MDI=メタンジフェニルジイソシアネート
PPG=ポリプロピレングリコール
PTMG=ポリテトラメチレングリコール
PSiG=ビス(ヒドロキシエトキシ−n−プロピルジメチルシリル)ポリジメチルシロキサン
【0028】
(合成例1)
CTS−PPG−MDI(モル比1/2/3)ポリウレタンの合成(プレポリマー法1)
メカニカルスターラーを装着した4口フラスコ(窒素ガス置換済み)にポリプロピレングリコール(平均分子量700、6.48g)、ジメチルアセトアミド(60ml)、メタンジフェニルジイソシアネート(3.64g)を入れ、攪拌しながら、室温から徐々に90℃まで温度を上げ1時間反応させた。次にこの反応液を室温まで冷却した後、環状四糖 (3.00g)を加え、この温度で4時間反応させた。反応溶液をメタノールに投入し、生成物を析出させ、濾過、メタノールで洗浄後、真空乾燥して生成物を得た(収率77%)。
【0029】
そのプロトンNMRにより目的物であることを確認した。
【0030】
プロトンNMRプロトン(溶媒:重ジメチルスルホキシド)
1.05、1.20;CH
3.20−3.60;−O−CH−CH−O−
3.60−5.40;−CH−、−CH−
3.76 ;−CH
7.05、7.32;−C
8.52 ;−NH−CO−
【0031】
(合成例2)
CTS−PPG−MDI(モル比0.5/2.5/3)ポリウレタンの合成(プレポリマー法1)
ポリプロピレングリコール(平均分子量700、8.10g)、ジメチルアセトアミド(65ml)、メタンジフェニルジイソシアネート(4.25g)、環状四糖 (3.00g)を用いて合成例1と同様にして、目的のポリウレタンを得た(収率90%)。
【0032】
(合成例3)
CTS−PPG−MDI(モル比0.25/2.75/3)ポリウレタンの合成(プレポリマー法1)
ポリプロピレングリコール(平均分子量700、8.91g)、ジメチルスルホキシド(60ml)、メタンジフェニルジイソシアネート(4.55g)、環状四糖 (3.00g)を用いて合成例1と同様にして、目的のポリウレタンを得た(収率92%)。
【0033】
(合成例4)
CTS−PPG−MDI(モル比0.1/2.9/3)ポリウレタンの合成(プレポリマー法1)
ポリプロピレングリコール(平均分子量700、9.40g)、ジメチルアセトアミド(65ml)、メタンジフェニルジイソシアネート(4.73g)、環状四糖 (3.00g)を用いて合成例1と同様にして、目的のポリウレタンを得た(収率90%)。
【0034】
(合成例5)
CTS−PTMG−MDI(モル比1/2/3)ポリウレタンの合成(プレポリマー法1)
ポリテトラメチレングリコール(平均分子量1000、9.26g)、ジメチルスルホキシド(65ml)、メタンジフェニルジイソシアネート(3.64g)、環状四糖 (3.00g)を用いて合成例1と同様にして、目的のポリウレタンを得た(収率93%)。
【0035】
(合成例6)
CTS−PTMG−MDI(モル比0.5/2.5/3)ポリウレタンの合成(プレポリマー法1)
ポリテトラメチレングリコール(平均分子量1000、11.57g)、ジメチルアセトアミド(65ml)、メタンジフェニルジイソシアネート(4.25g)、環状四糖 (3.00g)を用いて合成例1と同様にして、目的のポリウレタンを得た(収率92%)。
【0036】
(合成例7)
CTS−PSiG−PPG−MDI(モル比1/0.1/1.9/3)ポリウレタンの合成(プレポリマー法1)
ポリプロピレングリコール(平均分子量700、6.16g)、ジメチルスルホキシド(65ml)、メタンジフェニルジイソシアネート(3.64g)、環状四糖 (3.00g)SiG(平均分子量1000、0.46g)を用いて合成例1と同様にして、目的のポリウレタンを得た(収率91%)。
【0037】
(合成例8)
CTS−PSiG−PPG−MDI(モル比0.5/0.2/2.3/3)ポリウレタンの合成(プレポリマー法1)
ポリプロピレングリコール(平均分子量700、7.45g)、ジメチルスルホキシド(65ml)、メタンジフェニルジイソシアネート(4.25g)、環状四糖 (3.00g)、PSiG(平均分子量1000、0.93g)を用いて合成例1と同様にして、目的のポリウレタンを得た(収率91%)。
【0038】
(合成例9)
PPG−MDI(モル比1/1)ポリウレタンの合成
メカニカルスターラーを装着した4口フラスコ(窒素ガス置換済み)に、ポリプロピレングリコール(平均分子量700、14.70g)、ジメチルアセトアミド(100ml)、メタンジフェニルジイソシアネート(5.50g)を入れ、攪拌しながら、室温から徐々に120℃まで温度を上げ、この温度で4時間反応させた。反応溶液をメタノールに投入し、生成物を析出させ、濾過、メタノールで洗浄後、真空乾燥して生成物を得た(収率90%)。
【0039】
そのプロトンNMRにより目的物であることを確認した。
【0040】
プロトンNMRプロトン(溶媒:重ジメチルスルホキシド)
1.05、1.20;CH
3.20−3.60;−O−CH−CH−O−
3.76 ;−CH
7.05、7.32;−C
8.52 ;−NH−CO−
【0041】
(実施例1〜8、比較例1〜4)
<プレスフィルムの作製>
合成例1〜9で得られた各種ポリウレタンを用いて、加圧成形機でプレスフィルムを作成した。作製条件の温度は150〜160℃、圧力は3MPa、時間は2分であった。

