説明

ポリエステル樹脂組成物、その製造方法及びそれからなる成形体

【課題】本発明は、ヒンダードフェノール基を有する酸化防止剤及びヒンダードアミン基を有する光安定剤を含まなくとも、成形品からの揮発成分が少なく、揮発成分による内容物の汚染が抑制された熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】ポリブチレンナフタレートと脂肪族ポリエステルジオールからなるポリエステル樹脂組成物であって、ポリブチレンナフタレートと脂肪族ポリエステルジオールの合計100質量部に対して、脂肪族ポリエステルジオールを30〜60質量部配合してなることを特徴とするポリエステル樹脂組成物によって上記課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンダードフェノール基を有する酸化防止剤及びヒンダードアミン基を有する光安定剤を含まなくとも、成形品からの揮発成分が少なく、揮発成分による内容物の汚染が抑制されたポリエステル樹脂組成物等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハーやマスクガラス等の基板を輸送、保管する際に使用する基板収納容器は、特許文献1に記載されているように、キャリア、容器本体、蓋体、押え部材、ガスケット部材等を備えて構成されている。
【0003】
ガスケット部材は、通常、基板収納容器本体と蓋体との嵌合部の間に、外周に沿って設置され、基板収納容器本体と蓋体との嵌合によって圧縮されることで基板収納容器の内外部の環境を遮断して、保管ないし輸送中に基板収納容器外部からのパーティクルを主とするコンタミネーションを防止する。さらにそればかりでなくガスケット部材は、航空機輸送による外圧変化に伴う基板収納容器内の圧力変動を緩和し、結果的に基板収納容器内へのパーティクルの侵入や基板収納容器内の気流の動きによるパーティクルの移動を防止して、収納する基板の汚染を低減するものである。
【0004】
ガスケット部材には、上述の通り、圧縮されて変形し、それなりの気密性を有し、かつ、蓋を開ける等で圧力が取り除かれた場合に元の形状に復帰する性能が要求されるため、適度なゴム弾性(表面硬度)が必要とされる。また、ウェハー押え部材も保管、運搬、移送、輸送中等に受ける外的な振動や衝撃からウェハーの破損や回転を防止する目的により、ガスケット部材と同様に適度なゴム弾性(表面硬度)が求められる。
【0005】
これらの部材に関しては、従来、ポリスチレンやポリオレフィン等を主成分とする熱可塑性エラストマーに対して、そのゴム弾性(表面硬度)を調整するためにパラフィンオイルをはじめとする外部軟化剤を配合した比較的高い柔軟性を有する熱可塑性エラストマー組成物が使用されてきた。しかしながら、上記の熱可塑性エラストマー組成物では成形条件、使用環境等の様々な要因によって成形表面への軟化剤のブリードアウト、揮散、揮発に伴うアウトガスとしての有機物成分を放出するため、結果として、これらの有機物成分が原因となって発生するウェハー類の汚染が問題となった。
【0006】
そのため、近年は熱可塑性ポリエステルエラストマーが耐熱性や耐クリープ性の点から多用されつつある。熱可塑性ポリエステルエラストマーはゴムの柔軟性とエンジニアリングプラスチックの耐熱性との両特性を有するため、基板収納容器の構成部品だけでなく、自動車外装部品(ギヤ、ブーツ、ベルト、チューブ等)、工業用品(パッキン、シート等)等の多岐に亘る用途にて使用されている。
【0007】
しかし、熱可塑性ポリエステルエラストマーにおいても、安定剤を添加しない場合には使用環境の影響によってポリマーの劣化とともに、ポリマー自身から発生するアウトガスとしての有機物成分によるウェハー類の汚染が問題となる。そのため、熱可塑性ポリエステルエラストマーには酸化防止剤、光安定剤、加水分解防止剤等の添加剤が使用される。但し、安定剤の配合は安定剤の種類と配合量が不適切である場合は特性を改善できないばかりか、安定剤に起因したアウトガスとしての有機物成分によるウェハー類の汚染を招く恐れがある。
【0008】
また、熱可塑性ポリエステルエラストマーに対する安定剤組成物の添加及び混合方法としては、特許文献2〜4に記載されているように、押出機を使用して、熱可塑性ポリエステルエラストマーと安定剤組成物とを同時に添加及び混合することができる。しかしながら、この手法では少量の安定剤組成物を熱可塑性ポリエステルエラストマーに対して添加及び混合する場合、押出機のホッパー内にて熱可塑性ポリエステルエラストマーと安定剤組成物の分級を生じて、得られた熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物中での安定剤の組成ムラを引き起こす恐れがある。
【0009】
さらに、多量の安定剤組成物を熱可塑性ポリエステルエラストマーに対して添加及び混合する場合、安定剤組成物の飛散、押出機のホッパー内壁への安定剤組成物が付着して所定量が添加されない事態を生じる可能性がある。また、加熱ロールやバンバリーミキサーを使用する場合でも安定剤組成物投入時の安定剤の飛散等によって、所定量が添加されない事態を生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−163115号公報
【特許文献2】特開2001−026697号公報
【特許文献3】特開2003−003050号公報
【特許文献4】特開2003−221494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ヒンダードフェノール基を有する酸化防止剤及びヒンダードアミン基を有する光安定剤を含まなくとも、成形品からの揮発成分が少なく、揮発成分による内容物の汚染が抑制された熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、上記の課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。即ち、本発明は
