説明

ポリエステル系フィルム

【課題】後加工時の汚染のない、すりガラス調の外観を有する意匠性に富んだ包装用等に用いられるポリエステル系フィルムを提供する。
【解決手段】ポリエステル樹脂(A)からなる厚み0.05〜4.5μmの第1の層と、第1の層と異なるポリエステル樹脂(B)からなる厚み0.005〜1.0μmの第2の層とを交互に31層以上1001層以下の範囲で積層してなるフィルムであり、ポリエステル樹脂(A)の融点(Tm)とポリエステル樹脂(B)の融点(Tm2)とが下記式(1)の関係を満たし、
−40℃<Tm−Tm2<−5℃ ・・・(1)
全フィルム厚みに対する第1の層の層厚みの総計が90%以上95%以下であり、フィルムのヘーズが15%以上であるポリエステル系フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は意匠性に優れたポリエステル系フィルムに関し、さらに詳しくは、すりガラス調の外観を有する意匠性に富んだ包装用等に用いられるポリエステル系フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な意匠性を有する包装用フィルムが開発されており、透明性に優れたフィルム、マット調のフィルム、金属光沢を有するフィルムなど様々な態様の意匠性フィルムが開発されている。これらの意匠性フィルムの中で、マット調のフィルムを得る方法として、例えば特許文献1には所定の粒径および粒径分布を有する粒子を含む二軸延伸艶消しポリエステルフィルムが開示されている。また製膜後のフィルムの表面に砂を当てて表面を荒らすサンドマット加工等が知られている(例えば特許文献2)。
しかしながら、これらの方法では高濃度に添加された粒子が脱落することにより、後加工の工程を汚したり、サンドマット加工時に付着した砂が後加工の工程を汚すことがある。
【0003】
一方、マット調(以降、すりガラス調と称することがある)の外観を有するフィルムとして、従来のような粒子を添加したり、製膜後の後加工により表面を荒らす加工を施すことなくすりガラス調の外観を有するポリエステル系フィルムは未だ提案されていない。
【0004】
【特許文献1】特開2002−200724号公報
【特許文献2】特開平10−34809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題を解消し、後加工時の汚染のない、すりガラス調の外観を有する意匠性に富んだ包装用等に用いられるポリエステル系フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は前記課題を解決するために鋭意検討した結果、一定範囲の融点差を有する樹脂を用いて一定の厚み比で交互に多層積層した場合に、層間の構造的な海島構造が発現し、かかる構造がフィルム表面近くの層構成を意図的に乱れさせてフィルム表面に凹凸が発現することにより、粒子を添加したり製膜後の後加工を必要とせずにすりガラス調の外観を有するポリエステル系フィルムが得られることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明によれば、本発明の目的は、ポリエステル樹脂(A)からなる厚み0.05〜4.5μmの第1の層と、第1の層と異なるポリエステル樹脂(B)からなる厚み0.005〜1.0μmの第2の層とを交互に31層以上1001層以下の範囲で積層してなるフィルムであり、ポリエステル樹脂(A)の融点(Tm)とポリエステル樹脂(B)の融点(Tm2)とが下記式(1)の関係を満たし、
−40℃<Tm−Tm2<−5℃ ・・・(1)
全フィルム厚みに対する第1の層の層厚みの総計が90%以上95%以下であり、フィルムのヘーズが15%以上であるポリエステル系フィルムによって達成される。
【0008】
また本発明のポリエステル系フィルムは、その好ましい態様として、ポリエステル樹脂(A)がエチレンテレフタレートを主たる成分とするポリエステルであること、ポリエステル樹脂(B)がエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とするポリエステルであること、フィルムのヘーズが15%以上であること、ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が70℃を超え100℃以下の範囲であること、フィルムの表面粗さSRaが100nm以上800nm以下であること、第1の層、第2の層の少なくともいずれか一方が粒子を0〜0.1重量%含有すること、第1の層および第2の層のみから構成されること、の少なくともいずれか1つを具備するものも包含する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、本発明のポリエステル系フィルムは、従来のような粒子を添加したり、製膜後の後加工により表面を荒らす加工を施すことなく、層構成の制御によりすりガラス調の外観を発現できることから、すりガラス調外観を有する意匠性包装用フィルムとして好適に用いることができ、また後加工工程における汚染が少ないすりガラス調外観を有する意匠性包装用フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
[第1の層]
本発明における第1の層は、ポリエステル樹脂(以下、第1の層を構成するポリエステル樹脂としてポリエステル樹脂(A)と記載することがある)からなる。ポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート、ポリブチレンナフタレンジカルボキシレートなどが例示される。これらのポリエステル樹脂はホモポリマーであっても、20モル%以内の範囲内で共重合成分を含む共重合体のいずれであってもよい。
【0011】
