説明

ポリエステル樹脂成形材料及び成形品

【課題】石油由来資源の使用量の削減が可能であり、且つ高い耐熱性を有すると共に外観光沢が良好である成形品が得られるポリエステル樹脂成形材料を提供する。
【解決手段】本発明に係るポリエステル樹脂成形材料は、ポリエチレンテレフタレートと、ポリブチレンテレフタレートと、全量に対して5〜30質量%の無機フィラーとを含有する。前記ポリエチレンテレフタレートが植物由来原料を含む原料から合成されたポリエチレンテレフタレートを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂成形材料、及びこのポリエステル樹脂成形材料から形成される成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂から形成される成形品は、安価な成形品として従来から提供されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、近年の環境問題意識の高まりから、石油由来資源の使用をできるだけ削減することが求められるようになってきている。このため、広範に使用されているポリエステル樹脂について、石油由来資源の使用量の削減が求められるようになってきている。
【0004】
また、PET製の成形品は耐熱性が低く、高温が作用すると変色や変形が発生し易いという問題もある。そこで無機フィラーをPETに配合することによって耐熱性を高めることも考えられるが、この場合は成形品の外観光沢性が低下してしまうという問題が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−300432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであり、石油由来資源の使用量の削減が可能でし、しかも耐熱性と外観光沢性が高い成形品を形成し得るポリエステル樹脂成形材料、並びにこのようなポリエステル樹脂成形材料から形成される耐熱性と外観光沢性が高い成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るポリエステル樹脂成形材料は、ポリエチレンテレフタレートと、ポリブチレンテレフタレートと、全量に対して5〜30質量%の無機フィラーとを含有し、前記ポリエチレンテレフタレートが植物由来原料を含む原料から合成されたポリエチレンテレフタレートを含む。
【0008】
本発明に係るポリエステル樹脂成形材料は、全量に対して1〜15質量%のメタクリル樹脂を更に含むことが好ましい。
【0009】
本発明に係るポリエステル樹脂成形材料は、全量に対して1〜15質量%のアクリロニトリル樹脂を更に含むことも好ましい。
【0010】
本発明に係るポリエステル樹脂成形材料は、全量に対して1〜15質量%のブチラール樹脂を更に含むことも好ましい。
【0011】
本発明に係るポリエステル樹脂成形材料は、合計量が全量に対して1〜15質量%のメタクリル樹脂及びブチラール樹脂を更に含むことも好ましい。
【0012】
本発明に係るポリエステル樹脂成形材料は、合計量が全量に対して1〜15質量%のアクリロニトリル樹脂及びブチラール樹脂を更に含むことも好ましい。
【0013】
本発明において、前記メタクリル樹脂のメルトインデックスが5〜20であることが好ましい。
【0014】
本発明において、前記アクリロニトリル樹脂のメルトインデックスが5〜20であることも好ましい。
【0015】
本発明において、前記ブチラール樹脂の平均重合度が900〜3000であることが好ましい。
前記ポリエチレンテレフタレートと前記ポリブチレンテレフタレートとの質量比が70:30〜30:70である請求項1乃至9のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂成形材料。
【0016】
本発明において、前記無機フィラーの平均粒径が3000μm以下であることが好ましい。
【0017】
本発明において、前記無機フィラーの硬度が5以下であることが好ましい。
【0018】
本発明に係るポリエステル樹脂成形材料は、モンタン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウムから選ばれる結晶化促進剤を更に含有することが好ましい。
【0019】
