ポリエステル微粒子の製造方法
【課題】容易で効率よくポリエステル微粒子を製造できる製造方法を提供する。
【解決手段】溶融混練工程で、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを溶融混練して溶融混練物を得る。酸変性ポリαオレフィンワックスは、モル酸変性率が2mol%以上25mol%以下である。洗浄工程で、ポリエステルが難溶または不溶でかつ酸変性ポリαオレフィンワックスが易溶の溶剤と溶融混練物とを、溶融混練物中の酸変性ポリαオレフィンワックスを溶剤に溶解させる状態で混合して洗浄混合物を得る。分離工程で、洗浄混合物を固液分離し、略真球状で粒度分布が狭く、平均粒子径が1〜100μm以下の微細なポリエステル微粒子を得る。
【解決手段】溶融混練工程で、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを溶融混練して溶融混練物を得る。酸変性ポリαオレフィンワックスは、モル酸変性率が2mol%以上25mol%以下である。洗浄工程で、ポリエステルが難溶または不溶でかつ酸変性ポリαオレフィンワックスが易溶の溶剤と溶融混練物とを、溶融混練物中の酸変性ポリαオレフィンワックスを溶剤に溶解させる状態で混合して洗浄混合物を得る。分離工程で、洗浄混合物を固液分離し、略真球状で粒度分布が狭く、平均粒子径が1〜100μm以下の微細なポリエステル微粒子を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルの微粒子を製造するポリエステル微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば粉体塗料、トナー、化粧品添加剤、充填剤、フィルム製品などのアンチブロッキング剤などに、微粒子の樹脂が広く利用されている。この樹脂の微粒子を製造する方法としては、各種方法が知られている(例えば特許文献1ないし6参照)。
特許文献1に記載のものは、ポリエチレンテレフタレート(PolyEthylene Terephthalate:PET)樹脂および成形品再生用破砕品原料を、結晶化温度の166±10℃の範囲で加熱して結晶相を変化させて結晶化度を35%以上に加熱処理し、常温下で機械粉砕可能とする構成が採られている。
特許文献2に記載のものは、PET樹脂ペレットまたはPET樹脂成形品の回収物から得た細片と、ポリエステル樹脂または変性ポリエステルなどの変性剤を混合溶融して粗大ペレットを形成する。この粗大ペレットを約170℃で加熱して、常温下で機械粉砕可能またはジメチルアセトアミドを共通溶剤とした化学粉砕法可能な結晶化度を35%以上に加熱処理する構成が採られている。
特許文献3に記載のものは、ポリエチレンやポリエステル類などの熱可塑性樹脂Aと、この熱可塑性樹脂Aと相溶性がなく熱可塑性樹脂Aを分散させて微小球体を形成させるための連続相をなすポリアルキレンオキサイド類などの成分Bを溶融混合して冷却する。この後、熱可塑性樹脂Aの貧溶媒でかつ成分Bの良溶媒となる溶媒Sに浸漬し、溶融混合物を崩壊させ、溶媒S中に成分Bが溶解し熱可塑性樹脂Aの粒子が分散したサスペンジョンを得る。このサスペンジョンから熱可塑性樹脂Aの粒子を分離して取得する構成が採られている。
特許文献4に記載のものは、サーモトロピック液晶性ポリエステルなどの自己配向性を有する液晶高分子と、溶媒に可溶なポリエチレンテレフタレートなどの非液晶性高分子とを混合した後、これら液晶高分子および非液晶高分子の融解温度以上の温度でかつ液晶高分子が液晶状態を維持し得る温度に加熱して押出成形する。次いで、非液晶性高分子を溶媒で溶解除去し、所定の粒子径の液晶性高分子球状粒子を製造する構成が採られている。
特許文献5に記載のものは、オキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂などの溶融成形可能な水溶性高分子と、ポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂などの熱可塑性樹脂と、変成ポリオレフィン系樹脂とを、所定の溶融粘度で混合して溶融成形物を得る。この溶融成形物を水と接触させて水溶性高分子を除去し熱可塑性樹脂の微粒子を製造する構成が採られている。
特許文献6に記載のものは、例えばポリイミドや結晶性ポリマーであるポリエチレンなどの熱可塑性ポリマー(a)に、他の熱可塑性ポリマー(b)を溶融混練して、熱可塑性ポリマー(a)が分散相(島)で、他の熱可塑性ポリマー(b)がマトリックス(海)となるような海島構造をもった樹脂組成物を生成する。この樹脂組成物を、熱可塑性ポリマー(a)が溶解
せず他の熱可塑性ポリマー(b)が溶解するように、溶媒(c)に洗浄する。この後、熱可塑性ポリマー(a)と溶媒の混合物から、溶媒(c)を除去して球状微粉末を得る構成が採られている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−114961号公報
【特許文献2】特開2000−53892号公報
【特許文献3】特開昭61−9433号公報
【特許文献4】特開平2−281045号公報
【特許文献5】特開平9−165457号公報
【特許文献6】特開平10−176065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1および特許文献2に記載のような機械粉砕により熱可塑性樹脂を微粉末化する構成では、得られる粉末樹脂の粒径が粉砕時間に依存するので、微粉末を得るために粉砕時間が長くなり、また所定の粒径の微粉末樹脂を得るための分級工程が必要となる問題がある。さらには、粉砕粒子に糸状突起やヒゲ状突起を生じ、粉体として取り扱うことができないなどの問題がある。
また、特許文献2および特許文献3に記載のような化学粉砕により熱可塑性樹脂を微粉末化する構成では、球形に近い形状の微粉末が得られるものの、多量の溶媒が必要となり、製造コストの低減が図りにくく、多量の溶媒を処理する工程が必要であるとともに環境への悪影響がないように多量の溶媒を処理する設備や処理エネルギも必要となるなどの問題がある。
さらに、特許文献4ないし特許文献6に記載のような溶融混練により熱可塑性樹脂を微粉末化する構成では、微粉末化する熱可塑性樹脂に混合して洗浄除去する他の樹脂の混合比率が多く、得られる微粉末の熱可塑性樹脂の収率が比較的に低いなどの問題がある。
【0005】
本発明の目的は、このような点に鑑みて、容易で効率よくポリエステルの微粒子が得られるポリエステル微粒子の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に記載のポリエステル微粒子の製造方法は、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを、溶融混練して溶融混練物を得る溶融混練工程と、この溶融混練工程で得られた前記溶融混練物を、前記ポリエステルが難溶または不溶でかつ前記酸変性ポリαオレフィンワックスが易溶の溶剤と前記溶融混練物中の前記酸変性ポリαオレフィンワックスを溶剤に溶解させる状態で混合して洗浄混合物を得る洗浄工程と、この洗浄工程で得られた前記洗浄混合物を固液分離して微細球状のポリエステル微粒子を得る分離工程と、を実施することを特徴とする。
【0007】
この発明では、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを溶融混練して溶融混練物を得る。この後、洗浄工程で、ポリエステルが難溶または不溶でかつ前記酸変性ポリαオレフィンワックスが易溶の溶剤と溶融混練物とを、溶融混練物中の酸変性ポリαオレフィンワックスを溶剤に溶解させる状態で混合して洗浄混合物を得る。次いで、分離工程で、洗浄混合物を固液分離して微細球状のポリエステル微粒子を得る。
このことにより、比較的に少ない溶剤でかつ溶融混練物におけるポリエステルが比較的に高い混合割合で、略真球状で比較的に粒度分布が狭く、特に平均粒子径が1μm以上100μm以下の微細なポリエステル微粒子が従前の機械的固液分離装置を用いて得ることができ、良好な形状のポリエステル微粒子を効率よく容易に製造できる。
【0008】
そして、本発明では、前記ポリエステルおよび酸変性ポリαオレフィンワックスは、以下の式1で表される粘度比である
[式1]
((ηA)/(ηB))>103
(ηA):ポリエステルの260℃で剪断速度が103sec-1における見掛け溶融粘度[Pa・sec]
(ηB):酸変性ポリαオレフィンワックスの260℃で剪断速度が103sec-1における見掛け溶融粘度[Pa・sec]
構成とすることが好ましい。
この発明では、溶融混練工程で、ポリエステルの260℃で剪断速度が103sec-1における見掛け溶融粘度(ηA)[Pa・sec]と、酸変性ポリαオレフィンワックスの260℃で剪断速度が103sec-1における見掛け溶融粘度(ηB)[Pa・sec]との粘度比((ηA)/(ηB))が103より大きくなる条件でポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを溶融混練して溶融混練物を得る。
このことにより、比較的に少ない溶剤でかつ溶融混練物におけるポリエステルが比較的に高い混合割合で、略真球状で比較的に粒度分布が狭く、特に平均粒子径が1μm以上100μm以下の微細なポリエステル微粒子が従前の機械的固液分離装置を用いて得ることができ、良好な形状のポリエステル微粒子を効率よく容易に製造できる。
ここで、粘度比((ηA)/(ηB))が103以下となると、略真球状で微細なポリエステル微粒子が得られなくなるおそれがある。このことにより、粘度比((ηA)/(ηB))が103より大きくなる条件のポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを溶融混練することが好ましい。
【0009】
そして、本発明では、前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートのうちの少なくともいずれか一方である構成とすることが好ましい。
このことにより、例えば食料品容器などとして広く流通し、また比較的にリサイクル回収率が良好なポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートを利用するので、良好な形状のポリエステル微粒子を、比較的に安定して安価に提供できるとともに、リサイクル品を利用することによる環境面およびエネルギ面で好都合である。
【0010】
また、本発明では、前記酸変性ポリαオレフィンワックスは、ポリαオレフィンワックスが無水マレイン酸およびマレイン酸のうちの少なくともいずれか一方で酸変性されたものである構成とすることが好ましい。
