説明

ポリエステル樹脂組成物

【課題】PETボトル再生フレークを主原料とした溶融成型に関して、樹脂の結晶化による白化を防止して透明性を保持し、かつ生産効率が良好となるポリエステル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】二種以上のポリエステル樹脂を溶融混合して得られるポリエステル樹脂組成物において、前記二種以上のポリエステル樹脂のうち一種がPETボトル再生樹脂であり、前記二種以上のポリエステル樹脂のうち他の一種が、テレフタル酸/エチレングリコール以外の共重合成分として、イソフタル酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールおよび2−メチル−1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を共重合したポリエステル樹脂である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にPETボトル再生フレークを主原料とした溶融成型に関して、樹脂組成物の結晶化による白化を防止して透明性を保持し、かつ生産効率が良好となる成型品を提供することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリエステル樹脂の中で、特にポリエチレンテレフタレ−ト(以下PETと略することがある)はその優れた透明性、機械的強度、耐熱性、ガスバリヤ−性等の特性により炭酸飲料、ジュ−ス、ミネラルウオ−タ等の清涼飲料や化粧品、医薬品、洗剤等の中空成形体(容器)の素材として採用されておりその普及は目覚しいものがある。
【0003】
ポリエステル製の中空成形体の製造法としては、溶融したポリエステルを直接金型に射出してそのまま成形品にする射出成形法、または溶融樹脂を金型に射出して密封パリソン(プリフォーム)を一旦形成した後にそれをブロー金型に挿入して空気を吹き込む射出ブロー法、あるいは延伸ブロー成形法が一般に採用されている。
【0004】
しかし、射出成形法、射出ブロー法あるいは延伸ブロー成形法は、金型の作製および成形上で高い技術が必要であり、しかも細物、深物、大物、取手等を有する複雑な形状の容器の製造が困難であるという欠点を有している。その上、これらの成形法は、金型や成形装置などの設備費が高いために、大量生産される容器には適しているが、多品種・少量生産には向かないという問題がある。このような理由より目薬等の医薬品用容器の成形には、PETの押出しブロー成形法(ダイレクトブロー成形法)が採用されている。
【0005】
ダイレクトブロー成形(押出ブロー成形)とは溶融可塑化した樹脂をダイオリフィスに通して押出して円筒状のパリソンを形成し、これを金型で挟んで内部に空気を吹き込む成形方法であり、成形の容易性、高生産性、成形機械や金型などの設備費が比較的安くてすむなどの特徴を有する。そして、このダイレクトブロー成形による場合は、成形を円滑に行うために、溶融状態で押出されたパリソンが吹き込み成形時にドローダウンすることを回避する必要があり、使用樹脂に高い溶融粘度が要求されるため、一般に高い溶融粘度を有する塩化ビニル樹脂やポリオレフィンなどがこのダイレクトブロー成形に適し、特に大型の容器を成形するにはポリエステル樹脂は向かないとされてきた。
【0006】
一般にPETは、主としてテレフタル酸、エチレングリコ−ルを原料とし、重縮合触媒としてゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、スズ化合物、アルミニウム化合物およびこれらの混合物などを用いて製造される。
【0007】
前記の触媒の中で、アンチモン触媒は、安価で、かつ優れた触媒活性を持つ触媒であるが、これを主成分、即ち、実用的な重合速度が発揮される程度の添加量にて使用すると、重縮合時に金属アンチモンが生成するため、ポリエステルに黒ずみや異物が発生すると共に、ゲルマニウム化合物やチタン化合物を触媒として用いた場合に比べて、得られたPETの結晶化速度が速いため、着色の少ない透明性の優れた結晶白化の少ない中空成形体を得ることが非常に困難である。
【0008】
上記のPETの黒ずみや異物の発生を抑制する試みがいくつも行われている。例えば、特許文献1においては、重縮合触媒として三酸化アンチモンとビスマスおよびセレンの化合物を用いることで、PET中の黒色異物の生成を抑制している。また、特許文献2においては、重縮合触媒としてナトリウムおよび鉄の酸化物を含有する三酸化アンチモンを用いると、金属アンチモンの析出が抑制されることを述べている。ところが、これらの重縮合触媒では、結局ポリエステル中のアンチモンの含有量を低減するという目的は達成できず、結晶白化を抑制することが難しい。
【0009】
PETボトル等の透明性が要求される用途について、アンチモン触媒の有する問題点を解決する方法として、例えば特許文献3では、アンチモン化合物とリン化合物の使用量比を規定することにより透明性を改良される方法が開示されている。しかしながら、この方法で得られたポリエステルからの中空成形品は透明性が十分なものとはいえない。
【0010】
また、特許文献4には、三酸化アンチモン、リン酸およびスルホン酸化合物を使用した透明性に優れたポリエステルの連続製造法が開示されている。しかしながら、このような方法で得られたポリエステルは熱安定性が悪く、得られた中空成形品のアセトアルデヒド含量が高くなるという問題を有し、この方法で得られたポリエステルからの中空成形品は透明性が十分なものとはいえない。
【0011】
三酸化アンチモン等のアンチモン系触媒に代わる重縮合触媒の検討も行われており、テトラアルコキシチタネートに代表されるチタン化合物やスズ化合物がすでに提案されているが、これらを用いて製造されたポリエステルは溶融成形時に熱劣化を受けやすく、またポリエステルが著しく着色するという問題点を有する。
【0012】
アンチモン化合物以外で優れた触媒活性を有しかつ熱安定性並びに熱酸化安定性に優れたポリエステルを与える触媒としては、ゲルマニウム化合物がすでに実用化されている。ゲルマニウム触媒を用いたポリエステル樹脂は色相が良く、特にPETボトル用樹脂として多量に使用されている。しかしながらこの触媒は非常に高価であるという問題点や、重合中に反応系から外へ留出しやすいため反応系の触媒濃度が変化し重合の制御が困難になるという課題を有している。ここでゲルマニウム触媒を用いたPET樹脂を用いて成型を行う場合、小型のPETボトルでは大きな問題とならなかったが、大型の容器のブロー成型を行うと特に肉厚部の透明性が低下する問題があった。また、金型からの離型性が悪化して、成型品表面の光沢ムラの発生や、成型サイクルが低下する問題もあった。
【0013】
一方で、PETボトルの廃棄問題が注目され、PETボトルスクラップ処理は環境問題として社会問題となった。このような背景から使用済みPETボトルの再資源化が鋭意検討されている。しかしながら、当然このPETボトルを再生するための成形時には、上述と同様、成形物の白化の問題、着色の問題、大型容器のブロー成形が難しいといった問題が生じた。このため、特にPETボトル再生フレークを主原料とした溶融成型に関して、樹脂の結晶化による白化を防止して透明性を保持し、かつ大型容器の生産効率が良好となるポリエステル樹脂が求められてきたが、まだ提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第2666502号(第2〜4頁)
【特許文献2】特開平9−291141号(第1〜2頁)
【特許文献3】特開平6−279579号公報(第2〜7頁)
【特許文献4】特開平10−36495号公報(第2〜3頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、ポリエステル樹脂成型品を製造するのに特に適したポリエステル樹脂組成物を提供することである。特にPETボトル再生フレークを主原料とした溶融成型に関して、樹脂の結晶化による白化を防止して透明性を保持し、かつ生産効率が良好となるポリエステル樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは上記問題を達成すべく鋭意研究した結果、本発明を完成させた。すなわち本発明は、二種以上のポリエステル樹脂を溶融混合して得られるポリエステル樹脂組成物において、組成物全体の酸成分/グリコール成分を100/100モル%としたときに、テレフタル酸/エチレングリコール以外の共重合成分が1〜30モル%であり、かつ組成物全体に触媒として含まれるゲルマニウム原子/アンチモン原子の質量比率が10/90〜99/1であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のポリエステル樹脂組成物を用いることにより、PETボトル再生フレークを主原料とした溶融成型に関して、樹脂の結晶化による白化を防止し、透明性を維持した成型品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、二種以上のポリエステル樹脂を溶融混合して得られるポリエステル樹脂組成物である。本発明において、「組成物全体」とは全てのポリエステル樹脂からなる樹脂組成物を指す。
