説明

ポリエステルならびにポリエステルの製造方法

【課題】アンチモン、ゲルマニウムおよびチタン系以外の金属成分を触媒の主たる金属成分とするアルミニウム化合物とリン化合物とからなる重縮合触媒で得たポリエステルに関して、Tc1が適性な温度範囲で、かつ重縮合触媒の主金属元素であるアルミニウム起因のポリエステルに対して不溶性の異物が少ないポリエステルおよびその連続式重縮合方法を提供すること。
【解決手段】アルミニウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、リン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種からなるポリエステル重縮合触媒の存在下に連続式重縮合法でポリエステルを製造する方法において、エステル化反応またはエステル交換反応終了後に前記アルミニウム化合物とリン化合物とを溶液で混合して添加するポリエステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステルの製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、ゲルマニウム、アンチモン化合物を触媒主成分として用いない新規のポリエステル重縮合触媒を用いたポリエステルの重縮合法およびそのポリエステル製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等に代表されるポリエステルは、機械的特性、及び化学的特性に優れており、それぞれのポリエステルの特性に応じて、例えば衣料用や産業資材用の繊維、包装用、磁気テープ用、光学用などのフィルムやシート、中空成形品であるボトル、電気・電子部品のケーシング、その他エンジニアリングプラスチック成形品等の広範な分野において使用されている。特に、PETなどの飽和ポリエステルからなるボトルは、機械的強度、耐熱性、透明性およびガスバリヤー性に優れるため、ジュース、炭酸飲料、清涼飲料などの飲料充填用容器および目薬、化粧品などの容器として広く使用されている。
【0003】
代表的なポリエステルである芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールを主構成成分とするポリエステルは、例えばPETの場合には、テレフタル酸もしくはテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとのエステル化反応もしくはエステル交換反応によってビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートなどのオリゴマー混合物を製造し、これを高温、真空下で触媒を用いて液相重縮合させ製造されている。
【0004】
従来から、このようなポリエステルの重縮合時に用いられるポリエステル重縮合触媒としては、アンチモンあるいはゲルマニウム化合物が広く用いられている。三酸化アンチモンは、安価で、かつ優れた触媒活性をもつ触媒であるが、これを主成分、即ち、実用的な重合速度が発揮される程度の添加量にて使用すると、重縮合時に金属アンチモンが析出するため、ポリエステルに黒ずみや異物が発生し、フィルムの表面欠点の原因にもなる。また、中空の成形品等の原料とした場合には、透明性の優れた中空成形品を得ることが困難である。このような経緯で、アンチモンを全く含まないか或いはアンチモンを触媒主成分として含まないポリエステルが望まれている。
【0005】
アンチモン化合物以外で優れた触媒活性を有し、かつ上記の問題を有しないポリエステルを与える触媒としては、ゲルマニウム化合物がすでに実用化されているが、この触媒は非常に高価であるという問題点や、重合中に反応系から系外へ留出しやすいため反応系の触媒濃度が変化し重合の制御が困難になるという課題を有しており、触媒主成分として使用することには問題がある。
【0006】
アンチモン系あるいはゲルマニウム系触媒に代わる重縮合触媒の検討も行われており、テトラアルコキシチタネートに代表されるチタン化合物がすでに提案されているが、これらを用いて製造されたポリエステルは溶融成形時に熱劣化を受けやすく、またポリエステルが著しく着色するという問題点を有する。
【0007】
以上のような経緯で、アンチモン、ゲルマニウムおよびチタン系以外の金属成分を触媒の主たる金属成分とする重縮合触媒であり、触媒活性に優れ、色調や熱安定性に優れかつ成形品の透明性に優れたポリエステルを与える重縮合触媒が望まれている。
【0008】
上記の要求に答える新規の重縮合触媒として、アルミニウム化合物とリン化合物とからなる触媒系が開示されており注目されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【特許文献1】特開2001−131276号公報
【特許文献2】特開2001−163963号公報
【特許文献3】特開2001−163964号公報
【特許文献4】特開2002−220446号公報
【0009】
また、上記重縮合触媒系によるポリエステルの製造方法に関して、水および/または有機溶媒に、カルボン酸アルミニウム塩からなる群より選ばれた少なくとも1種を溶解した溶液からなるポリエステル重縮合触媒および該重縮合触媒を用いたポリエステルの製造方法が開示されている(特許文献5参照)。
【特許文献5】特開2003−82083号公報
【0010】
上記の特許文献で開示された方法により得られたポリエステルは、色調、透明性や熱安定性が良好であり、前記要求に答えるものである。しかし該方法で得られたポリエステルはポリエステルに不溶性の異物含有量が常に低いレベルで安定して得ることが出来ないという課題を有しており、超微細繊維、光学用の高透明なフイルムあるいは超高透明な成型体等において十分に満足するレベルに到達しておらずその改善が強く嘱望されていた。
【0011】
一方、PETはその優れた透明性、機械的強度、耐熱性、ガスバリヤー性などの特性により炭酸飲料、ジュース、ミネラルウオータなどの容器の素材として採用されておりその普及はめざましいものがある。これらの用途において、ポリエステル製ボトルに高温で殺菌した飲料を熱充填したり、また飲料を充填後高温で殺菌したりするが、通常のポリエステル製ボトルでは、このような熱充填処理時等に収縮、変形が起こり問題となる。ポリエステル製ボトルの耐熱性を向上させる方法として、ボトル口栓部を熱処理して結晶化度を高めたり、また延伸したボトルを熱固定させたりする方法が提案されている。特に口栓部の結晶化が不十分であったり、また結晶化度のばらつきが大きい場合にはキャップとの密封性が悪くなり、内容物の漏れが生ずることがある。
【0012】
また、果汁飲料、ウーロン茶およびミネラルウオータなどのように熱充填を必要とする飲料の場合には、プリフォームまたは成形されたボトルの口栓部を熱処理して結晶化する方法が一般的である(例えば、特許文献6および7等参照)。このような方法、すなわち口栓部、肩部を熱処理して耐熱性を向上させる方法は、結晶化処理をする時間・温度が生産性に大きく影響し、低温でかつ短時間で処理できる、結晶化速度が速いPETであることが好ましい。一方、胴部についてはボトル内容物の色調を悪化させないように、成形時の熱処理を施しても透明であることが要求されており、口栓部と胴部では相反する特性が必要である。また、結晶化速度が速すぎると結晶化が不均一になり口栓部に歪が生じ、充填液の液漏れに繋がる。
【特許文献6】特開昭55−79237号公報
【特許文献7】特開昭58−110221号公報
【0013】
このような問題を解決策として、PETの結晶化速度を最適化する方法があり、結晶化速度の尺度であるPETの昇温時結晶化温度、いわゆるTc1を最適範囲にすることが知られている。適切な結晶化速度はボトルの生産工程の装置等により微妙に変化するが、市場より150〜170℃のTc1の製品が望まれている。上記のアルミニウム化合物とリン化合物とからなる重縮合触媒系は、例えば、従来より広く用いられているアンチモン系重縮合触媒とは異なり最適Tc1である150〜170℃のPETが得られることが開示されている(例えば、特許文献8等参照)。確かに、該方法は回分式重縮合法については安定して上記特性のPETが得られるが、連続式重縮合法に適用した場合は、上記特性が好ましい範囲にならないこともあり、この特性が安定して得られる方法の確立が強く嘱望されていた。
【特許文献8】特開2002−249568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は従来技術の課題を背景になされたもので、アンチモン、ゲルマニウムおよびチタン系以外の金属成分を触媒の主たる金属成分とする重縮合触媒で色調、透明性や熱安定性を維持し、連続式重縮合法においてTc1が適性な温度範囲で、かつ重縮合触媒起因の異物生成が少ないポリエステルを安定して製造できるポリエステルの製造方法を提供するものである。また、アンチモン、ゲルマニウムおよびチタン系以外の金属成分を触媒の主たる金属成分とするアルミニウム化合物とリン化合物とからなる重縮合触媒で得たポリエステルに関して、Tc1が適性な温度範囲で、かつ重縮合触媒の主金属元素であるアルミニウム起因のポリエステルに対して不溶性の異物が少なく、超微細繊維、光学用の高透明なフイルムあるいは超高透明な成型体等の分野においてその特徴を発揮することができるポリエステルおよびその成型体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに到った。即ち本発明は、アルミニウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、リン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種からなるポリエステル重縮合触媒の存在下に連続式重縮合法でポリエステルを製造する方法において、エステル化反応またはエステル交換反応終了後に前記アルミニウム化合物とリン化合物とを溶液で混合して添加することを特徴とするポリエステルの製造方法である。また、本発明は、アルミニウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、リン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種からなるポリエステル重縮合触媒の存在下で製造したポリエステルにおいて、本文中で記載した方法で定量されるポリエステルに不溶なアルミニウム系異物が3500ppm以下であり、かつ昇温結晶化温度が150℃以上であることを特徴とするポリエステルである。また、本発明はその成型体である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるポリエステルの製造方法は、品質の均一性や経済性に優れた連続式重縮合法において、アンチモン、ゲルマニウムおよびチタン系以外の金属成分を触媒の主たる金属成分とした重縮合触媒で色調、透明性および熱安定性等を維持し、Tc1が適性な温度範囲で、かつ重縮合触媒起因の異物生成が少ないポリエステルが得られるので、品質と経済性を両立させることの出来るという利点がある。従って、本発明の製造方法で得られたポリエステルは、例えば衣料用や産業資材用の繊維、包装用、磁気テープ用および光学用などのフィルムやシート、中空成形品であるボトル、電気・電子部品のケーシング、その他エンジニアリングプラスチック成形品等の広範な分野において好適に使用することができる。本発明において得られるポリエステルはポリエステルの結晶化に大きく影響するTc1が最適されたものであるので、耐熱性ボトル用原料等のポリエステルの結晶化特性が重要視される分野に対して特に好適に使用することができる。また、本発明のポリエステルは、重縮合触媒起因の異物生成が少ないという特徴を有しているので超微細繊維、光学用の高透明なフイルムあるいは超高透明な成型体等の分野においてその特徴を発揮することができるという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に言うポリエステルとは、ジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体とジオールおよび/またはそのエステル形成性誘導体とから成るものをいう。
【0018】
ジカルボン酸としては、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、 テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5ーノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、ジフェニン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4、4’−ビフェニルジカルボン酸、4、4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4、4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などに例示される芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0019】
これらのジカルボン酸のうちテレフタル酸およびナフタレンジカルボン酸とくに2,6−フタレンジカルボン酸が、得られるポリエステルの物性等の点で好ましく、必要に応じて他のジカルボン酸を構成成分とする。
【0020】
これらジカルボン酸以外にも少量であれば多価カルボン酸を併用しても良い。該多価カルボン酸としては、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3、4、3’、4’−ビフェ
ニルテトラカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0021】
グリコールとしてはエチレングリコール、1、2−プロピレングリコール、1、3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1、2−ブチレングリコール、1、3−ブチレングリコール、2、3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、1,10−デカメチレングリコール、1、12−ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノール
、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1、2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコール、などに例示される芳香族グリコールが挙げられる。
【0022】
これらのグリコールのうちエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0023】
これらグリコール以外に少量であれば多価アルコールを併用しても良い。該多価アルコールとしては、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオールなどが挙げられる。
【0024】
また、ヒドロキシカルボン酸を併用しても良い。該ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3ーヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、pー(2ーヒドロキシエトキシ)安息香酸、4ーヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0025】
また、環状エステルの併用も許容される。該環状エステルとしては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチドなどが挙げられる。
【0026】
多価カルボン酸もしくはヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、これらの化合物のアルキルエステルやヒドロキシルアルキルエステル等が挙げられる。
【0027】
ジオールのエステル形成性誘導体としては、ジオールの酢酸等の低級脂肪族カルボン酸とのエステルが挙げられる。
【0028】
本発明のポリエステルとしてはPET、PBT、ポリプロピレンテレフタレート、ポリ(1,4ーシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、PEN、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレートおよびこれらの共重合体が好ましく、これらのうちポリエチレンテレフタレートおよびこの共重合体が特に好ましい。共重合体としてはエチレンテレフタレート単位を50モル%以上よりなるものが好ましく、70モル%以上がより好ましい。PETが特に好ましい。
【0029】
本発明の重縮合触媒を構成するアルミニウム化合物は溶媒に溶解するものであれば限定されないが、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酒石酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn−プロポキサイド、アルミニウムiso−プロポキサイド、アルミニウムn−ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジiso−プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物及びこれらの部分加水分解物、アルミニウムのアルコキサイドやアルミニウムキレート化合物とヒドロキシカルボン酸からなる反応生成物、酸化アルミニウム、超微粒子酸化アルミニウム、アルミニウムシリケート、アルミニウムとチタンやケイ素やジルコニウムやアルカリ金属やアルカリ土類金属などとの複合酸化物などが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩及びキレート化合物が好ましく、これらの中でもさらに酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム及びアルミニウムアセチルアセトネートがとくに好ましい。
【0030】
これらのアルミニウム化合物の中でも、アルミニウム含有量が高い酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムが好ましく、さらに溶解度の観点から酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムが好ましい。さらに、装置を腐食しない観点から、酢酸アルミニウムの使用がとくに好ましい。
【0031】
ここで、水酸化塩化アルミニウムは一般にポリ塩化アルミニウムや塩基性塩化アルミニウムなどとも呼ばれるものの総称であり、水道用に使われるものなどが使用できる。これらは、例えば一般構造式[Al2(OH)nCl6-nm(ただし1≦n≦5)で表される。これらの中でも、装置を腐食しない観点から塩素含有量の少ないものが好ましい。
【0032】
上記の酢酸アルミニウムは、塩基性酢酸アルミニウム、トリ酢酸アルミニウム、酢酸アルミニウム溶液などに代表される酢酸のアルミニウム塩の構造を有するものの総称であり、これらの中でも、溶解性および溶液の安定性の観点から、塩基性酢酸アルミニウムの使用が好ましい。塩基性酢酸アルミニウムの中でも、モノ酢酸アルミニウム、ジ酢酸アルミニウム、あるいはこれらがホウ酸で安定化されたものが好ましい。塩基性酢酸アルミニウムの安定剤としては、ホウ酸以外に尿素、チオ尿素などが挙げられる。
【0033】
上記のアルミニウム化合物は水やグリコールなどの溶剤に可溶化したものが好ましい。
本発明で使用できる溶媒とは、水およびアルキレングリコール類である。アルキレングリコール類には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ジテトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。好ましくは、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、さらに好ましくはエチレングリコールである。水および/またはエチレングリコールに可溶化したものを用いることが本発明の効果を顕著に発現することができるので好ましい。
【0034】
本発明においては、上記のアルミニウム化合物をエチレングリコールに溶解して用いることが好ましく、以下に示す方法で定量される27Al−NMRスペクトルにおいて−15〜30ppmに現れるヒ゜ークの積分値が基準ヒ゜ークの積分値に対する比で0.3以上であるアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液を用いることがより好ましい。
[アルミニウム化合物エチレングリコール溶液のNMRスペクトルの測定法]
下記方法でアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液のNMRスペクトルを測定する。
試料 :アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液(濃度:アルミニウ元
素量として2.65g/l)
装置 :フーリエ変換核磁気共鳴装置(BRUKER製AVANCE500)
測定溶液 :上記試料80容量部に対して20容量部の重水素化ジメチルスルホキ
シドを添加
27Al共鳴周波数 :130.33MHz
検出パルスのフリップ角:90°
データ取り込み時間:1.0秒
遅延時間 :1.0秒
プロトンデカップリング:実施せず
積算回数 :500〜1000回
測定温度 :室温
一方、塩化アルミニウム・六水和物(AlCl3・6H2O) 1.3ミリモル/lの重水溶液を上記の条件で測定したときのピーク積分値を基準の1.0とし、上記方法で測定されるアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液のー15〜30ppmに現れるヒ゜ーク積分値の比で表示する。
該ヒ゜ークの積分値比は0.35以上がより好ましく、0.40以上がさらに好ましく、0.50以上が特に好ましい。該ヒ゜ークの積分値比が0.30未満では後述のポリエステルに不溶なアルミニウム系異物量が増大し3500ppm以下を確保することができなくなるので好ましくない。
【0035】
上記ヒ゜ークの積分値比を0.3以上にする方法は限定されないが、アルミニウム化合物を溶液化する際に該溶液の温度が110℃以上にならないようにすることが好ましい実施態様である。105℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。該アルミニウム化合物は前記のごとく最終的にはエチレングリコール溶液として反応系に添加するのが好ましい。該エチレングリコール溶液の調製方法も限定されないが、アルミニウム化合物を一旦水に溶解させた後に、該水溶液にエチレングリコールを添加し、得られた水/エチレングリコールの混合溶媒よりなる溶液を加熱し水を留去させる液置換法で実施するのが好ましい実施態様である。
なお、ここで溶液化とは、溶解あるいは液置換等の溶液化に係る全ての工程を含む。液置換における低温化の方法としては減圧下で行い、低温化と時間短縮の両立を行うのが好ましい実施態様である。液置換の効率化を考慮すると55〜105℃が好ましく、60〜100℃で行うのが特に好ましい。
【0036】
また、上記ヒ゜ークの積分値比を0.3以下にする方法として、溶解に用いるアルミニウム化合物の品質も重要である。会合度の低いものを選択するのも有効な方法である。この溶解前のアルミニウム化合物の会合を抑制する方法も限定されない。例えば、アルミニウム化合物を調製する際に会合を抑制する添加剤を添加したり、該調製工程におけるアルミニウム化合物を固形状として取り出す時の液の濃縮や乾燥の温度を低くしたり、該乾燥時の乾燥度合を低くし水分を含んだ状態で製品とする等が有効である。また、アルミニウム化合物を単離せずに水溶液等の溶液状で使用することも好ましい実施態様である。
【0037】
会合度の少ないアルミニウム化合物の選択基準としては、例えば、アルミニウム化合物を水に溶解した時の不溶分量を特定化する、アルミニウム化合物の結晶化度を特定化する、アルミニウム化合物の結晶水量を特定化する等の方法が挙げられる。また、アルミニウム化合物の水等の溶媒に対する溶解性を向上する添加剤や、アルミニウム化合物の加水分解等に対する安定性を向上する化合物を併用する等も好ましい実施態様である。
【0038】
以下にアルミニウム化合物の溶解方法を例示する。
(1)塩基性酢酸アルミニウムの水溶液の調製例
塩基性酢酸アルミニウムに水を加え50℃以下で3時間以上攪拌する。攪拌時間は、6時間以上であることが更に好ましい。その後、60℃以上で数時間以上攪拌を行う。この場合の温度は、60〜100℃の範囲であることが好ましい。攪拌時間は、1時間以上であることが好ましい。水溶液の濃度は、10g/l〜30g/lが好ましく、とくに15g/l〜20g/lが好ましい。
【0039】
(2)塩基性酢酸アルミニウムのエチレングリコール溶液の調製例
上記の水溶液に対してエチレングリコールを加える。エチレングリコールの添加量は水溶液に対して容量比で0.5〜5倍量が好ましい。より好ましくは1〜3倍量である。該溶液を数時間常温で攪拌することで均一な水/エチレングリコール混合溶液を得る。その後、該溶液を加熱し、水を留去することでエチレングリコール溶液を得ることができる。温度は50℃以上が好ましく、110℃以下が好ましい。より好ましくは55〜105℃で数時間攪拌して水を留去することが好ましい。60〜100℃で行うのが特に好ましい。留去の際に系を減圧にすることが好ましい。減圧にすることで、より低温で迅速にエチレングリコールを留去することができる。つまり減圧下では80℃以下でも留去が可能となり、系に与える熱履歴をより少なくすることができる。
【0040】
(3)乳酸アルミニウムのエチレングリコール溶液の調製例
乳酸アルミニウムの水溶液を調製する。調製は室温下でも加熱下でもよいが室温下が好ましい。水溶液の濃度は20g/l〜100g/lが好ましく、50〜80g/lが特に好ましい。該水溶液にエチレングリコールを加える。エチレングリコールの添加量は水溶液に対して容量比で1〜5倍量が好ましい。より好ましくは2〜3倍量である。該溶液を常温で攪拌し均一な水/エチレングリコール混合溶液を得た後、該溶液を加熱し、水を留去することでエチレングリコール溶液を得ることができる。温度は50℃以上が好ましく、110℃以下が好ましい。より好ましくは55〜105℃で数時間攪拌して水を留去することが好ましい。60〜100℃で行うのが特に好ましい。塩基性酢酸アルミニウムの場合と同様に、エチレングリコール溶液への液置換を減圧下で行うのが好ましい。
【0041】
本発明においては、上記方法で得られたアルミニウム化合物溶液を濾過、遠心分離
あるいは超遠心分離等の方法により、該溶液中に存在するコンタミ等の不溶性異物を除去することは好ましい実施対応である。
【0042】
本発明の方法に従ってポリエステルを製造する際の、上記のアルミニウム化合物の使用量としては、得られるポリエステルのジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対してアルミニウム原子として0.001〜0.05モル%が好ましく、更に好ましくは0.005〜0.02モル%である。使用量が0.001モル%未満であると触媒活性が十分に発揮されない場合があり、使用量が0.05モル%より多いと、熱安定性や熱酸化安定性の低下、アルミニウムに起因する異物の発生や着色の増加が問題になる場合が発生する。この様にアルミニウム成分の添加量が少なくても本発明の重縮合触媒は十分な触媒活性を示す点に大きな特徴を有する。その結果熱安定性や熱酸化安定性が優れ、アルミニウムに起因する異物や着色が低減される。
【0043】
本発明の重縮合触媒を構成するリン化合物としては、特に限定はされないが、リン酸ならびにトリメチルリン酸、トリエチルリン酸、フェニルリン酸、トリフェニルリン酸等のリン酸エステル、亜リン酸ならびにトリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジ
ホスファイト等の亜リン酸エステルなどが挙げられる。
【0044】
本発明のより好ましいリン化合物は、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン化合物である。これらのリン化合物を用いることで触媒活性の向上効果が見られるとともに、ポリエステルの熱安定性等の物性が改善する効果が見られる。これらの中でも、ホスホン酸系化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0045】
本発明で言うホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物とは、それぞれ下記式(化1)〜(化6)で表される構造を有する化合物のことを言う。
【0046】
【化1】