このことにより、無水マレイン酸およびマレイン酸のうちの少なくともいずれか一方でポリαオレフィンワックスを酸変性した酸変性ポリαオレフィンワックスを用いるので、ポリエステルとの溶融混練性が良好でかつ溶剤による洗浄除去が容易、特に加圧や加熱を必要とせずに常温・常圧で洗浄除去でき、良好な形状のポリエステル微粒子をより効率よく容易に製造できる。
【0011】
さらに、本発明では、前記酸変性ポリαオレフィンワックスは、以下の化1で表される構成単位の共重合体である構成とすることが好ましい。
[化1]
(−CHR−CH2−)
R:HまたはCH3あるいはC2からC22の直鎖アルキル基
このことにより、RがHまたはCH3あるいはC2からC22の直鎖アルキル基である(−CHR−CH2−)で表される構成単位の共重合体の酸変性ポリαオレフィンワックスを用いるので、良好な形状の微粒子にさせるポリエステルとの良好な溶融混練状態が得られ、かつポリエステルを溶解せずに酸変性ポリαオレフィンワックスのみを溶解させて効率よく洗浄除去させる溶剤が容易に選定できるとともに効率的な洗浄除去が容易にでき、良好な形状のポリエステル微粒子をより効率よく容易に製造できる。
【0012】
また、本発明では、前記酸変性ポリαオレフィンワックスは、モル酸変性率が2mol%以上25mol%以下である構成とすることが好ましい。
このことにより、モル酸変性率が2mol%以上25mol%以下の酸変性ポリαオレフィンワックスを用いるので、良好な形状のポリエステル微粒子をより効率よく容易に製造できる。
なお、モル酸変性率の高い酸変性ポリαオレフィンワックスに酸変成されていないポリαオレフィンワックスを希釈することで、モル酸変性率が2mol%以上25mol%以下の酸変性ポリαオレフィンワックスを調整し、使用することができる。
ここで、酸変性ポリαオレフィンワックスのモル酸変性率が2mol%より少なくなると、ポリエステルがマトリックス相(海)、酸変性ポリαオレフィンがドメイン相(島)を構成する海島構造となり、ポリエステル微粒子が得られなくなるという不都合が生じるおそれがある。一方、酸変性ポリαオレフィンワックスのモル酸変性率が25mol%より多くなると、酸変性ポリαオレフィンワックスがゲル化し、やはりポリエステルがマトリックス相(海)、酸変性ポリαオレフィンがドメイン相(島)を構成する海島構造となり、ポリエステル微粒子が得られなくなるという不都合が生じるおそれがある。このため、酸変性ポリαオレフィンワックスのモル酸変性率が2mol%以上25mol%以下、好ましくは10mol%以上25mol%以下に設定される。
【0013】
そして、本発明では、前記溶融混練工程は、前記ポリエステルと前記酸変性ポリαオレフィンワックスとを、それぞれ70/30〜80/20の質量混合比で混合する構成とすることが好ましい。
このことにより、溶融混練工程で、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを、それぞれ70/30〜80/20の質量混合比で混合するので、収率よく良好な形状のポリエステル微粒子を製造でき、製造効率をより向上できる。
ここで、ポリエステル/酸変性ポリαオレフィンワックスの質量混合比が70/30よりポリエステルが少なくなると、得られるポリエステル微粒子の収率が低くなるという不都合が生じるおそれがある。一方、ポリエステル/酸変性ポリαオレフィンワックスの質量混合比が80/20よりポリエステルが多くなると、ポリエステルがマトリックス相(海)、酸変性ポリαオレフィンがドメイン相(島)を構成する海島構造となり、ポリエステル微粒子が得られなくなるという不都合が生じるおそれがある。このため、ポリエステル/酸変性ポリαオレフィンワックスの質量混合比は、70/30〜80/20に設定される。
【0014】
さらに、本発明では、前記ポリエステルは、ポリエステル樹脂ペレットとポリエステル樹脂成形品の回収物から得られた砕片とのうちの少なくともいずれか一方である構成とすることが好ましい。
このことにより、ポリエステル樹脂ペレットとポリエステル樹脂成形品の回収物から得られた砕片とのうちの少なくともいずれか一方をポリエステルの原料として用いるので、例えば食料品容器などとして広く流通し、また比較的にリサイクル回収率が良好なポリエチレンテレフタレートなどを利用でき、良好な形状のポリエステル微粒子を、比較的に安定して安価に提供できるとともに、リサイクル品を利用することによる環境面およびエネルギ面で好都合である。
【0015】
また、本発明では、前記溶融混練工程は、バンバリミキサ、二軸混練機、単軸押出機のうちのいずれかにより、前記ポリエステルと前記酸変性ポリαオレフィンワックスとを溶融混練する構成とすることが好ましい。
このことにより、溶融混練工程で、ポリエステルと前記酸変性ポリαオレフィンワックスとを、バンバリミキサ、二軸混練機、単軸押出機のうちのいずれかにより溶融混練するので、ポリエステルを良好な形状の微粒子として得るための酸変性ポリαオレフィンワックスとの良好な溶融混練状態が得られ、より良好な形状の微粒子として容易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のポリエステル微粒子の製造方法に係る一実施の形態について説明する。〔ポリエステル微粒子の構成〕
本実施の形態のポリエステル微粒子は、例えば、粉体塗料、トナー、化粧品添加剤、充填剤、フィルム製品などのアンチブロッキング剤などに用いられる。
このポリエステル微粒子は、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルにて、平均粒子径が1μm以上100μm以下の真球状に形成されている。なお、ポリエステルとしては、これらポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートに限られるものではなく、例えばポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートのうちの少なくともいずれか1種、もしくはこれら2種以上の混合物、あるいはこれら2種以上の共重合体、それらの組み合せなどが例示できるが、それらに限られるものではない。
また、ポリエステルとしては、ポリエステル樹脂ペレットを用いるのみならず、例えばポリエステル樹脂成形品の回収物から得られた砕片、あるいはこの砕片とポリエステル樹脂ペレットとの混合物を用いることができる。そして、ペレットとしては、例えば柱状、短冊状、粒状など、各種形態を対象とすることができる。
【0017】
〔ポリエステル微粒子の製造動作〕
次に、本発明のポリエステル微粒子を製造する製造動作について説明する。
【0018】
まず、溶融混練工程を実施する。
この溶融混練工程では、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを溶融混練して溶融混練物を得る。
例えば、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとは、以下の式1で表される粘度比の関係で溶融混練される。
[式1]
((ηA)/(ηB))>103
(ηA):ポリエステルの260℃で剪断速度が103sec-1における見掛け溶融粘度[Pa・sec]
(ηB):酸変性ポリαオレフィンワックスの260℃で剪断速度が103sec-1における見掛け溶融粘度[Pa・sec]
ここで、粘度比((ηA)/(ηB))が103以下となると、略真球状で微細なポリエステル微粒子が得られなくなることにより、式1の条件を満足する粘度比に設定する。
【0019】
そして、ポリエステルに溶融混練される酸変性ポリαオレフィンワックスとしては、例えばポリαオレフィンワックスが無水マレイン酸およびマレイン酸のうちの少なくともいずれか一方で酸変性されたものが例示できる。なお、無水マレイン酸やマレイン酸による酸変性に限らず、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、ソルビン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸、および、これらの無水物やエステル化物などにより酸変性されたものなどでもよい。
また、RがHまたはCH3あるいはC2からC22の直鎖アルキル基である(−CHR−CH2−)で表される構成単位の共重合体の酸変性ポリαオレフィンワックスが利用できる。
そして、特に、モル酸変性率が2mol%以上25mol%以下、好ましくは10mol%以上25mol%以下の酸変性ポリαオレフィンワックスを用いることが好ましい。ここで、酸変性ポリαオレフィンワックスのモル酸変性率が2mol%より少なくなると、ポリエステルがマトリックス相(海)、酸変性ポリαオレフィンがドメイン相(島)を構成する海島構造となり、ポリエステル微粒子が得られなくなるという不都合が生じるおそれがある。一方、酸変性ポリαオレフィンワックスのモル酸変性率が25mol%より多くなると、酸変性ポリαオレフィンワックスがゲル化し、やはりポリエステルがマトリックス相(海)、酸変性ポリαオレフィンがドメイン相(島)を構成する海島構造となり、ポリエステル微粒子が得られなくなるという不都合が生じるおそれがある。このため、酸変性ポリαオレフィンワックスのモル酸変性率が2mol%以上25mol%以下、特に10mol%以上25mol%以下に設定することが好ましい。
なお、モル酸変性率の測定としては、例えば、変性する前のポリαオレフィンワックスと、マレイン酸および無水マレイン酸との混合物をIR測定して特徴的なカルボニル(1600〜1900cm-1)の吸収量と、マレイン酸/無水マレイン酸の仕込量とから、図1に示すように、検量線を作成する。そして、酸変性ポリαオレフィンワックスをIR測定し、得られたカルボニルの吸収量と、上記検量線とから、変性率を認識し、酸変性重量%を算出する。その後、GPC測定(Gel Permeation Chromatography:ゲル透過クロマトグラフィ)から得られた変成する前のポリαオレフィンワックスの分子量と、酸変性重量%とから算出する方法が例示できる。
【0020】
また、溶融混練工程では、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを、それぞれ70/30〜80/20の質量混合比で混合することが好ましい。
ここで、ポリエステル/酸変性ポリαオレフィンワックスの質量混合比が70/30よりポリエステルが少なくなると、得られるポリエステル微粒子の収率が低くなるという不都合が生じるおそれがある。一方、ポリエステル/酸変性ポリαオレフィンワックスの質量混合比が80/20よりポリエステルが多くなると、ポリエステルがマトリックス相(海)、酸変性ポリαオレフィンがドメイン相(島)を構成する海島構造となり、ポリエステル微粒子が得られなくなるという不都合が生じるおそれがある。