【0019】
本発明において、樹脂組成物中にポリエステル樹脂の重合触媒として含まれるゲルマニウム原子/アンチモン原子の質量比率が10/90〜99/1である場合、成型品の透明性が向上し、かつ成型サイクルが向上する。これは、ゲルマニウム原子およびアンチモン原子が同時に含まれることによる。ポリエステル重合触媒としてアンチモン原子が過剰割合含まれる場合、成型時の結晶化が速く、成型品が白化し易くなる。また、ポリエステル重合触媒がアンチモン原子系のみである場合、成型品の耐熱性が低くなる。また、PET重合触媒としてゲルマニウム金属系のみである場合、成型品の耐熱性が高くなり、成型品の透明性も非常に良好となるが、結晶化が遅い為、金型からの離型性が悪化して、成型品表面の光沢ムラの発生や、成型サイクルが低下するなど、様々な問題が残される。従って、ポリエステル樹脂組成物中に、ゲルマニウム原子およびアンチモン原子を同時に含むことで、高耐熱、高透明を維持し、金型離型性を向上させることができるので好ましい。ゲルマニウム原子とアンチモン原子の比率は、ゲルマニウム原子が多く含まれることが好ましく、ポリエステル樹脂組成物中のゲルマニウム原子とアンチモン原子の含有比率は、10/90〜99/1質量%である。さらに好ましくは、20/80〜95/5質量%であり、最も好ましくは、25/80〜90/10質量%である。また、樹脂組成物全体に含まれるゲルマニウム原子は1〜500ppmであることが好ましく、アンチモン原子は1〜700ppmであることが好ましい。さらに好ましくは、樹脂組成物全体に含まれるゲルマニウム原子は3〜200ppmであることが好ましく、アンチモン原子は5〜400ppmであることが好ましい。最も好ましくは、樹脂組成物全体に含まれるゲルマニウム原子は5〜100ppmであることが好ましく、アンチモン原子は10〜300ppmであることが好ましい。
【0020】
本発明で用いられるポリエステルを製造する際に使用する重縮合触媒は、重合反応の任意の段階で反応系に添加することができる。例えばエステル化反応もしくはエステル交換反応の開始前および反応途中の任意の段階もしくは重縮合反応の開始直前あるいは反応途中に反応系へ添加することができる。
【0021】
本発明で用いられるポリエステルを製造する際に使用する重縮合触媒の添加方法は、粉末状ないしはニート状での添加であってもよいし、エチレングリコールなどの溶媒のスラリー状もしくは溶液状での添加であってもよく、特に限定されない。また、他の成分とを予め混合した混合物あるいは錯体として添加してもよいし、これらを別々に添加してもよい。
【0022】
本発明で用いられるポリエステルを製造する際に使用する重縮合触媒は、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物以外に、チタン化合物、スズ化合物、アルミニウム化合物などの他の重縮合触媒を、これらの成分の添加が前述のようなポリエステルの特性、加工性、色調等製品に問題を生じない添加量の範囲内において共存させて用いても良い。
【0023】
添加可能なアンチモン化合物としては、好適な化合物として三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコキサイドなどが挙げられ、特に三酸化アンチモンの使用が好ましい。また、ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウムなどが挙げられ、特に二酸化ゲルマニウムが好ましい。
【0024】
また、チタン化合物、スズ化合物などの他の重合触媒としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラ−tert−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネートなどが挙げられ、特にテトラブチルチタネートの使用が好ましい。またスズ化合物としては、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、モノブチルヒドロキシスズオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズサルファイド、ジブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸などが挙げられ、特にモノブチルヒドロキシスズオキサイドの使用が好ましい。
【0025】
本発明の樹脂組成物は、二種以上のポリエステル樹脂を溶融混合して得られるものである。従って、組成物全体に触媒として含まれるゲルマニウム原子とアンチモン原子は、ゲルマニウム触媒により製造したポリエステル樹脂と、アンチモン触媒により製造したポリエステル樹脂を溶融混合しても良いし、ゲルマニウム触媒とアンチモン触媒を併用したポリエステル樹脂を用いても良い。
【0026】
本発明に言うポリエステルとは、ジカルボン酸を含む多価カルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から選ばれる一種又は二種以上とグリコールを含む多価アルコールから選ばれる一種又は二種以上とから成るもの、又はヒドロキシカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から成るもの、又は環状エステルから成るものをいう。
【0027】
ジカルボン酸としては、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などに例示される芳香族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホテレフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、2−リチウムスルホテレフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、2−カリウムスルホテレフタル酸などに例示される金属スルホネ−ト基含有芳香族ジカルボン酸又はそれらの低級アルキルエステル誘導体などが挙げられる。
【0028】
上記のジカルボン酸のなかでも、特に、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸の使用が、得られるポリエステルの物理特性等の点で好ましく、必要に応じて他のジカルボン酸を共重合しても良い。
【0029】
これらジカルボン酸以外の多価カルボン酸として、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0030】
グリコールとしてはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、1,10−デカメチレングリコール、1,12−ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノ−ル、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加されたグリコール、などに例示される芳香族グリコールが挙げられる。
【0031】
上記のグリコールのなかでも、特に、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールを主成分として使用することが好適である。これらグリコール以外の多価アルコールとして、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロ−ル、ヘキサントリオールなどが挙げられる。ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、又はこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0032】
環状エステルとしては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチドなどが挙げられる。
【0033】
多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、これらのアルキルエステル、酸クロライド、酸無水物などが例示される。
【0034】
