説明

ポリエステル成形用組成物及びその製造方法

新規方法で、多官能性カルボキシ反応性物質と化学的に反応する酸末端基の増加した変性ポリエステルを含んでなる新規なポリエステル樹脂組成物が生成する。得られるポリエステルは向上した耐薬品性及び/又は改善された溶融粘度を有する。変性ポリエステルとポリカーボネートとのブレンドを製造することができ、このブレンドは改良された耐薬品性及び/又は溶融粘度を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂を含む組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂とポリカーボネートのような他のポリマーとのブレンドを含めてポリエステル組成物は多くの用途に望ましい。有用な組成物には、ポリエステルとポリカーボネートの透明なアロイと不透明なアロイの両者があり、例を幾つか挙げると自動車、民生、エレクトロニクス、及び医療などの広範囲の用途に用いることができる。これらの組成物が増大した耐薬品性や溶融粘度のような特性をもち、その最終用途環境でそれらの性能を維持することが望ましい。ポリエステル−ポリカーボネートブレンドの性能を増強する幾つかの例が次の特許に記載されている。Chungらの米国特許第5087665号には、ポリカーボネートとポリエステルすなわちポリエチレンテレフタレートとのブレンドにポリエチレンを添加することによってそのブレンドの加水分解耐性(hydrostability)を改良する方法が開示されている。Robert R.Gallucciらの米国特許第5411999号及び同第5596049号には、触媒消光剤(quencher)と共にエポキシ系物質を使用して加水分解耐性を促進することが記載されている。Walshの米国特許第5300546号は、改良された加水分解耐性と溶融粘度安定性を有するセラミック感を与える鉱物充填材を含むポリエステル組成物に関する。発明者にMinnickを含む欧州特許出願公開第0273149号及び同第0497818号には、ある種のポリエステルにエポキシオリゴマー性物質を添加することが記載されているが、これらの研究の焦点は耐薬品性の改良でも溶融粘度の改善でもなく、単に熱的安定性、厳密にいうとガラス強化及び/又は難燃化ポリエステル配合物における熱的安定性のみであった。
【特許文献1】米国特許第5087665号明細書
【特許文献2】米国特許第5411999号明細書
【特許文献3】米国特許第5596049号明細書
【特許文献4】米国特許第5300546号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0273149号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0497818号明細書
【特許文献7】米国特許第2465319号明細書
【特許文献8】米国特許第2720502号明細書
【特許文献9】米国特許第2727881号明細書
【特許文献10】米国特許第2822348号明細書
【特許文献11】米国特許第3047539号明細書
【特許文献12】国際公開第03/066704号パンフレット
【特許文献13】米国特許第3671487号明細書
【特許文献14】米国特許第3953394号明細書
【特許文献15】米国特許第4128526号明細書
【特許文献16】米国特許第2999835号明細書
【特許文献17】米国特許第3038365号明細書
【特許文献18】米国特許第3334154号明細書
【特許文献19】米国特許第4131575号明細書
【特許文献20】米国特許第4123436号明細書
【特許文献21】米国特許第3153008号明細書
【特許文献22】米国特許第4001184号明細書
【特許文献23】米国特許第3635895号明細書
【特許文献24】米国特許第4204047号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
改良された性能、例えば、改良された溶融粘度及び/又は製品がその典型的な使用環境で遭遇する化学薬品に対する優れた耐性を有し得るようにする変化をポリエステル樹脂中に導入することによって、ポリカーボネートを含有するポリエステル組成物及びブレンドの能力をさらに改良することが望ましい。
【0004】
改良された溶融粘度は押出ブロー成形プロセスのようなある種の用途で望ましい。溶融粘度が改良されるにつれて、このプロセスで形成されるパリソンの安定性が高まる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、ポリエステル樹脂を変性してそのポリエステル樹脂の酸末端基を増加し、この増加した酸末端基含量を利用してそのポリエステル樹脂及びそのブレンドの性能を変える。この酸末端基はさらに「多官能性カルボキシ反応性物質」と反応することに留意されたい。これらは、本欄及びその後の本明細書を通じて「複数のエポキシ基を有する物質」として例示されるが、任意の多官能性カルボキシ反応性物質を使用することができる。これらは本明細書の後記「反応性部分」の項で例示する。