このため、ポリエステル/酸変性ポリαオレフィンワックスの質量混合比を70/30〜80/20に設定することが好ましい。
【0021】
そして、溶融混練工程におけるポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとの溶融混練としては、例えば、バンバリミキサ、二軸混練機、単軸押出機のうちのいずれかを用いることが好ましい。なお、これらに限られるものではなく、例えば加圧ニーダ、ミキシングロールなどを用いることも可能である。
この溶融混練時、ポリエステルの融点より10℃以上高い温度で加熱溶融混練する。ここで、溶融混練時の加熱温度がポリエステルの融点+10℃より低くなると、良好な混練状態が得られない、すなわち混練不足となりポリエステル微粒子が得られなくなるおそれがあるので、ポリエステルの融点より10℃以上高い温度に加熱しつつ溶融混練することが好ましい。
このようにして、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを溶融混練することで、溶融混練物が得られる。
【0022】
この溶融混練工程後に洗浄工程が実施される。洗浄工程では、溶融混練工程で得られた溶融混練物を、ポリエステルが難溶または不溶でかつ酸変性ポリαオレフィンワックスが易溶の溶剤と、溶融混練物中の酸変性ポリαオレフィンワックスを溶剤に溶解させる状態で混合して洗浄混合物を得る。
溶剤としては、酸変性ポリαオレフィンワックスが易溶である、例えばキシレン、トルエン、メチルシクロヘキサン、ヘプタンなどが例示できるが、これらに限られるものではない。
そして、溶剤中に溶融混練物を攪拌混合することで、溶融混練物中の酸変性ポリαオレフィンワックスのみが溶剤に溶解する状態となり、ポリエステルが溶剤にて洗浄された状態が得られる。
【0023】
この洗浄工程後に分離工程が実施される。この分離工程では、洗浄工程で得られた洗浄混合物、すなわち酸変性ポリαオレフィンワックスが溶解した溶剤である洗浄液とポリエステルとが混合する洗浄混合物を、固液分離して微細球状のポリエステル微粒子を得る。
固液分離としては、例えば、フィルタ、メッシュなどによる濾過が例示できるが、例えば静置沈殿などの沈降分離や遠心分離など、各種固液分離方法を適用できる。
このように固液分離にて分集した固形分が、略真球状で比較的に粒度分布が狭く、特に平均粒径が100μm以下の微細なポリエステル微粒子として得られる。
【0024】
〔ポリエステル微粒子の作用効果〕
上述したように、上記実施の形態では、溶融混練工程で、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを溶融混練して溶融混練物を得る。この後、洗浄工程で、ポリエステルが難溶または不溶でかつ前記酸変性ポリαオレフィンワックスが易溶の溶剤と溶融混練物とを、溶融混練物中の酸変性ポリαオレフィンワックスを溶剤に溶解させる状態で混合して洗浄混合物を得る。次いで、分離工程で、洗浄混合物を固液分離して微細球状のポリエステル微粒子を得る。
このため、比較的に少ない溶剤でかつ溶融混練物におけるポリエステルが比較的に高い混合割合で、略真球状で比較的に粒度分布が狭く、特に平均粒子径が1μm以上100μm以下の微細なポリエステル微粒子が従前の機械的固液分離装置を用いて得ることができ、良好な形状のポリエステル微粒子を効率よく容易に製造できる。
【0025】
そして、溶融混練工程におけるポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとの溶融混練では、ポリエステルの260℃で剪断速度が103sec-1における見掛け溶融粘度(ηA)[Pa・sec]と、酸変性ポリαオレフィンワックスの260℃で剪断速度が103sec-1における見掛け溶融粘度(ηB)[Pa・sec]との粘度比((ηA)/(ηB))が103より大きくなる条件とすることが好ましい。
このことにより、良好な形状のポリエステル微粒子を効率よく容易に製造できる。
【0026】
そして、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートのうちの少なくともいずれか一方であることが好ましい。
このため、例えば食料品容器などとして広く流通し、また比較的にリサイクル回収率が良好なポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートを利用するので、良好な形状のポリエステル微粒子を、比較的に安定して安価に提供できるとともに、リサイクル品を利用することによる環境面およびエネルギ面で好都合である。
特に、ポリエステルとして、ポリエステル樹脂ペレットとポリエステル樹脂成形品の回収物から得られた砕片とのうちの少なくともいずれか一方をポリエステルの原料として用いることが好ましい。
このため、良好な形状のポリエステル微粒子を、比較的に安定して安価に提供できるとともに、リサイクル品を利用することにより環境面およびエネルギ面で好都合である。
【0027】
また、酸変性ポリαオレフィンワックスとしては、ポリαオレフィンワックスが無水マレイン酸およびマレイン酸のうちの少なくともいずれか一方で酸変性されたものであることが好ましい。
このため、無水マレイン酸およびマレイン酸のうちの少なくともいずれか一方でポリαオレフィンワックスを酸変性した酸変性ポリαオレフィンワックスを用いるので、ポリエステルとの溶融混練性が良好でかつ溶剤による洗浄除去が容易、特に加圧や加熱を必要とせずに常温・常圧で洗浄除去でき、良好な形状のポリエステル微粒子をより効率よく容易に製造できる。
【0028】
さらに、酸変性ポリαオレフィンワックスとしては、RがHまたはCH3あるいはC2からC22の直鎖アルキル基である(−CHR−CH2−)で表される構成単位の共重合体の酸変性ポリαオレフィンワックスを用いることが好ましい。
このため、良好な形状の微粒子にさせるポリエステルとの良好な溶融混練状態が得られ、かつポリエステルを溶解せずに酸変性ポリαオレフィンワックスのみを溶解させて効率よく洗浄除去させる溶剤が容易に選定できるとともに効率的な洗浄除去が容易にでき、良好な形状のポリエステル微粒子をより効率よく容易に製造できる。
【0029】
そしてさらに、モル酸変性率が2mol%以上25mol%以下、特に10mol%以上25mol%以下の酸変性ポリαオレフィンワックスを用いることが好ましい。
このため、良好な形状のポリエステル微粒子をより効率よく容易に製造できる。
【0030】
また、ポリエステル微粒子を製造する製造工程における溶融混練工程では、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを、それぞれ70/30〜80/20の質量混合比で混合することが好ましい。
このため、収率よく良好な形状のポリエステル微粒子を製造でき、製造効率をより向上できる。
そして、溶融混練工程では、ポリエステルと前記酸変性ポリαオレフィンワックスとを、バンバリミキサ、二軸混練機、単軸押出機のうちのいずれかにより溶融混練することが好ましい。
このため、ポリエステルを良好な形状の微粒子として得るための酸変性ポリαオレフィンワックスとの良好な溶融混練状態が得られ、より良好な形状の微粒子として容易に製造できる。
さらに、溶融混練工程では、ポリエステルの融点より10℃以上高い温度で加熱溶融混練することが好ましい。
このため、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとが、酸変性ポリαオレフィンワックスを溶剤により洗浄除去させることでポリエステルが略真球状の微粒子として形成される良好な混練状態で容易に混練でき、効率よく容易に良好な形状のポリエステル微粒子を得ることができる。
【0031】
〔実施の形態の変形例〕
なお、以上に説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的および効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造および形状などは、本発明の目的および効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状などとしても問題はない。
【0032】
すなわち、本発明のポリエステル微粒子の製造方法として、ポリエステル微粒子としては、上述したように、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートに限らず、いずれのポリエステルが利用でき、またポリエステル樹脂ペレットやポリエステル樹脂成形品の回収物から得られた砕片に限られるものではない。
また、酸変性ポリαオレフィンワックスとしても、無水マレイン酸やマレイン酸にて酸変性されたポリαオレフィンワックスに限らず、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、ソルビン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸、および、これらの無水物やエステル化物、これらの組み合わせなどにて酸変性したポリαオレフィンワックスなどでもよく、RがHまたはCH3あるいはC2からC22の直鎖アルキル基である(−CHR−CH2−)で表される構成単位の共重合体の酸変性ポリαオレフィンワックスに限られない。さらに、酸変性ポリαオレフィンワックスのモル酸変性率が2mol%以上25mol%以下に限られるものでもない。
さらに、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとの溶融混合比として、それぞれ70/30〜80/20の質量混合比に限られるものでもない。すなわち、例えば酸変性ポリαオレフィンワックスの量が多くなるなどしてもよい。逆に、本発明によれば、この質量混合比でも、略真球状の微細なポリエステル微粒子を得ることができる。
【0033】
また、製造工程における溶融混合工程として、例えばバンバリミキサ、二軸混練機、単軸押出機を用いる方法に限らず、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを、略真球状の微細なポリエステル微粒子に形成できる溶融混練状態が得られる例えば加圧ニーダ、ミキシングロールなどの混合方式などをも利用できる。