【0047】
【化2】

【0048】
【化3】

【0049】
【化4】

【0050】
【化5】

【0051】
【化6】

【0052】
本発明のホスホン酸系化合物としては、例えば、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチルなどが挙げられる。本発明のホスフィン酸系化合物としては、例えば、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニルなどが挙げられる。本発明のホスフィンオキサイド系化合物としては、例えば、ジフェニルホスフィンオキサイド、メチルジフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0053】
ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物の中では、本発明のリン化合物としては、下記式(化7)〜(化12)で表される化合物が好ましい。
【0054】
【化7】

【0055】
【化8】

【0056】
【化9】

【0057】
【化10】

【0058】
【化11】

【0059】
【化12】

【0060】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0061】
また、本発明のリン化合物としては、下記一般式(化13)〜(化15)で表される化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が特に大きく好ましい。
【0062】
【化13】

【0063】
【化14】

【0064】
【化15】

【0065】
(式(化13)〜(化15)中、R1、R4、R5、R6はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2、R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0066】
本発明のリン化合物としては、上記式(化13)〜(化15)中、R1、R4、R5、R6が芳香環構造を有する基である化合物がとくに好ましい。
【0067】
本発明のリン化合物としては、例えば、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィンオキサイド、メチルジフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらのうちで、フェニルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチルがとくに好ましい。
【0068】
上記したリン化合物の中でも、本発明では、リン化合物としてリンの金属塩化合物がとくに好ましい。リンの金属塩化合物とは、リン化合物の金属塩であれば特に限定はされないが、ホスホン酸系化合物の金属塩を用いると本発明の課題であるポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。リン化合物の金属塩としては、モノ金属塩、ジ金属塩、トリ金属塩などが含まれる。
【0069】
また、上記したリン化合物の中でも、金属塩の金属部分が、Li、Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgがとくに好ましい。
【0070】
本発明のリンの金属塩化合物としては、下記一般式(化16)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0071】
【化16】