本発明に係るポリエステル樹脂成形材料は、離型剤としてポリエチレン系ワックスを更に含有することが好ましい。
【0020】
本発明に係る成形品は、前記ポリエステル樹脂成形材料から形成される。
【0021】
本発明に係る成形品は、前記ポリエチレンテレフタレート製の加飾フィルムを備え、この加飾フィルムがフィルムインサート成形により接着されている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、石油由来資源の使用量の削減が可能であるポリエステル樹脂成形材料、並びにこのようなポリエステル樹脂成形材料から形成される成形品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本実施形態に係るポリエステル樹脂成形材料は、ポリエステル樹脂と、無機フィラーとを含有する。
【0024】
本実施形態では、ポリエステル樹脂成形材料はポリエチレンテレフタレート(PET)とポリブチレンテレフタレート(PBT)との二種類のポリエステル樹脂を含有する。このようにPETとPBTとが併用されることで、成形品の外観光沢性が向上する。ポリエステル樹脂成形材料中のPETとPBTとの割合は質量比で70:30〜30:70の範囲であることが好ましく、この場合、成形品の外観光沢性が特に向上する。ポリエステル樹脂成形材料全体に対するPETとPBTとの合計量の割合は55〜94質量%の範囲であることが好ましく、80〜93質量%の範囲であれば更に好ましい。
【0025】
本実施形態では、ポリエステル樹脂成形材料中のPETの少なくとも一部は植物由来原料を含む原料から合成されたPET(以下、植物由来PETという)である。このような植物由来PETは、例えばテレフタル酸と、サトウキビなどの植物由来のエタノール(いわゆるバイオエタノール)から製造されたモノエチレングリコール(バイオモノエチレングリコール)を含むモノエチレングリコールとが、脱水縮合することで合成される。
【0026】
このような植物由来PETが使用されることで、広範に使用されるポリエステル樹脂成形材料及びその成形品における石油由来資源の使用量が削減され、このため石油由来資源の大幅な削減が可能となる。このため本実施形態は環境問題の解決のために大いに貢献することになる。
【0027】
植物由来PETの原料における、モノエチレングリコール全体に対するバイオモノエチレングリコールの割合は特に制限されないが、1〜100質量%の範囲であることが好ましく、5〜100質量%の範囲であれば更に好ましい。尚、植物由来PETに関し、その原料におけるモノエチレングリコール全体に対するバイオモノエチレングリコールの割合は、ASTM D6866−11 METHOD Bにより測定される。
【0028】
ポリエステル樹脂成形材料中のPETのうちの全部が植物由来PETであることが好ましいが、植物由来PETと石油資源のみに由来するPET(以下、石油由来PETという)とが併用されてもよい。但し、石油由来資源の使用量を効果的に削減するためには、ポリエステル樹脂成形材料中の全PETに対する植物由来PETの割合は1〜100質量%の範囲であることが好ましく、50〜100質量%の範囲であれば更に好ましい。
【0029】
本実施形態では、ポリエステル樹脂成形材料は更にメタクリル樹脂(PMMA)、アクリロニトリル樹脂(AN)、及びブチラール樹脂(BR)から選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。この場合、成形品に塗装が施される場合の成形品と塗膜との密着性が高くなる。ポリエステル樹脂成形材料中のPMMA、AN、及びBRの含有量の合計は、ポリエステル樹脂成形材料全体に対して1〜15質量%の範囲であることが好ましい。例えばポリエステル樹脂成形材料がPMMA、AN、及びBRのうちいずれか一種のみを含有すると共に、その含有量がポリエステル樹脂成形材料全体に対して1〜15質量%の範囲であることが好ましい。また、ポリエステル樹脂成形材料がPMMA、AN、及びBRのうちPMMA及びBRを含有すると共にこれらの含有量の合計がポリエステル樹脂成形材料全体に対して1〜15質量%の範囲にあることも好ましい。また、ポリエステル樹脂成形材料がPMMA、AN、及びBRのうちAN及びBRを含有すると共にこれらの含有量の合計がポリエステル樹脂成形材料全体に対して1〜15質量%の範囲にあることが好ましい。これらの割合が1質量%以上であると塗膜の密着性が十分に向上し、またこれらの割合が15質量%以下であると成形品の良好な耐熱性や外観光沢性が維持される。
