説明

ポリエステルに基づく埋め込み型デバイスのための生体吸収性コーティング及びその作製方法

ポリエステルと場合により薬剤とを含有する、医療品と共に使用するためのポリマー、及びそれを作製する方法が開示される。その医療品は、一般にコーティングを有する埋め込み型基材を含み、そのコーティングは、ポリオールとポリカルボン酸とを含む反応のポリマー生成物を含むポリマーを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
発明の分野
本発明は、医療品に使用するためのポリマー、さらに具体的には新規なポリエステルを含有するポリマーを対象とする。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
生体材料の研究における現在のパラダイムは、医療用インプラントでの生体吸収性材料の使用である。例えば治療、予防、診断用、又はその他の生体に有益でありうる薬剤のリザーバとして、生体吸収性材料を使用することができる。当該薬剤を生体吸収性材料と混和、混合、結合、又はその他の方法で組合せることができる。一例では、生体吸収性材料は非汚染表面を生成する薬剤のリザーバとして役立つことができ、その非汚染表面は部分的に変性したタンパク質の層で汚染されないか、又はあまり汚染されない表面である。インプラント表面へのタンパク質の制御されない吸着は、目下入手できる生体材料性インプラントに伴う問題であり、血栓症、炎症、増殖性組織応答などの疾患、又はこれら疾患の任意の組合せももたらしうる、インプラント表面上の汚染をもたらす。汚染が原因となる疾患生成のメカニズムには、例えばフィブリノーゲン及び免疫グロブリンGなどの吸着された血漿タンパク質由来の細胞結合部位を用意することが含まれうる。血小板、並びに例えば単球、マクロファージ、及び好中球などの炎症細胞はその細胞結合部位に接着する。多様な炎症促進因子及び増殖因子が分泌され、その結果として疾患を生じることがある。
【0003】
疾患部位での治療用又は予防用物質の局所投与を容易にすることによりインプラントに薬物を添加するためにも、生体吸収性材料を使用することができる。ステントは薬剤の局所投与用のリザーバとして役立つことができるコーティングを用いて改良されうるインプラントの例である。機械的介入として、ステントは物理的に開口を保つことができ、所望ならば哺乳動物内部の連絡通路を拡張することができる。典型的には、ステントを圧縮し、カテーテルにより管腔に挿入することができ、次に、ステントがいったん適当な位置に置かれたならば、そのステントをさらに大きな直径に拡張することができる。ステントを開示している特許の例には、米国特許第4,733,665号明細書、第4,800,882号明細書、第4886062号明細書がある。
【発明の開示】
【0004】
ステントは、例えば心疾患を治療するために使用される手順である経皮経管冠動脈形成術(PTCA)などの多様な医療処置に重要な役割を果たす。PTCAでは、バルーンカテーテルを上腕動脈又は大腿動脈を通して挿入し、冠動脈閉塞部を横断して配置し、膨らませてアテローム硬化性プラークを圧迫し、冠動脈管腔を開口させ、バルーンをしぼませて抜去する。PTCAに伴う問題には、内膜弁の形成又は動脈内層の引裂きがあり、それら両方が冠動脈管腔に別の閉塞を生成するおそれがある。さらに、血栓症及び再狭窄がこの処置の数か月後に起こり、追加の血管形成術又は外科的バイパス手術の必要が生じるおそれがある。閉塞を軽減し、血栓症及び再狭窄を阻害し、冠動脈管腔内の開存性を維持するためにステントが一般に埋め込まれる。
【0005】
特に哺乳動物内の特定の部位で効果を実現するために高い全身用量が必要となる場合に、薬剤の局所送達が薬剤の全身送達よりも好まれることが多い。それは、高い全身用量の薬剤が、哺乳動物内に有害作用をしばしば生じるおそれがあるからである。提案された局所送達の一方法には、薬剤の送達用のリザーバとして使用することのできるポリマー性担体で医療品表面をコーティングすることが含まれる。当該使用に潜在性を有する多数の生分解性ポリマーがあり、有用なポリマーは、例えば血管環境で生体適合性でなければならない。このポリマーは、吸収されるまで常にステンレス鋼により誘発される応答よりも大きな有害生体応答を誘発してはならない。ポリマーの生体応答は、ポリマーの用量、分解速度、酸生成、モノマーの適合性、及び形態変化に対する応答の複合関数である。
【0006】
生体吸収性ポリマーは、ポリ無水物、ポリエーテル、ポリエステルなどのポリマーの主鎖における不安定結合の種類により分類することができる。現在使われている生体吸収性ポリマーには、ポリラクチド、ポリグリコリド、ラクチド−グリコリドコポリマー、及びポリカプロラクトンが含まれ、そのそれぞれは適用が限定されているポリエステルである。例えば当業者は、ポリ(L−ラクチド)が極めて高い強度であるが非弾性で比較的高い酸生成を有し、一部の生体応答の問題を示すおそれがあり、ポリカプロラクトンが低い酸生成を有するが極めて弱いことを知っている。これらのポリエステルのそれぞれは体積浸食を受けるが、これは薬剤の放出を制御するために使用されるコーティング材料にとって望ましくない。
【0007】
別の問題は、ポリマー性コーティングが分解するときに、そのポリマー性コーティングに付着した薬剤がそのコーティング由来の分子に付着したままである場合に生じうる規制上の問題を伴う。これらの追加の分子はその薬剤本来の規制認可では考慮されなかったことから、その薬剤の生体活性が変化する可能性について規制上の問題が存在するおそれがある。
【0008】
したがって、(i)生分解性ポリマーから利益を受けることのできる適用のための改善した機械的性質及び生体応答性質を有し、(ii)ポリマー性コーティング由来の追加の分子が実質的に存在しない薬剤を放出することができる生体吸収性ポリエステルの必要性が存在する。
【0009】
(概要)
本発明の実施形態は、一般にポリエステルと、治療剤、予防剤、又はその他の薬剤などの薬剤とを含有する、医療品に使用するためのポリマーを包含する。そのポリマーを作製する方法も本発明に包含される。
【0010】
一態様では、本発明は次式により表されるポリマーを含む組成物である:
【化1】