【0072】
(式(化16)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0073】
上記のR1としては、例えば、フェニル、1―ナフチル、2―ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。上記のR2としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。R3-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
【0074】
上記一般式(化16)で表される化合物の中でも、下記一般式(化17)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0075】
【化17】

【0076】
(式(化17)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0077】
上記のR1としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。R3-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
【0078】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0079】
上記式(化17)の中でも、Mが、Li,Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgがとくに好ましい。
【0080】
本発明のリンの金属塩化合物としては、リチウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、カリウム[(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、リチウム[ベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[ベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベリリウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ストロンチウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、マンガンビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベンジルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸]、ナトリウム[(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−クロロベンジルホスホン酸フェニル]、マグネシウムビス[4−クロロベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−アミノベンジルホスホン酸メチル]、マグネシウムビス[4−アミノベンジルホスホン酸メチル]、フェニルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[フェニルホスホン酸エチル]、亜鉛ビス[フェニルホスホン酸エチル]などが挙げられる。これらの中で、リチウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、リチウム[ベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[ベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベンジルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸]がとくに好ましい。
【0081】
上記したリン化合物の中でも、本発明では、リン化合物としてP−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物がとくに好ましい。これらのリン化合物を含有することでポリエステルの物性改善効果がとくに高まることに加えて、ポリエステルの重合時に、これらのリン化合物を本発明のアルミニウム化合物と共存して用いることで触媒活性の向上効果が大きく見られる。
P−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物とは、分子内にP−OHを少なくとも一つ有するリン化合物であれば特に限定はされない。これらのリン化合物の中でも、P−OH結合を少なくとも一つ有するホスホン酸系化合物を用いるとポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0082】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0083】
本発明のP−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物としては、下記一般式(化18)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0084】
【化18】

【0085】
(式(化18)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0086】
上記のR1としては、例えば、フェニル、1―ナフチル、2―ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。上記のR2としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。
【0087】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0088】
本発明のP−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物としては、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、(1−ナフチル)メチルホスホン酸、(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸、(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル、4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、2−メチルベンジルホスホン酸エチル、4−クロロベンジルホスホン酸フェニル、4−アミノベンジルホスホン酸メチル、4−メトキシベンジルホスホン酸エチルなどが挙げられる。これらの中で、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸エチルがとくに好ましい。
【0089】
本発明の好ましいリン化合物としては、化学式(化19)であらわされるリン化合物が挙げられる。
【0090】
【化19】

【0091】
(式(化19)中、R1は炭素数1〜49の炭化水素基、または水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜49の炭化水素基を表し、R2,R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基は脂環構造や分岐構造や芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0092】
また、更に好ましくは、化学式(化19)中のR1,R2,R3の少なくとも一つが芳香環構造を含む化合物である。
【0093】
これらのリン化合物の具体例を以下に示す。
【0094】
【化20】

【0095】
【化21】

【0096】
【化22】

【0097】
【化23】

【0098】
【化24】

【0099】
【化25】

【0100】
また、本発明のリン化合物は、分子量が大きいものの方が重合時に留去されにくいため効果が大きく好ましい。
【0101】
本発明のリン化合物は、フェノール部を同一分子内に有するリン化合物であることが好ましい。フェノール部を同一分子内に有するリン化合物を含有することでポリエステルの物性改善効果が高まることに加えて、ポリエステルの重合時にフェノール部を同一分子内に有するリン化合物を用いることで触媒活性を高める効果がより大きく、従ってポリエステルの生産性に優れる。
【0102】
フェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、フェノール構造を有するリン化合物であれば特に限定はされないが、フェノール部を同一分子内に有する、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物を用いるとポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらの中でも、一種または二種以上のフェノール部を同一分子内に有するホスホン酸系化合物を用いるとポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果がとくに大きく好ましい。
【0103】
本発明のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、下記一般式(化26)〜(化28)で表される化合物が好ましい。
【0104】
【化26】

【0105】
【化27】

【0106】
【化28】

【0107】
(式(化26)〜(化28)中、R1はフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基およびフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4,R5,R6はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2,R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基などの置換基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基は分岐構造やシクロヘキシル等の脂環構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。R2とR4の末端どうしは結合していてもよい。)
【0108】
本発明のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、例えば、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジメチル、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジエチル、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸メチル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸フェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、トリス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メチルホスフィンオキサイド、および下記式(化29)〜(化32)で表される化合物などが挙げられる。これらのうちで、下記式(化31)で表される化合物およびp−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジメチルがとくに好ましい。
【0109】
【化29】

【0110】
【化30】

【0111】
【化31】

【0112】
【化32】

【0113】
上記の式(化31)にて示される化合物としては、SANKO−220(三光株式会社
製)があり、使用可能である。
【0114】
本発明のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の中でも、下記一般式(化33)で表される特定のリンの金属塩化合物から選択される少なくとも一種がとくに好ましい。
【0115】
【化33】

【0116】
((式(化33)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0117】
これらの中でも、下記一般式(化34)で表される化合物から選択される少なくとも一種が好ましい。
【0118】
【化34】

【0119】
(式(化34)中、Mn+はn価の金属カチオンを表す。nは1,2,3または4
を表す。)
【0120】
上記式(化33)または(化34)の中でも、Mが、Li,Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgがとくに好ましい。
【0121】
本発明の特定のリンの金属塩化合物としては、リチウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸]、カリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸]、ベリリウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチル]、ストロンチウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、バリウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸フェニル]、マンガンビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ニッケルビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、銅ビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、亜鉛ビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]などが挙げられる。これらの中で、リチウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]がとくに好ましい。
【0122】
本発明のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の中でも、下記一般式(化35)で表されるP−OH結合を少なくとも一つ有する特定のリン化合物から選択される少なくとも一種がとくに好ましい。
【0123】
【化35】

【0124】
((式(化35)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。
炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0125】
これらの中でも、下記一般式(化36)で表される化合物から選択される少なくとも一種が好ましい。
【0126】
【化36】

【0127】
(式(化36)中、R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0128】
上記のR3としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。
【0129】
本発明のP−OH結合を少なくとも一つ有する特定のリン化合物としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸イソプロピル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸フェニル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸オクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸などが挙げられる。これらの中で、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチルがとくに好ましい。
【0130】
本発明のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の中でも、下記一般式(化37)で表される特定のリン化合物から選ばれる少なくとも一種のリン化合物が好ましい。
【0131】
【化37】

【0132】
(上記式(化37)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3、R4はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0133】
上記一般式(化37)の中でも、下記一般式(化38)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いるとポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果が高く好ましい。
【0134】
【化38】

【0135】
(上記式(化38)中、R3、R4はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0136】
上記のR3、R4としては例えば、水素、メチル基、ブチル基等の短鎖の脂肪族基、オクタデシル等の長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基等の芳香族基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。
【0137】
本発明の特定のリン化合物としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジイソプロピル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジ−n−ブチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジオクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジフェニルなどが挙げられる。これらの中で、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジオクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジフェニルがとくに好ましい。
【0138】
本発明のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の中でも、本発明でとくに望ましい化合物は、化学式(化39)、(化40)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種のリン化合物である。
【0139】
【化39】