【0006】
一実施形態では、変性酸末端基含量のポリエステル樹脂を、複数のエポキシ基を有する物質のような他の反応性部分で処理して、耐薬品性及び/又は改良された溶融粘度について性能の向上したポリエステル含有物質を生成する。
【0007】
得られる結果は、その酸変性ポリエステルが低下した分子量と性能特性を有するという点で驚くべきことである。しかし、この変性ポリエステルをその後多官能性カルボキシ反応性物質で処理したものを含有する樹脂組成物は、同様なレベルの出発ポリエステルで得られる樹脂組成物よりも性能の向上した樹脂組成物となる。
【0008】
一実施形態では、ポリエステル樹脂組成物は、酸末端基の増加した化学変性ポリエステル樹脂が、得られるポリエステルの耐薬品性を増強するための複数のエポキシ基を有する物質と化学的に反応してなるものである。
【0009】
別の実施形態によると、酸末端基を有するポリエステル樹脂を酸増強性添加剤で処理して、酸末端基数の増加した変性ポリエステル樹脂を生成する。この変性ポリエステル樹脂の末端基の少なくとも一部分を、複数のエポキシ基を含有する物質と化学的に反応させて、得られるポリエステルの耐薬品性の増大及び/又はメルトボリュームレート(MVR)で測定される溶融粘度を改良する。
【0010】
一実施形態では、ポリエステルのようなポリマーを押出機内で化学的に変性し、その後その変性ポリマーを押出機内で反応させて、性能の向上した物質を製造するための簡単なプロセスが得られる。
【0011】
一実施形態では、耐薬品性及び/又は溶融粘度の改善されたポリカーボネート/ポリエステル樹脂成形用組成物は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂及び複数のエポキシ基を有する物質のブレンドから誘導され、ここで、ポリエステル樹脂は、酸末端基数の増加した変性ポリエステル樹脂を生成するための酸増強性添加剤で処理されるか又は処理されている。
【0012】
一実施形態では、向上した耐薬品性及び/又はメルトボリュームレート(MVR)で測定される改良された溶融粘度を有するポリカーボネート/ポリエステル樹脂成形用組成物を製造する方法は、ポリカーボネート樹脂、酸末端基を有するポリエステル樹脂、及び複数のエポキシ基を有する物質を混合し、そのポリエステル樹脂を酸増強性添加剤で処理して、酸末端基数の増加した変性ポリエステル樹脂を生成することを含んでなる。
【0013】
一実施形態では、酸増強性添加剤は、酸末端基数の増加した変性ポリエステル樹脂を生成する処理工程の前、又はその間に添加することができる。複数の処理工程を利用して、複数のエポキシ基を有する物質と反応する酸末端基の数を増加することができると考えられる。同様に、複数のエポキシ基を含有する物質は、増加した数の酸末端基の形成と同時に、又はその後添加することができる。
【0014】
一実施形態では、上記処理工程は、反応性添加剤とポリエステル樹脂との所望の反応を生じるあらゆる熱的又は同様な活動的処理工程であることができる。当技術分野で使用される典型的な熱的処理工程の例としては、限定されることはないが、溶融混合、溶融押出、ドライブレンドに続くオーブン処理、固体状態重合、反応性射出成形などがある。これらは単に例示したものであり、実施形態の範囲を限定するものではない。
【0015】
一実施形態では、変性ポリエステル樹脂を、複数のエポキシ基を含有する物質で処理して、ポリカーボネート/ポリエステル樹脂ブレンドの耐薬品性を増強する。
【0016】
一実施形態では、複数のエポキシ基を有する物質は、触媒がない状態で、得られる組成物の耐薬品性を増強し、及び/又は溶融粘度を改良するのに充分な反応性をもっていることができる。早いプロセスが望まれる場合は、ステアリン酸ナトリウムのような適当な触媒を使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
酸末端基増強
ポリエステル樹脂を酸末端基増強性添加剤で処理して、酸末端基数の増加した変性ポリエステル樹脂を製造する。最終ポリマー又はポリマーブレンドの耐薬品性の増大を観察するために、酸増強性添加剤はポリエステルの酸末端基の数を増加するように作用する。適切な酸は、ポリエステルのアルコール末端基と反応して酸末端基を形成することができる。酸添加剤はまた、ポリマー鎖内でランダムにエステル−酸交換を起こして2つの酸停止ポリマー末端が生成し得る。好ましい処理によると、ポリエステルを適切な酸で処理して酸末端基が増すようにする。酸としては、多官能性有機酸、又は加水分解によって多官能性酸を形成し得る物質がある。幾つかの好ましい多官能性有機酸として、テレフタル酸(TPA)、イソフタル酸、トリメリト酸及びその他の官能化芳香族酸がある。加水分解の際にカルボン酸を形成する無水物のような物質も使用できる。幾つかの好ましい無水物としては、トリメリト酸無水物及びピロメリト酸二無水物がある。