【0011】
上記式中、可変記号R及びRは任意であり、それぞれ置換、非置換、ヘテロ−、直鎖、分岐、環状、飽和、及び不飽和脂肪族基;並びに置換、非置換、及びヘテロ芳香族基からなる群から独立して選択される構成要素を含む。可変記号R及びRは、それぞれ置換、非置換、ヘテロ−、直鎖、分岐、環状、飽和、及び不飽和脂肪族基;並びに置換、非置換、及びヘテロ−芳香族基からなる群から独立して選択される構成要素を含む。可変記号Lは任意の結合であり、可変記号Xは任意の薬剤であり、可変記号LはXをポリマーに連結する任意の結合であり、m及びnは0ではない整数である。別の実施形態では、本組成物は薬剤と混和される。別の実施形態では、本発明は、ポリマーを含むコーティングを備えるステントであり、そのコーティングは薬剤と混和されうる。別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つのポリオール、少なくとも1つのポリカルボン酸、及び場合により薬剤からなる反応の生成物を有する医療品である。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、医療品又はコーティングを作製することを含む方法であり、ここで、その医療品又はコーティングは埋め込み型基材を有する。その方法は、さらにそのポリマーを調製すること及びその医療品又はコーティングを形成させることを含み、ここで、その医療品又はコーティングはそのポリマーを含み、そのコーティングは埋め込み型基材の少なくとも一部に形成され、その医療品又はコーティングは場合によりアニールされる。別の実施形態では、その方法は、さらに薬剤を、そのポリマーを含む組成物と混和することを含むことがある。
【0013】
(詳細な説明)
下にさらに詳細に論じるように、本発明の実施形態は、一般にポリエステルと、医療品と共に使用するための例えば治療剤、予防剤、診断剤及び/又はその他の薬剤などの薬剤とを含む組成物を包含する。本発明は、その組成物を作製する方法も包含する。その医療品は、例えばステントなどの埋め込み型医療用具などの任意の医療用具を備える。一部の実施形態では、その組成物は、埋め込み型基材上のコーティングとして使用することができる。他の実施形態では、ステントなどの医療用具がその組成物から全体的に又は部分的に製造される。「薬剤」は、生体活性、生体有益性、診断用、可塑化性でありうる部分のことがあり、またこれらの性質の組合せを有することもある。「部分」は、少なくとも2個の原子から構成される官能基、高分子における結合残基、コポリマーにおける個別のユニット、又はポリマーブロック全体のことがある。
【0014】
本明細書に記載される教示により改善されうる任意の医療品は本発明の範囲内に属することを認識されたい。医療用具の例には、ステントグラフト、代用血管、人工心臓弁、卵円孔閉鎖デバイス、髄液シャント、ペースメーカー電極、ガイドワイヤー、心室補助装置、心肺バイパス回路、血液酸素付加装置、冠動脈シャント(AXIUS(商標)、Guidant Corp.)、及び心内膜リード(FINELlNE(登録商標)及びENDOTAK(登録商標)、Guidant Corp.)が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0015】
その医療用具は、ELASTINITE(登録商標)(Guidant Corp.)、NITINOL(登録商標)(Nitinol Devices and Components)、ステンレス鋼、タンタル、タンタル合金、ニッケル−チタン合金、白金、例えば白金−イリジウム合金などの白金合金、イリジウム、金、マグネシウム、チタン、チタン合金、ジルコニウム合金、コバルト及びクロムを含む合金(ELGILOY(登録商標)、Elgiloy Specialty Metals、Inc.;MP35N及びMP20N、SPS Technologies)、又はそれらの組合せが含まれるが、それらに限定されるわけではない。商標「MP35N」及び「MP20N」は、コバルト、ニッケル、クロム、及びモリブデンの合金を示す。MP35Nは35%コバルト、35%ニッケル、20%クロム、及び10%モリブデンからなる。MP20Nは50%コバルト、20%ニッケル、20%クロム、及び10%モリブデンからなる。生体吸収性ポリマー又は生体安定性ポリマーから構成される構造構成要素を備える医療用具も、本発明の範囲内に含まれる。
【0016】
ポリマー組成物
本発明の組成物には、ポリエステルを含む混合物、混和物、及びコポリマーが含まれ、そのポリエステルは、エステル基の不安定性が原因で生分解性である。さらに、これらの組成物は哺乳動物により分解、吸収、再吸収、及び/又は排出されうる。
【0017】
本発明の目的で、ポリマー又はコーティングが、インビボ(in vivo)環境、又は哺乳動物内でのインビボ環境に実質的に類似した物理学的、化学的、もしくは生物学的性質を有するインビトロ(in vitro)環境のいずれかに曝された場合に完全に又は実質的に分解又は浸食されることができるときに、そのポリマー又はコーティングは「生分解性」である。哺乳動物内で例えば加水分解、酵素分解、酸化、代謝過程、体積浸食又は表面浸食などにより徐々に分解、再吸収、吸収、及び/又は排出されうるときに、ポリマー又はコーティングは分解又は浸食されることができる。微量のポリマー又は残留ポリマーが生分解後のデバイスに残りうることを認識すべきである。用語「生体吸収性」及び「生分解性」は本出願において相互交換可能に使用される。本発明に使用されるポリマーは生分解性のことがあり、そのポリマーには縮合コポリマーが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0018】
本発明のポリエステルは、少なくとも1つのポリカルボン酸と少なくとも1つのポリオールとの反応生成物を含むことがある。そのポリエステルは、多様な他の部分も含有することがあるため、その結果として多様な分子配置を有することがある。ポリエステルは100%未満の生分解性ポリマーを含みうることにより、ポリエステル以外のポリマーが組成物の残りを構成することがあることを認識すべきである。これらのその他のポリマーをポリエステルと組合せ、混合、混和、又は結合することもでき、また、例えばイソシアネート、ジイソシアネート、ハロゲン化ジアシル、ジエン、又は他の架橋剤を用いて、それらのポリマーをポリエステルと架橋することができる。ポリエステルと組合せ、混合、混和、結合、又は架橋されるこれらのその他のポリマーの量は、生分解性ポリマーから形成される生成物に要求される性能パラメータに及ぼすこのその他のポリマーの作用により限定されるべきである。当該性能パラメータには、例えばコーティングの機械的強度、コーティングの生体応答、又は哺乳動物によるコーティングの生分解及び排出速度が含まれうる。他のポリマーが非生分解性ならば、生分解中に生成するポリマー断片は哺乳動物からのその断片の排出を確実にする大きさの分子量を有するべきである。
【0019】
一部の実施形態では、そのポリマー断片の分子量は約40,000ダルトン以下又はそれに収まる任意の範囲であるべきである。他の実施形態では、その断片の分子量は約300ダルトンから約40,000ダルトン、約8,000ダルトンから約30,000ダルトン、約10,000ダルトンから約20,000ダルトン、又はそれに収まる任意の範囲に及ぶ。
【0020】
本発明のPHAと組合せ、混合、混和、又は結合することができるポリマーの例には、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸エチル−メタクリル酸ブチルコポリマー、エチレン−メタクリル酸メチルコポリマーなどのポリアクリル酸エステル;ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、アミノプロピルメタクリルアミドのポリマー及びコポリマー;ポリシアノアクリレート;ポリカルボン酸;ポリビニルアルコール;ポリ無水マレイン酸及び無水マレイン酸コポリマー;ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペンコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、及び発泡ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素化ポリマー又はコポリマー;ポリスルホン;ポリ(N−ビニルピロリドン);ポリアミノカーボネート;ポリイミノカーボネート;無水物−イミドコポリマー、ポリヒドロキシ吉草酸;ポリ(L−乳酸);ポリ(L−ラクチド);ポリカプロラクトン;ラクチド−グリコリドコポリマー;ポリヒドロキシ酪酸;ヒドロキシ酪酸−吉草酸コポリマー;ポリジオキサノン;ポリオルトエステル;ポリ無水物;ポリグリコール酸;ポリグリコリド;ポリ(D,L−乳酸);ポリ(D,L−ラクチド);グリコール酸−トリメチレンカーボネートコポリマー;ポリリン酸エステル;ポリリン酸エステルウレタン;ポリトリメチレンカーボネート;ポリイミノカーボネート;ポリエチレン;例えばポリジオキサノン及びポリエチレンオキシド/ポリ乳酸などのポリプロピレンとポリエーテルエステルとのコポリマー;ポリ無水物、ポリシュウ酸アルキレン;ポリホスファゼン;ポリウレタン;シリコーン;ポリエステル;ポリオレフィン;ポリイソブチレンのコポリマー;エチレン−アルファオレフィンのコポリマー;ポリ塩化ビニルなどのハロゲン化ビニルポリマー及びコポリマー;ポリビニルメチルエーテルなどのポリビニルエーテル;例えばポリ塩化ビニリデンなどのポリハロゲン化ビニリデン;ポリアクリロニトリル;ポリビニルケトン;ポリスチレンなどの芳香族ポリビニル;ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステル;エチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVAL)、アクリロニトリル−スチレンのコポリマー、ABS樹脂、エチレン−酢酸ビニルのコポリマーなどのビニルモノマーとオレフィンのコポリマー;ナイロン66及びポリカプロラクタムなどのポリアミド;アルキド樹脂;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリイミド;ポリエステルアミド;例えばポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールを含むポリエーテル;エポキシ樹脂;ポリウレタン;レーヨン;レーヨントリアセテート;例えばフィブリン、フィブリノーゲン、デンプン、ポリアミノ酸などの生体分子;ペプチド、タンパク質、ゼラチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸(D−グルクロン酸又はL−イズロン酸とN−アセチル−D−ガラクトサミンとのコポリマー)、コラーゲン、ヒアルロン酸、及びグリコサミノグリカン;例えばポリ(N−アセチルグルコサミン)、キチン、キトサン、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、及びカルボキシメチルセルロースなどのその他の多糖;並びにその誘導体、アナログ、ホモログ、同族体、塩、コポリマー及び組合せが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0021】
本明細書に使用される化学記号に関して、官能基Rのそれぞれは、置換、非置換、ヘテロ−、直鎖、分岐、環状、飽和、もしくは不飽和脂肪族基;又は置換、非置換、もしくはヘテロ−芳香族基から独立して選択することができる。例えば基Rは、H;例えばアルキル、アルケニル、及びアルキニル基などの脂肪族炭化水素基;例えばアリール、アラルキル、アラルケニル、及びアラルキニル基などの芳香族基;並びに下に定義される様々な他の基から選択することができる。本発明の一部の実施形態では、脂肪族基は、約1個から約50個の炭素原子、約2個から約40個の炭素原子、約3個から約30個の炭素原子、約4個から約20個の炭素原子、約5個から約15個の炭素原子、約6個から約10個の炭素原子、及びそれに収まる任意の範囲を有する。一部の実施形態では、芳香族基は、約6個から約180個の炭素原子、約12個から約150個の炭素原子、約18個から約120個の炭素原子、約24個から約90個の炭素原子、約30個から約60個の炭素原子、及びそれに収まる任意の範囲を有する。
【0022】
用語「アルキル」は、直鎖又は分岐炭化水素鎖を表す。アルキル基の例には、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、又はイソヘキシルなどの低級アルキル基;例えばn−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、ノニル、デシルなどの高級アルキル基;例えばエチレン、プロピレン、プロピリン、ブチレン、ブタジエン、ペンテン、n−ヘキセン、及びイソヘキセンなどの低級アルキレン;並びに例えばn−ヘプテン、n−オクテン、イソオクテン、ノネン、デセンなどの高級アルキレンが含まれる。当業者は、多数の直鎖及び分岐アルキル基を熟知しており、それらのアルキル基は本発明の範囲内に属する。さらに、当該アルキル基は、1つ又は複数の水素原子が官能基に交換された様々な置換基も有すること、又は、そのアルキル基は鎖中官能基を有することもある。句「直鎖又は分岐」には、アルカン、アルケン、及びアルキンを含む任意の置換又は非置換の非環式炭素含有化合物が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0023】
用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素結合が炭素−炭素二重結合である直鎖又は分岐炭化水素鎖を表す。用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素結合が炭素−炭素三重結合である直鎖又は分岐炭化水素鎖を表す。用語「アリール」は、少なくとも6個のπ(パイ)電子をしばしば含む共役二重結合系を有する炭化水素環を表す。アリール基の例には、フェニル、ナフチル、アニシル、トルイル、キシレニルなどが含まれるが、それに限定されるわけではない。用語「アラルキル」は、少なくとも1つのアリール基で置換されたアルキル基を表す。用語「アラルケニル」は、少なくとも1つのアリール基で置換されたアルケニル基を表す。
【0024】
基は、1つ又は複数の炭素原子を有する側鎖を0.1mol%未満有する場合に「直鎖」である。一部の実施形態では、基は、当該側鎖を0.01mol%未満有するならば直鎖である。他の実施形態では、基は、当該側鎖を0.001mol%未満有するならば直鎖である。基は、1つ又は複数の炭素原子を有する側鎖を0.1mol%を超えて有する場合に「分岐」である。一部の実施形態では、基は、当該側鎖を0.01mol%を超えて有する場合に分岐である。他の実施形態では、基は、当該側鎖を0.001mol%を超えて有する場合に分岐である。用語「基(radical)」、「基(group)」、「官能基」、及び「置換基」は一部の状況で相互交換可能に使用でき、化学構造をさらに説明するために一緒に使用することができる。例えば用語「官能基」は、化学「基(group)」又は「基(radical)」を表すことがあり、それは、化学構造の鎖中、ペンダント、又は末端である化学構造の可変部である。
【0025】
官能基の例には、エーテル;エステル;オルトエステル;無水物、ケトン;アミド;ウレタン及びそのチオ誘導体(少なくとも1つの酸素原子が硫黄原子で置換されている);ハロゲン;例えばヒドロキシル、アルコキシル、エポキシル、カルボキシル、及びカルボニルなどの酸素含有基;例えばアミノ、アミド、ニトロ、イソシアナト、アジド、ジアゾ、ヒドラジノ、アゾ、アゾキシル、及びシアノなどの窒素含有基;チオ、スルホン、スルホキシド、及びスルフィドなどの硫黄含有基;並びに例えばアリル、アクリロイル、及びメタクリロイルなどのエチレン不飽和基、並びにマレイン酸及びマレイミドが含まれるが、それに限定されるわけではない。当該官能基は置換されていることがある。置換された基中の置換基の例には、アルキル、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、アミド、イミノ、及びその組合せが含まれるが、それに限定されるわけではない。当該官能基は、例えばヘテロ原子も有することがある。ヘテロ基のヘテロ原子の例には、硫黄、リン、酸素、窒素、及びその組合せが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0026】
生体有益性及び生体活性薬剤
本発明において、薬剤をポリマーと混和、混合、結合、又は他の方法で組合せることができる。その薬剤は、生体有益性、生体活性、診断用、可塑化性のことがあり、またこれらの性質の組合せを有することもある。
【0027】
「生体活性薬剤」は、ポリマーと混合、混和、結合、又は他の方法で組合せて、治療効果、予防効果、治療効果と予防効果との両方、又は他の生体活性効果をもたらすことができる部分である。生体活性薬剤には、小分子、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、アミノ酸、オリゴペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質が含まれるが、それに限定されるわけではない。さらに、本発明の生体活性薬剤は、ポリマーの部分との結合を維持することがあるし、またポリマーから放出されることもある。
【0028】
「生体有益性薬剤」もまた、混合、混和、結合、又は他の方法でポリマーと組合せて、必ずしもそのポリマーから放出されずに哺乳動物に生体有益性をもたらすことができる薬剤である。ポリマー又はコーティングを、生体有益性薬剤で修飾して、例えば、(i)非血栓形成性にすることによりタンパク質の吸収を阻害又は防止して血栓塞栓の形成を回避するか、(ii)例えば内皮化を制御することにより血管内に健康で機能性の内皮層が形成することなどによって治癒を促進するか;又は(iii)例えばインプラント表面で生体模倣体(biomimic)として作用する生体有益性薬剤などによって非炎症性であって、事象のカスケードに導き炎症を生成しうる単球及び好中球の誘引を受動的に回避することができる。
【0029】
生体有益性薬剤は、ポリマーと混和、混合、結合、又は他の方法で組合せることができる。ポリマー又はコーティングは、生体活性薬剤で修飾して、例えば血管平滑筋細胞の活性を阻害するか、又は平滑筋細胞の遊走もしくは増殖を制御して再狭窄を阻害することができる。
【0030】
「診断用薬剤」は、例えば哺乳動物における疾患又は健康状態の存在、性質、又は程度の診断に使用することができる生体活性薬剤の一種である。一実施形態では、診断用薬剤は、患者の内部領域の画像化及び/又は患者における疾患の存在もしくは不在の診断の方法と共に使用することができる任意の薬剤でありうる。診断用薬剤には、例えば超音波画像法、磁気共鳴画像法(MRI)、核磁気共鳴法(NMR)、コンピュータ断層法(CT)、電子スピン共鳴法(ESR)、核医学画像法、光学画像法、エラストグラフィー、高周波(RF)、及びマイクロ波レーザーと共に使用するための造影剤が含まれる。診断用薬剤には、画像化法が採用されようとされまいと、患者における疾患又は他の状態の診断を容易にするのに有用な任意の他の薬剤も含まれることがある。
【0031】
一部の実施形態では、生体有益性薬剤は、ポリマーから放出されるか、又は分離することがある。他の実施形態では、生体有益性薬剤は、その薬剤をポリマーと結合させる反応性基を有することがある。反応性基の例には、ヒドロキシル、カルボキシル、及びアミノ基が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0032】
一部の実施形態では、その薬剤の分子量は、哺乳動物からのその薬剤の排出を確実にするために約40000ダルトン以下、又はそれに収まる任意の範囲であるべきである。一実施形態では、その薬剤の分子量は、約300ダルトンから約40000ダルトン、約8000ダルトンから約30000ダルトン、約10000ダルトンから約20000ダルトン、又はそれに収まる任意の範囲に及ぶ。放出された際にその生体有益性薬剤が体内で急速に分解されるならば、その薬剤の分子量は患者の安全を損なわずに約40000ダルトンを超えうるであろう。当業者は、生体有益性薬剤の群、亜群、及び個々の一部が本発明の一部の実施形態では使用できないことを承認しているであろうと認識されたい。
【0033】
生体有益性薬剤の例には、例えばカルボキシメチルセルロース、ポリアルキレングリコール、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(2−ヒドロキシメタクリル酸エチル)、ポリ(3−ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化デキストラン、ポリホスファゼン、ポリオルトエステル、ポリチロシンカーボネート、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、グリコサミノグリカン、キチン、キトサン、並びにその任意の誘導体、アナログ、ホモログ、同族体、塩、コポリマー及び組合せなどの上に挙げたポリマーの多くが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0034】
ヘパリン誘導体の例には、例えばヘパリンナトリウム、ヘパリンカリウム、ヘパリンリチウム、ヘパリンカルシウム、ヘパリンマグネシウム、及び低分子量ヘパリンなどのヘパリンの土類金属塩が含まれるが、それに限定されるわけではない。ヘパリン誘導体の他の例には、第四アンモニウム化合物と複合体化したヘパリン、ヘパリン硫酸、へパリノイド、ヘパリン系化合物、及び疎水性物質で誘導体化されたヘパリンが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0035】
ポリアルキレングリコールの例には、PEG、mPEG、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール、並びにその任意の誘導体、アナログ、ホモログ、同族体、塩、コポリマー、及び組合せが含まれるが、それに限定されるわけではない。一部の実施形態では、そのポリアルキレングリコールはPEGである。他の実施形態では、そのアルキレングリコールはmPEGである。他の実施形態では、そのポリアルキレングリコールはエチレングリコール−ヒドロキシ酪酸コポリマーである。
【0036】
生体有益性薬剤として使用できるコポリマーには、上述の薬剤例の任意の誘導体、アナログ、ホモログ、同族体、塩、コポリマー、及び組合せが含まれるが、それに限定されるわけではない。本発明において生体有益性薬剤として使用できるコポリマーの例には、D−グルクロン酸又はL−イズロン酸とN−アセチル−D−ガラクトサミンとのコポリマーであるデルマタン硫酸;エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマー;PEGとヒアルロン酸とのコポリマー;PEGとヘパリンとのコポリマー;PEGとヒルジンとのコポリマー;ポリ(L−リシン)とPEGとのグラフトコポリマー;例えばエチレングリコール−ヒドロキシ酪酸コポリマーなどのPEGとポリヒドロキシアルカノエートとのコポリマー;及びその任意の誘導体、アナログ、同族体、塩、又は組合せが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0037】
一部の実施形態では、生体有益性薬剤として使用できるコポリマーは、PEGとヒアルロン酸とのコポリマー、PEGとヒルジンとのコポリマー、及びその任意の誘導体、アナログ、同族体、塩、コポリマー、又は組合せでありうる。他の実施形態では、生体有益性薬剤として使用できるコポリマーは、PEGと例えばポリヒドロキシ酪酸などのポリヒドロキシアルカノエートとのコポリマー;及びその任意の誘導体、アナログ、同族体、塩、コポリマー、又は組合せである。
【0038】
生体活性薬剤には、抗増殖剤、抗悪性腫瘍薬、有糸分裂阻害薬、抗炎症薬、抗血小板薬、抗凝固剤、抗フィブリン薬、抗トロンビン薬、抗生物質、抗アレルギー剤、抗酸化剤、並びにその任意のプロドラッグ、代謝物、アナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩及び組合せが含まれるが、それに限定されるわけではない。当業者は、生体活性薬剤の群、亜群、及び個々の一部が本発明の一部の実施形態では使用できないことを承認しているであろうと認識されたい。
【0039】
抗増殖剤には、例えばアクチノマイシンD、アクチノマイシンIV、アクチノマイシンI、アクチノマイシンX、アクチノマイシンC、及びダクチノマイシン(COSMEGEN(登録商標)、Merck & Co.,Inc.)が含まれる。抗悪性腫瘍薬又は有糸分裂阻害薬には、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Co.)、ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Aventis S.A.)、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、Pfizer,Inc.)、マイトマイシン(MUTAMYCIN(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Co.)、並びにその任意のプロドラッグ、代謝物、アナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、及び組合せが含まれる。
【0040】
抗血小板薬、抗凝固剤、抗フィブリン薬、及び抗トロンビン薬には、例えばヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、へパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、ホルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン及びプロスタサイクリンアナログ、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン薬)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜レセプターアンタゴニスト抗体、組換えヒルジン、トロンビン阻害剤(ANGIOMAX(登録商標)、Biogen,Inc.)、並びにその任意のプロドラッグ、代謝物、アナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、及び組合せが含まれる。
【0041】
細胞分裂抑制剤又は抗増殖剤には、例えばアンギオペプチン、カプトプリル(CAPOTEN(登録商標)及びCAPOZIDE(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Co.)、シラザプリル、又はリシノプリル(PRINIVIL(登録商標)及びPRINZIDE(登録商標)、Merck & Co.,Inc.)などのアンギオテンシン変換酵素阻害剤;ニフェジピンなどのカルシウムチャンネル遮断薬;コルヒチン;線維芽細胞成長因子(FGF)拮抗薬、魚油(オメガ3脂肪酸);ヒスタミン拮抗薬;ロバスタチン(MEVACOR(登録商標)、Merck & Co.,Inc.);血小板由来成長因子(PDGF)レセプターに特異的な抗体を非限定的に含むモノクローナル抗体;ニトロプルシド;ホスホジエステラーゼ阻害剤;プロスタグランジン阻害剤;スラミン;セロトニン遮断薬;ステロイド;チオプロテアーゼ阻害剤;トリアゾロピリミジンを非限定的に含むPDGF拮抗薬;一酸化窒素、並びにその任意のプロドラッグ、代謝物、アナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、及び組合せが含まれる。
【0042】
抗アレルギー剤には、ペミロラストカリウム(ALAMAST(登録商標)、参天製薬株式会社)、並びにその任意のプロドラッグ、代謝物、アナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、及び組合せが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0043】
本発明に有用な他の生体活性薬剤には、フリーラジカルスカベンジャー;一酸化窒素ドナー;ラパマイシン;エベロリムス;タクロリムス;40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン;40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン;40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン;米国特許第6,329,386号明細書に記載されているようなテトラゾール含有ラパマイシンアナログ;エストラジオール;クロベタゾール;イドキシフェン;タザロテン;α−インターフェロン;上皮細胞などの宿主細胞;遺伝子操作された上皮細胞;デキサメタゾン;並びにその任意のプロドラッグ、代謝物、アナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、及び組合せが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0044】
フリーラジカルスカベンジャーには、2,2’,6,6’−テトラメチル−1−ピペリニルオキシフリーラジカル(TEMPO)、4−アミノ−2,2’,6,6’−テトラメチル−1−ピペリニルオキシフリーラジカル(4−アミノ−TEMPO)、4−ヒドロキシ−2,2’,6,6’−テトラメチル−ピペリデン−1−オキシフリーラジカル(TEMPOL)、2,2’,3,4,5,5’−ヘキサメチル−3−イミダゾリニウム−1−イルオキシメチルスルフェートフリーラジカル、16−ドキシル−ステアリン酸フリーラジカル、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体(SODm)、並びにその任意のアナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、及び組合せが含まれるが、それに限定されるわけではない。一酸化窒素ドナーには、S−ニトロソチオール、亜硝酸塩、N−オキソ−N−ニトロソアミン、一酸化窒素シンターゼの基質、スペルミンジアゼニウムジオレートなどのジアゼニウムジオレート、並びにその任意のアナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、及び組合せが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0045】
診断用薬剤の例には放射線不透性物質があり、それには、X線により検出することができるヨウ素、又は例えばイオヘキソール及びイオパミドールなどのヨウ素誘導体を含む物質が含まれるが、それに限定されるわけではない。例えば放射性同位体などの他の診断用薬剤は、放射能放出を追跡することにより検出することができる。他の診断用薬剤には、磁気共鳴画像法(MRI)、超音波、並びに例えば蛍光及び陽電子放射トモグラフィー(PET)などの他の画像化手順により検出することができる薬剤が含まれうる。
【0046】
MRIにより検出することができる薬剤の例には、非限定的にガドリニウムキレート化合物を含む常磁性薬剤である。超音波により検出することができる薬剤の例にはパーフレキサンが含まれるが、それに限定されるわけではない。蛍光剤の例にはインドシアニングリーンが含まれるが、それに限定されるわけではない。診断用PETで使用される薬剤の例には、フルオロデオキシグルコース、フッ化ナトリウム、メチオニン、コリン、デオキシグルコース、ブタノール、ラクロプリド、スピペロン、ブロモスピペロン、カルフェンタニル、及びフルマゼニルが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0047】
可塑化剤
用語「可塑剤」及び「可塑化剤」は、本発明において相互交換可能に使用でき、上記の任意の薬剤を含む任意の薬剤を表し、その薬剤をポリマー組成物に添加してその組成物の機械的性質又はその組成物から形成される生成物の機械的性質を変更することができる。例えばその組成物中のポリマー間の移動を作り出すかもしくは高めることを含みうる計画目標を立てて、結晶度を低減するために、ガラス転移温度(T)を低下するために、又はポリマー間の分子間力を低減するために可塑剤を添加することができる。
【0048】
変更される機械的性質には、ヤング率、引張り強さ、衝撃強さ、及び引裂き強さが含まれるが、それに限定されるわけではない。可塑剤は、モノマー性、ポリマー性、コポリマー性、又はその組合せのことがあり、共有結合を伴うか又は伴わずにポリマー組成物に添加することができる。可塑剤の選択が、溶媒の例えば極性などを選択することと同様の考慮を必要とする点で、可塑化及び可溶性は類似している。さらに、コポリマー化によりポリマーの分子構造を変化させることにより共有結合形成により可塑化をもたらすこともできる。
【0049】
可塑化剤の例には、シングルブロックポリマー、マルチブロックポリマー、及びコポリマーなどの低分子量ポリマー;乳酸のエチル末端オリゴマーなどのオリゴマー;有機小分子;ヒドロキシル基を有するか又は有さない水素結合形成有機化合物;脂肪族ヒドロキシルを有する低分子量ポリオールなどのポリオール;ブタノール、ペンタノール、及びヘキサノールなどのアルカノール;糖アルコール及び糖アルコール無水物;ポリアルキレングリコールなどのポリエーテル;クエン酸エステル、フタル酸エステル、セバシン酸エステル、及びアジピン酸エステルなどのエステル;ポリエステル;脂肪族酸;動物タンパク質及び植物タンパク質などのタンパク質;例えば植物油及び動物油などの油;シリコーン;アセチル化モノグリセリド;アミド;アセトアミド;スルホキシド;スルホン;ピロリドン;オキサ酸;ジグリコール酸;並びにその任意のアナログ、誘導体、コポリマー、及び組合せが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0050】
一部の実施形態では、可塑剤には、例えばカプロラクトンジオール、カプロラクトントリオール、ソルビトール、エリトリトール、グルシドール(glucidol)、マンニトール、ソルビトール、スクロース、及びトリメチロールプロパンなどの他のポリオールが含まれるが、それに限定されるわけではない。他の実施形態では、可塑剤には、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、スチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールなどのグリコール;例えばモノプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル;並びにその任意のアナログ、誘導体、コポリマー、及び組合せが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0051】
他の実施形態では、可塑剤には、例えばジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、カプリン−カプリル酸トリエチレングリコールなどのグリコールエステル;例えばモノステアリン酸グリセロールなどのモノステアリン酸エステル;クエン酸エステル;有機酸エステル;芳香族カルボン酸エステル;脂肪族ジカルボン酸エステル;例えばステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、及びセバシン酸エステルなどの脂肪酸エステル;トリアセチン;例えばフタル酸ポリエステル、アジピン酸ポリエステル、グルテートポリエステル(glutate polyester)などのポリエステル;例えばフタル酸ジアルキル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸イソプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、及びフタル酸ジイソデシルなどのフタル酸エステル;例えばセバシン酸アルキル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジブチルなどのセバシン酸エステル;例えば乳酸エステル、乳酸アルキル、乳酸エチル、乳酸ブチル、グリコール酸アリル、グリコール酸エチル、及びモノステアリン酸グリセロールなどのヒドロキシルエステル;例えばアセチルクエン酸アルキル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリヘキシル、クエン酸アルキル、クエン酸トリエチル、及びクエン酸トリブチルなどのクエン酸エステル;例えばリシノール酸メチルなどのヒマシ油のエステル;例えばトリメリト酸エステル、安息香酸エステル、及びテレフタル酸エステルなどの芳香族カルボン酸エステル;例えばアジピン酸ジアルキル、アジピン酸アルキルアリルエーテルジエステル、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、クエン酸エステル、及び酒石酸エステルなどの脂肪族ジカルボン酸エステル;並びに例えばモノ−、ジ−、又はトリ−酢酸グリセロール、及びスルホコハク酸ジエチルナトリウムなどの脂肪酸エステルなどのエステル;並びにその任意のアナログ、誘導体、コポリマー、及び組合せが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0052】
他の実施形態では、可塑剤には、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、及びポリエチレン/プロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール;例えばPEG400及びPEG6000などの低分子量ポリエチレングリコール;例えばメトキシポリエチレングリコール(mPEG)などのPEG誘導体などのエーテル及びポリエーテル;並びに例えばジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、及びカプリン−カプリル酸トリエチレングリコールなどのエステル−エーテル;並びにその任意のアナログ、誘導体、コポリマー、及び組合せが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0053】
他の実施形態では、可塑剤には、例えばオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、及びパルミチン酸アミドなどのアミド;例えばジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミドなどのアルキルアセトアミド;例えばジメチルスルホキシドなどのスルホキシド;例えばn−メチルピロリドンなどのピロリドン;例えばテトラメチレンスルホンなどのスルホン;例えばオキサ一酸、3,6,9−トリオキサウンデカン二酸及びポリオキサ二酸などのオキサ二酸、アセチル化クエン酸のエチルエステル、アセチル化クエン酸のブチルエステル、アセチル化クエン酸のカプリルエステル、及びジメチロールプロピオン酸などのジグリコール酸などの酸;並びにその任意のアナログ、誘導体、コポリマー、及び組合せが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0054】
他の実施形態では、可塑剤は、エポキシ化大豆油;亜麻仁油;ヒマシ油;ココナッツ油;ヤシ油;エポキシ化タレート(epoxidized tallate);並びにステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、及びセバシン酸などの脂肪酸エステルを含むが、それに限定されるわけではない植物油でありうる。他の実施形態では、可塑剤は、アンゲリカ油、アニス油、アルニカ油、アウランティ(aurantii)油、吉草油、バシリチ(basilici)油、ベルガモット油、サボリ油、ブッコ(bucco)油、樟脳、カルダモン油、カッシア油、ケノポジ油、キク油、シナエ(cinae)油、シトロネラ油、レモン油、かんきつ油、コスツス(costus)油、ウコン油、カーリナ(carlina)油、エレミ油、タラゴン油、ユーカリ油、ウイキュウ油、松葉油、松油、フィリキス(filicis)油、ガルバヌム油、ゴールテリエ(gaultheriae)油、ゼラニウム油、ユソウボク油、ヘーゼルウォルト(hazelwort)油、イリス油、オトギリソウ油、菖蒲油、カモミール油、モミの葉油、ニンニク油、コリアンダ油、キャラウェイ油、ラウリ(lauri)油、ラベンダー油、レモングラス油、ラビジ油、ベイ油、ルプリ−ストロブリ(lupuli−strobuli)油、メース油、マジョラン油、マンダリン油、メリッサ油、メントール、ミレフォリ(millefolii)油、ハッカ油、サルビア油、ニクズク油、スパイクナード油、丁字油、ネロリ油、ニアウリ、乳香油、オノニディス(ononidis)油、オポプラナクス(opopranax)油、オレンジ油、オレガノ油、ネコノヒゲ油、パッチュリ油、パセリ油、プチグレーン油、ペパーミント油、ヨモギギク油、ローズウッド油、バラ油、ローズマリー油、ヘンルーダ油、サビネ(sabinae)油、サフラン油、セージ油、ビャクダン油、サッサフラス油、セロリ油、カラシ油、セルフィリ(serphylli)油、イモーテル油、チャノキ油、テレビン油、タイム油、杜松油、フランキンセンス油、ヒソップ、ツェーデル油、桂皮油、及びイトスギ油を含むが、それに限定されるわけではない精油;及び例えば魚油などの他の油;並びにその任意のアナログ、誘導体、コポリマー、及び組合せでありうる。
【0055】
可塑剤の分子量は、約10ダルトンから約50000ダルトン、約25ダルトンから約25000ダルトン、約50ダルトンから約10000ダルトン、約100ダルトンから約5000ダルトン、約200ダルトンから約2500ダルトン、約400ダルトンから約1250ダルトン、及びそれに収まる任意の範囲に及びうる。本発明に使用される可塑剤の量は、ポリマーと薬剤又は薬剤の組合せとの合計重量に基づく重量パーセントとして、約0.001%から約70%、約0.01%から約60%、約0.1%から約50%、約0.4%から約40%、約0.6%から約30%、約0.75%から約25%、約1.0%から約20%、及びそれに収まる任意の範囲に及びうる。
【0056】
上記の可塑剤の任意の1つ又は任意の組合せを本発明に使用できることを認識すべきである。例えば可塑剤を混和、混合、結合、又は他の方法で組合せて所望の機能を得ることができる。一部の実施形態では、ポリマーと任意の薬剤又は薬剤の組合せとの合計重量に基づく重量パーセントとして、約0.001%から約20%、約0.01%から約15%、約0.05%から約10%、約0.75%から約7.5%、約1.0%から約5%、又はそれに収まる任意の範囲に及ぶ量で第2の可塑剤を第1の可塑剤と組合せる。
【0057】
可塑剤を混和、混合、結合、又は他の方法で他の活性薬剤と組合せて、例えば相加的な治療、予防、及び/又は診断機能などの他の所望の機能を得ることができることも認識すべきである。一部の実施形態では、エーテル、アミド、エステル、オルトエステル、無水物、ケタール、アセタール、及び全芳香族カーボネート結合を介して可塑剤を他の薬剤と結合させることができる。それらを下にさらに詳細に論じる。
【0058】
本発明の各薬剤は、生体有益性、生体活性、診断用、可塑化性、又はその組合せである性質を有しうることも認識すべきである。例えば生体有益性薬剤などの薬剤の分類は、生体活性薬剤、診断用薬剤、及び/又は可塑化剤としてのその薬剤の使用を除外しない。同様に、生体活性薬剤としての薬剤の分類は、診断用薬剤、生体有益性薬剤、及び/又は可塑化剤としてのその薬剤の使用を除外しない。さらに、可塑化剤としての薬剤の分類は、生体有益性薬剤、生体活性薬剤、及び/又は診断用薬剤としてのその薬剤の使用を除外しない。
【0059】
上記薬剤のうち任意のものを、例えば医療用具又は医療用具用のコーティングの形態などの任意の形態で本発明のポリマーと、混合、混和、又は他の方法で結合させることができることも認識すべきである。一例として、本発明のポリマーでコーティングされたステントは、パクリタキセル、ドセタキセル、ラパマイシン、ABT−578、又はエベロリムスを有しうる。
【0060】
薬剤の濃度
本発明の薬剤を混和、混合、結合、又は他の方法で他の薬剤と組合せて、ポリマー組成物の他の所望の機能を得ることができる。ポリマー組成物を構成する薬剤の量は、薬剤の生物学的活性;年齢、体重、応答、及び対象の過去の病歴、アテローム性動脈硬化疾患の種類、糖尿病などの全身性疾患の存在;並びに薬剤又は薬剤の組合せの薬物動態学及び薬力学的作用を非限定的に含む多様な要因により変動する。これらなどの要因は、哺乳動物に薬剤が投与された場合に当業者により日常的に考慮される。
【0061】
有効量は、例えばインビトロ系又は動物モデル系から外挿することができる。一部の実施形態では、薬剤又は薬剤の組合せは、約0.001%から約75%、約0.01%から約70%、約0.1%から約60%、約0.25%から約60%、約0.5%から約50%、約0.75%から約40%、約1.0%から約30%、約2%から約20%、及びそれに収まる任意の範囲に及ぶ濃度を有する。ここで、百分率はポリマーと薬剤又は薬剤の組合せとの合計重量に基づく。
【0062】
コポリマー及び薬剤
本発明のポリエステルは、ポリエステルコポリマーの形成において薬剤と連結することができ、ここで、その薬剤はペンダント基又は鎖中基でありうる。本発明には、混和物、混合物、及び他の組合せが含まれるが、例えば一部の混和物又は混合物が所望よりも高い速度で浸出する薬剤を含むおそれがあることから、コポリマーが性能の安定性を提供することができる。コポリマー化により改善される組成物の例は、PEGとポリエステルとの組成物である。任意の理論にも作用機作にも縛られることを意図しないが、コポリマーの形成は、相分離による別個の層の形成を防止することができ、例えばPEGなどの構成要素をずっと高濃度でポリエステルに添加して所望の性質を得ることを可能にする。さもなければ、相分離が疎水性及び親水性物質の当該混和物又は混合物に生じるおそれがある。
【0063】
一部の実施形態では、再現性でありうる予定された結晶度のために本発明の組成物を設計することができる。任意の理論にも作用機作にも縛られることを意図しないが、結晶度はポリマーの水膨潤及び加水分解不安定性に影響することがあり、それにより薬剤の生体吸収速度及び放出速度に影響する。他の実施形態では、例えば一部の適用でより望しいとみなすことのできる薬剤放出ステント又はコーティングなどの製品を用意するために、体積浸食よりも表面浸食を示すように本発明の組成物を設計することができる。
【0064】
本発明のポリマーは、A−部分(A)と、B−部分(B)と、任意の結合(L)とを有するポリマー担体を有しうる。そのポリマー担体は、任意の薬剤(X)と、Xをそのポリマーに連結する任意の結合(L)とをさらに有しうる。このポリマー組成物は、一般に次式(I)により表すことができる:
【化2】