【0140】
【化40】

【0141】
上記の化学式(化39)にて示される化合物としては、Irganox1222(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)が市販されており、また化学式(化40)にて示される化合物としてはIrganox1425(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)が市販されており、使用可能である。
【0142】
本発明におけるリン化合物の使用量としては、得られるポリエステルのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して0.0001〜0.1モル%が好ましく、0.005〜0.05モル%であることがさらに好ましい。
【0143】
本発明におけるポリエステルは、以下に示す評価法で定量されるポリエステルに不溶なアルミニウム系異物が3500ppm以下であることが好ましい。
[ポリエステルに不溶なアルミニウム系異物評価法]
溶融重縮合上がりのポリエステルペレット30gおよびパラクロロフェノール/テトラクロロエタン(3/1:重量比)混合溶液300mlを攪拌機付き丸底フラスコに投入し、該ペレットを混合溶液に100〜105℃、2時間で攪拌・溶解する。該溶液を室温になるまで放冷し、直径47mm/孔径1.0μmのポリテトラフルオロエチレン製のメンブレンフィルター(Advantec社製PTFEメンブレンフィルター、品名:T100A047A)を用い、全量を0.15MPaの加圧下で異物を濾別する。有効濾過直径は37.5mmとした。濾過終了後、引き続き300mlのクロロホルムを用い洗浄し、次いで、30℃で一昼夜減圧乾燥する。該メンブレンフィルターの濾過面を走査型蛍光X線分析装置(RIGAKU社製、ZSX100e、Rh管球4.0kW)でアルミニウム元素量を定量した。定量はメンブレンフィルターの中心部直径30mmの部分について行なう。なお、該蛍光X線分析法の検量線はアルミニウム元素含有量が既知のポリエチレンテレフタレート樹脂を用いて求め、見掛けのアルミニウム元素量をppmで表示する。測定はX線出力50kV−70mAで分光結晶としてペンタエリスリトール、検出器としてPC(プロポーショナルカウンター)を用い、PHA(波高分析器)100−300の条件でAl−Kα線強度を測定することにより実施する。検量線用ポリエチレンテレフタレート樹脂中のアルミニウム元素量は、高周波誘導結合プラズマ発光分析法で定量する。
【0144】
上記評価法で測定されたポリエステルに不溶なアルミニウム系異物量は2500ppm以下がより好ましい。1500ppm以下がさらに好ましい。ポリエステルに不溶なアルミニウム系異物量が3500ppmを超えた場合は、該ポリエステルに不溶性の微細な異物が原因となり、例えばフィルムやボトル等の成型体として成型した場合に、該成型体のヘイズが悪化するので好ましくない。また、重縮合工程や成型工程でのポリエステルの濾過時のフィルター詰まりが多くなるという課題にも繋がる。
【0145】
上記評価法で測定されたポリエステルに不溶なアルミニウム系異物量は、あくまでも換算値であり、上記評価に用いたポリエステルの全量に対する含有量ではppbレベルの極微量となる。この極微量の異物量により成型体の透明性が悪化するのは、上記評価法で測定されるポリエステルに不溶なアルミニウム系異物は、ポリエステルに対する親和性が低いために、成型時の成型応力によりポリエステルとアルミニウム系異物の界面にボイドが
形成されて、該ボイドにより光の散乱が起こり成型体の透明性が低下することが原因となっていると推定している。
【0146】
上記特性を満足するには、前記した特性を有したアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液を用いることが好ましいが、該溶液と上記のリン化合物の溶液を混合した混合溶液を用いるのが重要である。該対応により本発明の重縮合触媒のポリエステル製造工程への添加時期、場所および添加されるポリエステルオリゴマーの特性等が変化してもポリエステルに不溶なアルミニウム系異物量が好ましい範囲であるポリエステルを安定して得ることができる。この場合、リン化合物は水酸基を含有していることが好ましい実施態様である。従って、リン化合物一分子中に少なくとも一個以上の水酸基を有する構造化合物であることが好ましい。例えば、前記のリン化合物の中で酸化合物や酸とエステルとの酸/エステル混合化合物が該当する。リン化合物の水酸基が全てエステル化された全エステル化化合物の場合は、リン化合物を水やアルキレングリコール等の含水溶媒で事前に処理し、エステル結合の加水分解を行いエステル結合の一部を水酸基に変換したものを用いるのが好ましい実施態様である。この場合の水酸基への変換量は限定されないが、ポリエステルに対する不溶性異物量は極微量であり、該水酸基導入によるポリエステルに対する不溶性異物量低減効果は極微量で発現されるので、全エステル結合の数モル%程度の量でも有効である。従って、リン化合物中の全水酸基がエステル化されたエステルタイプのリン化合物を用いてもアルミニウム化合物溶液と混合処理する際に形成される水酸基によってもその効果が発現されるので、エステルタイプのリン化合物を用いることも排除されない。
【0147】
上記のごとく予め水およびアルキレングリコールからなる群から選ばれた少なくとも1種の溶媒中で加熱処理されたものを用いることにより本発明の効果をより効率的に発現することができるので好ましい実施態様であるが、該加熱処理をすることにより、重縮合触媒活性が向上するという効果も発現されるので特に好ましい実施態様として推奨される。
【0148】
リン化合物を予め加熱処理する時に使用する溶媒としては、水およびアルキレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種であれば限定されず任意であるが、リン化合物を溶解する溶媒を用いることが好ましい。アルキレングリコールとしては、エチレングリコールを用いることが好ましい。溶媒中での加熱処理は、リン化合物を溶解してから行うのが好ましいが、完全に溶解していなくてもよい。また、加熱処理の後に、化合物がもとの構造を保持している必要はなく、加熱処理による変性で溶媒に対する溶解性が向上するものであっても構わない。
【0149】
加熱処理の温度は特に限定はされないが、20〜250℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは、100〜200℃の範囲である。温度の上限は、用いる溶媒の沸点付近とすることが好ましい。加熱時間は、温度等の条件によっても異なるが、溶媒の沸点付近の温度だと1分〜50時間の範囲であることが好ましく、より好ましくは30分〜10時間、さらに好ましくは1〜5時間の範囲である。加熱処理の系の圧力は常圧、もしくはそれ以上あるいは以下であってもよく特に限定されない。溶液の濃度は、リン化合物として1〜500g/lであることが好ましく、より好ましくは5〜300g/l、さらに好ましくは10〜100g/lである。加熱処理は窒素等の不活性気体の雰囲気下で行うことが好ましい。加熱後の溶液もしくはスラリーの保管温度は特に限定はされないが、0℃〜100℃の範囲であることが好ましく、20℃〜60℃の範囲であることがより好ましい。溶液の保管は窒素等の不活性気体の雰囲気下で行うことが好ましい。
【0150】
本発明においては、上記混合液の水酸基が結合したリン原子のNMRスペクトルヒ゜ークが混合前のリン化合物単独溶液の水酸基が結合したリン原子のNMRスペクトルヒ゜ークより高磁場側にシフトすると共に該ヒ゜ークがブロードになることが好ましい。さらに、上記混合溶液の水酸基が結合したリン原子のNMRスペクトルヒ゜ークの積分値が混合前のリン化合物単独溶液の水酸基が結合したリン原子のNMRスペクトルヒ゜ークの積分値に対して10%以上であることが好ましい実施態様である。15%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましい。10%未満ではアルミニウム重縮合触媒起因のポリエステルに不溶性の異物の生成を抑制する効果が低減し、ポリエステルに不溶性の異物含有量が多くなり、例えばフィルムやボトル等の成型体として成型した場合に、該成型体のヘイズが悪化するので好ましくない。また、重縮合工程や成型工程でのポリエステルの濾過時のフィルター詰まりが多くなるという課題にも繋がる。なお、上記の混合溶液の溶媒は90モル%以上がエチレングリコールであることが好ましい。
【0151】
上記のアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液とリン化合物溶液との混合の方法は限定されないが、リン化合物溶液を攪拌しながらアルミニウム化合物を滴下し添加するのが好ましい。該添加時の条件も限定されない。水酸基を含有したリン化合物の場合は、室温混合が好ましい。一方、全水酸基がエステル化されたエステルタイプのリン化合物の場合は、水酸基の生成を引起す必要があるので加温が必要となる。該加温の温度は限定されないが50〜200℃が好ましい。該混合の条件は用いるリン化合物やアルミニウム化合物の構造等で適宜設定される。該条件の設定は、両溶液を混合した時のNMRスペクトルの変化を追跡し上記要件を満たす混合条件を設定するのが好ましい実施態様である。水酸基を含有しないリン化合物を用いる場合は、アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液と混合する前に、リン化合物単独でエチレングリコール溶液として加熱処理し水酸基を形成させたものを用いるのが好ましい。該事前処理の折に少量の水を添加し水酸基の形成を促進してもよい。
【0152】
上記のアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液とリン化合物溶液を混合する場合のアルミニウム化合物とリン化合物との混合割合はアルミニウム原子およびリン原子のモル比が、式(1)になるように混合するのが好ましい。
0.5 ≦ P/Al(モル比)≦ 20 (1)
上記(1)式の範囲を超えた場合は、重縮合触媒活性が低下し、かつポリエステルに不溶性の異物の生成抑制効果が低下するので好ましくない。P/Al(モル比)は、好ましくは0.8〜10、さらに好ましくは1.0〜5である。
【0153】
上記のアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液とリン化合物溶液とを混合することにより水酸基が結合したリン原子のNMRスペクトルヒ゜ークが高磁場側にシフト現象はリン化合物中の水酸基がアルミニウム化合物中のアルミニウム原子に配位し錯体を形成することにより引起されているものと推察される。
【0154】
上記のアルミニウム化合物とリン化合物との混合溶液の保存方法も特に限定されないが、例えば保存用タンクの設備を省くために、ポリエステル製造工程に供給する直前に混合するのが好ましい。該混合方法は限定されないが、例えば、各溶液を定量ポンプで所定の量を押し出し、攪拌式のミキサーで攪拌しながら混合したり、スタティックミキサーや配管中での混合が挙げられる。
【0155】
事前に混合して供給する場合は、該混合液の保存は10〜45℃で行うのが好ましい。15〜40℃がより好ましい。該温度範囲より高温側で保存するとアルミニウム化合物あるいはアルミニウム化合物とリン化合物との錯体のゲル化が起こったり、低温側においては、リン化合物の析出等により、混合溶液の流動性が低下し重縮合反応系への供給の定量性が低下する等の好ましくないことに繋がるので好ましくない。特に保存方法は限定されないが、アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液とリン化合物のエチレングリコールとを所定の混合比になるように30分間攪拌混合してなる溶液を一旦取り出し、上記の好ましい温度範囲内になるような恒温槽または恒温室で保管する方法が挙げられる。
【0156】
本発明において、上記要件を満たすことによりポリエステルに不溶性の異物含有量が少なくなるという機構は明確化できていないが、アルミニウム化合物のアルミニウム原子に対してリン化合物中の水酸基が配位しアルミニウム化合物とリン化合物の錯体が形成されることにより、アルミニウム化合物起因のポリエステルに対して不溶性の異物形成が抑制されために引起されるものと推察される。
【0157】
以上、本発明の効果により、アルミニウム化合物のメーカーの違いやロットの違いにより得られたポリエステルに不溶性の異物量が大きく変動するという従来の課題が解消でき、
重縮合活性低下やポリエステル形成時の副反応を増大させることなく、該課題が解消されポリエステルに不溶性の異物量が常に安定して低レベルに保たれるようになった。
【0158】
本発明においては、上記のアルミニウムもしくその化合物とリン化合物を併用すれば実用性の高い重縮合触媒活性を発現することができるが、さらに少量のアルカリ金属、アルカリ土類金属並びにその化合物から選択される少なくとも1種を第2金属含有成分として共存させることが好ましい態様である。かかる第2金属含有成分を触媒系に共存させることは、ジエチレングリコールの生成を抑制する効果に加えて触媒活性を高め、従って反応速度をより高めた触媒成分が得られ、生産性向上に有効である。
【0159】
アルミニウム化合物にアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を添加して十分な触媒活性を有する触媒とする技術は公知である。かかる公知の触媒を使用すると熱安定性に優れたポリエステルが得られるが、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を併用した公知の触媒は、実用的な触媒活性を得ようとするとそれらの添加量が多く必要であり、アルカリ金属化合物を使用したときは得られるポリエステルの耐加水分解性が低下すると共にアルカリ金属化合物に起因する異物量が多くなり、繊維に使用したときには製糸性や糸物性が、またフィルムに使用したときはフィルム物性などが悪化する。またアルカリ土類金属化合物を併用した場合には、実用的な活性を得ようとすると得られたポリエステルの熱安定性が低下し、加熱による着色が大きく、異物の発生量も多くなり、耐加水分解性も低下する。
【0160】
アルカリ金属、アルカリ土類金属並びにその化合物を添加する場合、その使用量M(モル%)は、ポリエステルを構成する全ポリカルボン酸ユニットのモル数に対して、1×10-6以上0.1モル%未満であることが好ましく、より好ましくは5×10-6〜0.05モル%であり、さらに好ましくは1×10-5〜0.03モル%であり、特に好ましくは、1×10-5〜0.01モル%である。アルカリ金属、アルカリ土類金属の添加量が少量であるため、熱安定性低下、異物の発生、着色、耐加水分解性の低下等の問題を発生させることなく、反応速度を高めることが可能である。アルカリ金属、アルカリ土類金属並びにその化合物の使用量Mが0.1モル%以上になると熱安定性の低下、異物発生や着色の増加、並びに耐加水分解性の低下が製品加工上問題となる場合が発生する。Mが1×10-6未満では、添加してもその効果が明確ではない。
【0161】
本発明においてアルミニウムもしくはその化合物に加えて使用することが好ましい第2金属含有成分を構成するアルカリ金属、アルカリ土類金属としては、Li,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,Sr,Baから選択される少なくとも1種であることが好ましく、このうちLi,Na,Mgないしその化合物から選択される少なくとも1種の使用がより好ましい。アルカリ金属やアルカリ土類金属の化合物としては、例えば、これら金属のギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸などの飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸、クエン酸、サリチル酸などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、炭酸水素、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸、1−ペンタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシなどのアルコキサイド、アセチルアセトネートなどとのキレート化合物、水素化物、酸化物、水酸化物などが挙げられる。
【0162】
これらのアルカリ金属、アルカリ土類金属またはそれらの化合物のうち、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いる場合、これらはエチレングリコール等のジオールもしくはアルコール等の有機溶媒に溶解しにくい傾向があるため、水溶液で重合系に添加しなければならず重合工程上問題となる場合が有る。さらに、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いた場合、重合時にポリエステルが加水分解等の副反応を受け易くなるとともに、重合したポリエステルは着色し易くなる傾向があり、耐加水分解性も低下する傾向がある。従って、本発明のアルカリ金属またはそれらの化合物あるいはアルカリ土類金属またはそれらの化合物として好適なものは、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、不飽和脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン塩、ハロゲン含有カルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸から選ばれる無機酸塩、有機スルホン酸塩、有機硫酸塩、キレート化合物、及び酸化物である。これらの中でもさらに、取り扱い易さや入手のし易さ等の観点から、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、特に酢酸塩の使用が好ましい。
【0163】
本発明の重縮合触媒は、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物などの他の重縮合触媒を、これらの成分の添加が前記のようなポリエステルの特性、加工性、色調等製品に問題を生じない添加量の範囲内において共存させて用いることは、重合時間の短縮による生産性を向上させる際に有効であり、好ましい。
【0164】
アンチモン化合物は、重合して得られるポリエステルに対してアンチモン原子として50ppm以下の量で添加することが好ましい。より好ましい添加量は、30ppm以下である。アンチモンの添加量を50ppm以上にすると、金属アンチモンの析出が起こり、ポリエステルに黒ずみや異物が発生するため好ましくない。
【0165】
ゲルマニウム化合物は、重合して得られるポリエステルに対してゲルマニウム原子として20ppm以下の量で添加することが好ましい。より好ましい添加量は10ppm以下である。ゲルマニウムの添加量を20ppm以上にすると、コスト的に不利になるため好ましくない。
【0166】
チタン化合物は、重合して得られるポリエステルに対してチタン原子として5ppm以下の量で添加することが好ましい。より好ましい添加量は3ppm以下であり、さらに好ましくは1ppm以下である。チタンの添加量を5ppm以上にすると、得られるポリエステルの着色が顕著になり、さらに熱安定性が顕著に低下するため好ましくない。
【0167】
本発明において使用可能なアンチモン化合物としては、特に限定はされないが、好適な化合物として三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコキサイドなどが挙げられ、特に三酸化アンチモンの使用が好ましい。また、ゲルマニウム化合物としては、特に限定はされないが、二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウムなどが挙げられ、特に二酸化ゲルマニウムが好ましい。二酸化ゲルマニウムとしては結晶性のものと非晶性のものの両方が使用できる。
【0168】
本発明において使用可能なチタン化合物としては特に限定はされないが、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラ−tert−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート、蓚酸チタン酸リチウム、蓚酸チタン酸カリウム、蓚酸チタン酸アンモニウム、酸化チタン、チタンとケイ素やジルコニウムやアルカリ金属やアルカリ土類金属などとの複合酸化物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステル、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸からなる反応生成物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸とリン化合物からなる反応生成物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルと少なくとも2個のヒドロキシル基を有する多価アルコール、2−ヒドロキシカルボン酸および塩基からなる反応生成物などが挙げられ、このうちチタンとケイ素の複合酸化物、チタンとマグネシウムの複合酸化物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸とリン化合物からなる反応生成物が好ましい。
【0169】