【0018】
反応性部分
酸変性ポリエステル又はポリエステルブレンドの処理にはあらゆる多官能性のカルボキシ反応性物質を使用することができる。これらはポリマー性であることも非ポリマー性であることもできる。カルボキシ反応性基の例としては、エポキシド、カルボジイミド、オルトエステル、オキサゾリン、オキシラン、アジリジン、及び無水物がある。また、カルボキシ反応性物質は、記載するプロセス条件下で反応性又は非反応性である他の官能性を含んでいることもできる。反応性部分の非限定例としては、反応性シリコーンを含有する物質、例えばエポキシ変性シリコーンモノマー及びポリマー性物質がある。所望により、触媒又は助触媒系を使用して、多官能性カルボキシ反応性物質と変性ポリエステルとの反応を促進することができる。用語「多官能性」は2以上のカルボキシ反応性基を意味する。
【0019】
変性ポリエステル樹脂又はブレンドの処理に特に有用な反応性部分として、2以上の反応性エポキシ基を有する物質がある。多官能性エポキシ化合物は芳香族及び/又は脂肪族残基を含有し得る。当技術分野で使用される典型的な例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エポキシノボラック樹脂、エポキシ化植物(大豆、アマニ)油、及びペンダント(側鎖)グリシジル基を含有するスチレン−アクリルコポリマーがある。
【0020】
複数のエポキシ基を有する好ましい物質は、側鎖として組み込まれたグリシジル基を含有するスチレン−アクリルコポリマー及びオリゴマーである。幾つかの有用な例が、Johnson Polymer,LLCに譲渡されている国際公開第03/066704号に記載されており、その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。これらの物質は、望ましいグリシジル基が側鎖として組み込まれたスチレンとアクリレート構築ブロックを有するオリゴマーに基づくものである。オリゴマー鎖当たり多数、すなわち約10以上、好ましくは約15超、さらに好ましくは約20超のエポキシ基が望ましい。これらのポリマー性物質は一般に分子量が約3000超、好ましくは約4000超、さらに好ましくは約6000を超える。これらは、Johnson Polymer,LLCからJoncryl(登録商標)という商標で市販されている。好ましくは、Joncryle(登録商標)ADR 4368を使用する。
【0021】
ポリエステル
出発ポリエステル樹脂成分は通例次式の構造単位を含んでいる。
【0022】
【化1】

式中、各R1は独立して二価脂肪族、脂環式若しくは芳香族炭化水素又はポリオキシアルキレン基、或いはこれらの混合物であり、各A1は独立して二価脂肪族、脂環式若しくは芳香族基、又はこれらの混合物である。上記式の構造を含有する適切なポリエステルの例は、ポリ(アルキレンジカルボキシレート)、液晶ポリエステル、及びポリエステルコポリマーである。枝分かれ剤、例えば、3以上のヒドロキシル基を有するグリコール又は三官能性若しくは多官能性カルボン酸が組み込まれている枝分かれポリエステルを使用することも可能である。また、組成物の最終用途に応じて、ポリエステル上に様々な濃度の酸及びヒドロキシル末端基を有するのが望ましいことがある。
【0023】
1基は、例えば、C2-12アルキレン基、C6-12脂環式基、C6-20芳香族基、又はアルキレン基が約2〜6個、最も多くの場合2若しくは4個の炭素原子を含有するポリオキシアルキレン基でよい。上記式中のA1基は最も多くの場合p−若しくはm−フェニレン、環式脂肪族、又はこれらの混合物である。この類のポリエステルとしては、ポリ(アルキレンテレフタレート)及びポリアリーレートがある。かかるポリエステルは、米国特許第2465319号、同第2720502号、同第2727881号、同第2822348号、同第3047539号、同第3671487号、同第3953394号、同第4128526号に例示されているように当技術分野で公知であり、これらの開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0024】
ジカルボキシル化残基A1で表される芳香族ジカルボン酸の例は、イソフタル酸又はテレフタル酸、1,2−ジ(p−カルボキシフェニル)エタン、4,4′−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4′−ビス安息香酸及びこれらの混合物である。1,4−、1,5−、2,7−又は2,6−ナフタレンジカルボン酸の場合のように縮合環を含有する酸も存在することができる。好ましいジカルボン酸はテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、又はこれらの混合物である。