【0030】
PMMA、AN、及びBRのうち、特にPMMAとBRが併用される場合、PMMAとBRの配合質量比は、10:90〜90:10の範囲が好ましい。またPMMA、AN、及びBRのうち、特にANとBRが併用される場合、ANとBRの配合質量比は、10:90〜90:10の範囲が好ましい。
【0031】
PMMAが使用される場合、このPMMAのメルトインデックス(MI:メルトフローレートMFRともいう)が5〜20g/10minの範囲であることが好ましい。尚、MIはASTM D 1238に基づいて、試験温度230℃、試験荷重37.3Nの条件で試験を行われるときの、10分間に押し出される試料の質量(g/10min)である。このようにPMMAのMIが5g/10min以上であると成形品と塗膜との密着性が特に向上する。また、PMMAのMIが20g/10min以下であると成形材料が成形される際のガスの発生が抑制されると共に成形品と塗膜との密着性が特に向上する。
【0032】
ANが使用される場合、このANのメルトインデックス(MI:メルトフローレートMFRともいう)も5〜20g/10minの範囲であることが好ましい。このようにANのMIが5g/10min以上であると成形品と塗膜との密着性が特に向上する。また、ANのMIが20g/10min以下であると成形材料が成形される際のガスの発生が抑制されると共に成形品と塗膜との密着性が特に向上する。
【0033】
BRが使用される場合、このBRの平均重合度(重量平均重合度)が900〜3000の範囲であることが好ましい。この場合、成形品と塗膜との密着性が更に高くなる。
【0034】
ポリエステル樹脂成形材料中の無機フィラーの割合は、ポリエステル樹脂成形材料全量に対して5〜30質量%の範囲である。このようにポリエステル樹脂成形材料が無機フィラーを5質量%以上の割合で含有することで成形品の耐熱性が向上し、例えば成形品の熱変形温度が140℃以上にもなり得る。更にポリエステル樹脂成形材料が無機フィラーを30質量%以下の割合で含有することで、成形品の高い外観光沢性が維持される。尚、BRの平均重合度は、重量平均分子量Mwを繰り返し単位M(理論値)で割った値とする。重量平均分子量MwはGPC測定により求められる。
【0035】
使用可能な無機フィラーとしては、タルク、ワラストナイト、石英、シリカ、ガラス、クレー、炭酸カルシウム、ベントナイト、マイカ、カオリン、酸化チタン、硫酸バリウム、マグネシアなどが挙げられる。無機フィラーの硬度(モース硬さ)が5以下であること、特に4以下であることが好ましい。タルクは硬度1、ワラストナイトは硬度3、石英は硬度7であるので、これらのうちではタルク及びワラストナイトのうち少なくとも一方が用いられることが好ましい。このように硬度5以下、特に4以下の無機フィラーが用いられることで、成形材料を成形金型に注入して成形する際に、成形金型のキャビティの表面が無機フィラーによって磨耗することが抑制され、金型の磨耗によって成形品の外観光沢が低下するようなことが抑制される。無機フィラーの硬度の下限は1である。
【0036】
無機フィラーの形状は特に制限されず、針状、繊維状、板状、葉状、球状、立方体状、六面体やウィスカー状などの適宜の形状であってよい。無機フィラーの平均粒径は3000μm以下であることが好ましく、100μm以下であれば更に好ましい。この場合、成形品の表面から無機フィラーが突出しにくくなり、このため成形品の高い外観光沢性が維持される。無機フィラーの平均粒径の下限は特に設定されないが、実用的には0.5μm程度が下限である。尚、無機フィラーの平均粒径とは、無機フィラーにおける任意の100個の粒子を光学顕微鏡で拡大撮影し、これにより得られた画像に基づいて100個の粒子の長さ或いは直径を測定し、得られた値を個数平均することで得られる値である。尚、無機フィラーの粒子が針状、繊維状などの長尺な形状でる場合には粒子の長さを測定し、無機フィラーの粒子が球状、立方体状などの粒状である場合には粒子の直径を測定する。粒子の直径は、粒子の画像からその投影面積を測定し、この測定結果から算出される、前記投影面積と同一の面積を有する真円の直径である。
【0037】