すなわち、モル酸変性率が2mol%以上25mol%以下の酸変性ポリαオレフィンワックスを用いることが本発明として極めて重要な構成である。
【0034】
その他、本発明の実施における具体的な構造および形状などは、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【実施例1】
【0035】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は実施例などの内容に何ら限定されるものではない。
【0036】
〔試料〕
以下の表1および表2に示す各配合組成で、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製 商品名;50C150)を用いて270℃で10分間溶融混練して溶融混練物を得る。なお、表1および表2において、ポリエチレンテレフタレートは、市販の飲料用PETボトルを粉砕したものを使用した。また、直鎖アルキル基R(化1)の炭素数は、例えば「16/14」は炭素数16のものと炭素数14のものとの共重合体を意味し、「3/14/16」は炭素数3のものと炭素数14のものと炭素数16のものとの共重合体を意味するものとして記載する。
そして、これら溶融混練物を、溶剤としてキシレンを用いて常温で3回洗浄し、配合した酸変性ポリαオレフィンワックスを洗浄除去し、ポリエステルであるポリエチレンテレフタレート微粒子を得た。これら得られたポリエチレンテレフタレート微粒子を走査型電子顕微鏡(株式会社キーエンス(KEYENCE)社製 商品名;VE−8800)により、粒形状を観察した。これら実施例1ないし実施例8の走査型電子顕微鏡写真を、図2ないし図9に示す。
また、実施例1ないし実施例8の配合で、上述したラボプラストミルにより得られた溶融混練物と、キシレンとを質量混合比で10/90で混合した混合物をガラス容器に入れ、それぞれを超音波洗浄器(BRANSON社製 商品名;1510J−MT)により、常温・常圧で10分間洗浄した。この後、静置沈降させ、洗浄液である上澄み液、すなわちキシレンおよび酸変性ポリαオレフィンワックスの混合溶液である洗浄液を除去する。これら超音波洗浄および洗浄液の除去を3回繰り返し、60℃で乾燥し、ポリエチレンテレフタレート微粒子を得た。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
一方、比較試料として、表3に示す配合組成で、上述したラボプラストミルを用いて270℃で10分間溶融混練して溶融混練物を得た。なお、比較例1ないし比較例4では、ポリエチレンテレフタレートがマトリックス相、酸変性ポリαオレフィンワックスがドメイン相(島)を構成する海島構造となったため、ポリエチレンテレフタレート微粒子を得ることができなかった。このため、比較例1ないし比較例4の溶融混練物を液体窒素中で冷却した後に凍結破断し、上述したようにキシレンにて洗浄して乾燥後、破断面を走査型電子顕微鏡により観察した。これら走査型電子顕微鏡写真を、図10ないし図13に示す。なお、表3において、直鎖アルキル基R(化1)の炭素数は、上述した表1および表2と同様に、記載の炭素数のものの共重合体を意味するものとして記載する。
【0040】
【表3】
【0041】
〔評価〕
これら図2ないし図13に示す電子顕微鏡写真からも分かるように、本発明によれば、略真球状で比較的に粒径がそろった良好なポリエチレンテレフタレート微粒子が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のポリエステル微粒子は、例えば粉体塗料、トナー、化粧品添加剤、充填剤、フィルム製品などのアンチブロッキング剤などに用いられる樹脂微粒子として、広く利用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る酸変性ポリαオレフィンワックスの酸変性量の設定を説明するためのグラフである。
【図2】本発明に係る実施例1におけるテストピースの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図3】本発明に係る実施例2におけるテストピースの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図4】本発明に係る実施例3におけるテストピースの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図5】本発明に係る実施例4におけるテストピースの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図6】本発明に係る実施例5におけるテストピースの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図7】本発明に係る実施例6におけるテストピースの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図8】本発明に係る実施例7におけるテストピースの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図9】本発明に係る実施例8におけるテストピースの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図10】本発明を説明するための比較例1におけるテストピースの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図11】本発明を説明するための比較例2におけるテストピースの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図12】本発明を説明するための比較例3におけるテストピースの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図13】本発明を説明するための比較例4におけるテストピースの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルの微粒子を製造するポリエステル微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば粉体塗料、トナー、化粧品添加剤、充填剤、フィルム製品などのアンチブロッキング剤などに、微粒子の樹脂が広く利用されている。この樹脂の微粒子を製造する方法としては、各種方法が知られている(例えば特許文献1ないし6参照)。
特許文献1に記載のものは、ポリエチレンテレフタレート(PolyEthylene Terephthalate:PET)樹脂および成形品再生用破砕品原料を、結晶化温度の166±10℃の範囲で加熱して結晶相を変化させて結晶化度を35%以上に加熱処理し、常温下で機械粉砕可能とする構成が採られている。
特許文献2に記載のものは、PET樹脂ペレットまたはPET樹脂成形品の回収物から得た細片と、ポリエステル樹脂または変性ポリエステルなどの変性剤を混合溶融して粗大ペレットを形成する。この粗大ペレットを約170℃で加熱して、常温下で機械粉砕可能またはジメチルアセトアミドを共通溶剤とした化学粉砕法可能な結晶化度を35%以上に加熱処理する構成が採られている。
特許文献3に記載のものは、ポリエチレンやポリエステル類などの熱可塑性樹脂Aと、この熱可塑性樹脂Aと相溶性がなく熱可塑性樹脂Aを分散させて微小球体を形成させるための連続相をなすポリアルキレンオキサイド類などの成分Bを溶融混合して冷却する。この後、熱可塑性樹脂Aの貧溶媒でかつ成分Bの良溶媒となる溶媒Sに浸漬し、溶融混合物を崩壊させ、溶媒S中に成分Bが溶解し熱可塑性樹脂Aの粒子が分散したサスペンジョンを得る。このサスペンジョンから熱可塑性樹脂Aの粒子を分離して取得する構成が採られている。
特許文献4に記載のものは、サーモトロピック液晶性ポリエステルなどの自己配向性を有する液晶高分子と、溶媒に可溶なポリエチレンテレフタレートなどの非液晶性高分子とを混合した後、これら液晶高分子および非液晶高分子の融解温度以上の温度でかつ液晶高分子が液晶状態を維持し得る温度に加熱して押出成形する。次いで、非液晶性高分子を溶媒で溶解除去し、所定の粒子径の液晶性高分子球状粒子を製造する構成が採られている。
特許文献5に記載のものは、オキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂などの溶融成形可能な水溶性高分子と、ポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂などの熱可塑性樹脂と、変成ポリオレフィン系樹脂とを、所定の溶融粘度で混合して溶融成形物を得る。この溶融成形物を水と接触させて水溶性高分子を除去し熱可塑性樹脂の微粒子を製造する構成が採られている。
特許文献6に記載のものは、例えばポリイミドや結晶性ポリマーであるポリエチレンなどの熱可塑性ポリマー(a)に、他の熱可塑性ポリマー(b)を溶融混練して、熱可塑性ポリマー(a)が分散相(島)で、他の熱可塑性ポリマー(b)がマトリックス(海)となるような海島構造をもった樹脂組成物を生成する。この樹脂組成物を、熱可塑性ポリマー(a)が溶解
せず他の熱可塑性ポリマー(b)が溶解するように、溶媒(c)に洗浄する。この後、熱可塑性ポリマー(a)と溶媒の混合物から、溶媒(c)を除去して球状微粉末を得る構成が採られている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−114961号公報
【特許文献2】特開2000−53892号公報
【特許文献3】特開昭61−9433号公報
【特許文献4】特開平2−281045号公報
【特許文献5】特開平9−165457号公報
【特許文献6】特開平10−176065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1および特許文献2に記載のような機械粉砕により熱可塑性樹脂を微粉末化する構成では、得られる粉末樹脂の粒径が粉砕時間に依存するので、微粉末を得るために粉砕時間が長くなり、また所定の粒径の微粉末樹脂を得るための分級工程が必要となる問題がある。さらには、粉砕粒子に糸状突起やヒゲ状突起を生じ、粉体として取り扱うことができないなどの問題がある。
また、特許文献2および特許文献3に記載のような化学粉砕により熱可塑性樹脂を微粉末化する構成では、球形に近い形状の微粉末が得られるものの、多量の溶媒が必要となり、製造コストの低減が図りにくく、多量の溶媒を処理する工程が必要であるとともに環境への悪影響がないように多量の溶媒を処理する設備や処理エネルギも必要となるなどの問題がある。