またスズ化合物としては、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、モノブチルヒドロキシスズオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズサルファイド、ジブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸などが挙げられ、特にモノブチルヒドロキシスズオキサイドの使用が好ましい。
【0170】
本発明のポリエステルには、色調改善等の目的でコバルト化合物をコバルト原子としてポリエステルに対して10ppm未満の量で添加することが好ましい態様である。より好ましくは5ppm以下であり、さらに好ましくは3ppm以下である。コバルト化合物としては特に限定はないが、具体的には例えば、酢酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルトおよびそれらの水和物等が挙げられる。その中でも特に酢酸コバルト四水和物が好ましい。
【0171】
本発明のポリエステルの色調を改善するために、コバルト化合物以外の色調改善剤を用いることも好ましい態様である。色調改善剤とは添加することで色調を変化させる物質のことをいう。本発明の色調改善剤としては特に限定はされないが、無機および有機の顔料、染料、蛍光増白剤などが好ましい。
【0172】
顔料または染料を使用する場合、使用量が増えると、結果重縮合体の明るさが低下するという問題が発生する。そのため多くの用途で許容できなくなるという問題が発生する。そのため顔料および染料の総使用量は得られるポリエステルに対して20ppm以下であることが好ましく、より好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下である。かかる領域では重縮合体の明るさを低下させることなく着色を効果的に消去できる。
【0173】
さらに蛍光増白剤を単独もしくは他の色調改善剤と併用して用いると、色調が良好になり、例えば使用する顔料または染料の量が少なくてよいので好ましい。蛍光増白剤は一般に用いられている物を1種だけ使用してもよくもしくは2種以上を併用してもよい。添加量は得られるポリエステルに対して50ppm以下であることが好ましく、5〜25ppmであることがさらに好ましい。
【0174】
本発明の無機顔料としては、色調を変化できるものであれば特に規定はされないが、例えば二酸化チタン、カーボンブラック、鉄黒、ニッケルチタンイエロー、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、黄鉛、クロムチタンイエロー、亜鉛フェライト顔料、弁柄、カドミウムレッド、モリブデンレッド、酸化クロム、スピネルグリーン、クロムオレンジ、カドミウムオレンジ、群青、紺青、コバルトブルー、などが挙げられる。このうち酸化クロム、群青、紺青、コバルトブルーが好ましく、群青、コバルトブルーがさらに好ましい。またこれら無機顔料の一種もしくは二種以上を必要に応じて組み合わせて使用しても良い。
【0175】
本発明の有機顔料および染料としては、色調を変化できるものであれば規定はされないが、例えばカラーインデックスで表示されているPigment Red 5, 22, 23, 31, 38, 48:1, 48:2, 48:3, 48:4, 52, 53:1, 57:1, 122, 123, 144, 146, 151, 166, 170, 177, 178, 179, 187, 202, 207, 209, 213, 214, 220, 221, 247, 254, 255, 263, 272、Pigment Orange 13, 16, 31, 36, 43, 61, 64, 71、Pigment Brown 23、Pigment Yellow 1, 3, 12, 13, 14, 17, 55, 73, 74, 81, 83,93, 94, 95, 97, 109, 110, 128, 130, 133, 136, 138, 147, 150, 151, 154,180, 181, 183, 190, 191, 191:1, 199、Pigment Green 7, 36、Pigment Blue15, 15:1, 15:2, 15:3, 15.4, 15:6, 29, 60, 64, 68、Pigment Violet 19, 23,37, 44、Solvent Red 52, 117, 135, 169, 176、Disperse Red 5、Solvent Orange 63, 67, 68, 72, 78、Solvent Yellow 98, 103, 105, 113, 116、DisperseYellow 54, 64, 160、Solvent Green 3, 20, 26、Solvent Blue 35, 45, 78, 90, 94, 95, 104, 122, 132、Solvent Violet 31、などが挙げられる。またその他のアンスラキノン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、キノフタロン系、ペリレン系、ペリノン系、ベンズイミダゾロン系、ジアリライド系、バット系、インジゴ系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系、アントラピロリドン系の染料/顔料等を挙げることができる。
【0176】
このうちPigment Red 187, 263、Pigment Blue 15:1, 15:3, 29,60、Pigment Violet 19、Solvent Red 135、Solvent Blue 45, 90,104, 122、およびアンスラキノン系とフタロシアニン系の染料/顔料が好ましい。さらにアンスラキノン系とフタロシアニン系の染料/顔料は特に好ましい。
【0177】
選択される顔料および/または染料は下記の条件を満たす物が好ましい。まず顔料および染料は最大限の安全性をもたらすために重縮合体から非抽出性であること。また日光に対しておよび広範囲の温度および湿度条件に対して安定であること。さらにポリエステルの製造の間に遭遇する極めて高い温度の結果として昇華や、色相の変化を生じないことである。更にこの顔料および染料はポリエステルポリマーの物理的性質に悪影響を及ぼさないものが好ましい。
【0178】
これらの条件を満たす顔料および/または染料でポリエステルの色調を改善するものであれは特に限定されないが、例えば特表2000−511211ではある種の青色1,4−ビス(2,6−ジアルキルアニリノ)アントラキノンを主に用い赤色アンスラキノンおよびアントラピリドン(3H−ジベンゾ[fi,j]イソキノリン−2,7−ジオン)化合物を色相に応じて組み合わせた色調改善剤などが例示されており、これらを用いることができる。これらの染料は適当な色特性を有し、熱、光、湿度および種々の環境要因に対して安定であると共に重縮合の合間にポリエステルポリマー構造中に含ませることができ、公知の有機染料で遭遇する問題の多くを克服する。またUV光、高温および加水分解に対して安定である。更に青色成分および赤色成分の量は、着色度の異なったポリエステルに有効に働くように、必要に応じて変化させることができる。
【0179】
本発明の蛍光増白剤としては一般に用いられているものを単独もしくは組み合わせて使用しても良い。例えばベンズオキサゾリン系蛍光増白剤、好ましくはチバ・スペシャルティーケミカルズ社製のUVITEX OB、UVITEX OB−P、UVITEX OB−ONE、クラリアント社製のHOSTALUX KSや、特開平10−1563に記載のものなどが好ましく使用できる。
【0180】
以上の色調改善剤は無彩色の色相を達成するため、その種類や添加比などを任意に組み合わせ使用することができる。また、色調改善剤の添加時期は重縮合のどの段階であってもよく、重縮合反応終了後であっても構わなく、重縮合反応終了後から成形時までのどの段階であってもかまわない。また添加方法は重縮合中であれば粉末や、ポリエステルのモノマーの1つに溶解させて添加することが好ましい。さらに重縮合反応終了後では粉末やマスターバッチとして添加することが好ましい。
【0181】
また顔料等の分散性に問題が生じる場合は、必要に応じて分散剤を使用すると好ましい場合がある。分散剤は顔料の分散を助けるものであれば特に規定はされないが、例えばN,N’−エチレンビスミリスチン酸アミド、N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−メチレンビスミリスチン酸アミド、N,N’−メチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−メチレンビスオレイン酸アミドなどのN,N’−アルキレンビス脂肪酸アミドなどがある。その中でもN,N’−メチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。添加量に関しては性能にも左右されるが、顔料に対して10〜200質量%、好ましくは40〜150質量%添加するのが良い。
【0182】
本発明のポリエステルは、昇温時結晶化度(Tc1)が150℃以上であることが好ましい。150〜170℃であることがより好ましい。
【0183】
ポリエステルのTc1は、ポリエステルを加熱した時の結晶化速度の尺度であり、ポリエステルを成型加工する場合に成型体の透明度や耐熱性に大きく影響するので重要な特性である。前述のごとく、例えば、PETを耐熱性ボトル用の原料として使用する場合は、該Tc1は150〜170℃であることが好ましい。該特性を付与する方法は限定されないが、後述のごとく、前記のアルミニウム化合物とリン化合物との混合溶液をエステル化反応またはエステル交換反応終了後に添加することが好ましい。
【0184】
本発明のポリエステルは、以下に示す評価法で評価される一軸延伸フイルムのヘイズ値が2%以下であることが好ましい。
[一軸延伸フイルムのヘイズ値]
ポリエステル樹脂を真空下、130℃で12時間乾燥し、ヒートプレス法で1000±
100μmのシートを作成する。ヒートプレス温度、圧力および時間はそれぞれ320℃、100kg/cm2Gおよび3秒とする。プレス後シートは水中に投入し急冷却する。得られたシートをバッチ式延伸機(T.M.LONG CO.,INC製、FILM STRETCHER)で3.5倍に一軸延伸し300±20μmの一軸延伸フイルムを得る。延伸温度はブロー温度95℃/プレート温度100℃とする。また、延伸速度は1.5万%/分で行う。得られた一軸延伸フイルムのヘイズをJIS−K7136に準拠し、ヘイズメータ(日本電色工業株式会社製、300A)を用いて測定する。なお、測定は5回行い、その平均値を求める。ヘイズ値はフイルム厚み300μmの換算値で表示する。
1.8%以下がより好ましく、1.6%以下がさらに好ましい。ヘイズ値が2%を超えた場合は、フイルムやボトル等の延伸を伴う成型により成型された成型体について透明性の高い成型体が得られないので好ましくない。
【0185】
本発明において、該一軸延伸フイルムのヘイズ値を2%以下にする方法は限定されないが、該ヘイズ値は、ポリエステルに不溶なアルミニウム系異物量やTc1の影響を大きく受けるので該特性値を前述の範囲に最適化するのが好ましい。
【0186】
本発明におけるポリエステルの製造方法は連続式重縮合法である必要がある。連続式重縮合法は回分式重縮合法に比して品質の均一性や経済性において有利である。本発明における連続式重縮合法は、ジカルボン酸とジオールとの反応で製造する、いわゆる直接エステル化法であってもジカルボン酸のエステル形成性誘導体とジオールとの反応で製造する、いわゆるエステル交換法のどちらであっても構わない。また、エステル化、エステル交換および重縮合工程の反応器の個数やサイズおよび各工程の製造条件等は限定なく適宜選択できる。
【0187】
直接エステル化法による製造法を以下に例示する。
テレフタル酸1モルに対して1.02〜1.5モル、好ましくは1.03〜1.4モルのエチレングリコ−ルが含まれたスラリ−を調製し、これをエステル化反応工程に連続的に供給する。
【0188】
エステル化反応は、1〜3個のエステル化反応槽を直列に連結した多段式装置を用いて、反応によって生成した水を精留塔で系外に除去しながら実施する。第1段目のエステル化反応の温度は240〜270℃、好ましくは245〜265℃、圧力は常圧〜0.29MPa、好ましくは0.005〜0.19MPaである。最終段目のエステル化反応の温度は通常250〜290℃好ましくは255〜275℃であり、圧力は通常0〜0.15MPa、好ましくは0〜0.13MPaである。3段階以上で実施する場合には、中間段階のエステル化反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。これらのエステル化反応の反応率の上昇は、それぞれの段階で滑らかに分配されることが好ましい。最終的にはエステル化反応率は90%以上、好ましくは93%以上に達することが望ましい。これらのエステル化反応により分子量500〜2000程度の低次縮合物が得られる。引き続き重縮合反応槽に移送し重縮合を行う。該重縮合工程の反応槽数も限定されない。一般には初期重縮合、中期重縮合および後期重縮合の3段階方式が取られている。重縮合反応条件は、第1段階目の重縮合の反応温度は250〜290℃、好ましくは260〜280℃であり、圧力は0.065〜0.0026MPa、好ましくは0.026〜0.0039MPaで、最終段階の重縮合反応の温度は265〜300℃、好ましくは275〜295℃であり、圧力は0.0013〜0.000013MPa、好ましくは0.00065〜0.000065MPaである。3段階以上で実施する場合には、中間段階の重縮合反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。これらの重縮合反応工程の各々において到達される極限粘度の上昇の度合は滑らかに分配されることが好ましい。
【0189】
エステル交換法の場合は、エステル交換反応は、1〜2個のエステル交換反応器を直列に連結した装置を用いて、例えば、ジメチルテレフタレートとエチレングリコ−ルとを連続的に反応器に供給し、反応によって生成したメタノ−ルを精留塔で系外に除去しながら実施する。第1段目のエステル交換反応の温度は180〜250℃、好ましくは200〜240℃である。最終段目のエステル交換反応の温度は通常230〜270℃、好ましくは240〜265℃である。エステル交換触媒として、Zn,Cd,Mg,Mn,Co,Ca,Baなどの脂肪酸塩、炭酸塩等を用いるのが好ましい。
【0190】
エステル交換法で実施する場合は、エステル交換反応終了時にリン化合物を添加し上記エステル交換触媒を封鎖することが好ましい。該リン化合物は、一般には、リン酸や亜リン酸およびそのエステル誘導体が用いられるが、上記のリン化合物を用いても良い。
【0191】
本発明においては、前記したアルミニウム化合物とリン化合物を混合した溶液をエステル化反応またはエステル交換反応終了後に添加することが重要である。このことにより、得られるポリエステルのTc1が、ポリエステルを成形する際に好適な範囲、例えば、ポリエステルがPETの場合、150〜170℃の範囲のポリマーが安定して得られる。エステル化反応またはエステル交換反応終了前に添加をすると、アンチモン触媒により得られるPETと同程度の130℃近辺のTc1になる。また、該添加方法を取る事により重縮合触媒起因の異物形成も改善されるという効果も発現される。この原因は明確化されていないが、リン化合物の副反応やリン化合物とアルミニウム化合物との反応生成物の構造が微妙に変化するために引き起こされているものと推定している。
【0192】
該混合溶液の添加時期は、エステル化反応またはエステル交換反応終了後に添加することを満足すればその添加場所や添加方法は何ら制限されない。例えば、エステル化反応器またはエステル交換反応器から重縮合反応器への移送管に添加しても良いし、重縮合工程で添加しても構わないが、エステル化反応器またはエステル交換反応器から重縮合反応器への移送管に設置したインラインミキサーに添加するのが好ましい実施態様である。該方法により、添加したリン化合物とエステル化反応またはエステル交換反応生成物とが均一に混合することができ、本発明の効果をより効率的に発現することができるので好ましい。本方法で用いられるインラインミキサーの構造等は、均一混合効果を発現できれば何ら制限を受けない。例えば、特開平8−299771号公報において開示されているスラリーを分散混合する目的のインラインミキサーが好適である。
【0193】
重縮合反応器に添加する場合は、添加物の飛散防止のために、例えば、製造対象と同じポリエステルよりなる容器に混合溶液を封入して添加するカプセル添加法で行うのが好ましい実施態様である。
【0194】
また、上記混合溶液を添加した後の重縮合工程の温度を低くすることにより、Tc1の変動がより安定化する傾向があるので、重縮合工程はできるだけ低温で行った方が良い。当然であるが上記の移送管に添加する場合は該添加場所の温度もできるだけ低くするのが好ましい。
【0195】
本発明におけるエステル化またはエステル交換反応条件や生成物の低次縮合物の特性および重縮合反応条件は、ポリエステルの品質や生産性を考慮し適宜設定すればよい。
【0196】
なお、本発明においては、回収PETボトルの化学分解回収法で得られたテレフタル酸、ジメチルテレフタレートあるいはエチレングリコール等のリサイクル原料を用いることは、省資源や環境保護に役立つので好ましい実施態様である。
【0197】
本発明方法により得られたポリエステルを減圧下あるいは不活性ガス気流下でポリエステル樹脂を加熱し、さらに重縮合を進めたり、該ポリエステル樹脂中に含まれている環状3量体等のオリゴマーやアセトアルデヒド等の副生成物を除去する等の手段を取ることも何ら制約を受けない。また、例えば超臨界圧抽出法等の抽出法でポリエステル樹脂を精製し前記の副生成物等の不純物を除去する等の処理を行うことを取り入れても良い。
【0198】
本発明のポリエステル中には、有機系、無機系、及び有機金属系のトナー、ならびに蛍光増白剤などを含むことができ、これらを一種もしくは二種以上含有することによって、ポリエステルの黄み等の着色をさらに優れたレベルにまで抑えることができる。また他の任意の重合体や制電剤、消泡剤、染色性改良剤、染料、顔料、艶消剤、蛍光増白剤、安定剤、酸化防止剤、その他の添加剤が含有されていてもよい。酸化防止剤としては、芳香族アミン系、フェノール系等の酸化防止剤が使用可能であり、安定剤としては、リン酸やリン酸エステル系等のリン系、硫黄系、アミン系等の安定剤が使用可能である。
【0199】
これらの添加剤は、ポリエステルの重合時もしくは重合後、あるいはポリエステルの成形時の任意の段階で添加することが可能であり、どの段階が好適かは対象とするポリエステルの構造や得られるポリエステルの要求性能に応じてそれぞれ適宜選択すれば良い。
【0200】
本発明のポリエステル重縮合触媒を用いて重縮合したポリエステルは常法の溶融紡糸法により繊維を製造することが可能であり、紡糸・延伸を2ステップで行う方法及び1ステップで行う方法が採用できる。さらに、捲縮付与、熱セットやカット工程を備えたステープルの製造方法やモノフィラメントなど公知の繊維製造方法がすべて適用できるものである。
【0201】
また得られた繊維は異型断面糸、中空断面糸、複合繊維、原着糸等の種々繊維構造となすことができ、糸加工においても例えば混繊、混紡、等の公知の手段を採用することができる。
【0202】
更に上記ポリエステル繊維は織編物或いは不織布、等の繊維構造体となすことができる。
【0203】
そして上記ポリエステル繊維は、衣料用繊維、カーテン、カーペット、ふとん綿、ファイバーフィル等に代表されるインテリア・寝装用繊維、タイヤコード、ロープ等の抗張力線、土木・建築資材、エアバッグ等の車輛用資材、等に代表される産業資材用繊維、各種織物、各種編物、ネット、短繊維不織布、長繊維不織布用、等の各種繊維用途に使用することができる。
【0204】
本発明のポリエステルは、中空成形体として好適に用いられる。
【0205】
中空成形体としては、ミネラルウオーター、ジュース、ワインやウイスキー等の飲料容器、ほ乳瓶、瓶詰め食品容器、整髪料や化粧品等の容器、住居および食器用洗剤容器等が挙げられる。
【0206】
これらの中でも、ポリエステルの持つ衛生性及び強度、耐溶剤性を活かした耐圧容器、耐熱耐圧容器、耐アルコール容器として各種飲料用に特に好適である。中空成形体の製造は、溶融重合や固相重合によって得られたポリエステルチップを真空乾燥法等によって乾燥後、押し出し成型機や射出成形機等の成形機によって成形する方法や、溶融重合後の溶融体を溶融状態のまま成形機に導入して成形する直接成形方法により、有底の予備成形体を得る。さらに、この予備成形体を延伸ブロー成形、ダイレクトブロー成形、押出ブロー成形などのブロー成型法により最終的な中空成形体が得られる。もちろん、上記の押し出し成型機や射出成形機等の成形機によって得られた成形体を最終的な中空容器とすることもできる。
【0207】
このような中空成形体の製造の際には、製造工程で発生した廃棄樹脂や市場から回収されたポリエステル樹脂を混合することもできる。このようなリサイクル樹脂であっても、本発明のポリエステル樹脂は劣化が少なく、高品質の中空成型品を得ることができる。
【0208】
さらには、このような容器は、中間層にポリビニルアルコールやポリメタキシリレンジアミンアジペートなどのガスバリア性樹脂層、遮光性樹脂層やリサイクルポリエステル層を設けた多層構造をとることも可能である。また、蒸着やCVD(ケミカルベーパーデポジット)等の方法を用いて、容器の内外をアルミニウムなどの金属やダイヤモンド状カーボンの層で被覆することも可能である。