ポリエステル樹脂成形材料は、更にポリエステル樹脂成形材料中のポリエステル樹脂の結晶化を促進する結晶化促進剤を含有することも好ましい。結晶化促進剤としては、モンタン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウムなどが挙げられる。これらの化合物は一種単独で用いられ、或いはこれらのうち複数種が併用される。このように結晶化促進剤が用いられると、成形時にポリエステル樹脂の結晶化が促進されることで、成形の際の金型温度が100℃付近の低温であっても、光沢のある成形品が得られる。結晶化促進剤が使用される場合、ポリエステル樹脂成形材料中の結晶化促進剤の割合は0.2〜1.0質量%の範囲であることが好ましい。このように結晶化促進剤の割合が0.2質量%以上であると結晶化促進剤による結晶化促進作用が充分に発揮され、またこの割合が1.0質量%以下であると成形品の良好な外観が維持される。
【0038】
ポリエステル樹脂成形材料は、更に離型剤を含有することも好ましい。離型剤としては、ポリエチレン系ワックス、低分子量ポリプロピレンなどが挙げられる。これらは一種単独で用いられ、あるいはこれらのうち複数種が併用される。尚、ポリエチレン系ワックスは低分子量のポリエチレンであり、その分子量は例えば500〜10000の範囲である。このように離型剤としてポリエチレン系ワックスや低分子量ポリプロピレンを配合すると、成形の際の金型からの成形品の離型性が向上し、逆テーパ面のキャビティを有する金型が用いられる場合でも成形品を離型することが可能になる。
【0039】
ポリエステル樹脂成形材料全量に対する離型剤の割合は0.1〜1.0質量%の範囲であることが好ましい。離型剤の割合が0.1質量%以上であると成形品の離型性が十分に発揮されるようになり、この割合が1.0質量%以下であれば成形品が塗装される際の塗膜との密着性が十分に高く維持される。
【0040】
ポリエステル樹脂成形材料は、ポリカルボジイミド化合物やモノカルボジイミド化合物等のカルボジイミド化合物を含有することも好ましい。この場合、これらの化合物が、PETやPBTなどのカルボキシル基末端の一部または全部と反応して封鎖する働きを発揮し、これにより成形品の高温高湿環境下での耐久性が更に向上する。
【0041】
ポリカルボジイミド化合物としては、例えばポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド等が挙げられる。モノカルボジイミド化合物としては、例えばN,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド等が挙げられる。
【0042】
このようなカルボジイミド化合物としては、市販品が適宜使用され得る。カルボジイミド化合物の具体例としては、日清紡ケミカル株式会社製の商品名カルボジライトLA−1(ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド))、カルボジライトHMV−8CA,カルボジライトHMV−15CA等が挙げられる。
【0043】
カルボジイミド化合物が使用される場合、ポリエステル樹脂成形材料中のカルボジイミド化合物の含有量は0.1〜5質量%の範囲内であることが好ましい。この含有量が0.1質量%以上であることで成形品の耐久性が更に向上し、5質量%以下であることで成形品の高い機械的強度が維持される。カルボジイミド化合物の含有量は更に3質量%以下であることが好ましい。カルボジイミド化合物の含有量が0.1〜1.0質量%の範囲であれば特に好ましく、0.1〜0.5質量%の範囲であれば更に好ましい。
【0044】
ポリエステル樹脂成形材料は、石油資源削減の観点から、植物由来PET以外の植物由来の樹脂を更に含有することも好ましい。この植物由来の樹脂としては、例えばポリ乳酸が挙げられる。ポリ乳酸としては市販品が使用可能であり、たとえば、米国NATURE WORKS LLC社、浙江海正生物材料股▲ふん▼有限公司などが製造販売する製品が好ましい。
【0045】
上記の成分が混合・混練されることでポリエステル樹脂成形材料が調製される。ポリエステル樹脂は予め乾燥処理が施されてから他の成分と混合されることが好ましい。
【0046】
ポリエステル樹脂成形材料が射出成形などの任意の方法で成形されることで、成形品が得られる。成形品の用途としては、特に制限されないが、食器、照明器具、自動車耐熱部品、光反射板、OA機器構造部品等が挙げられる。