さらに、特許文献4ないし特許文献6に記載のような溶融混練により熱可塑性樹脂を微粉末化する構成では、微粉末化する熱可塑性樹脂に混合して洗浄除去する他の樹脂の混合比率が多く、得られる微粉末の熱可塑性樹脂の収率が比較的に低いなどの問題がある。
【0005】
本発明の目的は、このような点に鑑みて、容易で効率よくポリエステルの微粒子が得られるポリエステル微粒子の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に記載のポリエステル微粒子の製造方法は、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを、溶融混練して溶融混練物を得る溶融混練工程と、この溶融混練工程で得られた前記溶融混練物を、前記ポリエステルが難溶または不溶でかつ前記酸変性ポリαオレフィンワックスが易溶の溶剤と前記溶融混練物中の前記酸変性ポリαオレフィンワックスを溶剤に溶解させる状態で混合して洗浄混合物を得る洗浄工程と、この洗浄工程で得られた前記洗浄混合物を固液分離して微細球状のポリエステル微粒子を得る分離工程と、を実施することを特徴とする。
【0007】
この発明では、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを溶融混練して溶融混練物を得る。この後、洗浄工程で、ポリエステルが難溶または不溶でかつ前記酸変性ポリαオレフィンワックスが易溶の溶剤と溶融混練物とを、溶融混練物中の酸変性ポリαオレフィンワックスを溶剤に溶解させる状態で混合して洗浄混合物を得る。次いで、分離工程で、洗浄混合物を固液分離して微細球状のポリエステル微粒子を得る。
このことにより、比較的に少ない溶剤でかつ溶融混練物におけるポリエステルが比較的に高い混合割合で、略真球状で比較的に粒度分布が狭く、特に平均粒子径が1μm以上100μm以下の微細なポリエステル微粒子が従前の機械的固液分離装置を用いて得ることができ、良好な形状のポリエステル微粒子を効率よく容易に製造できる。
【0008】
そして、本発明では、前記ポリエステルおよび酸変性ポリαオレフィンワックスは、以下の式1で表される粘度比である
[式1]
((ηA)/(ηB))>103
(ηA):ポリエステルの260℃で剪断速度が103sec-1における見掛け溶融粘度[Pa・sec]
(ηB):酸変性ポリαオレフィンワックスの260℃で剪断速度が103sec-1における見掛け溶融粘度[Pa・sec]
構成とすることが好ましい。
この発明では、溶融混練工程で、ポリエステルの260℃で剪断速度が103sec-1における見掛け溶融粘度(ηA)[Pa・sec]と、酸変性ポリαオレフィンワックスの260℃で剪断速度が103sec-1における見掛け溶融粘度(ηB)[Pa・sec]との粘度比((ηA)/(ηB))が103より大きくなる条件でポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを溶融混練して溶融混練物を得る。
このことにより、比較的に少ない溶剤でかつ溶融混練物におけるポリエステルが比較的に高い混合割合で、略真球状で比較的に粒度分布が狭く、特に平均粒子径が1μm以上100μm以下の微細なポリエステル微粒子が従前の機械的固液分離装置を用いて得ることができ、良好な形状のポリエステル微粒子を効率よく容易に製造できる。
ここで、粘度比((ηA)/(ηB))が103以下となると、略真球状で微細なポリエステル微粒子が得られなくなるおそれがある。このことにより、粘度比((ηA)/(ηB))が103より大きくなる条件のポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを溶融混練することが好ましい。
【0009】
そして、本発明では、前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートのうちの少なくともいずれか一方である構成とすることが好ましい。
このことにより、例えば食料品容器などとして広く流通し、また比較的にリサイクル回収率が良好なポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートを利用するので、良好な形状のポリエステル微粒子を、比較的に安定して安価に提供できるとともに、リサイクル品を利用することによる環境面およびエネルギ面で好都合である。
【0010】
また、本発明では、前記酸変性ポリαオレフィンワックスは、ポリαオレフィンワックスが無水マレイン酸およびマレイン酸のうちの少なくともいずれか一方で酸変性されたものである構成とすることが好ましい。
このことにより、無水マレイン酸およびマレイン酸のうちの少なくともいずれか一方でポリαオレフィンワックスを酸変性した酸変性ポリαオレフィンワックスを用いるので、ポリエステルとの溶融混練性が良好でかつ溶剤による洗浄除去が容易、特に加圧や加熱を必要とせずに常温・常圧で洗浄除去でき、良好な形状のポリエステル微粒子をより効率よく容易に製造できる。
【0011】
さらに、本発明では、前記酸変性ポリαオレフィンワックスは、以下の化1で表される構成単位の共重合体である構成とすることが好ましい。
[化1]
(−CHR−CH2−)
R:HまたはCH3あるいはC2からC22の直鎖アルキル基
このことにより、RがHまたはCH3あるいはC2からC22の直鎖アルキル基である(−CHR−CH2−)で表される構成単位の共重合体の酸変性ポリαオレフィンワックスを用いるので、良好な形状の微粒子にさせるポリエステルとの良好な溶融混練状態が得られ、かつポリエステルを溶解せずに酸変性ポリαオレフィンワックスのみを溶解させて効率よく洗浄除去させる溶剤が容易に選定できるとともに効率的な洗浄除去が容易にでき、良好な形状のポリエステル微粒子をより効率よく容易に製造できる。
【0012】
また、本発明では、前記酸変性ポリαオレフィンワックスは、モル酸変性率が2mol%以上25mol%以下である構成とすることが好ましい。
このことにより、モル酸変性率が2mol%以上25mol%以下の酸変性ポリαオレフィンワックスを用いるので、良好な形状のポリエステル微粒子をより効率よく容易に製造できる。
なお、モル酸変性率の高い酸変性ポリαオレフィンワックスに酸変成されていないポリαオレフィンワックスを希釈することで、モル酸変性率が2mol%以上25mol%以下の酸変性ポリαオレフィンワックスを調整し、使用することができる。
ここで、酸変性ポリαオレフィンワックスのモル酸変性率が2mol%より少なくなると、ポリエステルがマトリックス相(海)、酸変性ポリαオレフィンがドメイン相(島)を構成する海島構造となり、ポリエステル微粒子が得られなくなるという不都合が生じるおそれがある。一方、酸変性ポリαオレフィンワックスのモル酸変性率が25mol%より多くなると、酸変性ポリαオレフィンワックスがゲル化し、やはりポリエステルがマトリックス相(海)、酸変性ポリαオレフィンがドメイン相(島)を構成する海島構造となり、ポリエステル微粒子が得られなくなるという不都合が生じるおそれがある。このため、酸変性ポリαオレフィンワックスのモル酸変性率が2mol%以上25mol%以下、好ましくは10mol%以上25mol%以下に設定される。
【0013】
そして、本発明では、前記溶融混練工程は、前記ポリエステルと前記酸変性ポリαオレフィンワックスとを、それぞれ70/30〜80/20の質量混合比で混合する構成とすることが好ましい。
このことにより、溶融混練工程で、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを、それぞれ70/30〜80/20の質量混合比で混合するので、収率よく良好な形状のポリエステル微粒子を製造でき、製造効率をより向上できる。
ここで、ポリエステル/酸変性ポリαオレフィンワックスの質量混合比が70/30よりポリエステルが少なくなると、得られるポリエステル微粒子の収率が低くなるという不都合が生じるおそれがある。一方、ポリエステル/酸変性ポリαオレフィンワックスの質量混合比が80/20よりポリエステルが多くなると、ポリエステルがマトリックス相(海)、酸変性ポリαオレフィンがドメイン相(島)を構成する海島構造となり、ポリエステル微粒子が得られなくなるという不都合が生じるおそれがある。このため、ポリエステル/酸変性ポリαオレフィンワックスの質量混合比は、70/30〜80/20に設定される。
【0014】
さらに、本発明では、前記ポリエステルは、ポリエステル樹脂ペレットとポリエステル樹脂成形品の回収物から得られた砕片とのうちの少なくともいずれか一方である構成とすることが好ましい。
このことにより、ポリエステル樹脂ペレットとポリエステル樹脂成形品の回収物から得られた砕片とのうちの少なくともいずれか一方をポリエステルの原料として用いるので、例えば食料品容器などとして広く流通し、また比較的にリサイクル回収率が良好なポリエチレンテレフタレートなどを利用でき、良好な形状のポリエステル微粒子を、比較的に安定して安価に提供できるとともに、リサイクル品を利用することによる環境面およびエネルギ面で好都合である。
【0015】
また、本発明では、前記溶融混練工程は、バンバリミキサ、二軸混練機、単軸押出機のうちのいずれかにより、前記ポリエステルと前記酸変性ポリαオレフィンワックスとを溶融混練する構成とすることが好ましい。
このことにより、溶融混練工程で、ポリエステルと前記酸変性ポリαオレフィンワックスとを、バンバリミキサ、二軸混練機、単軸押出機のうちのいずれかにより溶融混練するので、ポリエステルを良好な形状の微粒子として得るための酸変性ポリαオレフィンワックスとの良好な溶融混練状態が得られ、より良好な形状の微粒子として容易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のポリエステル微粒子の製造方法に係る一実施の形態について説明する。〔ポリエステル微粒子の構成〕
本実施の形態のポリエステル微粒子は、例えば、粉体塗料、トナー、化粧品添加剤、充填剤、フィルム製品などのアンチブロッキング剤などに用いられる。
このポリエステル微粒子は、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルにて、平均粒子径が1μm以上100μm以下の真球状に形成されている。なお、ポリエステルとしては、これらポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートに限られるものではなく、例えばポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートのうちの少なくともいずれか1種、もしくはこれら2種以上の混合物、あるいはこれら2種以上の共重合体、それらの組み合せなどが例示できるが、それらに限られるものではない。