【0065】
式(I)において、R及びRは任意であり、置換、非置換、ヘテロ−、直鎖、分岐、環状、飽和、及び不飽和脂肪族基;並びに置換、非置換、及びヘテロ−芳香族基からなる群から独立して選択される。R及びRは、置換、非置換、ヘテロ−、直鎖、分岐、環状、飽和、及び不飽和脂肪族基;並びに置換、非置換、及びヘテロ−芳香族基からなる群から独立して選択される。Lはポリマー主鎖における任意の結合であり、Xは任意の薬剤である。LはXをポリマーに連結する任意の結合であり、m及びnは0に等しくない整数である。
【0066】
一部の実施形態では、Lは、置換、非置換、ヘテロ−、直鎖、分岐、環状、飽和又は不飽和脂肪族基;及び置換又は非置換芳香族基を有しうる。他の実施形態では、Lは約0から約50個の炭素原子、約2から約40個の炭素原子、約3から約30個の炭素原子、約4から約20個の炭素原子、約5から約10個の炭素原子、及びそれに収まる任意の範囲を有しうる。他の実施形態では、Lは、例えばジスルフィドなどの非炭素種を有しうる。
【0067】
他の実施形態では、Lは、ポリビニルピロリドン;カルボキシメチルセルロース;ポリエチレン;ポリプロピレン;ヒアルロン酸、ヘパリン、ポリスチレンスルホン酸、ホスホリルコリン;置換メタクリル酸エステル;PEG、及びmPEG、アミノ末端PEG、又はカルボキシル末端PEGなどのPEG誘導体を非限定的に含む置換又は非置換ポリアルキレングリコール;ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマー、エチレングリコール−ヒドロキシ酪酸コポリマー、又はそのコポリマー及び組合せを含みうる。一実施形態では、ポリアルキレングリコールはPEGである。他の実施形態では、ポリアルキレングリコールはmPEGなどのPEG誘導体を含みうる。他の実施形態では、LはPEGのコポリマー又はアミノ末端PEGなどのPEG誘導体のコポリマーを含みうる。他の実施形態では、LはPEGとヘパリンとのコポリマー、PEGとヒルジンとのコポリマー、又はその組合せを含みうる。
【0068】
任意の薬剤Xを任意のユニット間結合でありうるLによりポリマーに連結することができる。Lの選択は、ポリマー担体内の結合の強度又は安定性に比べた、Xとポリマー担体との間の結合の相対強度又は安定性の制御を見込んでいる。当該制御は、ポリマー担体から分子の付着を実質的に有さない薬剤の制御放出を見込んでいる。さらに、Xは、生体有益性、生体活性、診断用、可塑化性のことがあり、またこれらの性質の組合せを有しうる。Lの選択を下にさらに詳細に論じる。
【0069】
上に論じたように、本発明のポリエステルは、少なくとも1つのポリカルボン酸又はその誘導体と、少なくとも1つのポリオール又はその誘導体との反応生成物を含む。本発明に使用されるポリオールは、2つ以上のヒドロキシル基を有する有機化合物でありうる。一部の実施形態では、このポリオールには以下の式(II)により表される化合物が含まれるが、それに限定されるわけではない:
【化3】