【0025】
ポリエステルとしては、ポリ(エチレンテレフタレート)(「PET」)、及びポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(「PBT」)、ポリ(エチレンナフタノエート)(「PEN」)、ポリ(ブチレンナフタノエート)(「PBN」)及びポリ(プロピレンテレフタレート)(「PPT」)、並びにこれらの混合物がある。
【0026】
また、ポリエステルには、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールからなる樹脂、例えばPCTG、PETG,PCTA、PCT樹脂も包含され、これらはEastman Chemical Companyから入手可能である。
【0027】
また、ポリエステルとしては上記PCCDもあり、これはポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレン−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)であり、ポリ(1,4−シクロヘキサン−ジメタノール−1,4−ジカルボキシレート)といわれることもあり、次式の繰返し単位を有する。
【0028】
【化2】

また、様々なジオール又はポリテトラヒドロフランコモノマーを有するPCCDの誘導体もある。
【0029】
ポリエステルは、少量、例えば、約0.5〜約5重量パーセントの、様々な脂肪族酸及び/又は脂肪族ポリオールから誘導された単位を含んでコポリエステルを形成していてもよい。脂肪族ポリオールとしては、ポリ(エチレングリコール)又はポリ(ブチレングリコール)のようなグリコールがある。かかるポリエステルは、例えば、米国特許第2465319号及び同第3047539号の教示に従って製造することができる。
【0030】
このプロセスにおける出発ポリエステルは、60:40のフェノール/テトラクロロエタン混合物又は同様な溶媒中23〜30℃で測定して約0.4〜約2.0dl/gの固有粘度を有することができる。
【0031】
再利用ポリエステル及び再利用ポリエステルと未使用ポリエステルのブレンドを使用することもできる。
【0032】
コポリエステル−ポリカーボネートも使用することができる。
【0033】
ポリカーボネート
ポリエステル樹脂成分はポリカーボネート樹脂とブレンドすることができる。ポリカーボネート樹脂は一般に芳香族ポリカーボネート樹脂である。通例、これらは、二価フェノールを、ホスゲン、ハロホルメート又はカーボネートエステルのようなカーボネート前駆体と反応させることによって製造される。一般的にいって、かかるカーボネートポリマーは、次式の繰返し構造単位を保有するものとして類型化することができる。
【0034】
【化3】

式中、Aはポリマー生成反応に用いた二価フェノールに由来する二価芳香族基である。通例、本発明の樹脂状混合物を得るのに使用するカーボネートポリマーは、固有粘度が(塩化メチレン中25℃で測定して)約0.30〜約1.00dl/gの範囲である。かかる芳香族カーボネートポリマーを得るのに使用できる二価フェノールは、官能基として2つのヒドロキシ基を含有し、その各々が芳香核の炭素原子に直接結合している単核又は多核芳香族化合物である。典型的な二価フェノールは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4′−(ジヒドロキシジフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、フルオレノンビスフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ジヒドロキシジフェニル、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、5′−クロロ−2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3、3′−ジクロロジフェニルエーテル、4,4−ジヒドロキシ−2,5−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどである。
【0035】
上記ポリカーボネートの製造に使用される他の二価フェノールが米国特許第2999835号、同第3038365号、同第3334154号及び同第4131575号に開示されている。
【0036】
芳香族ポリカーボネートは、例えば、上に述べたように、上記文献及び米国特許第4123436号に記載の方法に従って二価フェノールをホスゲンのようなカーボネート前駆体と反応させることによって、又は米国特許第3153008号に開示されているようなエステル交換法、その他当業者に公知の方法のような公知の方法で製造できる。