これらのポリエステル樹脂の中でも、第2の層を構成するポリエステル樹脂(B)との融点差の点で、エチレンテレフタレートを主たる成分とするポリエステルが好ましい。ここで「主たる」とは、ポリエステル樹脂(A)を構成する全酸成分を基準として80モル%以上100モル%以下を指す。ポリエステル樹脂(A)を構成する主たる成分の割合の下限は、好ましくは全酸成分を基準として85モル以上である。第1の層を構成するポリエステル樹脂(A)として、エチレンテレフタレートを主たる成分とするポリエステルを用いた場合、後述する第2の層を構成するポリエステル(B)と所定の厚み比で交互積層した際に、フィルム表面近傍の海島構造を形成しやすい。
エチレンテレフタレートを主たる成分とするポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート単独でもよく、小割合の他の種類のポリエステル樹脂とブレンドしたもの、又は他の共重合成分を共重合したものであってもよい。ここで小割合とは、ポリエステル樹脂(A)を構成する全酸成分を基準として0モル%以上20モル%以下の割合を指し、好ましい上限は15モル%以下である。
【0012】
共重合成分のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸の如き芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸の如き脂肪族ジカルボン酸を例示することができる。共重合成分のジオール成分としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールの如き脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオールを例示することができる。これらの共重合成分の中でも、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、更にイソフタル酸が特に好ましい。
【0013】
小割合の他のポリエステル樹脂をブレンドする場合、ブレンド成分として、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートを例示することができる。
【0014】
第1の層を構成するポリエステル樹脂(A)は、ガラス転移温度(Tg1)が70℃を超え100℃以下の範囲であることが好ましい。ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg1)の下限は、より好ましくは75℃以上であり、一方ポリエステル(A)のガラス転移温度(Tg1)の上限は、より好ましくは95℃以下、さらに好ましくは90℃以下、特に好ましくは85℃以下である。ポリエステル(A)のガラス転移温度(Tg1)が下限に満たない場合、交互積層層を構成するもう一方の層、すなわち第2の層を構成するポリエステル樹脂(B)とのガラス転移温度差が大きくなりすぎ、フィルム製膜性が低下することがある。一方、ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg1)が上限を超える場合、第2の層を構成するポリエステル樹脂(B)とのガラス転移温度差が小さく、層間の構造的な海島構造が十分に発現しないことがある。
【0015】
第1の層を構成するポリエステル樹脂(A)は、本発明の目的を損なわない範囲で着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、紫外線吸収剤などをごく少量含有しても良い。なお、フィルムの滑り性を高める目的で無機粒子や有機粒子を少量含有させてもよいが、本発明のすりガラス調外観は層構成に起因して得られるものであるため、粒子を含有しないか、粒子を含有させるとしてもごく少量の範囲で添加させることが好ましく、具体的には、第1の層の粒子含有量は、第1の層の重量を基準として0〜0.1重量%の範囲内であることが好ましい。第1の層の粒子含有量の下限は、より好ましくは0.005重量%以上、さらに好ましくは0.01重量%以上である。また第1の層の粒子含有量の上限は、より好ましくは0.08重量%以下、さらに好ましくは0.06重量%以下である。
【0016】
粒子の種類として、例えば炭酸カルシウム、シリカ、タルク、クレーなどの無機粒子、シリコーン、アクリルなどの熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれかからなる有機粒子などを少なくとも1種用いることができ、これらの中でも真球状シリカ粒子が好ましい。粒子の平均粒径は0.001〜5μmの範囲であれば特に限定されないが、0.01〜3μmであることがより好ましい。
【0017】
ポリエステル樹脂(A)は、公知の方法を適用して製造することができる。例えば、エチレンテレフタレートを主たる成分とするポリエステルの場合、テレフタル酸、エチレングリコールおよび必要に応じて共重合成分をエステル化反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造することができる。また、これらの原料モノマーの誘導体をエステル交換反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造してもよい。
【0018】
第1の層を構成するポリエステル樹脂(A)の固有粘度は、好ましくは0.55〜0.80dl/gであり、更には0.55〜0.75dl/gの範囲であることが好ましい。第1の層を構成するポリエステル樹脂(A)の固有粘度がかかる範囲内にない場合、第2の層を構成するポリエステル樹脂(B)の固有粘度との差が大きくなることがあり、その結果交互積層構成とした場合に層構成が乱れたり、製膜はできるものの製膜性が低下することがある
[第2の層]