【0047】
本実施形態において、ポリエステル樹脂成形材料を射出成形等により成形する際、金型内に加飾フィルムをセットした状態で成形するフイルムインサート成形をおこなうことも好ましい。この場合、加飾フィルムにより加飾された成形品が得られる。このフィルムインサート成形時の金型の温度は70〜120℃の範囲に設定されることが好ましい。
【0048】
加飾フィルムとしてはポリエチレンテレフタレート製のフィルム(PETフィルム)が用いられることが好ましい。この場合、加飾フィルムによって加飾され、且つ耐熱性の高い成形品が得られる。
【0049】
加飾フィルムとして延伸されているPETフィルムが用いられることも好ましい。この場合、PETフィルムは一軸延伸フィルムでも二軸延伸フィルムでもよいが、一軸延伸フィルムは加熱によって白化が生じ易いのに対し、二軸延伸フィルムではこのような白化が生じ難いので、二軸延伸フィルムの方がより好ましい。
【0050】
また、加飾フィルムの厚みは30〜400μmの範囲であることが好ましい。このように加飾フィルムの厚みが30μm以上であることで成形品から加飾フィルムが剥離しにくくなり、この厚みが400μm以下であることで加熱された際の成形品の変形が抑制される。
【0051】
加飾フィルムには印刷や塗装などによる化粧加工が施されていることが好ましい。また、加飾フィルムにおける化粧加工が施されている面が保護されるために、この加飾フィルムにおける化粧加工は、成形品に接着される側の面に施されることが好ましい。また、加飾フィルムの外面、すなわち成形品に接着される側と反対の面には、シリコンコート処理が施されることも好ましく、この場合、成形品の耐汚染性等が向上する。
【0052】
また、加飾フィルムとしてPETフィルムが用いられる場合には、このPETフィルムの少なくとも一部も植物由来PETから形成されることが好ましい。この場合、石油由来資源の更なる削減が可能となる。このPETフィルムの原料であるPETのうちの全部が植物由来PETであることが好ましいが、植物由来PETと石油由来PETとが併用されてもよい。但し、石油由来資源の使用量を効果的に削減するためには、PETフィルムの原料であるPET全体に対する植物由来PETの割合は1〜100質量%の範囲であることが好ましく、50〜100質量%の範囲であれば更に好ましい。
【実施例】
【0053】
[成形材料の調製、及び成形品の作製]
下記表に示す原料成分を用意した。これらの原料成分のうち、PET及びPBTには予め乾燥処理を施した。
【0054】
各実施例及び比較例において、下記表に示す割合で原料成分を配合してタンブラーで10分間混合し、これにより得られた混合物を更にエクストルーダーで混錬した。エクストルーダーの温度は投入口付近で250℃に、出口のダイス付近で260℃に設定し、ダイスから押し出したストランドはすぐに冷却槽で冷却して、カッターで2〜4mmのペレットに切断した。これによりポリエステル樹脂成形材料を得た。
【0055】
下記表中の成分の詳細は次の通りである。
植物由来PET:豊田通商株式会社販売、商品名EastPET PW1、ASTM D6866−11 METHOD Bにより測定される原料のモノエチレングリコール全体に対するバイオモノエチレングリコールの割合18質量%。
石油由来PET:石油資源のみから合成されたポリエチレンテレフタレート、株式会社クラレ製、品番KL236R。
PMMA:MI値が2、5、15、20、及び30(g/10min)のメタクリル樹脂、三菱レイヨン株式会社製。
AN:MI値が2、5、15、20、及び30(g/10min)のアクリロニトリル樹脂、三菱レイヨン株式会社製。
BR:平均重合度が800、900、2000、3000、及び4000のブチラール樹脂、電気化学工業株式会社製。
離型剤A:低分子量ポリエチレン(ポリエチレンワックス)、クラリアント社製、品番WAX PED552。
離型剤B:低分子量ポリエチレン(ポリエチレンワックス)、クラリアント社製、品番WAX PP230。
加水分解防止剤:カルボジイミド化合物、日清紡ケミカル株式会社製、商品名カルボジライトLA1。
【0056】