式中、Rは、置換、非置換、ヘテロ−、直鎖、分岐、環状、飽和もしくは不飽和脂肪族基;又は置換、非置換、もしくはヘテロ−芳香族基のことがあり;iは整数である。
【0070】
一部の実施形態では、そのポリオールはジオールである。使用することができるジオールの例には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ジヒドロキシアセトン、セリノール、例えば1,4−cis−シクロヘキサンジメタノールなどのシクロヘキサンジメタノール、及びその組合せが含まれる。他の実施形態では、そのジオールは、例えば1,4−ベンゼンジメタノール(p−フェニレンジカルビノール又はp−キシレン−α,α’−ジオールとしても公知である)などの芳香族ジオールでありうる。他の実施形態では、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、及びソルビトールなどのポリオールは、架橋形成の可能性が考慮される限り有用である。架橋を阻止するために1つ又は複数の基を保護すること、架橋を意図的に形成させること、又は特定の反応性基に選択的な化学的性質を使用することによりポリオールを選択的に重合することができる。他の実施形態では、セリノール及びジアセトンアルコールなどの機能性ジオールも使用することができる。
【0071】
他の実施形態では、Rは、置換又は非置換ポリアルキレングリコールのことがあり、それには、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマー、エチレングリコール−ヒドロキシ酪酸コポリマー、又はそのコポリマー及び組合せが含まれるが、それに限定されるわけではない。一実施形態では、そのポリアルキレングリコールはPEGである。他の実施形態では、そのポリアルキレングリコールは、アミノ末端PEG又はカルボキシル末端PEGなどのPEG誘導体である。他の実施形態では、Rは、PEGのコポリマー又はアミノ末端PEGなどのPEG誘導体のコポリマーでありうる。そのPEGは、約100ダルトンから約40000ダルトン、約200ダルトンから約20000ダルトン、約300ダルトンから約10000ダルトン、約400ダルトンから約5000ダルトン、約500ダルトンから約2000ダルトン、又はそれに収まる任意の範囲に及ぶ分子量を有することがある。当業者は、ポリオールの群、亜群、及び個々の一部が本発明の一部の実施形態で使用できないことを承認しているであろうと認識されたい。
【0072】
本発明に使用されるポリカルボン酸は、2つ以上のカルボキシル基を有する有機酸でありうる。一部の実施形態では、そのポリカルボン酸は以下の式(III)により表される:
【化4】


式中、Rは任意であり、置換、非置換、ヘテロ−、直鎖、分岐、環状、飽和、又は不飽和脂肪族基;及び置換又は非置換芳香族基でありえ;iは整数である。
【0073】
ポリカルボン酸の例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、及びその組合せが含まれるが、それに限定されるわけではない。当業者は、ポリカルボン酸の群、亜群、及び個々の一部が本発明の一部の実施形態で使用できないことを承認しているであろうと認識されたい。
【0074】
一部の実施形態では、そのポリカルボン酸にはジカルボン酸及びトリカルボン酸が含まれ、そのどちらも脂肪族又は芳香族構造でありうる。他の実施形態では、Rは、メチレン基[−(CH−]又はフェニレン基[−C]を含み、式中、yは0から16の間の整数である。他の実施形態では、Rはエポキシ基で置換されていることがある。他の実施形態では、Rには置換又は非置換ポリアルキレングリコールが含まれることがあり、それには、PEG及びアミノ末端PEG又はカルボキシル末端PEGなどのPEG誘導体;ポリプロピレングリコール;ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマー;エチレングリコール−ヒドロキシ酪酸コポリマー;又はそのコポリマー及び組合せが含まれるが、それに限定されるわけではない。一実施形態では、そのポリアルキレングリコールはPEGである。別の実施形態では、そのポリアルキレングリコールはアミノ末端PEGなどのPEG誘導体である。別の実施形態では、Rは、PEGのコポリマー又はアミノ末端PEGなどのPEG誘導体のコポリマーでありうる。
【0075】
他の実施形態では、芳香族ジカルボン酸は、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、及びその組合せなどのフタル酸の異性体でありうる。他の実施形態では、芳香族ジカルボン酸のフェニル環は、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、及び重合を妨害しないであろう上に定義された他の任意の官能基などの他の基で置換されていることがある。
【0076】
ポリオールと同様に、本発明のポリエステルを産生するためにポリカルボン酸を使用する場合に、架橋形成を制御するために注意を払わねばならない。それは、架橋形成が高い粘度を有するか、ゲル化しているか、又は別様に加工が困難なポリマーを生成するおそれがあるからである。一部の実施形態では、異なる反応性を有するカルボキシル基を有するポリカルボン酸を選択することにより架橋形成を制御することができる。他の実施形態では、例えばベンジルエステルを形成させることにより、化学的部分で1つ又は複数のカルボキシル基を保護することにより架橋形成を制御することができる。一部の実施形態では、そのポリカルボン酸には、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、トリカルバリル酸、トリメリト酸、及びトリメリト酸無水物が含まれるが、それに限定されるわけではない。例えば反応物中のトリメリト酸無水物を1当量のアミン又はヒドロキシ官能性化合物と組合せることで、本質的にカルボキシル基の1つを官能化又は保護することができる。
【0077】
少なくとも1つのジオール又はその誘導体を少なくとも1つのジカルボン酸又はその誘導体と反応させることによりポリエステルを形成させることができる。一実施形態では、ジオール2当量をジカルボン酸2当量及び酸触媒と組合せることができる。酸触媒の例には、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、及び硫酸が含まれるが、それに限定されるわけではない。その混合物を例えばトルエン又はクロロベンゼンなどの適切な溶媒に溶解させることができる。次に、その混合物を加熱還流して、ディーンスタークトラップを使用した共沸蒸留によって、発生した水を除去する。
【0078】
別の実施形態では、無水条件でジオール2当量をハロゲン化ジアシル2当量と反応させることができる。例えばピリジン又はトリエチルアミンなどの非求核塩基を使用して、発生した塩酸を中和する。別の実施形態では、ジオール2当量をジカルボン酸二無水物誘導体2当量と反応させることができる。一例では、酢酸の二無水物を使用することができ、重合の間に形成した酢酸を蒸留により除去することができる。
【0079】
別の実施形態では、三塩化アルミニウム、四塩化チタン、チタンテトラブトキシド、及び塩化亜鉛などのルイス酸型触媒を使用したエステル交換により2当量のジオール及び2当量のジカルボン酸エステルを重合することができる。一例では、チタンテトラブトキシドを0.025から0.25%(w/w)のレベルでジオール及びジカルボン酸エステルと組合せ、得られた反応混合物を約140℃から約260℃の範囲の温度まで加熱し、同時に少なくとも約10−2barの真空を適用して、遊離したアルコールを除去することができる。一部の実施形態では、その真空は約10−2barから約10−5barの範囲に及ぶことがある。
【0080】
様々な組合せのジオール及びジカルボン酸を使用することができる。一実施形態では、1つのジオール2当量を使用することができる。別の実施形態では、1つのジオール1当量ともう1つのジオール1当量との混合物を使用することができる。別の実施形態では、1つのジカルボン酸2当量を使用することができる。別の実施形態では、1つのジカルボン酸1当量ともう1つのジカルボン酸1当量との混合物を使用することができる。任意の実施形態では、そのジカルボン酸は、脂肪族、芳香族、又はその組合せでありうる。
【0081】
一部の実施形態では、ポリエステルのファミリーは以下の式(IV)により表すことができる:
【化5】


式中、Rは、例えばp−、m−、又はo−フェニレンなどのフェニレン基であり;xは、約2から約20、約3から約12、約4から約8、又はそれに収まる任意の範囲に及ぶ整数であり;yは、約0から約16、約1から約12、約2から約8、又はそれに収まる任意の範囲に及ぶ整数であり;mは約5から約2250、約10から約2000、約15から約1500、約20から約1000、又はそれに収まる任意の範囲に及ぶ整数であり;nは、約5から約2900、約10から約2500、約15から約2000、約20から約1500、又はそれに収まる任意の範囲に及ぶ整数である。
【0082】
一実施形態では、ポリエステルは以下の式(V)により表すことができる:
【化6】


式中、1つのジカルボン酸はテレフタル酸であり、整数x、y、m、及びnは上に定義される。
【0083】
別の実施形態では、ポリエステルは以下の式(VI)により表すことができる:
【化7】


式中、1つのジカルボン酸はイソフタル酸であり;整数x、y、m、及びnは上に定義される。
【0084】
別の実施形態では、ポリエステルは以下の式(VII)により表すことができる:
【化8】


式中、1つのジカルボン酸はフタル酸であり;整数x、y、m、及びnは上に定義される。
【0085】
別の実施形態では、ポリエステルは以下の式(VIII)により表すことができる:
【化9】


式中、1つのジカルボン酸はテレフタル酸であり、もう1つのジカルボン酸はアジピン酸であり、ポリオールは1,6−ヘキサンジオールである。
【0086】
上記のように、そのポリエステルは、選ばれたモル比で特定のジオールと二酸とを反応させることにより形成する。特定のジオールと二酸との組合せの例には、それぞれモル比2:1:1の1,3−プロパンジオール、テレフタル酸、及びアジピン酸;それぞれモル比2:1:1の1,4−ブタンジオール、テレフタル酸、及びセバシン酸;並びにそれぞれモル比2:1:1又は2:0.5:1.5のいずれかの1,6−ヘキサンジオール、テレフタル酸、及びアジピン酸が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0087】
I.ポリマーに付着した薬剤
薬剤を本発明のポリマーと組合せることができる様々な方法がある。その薬剤を、イオン的に、水素結合形成により、金属イオン配位を介して、もしくは共有結合的に、又は物理的連結形成によりポリマーと結合させることができる。一部の実施形態では、RからR、L、L、及び/又はXを化学的に官能化して、ペンダント基として薬剤をそのポリマーに連結するのに必要な官能基を用意することができる。連結の形成に使用することができる官能基の例は、上に記載されている。
【0088】
一部の実施形態では、RからR、L、L、及び/又はXに導入される官能基には、カルボン酸、アミン、チオール、アルコール、無水物、エステル、他の不飽和基、及びハロゲンが含まれるが、それに限定されるわけではない。本発明の他の実施形態では、エポキシ基を有する二酸を使用してポリエステルを生産させることができる。それは、エポキシ基が薬剤をポリマーに連結するために使用することができる高歪みの反応性基であるからである。当該二酸の例には、2,3−エポキシコハク酸、3,4−エポキシアジピン酸、又はジエポキシアジピン酸が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0089】
表面処理を使用して、ポリマー表面の薬剤の配置を局所化することができ、その処理には、例えば当業者に公知の化学的処理、機械的処理、及び化学的処理と機械的処理とを組合せたものが含まれる。機械的表面処理には、摩擦、研磨、及び表面へのレーザーエネルギー適用が含まれるが、それに限定されるわけではない。レーザー表面処理には、レーザーエネルギーを適用して加熱、酸化、熱分解、活性化、又は化学結合を開裂することが含まれる。化学的表面処理には、例えばクロム酸エッチングなどのエッチング;オゾン処理;ヨウ素処理;ナトリウム処理;表面グラフト化;陽極酸化処理;熱、火炎、UV、コロナ放電、及びプラズマ処理;並びにプライマーの使用が含まれるが、それに限定されるわけではない。一部の実施形態では、医療品が形成されてからその医療品を表面処理することができ、それは、医療品を形成させるために官能化ポリエステルを使用することに伴いうる問題を低減することができる。
【0090】
一部の実施形態では、表面処理は、例えばヒドロキシル、カルボニル、カルボン酸、及び−SOH基などの官能基を導入して、機械的連動のための部位を用意する根様の空洞を形成するためのクロム酸エッチングを含む。他の実施形態では、表面処理は、例えばテトラヒドロフランに溶解したナトリウム−ナフタレン錯体又はアンモニアに溶解したナトリウム−アンモニア錯体を含有するさらに攻撃的なエッチング溶液を適用して不飽和結合、カルボニル基、及びカルボキシル基を導入することを含む。他の実施形態では、表面処理は、ポリマー表面の結晶度を(N−H基が表面と平行に位置する)α形から(N−H基が表面に垂直に位置する)β形に改変するヨウ素処理を含む。他の実施形態では、表面処理は、典型的には多官能性化学物質であって、ポリマーと薬剤との間の化学架橋として働くプライマーの適用を含む。
【0091】
一部の実施形態では、表面処理は、例えば酢酸ビニルモノマーの存在下でポリエチレンをガンマ線に曝露して、そのポリエチレン表面に酢酸ビニルモノマーを化学的にグラフトすることなどの、ポリマー表面に化学物質を表面グラフトして、薬剤の付着のための官能基を用意することを含む。他の実施形態では、表面処理は、例えばカルボキシル基又はアミノ基などの官能基を導入するための、例えばAr、He、N、O、空気、及びNHなどの気体のイオンを用いたプラズマ処理を含む。他の実施形態では、表面処理は、例えばカルボニル、ヒドロキシル、ヒドロペルオキシド、アルデヒド、エーテル、エステル、及びカルボン酸基などの官能基、並びに不飽和結合を導入するための、通常は空気及び大気圧の存在下のコロナ放電を含む。
【0092】
一部の実施形態では、表面処理は、フリーラジカルメカニズムによりポリマー表面を酸化して、例えばヒドロキシル、カルボニル、カルボキシル、及びアミド基などの官能基を導入するための火炎処理を含む。他の実施形態では、表面処理は、フリーラジカルメカニズムにより熱風(約500℃)でポリマー表面を熱処理して、例えばカルボニル、カルボキシル、アミド、及びヒドロペルオキシド基などの官能基を作り出すことを含む。他の実施形態では、表面処理は、予め決定された波長の高強度紫外線(UV)を適用して官能基を作り出すことを含み、ここで、その工程は、例えば波長184nmを使用してポリエチレン表面を架橋するか、又は波長253.7nmを使用して架橋形成を回避して水素結合形成を誘導することができる。他の実施形態では、表面処理は、薬剤の存在下でポリマー表面を摩擦又は研磨して、その薬剤と直接反応するフリーラジカルを作り出すことを含む。
【0093】
薬剤をポリマーに連結するための官能基の選択は、その薬剤がポリマーからインビボで放出する能力に影響するであろう。式(X)では、例えばLはエステルであり、それは、一部の実施形態では望ましくないおそれがある。下に例示及び記載するように、Lの注意深い選択が、ポリマーの生分解の間の薬剤誘導体の発生に起因しうる安全性及び規制の問題を軽減することを助けることができる。
【0094】
一部の実施形態では、Lは、エーテル、アミド、イミン、エステル、オキシム、無水物、オルトエステル、全芳香族カーボネート、アセタール、ケタール、ウレタン、尿素、グリコシド、ジスルフィド、シロキサン結合、又はその組合せでありうる。他の実施形態では、Lには、アミド、尿素、ウレタン、エステル、セミカルバゾン、イミン、オキシム、無水物、ケタール、アセタール、オルトエステル、ジスルフィド、及び全芳香族カーボネートが含まれうるが、それに限定されるわけではない。一部の実施形態では、Lは、エステル、無水物、ケタール、アセタール、オルトエステル、又は全芳香族カーボネートでありうる。一部の実施形態では、Lは、無水物、ケタール、アセタール、オルトエステル、又は全芳香族カーボネートでありうる。一部の実施形態では、Lは、ケタール、アセタール、オルトエステル、又は全芳香族カーボネートでありうる。一部の実施形態では、Lは、アセタール、オルトエステル、又は全芳香族カーボネートでありうる。一部の実施形態では、Lは、オルトエステル又は全芳香族カーボネートでありうる。一部の実施形態では、Lは、例えば式(IX)により表される構造などの全芳香族カーボネートでありうる:
【化10】