【0037】
また、本発明のポリカーボネート混合物の製造に使用するのにホモポリマーではなくカーボネートコポリマー又は共重合体が望ましい場合には、2種類以上の異なる二価フェノール、又は二価フェノールと、グリコール、若しくはヒドロキシ−若しくは酸−末端停止ポリエステル、若しくは二塩基酸とのコポリマーを使用することも可能である。米国特許第4001184号に開示されているような枝分かれポリカーボネートも有用である。また、線状ポリカーボネートと枝分かれポリカーボネートとのブレンドも利用することができる。さらにまた、本発明の実施の際に上記物質の任意のブレンドを使用して芳香族ポリカーボネートを得てもよい。
【0038】
1つの芳香族カーボネートはホモポリマー、例えば、General Electric Companyから商品名LEXAN(登録商標)で市販されている2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノール−A)とホスゲンとから誘導されたホモポリマーである。
【0039】
枝分かれポリカーボネートは重合中に枝分かれ剤を添加することによって製造される。これらの枝分かれ剤は周知であり、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボン酸無水物、ハロホルミル及びこれらの混合物であり得る官能基を3つ以上含有する多官能性有機化合物からなり得る。具体例としては、トリメリト酸、トリメリト酸無水物、トリメリト酸三塩化物、トリス−p−ヒドロキシフェニルエタン、イサチン−ビス−フェノール、トリス−フェノールTC(1,3,5−トリス((p−ヒドロキシフェニル)イソプロピル)ベンゼン)、トリス−フェノールPA(4−(4−(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−エチル)−α,α−ジメチルベンジル)フェノール)、4−クロロホルミルフタル酸無水物、トリメシン酸及びベンゾフェノンテトラカルボン酸がある。枝分かれ剤は約0.05〜2.0重量パーセントのレベルで添加するとよい。枝分かれ剤及び枝分かれポリカーボネートの製造法は米国特許第3635895号、同第4001184号及び同第4204047号に記載されており、それらの開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0040】
その他の添加剤
本発明の組成物は、既に述べた望ましい特性に干渉することはないが他の有利な特性を増強する追加の成分を含んでいてもよい。これらには、限定されることはないが、酸化防止剤、潤滑剤、離型剤、衝撃改質剤、難燃剤、充填材、着色剤、造核剤又は紫外線(UV)その他の放射線安定剤がある。
【0041】
プロセス及び物質のレベル
プロセス
組成物をブレンドする方法は慣用の技術で実施することができる。1つの好都合な方法は、ポリエステル又はポリカーボネートと他の成分を粉末又は顆粒形態でブレンドし、そのブレンドを押出し、粉砕してペレットその他の適切な形状にすることからなる。成分は、通常の何らかの方法で、例えば、乾式混合するか、又は押出機中、加熱したミル上若しくはその他のミキサー中で溶融状態で混合する。出発ポリエステルと酸増強性基又は変性ポリエステルと反応性部分を反応させるための処理工程は、反応性添加剤とポリマーとの所望の反応を生起して所望の効果を生ずるあらゆる熱的又は同様な活動的方法であることができる。当技術分野で使用される典型的な熱的処理工程の例としては、限定されることはないが、溶融混合、溶融押出、オーブン老化、固体状態重合、反応性射出成形などがある。着色剤その他の添加剤はこれらの処理工程中のいかなる時点で添加してもよい。
【0042】
本発明の樹脂及びブレンドは、射出成形、ブロー成形、シート、フィルム若しくは異形材への押出、圧縮成形などを始めとする様々な技術で加工処理することができる。また、例えば電気コネクター、電気装置、コンピューター、建築及び建設、屋外設備、トラック及び自動車に使用する様々な物品を形成することもできる。
【0043】
物質のレベル
物質の量に関して、使用する酸末端基増強性添加剤はポリエステルの約0.1〜約2.0重量パーセント、好ましくはポリエステルの約0.2〜1.0重量パーセントである。変性ポリエステルを処理するのに使用する多官能性カルボキシ反応性物質は変性ポリエステルの約0.1〜約30重量パーセント、好ましくは変性ポリエステルの約0.2〜約10重量パーセントである。最終ポリエステルは組成物中の樹脂合計の約10〜100重量パーセント、好ましくは最低で樹脂合計の約15重量パーセントである。ポリカーボネートは組成物中の樹脂合計の約90重量パーセント以下、好ましくは約40〜約80重量パーセントで組成物中に存在することができる。