このように調製されたポリエステル樹脂成形材料を除湿乾燥機で140℃で4時間加熱することで乾燥処理を施した。続いて、このポリエステル樹脂成形材料を100トン射出成形機を用いて成形することで成形品を得た。射出成形時には射出成形機の材料投入口付近の温度を200℃、射出ヘッド付近の温度を260℃に調整し、成形金型の温度を100℃に調整した。
【0057】
成形材料の成形時において、実施例40〜50ではインサートフィルムとして、厚み20μmの二軸延伸PETフィルム(東レ株式会社製「ルミラーT60 20ミクロン」)、厚み30μmの二軸延伸PETフィルム(東レ株式会社製「ルミラーT60 30ミクロン」)、厚み300μmの二軸延伸PETフィルム(東レ株式会社製「ルミラーT60 300ミクロン」)、厚み400μmの二軸延伸PETフィルム(東レ株式会社製「ルミラーT60 400ミクロン」)、厚み500μmの二軸延伸PETフィルム(東レ株式会社製「ルミラーT60 500ミクロン」)、厚み300μmの一軸延伸PETフィルム(東レ株式会社製「A−PETシート300ミクロン」)を用いた。そして、表7に示す組成を有する成形材料A〜Fとインサートフィルムを表8に示す組み合わせで用い、成形金型のキャビティ内に内側に絵を印刷したインサートフィルムをセットし、成形金型を閉じた後、成形材料A〜Fを射出成形することによって、インサートフィルムにより加飾されている成形品を得た。
【0058】
[評価試験]
成形品について、次の評価試験を実施した。
【0059】
耐煮沸性;
JIS S2029に準拠し、まず成形品を熱湯の中に完全に浸漬した状態で1時間煮沸した。続いて熱湯から取り出した成形品を室温下に30分間放置してから成形品の外観を観察した。その結果、成形品に変形が発生した場合を「×」、成形品に変形が認められない場合を「○」と評価した。評価結果を下記表に示す。
【0060】
耐電子レンジ性;
JIS S2033に準拠し、成形品を容器状に形成してその内部に成形品の容量の80%程度までオリーブオイルを入れ、この状態で成形品を1400kW/hrの高周波電子レンジに入れてオリーブオイルが140℃になるまで加熱した。その結果、成形品に変形が発生した場合を「×」、成形品に変形が認められない場合を「○」と評価した。評価結果を下記表に示す。
【0061】
外観光沢;
成形品の表面を観察し、成形品表面が粗く光を殆ど反射しない場合を「×」、成形品表面が艶消し状態で光を若干反射する場合を「△」、成形品表面が非常に光を反射する場合を「○」と判定した。その結果を下記表に示す。
【0062】
反り量;
110mm×110mm×2mmの寸法の成形品を、ゲートが成形品の一端面に位置するように形成した。この成形品を大理石上の平坦な面上に載置し、この面から成形品が最も浮き上がっている位置における浮き上がり量(反り量)を測定した。この反り量が2mm以下である場合を「○」、2mmよりも大きい場合を「×」と判定した。その結果を下記表に示す。
【0063】
耐塗装剥離性(セロハンテープ);
JIS S2029に準拠し、成形品の表面をアクリルウレタン系塗料で塗装し、これにより形成された塗膜に30±5°の角度で交差する長さ約20mmの切り込み線を成形品の表面まで達するように入れた。切れ込み線は成形品上の6箇所に形成した。この切り込み線の上に幅20mm、長さ60mmの日東電工株式会社製のセロハンテープを約30mmの長さで貼り付け、続いてこのセロハンテープを成形品から45°の角度で一気に引き剥がした。これにより塗膜の剥がれが生じた場合を「×」、塗膜の剥がれが認められなかった場合を「○」と評価した。その結果を下記表に示す。
【0064】
耐塗膜剥離性(梱包用樹脂製粘着テープ);
上記「耐塗装剥離性(セロハンテープ)」の試験において、セロハンテープの代わりに3M社製の梱包用樹脂製粘着テープ(Scotch313)を用いた。その結果、1cm以上の面積の塗膜が剥がれた場合を「×」、塗膜がわずかに剥がれた場合を「△」、塗膜の剥がれが認められない場合を「○」と評価した。その結果を下記表に示す。
【0065】
離型性;
成形品を逆テーパのキャビティを有する金型から離型する際に、離型しない場合を「×」、離型する場合を「○」と判定した。その結果を下記表に示す。
【0066】
金型磨耗;
成形品を成形した金型を観察して評価し、キャビティの表面のクロムめっきが削れて曇った場合を「×」、クロムめっきが変化しない場合を「○」と判定して評価した。
【0067】
耐久性;