式中、Rは任意であり、例えば置換、非置換、ヘテロ−、直鎖、分岐、環状、飽和、及び不飽和脂肪族基;置換及び非置換芳香族基;並びにその組合せから独立して選択することができる。下付き文字nは整数である。
【0095】
一部の実施形態では、そのポリエステルは以下の式(X)により表すことができる:
【化11】


式中、RからR、L、m、及びnは上に定義され;rは、約1から約100、約2から約80;約3から約70、約4から約60、約2から約20、約3から約30、約4から約40、約5から約50、及びそれに収まる任意の範囲に及ぶ整数である。
【0096】
式(X)において、その薬剤はmPEGである。mPEGを任意の官能基と連結することができる。例えばRからR及びLは、mPEGとのアミド結合生成を招く官能性を含むことがある。アミド結合は、そのポリマーの残りの安定性に比べて安定な結合とみなすことができる。アミド結合は、アミン末端mPEGと、RからR及びLのうち任意のものに存在するカルボキシル基とのコンジュゲーションに起因する。
【0097】
一部の実施形態では、ポリエステルは以下の式(XI)により表すことができる:
【化12】


式中、RからR、L、m、及びnは上に定義されている。
【0098】
式(XI)において、その薬剤は4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)である。4−アミノ−TEMPOは、アミド結合を介してRからR及びLのうち任意のものに連結しており、そのポリマーが生分解する間に4−アミノ−TEMPOが無傷のままである結果、そのポリマーの分解に由来する追加の分子が4−アミノ−TEMPOに付着するおそれがある。結果として、4−アミノ−TEMPOよりもかえって4−アミノ−TEMPOの誘導体がそのポリマーから放出されるおそれがあり、規制上の懸念を引き起こしうる。そのアミド結合は、4−アミノ−TEMPOと、RからR及びLの任意のものに存在するカルボキシル基とのコンジュゲーションに起因する。
【0099】
一部の実施形態では、そのポリエステルは以下の式(XII)により表すことができる:
【化13】


式中、RからR、L、m、及びnは上に定義されている。
【0100】
式(XII)において、その薬剤は4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−ヒドロキシ−TEMPO)である。4−ヒドロキシ−TEMPOは、エステル結合を介してRからR及びLの任意のものに連結している。エステル結合はアミド結合よりも不安定であり、そのポリマーから薬剤の放出を見込んでいる。Lエステルの開裂はポリエステルの開裂と競合し、エステル結合でのそのポリマーの分解から得られた4−ヒドロキシ−TEMPOへの追加の分子の付着を招くことがある。エステル結合は、4−ヒドロキシ−TEMPOとRからR及びLの任意のものに存在するカルボキシル基とのコンジュゲーションに起因する。
【0101】
一部の実施形態では、ポリエステルは以下の式(XIII)により表すことができる:
【化14】


式中、n及びmは0に等しくない整数である。
【0102】
式(XIII)において、4−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−カルボキシ−TEMPO)は、無水結合を介してRからR及びLの任意のものに連結している。無水結合はエステル結合よりも不安定であることにより、そのポリマーの生分解由来の追加の分子が付着せずにその薬剤を放出することを見込むことができる。
【0103】
一部の実施形態では、そのポリエステルは以下の式(XIV)により表される:
【化15】


式中、n及びmは0に等しくない整数である。
【0104】
式(XIV)において、その薬剤はエストラジオールであり、さらに不安定なエステルである3,9−ジエチリデン−2,4,8,10−テトラオキサスピロ−[5,5]−ウンデカン(DETOSU)として公知であるオルトエステルを介してRからR及びLの任意のものに連結している。
【0105】
式(XIV)のポリマーを作製するために、ヒドロキシ官能性ポリエステルを使用することができる。エストラジオールをDETOSUと組合せてエストラジオール−DETOSU組合せを形成させることができる。ヒドロキシ官能性ポリエステルをそのエストラジオール−DETOSU組合せと反応させて、ポリエステル−薬剤組合せを形成させることができる。
【0106】
アミノ官能化ポリエステルをアルデヒド官能化ヘパリンとコンジュゲーションすることにより、例えばヘパリンなどのポリマー性薬剤をグラフトコポリマーとしてポリエステルに連結させることができる。アミノ官能化ポリエステル及び誘導体化されたアルデヒドを、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH)及びDMF/水溶媒を使用した還元アミノ化によりカップリングすることができる。
【0107】
II.ポリマーブロックとしての薬剤
ブロックコポリマーとしてポリエステルにポリマー性薬剤を連結することができる。ポリマーブロックとしてポリエステルに組み込むことができる薬剤の例には、カルボキシメチルセルロース;例えばポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール;ホスホリルコリン官能性メタクリル酸エステル、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ホスホリルコリン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化デキストラン;ポリホスファゼン、ポリオルトエステル、ポリチロシンカーボネート、グリコサミノグリカン、例えば結合配列RGDなどのアミノ酸、オリゴペプチド、例えばエラスチン、コラーゲンなどのタンパク質、及びコンドロイチン硫酸;デルマタン硫酸;ヒアルロン酸;ヘパリン;及びその任意の誘導体、アナログ、ホモログ、同族体、塩、コポリマー、及び組合せが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0108】
1.グリコサミノグリカンを有するポリエステル
アミノ官能性又はアミノ末端ポリエステルをアルデヒド官能化ヘパリンと組合せることにより、ポリエステルと、ヘパリンもしくはヒアルロン酸などのグリコサミノグリカンとのグラフトポリマー、又はヘパリンもしくはヒアルロン酸などのグリコサミノグリカンの末端ブロックを有するポリエステルを調製することができる。アルデヒド官能化ヘパリンの例は以下の式(XV)により表される:
【化16】


式中、pは0に等しくない整数である。
【0109】
DMF/水溶媒中で、アルデヒド官能化ヘパリンをアミノ官能性又はアミノ末端ポリエステルと組合せ、続いてNaCNBHで還元して、式(XVI)及び式(XVII)により表される以下のポリエステル−ヘパリンコポリマー構造を生成させることができる:
【化17】


式中、pは0に等しくない整数である;及び
【化18】

【0110】
上に示したポリエステル−ヘパリンコポリマーは、ABブロックコポリマーである。AB型コポリマーは、これら2つのポリマーが単一の活性末端だけを有する場合に生じる。本発明の方法を設計して、薬剤ポリマー及びポリエステルのいずれか一方又は両方の末端を活性化することにより、グラフトコポリマー、ABコポリマー、ABAコポリマー、又はABABAB...マルチブロックコポリマーなどのコポリマーを生成することができる。ABA型のコポリマーは、1つのポリマーが1つの活性末端を有し、もう1つのポリマーが2つの活性末端を有する場合に生じる。ABABAB...型のコポリマーは、両方のポリマーが2つの活性末端を有する場合に生じる。一実施形態では、コポリマーはABAコポリマーであり、ここで、Aブロックはヘパリン又はヒアルロン酸などのグリコサミノグリカンである。別の実施形態では、そのコポリマーは、ヘパリン又はヒアルロン酸などのグリコサミノグリカンを有するグラフトコポリマーである。
【0111】
カルボジイミドなどのカップリング剤の存在下で、カルボキシル末端ポリエステルをヒドラジン誘導体化ヘパリンと組合せることにより、ポリエステルとヘパリンとのブロックコポリマーを調製することができる。ヘパリンは、最初に例えば1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)又はジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いて活性化され、次に、大過剰のアジピン酸ジヒドラジドと組合され、アミノ官能化ヘパリンが調製され、それは次にそのポリエステル上の末端カルボキシ基とカップリングされる。あるいは、例えば水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、水素化ホウ素カリウム(KBH)、又はNaCNBHなどの還元剤の存在下でアルデヒド官能化ヘパリンをアンモニア又はn−ブチルアミンと処理することができる。カルボキシル末端ポリエステルを、例えばEDC又はDCCで活性化して、アミノ官能性ヘパリンと組合せることができる。
【0112】
カルボキシル末端ポリエステルをヘパリンと組合せて、そのカルボキシ基をヘパリンのヒドロキシル基と反応させることにより、ポリエステルとヘパリンとのAB又はABAブロックコポリマーを調製することができる。そのポリエステルは、最初に過剰の二酸と組合され、カルボキシル末端ポリエステルが調製される。あるいは、ヒドロキシル末端基を有するポリエステルをAgO、H、KMnO、CrO、又はペルオキシ酸で酸化してカルボキシル末端ポリエステルを形成させることができる。そのカルボキシル末端ポリエステルを、例えばEDC、又はDCCで活性化して、次にヘパリンと組合せることができる。
【0113】
本発明の一部の実施形態では、その薬剤は、ポリエステルの生体適合性又は非汚染性を高めることができる任意の生体有益性薬剤でありうる。例えばヒアルロン酸は、ポリエステル−ヒアルロン酸グラフトコポリマー又は他のコポリマーを形成させるために使用されるポリマー性薬剤でありうる。ヒアルロン酸は遊離カルボキシル基を有し、結合のための官能性をもたらし、また、例えばヒアルロン酸を亜硝酸又は過ヨウ素酸塩を用いて酸化することにより、アルデヒド−官能化ヒアルロン酸を作成することができる。次に、アルデヒド官能化ヒアルロン酸を上記のポリエステルと組合せることができる。
【0114】
本発明のポリエステルは、多数の種々の部分と組合せることができることにより、多数の官能性を有しうる。例えば標準的な分析技法を使用してポリエステルを分析して、ヒドロキシル基に対するカルボキシル基の比を決定することができる。例えばアミノ官能性などの他の官能性も有するポリエステルに関しても同じことがいえる。官能性の比を知ることは、そのポリエステルのヒドロキシル末端、アミノ末端、又はカルボキシル末端にそのポリマー性薬剤を連結すべきかどうかを当業者に決定させるであろう。当業者は、例えばカルボキシル末端ポリエステルをヒドラジド誘導体化ヘパリンと組合せる場合に、クロロギ酸ベンジルでアミノ基などのポリエステル上の基を保護して望ましくない副コンジュゲーションを低減することができる。
【0115】
2.ポリエステル−ポリエチレングリコールブロックコポリマー
ポリエステルとPEGとのブロックコポリマーを様々な技法を用いて調製することができる。一実施形態では、例えばEDC又はDCCの存在下でヒドロキシル末端ポリエステルをカルボキシル末端PEG(Nektar Corp.)と組合せて、以下の式(XVIII)により表される以下の構造を形成させることができる:
【化19】