【0209】
なお、中空成形体の口栓部等の結晶性を上げるため、ポリエチレンを初めとする他の樹脂やタルク等の無機核剤を添加することもできる。
【0210】
前記のごとく、本発明方法により得られるポリエステルは、ポリエステルの結晶化に大きく影響するTc1が最適化されたものであるので、前記の耐熱性ボトル用の原料等のポリエステルの結晶化特性が重要視される分野に対して特に好適に使用することができる。
【0211】
また、本発明のポリエステルは押し出し機からシ−ト状物に押し出し、シートとすることもできる。このようなシートは、真空成形や圧空成形、型押し等により加工し、食品や雑貨用のトレイや容器、カップ、ブリスタ−パック、電子部品のキャリアテープ、電子部品配送用トレイとして用いる。また、シートは各種カードとして利用することもできる。
【0212】
これら、シートの場合でも、上述のような中間層にガスバリア性樹脂層、遮光性樹脂層やリサイクルポリエステル層を設けた多層構造をとることも可能である。
【0213】
また、同様にリサイクル樹脂を混合することもできる。さらには、結晶性の耐熱性容器とすることを目的に、ポリエチレンを初めとする他の樹脂やタルク等の無機核剤を添加し、結晶性を高めることできる。
【0214】
本発明のポリエステル重縮合触媒を用いて重合したポリエステルは、フイルムに用いることができる。その方法は、ポリエステルを溶融押出しし、T−ダイスより冷却回転ロール上にシート状に成型し、未延伸シートを作成する。この際、例えば特公平6−39521号公報、特公平6−45175号公報に記載の技術を適用することにより、高速製膜性が可能となる。また、複数の押出し機を用い、コア層、スキン層に各種機能を分担させ、共押出し法により積層フイルムとしても良い。
【0215】
本発明のポリエステル重縮合触媒を用いて重合したポリエステルは、配向ポリエスTテルフィルムに用いることができる。配向ポリエステルフイルムは、公知の方法を用いて、ポリエステルのガラス転移温度以上結晶化温度未満で、少なくとも一軸方向に1.1〜6倍に延伸することにより得ることができる。
【0216】
例えば、二軸配向ポリエステルフイルムを製造する場合、縦方向または横方向に一軸延伸を行い、次いで直交方向に延伸する逐次二軸延伸方法、縦方向及び横方向に同時に延伸する同時二軸延伸する方法、さらに同時二軸延伸する際の駆動方法としてリニアモーターを用いる方法のほか、横・縦・縦延伸法、縦・横・縦延伸法、縦・縦・横延伸法な、同一方向に数回に分けて延伸する多段延伸方法を採用することができる。
【0217】
さらに、延伸終了後、フイルムの熱収縮率を低減させるために、(融点−50℃)〜融点未満の温度で30秒以内、好ましくは10秒以内で熱固定処理を行い、0.5〜10%の縦弛緩処理、横弛緩処理などを施すことが好ましい。
【0218】
得られた配向ポリエステルフイルムは、厚みが1μm以上1000μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以上500μm以下、より好ましくは10μm以上200μm以下である。1μm未満では腰が無く取り扱いが困難である。また1000μmを超えると硬すぎて取り扱いが困難である。
【0219】
また、接着性、離型性、制電性、赤外線吸収性、抗菌性、耐擦り傷性、などの各種機能を付与するために、配向ポリエステルフイルム表面にコーティング法により高分子樹脂を被覆してもよい。また、被覆層にのみ無機及び/又は有機粒子を含有させて、易滑高透明ポリエステルフイルムとしてもよい。さらに、無機蒸着層を設け酸素、水、オリゴマーなどの各種バリア機能を付与したり、スパッタリング法などで導電層を設け導電性を付与することもできる。また、配向ポリエステルフイルムの滑り性、走行性、耐摩耗性、巻き取り性などのハンドリング特性を向上させるために、ポリエステルの重合工程で、無機及び有機塩粒子又は耐熱性高分子樹脂粒子を添加して、フイルム表面に凹凸を形成させてもよい。また、これらの粒子は無機・有機又は親水・疎水等の表面処理がされたもの、されていないもの、どちらを使っても良いが、例えば分散性を向上させる等の目的で、表面処理した粒子を用いる方が好ましいケースがある。
【0220】
無機粒子としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化リチウム、ソジュウムカルシウムアルミシリケート等が挙げられる。
【0221】
有機塩粒子としては、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等が挙げられる。
【0222】
架橋高分子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体が挙げられる。その他に、ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機粒子を用いても良い。
【0223】
上記不活性粒子を基材フイルムとなるポリエステル中に含有させる方法は、限定されないが、(a)ポリエステル構成成分であるジオール中で不活性粒子をスラリー状に分散処理し、該不活性粒子スラリーをポリエステルの重合反応系へ添加する方法、(b)ポリエステルフイルムの溶融押出し工程においてベント式二軸押出し機で、溶融ポリエステル樹脂に分散処理した不活性粒子の水スラリーを添加する方法、(c)ポリエステル樹脂と不活性粒子を溶融状態で混練する方法(d)ポリエステル樹脂と不活性粒子のマスターレジンを溶融状態で混練する方法などが例示される。
【0224】
重合反応系に添加する方法の場合、不活性粒子のジオールスラリーを、エステル化反応またはエステル交換反応前から重縮合反応開始前の溶融粘度の低い反応系に添加することが好ましい。また、不活性粒子のジオールスラリーを調製する際には、高圧分散機、ビーズミル、超音波分散などの物理的な分散処理を行うとことが好ましい。さらに、分散処理したスラリーを安定化させるために、使用する粒子の種類に応じて適切な化学的な分散安定化処理を併用することが好ましい。
【0225】
分散安定化処理としては、例えば無機酸化物粒子や粒子表面にカルボキシル基を有する架橋高分子粒子などの場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ化合物をスラリーに添加し、電気的な反発により粒子間の再凝集を抑制することができる。また、炭酸カルシウム粒子、ヒドロキシアパタイト粒子などの場合にはトリポリ燐酸ナトリウムやトリポリ燐酸カリウムをスラリー中に添加することが好ましい。
【0226】
また、不活性粒子のジオールスラリーをポリエステルの重合反応系へ添加する際、スラリーをジオールの沸点近くまで加熱処理することも、重合反応系へ添加した際のヒートショック(スラリーと重合反応系との温度差)を小さくすることができるため、粒子の分散性の点で好ましい。
【0227】
これらの添加剤は、ポリエステルの重合時もしくは重合後、あるいはポリエステルフイルムの製膜後の任意の段階で添加することが可能であり、どの段階が好適かは化合物の特性やポリエステルフイルムの要求性能に応じてそれぞれ異なる。
【0228】
また、本発明のポリエステルは熱安定性に優れるため、例えば、本ポリエステルを用いてフイルムなどを作成する際、延伸工程で生ずるフイルムの耳の部分や規格外のフイルムを溶融して再利用するのに適している。
【0229】
本発明の配向ポリエステルフイルムは、好ましくは帯電防止性フイルム、易接着性フイルム、カード用、ダミー缶用、農業用、建材用、化粧材用、壁紙用、OHPフイルム用、印刷用、インクジェット記録用、昇華転写記録用、レーザービームプリンタ記録用、電子写真記録用、熱転写記録用、感熱転写記録用、プリント基板配線用、メンブレンスイッチ用、プラズマディスプレイ用、タッチパネル用、マスキングフィルム用、写真製版用、レントゲンフィルム用、写真ネガフィルム用、位相差フイルム用、偏光フイルム用、偏光膜保護(TAC)用、プロテクトフィルム用、感光性樹脂フイルム用、視野拡大フイルム用、拡散シート用、反射フイルム用、反射防止フイルム用、導電性フイルム用、セパレータ用、紫外線防止用、バックグラインドテープ用などに用いられる。
【0230】
帯電防止用フイルムとしては、例えば特許第2952677号公報、特開平6−184337号公報に記載の技術を用いることができる。易接着性フイルムとしては、例えば特公平07−108563、特開平10−235820、特開平11−323271号公報に、カード用としては例えば特開平10−171956、特開平11−010815号公報に記載の技術を本発明のフイルムに適用できる。ダミー缶用としては例えば特開平10−101103号公報に記載のシート状筒体の替わりに、本発明のフイルム上に意匠を印刷し筒状、半筒状にしたものを用いることができる。建材用、建材用化粧版、化粧材用としては、例えば特開平05−200927号公報に記載の基材シート、特開平07−314630号公報に記載の透明シートとして本発明のフイルムを用いることができる。OHP用(オーバーヘッドプロジェクタ用)としては特開平06−297831号公報に記載の透明樹脂シート、特開平08−305065号公報に記載の透明高分子合成樹脂フイルムとして本発明のフイルムを用いることができる。インクジェット記録用としては、例えば特開平05−032037号公報に記載の透明基材として本発明のフイルムを用いることができる。昇華転写記録用としては例えば特開2000−025349号公報に記載の透明なフイルムとして本発明のフイルムを用いることができる。レーザービームプリンタ用、電子写真記録用としては例えば特開平05−088400号公報に記載のプラスチックフイルムとして本発明のフイルムを用いることができる。熱転写記録用としては例えば特開平07−032754号公報に感熱記録用としては特開平11−034503号公報にそれぞれ記載の方法で本発明のフイルムを用いることができる。プリント基板用としては例えば特開平06−326453号公報に記載のポリエステルフイルムとして本発明のフイルムを用いることができる。メンブレンスイッチ用としては例えば特開平05−234459号公報に記載の方法で本発明のフイルムを用いることができる。光学フィルタ(熱線フィルタ、プラズマディスプレイ用)としては、例えば特開平11−231126号公報に記載の方法で本発明のフイルムを用いることができる。透明導電性フイルム、タッチパネル用としては例えば特開平11−224539号公報に記載の方法で本発明のフイルムを用いることができる。マスキングフィルム用としては、例えば特開平05−273737号公報に記載の方法で本発明のフイルムを用いることができる。写真製版用としては例えば特開平05−057844号公報に記載の方法で本発明のフイルムを用いることができる。写真用ネガフィルムとしては例えば特開平06−167768号公報の段落番号(0123)に記載のポリエチレンテレフタレートフィルムとして本発明のフイルムを用いることができる。位相差フイルム用としては例えば特開2000−162419号公報に記載のフイルムとして本発明のフイルムを用いることができる。セパレータ用としては、例えば特開平11−209711号公報の段落番号(0012)に記載のフイルムとして本発明のフイルムを用いることができる。紫外線防止用としては例えば特開平10−329291号公報に記載のポリエステルフイルムとして本発明のフイルムを用いることができる。農業用フイルムとしては、特開平10−166534号公報に記載のポリエチレンテレフタレートフィルムに本発明のフイルムを適用することにより得ることができる。粘着シートとしては例えば特開平06−122856号公報に記載のポリエチレンテレフタレートフィルムに本発明の配向ポリエステルフイルムを適用することにより得られる。
【実施例】
【0231】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、評価法は以下の方法で実施した。
【0232】
1、アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液のNMRスペクトルの測定
下記方法でアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液のNMRスペクトルを測定した。
試料 :アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液(濃度:アルミニウ元
素量として2.65g/l)
装置 :フーリエ変換核磁気共鳴装置(BRUKER製AVANCE500)
測定溶液 :試料80容量部に対して20容量部の重水素化ジメチルスルホキシド
を添加
27Al共鳴周波数:130.33MHz
検出パルスのフリップ角:90°
データ取り込み時間:1.0秒
遅延時間 :1.0秒
プロトンデカップリング:実施せず
積算回数 :500〜1000回
測定温度 :室温
一方、塩化アルミニウム・六水和物(AlCl3・6H2O) 1.3ミリモル/lの重水溶液を上記の条件で測定したときのピーク積分値を基準の1.0とし、上記方法で測定されるアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液のー15〜30ppmに現れるヒ゜ーク積分値の比で表示した。
【0233】
2、アルミニウム化合物とリン化合物との混合溶液のNMRスペクトルの測定法
装置 :フーリエ変換核磁気共鳴装置(BRUKER製AVANCE500)
測定溶液 :試料80容量部に対して20容量部の重水素化ジメチルスルホキシ
ドを添加。
31P共鳴周波数 :202.47MHz
検出パルスのフリップ角:45°
データ取り込み時間:2.0秒
遅延時間 :0.5秒
プロトンデカップリング:プロトン完全デカップリング
積算回数 :2000〜10000回
測定温度 :室温
【0234】
3、固有粘度(IV)の測定
フェノール/テトラクロロエタン(60:40、重量比)混合溶媒を用いて、30℃で測定した。
【0235】
4、Tc1の測定
島津製作所製DSC50を用いて測定した。ポリエステル10.0mgをアルミ製のパンに入れ、窒素雰囲気下、室温から20℃/分の昇温速度で300℃まで加熱し、300℃に達してから3分間保持した後即座にパンを取り出し、液体窒素中でクエンチした。表面に付着している液滴をエアーノズルでエアーを吹き付け除去した。その後、試料の入ったアルミ製のパンを再度20℃/分の昇温速度で、25℃から300℃まで加熱し、昇温時結晶化温度(Tc1)を求めた。発熱ピークの極大部分の温度をTc1とした。
【0236】
5、色調
ポリエステル樹脂チップ(長さ約3mm、直径約3mm)を用い、色差計(東京電色社製:モデルND−1001DP)を使用してハンターのL値およびb値を測定した。
【0237】
6、ポリエステルに不溶なアルミニウム系異物評価法
溶融重縮合上がりのポリエステルペレット30gおよびパラクロロフェノール/テトラクロロエタン(3/1:重量比)混合溶液300mlをネジ口三角フラスコに投入し、該ペレットを混合溶液に密閉下60〜80℃、2時間で攪拌・溶解した。該溶液を50〜70℃に保ちながら、直径47mm/孔径1.0μmのポリテトラフルオロエチレン製のメンブレンフィルター(Advantec社製PTFEメンブレンフィルター、品名:T100A047A)を用い、減圧下で異物を濾別した。有効濾過直径は37.5mmとした。濾過終了後、引き続き50mlのクロロホルムを用い洗浄し、次いで、該フィルターを80℃で2時間常圧下で乾燥した。該メンブレンフィルターのろ過面を走査型蛍光X線分析装置(RIGAKU社製、ZSX100e、Rh管球4.0kW)でアルミニウム元素量を定量した。定量はメンブレンフィルターの中心部直径30mmの部分について行った。なお、該蛍光X線分析法の検量線はアルミニウム元素含有量が既知のポリエチレンテレフタレート樹脂を用いて求め、見掛けのアルミニウム元素量をppmで表示した。測定はX線出力50kV−70mAで分光結晶としてペンタエリスリトール、検出器としてPC(プロポーショナルカウンター)を用い、PHA(波高分析器)100−300の条件でAl−Kα線強度を測定することにより実施した。検量線用ポリエチレンテレフタレート樹脂中のアルミニウム元素量は、高周波誘導結合プラズマ発光分析法で定量した
7、一軸延伸フイルムのヘイズ値
ポリエステル樹脂を真空下、130℃で12時間乾燥し、ヒートプレス法で1000±
100μmのシートを作成。ヒートプレス温度、圧力および時間はそれぞれ320℃、100kg/cm2Gおよび3秒とした。プレス後シートは水中に投入し急冷却した。得られたシートをバッチ式延伸機(T.M.LONG CO.,INC製、FILM STRETCHER)で3.5倍に一軸延伸し300±20μmの一軸延伸フイルムを得た。延伸温度はブロー温度95℃/プレート温度100℃とした。また、延伸速度は1.5万%/分で行った。得られた一軸延伸フイルムのヘイズをJIS−K7136に準拠し、ヘイズメータ(日本電色工業株式会社製、300A)を用いて測定した。なお、測定は5回行い、その平均値を求めた。ヘイズ値はフイルム厚み300μmの換算値で表示した。
【0238】
実施例1
(1)重縮合触媒溶液の調製
(リン化合物のエチレングリコール溶液の調製)
窒素導入管、冷却管を備えたフラスコに、常温常圧下、エチレングリコール2.0リットルを加えた後、窒素雰囲気下200rpmで攪拌しながら、リン化合物として(化39)で表されるIrganox1222(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)の200gを加えた。さらに2.0リットルのエチレングリコールを追加した後、ジャケット温度の設定を196℃に変更して昇温し、内温が185℃以上になった時点から60分間還流下で攪拌した。その後加熱を止め、直ちに溶液を熱源から取り去り、窒素雰囲気下を保ったまま、30分以内に120℃以下まで冷却した。得られた溶液中のIrganox1222のモル分率は40%、Irganox1222から構造変化した化合物のモル分率は60%であった。
(アルミニウム化合物の水溶液の調製)
冷却管を備えたフラスコに、常温常圧下、純水5.0リットルを加えた後、200rpmで攪拌しながら、塩基性酢酸アルミニウム200gを純水とのスラリーとして加えた。さらに全体として10.0リットルとなるよう純水を追加して常温常圧で12時間攪拌した。その後、ジャケット温度の設定を100.5℃に変更して昇温し、内温が95℃以上になった時点から3時間還流下で攪拌した。攪拌を止め、室温まで放冷し水溶液を得た。
(アルミニウム化合物のエチレングリコール混合溶液の調製)
上記方法で得たアルミニウム化合物水溶液に等容量のエチレングリコールを加え、室温で30分間攪拌した後、内温80〜90℃にコントロールし、徐々に減圧して、到達27hPaとして、数時間攪拌しながら系から水を留去し、20g/lのアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液を得た。得られたアルミニウム溶液の27Al−NMRスペクトルのヒ゜ーク積分値比は2.2であった。
【0239】
(2)エステル化反応および重縮合
2基の連続エステル化反応槽および3基の重縮合反応槽よりなり、かつ第2エステル化反応槽から第1重縮合反応槽への移送ラインに高速攪拌器を有したインラインミキサーが設置された連続式ポリエステル製造装置に高純度テレフタル酸1質量部に対してエチレングリコール0.45質量部とを混合して調製されスラリーを連続的に供給し第1エステル化槽が反応温度250℃、0.1MPa、第2エステル化反応槽が250℃、0.1MPaで第1と第2エステル化反応槽における反応時間を調整し、かつ、第2エステル化反応槽にエチレングルコールを投入しポリエステルオリゴマーを得た。第1エステル化反応槽出口のオリゴマーのAVoおよびOHVoはそれぞれ1600eq/tonおよび1400eq/tonであった。第2エステル化反応槽出口のオリゴマーのAVoおよびOHVoはそれぞれ650eq/tonおよび1520eq/tonであり、OHV%は70モル%であった。該オリゴマーを3基の反応槽よりなる連続重縮合装置に連続的に移送すると共に、該移送ラインに設置されたインラインミキサーに上記方法で調製したアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液およびリン化合物のエチレングリコール溶液をそれぞれポリエステル中の酸成分に対してアルミニウム原子およびリン原子として0.015モル%および0.036モル%となるように攪拌式のミキサーで攪拌しながら連続的に添加し、初期重縮合反応器が265℃、0.009MPa、中期重縮合反応器が265〜275℃、0.0007MPa、最終重縮合反応器が270〜280℃、0.0000133MPaで重縮合しIV0.62のPETを得た。得られたPETの特性値を表1に示す。なお、上記攪拌式ミキサー出口のアルミニウム化合物溶液とリン化合物溶液との混合液のNMRスペクトルにはアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液と混合する前のリン化合物のエチレングリコール溶液のスペクトルには存在しない5〜24ppmの範囲にブロードなヒ゜ーク(配位ヒ゜ークと称する)が観察された。該配位ヒ゜ークの積分値はアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液と混合する前のリン化合物のエチレングリコール溶液のNMRスペクトルに存在する25〜27ppm付近に観察される水酸基が結合したリン原子のNMRスペクトルヒ゜ークの積分値に対して45%であった。
【0240】
【表1】