カルボジイミド化合物を使用した実施例12について、煮沸時間を1時間から2時間に変更した以外は、上記耐煮沸性の試験と同じ試験を実施した。その結果、成形品に大きな変形が発生した場合を「×」、成形品に変形が認められない場合を「○」と評価した。評価結果を下記表に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
【表5】

【0073】
【表6】

【0074】
【表7】

【0075】
【表8】

【0076】
各実施例では植物由来PETを使用することで石油資源を削減しつつ、耐熱性、外観光沢が良好である成形品が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレートと、ポリブチレンテレフタレートと、全量に対して5〜30質量%の無機フィラーとを含有し、前記ポリエチレンテレフタレートが植物由来原料を含む原料から合成されたポリエチレンテレフタレートを含むポリエステル樹脂成形材料。
【請求項2】
全量に対して1〜15質量%のメタクリル樹脂を更に含む請求項1に記載のポリエステル樹脂成形材料。
【請求項3】
全量に対して1〜15質量%のアクリロニトリル樹脂を更に含む請求項1に記載のポリエステル樹脂成形材料。
【請求項4】
全量に対して1〜15質量%のブチラール樹脂を更に含む請求項1に記載のポリエステル樹脂成形材料。
【請求項5】
合計量が全量に対して1〜15質量%のメタクリル樹脂及びブチラール樹脂を更に含む請求項1に記載のポリエステル樹脂成形材料。
【請求項6】
合計量が全量に対して1〜15質量%のアクリロニトリル樹脂及びブチラール樹脂を更に含む請求項1に記載のポリエステル樹脂成形材料。
【請求項7】
前記メタクリル樹脂のメルトインデックスが5〜20である請求項1又は5に記載のポリエステル樹脂成形材料。
【請求項8】
前記アクリロニトリル樹脂のメルトインデックスが5〜20である請求項3又は6に記載のポリエステル樹脂成形材料。
【請求項9】
前記ブチラール樹脂の平均重合度が900〜3000である請求項4乃至6のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂成形材料。
【請求項10】
前記ポリエチレンテレフタレートと前記ポリブチレンテレフタレートとの質量比が70:30〜30:70である請求項1乃至9のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂成形材料。
【請求項11】
カルボジイミド化合物を更に含有する請求項1乃至10のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂成形材料。
【請求項12】
前記無機フィラーの平均粒径が3000μm以下である請求項1乃至11のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂成形材料。
【請求項13】
前記無機フィラーの硬度が5以下である請求項1乃至12のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂成形材料。
【請求項14】
モンタン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウムから選ばれる結晶化促進剤を更に含有する請求項1乃至13のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂成形材料。
【請求項15】
離型剤としてポリエチレン系ワックスを更に含有する請求項1乃至14のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂成形材料。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂成形材料から形成された成形品。
【請求項17】
ポリエチレンテレフタレート製の加飾フィルムを備え、この加飾フィルムがフィルムインサート成形により接着されている請求項16に記載の成形品。

【公開番号】特開2013−1878(P2013−1878A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136878(P2011−136878)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】