本発明で用いられるポリエステルとしては、主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体もしくはナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であり、主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルが好ましい。
【0035】
主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体であるポリエステルとは、全酸成分に対してテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。主たる酸成分がナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であるポリエステルも同様に、ナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。
【0036】
主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルとは、全グリコール成分に対してアルキレングリコールを合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。ここで言うアルキレングリコールは、分子鎖中に置換基や脂環構造を含んでいてもよい。
【0037】
本発明で用いられるナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、上述のジカルボン酸類に例示した1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体が好ましい。
【0038】
本発明に用いられるポリエステルの好ましい一例は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トから構成されるポリエステルであり、より好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を70モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を80モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのはエチレンテレフタレ−ト単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
【0039】
また本発明に用いられるポリエステルの好ましい他の一例は、主たる繰り返し単位がエチレン−2,6−ナフタレ−トから構成されるポリエステルであり、より好ましくはエチレン−2,6−ナフタレ−ト単位を70モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレン−2,6−ナフタレ−ト単位を80モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのは、エチレン−2,6−ナフタレ−ト単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
【0040】
また本発明に用いられるポリエステルの好ましいその他の例としては、プロピレンテレフタレ−ト単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、プロピレンナフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレ−ト単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、ブチレンナフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、またはブチレンテレフタレ−ト単位を70モル%以上含む線状ポリエステルである。
【0041】
本発明のポリエステル樹脂組成物においては、上述のポリエステル樹脂の二種以上を溶融混合して得られるものである。その際、組成物全体の酸成分/グリコール成分を100/100モル%としたときに、テレフタル酸/エチレングリコール以外の共重合成分は1〜30モル%であることが好ましい。テレフタル酸/エチレングリコール以外の共重合成分が1モル%未満では成形時の透明性を高めることが出来ないことがある。一方、30モル%を越えると透明性は良くなるが、成形性が低下したり、成形物の耐衝撃性が低下することがある。テレフタル酸/エチレングリコール以外の共重合成分の好ましい共重合量は2〜25モル%であり、より好ましくは3〜20モル%である。なお、本発明で言うテレフタル酸/エチレングリコール以外の成分には、エチレングリコールの二量化反応により生成するジエチレングリコールは考慮しないものとする。
【0042】
上記テレフタル酸/エチレングリコール以外の共重合成分は、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールおよび2−メチル−1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることが、透明性と成形性を両立する上で好ましく、特にイソフタル酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることがより好ましい。
【0043】
特に組成物全体の組成として、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコールの組み合わせ、テレフタル酸//エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノールの組み合わせ、テレフタル酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコールの組み合わせは透明性と成形性を両立する上で好ましい。なお、当然ではあるが、エステル化(エステル交換)反応、重縮合反応中に、エチレングリコールの二量化により生じるジエチレングリコールを少量(5モル%以下)含んでも良いことは言うまでも無い。
【0044】
本発明の樹脂組成物において、組み合わせる二種以上のポリエステル樹脂としては、一種がポリエチレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。また、リサイクル等環境への配慮を考慮すると一種がPETボトル再生樹脂であることが好ましい。
【0045】
本発明に使用されるPETボトル再生樹脂は、使用済みPETボトルを回収後、粉砕、洗浄工程等を経て再生PETフレークとなっているものであれば、本発明の原料としてあらゆるものが使用可能である。この場合、PETボトル再生フレークの形状は、表面積が小さいものであることが特に好ましい。また、粉砕されたPETボトル再生フレークは、アルカリ条件下にて洗浄されていることが特に好ましい。
【0046】
ポリエチレンテレフタレート樹脂(PETボトル再生樹脂)以外のポリエステル樹脂としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールおよび2−メチル−1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を共重合したものが成形性と透明性を両立する上で好ましい。また、イソフタル酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を共重合したものがより好ましい。その共重合量は酸成分、グリコール成分それぞれを100モル%としたときに、0.5〜50モル%が好ましく、より好ましくは3〜40モル%、さらに好ましくは5〜35モル%、最も好ましくは7〜20モル%である。
【0047】
この中でもテレフタル酸//エチレングリコール/ジエチレングリコール(90/10〜99.5/0.5(モル比))、テレフタル酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコール(60/40〜90/10(モル比))、テレフタル酸//エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノール(60/40〜90/10(モル比))、テレフタル酸/イソフタル酸(95/5〜70/30(モル比))//エチレングリコールの組み合わせは、溶融成形加工性と成形品の透明性を両立させやすい。
【0048】
本発明の樹脂組成物において、組み合わせる二種以上のポリエステル樹脂の1種がPETボトル再生樹脂である場合、それの触媒としてゲルマニウム原子とアンチモン原子を共に含んでいることが好ましい。すなわち、ゲルマニウム触媒とアンチモン触媒を併用して重合したPET樹脂を用いて成型したPETボトルの再生樹脂を用いても良いし、ゲルマニウム触媒を用いて重合したPET樹脂を用いて成型したPETボトルの再生樹脂とアンチモン触媒を用いて重合したPET樹脂を用いて成型したPETボトルの再生樹脂の混合物を用いても良い。成形性と透明性を高いレベルで両立するためには後者がより好ましい。