<血液適合性評価>
(1)血球付着評価
血液:人の血液を採血し、ヘパリンを3 IU/mlになるよう添加した。
【0042】
サンプル
1)実施例1〜8、比較例3:合成例1〜9のポリウレタンプレスフィルム
2)比較例1:市販塩化ビニル(PVC)製血液バッグ
T−020(テルフレックス)
3)比較例2:市販ポリウレタン(日本ポリウレタン ミラクトランE385)の
プレスフィルム
4)対照例:フィルムを入れずに血液のみ(コントロール)
上記1)〜3)のサンプルを5mm角に裁断した断片10枚を各々ポリプロピレン製試験管に入れ、さらに血液5ml(ヘパリン3 IU/ml添加)を加え、37℃にて1時間接触させた(n=2)。血液のみを別の試験管に採取し、血小板数、赤血球数、白血球数をパーティクルカウンターで計測した。赤血球、白血球、血小板の付着率(%)は次式によって算出した。

付着率(%)=[(コントロール中の血球数)-(試験サンプル中の血球数)]÷(コントロール中の血球数)×100

(2)血液活性化・蛋白質付着評価
上記の方法でサンプル接触させた血液を別の試験管に採取し、これから血漿を採取し次の方法で血小板活性、血液凝固活性、白血球活性、蛋白質付着を測定した。
【0043】
βTG,TAT,PMN−E:標識物質に酵素で標識した抗原または抗体を検体血漿に添加し抗原抗体反応を行い、発色基質を加えて酵素活性を測定する酵素免疫測定法にて測定した。
【0044】
総タンパク質:ピロガロールレッド−モリブデン酸錯体を酸性下で検体血漿に添加し、タンパク質と結合させ、600nm付近の吸光度を測定する事により、試料中の総タンパク質を定量した。
【0045】
アルブミン:抗原抗体反応による混濁物に光を照射させ、光の散乱強度を測定するネフェロメトリー(Nephelometry)法にて測定した。
【0046】
FDP:抗原または抗体を結合させたラテックス粒子を検体血漿に添加し抗原抗体反応を行い、抗原抗体反応による凝集の濁度を、近赤外光を照射させて透過率を測定するラテックス近赤外免疫比濁法にて測定した。
【0047】
フィブリノーゲン:トロンビンを検体血漿に添加し、凝固時間を測定するトロンビン凝固時間法にて測定した。
【0048】
IgG:抗原抗体反応による混濁物に光を照射させ、透過率を測定する免疫比濁法にて測定した。
【0049】
(1)及び(2)の結果を表1、2に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
以上の結果から、実施例1〜8で示されるように本発明のポリウレタンは比較例1〜3のポリマーに較べ、血液中の血小板の付着が少なく、蛋白質の付着が市販PVC血液バッグ(比較例1)と同等で、さらに血小板活性、血液凝固活性、白血球活性が低いことから優れた生体適合性を有している事が示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]:

−{[CO−NH−R−NH−CO]−[O−R2−O]}m−#



#−{[CO−NH−R−NH−CO]−[O−CTS−O]}n− [1]

(OH)10

[式中、R1は、炭素数4〜16の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜16の2価の芳香族炭化水素基、又は炭素数7〜16の2価の芳香族置換基含有炭化水素基、R2は、同一又は異なる、炭素数2〜12のオキシアルキレン基及び/又は炭素数2〜6のアルキレン基を合計1〜100単位含有する2価の有機基、CTSは、下記式:
【化1】

(式中、*は水酸基の結合位置を表す。)で表される環状四糖:サイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の骨格を表し、
m、nは繰り返し単位数であり、mは0〜1000、nは1〜1000の整数を表し、n/(m+n)は0.01〜1の範囲の数である。R、Rが複数ある場合、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]で表される環状四糖を含むポリウレタンを用いることを特徴とする生体適合性材料。
【請求項2】
血液と接触する用途で使用される請求項1記載の生体適合性材料。
【請求項3】
血液チューブ、血液バック、カテーテル、または血液分離フィルターの用途で使用されることを特徴とする請求項1記載の生体適合性材料。

【公開番号】特開2007−151996(P2007−151996A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354582(P2005−354582)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】