また、ポリエステルとしては、ポリエステル樹脂ペレットを用いるのみならず、例えばポリエステル樹脂成形品の回収物から得られた砕片、あるいはこの砕片とポリエステル樹脂ペレットとの混合物を用いることができる。そして、ペレットとしては、例えば柱状、短冊状、粒状など、各種形態を対象とすることができる。
【0017】
〔ポリエステル微粒子の製造動作〕
次に、本発明のポリエステル微粒子を製造する製造動作について説明する。
【0018】
まず、溶融混練工程を実施する。
この溶融混練工程では、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを溶融混練して溶融混練物を得る。
例えば、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとは、以下の式1で表される粘度比の関係で溶融混練される。
[式1]
((ηA)/(ηB))>103
(ηA):ポリエステルの260℃で剪断速度が103sec-1における見掛け溶融粘度[Pa・sec]
(ηB):酸変性ポリαオレフィンワックスの260℃で剪断速度が103sec-1における見掛け溶融粘度[Pa・sec]
ここで、粘度比((ηA)/(ηB))が103以下となると、略真球状で微細なポリエステル微粒子が得られなくなることにより、式1の条件を満足する粘度比に設定する。
【0019】
そして、ポリエステルに溶融混練される酸変性ポリαオレフィンワックスとしては、例えばポリαオレフィンワックスが無水マレイン酸およびマレイン酸のうちの少なくともいずれか一方で酸変性されたものが例示できる。なお、無水マレイン酸やマレイン酸による酸変性に限らず、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、ソルビン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸、および、これらの無水物やエステル化物などにより酸変性されたものなどでもよい。
また、RがHまたはCH3あるいはC2からC22の直鎖アルキル基である(−CHR−CH2−)で表される構成単位の共重合体の酸変性ポリαオレフィンワックスが利用できる。
そして、特に、モル酸変性率が2mol%以上25mol%以下、好ましくは10mol%以上25mol%以下の酸変性ポリαオレフィンワックスを用いることが好ましい。ここで、酸変性ポリαオレフィンワックスのモル酸変性率が2mol%より少なくなると、ポリエステルがマトリックス相(海)、酸変性ポリαオレフィンがドメイン相(島)を構成する海島構造となり、ポリエステル微粒子が得られなくなるという不都合が生じるおそれがある。一方、酸変性ポリαオレフィンワックスのモル酸変性率が25mol%より多くなると、酸変性ポリαオレフィンワックスがゲル化し、やはりポリエステルがマトリックス相(海)、酸変性ポリαオレフィンがドメイン相(島)を構成する海島構造となり、ポリエステル微粒子が得られなくなるという不都合が生じるおそれがある。このため、酸変性ポリαオレフィンワックスのモル酸変性率が2mol%以上25mol%以下、特に10mol%以上25mol%以下に設定することが好ましい。
なお、モル酸変性率の測定としては、例えば、変性する前のポリαオレフィンワックスと、マレイン酸および無水マレイン酸との混合物をIR測定して特徴的なカルボニル(1600〜1900cm-1)の吸収量と、マレイン酸/無水マレイン酸の仕込量とから、図1に示すように、検量線を作成する。そして、酸変性ポリαオレフィンワックスをIR測定し、得られたカルボニルの吸収量と、上記検量線とから、変性率を認識し、酸変性重量%を算出する。その後、GPC測定(Gel Permeation Chromatography:ゲル透過クロマトグラフィ)から得られた変成する前のポリαオレフィンワックスの分子量と、酸変性重量%とから算出する方法が例示できる。
【0020】
また、溶融混練工程では、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを、それぞれ70/30〜80/20の質量混合比で混合することが好ましい。
ここで、ポリエステル/酸変性ポリαオレフィンワックスの質量混合比が70/30よりポリエステルが少なくなると、得られるポリエステル微粒子の収率が低くなるという不都合が生じるおそれがある。一方、ポリエステル/酸変性ポリαオレフィンワックスの質量混合比が80/20よりポリエステルが多くなると、ポリエステルがマトリックス相(海)、酸変性ポリαオレフィンがドメイン相(島)を構成する海島構造となり、ポリエステル微粒子が得られなくなるという不都合が生じるおそれがある。
このため、ポリエステル/酸変性ポリαオレフィンワックスの質量混合比を70/30〜80/20に設定することが好ましい。
【0021】
そして、溶融混練工程におけるポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとの溶融混練としては、例えば、バンバリミキサ、二軸混練機、単軸押出機のうちのいずれかを用いることが好ましい。なお、これらに限られるものではなく、例えば加圧ニーダ、ミキシングロールなどを用いることも可能である。
この溶融混練時、ポリエステルの融点より10℃以上高い温度で加熱溶融混練する。ここで、溶融混練時の加熱温度がポリエステルの融点+10℃より低くなると、良好な混練状態が得られない、すなわち混練不足となりポリエステル微粒子が得られなくなるおそれがあるので、ポリエステルの融点より10℃以上高い温度に加熱しつつ溶融混練することが好ましい。
このようにして、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを溶融混練することで、溶融混練物が得られる。
【0022】
この溶融混練工程後に洗浄工程が実施される。洗浄工程では、溶融混練工程で得られた溶融混練物を、ポリエステルが難溶または不溶でかつ酸変性ポリαオレフィンワックスが易溶の溶剤と、溶融混練物中の酸変性ポリαオレフィンワックスを溶剤に溶解させる状態で混合して洗浄混合物を得る。
溶剤としては、酸変性ポリαオレフィンワックスが易溶である、例えばキシレン、トルエン、メチルシクロヘキサン、ヘプタンなどが例示できるが、これらに限られるものではない。
そして、溶剤中に溶融混練物を攪拌混合することで、溶融混練物中の酸変性ポリαオレフィンワックスのみが溶剤に溶解する状態となり、ポリエステルが溶剤にて洗浄された状態が得られる。
【0023】
この洗浄工程後に分離工程が実施される。この分離工程では、洗浄工程で得られた洗浄混合物、すなわち酸変性ポリαオレフィンワックスが溶解した溶剤である洗浄液とポリエステルとが混合する洗浄混合物を、固液分離して微細球状のポリエステル微粒子を得る。
固液分離としては、例えば、フィルタ、メッシュなどによる濾過が例示できるが、例えば静置沈殿などの沈降分離や遠心分離など、各種固液分離方法を適用できる。
このように固液分離にて分集した固形分が、略真球状で比較的に粒度分布が狭く、特に平均粒径が100μm以下の微細なポリエステル微粒子として得られる。
【0024】
〔ポリエステル微粒子の作用効果〕
上述したように、上記実施の形態では、溶融混練工程で、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを溶融混練して溶融混練物を得る。この後、洗浄工程で、ポリエステルが難溶または不溶でかつ前記酸変性ポリαオレフィンワックスが易溶の溶剤と溶融混練物とを、溶融混練物中の酸変性ポリαオレフィンワックスを溶剤に溶解させる状態で混合して洗浄混合物を得る。次いで、分離工程で、洗浄混合物を固液分離して微細球状のポリエステル微粒子を得る。
このため、比較的に少ない溶剤でかつ溶融混練物におけるポリエステルが比較的に高い混合割合で、略真球状で比較的に粒度分布が狭く、特に平均粒子径が1μm以上100μm以下の微細なポリエステル微粒子が従前の機械的固液分離装置を用いて得ることができ、良好な形状のポリエステル微粒子を効率よく容易に製造できる。
【0025】
そして、溶融混練工程におけるポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとの溶融混練では、ポリエステルの260℃で剪断速度が103sec-1における見掛け溶融粘度(ηA)[Pa・sec]と、酸変性ポリαオレフィンワックスの260℃で剪断速度が103sec-1における見掛け溶融粘度(ηB)[Pa・sec]との粘度比((ηA)/(ηB))が103より大きくなる条件とすることが好ましい。
このことにより、良好な形状のポリエステル微粒子を効率よく容易に製造できる。
【0026】
そして、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートのうちの少なくともいずれか一方であることが好ましい。
このため、例えば食料品容器などとして広く流通し、また比較的にリサイクル回収率が良好なポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートを利用するので、良好な形状のポリエステル微粒子を、比較的に安定して安価に提供できるとともに、リサイクル品を利用することによる環境面およびエネルギ面で好都合である。
特に、ポリエステルとして、ポリエステル樹脂ペレットとポリエステル樹脂成形品の回収物から得られた砕片とのうちの少なくともいずれか一方をポリエステルの原料として用いることが好ましい。
このため、良好な形状のポリエステル微粒子を、比較的に安定して安価に提供できるとともに、リサイクル品を利用することにより環境面およびエネルギ面で好都合である。
【0027】
また、酸変性ポリαオレフィンワックスとしては、ポリαオレフィンワックスが無水マレイン酸およびマレイン酸のうちの少なくともいずれか一方で酸変性されたものであることが好ましい。
このため、無水マレイン酸およびマレイン酸のうちの少なくともいずれか一方でポリαオレフィンワックスを酸変性した酸変性ポリαオレフィンワックスを用いるので、ポリエステルとの溶融混練性が良好でかつ溶剤による洗浄除去が容易、特に加圧や加熱を必要とせずに常温・常圧で洗浄除去でき、良好な形状のポリエステル微粒子をより効率よく容易に製造できる。
【0028】
さらに、酸変性ポリαオレフィンワックスとしては、RがHまたはCH3あるいはC2からC22の直鎖アルキル基である(−CHR−CH2−)で表される構成単位の共重合体の酸変性ポリαオレフィンワックスを用いることが好ましい。