【0049】
本発明で用いられるポリエステル樹脂、それからなる樹脂組成物のチップの形状は、シリンダー型、角型、球状または扁平な板状等の何れでもよく、その平均粒径は、通常1.5〜5mm、好ましくは1.6〜4.5mm、さらに好ましくは1.8〜4.0mmの範囲である。例えば、シリンダー型の場合は、長さは1.5〜4mm、径は1.5〜4mm程度であるのが実用的である。球状粒子の場合は、最大粒子径が平均粒子径の1.1〜2.0倍、最小粒子径が平均粒子径の0.7倍以上であるのが実用的である。また、チップの質量は15〜30mg/個の範囲が実用的である。
【0050】
本発明に用いられるポリエステル樹脂の還元粘度は0.55〜1.50dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.58〜1.30dl/g、さらに好ましくは0.60〜1.00dl/gの範囲である。還元粘度が0.55dl/g未満では、得られた成形体等の機械的特性が悪いことがある。また、1.50dl/gを越える場合は、成型機等による溶融時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、保香性に影響を及ぼす遊離の低分子量化合物が増加したり、成形体が黄色に着色したりする等の問題が起こる場合がある。
【0051】
本発明に用いられるポリエステル樹脂にはカルボキシル基、ヒドロキシル基またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物(例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、グリセリン、トリメチロールプロパン等)をポリエステルの酸成分、グリコール成分それぞれの0.001〜5モル%含有することが成形性を高める上で好ましい。
【0052】
本発明のポリエステル樹脂組成物の還元粘度は、好ましくは0.40〜1.50dl/g、より好ましくは0.50〜1.20dl/g、さらに好ましくは0.60〜1.00dl/gである。還元粘度が0.40dl/g未満であると、樹脂凝集力不足のために成形品の強伸度が不足し、脆くなって使用できないことがある。一方、1.50dl/gを越えると溶融粘度が上がり過ぎるために、成形するのに最適な温度も上がってしまい、結果的に成形加工性を悪くしてしまう虞がある。
【0053】
本発明のポリエステル樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PETボトル再生樹脂)と共重合ポリエステル樹脂の混合物から得る場合、共重合ポリエステル樹脂の含有量は、組成物全体を100質量%としたときに0.01質量%以上99.5質量%以下が好ましく、下限は0.1質量%以上、上限は98質量%以下がより好ましい。99.5質量%を超えると耐衝撃性などの機械的物性が発現しないことがあり、また0.01質量%未満であると透明性等の改良効果が発現しないことがある。
【0054】
本発明のポリエステル樹脂組成物を用いた成型法としては、射出成型、押出し成形、異形押出し成形、インジェクションブロー成形、ダイレクトブロー成形、ブローコンプレッション成形、延伸ブロー成形、カレンダー成形、熱成形(真空・圧空成形を含む)、反応射出成形、発泡成形、圧縮成形、粉末成形(回転・延伸成形を含む)、積層成形、注型、溶融紡糸等を挙げることができる。これらのうち、本発明の透明性の改良、および成型サイクル向上という本発明の効果を最大限に発揮する観点からブロー成形、特に好ましくはインジェクションブロー成形が好ましい。
【0055】
本発明のポリエステル樹脂組成物を溶融成型する際の温度条件としては、組成物全体が溶融流動できる範囲であればいかなる温度でも問題ないが、ポリエステル樹脂の性質上、100℃以上350℃以下と考えられ、より好ましくは150℃以上300℃以下が好適である。温度が低すぎるとポリマーを送り出しできないかまたは成型機に過大な負荷がかかり、逆に温度が高すぎるとポリマーが熱劣化を起こすため、好ましくない。成型における吐出量、その他の条件に関しては、機台の適正条件に適宜調整することで設定可能である。
【0056】
本発明のポリエステル樹脂組成物を用いて製造される中空成形体は、従来公知の成形法によって製造が可能である。例えば、ポリエステル延伸ブロー中空成形体の製造方法について具体的に説明する。
【0057】
本発明のポリエステル中空成形体を製造するには、まず、ポリエステル樹脂組成物から予備成形体であるプリフォームを製造するが、該プリフォームは従来公知の方法、たとえば射出成形、押出成形などによって製造することができる。形成されたプリフォームは、延伸ブローに供するため延伸に適した温度に調節し、引き続き延伸ブロー成形することにより、ポリエステル中空成形体を製造する。
【0058】
ポリエステル中空成形体の場合は、例えば、射出成形または押出成形で一旦プリフォームを成形し、そのままあるいは口栓部、底部を加工後、ホットパリソン法あるいはコールドパリソン法などの二軸延伸ブロー成形法が適用される。この場合の成形温度、具体的には成形機のシリンダー各部およびノズルの温度は通常260〜290℃の範囲である。延伸温度は通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で、延伸倍率は通常縦方向に1.5〜3.5倍、円周方向に2〜5倍の範囲で行えばよい。得られた中空成形体は、そのまま使用できるが、特に果汁飲料、ウーロン茶などのように熱充填を必要とする飲料の場合には、プリフォ−ムの口栓部を加熱結晶化後、前記のように延伸ブロー成形し、さらにブロー金型内で熱固定し、耐熱性を付与して使用しても良い。熱固定は通常圧空などにより、100〜200℃、好ましくは120〜180℃で、数秒〜数時間、好ましくは数秒〜数分間行われる。
【0059】
熱固定方法には、一個の金型で延伸ブロー成形と熱固定を行う1モ−ルドタイプ法と最終形状より大きめに成形した中空成形体を加熱収縮させ再ブローする2段ブロー成形法がある。
【0060】
また、本発明のポリエステル製押出しブロー中空成形体の製造方法について説明する。押出しブロー法(ダイレクトブロー法)とは、押出成形機または射出成形機で成形されたパリソン(またはプリフォーム)が、まだ軟らかく可塑性を失わないうちにブロー成形を完了させてしまうものである。成形機は、従来からポリスチレンやポリ塩化ビニルのブロー成形に用いられている装置をそのまま用いることができる。この場合、成形温度はシリンダー各部やノズルの温度を通常260〜290℃で、240〜290℃で溶融押出成形して円筒状のパリソンを形成し、これをブロー用金型に挿入して常法により空気を吹き込んでパリソンを所定の形状に延伸膨張させる方法を採用することができる。
【0061】
本発明のポリエステル樹脂組成物を用いた中空成形体としては、採血管、試験管などの射出成形体、清涼飲料用ボトルやエアゾ−ル容器などの延伸ブロー成形体、および目薬等の医薬品容器などの押出しブロー成形体が挙げられる。またこれらの成形体は、ガスバリヤ−性樹脂、酸素吸収性樹脂、あるいは紫外線吸収性樹脂等を含む樹脂層を少なくとも一層含有する多層積層体であってもよい。
【0062】
本発明の樹脂組成物を用いて成型する際、それぞれのポリエステル樹脂を予め溶融混合してペレット化してから成形しても良いし、ポリエステル樹脂同士をドライブレンドして直接溶融成形しても良い。成型品の耐衝撃性、色相、透明性、簡便性の観点から後者がより好ましい。特にPETボトル再生樹脂を用いる場合は再生のフレークを用いて直接ブロー成形しても良い。
【0063】
本発明の樹脂組成物を用いて中空成形体を製造する場合、特に容量2000ml以上の大型容器において、その効果を発揮する。すなわち、通常のポリエステル樹脂を用いると、大型容器であれば肉厚が厚くなるため、冷却に時間がかかり、冷却工程で結晶白化が進行しやすく、透明性が著しく低下する傾向にあるからである。従って、本発明のポリエステル樹脂組成物を用いて厚み4mmに成型した板のヘイズは、15%以下であることが好ましく、さらに好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下である。容量の上限は特に限定されないが、5000000ml未満が好ましく、1000000ml未満がより好ましく、500000ml未満がさらに好ましい。好ましい下限は5000ml以上が好ましく、10000ml以上がより好ましく、15000ml以上がさらに好ましい。
【0064】
また、本発明で用いられるポリエステルには、必要に応じて公知の紫外線吸収剤、外部より添加する滑剤や反応中に内部析出させた滑剤、離型剤、核剤、安定剤、酸化防止剤、酸素吸収能あるいは酸素捕獲能のある添加剤、帯電防止剤、染料、顔料などの各種の添加剤を配合してもよい。
【0065】
また、有機系、無機系、および有機金属系のトナー、ならびに蛍光増白剤などを配合することができ、これらを1種もしくは2種以上含有することによって、成型品の黄み等の着色をさらに優れたレベルにまで抑えることができる。酸化防止剤としては、芳香族アミン系、フェノール系等の酸化防止剤が使用可能であり、安定剤としては、リン酸やリン酸エステル系等のリン系、硫黄系、アミン系等の安定剤が使用可能である。
【0066】
これらの添加剤は、ポリエステルの重合時もしくは重合後、あるいはポリエステル中空成形体の成型時の任意の段階で添加することが可能であり、どの段階が好適かは化合物の特性やポリエステル中空成形体の要求性能に応じてそれぞれ異なる。
【0067】
本発明のポリエステルの樹脂組成物には、加工時のポリエステル樹脂の熱劣化を抑制する(熱劣化による樹脂の着色や樹脂ダレの発生を防止する)ために酸化防止剤を配合して使用するのが望ましい。当該酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、有機亜リン酸エステル系化合物等が好適である。
【0068】
本発明で使用するフェノール系酸化防止剤の具体例としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル4−エチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキジフェニル)プロパン、ビス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)スルフィド、2,5−ジ−tert−アミルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、ビス(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)スルフィド、ビス(3−tert−ブチル5−エチル−2−ヒドロキジフェニル)メタン、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル4−ヒドロキジフェニル)メタン、ビス(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)スルフィド、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、エチレンビス[3,3−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブチラ−ト]、ビス[2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル5−メチルベンジル)−4−メチル−6−tert−ブチルフェニル]テレフタレート、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパン、4−メトキシフェノール、シクロヘキシルフェノール、p−フェニルフェノール、カテコール、ハイドロキノン、4−tert−ブチルピロカテコール、エチルガレート、プロピルガレート、オクチルガレート、ラウリルガレート、セチルガレート、β−ナフトール、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキジベンジル)ベンゼン、1,6−ビス[2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]ヘキサン、テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキジフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]スルフィド、n−オタタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート、ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル4−ヒドロキジフェニル)プロピオニルアミノ]ヘキサン、2,6−ビス(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−4−メチルフェノール、ビス[S−(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)]チオテレフタレート、トリス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,1,3−トリス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)ブタン等が挙げられる。なお、これらの化合物は1種でも2種以上を併用して用いてもよい。
【0069】
該フェノール系酸化防止剤の配合量は、樹脂組成物全体を100質量部としたとき、好ましい上限は1.0質量部以下、特に好ましくは0.8質量部以下、一方好ましい下限は0.01質量部以上、特に好ましくは0.02質量部以上である。配合量が0.01質量部未満では、加工時の熱劣化を抑制する効果が得られ難く、また、1.0質量部を越えると熱劣化を抑制する効果は飽和し経済的でない。
【0070】
本発明で使用する有機亜リン酸エステル系化合物の具体例としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(メチルフェニル)ホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(オクチルフェニル)ホスファイト、トリス[デシルポリ(オキシエチレン)]ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、トリ(デシル)チオホスファイト、トリイソデシルチオホスファイト、フェニル・ビス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、フェニル・ジイソデシルホスファイト、テトラデシルポリ(オキシエチレン)・ビス(エチルフェニル)ホスファト、フェニル・ジシクロヘキシルホスファイト、フェニル・ジイソオクチルホスファイト、フェニル・ジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニル・シクロヘキシルホスファイト、ジフェニル・イソオクチルホスファイト、ジフェニル・2−エチルヘキシルホスファイト、ジフェニル・イソデシルホスファイト、ジフェニル・シクロヘキシルフェニルホスファイト、ジフェニル・(トリデシル)チオホスファイト、ノニルフェニル・ジトリデシルホスファイト、フェニル・p−tert−ブチルフェニル・ドデシルホスファイト、ジイソプロピルホスファイト、ビス[オタデシルポリ(オキシエチレン)]ホスファイト,オクチルポリ(オキシプロピレン)・トリデシルポリ(オキシプロピレン)ホスファイト、モノイソプロピルホスファイト、ジイソデシルホスファイト、ジイソオクチルホスファイト、モノイソオクチルホスファイト、ジドデシルホスファイト、モノドデシルホスファイト、ジシクロヘキシルホスファイト、モノシクロヘキシルホスファイト、モノドデシルポリ(オキシエチレン)ホスファイト、ビス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、モノシクロヘキシル・フェニルホスファイト、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラトリデシル・4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、テトラトリデシル・4,4’−ブチリデンビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェニル)ジホスファイト、テトライソオクチル・4,4’−チオビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェニル)ジホスファイト、テトラキス(ノニルフェニル)・ポリ(プロピレンオキシ)イソプロピルジホスファイト、テトラトリデシル・プロピレンオキシプロピルジホスファイト、テトラトリデシル・4,4’−イソプロピリデンジシクロヘキシルジホスファイト、ペンタキス(ノニルフェニル)・ビス[ポリ(プロピレンオキシ)イソプロピル]トリホスファイト、ヘプタキス(ノニルフェニル)・テトラキス[ポリ(プロピレンオキシ)イソプロピル]ペンタホスファイト、ヘプタキス(ノニルフェニル)・テトラキス(4,4’−イソプロピリデンジフェニル)ペンタホスファイト、デカキス(ノニルフェニル)・ヘプタキス(プロピレンオキシイソプロピル)オクタホスファイト、デカフェニル・ヘプタキス(プロピレンオキシイソプロピル)オクタホスファイト、ビス(ブトキシカルボエチル)・2,2−ジメチレン−トリメチレンジチオホスファイト、ビス(イソオクトキシカルボメチル)・2,2−ジメチレントリメチレンジチオホスファイト、テトラドデシル・エチレンジチオホスファイト、テトラドデシル・ヘキサメチレンジチオホスファイト、テトラドデシル・2,2’−オキシジエチレンジチオホスファイト、ペンタドデシル・ジ(ヘキサメチレン)トリチオホスファイト、ジフェニルホスファイト、4,4’−イソプロピリデン−ジシクロヘキシルホスファイト、4,4’−イソプロピリデンジフェニル・アルキル(C12〜C15)ホスファイト、2−tert−ブチル−4−[1−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキジフェニル)イソプロピル]フェニルジ(p−ノニルフェニル)ホスファイト、ジトリデシル・4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジオクタデシル・2,2−ジメチレントリメチレンジホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、ヘキサトリデシル・4,4’,4”−1,1,3−ブタントリイル−トリス(2−tert−ブチル−5−メチルフェニル)トリホスファイト、トリドデシルチオホスファイト、デカフェニル・ヘプタキス(プロピレンオキシイソプロピル)オクタボスファイト、ジブチル・ペンタキス(2,2−ジメチレントリメチレン)ジホスファイト、ジオクチル・ペンタキス(2,2−ジメチレントリメチレン)ジホスファイト、ジデシル・2,2−ジメチレントリメチレンジホスファイト並びにこれらのリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルジウム、バリウム、亜鉛及びアルミニウムの金属塩が挙げられる。なお、これらの化合物は1種でも2種以上を併用して用いてもよい。
【0071】
有機亜リン酸エステル系化合物の配合量は、樹脂組成物全体を100質量部としたときに、好ましい上限は3.0質量部以下、特に好ましくは2.0質量部以下であり、好ましい下限は0.01質量部以上、特に好ましくは0.02質量部以上である。配合量が0.01質量部未満では、加工時の熱劣化を抑制する効果が得られ難く、また、3.0質量部を越えると熱劣化を抑制する効果は飽和し経済的でない。
【0072】
なお、フェノール系酸化防止剤と有機亜リン酸エステル系化合物とを併用すると熱劣化の抑制効果がより向上し、好ましい。
【0073】
本発明においては、さらにポリエステル樹脂組成物の耐熱性、耐衝撃性、寸法安定性、表面平滑性、剛性、その他機械特性等を改良する為に、以下のような樹脂を添加することができる。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)等のポリオレフィン系樹脂、または、エラストマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン−ポリイソプレン共重合体、アクリロニトリル−イソプレン共重合体、アクリル酸エステル−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル酸エステル−イソプレン共重合体などの共役ジエン系重合体;該共役ジエン系重合体の水素添加物;エチレン−プロピレン共重合体などのオレフィン系ゴム;ポリアクリル酸エステルなどのアクリル酸ゴム;ポリオルガノシロキサン;熱可塑性エラストマー;エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基等を有する熱可塑性エラストマー;エチレン系アイオノマー共重合体などが挙げられ、これらは1種または、2種以上で使用される。中でも、アクリル系ゴム、共役ジエン系共重合体または共役ジエン系共重合体の水素添加物が好ましい。さらには、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−エチルデンノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−1,4ヘキサジエン共重合体、エチレン−ブテン−1−ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン−ブテン−1−1,4ヘキサジエン共重合体、アクリロニトリル−クロロプレン共重合体(NCR)、スチレン−クロロプレン共重合体(SCR)、ブタジエン−スチレン共重合体(BS)、エチレン−プロピレンエチリデン共重合体、スチレン−イソプレンゴム、スチレン−エチレン共重合体、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)共重合体(α−MES−B−α−MES)、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソプレン−ポリ(α−メチルスチレン)共重合体、その他の組成のポリエステル等の樹脂または、エラストマーをポリエステル樹脂組成物に添加することもできる。
【0074】
本発明においては成形性を高める目的で滑剤を配合しても良い。用いられる滑剤としては、特に限定されないが、例えばポリオレフィン系ワックス、有機リン酸エステル金属塩、有機リン酸エステル、アジピン酸またはアゼライン酸と高級脂肪族アルコールとのエステル化合物、エチレンビスステアリン酸アマイド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アマイドなどの脂肪族アマイド、グリセリン高級脂肪酸エステル化合物、高級脂肪族アルコール、高級脂肪酸、石油または石炭より誘導されるパラフィン、ワックス、天然または合成された高分子エステルワックス、高級脂肪酸による金属石鹸等が挙げられる。これらは、1種、または2種以上を併用しても良い。
【0075】
本発明のポリエステル樹脂組成物において、成型加工時の金型離型性等を向上させるため、飽和脂肪酸モノアミド、不飽和脂肪酸モノアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等を同時に併用することが可能である。
【0076】
飽和脂肪酸モノアミドの例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド等が挙げられる。不飽和脂肪酸モノアミドの例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノ−ル酸アミド等が挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド等が挙げられる。
【0077】
また、不飽和脂肪酸ビスアミドの例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド等が挙げられる。好ましいアミド系化合物は、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等である。このようなアミド化合物の配合量は、10ppb〜1×10ppmの範囲である。
【0078】
また同様に、本発明のポリエステル樹脂組成物において、成型加工時の金型離型性を向上させるため、炭素数8〜33の脂肪族モノカルボン酸の金属塩化合物、例えばナフテン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、メリシン酸、オレイン酸、リノ−ル酸等の飽和及び不飽和脂肪酸のリチウム塩、カリウム塩、マグネシウム、カルシウム塩及びコバルト塩等を同時に併用することも可能である。これらの化合物の配合量は、10ppb〜300ppmの範囲である。
【0079】
本発明のポリエステル樹脂組成物を溶融成型する際、以下のような反応性化合物を添加することができる。反応性化合物には、ポリエステル樹脂との反応による分子量増加に依存する「溶融強度増強効果」を発現させるための加工条件管理幅を広げ、溶融強度調整が可能であるように制御することと、また製品の耐折り曲げ白化性及び未反応物の製品表層へのブリードアウト抑制を満足するために、重量平均分子量が200以上50万以下であることが望ましく、好ましい下限は500以上、より好ましくは700以上、最も好ましくは1000以上である。一方好ましい上限は30万以下、より好ましくは10万以下、最も好ましくは5万以下である。反応性化合物の重量平均分子量が200未満であると未反応の反応性化合物が製品の表面にブリードアウトし、製品の接着性低下、表面の汚染をひきおこす可能性がある。一方50万を越えると折り曲げでも、反応性化合物と非晶性ポリエステル間の相溶性が悪いためかボイドが発生し、折り曲げ白化する可能性が大きくなる。