【実施例】
【0044】
顆粒から、メルトボリュームレート(MVR)は、ISO1133(特記しない限り265℃/2.16kg)に従ってcm3/10minの単位で測定した。使用したオリフィスの大きさは直径0.0825”であり、試料は100℃で60分乾燥した。
【0045】
引張特性:試験手順はASTM D638規格に従う。試験はZwick 1474(+HASY)で行う。この機械は自動処理系を備えている。幅13mm、厚さ3.2mmのI型ASTM引張試験片を使用した。
【0046】
耐薬品性試験:曝露した化学薬品に対する様々な組成物の性能を決定する試験として環境応力亀裂(ESCR)を使用した。詳細はISO 4599試験法に説明されている。引張試験片を0.5%及び1%の一定の歪みのステンレス鋼製ジグに取り付ける。試験は室温で行い、曝露時間は48時間であった。曝露した試料を石鹸と水で洗った後その引張の保持を上記方法で測定する。曝露後の目視検査及び引張特性の保持を比較の基準として使用する。
【0047】
本発明の利点を示すポリエステルはPCTG(80モル%シクロヘキサンジメタノール、20モル%エチレングリコール)である。表1に、水又はジメチルテレフタレート(DMT)添加と比較して、押出プロセス中にPCTG樹脂にテレフタル酸(TPA)を添加した効果を示す。ポリエステルの溶融粘度レート(MVR)は増大しており、末端基の増加を示唆している。表1の試料Gが本発明の実施例であり、試料A〜Fは比較例である。
【0048】
表1で使用したポリエステルと表2のポリカーボネートポリエステル組成物を40mmの二軸押出機で供給速度320lbs/hr、スクリュー400回転/分(rpm)で押出した。この押出機は7つの加熱ゾーンと別途ダイヘッド加熱ゾーンを有していた。フィーダー側から最初の加熱ゾーンは100°Fに保ち、他の加熱ゾーンは全て500°Fに設定した。ダイヘッド加熱ゾーンは520°Fに保った。コンパウンディングは二回通過で行い、最初の通過でポリエステルを酸増強性添加剤とブレンドした。このブレンドを押出機のホッパーから第1の加熱ゾーン内に供給した。この変性ポリエステルをポリカーボネート及びJoncryl(登録商標)ADR4368のような複数のエポキシ基を有する物質とブレンドし、上記と同様にして押出した。表2に示した配合物で、試料8が本発明の実施例である。試料1〜7は比較のためのものである。所望により、酸増強性添加剤と多官能性カルボキシ反応性物質は同時に添加することができる。この場合、これらはポリカーボネートとポリエステルを含有するマスターブレンドに添加することができる。段階的添加の場合、酸増強性添加剤はポリカーボネートとポリエステルを含有するマスターブレンドに添加する。その後、多官能性カルボキシ反応性物質を下流、好ましくはフィーダー側から5番目のゾーンに添加する。
【0049】
テレフタル酸(TPA)とPCTGのようなポリエステルを用いた反応性押出は、MVRで測定されるように驚くべき高い反応性を示し、従ってポリエステル中の酸末端基をその後の複数のエポキシ基を有する物質との反応のために増大するのに使用することができる。TPAは、表1においてMVR値の最大の増大によって示されるように酸末端基を生成するのに極めて効果的であることが判明している。また、TPAで変性されたポリエステルは、表3の試料8に対するMVRの最大の低下で示されるように、ポリカーボネートポリエステルブレンドを製造する場合、エポキシ基に対する最大の反応性をもっている。この低下したMVRは、複数のエポキシ基を有する物質の変性ポリエステルに対する増大した反応性を示唆している。
【0050】
水によるポリエステルの加水分解によっても酸末端基数の増加が得られ得ることに留意されたい。しかし、表3のデータに示されているように、水で処理されたポリエステルを使用する試料3〜6は、添加剤で処理されていないポリエステルを使用する試料2と比較して改良された溶融粘度を示さない。試料2〜6は全て多数のエポキシ基を有する物質であるJoncryl(登録商標)ADR4368と反応させた。
【0051】
これらの変性ポリエステルを複数のエポキシ基を有する物質の存在下で用いてポリカーボネート−ポリエステルブレンドを製造すると、そのブレンドは向上した耐薬品性を示す。これは、一般に家庭で使用される化学薬品に曝露された際の伸びの保持の顕著な改良によって立証される。結果をまとめて表4(a)及び(b)に示す。図1及び図2は、化学薬品曝露後の目に見える外観に関する本発明のブレンドの改良を示している。図1と2に示されているように、本発明の実施例である試料8は目視上、比較試料1及び2に比べて、曝露された化学薬品に対する耐性が実質的に向上している。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、1%歪みの下でCoppertone(登録商標)日焼け止めローションSPF30に2日間曝露した後の引張試験片を示す。