ポリブチレンナフタレートと脂肪族ポリエステルジオールからなるポリエステル樹脂組成物であって、ポリブチレンナフタレートと脂肪族ポリエステルジオールの合計100質量部に対して、脂肪族ポリエステルジオールを30〜60質量部配合してなることを特徴とするポリエステル樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリエステル樹脂組成物からなる成形品により、成形品からの揮発成分が少なくすることができ、ガスケット部材に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明におけるポリエステル樹脂組成物はポリブチレンナフタレートと脂肪族ポリエステルジオールからなり、ポリブチレンナフタレートは芳香族ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体を主とする芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族及び/又は脂環族のジヒドロキシ化合物を主とするグリコール成分とから構成されたポリエステルからなっており、脂肪族ポリエステルジオールは数平均分子量が400〜4000の脂肪族ポリエステルジオールが結合されてなるポリエステル−ポリエステル型ジオールである。これらの種類・配合量の調整により熱可塑性ポリエステルエラストマーとして機能する場合がある。
【0015】
本発明におけるポリエステル樹脂組成物[熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物と称することがある。]を構成するポリエステルはポリブチレンナフタレートからなり、それを構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、主として2,6−ナフタレンジカルボン酸又は2,7−ナフタレンジカルボン酸を挙げることができる。中でも全芳香族ジカルボン酸成分中70モル%以上、好ましくは80モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸で構成される。他の芳香族ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4′−ジカルボン酸等より選ばれる一種若しくは二種以上の組み合わせを用いることが好ましい。
【0016】
その他の非芳香族の酸成分としてはアジピン酸、セバシン酸、コハク酸、シュウ酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられ、これらの一種若しくは二種以上を用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。これらの酸成分は全酸成分に対して30モル%未満、好ましくは20モル%未満である。
【0017】
本発明における熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物のポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4′−ジカルボン酸等の低級アルキルエステルより選ばれる一種若しくは二種以上の組み合わせを用いることが好ましい。その低級アルキルエステルとしてはジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステル、ジブチルエステル等の一種若しくは二種以上の組み合わせを用いることが好ましく、より好ましくはジメチルエステルである。より好ましくは2,6−ナフタレンジカルボン酸の低級アルキルエステルを挙げることができる。より具体的には2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジエチルエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジフェニルエステルである。芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体は全酸成分のエステル形成性誘導体の70モル%以上、好ましくは80モル%以上であることが好ましい。
【0018】
その他の酸成分のエステル形成性誘導体としては、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸の低級アルキルエステル、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、シュウ酸等の脂肪族ジカルボン酸の低級アルキルエステルより選ばれる一種若しくは二種以上を用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。これらの酸のエステル形成性誘導体成分は、全酸成分のエステル形成性誘導体の30モル%未満、好ましくは20モル%未満である。
【0019】
本発明における熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物のポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸に対して少量のトリメリット酸のような三官能性以上のカルボン酸成分を用いてもよく、無水トリメリット酸のような酸無水物を少量用いてもよい。また、乳酸、グリコール酸のようなヒドロキシカルボン酸又はそのアルキルエステル等を少量用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。
【0020】
本発明における熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物のポリエステルはポリブチレンナフタレートからなり、それを構成するグリコール成分としては、1,4−ブタンジオール又はテトラメチレングリコールを挙げることができる。中でもグリコール成分中70モル%以上、好ましくは80モル%が1,4−ブタンジオールで構成される。他のグリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリ(オキシ)エチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリメチレングリコール等のアルキレングリコールの一種若しくは二種以上の組み合わせを用いることが好ましい。
【0021】
さらに少量のグリセリンのような多価アルコール成分を用いてもよい。また少量のエポキシ化合物を用いてもよい。これらのグリコール成分は、全グリコール成分に対して30モル%以下、好ましくは20モル%以下である。
【0022】