【0080】
本発明に用いられる反応性化合物は、ポリエステルの持つヒドロキシル基あるいはカルボキシル基と反応し得る官能基が分子内1分子あたり2個以上持つことが樹脂全体に一部架橋を導入する点で好ましい。反応性化合物の効果により、溶融押出時においてポリエステルの持つヒドロキシル基あるいはカルボキシル基と反応性化合物の反応物が生成する際、一部が架橋生成物となることによって溶融強度向上効果を得ることができるのである。
【0081】
反応性化合物が持つ官能基の具体例としては、反応の速さよりグリシジル基あるいはイソシアネート基が挙げられる。また、これら以外にもさらにカルボキシル基、カルボン酸金属塩、エステル基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボジイミド基、グリシジル基等の官能基、さらにはラクトン、ラクチド、ラクタム等ポリエステル末端と開環付加する官能基を含むものでもよい。
【0082】
反応性化合物中の官能基の形態はいかなるものでも可能である。例えばポリマーの主鎖に官能基が存在するもの、側鎖に存在するもの、末端に存在するもの全てが可能である。具体例としては、スチレン/メチルメタクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体、ビスフェノールA型やクレゾールノボラック、フェノールノボラック型のエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物等があるがこれらのいかなるものでもよく、またこれらを混合して使用することももちろん可能である。
【0083】
特に、上述の反応性化合物としては、(X)20〜99質量%のビニル芳香族モノマー、(Y)1〜80質量%のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよび/またはグリシジルアルキル(メタ)アクリレート、および(Z)0〜40質量%のアルキル(メタ)アクリレートからなる共重合体が好ましい。さらに好ましくは、(X)が25〜90質量%、(Y)が10〜75質量%、(Z)が0〜35質量%からなる樹脂で、最も好ましくは、(X)が30〜85質量%、(Y)が15〜70質量%、(Z)が0〜30質量%からなる樹脂である。これらの組成は、ポリエステル樹脂系との反応に寄与する官能基濃度に影響する為、上述のように適切に制御する必要がある。上述の組成から外れる場合、ポリエステル樹脂との反応性が低下し、成形加工性の低下する虞がある。
【0084】
反応性化合物の添加量は分子量及び官能基の導入数により個々に選定できるが、組成物全体を100質量%としたときに0.5質量%以上80質量%以下が好ましく、下限は1質量%以上、上限は70質量%以下がより好ましい。0.5質量%未満であると目標とした樹脂ダレ抑制効果が発現しないことがあり、また80質量%を超えて添加すると製品の機械的特性に影響を与えることがある。
【実施例】
【0085】
本発明を更に詳細に説明するために以下に実施例を挙げるが、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。合成例に記載された測定値は以下の方法によって測定したものである。
【0086】
樹脂組成:ポリエステル樹脂組成物の組成は、重クロロホルム溶媒中でヴァリアン社製核磁気共鳴分析計(NMR)ジェミニ−200を用いて、H−NMR分析を行なってその積分比より決定した。
【0087】
ガラス転移温度、融点:サンプル5mgをアルミニウム製サンプルパンに入れて密封し、セイコーインスツルメンツ(株)製示差走査熱量分析計(DSC)DSC−220を用いて、300℃まで、昇温速度20℃/分にて測定し、融解熱の最大ピーク温度を結晶融点として求めた。ガラス転移温度は、ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と遷移部における最大傾斜を示す接線との交点の温度で求めた。
【0088】
還元粘度:測定用サンプル0.1gをp−クロロフェノール/テトラクロロエタン(質量比6/4)混合溶媒25mlに溶解し、ウベローデ粘度管を用いて30℃にて測定した。単位をdl/gで示した。
【0089】
含有金属分析:蛍光エックス線による元素分析により定量化した。原料約10gをステンレス製のリングを用いて、300℃の溶融オーブンで15分間溶融し平滑化した。冷却後、リングをはずして試料をカミソリ刃で削り取り測定試料とし、元素分析を実施した。測定装置としてRIGAKU ZSX100e(4.0kW Rh管球)を用いた。
【0090】
[PET樹脂]
PET樹脂としては以下のものを用いた。
PET(I):ゲルマニウム系触媒 日本ユニペット(株)RP553P
IV 0.85(dl/g) (ゲルマニウム量50ppm)
PET(II):アンチモン系触媒 イーストマンケミカルEASTAPAK9921
IV 0.83(dl/g) (アンチモン量260ppm)
再生PET:PET(I)を用いてPETボトルをブロー成形した後、粉砕してフレークを得た。またPET(II)についても同様にしてフレークを得た。PET(I)とPET(II)のフレークを50/50(質量比)でブレンドして再生PETフレークとした。(ゲルマニウム25ppm、アンチモン130ppm)
【0091】
[ポリエステル樹脂(A)の合成例]
攪拌機及び留出コンデンサーを有する、容積10Lのエステル化反応槽に、テレフタル酸(TPA)2414質量部、エチレングリコール(EG)1497質量部、ネオペンチルグリコール(NPG)515質量部を投入し、触媒として、二酸化ゲルマニウムを8g/Lの水溶液として生成ポリエステルに対してゲルマニウム原子として30ppm、酢酸コバルト4水和物を50g/Lのエチレングリコール溶液として生成ポリマーに対してコバルト原子として35ppm含有するように添加した。
【0092】
その後、反応系内を最終的に240℃となるまで除々に昇温し、圧力0.25MPaでエステル化反応を180分間行った。反応系内からの留出水が出なくなるのを確認した後、反応系内を常圧に戻し、リン酸トリメチルを130g/Lのエチレングリコール溶液として生成ポリマーに対してリン原子として52ppm含有するように添加した。
【0093】
得られたオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、除々に昇温しながら減圧し最終的に温度が280℃で、圧力が0.2hPaになるようにした。固有粘度に対応する攪拌翼のトルク値が所望の数値となるまで反応させ、重縮合反応を終了した。反応時間は100分であった。得られた溶融ポリエステル樹脂を重合槽下部の抜き出し口からストランド状に抜き出し、水槽で冷却した後チップ状に切断した。
【0094】
ポリエステル樹脂(A)はNMR分析の結果、ジカルボン酸成分はテレフタル酸100モル%、ジオール成分はエチレングリコール70モル%、ネオペンチルグリコール30モル%の組成を有していた。また非晶性でガラス転移温度は78℃、このときの還元粘度は0.81dl/gであり、ゲルマニウム原子は、30ppmであった。
【0095】
[ポリエステル樹脂(B)の合成例]
ポリエステル樹脂(A)において、触媒として三酸化アンチモンを12g/Lのエチレングリコール溶液として生成ポリマーに対して、アンチモン原子として300ppm含有させること以外は、すべてポリエステル樹脂(A)と同様にしてポリエステル樹脂(B)を得た。
【0096】
ポリエステル樹脂(B)はNMR分析の結果、ジカルボン酸成分はテレフタル酸100モル%、ジオール成分はエチレングリコール69モル%、ネオペンチルグリコール31モル%の組成を有して、アンチモン原子は、300ppmであった。
【0097】
ポリエステル樹脂(C)〜(F)は、ポリエステル(A)と同様に、重合触媒として酸化ゲルマニウムを用いて製造を行った。残存するゲルマニウム原子は、30ppmであった。組成、及び測定結果を表1に示す。(数値は樹脂中のモル%)
【0098】
【表1】

【0099】
[実施例1]
<中空成形体>
再生PETフレーク60質量部、ポリエステル樹脂(A)40質量部を混合し、脱湿窒素を用いた乾燥機で乾燥し、名機製作所製M−150C(DM)射出成型機により樹脂温度290℃、金型温度20℃でプリフォームを成形した。このプリフォームをコ−ポプラスト社製LB−01E延伸ブロー成型機を用いて、ブロー圧20kg/cmで20℃の金型内で二軸延伸ブロー成形し、2000mlの中空成形体(胴部は円形)を得た。
【0100】
<押出しブロー中空成形体>