【図2】図2は、0.5%歪みの下でHumcoのユーカリ精油に2日間曝露した後の引張試験片を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸末端基の増加した変性ポリエステルを含んでなるポリエステル樹脂組成物であって、変性ポリエステルは多官能性カルボキシ反応性物質と化学的に反応し、得られるポリエステルが向上した耐薬品性及び/又は改善された溶融粘度を有する、ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
耐薬品性及び/又は溶融粘度の改善されたポリエステル組成物を製造する方法であって、酸末端基を有するポリエステル樹脂を酸増強性添加剤で処理することによって酸末端基数の増加した変性ポリエステル樹脂を生成させ、変性ポリエステルの酸末端基の少なくとも一部分を多官能性カルボキシ反応性物質と化学的に反応させることによって、得られるポリエステルの耐薬品性及び/又は溶融粘度を改善せしめることを含んでなる方法。
【請求項3】
ポリカーボネート樹脂と酸末端基を有するポリエステル樹脂とのブレンドを含んでなるポリカーボネートポリエステル樹脂成形用組成物であって、ポリエステル樹脂が酸増強性添加剤での処理によって酸末端基数の増加した変性ポリエステル樹脂を生成している、ポリカーボネートポリエステル樹脂成形用組成物。
【請求項4】
酸末端基数の増加した変性ポリエステル樹脂が多官能性カルボキシ反応性物質で処理され、ポリカーボネート/ポリエステル樹脂ブレンドの耐薬品性及び/又は溶融粘度が改善されている、請求項3記載のポリカーボネートポリエステル樹脂成形用組成物。
【請求項5】
耐薬品性及び/又は溶融粘度の改善されたポリカーボネートポリエステル樹脂成形用組成物の製造方法であって、ポリカーボネート樹脂と酸末端基を有するポリエステル樹脂と多官能性カルボキシ反応性物質を混合し、ポリエステル樹脂を、多官能性カルボキシ反応性物質での処理前又は処理中に酸増強性添加剤で処理することによって、酸末端基数の増加した変性ポリエステル樹脂を生成させることを含んでなる方法。
【請求項6】
ポリエステル樹脂の酸末端基数が増加するように変性したポリエステル樹脂。
【請求項7】
多官能性カルボキシ反応性物質と反応して性能の向上したポリエステルを含有する物質を生成してなる、酸末端基含量の増加したポリエステル樹脂。
【請求項8】
ポリエステルポリマーの酸末端基含量を押出機内で化学的に変性させ、その後変性ポリマーを押出機内で反応させて、耐薬品性及び/又は溶融粘度の改善のような性能の向上した物質を生成することを含んでなる方法。
【請求項9】
多官能性カルボキシ反応性物質が複数のエポキシ基を有する物質である、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
多官能性カルボキシ反応性物質が複数のエポキシ基を有する物質である、請求項2記載の方法。
【請求項11】
多官能性カルボキシ反応性物質が多数のエポキシ基を有する物質である、請求項4記載の組成物。
【請求項12】
多官能性カルボキシ反応性物質が多数のエポキシ基を有する物質である、請求項5記載の方法。
【請求項13】
多官能性カルボキシ反応性物質が多数のエポキシ基を有する物質である、請求項7記載の組成物。
【請求項14】
多官能性カルボキシ反応性物質が単一のエポキシ基及び1種以上の他の酸反応性基を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
前記他の酸反応性基がシリコーンである、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
多官能性カルボキシ反応性物質が2以上のエポキシ基を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
得られるポリエステルの耐薬品性を増強するためのエポキシ物質と化学的に反応している酸末端基の増加した変性ポリエステルを含んでなるポリエステル樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−517124(P2007−517124A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547454(P2006−547454)
【出願日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/043592
【国際公開番号】WO2005/066273
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】