式中、rは、約1から約100、約2から約80、約3から約70、約4から約60、約2から約20、約3から約30、約4から約40、約5から約50、及びそれに収まる任意の範囲に及びうる。
【0116】
別の実施形態では、例えばEDC又はDCCの存在下でアミノ末端ポリエステルをカルボキシル末端PEG(Nektar Corp.)と組合せることができる。別の実施形態では、mPEG(Nektar Corp.)のスクシンイミジル誘導体又はイソシアネート末端mPEG(Nektar Corp.)のいずれかを、当業者に公知の条件でアミノ末端ポリエステルと反応させることができる。別の実施形態では、カルボキシル末端ポリエステルのカルボキシル基を、例えばEDC又はDCCを用いて活性化して、アミノ末端mPEG(Nektar Corp.)と組合せることができる。別の実施形態では、高分子量ポリエステルにおけるエステル基のアミノ化により、塩基触媒の存在下でアミノ末端mPEGを高分子量ポリエステルと組合せることができる。別の実施形態では、熱又は光分解性フリーラジカル分解を受けることができる開始剤の存在下で、アミノ末端ポリエステルをメタクリル酸末端mPEG(Nektar Corp.)と組合せることができる。適切な開始剤の例には、ベンジル−N,N−ジエチルジチオカルバメート又はp−キシレン−N,N−ジエチルジチオカルバメートが含まれる。別の実施形態では、PEGブロックを形成するリビング重合反応においてアミノ末端ポリエステルをエチレンオキシドと組合せることができる。リビング重合は、純粋な系を維持することにより活性を維持し、制御される非終止陰イオン重合である。例えば水などの停止剤を添加することにより、リビング重合反応を停止させることができる。
【0117】
コーティングの形成
本発明の一部の実施形態では、その組成物は、例えばバルーン拡張型ステント又は自己拡張型ステントなどの医療用具用のコーティングの形態である。本発明の範囲内に多数のコーティング構造があり、各構造には、任意の数及び組合せの層が含まれうる。一部の実施形態では、本発明のコーティングは、以下の4種類の層の1つ又は組合せを備えうる:
(a)ポリマー及び薬剤、又は代替的にポリマーを有さない薬剤を含みうる薬剤層;
(b)埋め込み型基材又は以前に形成した層の上への次の層の接着を向上することができる任意のプライマー層;
(c)薬剤の放出速度を制御する方法として働くことができる任意のトップコート層;並びに
(d)コーティングの生体適合性を改善することができる、任意の生体適合性仕上げ層。
【0118】
一実施形態では、埋め込み型基材の少なくとも一部に薬剤層を純粋な薬剤として直接適用して、少なくとも1つの生体活性薬剤のためのリザーバとして働かせることができる。別の実施形態では、その薬剤をマトリックスとしての生分解性ポリマーと組合せることができ、ここで、薬剤はそのポリマーに結合していてもよいし、結合していなくてもよい。別の実施形態では、任意のプライマー層を埋め込み型基材と薬剤層との間に適用して、埋め込み型基材への薬剤層の接着を改善することができ、プライマー層は場合により薬剤を含みうる。別の実施形態では、生分解性ポリマーを含む層の間に純粋な薬剤層を挟むことができる。別の実施形態では、任意のトップコート層を薬剤層の少なくとも部分に適用して、膜として働かせて生体活性薬剤の放出速度を制御することができ、トップコート層は場合により薬剤を含む。別の実施形態では、生体適合性仕上げ層も適用して、例えば急性血液適合性を増大させることによりコーティングの生体適合性を増大させることができ、仕上げ層も薬剤を含みうる。
【0119】
本発明の組成物を、層の1つ又は任意の組合せのために使用することができる。さらに、一部の実施形態では、以前に言及したような(例えばポリメタクリル酸ブチルなどの)他のポリマーを層の1つとして使用することができ、またポリエステルの実施形態と共に混和又は架橋形成することができる。
【0120】
浸漬、スプレー、鋳込、ブラッシング、スピンコーティング、ローラコーティング、メニスカスコーティング、パウダーコーティング、インクジェット型適用、又はその組合せを含むが、それに限定されるわけではない任意の方法により各層を埋め込み型基材に適用することができる。一例では、1つ又は複数の生分解性ポリマーを、場合により非生分解性ポリマーと共に1つ又は複数の溶媒中で溶解させ、(i)ステントにその溶液をスプレーすること、又は(ii)その溶液にステントを浸漬することのいずれかによりステント上に各層を形成させることができる。この例では、溶媒が蒸発すると、ステントに生分解性ポリマーの乾燥コーティングが形成しうる。
【0121】
各層の形成はキャスティング溶媒の使用を伴うことがある。キャスティング溶媒は、中にポリマーが溶解して、基材に適用できる溶液を形成することができる液体媒質である。キャスティング溶媒は、例えば下部のプライマー層又はベアステント構造などの下部の物質に有害な影響を与えることを避けるように選択しなければならない。一例では、プライマー層を形成するために使用される物質は、高極性キャスティング溶媒中で可溶性であるが、低極性キャスティング溶媒中では適度に不溶性である。物質が結果として生じる生成物の性能に大きく影響するのに足るほど多くは溶解しない場合に、その物質は溶媒中に「適度に不溶性」であり、その生成物を意図される目的にまだ使用することができることを意味する。この例では、プライマー層の構造を破壊せずに、低極性キャスティング溶媒中で可溶性の薬物上層をプライマー下層に適用することができる。
【0122】
例えばキャスティング溶媒の極性、水素結合形成、分子の大きさ、揮発性、生体適合性、反応性、及び純度を含めたいくつかの基準に基づきそのキャスティング溶媒を選択することができる。キャスティング溶媒中のポリマーの溶解限度、キャスティング溶媒中の酸素及び他の気体の存在、キャスティング溶媒とポリマーとの組合せの粘度及び蒸気圧、キャスティング溶媒が下部の物質を通過して拡散する能力、並びにキャスティング溶媒の熱安定性を含む、キャスティング溶媒の他の物理的性質を考慮することもできる。
【0123】
当業者は、多種多様なポリマーの溶解度に関する科学文献及びデータを入手できる。さらに、当業者は、キャスティング溶媒の選択が、入手できる熱力学データを使用して溶解のギブズ自由エネルギーを計算することにより経験的に始まりうることを認識しているであろう。当該計算は、研究室で試験するために潜在的な溶媒を予め選択することを見込んでいる。
【0124】
加工条件が下部の物質の化学構造に影響することにより、その物質のキャスティング溶媒への溶解度に影響するおそれがあることが承認されている。生成物が比較的急速に生成する場合に、下部の物質の低速度溶解は、例えば生成物の性能の特性に影響できないことから、キャスティング溶媒を選択する場合に溶解動態は考慮すべき要因であることも承認されている。
【0125】
本発明に使用するためのキャスティング溶媒の例には、DMAC、DMF、THF、シクロヘキサノン、キシレン、トルエン、アセトン、i−プロパノール、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルブチルケトン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、及びジオキサンが含まれるが、それに限定されるわけではない。溶媒混合物を同様に使用することができる。その混合物の代表的な例には、DMAC及びメタノール(50:50w/w);水、i−プロパノール、及びDMAC(10:3:87w/w);i−プロパノール及びDMAC(80:20、50:50、又は20:80w/w);アセトン及びシクロヘキサノン(80:20、50:50、又は20:80w/w);アセトン及びキシレン(50:50w/w);アセトン、キシレン、及びFLUX REMOVER AMS(登録商標)(93.7%3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン及び1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンであり、残りは微量のニトロメタンを有するメタノールである;Tech Spray、Inc.)(10:40:50w/w);並びに1,1,2−トリクロロエタン及びクロロホルム(80:20w/w)が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0126】
医療品又はコーティングを形成する工程には、例えば熱、電磁波、電子ビーム、イオン又は荷電粒子ビーム、中性原子ビーム、及び化学エネルギーなどのエネルギーの使用などの追加の加工段階が含まれうることを認識すべきである。高温を使用することにより乾燥工程を加速することができる。
【0127】
その組成物の機械的性質を高めるために、医療品又はコーティングをアニールすることもできる。アニーリングを使用して、部分応力の低減を助けることができ、応力割れの破損が重大でありうる複合医療用具などの適用に特別の安全措置をもたらすことができる。アニーリングは、約30℃から約200℃、約35℃から約190℃、約40℃から約180℃、約45℃から約175℃、又はそれに収まる任意の範囲に及ぶ温度で起こりうる。アニーリング時間は、約1秒から約60秒、約1分から約60分、約2分から約45分、約3分から約30分、約5分から約20分、又はそれに収まる任意の範囲に及びうる。アニーリングは、加熱と冷却をサイクルさせることによっても起こりうる。ここで、加熱及び冷却にかかる合計時間がアニーリングサイクル時間である。
【実施例】
【0128】
本発明の実施形態をさらに例示するために以下の実施例を提供する。
実施例1
コポリ{[テレフタル酸ヘキシレン]22−[セバシン酸ヘキシレン]78}の合成
【0129】
テレフタル酸ジメチル(15.65g、0.0807mol)、1,6−ヘキサンジオール(42.76g、0.3624mol)、ジメチルセバシン酸(64.79g、0.2817mol)、及びチタンテトラブトキシド(0.1g、2.94×10−4mol)を、アルゴンパージ、機械的撹拌装置、油浴、及び真空ラインを備える250mlフラスコに加える。アルゴンパージ下で撹拌しながら温度を180℃に上げる。2時間後に、圧力を76ミクロンに下げ、温度を240℃に上げ、反応を2時間続ける。
【0130】
実施例2
コポリ{[テレフタル酸プロピレン]40−[セバシン酸ヘキシレン]60}の合成
セバシン酸ジメチル(68.31g、0.297mol)、1,6−ヘキサンジオール(35.05g,0.297mol)、及びチタンテトラブトキシド(0.1g、2.94×10−4mol)を、アルゴンパージ、機械的撹拌装置、油浴、及び真空ラインを備える250mlフラスコに加える。アルゴンパージ下で温度を180℃に上げる。圧力を76ミクロンに下げ、撹拌を2時間続ける。得られた混合物を大気圧までアルゴンでパージし、ジメチルテレフタル酸(37.67g、0.1942mol)及び1,3−プロパンジオール(14.76g、0.1942mol)を加える。真空を76ミクロンに回復させ、温度を240℃に上げ、反応を2時間続ける。
【0131】
実施例3
以下の構成要素を混合することにより第1組成物を調製することができる:
(a)約2.0%(w/w)の実施例1のポリマー;及び
(b)残りはクロロホルム及び1,1,2−トリクロロエタンの50/50(w/w)混和物。
【0132】
12mm小型VISION(商標)ベアステント(Guidant Corp.)表面に第1組成物を適用することができる。コーティングをスプレーして乾燥させ、プライマー層を形成させることができる。常温に維持された0.014円形ノズルを有するスプレーコーティング装置を供給圧2.5psi(0.17atm)及び噴霧圧約15psi(1.02atm)で使用することができる。スプレー通過1回あたりコーティング約20μgを適用することができる。スプレーの通過と通過の間に約50℃の気流中で約10秒間ステントを乾燥することができる。約110μgのウェットコーティングを適用することができる。ステントを約80℃で約1時間焼成して、実施例1のポリマー約100μgから構成されるプライマー層を得ることができる。
【0133】
以下の構成要素を混合することにより第2組成物を調製することができる:
(a)約2.0%(w/w)の実施例2のポリマー;
(b)約0.5%(w/w)のパクリタキセル;及び
(c)残りはクロロホルム及び1,1,2−トリクロロエタンの50/50(w/w)混和物。
【0134】
プライマー層の適用に使用したのと同じスプレー技法及び装置を使用して第2組成物を乾燥プライマー層に適用し、薬物−ポリマー層を形成させることができる。ウェットコーティング約160μgを適用することができ、続いて約50℃で約2時間乾燥及び焼成を行い、固形物含量約140μgを有する乾燥薬物−ポリマー層を得る。
【0135】
実施例4
以下の構成要素を混合することにより第1組成物を調製することができる:
(a)約2.0%(w/w)の実施例1のポリマー;及び
(b)残りはクロロホルム及び1,1,2−トリクロロエタンの50/50(w/w)混和物。
12mm小型VISION(商標)ベアステント(Guidant Corp.)表面に第1組成物を適用することができる。コーティングをスプレーして乾燥させ、プライマー層を形成させることができる。常温に維持された0.014円形ノズルを有するスプレーコーティング装置を供給圧2.5psi(0.17atm)及び噴霧圧約15psi(1.02atm)で使用することができる。スプレー通過1回あたりコーティング約20μgを適用することができる。ウェットコーティング約110μgを適用することができ、スプレーの通過と通過の間に約50℃の気流中で約10秒間ステントを乾燥することができる。ステントを約80℃で約1時間焼成して、実施例1のポリマー約100μgから構成されるプライマー層を得ることができる。
【0136】
以下の構成要素を混合することにより第2組成物を調製することができる:
(a)約2.0%(w/w)の実施例1のポリマー;
(b)約1.0%(w/w)エベロリムス;及び
(c)残りはクロロホルム及び1,1,2−トリクロロエタンの50/50(w/w)混和物。
【0137】
プライマー層の適用に使用したものと同じスプレー技法及び装置を使用して、第2組成物を乾燥プライマー層に適用して薬物−ポリマー層を形成させることができる。約190μgのウェットコーティングを適用することができ、続いて約50℃で約2時間乾燥及び焼成を行い、固形物含量約170μgを有する乾燥薬物−ポリマー層を得る。
【0138】
以下の構成要素を混合することにより第3組成物を調製することができる:
(a)約2.0%(w/w)の実施例1のポリマー;及び
(b)残りはクロロホルム及び1,1,2−トリクロロエタンの50/50(w/w)混和物。
【0139】
プライマー層及び薬物−ポリマー層の適用に使用したものと同じスプレー技法及び装置を使用して、第3組成物を乾燥薬物−ポリマー層に適用してトップコート層を形成させることができる。ウェットコーティング約110μgを適用することができ、続いて約50℃で約2時間乾燥及び焼成を行い、固形物含量約100μgを有する乾燥トップコート層を得る。
【0140】
実施例5
ヒドロキシル末端ポリエステルの調製方法:
ヒドロキシル末端基を有するコポリ{[テレフタル酸ヘキシレン]22−[セバシン酸ヘキシレン]78}の合成
テレフタル酸ジメチル(15.65g、0.0807mol)、1,6−ヘキサンジオール(42.76g、0.3624mol)、セバシン酸ジメチル(64.79g、0.2817mol)、及びチタンテトラブトキシド(0.12g、3.53×10−4mol)を、アルゴンパージ、機械的撹拌装置、油浴、及び真空ラインを備える500mlフラスコに加える。アルゴンパージ下で撹拌しながら温度を180℃に上げる。2時間後に圧力を76ミクロンに下げ、温度を240℃に上げ、反応を2時間継続させる。反応物をアルゴンでパージし、常温に冷却し、1,1,2−トリクロロエタン250mlを加える。溶解後、シクロヘキシルカルボジイミド(1.03gm、0.005mol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジニウム−4−トルエンスルホン酸(0.16gm、0.54mmol)、及び1,6−ヘキサンジオール(1.18gm、0.01mol)を加え、アルゴン下で48時間撹拌する。メタノール1リットル中で沈殿後に濾過することによりポリマーを単離する。
【0141】
実施例6
カルボキシル−末端ポリエステルの調製方法:
カルボキシル末端基を有するコポリ{[テレフタル酸ヘキシレン]22−[セバシン酸ヘキシレン]78}の合成
テレフタル酸ジメチル(15.65g、0.0807mol)、1,6−ヘキサンジオール(42.76g、0.3624mol)、セバシン酸ジメチル(64.79g、0.2817mol)、及びチタンテトラブトキシド(0.12g、3.53×10−4mol)を、アルゴンパージ、機械的撹拌装置、油浴、及び真空ラインを備える500mlフラスコに加える。アルゴンパージ下で撹拌しながら温度を180℃に上げる。2時間後に圧力を76ミクロンに下げ、温度を240℃に上げ、反応を2時間継続させる。反応物をアルゴンでパージし、常温に冷却し、1,1,2−トリクロロエタン250mlを加える。溶解後、コハク酸無水物(0.5gm、0.005mol)を加え、アルゴン下で48時間撹拌する。メタノール1リットル中で沈殿後に濾過することによりポリマーを単離する。
【0142】
実施例7
アミノ末端ポリエステルの調製方法:
アミノ末端基を有するコポリ{[テレフタル酸ヘキシレン]22−[セバシン酸ヘキシレン]78}の合成
ジメチルテレフタル酸(15.65g、0.0807mol)、1,6−ヘキサンジオール(42.76g、0.3624mol)、ジメチルセバシン酸(64.79g、0.2817mol)、及びチタンテトラブトキシド(0.1g、2.94×10−4mol)を、アルゴンパージ、機械的撹拌装置、油浴、及び真空ラインを備える500mlフラスコに加える。アルゴンパージ下で撹拌しながら温度を180℃に上げる。
【0143】
2時間後に圧力を76ミクロンに下げ、温度を240℃に上げ、反応を2時間継続させる。反応物をアルゴンでパージし、乾燥1,1,2−トリクロロエタン250mlを加え、温度を60℃に下げる。溶解後、1,4−ジイソシアナトブタン(0.7gm、0.005mol)及びスタナスオクトエートの5%(w/w)1,1,2−トリクロロエタン溶液1gmを加え、反応物を2時間撹拌する。脱イオン水25mlで反応をクエンチした後に、反応物を常温で1時間撹拌し、メタノール1リットル中で沈殿後に濾過することによりポリマーを単離する。
【0144】
実施例8
以下の手順により式(X)のポリエステルを調製することができる:
ポリカルボン酸ベンジルエステルの調製方法
【0145】
トリメリト酸(203.8gm、0.97mol)、p−トルエンスルホン酸(47.55gm、0.25mol)、ベンジルアルコール(100.9ml、0.97mol)、及びベンゼン200mlを、機械的撹拌装置、ディーンスタークトラップ、温度計、及びアルゴン引き入れ管を備える1リットル反応フラスコに加える。この混合物を80℃で8時間加熱し、発生した水をディーンスタークトラップに集める。この混合物を2リットルフラスコに移し、撹拌しながら酢酸エチル1lをこの混合物に加える。得られた混合物を4℃で一晩保存し、得られたスラリーを脱イオン水2lに注ぐ。トリメリト酸モノベンジルエステルを濾過により単離する。
【0146】
ポリエステルとmPEGアミドとのグラフトコポリマーの調製方法
トリメリト酸モノ−ベンジルエステル0.066当量、セバシン酸1当量、1,6−ヘキサンジオール1.066当量、及びp−トルエンスルホン酸0.20当量を加えることによりポリエステルを調製する。得られた混合物を、例えばベンゼン、トルエン、1,1,2−トリクロロエタン、又はクロロベンゼンなどの適切な溶媒に溶解させることができる。次に、この混合物を加熱還流し、発生した水を、ディーンスタークトラップを使用して共沸蒸留により除去する。
【0147】
そのポリマーをメタノール中で沈殿させ、水で洗浄し、真空乾燥する。パラジウム触媒で水素化分解することにより遊離のカルボキシル基を発生させる。テトラヒドロフラン(1200ml)及びそのポリマー(100gm)を、炭素上パラジウム触媒(5gm)(Aldrich)を入れた2リットルフラスコに加える。その混合物に水素を24時間通気撹拌し、遠心分離により炭素上パラジウム触媒を分離し、単離された溶液を残す。
【0148】
この単離された溶液をヘキサン/酢酸エチル(50/50混合物10リットル)に撹拌しながら加えてポリエステルを沈殿させる。得られたポリマーを濾過し、撹拌及びアルゴンパージしながら2リットルフラスコ中でTHF(1500ml)に溶解(50gm)させ、次にN−ヒドロキシスクシンイミド(1.38gm、0.012mol)及びジシクロヘキシルカルボジイミド(2.48gm、0.012mol)と組合せる。得られた組合せを常温で24時間撹拌し、濾過して1,3−ジシクロヘキシル尿素を除去する。濾過された溶液を2リットルフラスコ中のアミノ−末端mPEG(MW5000、54.5gm、0.0109mol)(Nektar Corp.)と組合せ、アルゴン下で6時間撹拌する。撹拌しながらヘキサン/酢酸エチル(50/50)にこの溶液をゆっくりと加えることにより、アミドグラフトであるポリエステルとmPEGとのグラフトコポリマーを沈殿させる。
【0149】
実施例9
以下の手順により式(XIII)のポリエステルを調製することができる。
ポリエステルと4−カルボキシ−TEMPOとのグラフトコポリマーの調製方法
【0150】
トリメリト酸モノベンジルエステル0.25当量、アジピン酸1当量、1,6−ヘキサンジオール1.25当量、及びp−トルエンスルホン酸0.20当量を加えることによりポリエステルを調製する。得られた混合物を、例えばベンゼン、トルエン、1,1,2−トリクロロエタン、又はクロロベンゼンなどの適切な溶媒に溶解させることができる。次に、この混合物を加熱還流し、発生した水をディーンスタークトラップを使用して共沸蒸留により除去する。
【0151】
そのポリマーを分離し、水で洗浄し、真空乾燥する。パラジウム触媒で水素化分解することにより遊離のカルボキシル基を発生させる。クロロベンゼン(1200ml)及びそのポリマー(100gm)を、炭素上パラジウム触媒(5gm)(Aldrich)を入れた2リットルフラスコに加える。その混合物に水素を24時間通気撹拌し、遠心分離により炭素上パラジウム触媒を分離し、単離された溶液を残す。
【0152】
この単離された溶液をヘキサン/酢酸エチル(50/50混合物10リットル)に撹拌しながら加えてポリエステルを沈殿させる。得られたポリマー(50gm)を濾過し、2リットルフラスコ中で乾燥ジメチルホルムアミド(1500ml)に溶解及び撹拌し、無水酢酸(4.77gm、0.0467mol)及び4−カルボキシ−TEMPO(9.35gm、0.0467mol)をこの2リットルフラスコに加える。得られた混合物を真空下で蒸留して80℃でDMFを除き、十分な量の熱を適用して約5ml/minの蒸留速度を達成する。この溶液を2時間加熱及び撹拌する。DMF約60mlを集めた後で、その溶液を室温に冷却し、常圧までアルゴンでパージする。撹拌しながら無水ヘキサン/酢酸エチル(4リットル、50/50)の溶液をゆっくりと添加することにより、無水結合を有するポリエステルと4−カルボキシ−TEMPOとのグラフトコポリマーを沈殿させる。
【0153】
実施例10
以下の手順により式(XIV)のポリエステルを調製することができる。
エストラジオールと3,9−ジエチリデン−2,4,8,10−テトラオキサスピロ−[5,5]−ウンデカン(DETOSU)のコンジュゲートの調製方法
【0154】
100mlフラスコ中で乾燥THF(40ml)をDETOSU(5gm、0.0236mol)及びp−トルエンスルホン酸の1%THF溶液6滴と組合せる。撹拌しながらエストラジオール(6.42gm、0.0236mol)のTHF(20ml)溶液を1時間かけてゆっくりと加える。回転蒸発によりエストラジオール−DETOSUコンジュゲートを単離する。
【0155】
ポリエステルとエストラジオールとのグラフトコポリマーの調製方法
1,3−ジヒドロキシアセトンダイマー0.05当量、アジピン酸1当量、及び1,4−ブタンジオール0.9当量、及びp−トルエンスルホン酸0.20当量を加えることによりポリエステルを調製する。得られた混合物を、例えばベンゼン、トルエン、1,1,2−トリクロロエタン、又はクロロベンゼンなどの適切な溶媒に溶解させることができる。次に、この混合物を加熱還流し、発生した水をディーンスタークトラップを使用して共沸蒸留により除去する。メタノール中に沈殿させることによりポリマーを単離し、水で洗浄し、真空下で乾燥させる。
【0156】
THF中のこのポリマー(100gm)、乾燥THF(500ml)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(3.46gm、0.055mol)、及びp−トルエンスルホン酸(1%溶液2滴)を1000mlフラスコに加える。得られた混合物を常温で2時間撹拌し、クロロホルム(1000ml)に注ぎ、水性重炭酸ナトリウム(1回量500ml、1M)で3回抽出する。回転蒸留によりクロロホルムを除き、残った溶媒を常温で真空オーブン中で一晩乾燥させることにより除く。このポリマー(60gm)、乾燥THF(250ml)、及びエストラジオール−DETOSUコンジュゲート(14.54gm、0.03mol)を500mlフラスコに加え、室温で2時間撹拌する。撹拌しながらこの溶液を無水ヘキサン/酢酸エチル(2リットル、90/10)にゆっくりと加えることによりこのポリマーを沈殿させる。
【0157】
実施例11
ヘパリンをアミノ末端ポリエステルと組合せることによるポリエステル−ヘパリンコンジュゲートの調製方法
アミノ末端ポリエステルを、ヘパリンの酸化開裂により形成したアルデヒド官能化ヘパリンと反応させることによりポリエステル−ヘパリンコンジュゲートを調製することができる。窒素下でDMAC/水(1リットル、40:1)を含む反応器にアミノ末端ポリエステル(50g)を加える。アルデヒド−官能化ヘパリン(7.5g)及びシアノ水素化ホウ素ナトリウム(0.2g;3.2mmol)をその溶液に加え、窒素下で40℃に24時間加熱し、室温に冷却し、メタノールに滴下する。このポリエステル−ヘパリンコンジュゲートを濾過し、水(1回250mL)で3回洗浄し、真空下で乾燥させる。
【0158】
DMAC/水媒質中でのヘパリンのD−グルコロン酸(D−glucoronic acid)又はL−イズロン酸官能性のEDCカップリングによるポリエステル−ヘパリンコンジュゲートの代替調製方法
ヘパリン(20g)及びアミノ官能性ポリエステル(50g)をDMAC/水溶液(40/1、450g)に加え溶解させる。pHを4.75に調整し、N−(3’−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(0.2g、1.0mmol)を加える。得られた溶液を室温で24時間、窒素下で撹拌する。この溶液を水酸化ナトリウム(0.1M)でpH7.5に中和し、窒素下で一晩撹拌する。この溶液をTHFに加えることにより、ポリエステル−ヘパリンコンジュゲートを沈殿させ、濾過し、水で洗浄する。
【0159】
実施例12
アミノ末端ポリエステルを有するポリエステル−PEGコンジュゲートの調製方法
アルデヒド末端PEGを用いた還元アミノ化、カルボキシル末端PEGのカルボジイミドカップリング、又はアミン末端ポリエステルへのPEG−マレイミドのマレイミドカップリングにより、アミノ末端ポリエステルをPEG化することができる。
【0160】
還元アミノ化によりアミノ末端ポリエステルをPEGにコンジュゲートすることができる。遊離アルデヒド基を有するPEG−ブチルアルデヒドは過剰のブチルアルデヒドと共にアミノ−PEGを還元アミノ化することにより作成される。アミノ末端ポリエステル(50g)を無水DMAC(230g)に溶解させ、PEG−ブチルアルデヒド(MW1000〜50000、7.5g)をシアノ水素化ホウ素ナトリウム(1.0g)と共に加え、窒素下で一晩室温で撹拌する。撹拌しながらその溶液をメタノールに加えることによりポリマーを沈殿させ、そのポリマーをDMACに再溶解し、水に再沈殿させ、真空下で乾燥させる。
【0161】
DCC/NHSカップリングを用いてカルボキシル末端PEGのカルボジイミドカップリングにより、アミノ末端ポリエステルをPEGにコンジュゲートすることができる。無水THF(100g)、カルボキシル末端PEG(10kD、7.0g、0.7mmol)、及びジシクロヘキシルカルボジイミド(0.15g;7.1mmol)(DCC)を、N−ヒドロキシスクシンイミド(0.10g/8mmol)(NHS)を含む反応器に加え、得られた溶液を窒素下で室温で12時間撹拌する。アミノ末端ポリエステル(50g)を無水THF(116g、1〜35%w/w)に加える。得られた混合物を窒素下で室温で2時間撹拌し、ポリエステルを溶解させ、得られたアミノ末端ポリエステル溶液を活性化PEG溶液に1滴ずつ加え、窒素下で一晩室温で撹拌する。メタノール1lに滴下することによりPEG−ポリエステルを単離して、ポリエステル−PEG沈殿を形成させる。この沈殿を濾過し、真空下で乾燥させる。
【0162】
実施例13
第1組成物及び第2組成物を調製することにより、エベロリムスを含む、2層のコーティングを有する医療品を作製することができる。ここで、第1組成物はポリエステル及び薬剤のマトリックスを含む薬剤層のことがあり、第2組成物はポリエステルトップコート層のことがある。
【0163】
THF/1,1,2−トリクロロエタン混和物中で官能化ポリエステルをエベロリムスと混合することにより、第1組成物を調製することができ、その組成物を12mm VISION(商標)ベアステント(Guidant Corp.)(「ステントの例」)の表面にスプレーし、乾燥させてコーティングを形成させる。コーティング技法の例は、0.014ファンノズル、供給圧約0.2atm、及び噴霧圧1.3atmを用いてスプレーコーティングすること;通過1回あたりウェットコーティング約20μgを適用すること、通過と通過の間に約50℃で約10秒間そのコーティングを乾燥させること、及び最終通過の約1時間後に約50℃でそのコーティングを焼成して乾燥した薬剤層を形成させることを含む。THF/1,1,2−トリクロロエタン混和物中でポリエステルを混合すること、及びコーティング例の技法を使用してそのポリエステルを適用することにより、第2組成物を調製することができる。
【0164】
実施例14
第1組成物、第2組成物、及び第3組成物を調製することにより、エベロリムスを含む、3層のコーティングを有する医療品を作製することができる。第1組成物はポリエステルのプライマー層のことがある。第2組成物は純粋な薬剤層のことがあり、第3組成物はポリエステルのトップコート層のことがある。
【0165】
THF/1,1,2−トリクロロエタン混和物中で約2%(w/w)のポリエステルを混合することにより、第1組成物を調製することができ、その組成物をコーティング技法の例を使用してステント例の表面に適用して、乾燥したプライマー層を形成させることができる。この乾燥したプライマー層は、約100μgのポリエステルを有しうる。第2組成物は、約2%(w/w)エベロリムスを無水エタノール中で混合すること及びコーティング技法を使用して混合物をプライマー層に適用してエベロリムスを含む純粋な薬剤層を形成させることにより調製することができる。THF/1,1,2−トリクロロエタン混和物中で約2%(w/w)のポリエステルを混合すること及びコーティング技法を使用してその混合物を適用して、そのポリエステルを含むトップコート層を形成させることにより、第3組成物を調製することができる。
【0166】
実施例15
いくつかの方法によりこれらの実施形態でカルボキシル末端ポリエステルも調製することができる。一方法では、例えば二酸クロリド又はセバシン酸ジ−p−ニトロフェニルなどの活性化ジカルボン酸化合物を過剰のポリエステルと組合せることができる。この方法は簡便であるが、ポリマーの最終分子量を低下させる潜在的欠点を有する。
【0167】
ヒドロキシル末端コポリ{[セバシン酸ブチレン]50−[セバシン酸シクロヘキシルジメチル]50}の調製方法
乾燥THF(110ml)中で乾燥トリエチルアミン(61.6ml、0.44mol)をシクロヘキサンジメタノール(14.42gm、0.1mol)と1,4−ブタンジオール(9.01gm、0.1mol)との混合物に加える。この混合物を0℃に冷却し、セバコイルクロリド(47.83gm、0.2mol)のTHF(100ml)溶液を撹拌しながら滴下する。得られた溶液を0℃で4時間撹拌し、その時点で1,3−プロパンジオール(1.52gm、0.02mol)を加え、得られた混合物を常温まで加温させ、さらに1時間撹拌する。この溶液をアセトン(300ml)で希釈し、リン酸緩衝液(2リットル、0.1M、pH7)に注ぐ。得られたポリマーを濾過により集め、それをクロロホルム(1リットル)に懸濁し、リン酸緩衝液(0.1M、pH7、1回1リットル)で3回抽出する。クロロホルムを回転蒸留により除去し、ヒドロキシ末端コポリ{[セバシン酸ブチレン]50−[セバシン酸シクロヘキシルジメチル]50}を常温で真空オーブン中で一晩乾燥させる。
【0168】
カルボキシ末端コポリ{[ブチレンセバシン酸]50−[シクロヘキシルジメチルセバシン酸]50}の調製方法
乾燥THF(110ml)中で乾燥トリエチルアミン(61.6ml、0.44mol)をシクロヘキサンジメタノール(14.42gm、0.1mol)及び1,4−ブタンジオール(9.01gm、0.1mol)の混合物に加える。得られた混合物を0℃に冷却し、セバコイルクロリド(47.83gm、0.2mol)のTHF(100ml)溶液を撹拌しながら滴下する。得られた溶液を0℃で4時間撹拌し、その時点でコハク酸無水物(2gm、0.02mol)を加え、得られた混合物を常温まで加温させ、さらに1時間撹拌する。この溶液をアセトン(300ml)で希釈し、リン酸緩衝液(2リットル、0.1M、pH7)に注ぐ。得られたポリマーを濾過により集め、それをクロロホルム(1リットル)に懸濁し、リン酸緩衝液(0.1M、pH7、1回1リットル)で3回抽出する。クロロホルムを回転蒸留により除去し、ヒドロキシ末端コポリ{[セバシン酸ブチレン]50−[セバシン酸シクロヘキシルジメチル]50}を常温で真空オーブン中で一晩乾燥させる。
【0169】
この重合は、末端基の一部がカルボキシルであり、末端基の一部が依然として酸クロリドの形態であるポリマーを生じることができる。しかし、これらは水抽出によりカルボキシル基に加水分解されるであろう。
【0170】
本発明の特定の実施形態が示され記載されたが、当業者は、その教示の精神及び範囲から逸脱することなしに本発明に変形及び変更を加えることができることに気づくであろう。例えば多数の化学構造、ポリマー性薬剤、及び方法が本明細書において教示された。当業者は、そのような教示が単に例として提供され、本発明の範囲を限定することを意図しないことを認識すべきである。例えば本明細書において教示された化学構造は、別様に特定されない限り、例えば特定の立体異性体などの任意の特定の幾何形状を示すよりもむしろ例示された各化学構造について可能な全ての幾何形状を包含することが意味される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】