再生PETフレーク60質量部、ポリエステル樹脂(A)40質量部を混合し、脱湿窒素を用いた乾燥機で乾燥した。日本製鋼所製ダイレクトブロー成型機「電動式小型中空成形機JEB−7/P50/WS60S」を用い、シリンダー各部やノズルの温度を約285℃とし、容量100mlの中空成形体を押出しブロー成形した。
【0101】
<大型中空成形体>
再生PETフレーク60質量部、ポリエステル樹脂(A)40質量部を混合し、脱湿窒素を用いた乾燥機で乾燥し、インジェクションブロー成型機(SBIII−250LL−50S:青木固研究所製)により樹脂温度290℃、プリフォーム温度60〜100℃とし、延伸ブローステーション(金型内部)にて二軸延伸ブローし、容量が5000mlの中空成形体を得た。
【0102】
これらの成形体の成形過程における、成形加工性を以下の基準で評価した。
<中空成形体>
○:プリフォームの成形性が良好であり、延伸ブロー工程後の製品寸法性が安定している。
△:プリフォームは成形できるが、延伸ブロー工程後の製品寸法性が安定しない。
×:プリフォームの形状が安定せず、延伸ブロー工程後の製品寸法が目標通りにならない。
<押出しブロー中空成形体>
○:溶融状態のプリフォーム成形が良好であり、ブロー後の製品寸法性が安定している。
△:溶融状態のプリフォームがややドローダウンし、ブロー後の製品寸法性が安定しない。
×:溶融状態のプリフォームがドローダウンして成形困難であり、ブロー成形できない。
<大型中空成形体>
○:プリフォームの成形性が良好であり、延伸ブロー工程後の製品寸法性が安定している。
△:プリフォームは成形できるが、延伸ブロー工程後の製品寸法性が安定しない。
×:プリフォームの形状が安定せず、延伸ブロー工程後の製品寸法が目標通りにならない。
【0103】
また、別途同様の配合処方で成形を行い、透明性、成形サイクルの評価を行った。評価基準は以下に従った。
透明性評価:
<5mm厚みのプレ−ト>
乾燥したポリエステルを名機製作所製M−150C(DM)射出成型機により、シリンダー温度290℃において、10℃の水で冷却した段付平板金型(表面温度約22℃)を用いて段付成形板を成形した。得られた段付成形板は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11mm厚みの約3cm×約5cm角のプレ−トを階段状に備えたもので、1個の質量は約146gである。5mm厚みのプレ−トはヘイズ(霞度%)測定に使用する。
○:ヘイズが15%未満
×:ヘイズが15%以上
【0104】
<容量5000mlの中空成形体の胴部>
ヘイズ(霞度%):上述の大型中空成形体(容量5000ml)をそのまま用いた。胴部(肉厚約0.45mm)より試料を切り取り、日本電色(株)製ヘイズメーター、modelNDH2000で測定し、下記ようにランク付けした。
○:ヘイズが5%未満
×:ヘイズが5%以上
【0105】
金型離型性(成型サイクル)評価:
射出成形機(東芝IS−80:型締力80トン)にてシリンダー温度250〜295℃、金型温度16℃、背圧20kg/cmとし、ISO178物性試験用の試験片を作製し、このときの金型付着性を以下の基準にて判定した。
○:樹脂の金型離れは、非常にスムーズなものであった
×:樹脂の金型付着性が高まり、金型への離型剤塗布が必要となった。
【0106】
[実施例2〜8、比較例1〜5]
表2、3に記載した原料を用いて、それぞれの表に記載した条件で実施例1と同様に、ブロー成形、および評価サンプル成形して各種評価を行った。
【0107】
また表中の配合比についてはポリエステル樹脂組成物を100質量部とし、安定剤、添加剤はその100質量部に対する添加量として表した。
酸化防止剤(M):チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製 ヒンダートフェノール系酸化防止剤 (商品名)IRGANOX1010
紫外線吸収剤(N):チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製(商品名)TINUVIN 234
光安定剤(O):三共ライフテック製 ヒンダートアミン系光安定剤HALS(商品名)サノール@LS770
【0108】
【表2】

【0109】
【表3】

【0110】
表2、3から分かるように、実施例1〜9は、テレフタル酸とエチレングリコール以外の共重合成分が1〜30モル%含まれ、かつゲルマニウム原子およびアンチモン原子が質量比率で10/90〜99/1の割合で含まれるため、ブロー成型性が良好であり、ブロー成型品の透明性および成型サイクルが向上して生産性が良好となる。
【0111】
一方、比較例1は、二種以上のポリエステル樹脂を溶融混合していないこと、およびテレフタル酸/エチレングリコール以外の共重合成分が含まれていないため、本発明の範囲外である。比較例2は、ゲルマニウム原子、および、アンチモン原子が質量比率で10/90〜99/1の割合から外れている為、本発明の範囲外である。比較例3は、二種以上のポリエステル樹脂を溶融混合していないこと、およびテレフタル酸/エチレングリコール以外の共重合成分が含まれていないこと、ゲルマニウム原子、および、アンチモン原子が質量比率で10/90〜99/1の割合から外れているという理由から、本発明の範囲外である。また、このとき成型品の透明性は良好であるが、結晶化が遅くなる為金型の離型性が悪くなり、生産性が低下した。比較例4は、二種以上のポリエステル樹脂を溶融混合していないこと、およびテレフタル酸/エチレングリコール以外の共重合成分が含まれていないこと、ゲルマニウム原子、および、アンチモン原子が質量比率で10/90〜99/1の割合から外れているという理由から、本発明の範囲外である。比較例5は、ゲルマニウム原子、および、アンチモン原子が質量比率で10/90〜99/1の割合から外れているという理由から、本発明の範囲外である。また、この場合は、成形性も悪く、押し出しブロー成形および大型中空成形(二軸延伸ブロー成形)は非常に難しかった。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明のポリエステル樹脂組成物を用いることにより結晶化による白化を防止し、透明性を維持した成型品を提供することが可能となり、例えば、PETボトル再生フレークを主原料とした溶融成型に関して、樹脂組成物の結晶化による白化を防止して透明性を保持し、かつ成型品の生産効率が良好となる為、産業界への寄与が大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二種以上のポリエステル樹脂を溶融混合して得られるポリエステル樹脂組成物において、
前記二種以上のポリエステル樹脂のうち一種がPETボトル再生樹脂であり、
前記二種以上のポリエステル樹脂のうち他の一種が、テレフタル酸/エチレングリコール以外の共重合成分として、イソフタル酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールおよび2−メチル−1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を共重合したポリエステル樹脂であり、その共重合量は酸成分、グリコール成分それぞれを100モル%としたときに0.5〜50モル%であり、
組成物全体の酸成分/グリコール成分を100/100モル%としたときに、テレフタル酸/エチレングリコール以外の共重合成分が1〜30モル%であり、
かつ組成物全体に触媒として含まれるゲルマニウム原子/アンチモン原子の質量比率が20/80〜99/1であることを特徴とする、
ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記PETボトル再生樹脂が、触媒としてゲルマニウム原子とアンチモン原子を共に含んでいることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
ポリエステル樹脂組成物から予備成形体であるプリフォームを製造し形成されたプリフォームを延伸ブロー成形することによりポリエステル中空成形体を製造する製造方法において、前記ポリエステル樹脂組成物が請求項1または2に記載のポリエステル樹脂組成物であることを特徴とする中空成形体の製造方法。
【請求項4】
前記中空成形体が容量2000ml以上の大型容器である請求項3に記載の中空成形体の製造方法。

【公開番号】特開2012−144737(P2012−144737A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−72645(P2012−72645)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【分割の表示】特願2005−223996(P2005−223996)の分割
【原出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】