【0241】
比較例1
実施例1の方法において、アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液調製時の水の留去を常圧で140〜160℃にて行うように変更し、かつアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液とリン化合物のエチレングリコール溶液の混合液の添加場所を第2エステル化反応器に変更する以外は、実施例1と同様の方法で比較例1のPETを得た。本比較例で得られたアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液の27Al−NMRスペクトルのヒ゜ークの積分値比は0.18であった。また、本比較例で得られた上記アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液とリン化合物エチレングリコール溶液との混合液よりなる重縮合触媒溶液のNMRスペクトルには実施例1で得られた重縮合触媒溶液で観察された配位ヒ゜ークは殆ど検出できず、該配位ヒ゜ークの積分値はアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液と混合する前のリン化合物のエチレングリコール溶液のNMRスペクトルに存在する25〜27ppm付近に観察される水酸基が結合したリン原子のNMRスペクトルヒ゜ークの積分値に対して1%以下であった。得られたPETの特性を表1に示す。
【0242】
比較例2
実施例1の方法において、アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液とリン化合物のエチレングリコール溶液を混合することなくそれぞれ別個の供給口より添加するように変更する以外は、実施例1と同様の方法で比較例1のPETを得た。得られたPETの特性を表1に示す。
【0243】
実施例2
実施例1の方法において、アルミニウム化合物の水溶液をエチレングリコール溶液に置換する際に内温95〜105℃にコントロールした以外は、実施例1と同様の方法で実施例2のPETを得た。本実施例で得られたアルミニウム溶液の27Al−NMRスペクトルヒ゜ークの積分値比は0.85であった。また、重縮合触媒溶液のNMRスペクトルにおける配位ヒ゜ークの積分値は重縮合触媒調製前のリン化合物のエチレングリコール溶液のNMRスペクトルに存在する25〜27ppm付近に観察される水酸基が結合したリン原子のNMRスペクトルヒ゜ークの積分値に対して22%であった。得られたPETの特性を表1に示す。
【0244】
比較例3
実施例2の方法において、アルミニウム化合物のエチレングリコール溶液とリン化合物のエチレングリコール溶液の混合液の添加場所を第2エステル化反応器に変更する以外は、実施例2と同様の方法で比較例3のPETを得た。得られたPETの特性を表1に示す。
実施例3
(重縮合触媒溶液の調製)
実施例1の方法で調製したアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液とリン化合物のエチレングリコール溶液をアルミニウム原子とリン原子がモル比で1:2.40になるような量比で室温にて30分攪拌混合して重縮合触媒溶液を得た。上記のリン化合物のエチレングリコール溶液および重縮合触媒溶液のNMRスペクトルを測定した。重縮合触媒溶液のNMRスペクトルにはアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液と混合する前のリン化合物のエチレングリコール溶液のスペクトルには存在しない5〜24ppmの範囲にブロードなヒ゜ーク(配位ヒ゜ークと称する)が観察された。該配位ヒ゜ークの積分値はアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液と混合する前のリン化合物のエチレングリコール溶液のNMRスペクトルに存在する25〜27ppm付近に観察される水酸基が結合したリン原子のNMRスペクトルヒ゜ークの積分値に対して50%であった。得られた混合溶液は20〜35℃の雰囲気で保存した。
(ポリエステルの重縮合)
実施例1と同様の方法において、上記方法で調製し、約1ヶ月間保存された重縮合触媒溶液をインラインミキサーに連続して供給するように変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施例3のPETを得た。得られたPETの特性を表1に示す。
【0245】
実施例4および比較例4
実施例1〜3および比較例1〜3で得られたPETを常法により固相重縮合しIV0.75dl/gとし、脱湿空気を用いた乾燥機で乾燥し、各機製作所製M−150C(DM)射出成型機により樹脂温度295℃でプリフォ−ムを成形した。このプリフォームの口栓部を自家製の口栓部結晶化装置で90秒間加熱結晶化させた後、コーポプラスト社製LB−01E延伸ブロー成型機を用いて二軸延伸ブロー成形し、引き続き約150℃に設定した金型内で約7秒間熱固定し、2000ccの中空成形体(胴部は円形)を得た。得られた中空成形体に90℃の温湯を充填し、キャッピング機によりキャッピングをしたあと容器を倒し放置後、内容物の漏洩を調べた。また、キャッピング後の口栓部の変形状態も調べた。また、プリフォーム口栓部の天面から試料を採取し密度を測定し、赤外線加熱によるプリフォーム口栓部の密度を評価した。なお、密度は密度偏差硝酸カルシウム/水混合溶液の密度勾配ラインで30℃で測定した。また、中空成形体のヘイズは、中空成形体の胴部(肉厚約0.45mm)より試料を切り取り、日本電色(株)製ヘイズメーター、modelNDH2000で測定した。評価結果を表2に示す。
【0246】
【表2】