このため、良好な形状の微粒子にさせるポリエステルとの良好な溶融混練状態が得られ、かつポリエステルを溶解せずに酸変性ポリαオレフィンワックスのみを溶解させて効率よく洗浄除去させる溶剤が容易に選定できるとともに効率的な洗浄除去が容易にでき、良好な形状のポリエステル微粒子をより効率よく容易に製造できる。
【0029】
そしてさらに、モル酸変性率が2mol%以上25mol%以下、特に10mol%以上25mol%以下の酸変性ポリαオレフィンワックスを用いることが好ましい。
このため、良好な形状のポリエステル微粒子をより効率よく容易に製造できる。
【0030】
また、ポリエステル微粒子を製造する製造工程における溶融混練工程では、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを、それぞれ70/30〜80/20の質量混合比で混合することが好ましい。
このため、収率よく良好な形状のポリエステル微粒子を製造でき、製造効率をより向上できる。
そして、溶融混練工程では、ポリエステルと前記酸変性ポリαオレフィンワックスとを、バンバリミキサ、二軸混練機、単軸押出機のうちのいずれかにより溶融混練することが好ましい。
このため、ポリエステルを良好な形状の微粒子として得るための酸変性ポリαオレフィンワックスとの良好な溶融混練状態が得られ、より良好な形状の微粒子として容易に製造できる。
さらに、溶融混練工程では、ポリエステルの融点より10℃以上高い温度で加熱溶融混練することが好ましい。
このため、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとが、酸変性ポリαオレフィンワックスを溶剤により洗浄除去させることでポリエステルが略真球状の微粒子として形成される良好な混練状態で容易に混練でき、効率よく容易に良好な形状のポリエステル微粒子を得ることができる。
【0031】
〔実施の形態の変形例〕
なお、以上に説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的および効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造および形状などは、本発明の目的および効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状などとしても問題はない。
【0032】
すなわち、本発明のポリエステル微粒子の製造方法として、ポリエステル微粒子としては、上述したように、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートに限らず、いずれのポリエステルが利用でき、またポリエステル樹脂ペレットやポリエステル樹脂成形品の回収物から得られた砕片に限られるものではない。
また、酸変性ポリαオレフィンワックスとしても、無水マレイン酸やマレイン酸にて酸変性されたポリαオレフィンワックスに限らず、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、ソルビン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸、および、これらの無水物やエステル化物、これらの組み合わせなどにて酸変性したポリαオレフィンワックスなどでもよく、RがHまたはCH3あるいはC2からC22の直鎖アルキル基である(−CHR−CH2−)で表される構成単位の共重合体の酸変性ポリαオレフィンワックスに限られない。さらに、酸変性ポリαオレフィンワックスのモル酸変性率が2mol%以上25mol%以下に限られるものでもない。
さらに、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとの溶融混合比として、それぞれ70/30〜80/20の質量混合比に限られるものでもない。すなわち、例えば酸変性ポリαオレフィンワックスの量が多くなるなどしてもよい。逆に、本発明によれば、この質量混合比でも、略真球状の微細なポリエステル微粒子を得ることができる。
【0033】
また、製造工程における溶融混合工程として、例えばバンバリミキサ、二軸混練機、単軸押出機を用いる方法に限らず、ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを、略真球状の微細なポリエステル微粒子に形成できる溶融混練状態が得られる例えば加圧ニーダ、ミキシングロールなどの混合方式などをも利用できる。
すなわち、モル酸変性率が2mol%以上25mol%以下の酸変性ポリαオレフィンワックスを用いることが本発明として極めて重要な構成である。
【0034】
その他、本発明の実施における具体的な構造および形状などは、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【実施例1】
【0035】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は実施例などの内容に何ら限定されるものではない。
【0036】
〔試料〕
以下の表1および表2に示す各配合組成で、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製 商品名;50C150)を用いて270℃で10分間溶融混練して溶融混練物を得る。なお、表1および表2において、ポリエチレンテレフタレートは、市販の飲料用PETボトルを粉砕したものを使用した。また、直鎖アルキル基R(化1)の炭素数は、例えば「16/14」は炭素数16のものと炭素数14のものとの共重合体を意味し、「3/14/16」は炭素数3のものと炭素数14のものと炭素数16のものとの共重合体を意味するものとして記載する。
そして、これら溶融混練物を、溶剤としてキシレンを用いて常温で3回洗浄し、配合した酸変性ポリαオレフィンワックスを洗浄除去し、ポリエステルであるポリエチレンテレフタレート微粒子を得た。これら得られたポリエチレンテレフタレート微粒子を走査型電子顕微鏡(株式会社キーエンス(KEYENCE)社製 商品名;VE−8800)により、粒形状を観察した。これら実施例1ないし実施例8の走査型電子顕微鏡写真を、図2ないし図9に示す。
また、実施例1ないし実施例8の配合で、上述したラボプラストミルにより得られた溶融混練物と、キシレンとを質量混合比で10/90で混合した混合物をガラス容器に入れ、それぞれを超音波洗浄器(BRANSON社製 商品名;1510J−MT)により、常温・常圧で10分間洗浄した。この後、静置沈降させ、洗浄液である上澄み液、すなわちキシレンおよび酸変性ポリαオレフィンワックスの混合溶液である洗浄液を除去する。これら超音波洗浄および洗浄液の除去を3回繰り返し、60℃で乾燥し、ポリエチレンテレフタレート微粒子を得た。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
一方、比較試料として、表3に示す配合組成で、上述したラボプラストミルを用いて270℃で10分間溶融混練して溶融混練物を得た。なお、比較例1ないし比較例4では、ポリエチレンテレフタレートがマトリックス相、酸変性ポリαオレフィンワックスがドメイン相(島)を構成する海島構造となったため、ポリエチレンテレフタレート微粒子を得ることができなかった。このため、比較例1ないし比較例4の溶融混練物を液体窒素中で冷却した後に凍結破断し、上述したようにキシレンにて洗浄して乾燥後、破断面を走査型電子顕微鏡により観察した。これら走査型電子顕微鏡写真を、図10ないし図13に示す。なお、表3において、直鎖アルキル基R(化1)の炭素数は、上述した表1および表2と同様に、記載の炭素数のものの共重合体を意味するものとして記載する。
【0040】
【表3】
【0041】
〔評価〕
これら図2ないし図13に示す電子顕微鏡写真からも分かるように、本発明によれば、略真球状で比較的に粒径がそろった良好なポリエチレンテレフタレート微粒子が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のポリエステル微粒子は、例えば粉体塗料、トナー、化粧品添加剤、充填剤、フィルム製品などのアンチブロッキング剤などに用いられる樹脂微粒子として、広く利用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る酸変性ポリαオレフィンワックスの酸変性量の設定を説明するためのグラフである。
【図2】本発明に係る実施例1におけるテストピースの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図3】本発明に係る実施例2におけるテストピースの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図4】本発明に係る実施例3におけるテストピースの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図5】本発明に係る実施例4におけるテストピースの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図6】本発明に係る実施例5におけるテストピースの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図7】本発明に係る実施例6におけるテストピースの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図8】本発明に係る実施例7におけるテストピースの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図9】本発明に係る実施例8におけるテストピースの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図10】本発明を説明するための比較例1におけるテストピースの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図11】本発明を説明するための比較例2におけるテストピースの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図12】本発明を説明するための比較例3におけるテストピースの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図13】本発明を説明するための比較例4におけるテストピースの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを、溶融混練して溶融混練物を得る溶融混練工程と、