により表されるポリマーを含む組成物。
[式中、R及びRは任意であり、それぞれ独立に置換、非置換、ヘテロ−、直鎖、分岐、環状、飽和、及び不飽和脂肪族基;並びに置換、非置換、及びヘテロ−芳香族基からなる群から選択される構成要素を含み;
及びRは、それぞれ独立に置換、非置換、ヘテロ−、直鎖、分岐、環状、飽和、及び不飽和脂肪族基;並びに置換、非置換、及びヘテロ−芳香族基からなる群から選択される構成要素を含み;
は任意の結合であり;
Xは任意の薬剤であり;
はXをポリマーに連結する任意の結合であり;
m及びnは0に等しくない整数である。]
【請求項2】
又はRが芳香族基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記芳香族基が、p−フェニレン、m−フェニレン、o−フェニレン、及びその誘導体からなる群から選択される構成要素を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
がフェニレン基又はその誘導体を含み;
及びRが、それぞれ独立に1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及びその誘導体からなる群から選択される構成要素を含み;
が、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、及びその誘導体からなる群から選択される構成要素を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記薬剤が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ホスホリルコリン、グリコサミノグリカン、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヒルジン、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化デキストラン、デルマタン硫酸、RGD、コラーゲン、キチン、キトサン、エラスチン、並びにその任意の誘導体、アナログ、ホモログ、同族体、塩、コポリマー、及び組合せからなる群から選択される構成要素を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記薬剤が、ポリエチレングリコール、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ホスホリルコリン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヒルジン、又はその任意の誘導体、アナログ、ホモログ、同族体、塩、コポリマー、もしくは組合せを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記薬剤が、フリーラジカルスカベンジャー、一酸化窒素ドナー、ラパマイシン、エベロリムス、タクロリムス、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、クロベタゾール、イドキシフェン、タザロテン、並びにその任意のプロドラッグ、代謝物、アナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、及び組合せからなる群から選択される構成要素を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記フリーラジカルスカベンジャーが、2,2’,6,6’−テトラメチル−1−ピペリニルオキシフリーラジカル、4−アミノ−2,2’,6,6’−テトラメチル−1−ピペリニルオキシフリーラジカル、4−ヒドロキシ−2,2’,6,6’−テトラメチル−ピペリデン−1−オキシフリーラジカル、2,2’,3,4,5,5’−ヘキサメチル−3−イミダゾリニウム−1−イルオキシメチルスルフェートフリーラジカル、16−ドキシル−ステアリン酸フリーラジカル、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、並びにその任意のアナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、及び組合せからなる群から選択される構成要素を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記フリーラジカルスカベンジャーが、TEMPO、又はその任意のアナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、もしくは組合せを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記一酸化窒素ドナーが、S−ニトロソチオール、亜硝酸塩、N−オキソ−N−ニトロソアミン、一酸化窒素シンターゼの基質、ジアゼニウムジオレート、並びにその任意のアナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、及び組合せからなる群から選択される構成要素を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
又はLが、アミド、エステル、無水物、オルトエステル、全芳香族カーボネート、尿素、ウレタン、セミカルバゾン、イミン、オキシム、ケタール、アセタール、ジスルフィド、又はそれらの組合せからなる群から選択される構成要素を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の組成物及び薬剤を含む混和物を含む組成物。
【請求項13】
又はRが芳香族基を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記芳香族基が、p−フェニレン、m−フェニレン、o−フェニレン、及びその誘導体からなる群から選択される構成要素を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
が、フェニレン基又はその誘導体を含み;
及びRが、それぞれ独立に1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及びその誘導体からなる群から選択される構成要素を含み;
が、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、及びその誘導体からなる群から選択される構成要素を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
前記薬剤が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ホスホリルコリン、グリコサミノグリカン、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヒルジン、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化デキストラン、デルマタン硫酸、RGD、コラーゲン、キチン、キトサン、エラスチン、並びにその任意の誘導体、アナログ、ホモログ、同族体、塩、コポリマー、及び組合せからなる群から選択される構成要素を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
前記薬剤が、ポリエチレングリコール、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ホスホリルコリン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヒルジン、又はその任意の誘導体、アナログ、ホモログ、同族体、塩、コポリマー、もしくは組合せを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】
前記薬剤が、フリーラジカルスカベンジャー、一酸化窒素ドナー、ラパマイシン、エベロリムス、タクロリムス、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、クロベタゾール、イドキシフェン、タザロテン、並びにその任意のプロドラッグ、代謝物、アナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、及び組合せからなる群から選択される構成要素を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項19】
前記フリーラジカルスカベンジャーが、2,2’,6,6’−テトラメチル−1−ピペリニルオキシフリーラジカル、4−アミノ−2,2’,6,6’−テトラメチル−1−ピペリニルオキシフリーラジカル、4−ヒドロキシ−2,2’,6,6’−テトラメチル−ピペリデン−1−オキシフリーラジカル、2,2’,3,4,5,5’−ヘキサメチル−3−イミダゾリニウム−1−イルオキシメチルスルフェートフリーラジカル、16−ドキシル−ステアリン酸フリーラジカル、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、並びにその任意のアナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、及び組合せからなる群から選択される構成要素を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記フリーラジカルスカベンジャーが、TEMPO又はその任意のアナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、若しくは組合せを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記一酸化窒素ドナーが、S−ニトロソチオール、亜硝酸塩、N−オキソ−N−ニトロソアミン、一酸化窒素シンターゼの基質、ジアゼニウムジオレート、並びにその任意のアナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、及び組合せからなる群から選択される構成要素を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
請求項1に記載の組成物を含む医療品のためのコーティング。
【請求項23】
前記医療品がステントを備える、請求項22に記載のコーティング。
【請求項24】
請求項1に記載の組成物を含む医療品。
【請求項25】
ステントを備える、請求項24に記載の医療品。
【請求項26】
請求項12に記載の組成物を含む医療品のためのコーティング。
【請求項27】
前記医療品がステントを備える、請求項26に記載のコーティング。
【請求項28】
請求項12に記載の組成物を含む医療品。
【請求項29】
ステントを備える、請求項28に記載の医療品。
【請求項30】
少なくとも1つのポリオールと、少なくとも1つのポリカルボン酸と、場合により薬剤とからなる反応の生成物を含む医療品。
【請求項31】
前記反応生成物が、フェニレン基及び脂肪族基を含有するブロックコポリマーを含む、請求項30に記載の医療品。
【請求項32】
コーティングされた埋め込み型基材をさらに含む、請求項30に記載の医療品。
【請求項33】
前記コーティングされた埋め込み型基材がステントを備える、請求項32に記載の医療品。
【請求項34】
式:
【化2】