【0247】
実施例1〜3で得られたPETは、重縮合生産性が高く、色調および重縮合触媒起因の不溶性異物の生成が少なく、かつTc1が150〜170℃の適性範囲に入っており、経済性と品質が両立している。これらの実施例で得られたPETを用いて得た一軸延伸フイルムはヘイズが低く透明性の優れたものであった。また、高品質のボトルが得られる。一方、比較例1および2PETは不溶性異物が多いので成型体の透明性が低い。また、比較例1および3のPETはTc1が低いので、該PETより得られるボトルは耐熱性に劣る。また、比較例3のPETは重縮合触媒起因の不溶性異物の生成が少ないがTc1が低いのでボトルの透明性が劣る。
【産業上の利用可能性】
【0248】
本発明によるポリエステルの製造方法は、品質の均一性や経済性に優れた連続式重縮合法において、アンチモン、ゲルマニウムおよびチタン系以外の金属成分を触媒の主たる金属成分とした重縮合触媒で色調、透明性および熱安定性等を維持し、Tc1が適性な温度範囲で、かつ重縮合触媒起因の異物生成が少ないポリエステルが得られるので、品質と経済性を両立させることの出来るという利点がある。従って、本発明の製造方法で得られたポリエステルは、例えば衣料用や産業資材用の繊維、包装用、磁気テープ用および光学用などのフィルムやシート、中空成形品であるボトル、電気・電子部品のケーシング、その他エンジニアリングプラスチック成形品等の広範な分野において好適に使用することができる。本発明において得られるポリエステルはポリエステルの結晶化に大きく影響するTc1が最適されたものであるので、耐熱性ボトル用原料等のポリエステルの結晶化特性が重要視される分野に対して特に好適に使用することができる。また、本発明のポリエステルは、重縮合触媒起因の異物生成が少ないという特徴を有しているので超微細繊維、光学用の高透明なフイルムあるいは超高透明な成型体等の分野においてその特徴を発揮することができるという利点を有するので産業界に寄与することが大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、リン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種からなるポリエステル重縮合触媒の存在下に連続式重縮合法でポリエステルを製造する方法において、エステル化反応またはエステル交換反応終了後に前記アルミニウム化合物とリン化合物とを溶液で混合して添加することを特徴とするポリエステルの製造方法。
【請求項2】
アルミニウム化合物およびリン化合物の混合溶液の水酸基が結合したリン原子のNMRスペクトルヒ゜ークが混合前のリン化合物単独溶液の水酸基が結合したリン原子のNMRスペクトルヒ゜ークより高磁場側にシフトすると共に該ヒ゜ークがブロードになった溶液よりなることを特徴とする請求項1に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項3】
上記混合溶液の水酸基が結合したリン原子のNMRスペクトルヒ゜ークの積分値がアルミニウム化合物の溶液と混合する前のリン化合物単独溶液の水酸基が結合したリン原子のNMRスペクトルピークの積分値に対して10%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項4】
アルミニウム化合物として本文中で記載した方法で定量される27Al−NMRスペクトルにおいて−15〜30ppmに現れるヒ゜ークの積分値が基準ヒ゜ークの積分値に対する比で0.3以上であるアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液を用いることを特徴とする請求項1〜3に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項5】
アルミニウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、リン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種からなるポリエステル重縮合触媒の存在下で製造したポリエステルにおいて、本文中で記載した方法で定量されるポリエステルに不溶なアルミニウム系異物が3500ppm以下であり、かつ昇温結晶化温度が150℃以上であることを特徴とするポリエステル。
【請求項6】
本文中で記載した方法で得られた一軸延伸フイルムのヘイズ値が2.0%以下であることを特徴とする請求項5に記載のポリエステル。
【請求項7】
請求項5または6に記載のポリエステルからなる中空成型体。
【請求項8】
請求項5または6に記載のポリエステルからなる繊維。
【請求項9】
請求項5または6に記載のポリエステルからなるフイルム。

【公開番号】特開2006−89690(P2006−89690A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−279627(P2004−279627)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】