かかるグリコール成分の芳香族ポリエステル製造工程における使用量は、前記芳香族ジカルボン酸若しくは芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体に対して1.1モル倍以上1.4モル倍以下であることが通常採用される。グリコール成分の使用量が1.1モル倍に満たない場合にはエステル化あるいはエステル交換反応が十分に進行せず好ましくないことがある。また、1.4モル倍以上を超える場合にも、理由は定かではないが反応速度が遅くなり、過剰のグリコール成分からのテトラヒドロフランの副生量が大となり好ましくないことがある。
【0023】
本発明におけるポリエステル樹脂組成物は脂肪族ポリエステルジオールを配合されてなっている。その脂肪族ポリエステルジオールは数平均分子量が400〜4000であることが好ましく、具体的には例えば3−メチル−1,5−ペンタンジオールと、セバシン酸又は1,4−ジカルボキシルシクロヘキサンなどのジカルボン酸との脱水反応により製造できる。本発明において使用される脂肪族ポリエステルジオールの数平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)の測定において、500〜4000の範囲が好ましく、800〜2000の範囲が特に好ましい。数平均分子量が400未満では、得られる本発明のポリエステル樹脂組成物の分子量が十分でないために機械的強度、成形性が悪くなる傾向があり、しかも耐熱性向上効果も少なくなりがちである。また、4000を超えるとポリエステル樹脂組成物との反応性が低くなり、十分な機能が得られない傾向にある。
【0024】
また脂肪族ポリエステルジオールを構成するグリコールの繰り返し単位に炭素数2〜8個のグリコール成分が含まれていることが好ましい。より好ましくは分岐のあるグリコールであり、このようなグリコール成分を用いる事で、本発明のポリエステル樹脂組成物はエラストマーとして機能しやすくなり、また驚くべきことに成形品からの揮発成分が少なくすることができるとの効果を発現することができる。
【0025】
また、脂肪族ポリエステルジオールの含有量はポリブチレンナフタレートと脂肪族ポリエステルジオールの合計質量、すなわち本発明のポリエステル樹脂組成物100質量部に対して、30〜60質量部配合することが必要である。30重量部より少ないと本発明の効果である成形品からの揮発成分が少なくするという効果が発揮できず、60質量部を超えるとポリエステル樹脂組成物自体の強度等の力学物性が低下するので好ましくない。この数値範囲に配合を行う事で、得られるポリエステル樹脂組成物はガスケット部材やウェハー押え部材として好適に用いることができる。なお本発明においては、脂肪族ポリエステルジオールは両末端にヒドロキシル基を有しているのでポリエステル樹脂に共重合される成分が大部分であると考えられるが、数平均分子量が多くなるに従って共重合に資する割合が減り、組成物として配合されている割合が増加すると考える。
【0026】
本発明における熱可塑性ポリエステルエラストマーにおいて重合触媒成分として用いられる化合物としてはポリエステル製造用触媒として用いられる化合物、特にポリブチレンナフタレートやポリブチレンテレフタレートで通常用いられる化合物が好ましく採用される。中でもチタン化合物が好ましくもちいられる。そのチタン化合物としては、テトラアルキルチタネートが好ましく、具体的にはテトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネートなどが挙げられ、これらの混合チタネートとして用いても良い。これらのチタン化合物のうち、特にテトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートが好ましく、最も好ましいのはテトラ−n−ブチルチタネートである。
【0027】
チタン化合物の添加量は生成した熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物中のチタン原子含有量として、200ppm以下であることが好ましく、より好ましくは10〜150ppm、さらに好ましくは50〜100ppmである。熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物中のチタン原子含有量が200ppmを超える場合は、本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物の色調及び熱安定性が低下するために好ましくないことがある。またチタン原子含有量として少ない場合には、ポリエステル製造時の触媒化合物としてチタンを用いるのに充分な触媒活性を発揮できない場合がある。そのような場合には他の金属化合物を触媒として用いることになるが、熱安定性、色相、耐加水分解性などに問題を生じる場合がある。
【0028】
また、本発明における熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物には、例えば、オクタアルキルトリチタネート若しくはヘキサアルキルジチタネートなどのテトラアルキルチタネート以外のアルキルチタネート、酢酸チタンやシュウ酸チタンなどのチタンの弱酸塩、酸化チタンなどのチタン酸化物、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、シクロヘキサヘキシルジスズオキサイド、ジドデシルスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、トリフェニルスズハイドロオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイド、ブチルヒドロキシスズオキサイドなどの有機スズ化合物、塩化カリウム、カリウムミョウバン、ギ酸カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸二水素カリウム、グルコン酸カリウム、コハク酸カリウム、酪酸カリウム、シュウ酸二カリウム、シュウ酸水素カリウム、ステアリン酸カリウム、フタル酸カリウム、フタル酸水素カリウム、メタリン酸カリウム、リンゴ酸カリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、亜硝酸カリウム、安息香酸カリウム、酒石酸水素カリウム、重蓚酸カリウム、重フタル酸カリウム、重酒石酸カリウム、重硫酸カリウム、硝酸カリウム、酢酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸カリウムナトリウム、炭酸水素カリウム、乳酸カリウム、硫酸カリウム硫酸水素カリウム、塩化ナトリウム、ギ酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸二水素ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、シュウ酸二ナトリウム、シュウ酸水素ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸水素ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酒石酸水素ナトリウム、重シュウ酸ナトリウム、重フタル酸ナトリウム、重酒石酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、乳酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、塩化リチウム、ギ酸リチウム、クエン酸三リチウム、クエン酸水素二リチウム、クエン酸二水素リチウム、グルコン酸リチウム、コハク酸リチウム、酪酸リチウム、シュウ酸二リチウム、シュウ酸水素リチウム、ステアリン酸リチウム、フタル酸リチウム、フタル酸水素リチウム、メタリン酸リチウム、リンゴ酸リチウム、リン酸三リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸二水素リチウム、亜硝酸リチウム、安息香酸リチウム、酒石酸水素リチウム、重シュウ酸リチウム、重フタル酸リチウム、重酒石酸リチウム、重硫酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、乳酸リチウム、硫酸リチウム、硫酸水素リチウムなどのアルカリ金属塩、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、コハク酸カルシウム、酪酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、ギ酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、酪酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩の1種若しくは2種以上をチタン化合物と組み合わせても良い。
【0029】
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物を構成するポリエステル[ポリブチレンナフタレート]は、ナフタレンジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体を主とするジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールを主とするグリコール成分、脂肪族ポリエステルジオールを一括して仕込んだのちに、チタン化合物の存在下にてエステル化あるいはエステル交換反応工程と、それに続く重縮合反応工程とを経由して製造される。
【0030】
エステル化あるいはエステル交換反応終了の際に180℃以上220℃以下の範囲にある事が好ましい。当該反応が220℃を超える場合には反応速度は大きくなるが、テトラヒドロフランの副生が多くなり好ましくない。また、180℃未満では反応が進行しなくなる。エステル化あるいはエステル交換反応により得られた反応生成物は、当該反応生成物を熱可塑性ポリエステルエラストマーの融点以上260℃以下の温度において0.4kPa(3Torr)以下の減圧下で重縮合させることが好ましい。重縮合反応温度が260℃を超える場合にはむしろ反応速度が低下して、着色も大となるので好ましくない。
【0031】
重縮合反応において、重合触媒として通常用いられている触媒を前記チタン化合物と併用することも可能であるが、前記チタン化合物をエステル化あるいはエステル交換反応及び重縮合反応の共通触媒として用いることが好ましい。他の触媒を併用すると熱可塑性ポリエステルエラストマーの着色が大となり、ひいては熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物の色調も低下するので好ましくない。また、重縮合反応速度も前記チタン化合物を単独にて使用した場合と比較して大差が無く、併用効果が得られない。
【0032】
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物を構成する熱可塑性ポリエステルの末端カルボキシル基濃度は40eq/T(40当量/10g)以下であり、好ましくは35eq/T(35当量/10g)である。末端カルボキシル基濃度が40eq/Tを超える場合には熱安定性や加水分解性が低下し、ひいては熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物の熱安定性や加水分解性も低下するので好ましくない。
【0033】
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物のD硬度は40以下であり、好ましくは30以下である。D硬度が40を超える場合にはエラストマーとしての柔軟性が低下するので好ましくない。
【0034】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、次の方法で製造することができる。すなわち、ポリエステル樹脂製造工程の重縮合反応が終了する以前の任意の段階で脂肪族ポリエステルジオールを添加しても良いし、ベントつき二軸押出機にポリエステル樹脂及び脂肪族ポリエステルジオールを供給し、混練押出しにより、製造してもよい。
【0035】
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物は上述のように成形性に優れているので、各種成形方法に用いて、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂を材料とする成形体を製造することは、非常に好ましい様態である。すなわち、本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂成形体の製造方法は、熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物を材料とする成形体を製造する方法であって、本発明のポリエステル樹脂組成物を用いて押出成形、射出成形、ブロー成形、発泡成形及び紡糸成形から選ばれる少なくとも1種の成形を行うことによりポリエステル樹脂成形体を得ることができる。またその中で押出成形は薄膜ダイから押出しによるフィルム製膜であっても良い。
【0036】
本発明の熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物を用いて得られる有用な成形品としては、例えば、射出成形による中空成形体、射出成形体等が挙げられる。その具体例としては、電気・電子部品、自動車用部品、機構部品等が挙げられる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明をさらい詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。各記載中、「部」は質量部、「%」は質量%を示す。また、諸物性の測定は以下の方法により実施した。
【0038】
1)固有粘度(IV)測定
常法に従って、溶媒であるオルトクロロフェノール中、35℃で測定した。
【0039】
2)チタン原子含有量測定
熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物中のチタン原子量は理学電機社製蛍光X線測定機ZSXを用いて定量した。
【0040】
3)末端カルボキシル基濃度測定
熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物をベンジルアルコールに溶解して、0.1N−NaOHにて滴定した値であり、1×10g当たりのカルボキシル基当量である。
【0041】
4)D硬度
熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物のD硬度は、テクロック社製デュロメータGS−720Hを用いて測定した。また測定操作については、日本工業規格JIS K−7215のタイプDデュロメータの操作方法に準じて行った。
【0042】
5)アウトガス量測定
ガスクロマトグラフィーは、Agilent Technologies社製6850を使用した。カラムはTC−1701を使用して、カラム温度は50℃にて5分間保持したのち、10℃/分にて250℃まで昇温したのち、250℃にて10分間保持した。キャリアガスにはヘリウムを使用した。
また、アウトガスの採取はPerkinn Elmer社製ヘッドスペースサンプラーを使用して、150℃、30分間の加熱条件にて実施した。
熱可塑性ポリエステルエラストマーから発生したアウトガス量は、ガスクロマトグラフィーによって検出されたピークを2通り(アセトアルデヒド(AA)及びテトラヒドロフラン(THF)ピークに近いもの)に分類し、AAピークに近いピークはAAの検量線式を、THFピークに近いピークはTHFの検量線式を使用し算出した。
【0043】
6)脂肪族ポリエステルジオール
3−メチル−1,5−ペンタンジオールとセバシン酸との脱水反応又は3−メチル−1,5−ペンタンジオールと1,4−ジカルボキシルシクロヘキサンとの脱水反応により製造されるが、今回は品質の安定している市販ポリエステルジオール(クラレポリオールP−1050、P−2041、P−2050、P−3050、P−4050)を使用した。脂肪族ポリエステルジオールとして用いたときの数平均分子量はそれぞれ、1000、2000、2000、3000、4000であった。これらの中で3−メチル−1,5−ペンタンジオールと1,4−ジカルボキシルシクロヘキサンから得られた脂肪族ポリエステルジオール「P−2041」を「脂肪族ポリエステルジオールB」と称し、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとセバシン酸から得られた残りの4種を「脂肪族ポリエステルジオールA」と称する。
【0044】
[実施例1]
熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物の生成量が100質量部となるように、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル27.1部、1,4−ブタンジオール14.0部、分子量1000の脂肪族ポリエステルジオールA45.0部にテトラ−n−ブチルチタネート0.045部をエステル交換反応槽に入れ、エステル交換反応槽が190℃となるように昇温しながら210分間エステル交換反応を行った。ついで得られた反応生成物を重縮合反応槽に移して重縮合反応を開始した。
重縮合反応は常圧から0.133kPa(1Torr)以下まで40分かけて徐々に減圧し、同時に所定の反応温度250℃まで昇温し、以降は所定の重合温度、0.133kPa(1Torr)の状態を維持して100分間重縮合反応を行った。100分が経過した時点で熱可塑性ポリエステルエラストマーを少量採取して固有粘度を測定した。固有粘度は1.00dL/gであった。
得られた熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物の固有粘度、アウトガス量、熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物中のチタン原子含有量等の測定を行って、その結果を表1に示した。
【0045】
[実施例2]
脂肪族ポリエステルジオールAの分子量を2000に変更した以外は、実施例1と同様にして熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物の固有粘度、アウトガス量、熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物中のチタン原子含有量等の測定を行って、その結果を表1に示した。
【0046】
[実施例3]
脂肪族ポリエステルジオールAの分子量を3000に変更した以外は、実施例1と同様にして熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物の固有粘度、アウトガス量、熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物中のチタン原子含有量等の測定を行って、その結果を表1に示した。