この溶融混練工程で得られた前記溶融混練物を、前記ポリエステルが難溶または不溶でかつ前記酸変性ポリαオレフィンワックスが易溶の溶剤と前記溶融混練物中の前記酸変性ポリαオレフィンワックスを溶剤に溶解させる状態で混合して洗浄混合物を得る洗浄工程と、
この洗浄工程で得られた前記洗浄混合物を固液分離して微細球状のポリエステル微粒子を得る分離工程と、を実施する
ことを特徴とするポリエステル微粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のポリエステル微粒子の製造方法であって、
前記ポリエステルおよび酸変性ポリαオレフィンワックスは、以下の式1で表される粘度比である
[式1]
((ηA)/(ηB))>103
(ηA):ポリエステルの260℃で剪断速度が103sec-1における見掛け溶融粘度[Pa・sec]
(ηB):酸変性ポリαオレフィンワックスの260℃で剪断速度が103sec-1における見掛け溶融粘度[Pa・sec]
ことを特徴とするポリエステル微粒子の製造方法。
【請求項3】
式1で表される粘度比のポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを、溶融混練して溶融混練物を得る溶融混練工程と、
この溶融混練工程で得られた前記溶融混練物を、前記ポリエステルが難溶または不溶でかつ前記酸変性ポリαオレフィンワックスが易溶の溶剤と前記溶融混練物中の前記酸変性ポリαオレフィンワックスを溶剤に溶解させる状態で混合して洗浄混合物を得る洗浄工程と、
この洗浄工程で得られた前記洗浄混合物を固液分離して微細球状のポリエステル微粒子を得る分離工程と、を実施する
[式1]
((ηA)/(ηB))>103
(ηA):ポリエステルの260℃で剪断速度が103sec-1における見掛け溶融粘度[Pa・sec]
(ηB):酸変性ポリαオレフィンワックスの260℃で剪断速度が103sec-1における見掛け溶融粘度[Pa・sec]
ことを特徴とするポリエステル微粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のポリエステル微粒子の製造方法であって、
前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートのうちの少なくともいずれか一方である
ことを特徴とするポリエステル微粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のポリエステル微粒子の製造方法であって、
前記酸変性ポリαオレフィンワックスは、ポリαオレフィンワックスが無水マレイン酸およびマレイン酸のうちの少なくともいずれか一方で酸変性されたものである
ことを特徴とするポリエステル微粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のポリエステル微粒子の製造方法であって、
前記酸変性ポリαオレフィンワックスは、以下の化1で表される構成単位の共重合体である
[化1]
(−CHR−CH2−)
R:HまたはCH3あるいはC2からC22の直鎖アルキル基
ことを特徴とするポリエステル微粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のポリエステル微粒子の製造方法であって、
前記酸変性ポリαオレフィンワックスは、モル酸変性率が2mol%以上25mol%以下である
ことを特徴とするポリエステル微粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のポリエステル微粒子の製造方法であって、
前記酸変性ポリαオレフィンワックスのモル酸変性率は、10mol%以上25mol%以下である
ことを特徴とするポリエステル微粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のポリエステル微粒子の製造方法であって、
前記溶融混練工程は、前記ポリエステルと前記酸変性ポリαオレフィンワックスとを、それぞれ70/30〜80/20の質量混合比で混合する
ことを特徴とするポリエステル微粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のポリエステル微粒子の製造方法であって、
前記ポリエステルは、ポリエステル樹脂ペレットとポリエステル樹脂成形品の回収物から得られた砕片とのうちの少なくともいずれか一方である
ことを特徴とするポリエステル微粒子の製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のポリエステル微粒子の製造方法であって、
前記溶融混練工程は、バンバリミキサ、二軸混練機、単軸押出機のうちのいずれかにより、前記ポリエステルと前記酸変性ポリαオレフィンワックスとを溶融混練する
ことを特徴とするポリエステル微粒子の製造方法。
【請求項1】
ポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを、溶融混練して溶融混練物を得る溶融混練工程と、
この溶融混練工程で得られた前記溶融混練物を、前記ポリエステルが難溶または不溶でかつ前記酸変性ポリαオレフィンワックスが易溶の溶剤と前記溶融混練物中の前記酸変性ポリαオレフィンワックスを溶剤に溶解させる状態で混合して洗浄混合物を得る洗浄工程と、
この洗浄工程で得られた前記洗浄混合物を固液分離して微細球状のポリエステル微粒子を得る分離工程と、を実施する
ことを特徴とするポリエステル微粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のポリエステル微粒子の製造方法であって、
前記ポリエステルおよび酸変性ポリαオレフィンワックスは、以下の式1で表される粘度比である
[式1]
((ηA)/(ηB))>103
(ηA):ポリエステルの260℃で剪断速度が103sec-1における見掛け溶融粘度[Pa・sec]
(ηB):酸変性ポリαオレフィンワックスの260℃で剪断速度が103sec-1における見掛け溶融粘度[Pa・sec]
ことを特徴とするポリエステル微粒子の製造方法。
【請求項3】
式1で表される粘度比のポリエステルと酸変性ポリαオレフィンワックスとを、溶融混練して溶融混練物を得る溶融混練工程と、
この溶融混練工程で得られた前記溶融混練物を、前記ポリエステルが難溶または不溶でかつ前記酸変性ポリαオレフィンワックスが易溶の溶剤と前記溶融混練物中の前記酸変性ポリαオレフィンワックスを溶剤に溶解させる状態で混合して洗浄混合物を得る洗浄工程と、
この洗浄工程で得られた前記洗浄混合物を固液分離して微細球状のポリエステル微粒子を得る分離工程と、を実施する
[式1]
((ηA)/(ηB))>103
(ηA):ポリエステルの260℃で剪断速度が103sec-1における見掛け溶融粘度[Pa・sec]
(ηB):酸変性ポリαオレフィンワックスの260℃で剪断速度が103sec-1における見掛け溶融粘度[Pa・sec]
ことを特徴とするポリエステル微粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のポリエステル微粒子の製造方法であって、
前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートのうちの少なくともいずれか一方である
ことを特徴とするポリエステル微粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のポリエステル微粒子の製造方法であって、
前記酸変性ポリαオレフィンワックスは、ポリαオレフィンワックスが無水マレイン酸およびマレイン酸のうちの少なくともいずれか一方で酸変性されたものである
ことを特徴とするポリエステル微粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のポリエステル微粒子の製造方法であって、
前記酸変性ポリαオレフィンワックスは、以下の化1で表される構成単位の共重合体である
[化1]
(−CHR−CH2−)
R:HまたはCH3あるいはC2からC22の直鎖アルキル基
ことを特徴とするポリエステル微粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のポリエステル微粒子の製造方法であって、
前記酸変性ポリαオレフィンワックスは、モル酸変性率が2mol%以上25mol%以下である
ことを特徴とするポリエステル微粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のポリエステル微粒子の製造方法であって、
前記酸変性ポリαオレフィンワックスのモル酸変性率は、10mol%以上25mol%以下である
ことを特徴とするポリエステル微粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のポリエステル微粒子の製造方法であって、
前記溶融混練工程は、前記ポリエステルと前記酸変性ポリαオレフィンワックスとを、それぞれ70/30〜80/20の質量混合比で混合する
ことを特徴とするポリエステル微粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のポリエステル微粒子の製造方法であって、
前記ポリエステルは、ポリエステル樹脂ペレットとポリエステル樹脂成形品の回収物から得られた砕片とのうちの少なくともいずれか一方である
ことを特徴とするポリエステル微粒子の製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のポリエステル微粒子の製造方法であって、
前記溶融混練工程は、バンバリミキサ、二軸混練機、単軸押出機のうちのいずれかにより、前記ポリエステルと前記酸変性ポリαオレフィンワックスとを溶融混練する
ことを特徴とするポリエステル微粒子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−332365(P2007−332365A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131766(P2007−131766)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(500242384)出光テクノファイン株式会社 (55)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(500242384)出光テクノファイン株式会社 (55)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]