により表されるポリマーを含有するコーティングを含むステント。
[式中、R及びRは任意であり、それぞれ独立に置換、非置換、ヘテロ−、直鎖、分岐、環状、飽和、及び不飽和脂肪族基;並びに置換、非置換、及びヘテロ−芳香族基からなる群から選択される構成要素を含み;
及びRは、それぞれ独立に置換、非置換、ヘテロ−、直鎖、分岐、環状、飽和、及び不飽和脂肪族基;並びに置換、非置換、及びヘテロ−芳香族基からなる群から選択される構成要素を含み;
は任意の結合であり;
Xは任意の薬剤であり;
はXをポリマーに連結する任意の結合であり;
m及びnは0に等しくない整数である。]
【請求項35】
前記コーティングが、前記コーティングと混和又は結合することができる薬剤をさらに含む、請求項34に記載のステント。
【請求項36】
又はRが芳香族基を含む、請求項34に記載のステント。
【請求項37】
前記芳香族基が、p−フェニレン、m−フェニレン、o−フェニレン、及びその誘導体からなる群から選択される構成要素を含む、請求項36に記載のステント。
【請求項38】
がフェニレン基又はその誘導体を含み;
及びRが、それぞれ独立に1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及びその誘導体からなる群から選択される構成要素を含み;
が、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、及びそれらの誘導体からなる群から選択される構成要素を含む、請求項34に記載のステント。
【請求項39】
前記薬剤が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ホスホリルコリン、グリコサミノグリカン、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヒルジン、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化デキストラン、デルマタン硫酸、RGD、コラーゲン、キチン、キトサン、エラスチン、並びにその任意の誘導体、アナログ、ホモログ、同族体、塩、コポリマー、及び組合せからなる群から選択される構成要素を含む、請求項34に記載のステント。
【請求項40】
前記薬剤が、ポリエチレングリコール、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ホスホリルコリン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヒルジン、又はその任意の誘導体、アナログ、ホモログ、同族体、塩、コポリマー、もしくは組合せを含む、請求項34に記載のステント。
【請求項41】
前記薬剤が、フリーラジカルスカベンジャー、一酸化窒素ドナー、ラパマイシン、エベロリムス、タクロリムス、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、クロベタゾール、イドキシフェン、タザロテン、並びにその任意のプロドラッグ、代謝物、アナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、及び組合せからなる群から選択される構成要素を含む、請求項34に記載のステント。
【請求項42】
前記フリーラジカルスカベンジャーが、2,2’,6,6’−テトラメチル−1−ピペリニルオキシフリーラジカル、4−アミノ−2,2’,6,6’−テトラメチル−1−ピペリニルオキシフリーラジカル、4−ヒドロキシ−2,2’,6,6’−テトラメチル−ピペリデン−1−オキシフリーラジカル、2,2’,3,4,5,5’−ヘキサメチル−3−イミダゾリニウム−1−イルオキシメチルスルフェートフリーラジカル、16−ドキシル−ステアリン酸フリーラジカル、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、並びにその任意のアナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、及び組合せからなる群から選択される構成要素を含む、請求項41に記載のステント。
【請求項43】
前記フリーラジカルスカベンジャーが、TEMPO、又はその任意のアナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、もしくは組合せを含む、請求項41に記載のステント。
【請求項44】
前記一酸化窒素ドナーが、S−ニトロソチオール、亜硝酸塩、N−オキソ−N−ニトロソアミン、一酸化窒素シンターゼの基質、ジアゼニウムジオレート、並びにその任意のアナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、及び組合せからなる群から選択される構成要素を含む、請求項41に記載のステント。
【請求項45】
又はLが、アミド、エステル、無水物、オルトエステル、全芳香族カーボネート、尿素、ウレタン、セミカルバゾン、イミン、オキシム、ケタール、アセタール、ジスルフィド、又はそれらの組合せからなる群から選択される構成要素を含む、請求項34に記載のステント。
【請求項46】
埋め込み型基材を有する医療品又はコーティングを作製する工程を含む方法であって、
(a)式:
【化3】


により表されるポリマーを調製するステップと、
[式中、R及びRは任意であり、それぞれ独立に置換、非置換、ヘテロ−、直鎖、分岐、環状、飽和、及び不飽和脂肪族基;並びに置換、非置換、及びヘテロ−芳香族基からなる群から選択される構成要素を含み;
及びRは、それぞれ独立に置換、非置換、ヘテロ−、直鎖、分岐、環状、飽和、及び不飽和脂肪族基;並びに置換、非置換、及びヘテロ−芳香族基からなる群から選択される構成要素を含み;
は任意の結合であり;
Xは任意の薬剤であり;
は、Xを前記ポリマーに連結する任意の結合であり;
m及びnは0に等しくない整数である。]
(b)前記医療品又はコーティングを形成させるステップ(但し、前記医療品又はコーティングは前記ポリマーを含み、前記コーティングは埋め込み型基材の少なくとも一部に形成される)と、
(c)場合により前記医療品又はコーティングをアニールするステップと、
をさらに含む方法。
【請求項47】
前記医療品がステントを備える、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
又はRが芳香族基を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記芳香族基が、p−フェニレン、m−フェニレン、o−フェニレン、及びその誘導体からなる群から選択される構成要素を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
がフェニレン基又はその誘導体を含み;
及びRが、それぞれ1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及びそれらの誘導体からなる群から独立して選択される構成要素を含み;
が、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、及びその誘導体からなる群から選択される構成要素を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記薬剤が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ホスホリルコリン、グリコサミノグリカン、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヒルジン、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化デキストラン、デルマタン硫酸、RGD、コラーゲン、キチン、キトサン、エラスチン、並びにその任意の誘導体、アナログ、ホモログ、同族体、塩、コポリマー、及び組合せからなる群から選択される構成要素を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
前記薬剤が、ポリエチレングリコール、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ホスホリルコリン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヒルジン、又はその任意の誘導体、アナログ、ホモログ、同族体、塩、コポリマー、もしくは組合せを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
前記薬剤が、フリーラジカルスカベンジャー、一酸化窒素ドナー、ラパマイシン、エベロリムス、タクロリムス、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、クロベタゾール、イドキシフェン、タザロテン並びにその任意のプロドラッグ、代謝物、アナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、及び組合せからなる群から選択される構成要素を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
前記フリーラジカルスカベンジャーが、2,2’,6,6’−テトラメチル−1−ピペリニルオキシフリーラジカル、4−アミノ−2,2’,6,6’−テトラメチル−1−ピペリニルオキシフリーラジカル、4−ヒドロキシ−2,2’,6,6’−テトラメチル−ピペリデン−1−オキシフリーラジカル、2,2’,3,4,5,5’−ヘキサメチル−3−イミダゾリニウム−1−イルオキシメチルスルフェートフリーラジカル、16−ドキシル−ステアリン酸フリーラジカル、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、並びにその任意のアナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、及び組合せからなる群から選択される構成要素を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記フリーラジカルスカベンジャーが、TEMPO、又はその任意のアナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、もしくは組合せを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記一酸化窒素ドナーが、S−ニトロソチオール、亜硝酸塩、N−オキソ−N−ニトロソアミン、一酸化窒素シンターゼの基質、ジアゼニウムジオレート、並びにその任意のアナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、及び組合せからなる群から選択される構成要素を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記L又は前記Lが、アミド、エステル、無水物、オルトエステル、全芳香族カーボネート、尿素、ウレタン、セミカルバゾン、イミン、オキシム、ケタール、アセタール、ジスルフィド、又はそれらの組合せからなる群から選択される構成要素を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項58】
埋め込み型基材を有する医療品を作製する工程を含む方法であって、前記作製する工程が、
(i)請求項1に記載の組成物と薬剤とを含む混和物を調製するステップ、
(ii)埋め込み型基材を有する前記医療品を形成させるステップ、
(iii)場合により前記埋め込み型基材の少なくとも一部に前記混和物を含むコーティングを適用するステップ、及び
(iii)場合により前記医療品又はコーティングをアニールすること
を含む方法。
【請求項59】
前記医療品がステントを備える、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
又はRが芳香族基を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記芳香族基がp−フェニレン、m−フェニレン、o−フェニレン、及びその誘導体からなる群から選択される構成要素を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
がフェニレン基又はその誘導体を含み、
及びRが、それぞれ独立に1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及びその誘導体からなる群から選択される構成要素を含み、
が、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、及びその誘導体からなる群から選択される構成要素を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項63】
前記薬剤が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ホスホリルコリン、グリコサミノグリカン、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヒルジン、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化デキストラン、デルマタン硫酸、RGD、コラーゲン、キチン、キトサン、エラスチン、並びにその任意の誘導体、アナログ、ホモログ、同族体、塩、コポリマー、及び組合せからなる群から選択される構成要素を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項64】
前記薬剤が、ポリエチレングリコール、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ホスホリルコリン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヒルジン、又はその任意の誘導体、アナログ、ホモログ、同族体、塩、コポリマー、もしくは組合せを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項65】
前記薬剤が、フリーラジカルスカベンジャー、一酸化窒素ドナー、ラパマイシン、エベロリムス、タクロリムス、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、クロベタゾール、イドキシフェン、タザロテン、並びにその任意のプロドラッグ、代謝物、アナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、及び組合せからなる群から選択される構成要素を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項66】
前記フリーラジカルスカベンジャーが、2,2’,6,6’−テトラメチル−1−ピペリニルオキシフリーラジカル、4−アミノ−2,2’,6,6’−テトラメチル−1−ピペリニルオキシフリーラジカル、4−ヒドロキシ−2,2’,6,6’−テトラメチル−ピペリデン−1−オキシフリーラジカル、2,2’,3,4,5,5’−ヘキサメチル−3−イミダゾリニウム−1−イルオキシメチルスルフェートフリーラジカル、16−ドキシル−ステアリン酸フリーラジカル、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、並びにその任意のアナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、及び組合せからなる群から選択される構成要素を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記フリーラジカルスカベンジャーが、TEMPO、又はその任意のアナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、もしくは組合せを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記一酸化窒素ドナーが、S−ニトロソチオール、亜硝酸塩、N−オキソ−N−ニトロソアミン、一酸化窒素シンターゼの基質、ジアゼニウムジオレート、並びにその任意のアナログ、ホモログ、同族体、誘導体、塩、及び組合せからなる群から選択される構成要素を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
又はLが、アミド、エステル、無水物、オルトエステル、全芳香族カーボネート、尿素、ウレタン、セミカルバゾン、イミン、オキシム、ケタール、アセタール、ジスルフィド、又はそれらの組合せからなる群から選択される構成要素を含む、請求項58に記載の方法。

【公表番号】特表2008−521490(P2008−521490A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543313(P2007−543313)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/041997
【国際公開番号】WO2006/057929
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(507135788)アボット カーディオヴァスキュラー システムズ インコーポレイテッド (92)
【Fターム(参考)】