【0047】
[実施例4]
脂肪族ポリエステルジオールAの分子量を4000に変更した以外は、実施例1と同様にして熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物の固有粘度、アウトガス量、熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物中のチタン原子含有量等の測定を行って、その結果を表1に示した。
【0048】
[実施例5]
脂肪族ポリエステルジオールAの代わりに分子量が2000の脂肪族ポリエステルジオールBに変更した以外は、実施例1と同様にして熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物の固有粘度、アウトガス量、熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物中のチタン原子含有量等の測定を行って、その結果を表1に示した。
【0049】
[比較例1]
熱可塑性ポリエステルエラストマーの生成量が100質量部となるように、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル27.1部、1,4−ブタンジオール14.0部、分子量1000のポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコール70.0部にテトラ−n−ブチルチタネート0.045部をエステル交換反応槽に入れ、反応槽が190℃となるように昇温しながら210分間エステル交換反応を行った。ついで得られた反応生成物を重縮合反応槽に移して重縮合反応を開始した。
重縮合反応は常圧から0.133kPa(1Torr)以下まで40分かけて徐々に減圧し、同時に所定の反応温度250℃まで昇温し、以降は所定の重合温度、1Torrの状態を維持して100分間重縮合反応を行った。100分が経過した時点で熱可塑性ポリエステルエラストマーを少量採取して固有粘度を測定した。固有粘度は1.85dL/gであった。重縮合反応は常圧から0.133kPa(1Torr)以下まで40分かけて徐々に減圧し、同時に所定の反応温度250℃まで昇温し、以降は所定の重合温度、0.133kPa(1Torr)の状態を維持して100分間重縮合反応を行った。100分が経過した時点で熱可塑性ポリエステルエラストマーを少量採取して固有粘度を測定した。固有粘度は1.85dL/gであった。
得られた熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物の固有粘度、アウトガス量、熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物中のチタン原子含有量等の測定を行って、その結果を表1に示した。
【0050】
[比較例2]
ポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコールの分子量を1500に変更した以外は、比較例1と同様にして熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物の固有粘度、アウトガス量、熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物中のチタン原子含有量等の測定を行って、その結果を表1に示した。
【0051】
[比較例3]
ポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコールの分子量を2000に変更した以外は、比較例1と同様にして熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物を得た。
得られた熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物の固有粘度、アウトガス量、熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物中のチタン原子含有量等の測定を行って、その結果を表1に示した。
【0052】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のポリエステル樹脂組成物からなる成形品により、成形品からの揮発成分が少なくすることができ、ガスケット部材、ウェハー押え部材に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンナフタレートと脂肪族ポリエステルジオールからなるポリエステル樹脂組成物であって、ポリブチレンナフタレートと脂肪族ポリエステルジオールの合計100質量部に対して、脂肪族ポリエステルジオールを30〜60質量部配合してなることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
脂肪族ポリエステルジオールの数平均分子量が400〜4000の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
脂肪族ポリエステルジオールを構成するジオールの繰り返し単位に炭素数2〜8個のグリコール成分を含む請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
ポリブチレンナフタレート製造工程における重縮合反応終了以前の任意の段階で脂肪族ポリエステルジオールを添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物を押出成形、射出成形、ブロー成形、発泡成形及び紡糸成形から選ばれる少なくとも1種の成形を行うことにより得られるポリエステル樹脂成形体。
【請求項6】
押出成形が薄膜ダイから押出しによるフィルム製膜である請求項5記載のポリエステル樹脂成形体。

【公開番号】特開2010−174214(P2010−174214A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21480(P2009−21480)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】