本発明における第2の層は、第1の層と異なるポリエステル樹脂(以下、第2の層を構成するポリエステル樹脂としてポリエステル樹脂(B)と記載することがある)からなる。ポリエステル樹脂(B)として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート、ポリブチレンナフタレンジカルボキシレートなどが例示され、これらのうち、ポリエステル樹脂(A)として用いた樹脂以外の樹脂であって、かつ後述する融点差を満たす樹脂が用いられる。これらのポリエステル樹脂はホモポリマーであっても、20モル%以内の範囲内で共重合成分を含む共重合体のいずれであってもよい。
【0019】
これらのポリエステル樹脂の中でも、第1の層を構成するポリエステル樹脂(A)との融点差の点で、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とするポリエステルが好ましい。ここで「主たる」とは、ポリエステル樹脂(B)を構成する全酸成分を基準として80モル%以上100モル%以下を指す。ポリエステル樹脂(B)を構成する主たる成分の割合の下限は、好ましくは全酸成分を基準として85モル以上、さらに好ましくは90モル%以上である。第2の層を構成するポリエステル樹脂(B)としてエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とするポリエステルを用いた場合、第1の層を構成するポリエステル(A)と所定の厚み比で交互積層した際に、フィルム表面近傍の海島構造を形成しやすい。
エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とするポリエステルは、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単独でもよく、小割合の他の種類のポリエステル樹脂とブレンドしたもの、又は他の共重合成分を共重合したものであってもよい。ここで小割合とは、ポリエステル樹脂(B)を構成する全酸成分を基準として0モル%以上20モル%以下の割合を指し、好ましい上限は15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。
【0020】
共重合成分のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸の如き脂肪族ジカルボン酸を例示することができる。共重合成分のジオール成分としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールの如き脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオールを例示することができる。これらの共重合成分の中でも、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましい。
【0021】
小割合の他のポリエステル樹脂をブレンドする場合、ブレンド成分として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートを例示することができる。
【0022】
第2の層を構成するポリエステル樹脂(B)は、ガラス転移温度(Tg2)が95℃以上125℃以下の範囲であることが好ましい。ポリエステル樹脂(B)のガラス転移温度(Tg2)の下限は、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは105℃以上であり、一方ポリエステル樹脂(B)のガラス転移温度(Tg2)の上限は、より好ましくは120℃以下である。ポリエステル樹脂(B)のガラス転移温度(Tg2)が下限に満たない場合、第1の層を構成するポリエステル樹脂(A)とのガラス転移温度差が小さく、層間の構造的な海島構造が十分に発現しないことがある。一方、ポリエステル樹脂(B)のガラス転移温度(Tg2)が上限を超える場合、第1の層を構成するポリエステル樹脂(A)とのガラス転移温度差が大きくなりすぎ、フィルム製膜性が低下することがある。
【0023】
第2の層を構成するポリエステル樹脂(B)は、本発明の目的を損なわない範囲で着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、紫外線吸収剤などをごく少量含有しても良い。なお、フィルムの滑り性を高める目的で無機粒子や有機粒子を少量含有させてもよいが、本発明のすりガラス調外観は層構成に起因して得られるものであるため、粒子を含有しないか、粒子を含有させるとしてもごく少量の範囲で添加させることが好ましく、具体的には、第2の層の粒子含有量は、第2の層の重量を基準として0〜0.1重量%の範囲内であることが好ましい。第2の層の粒子含有量の下限は、より好ましくは0.005重量%以上、さらに好ましくは0.01重量%以上である。また第2の層の粒子含有量の上限は、より好ましくは0.08重量%以下、さらに好ましくは0.06重量%以下である。
【0024】
粒子の種類として、例えば炭酸カルシウム、シリカ、タルク、クレーなどの無機粒子、シリコーン、アクリルなどの熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれかからなる有機粒子などを少なくとも1種用いることができ、これらの中でも真球状シリカ粒子が好ましい。粒子の平均粒径は0.001〜5μmの範囲であれば特に限定されないが、0.01〜3μmであることがより好ましい。
【0025】
ポリエステル樹脂(B)は、公知の方法を適用して製造することができる。例えば、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とするポリエステルの場合、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボン酸、エチレングリコールおよび必要に応じて共重合成分をエステル化反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造することができる。また、これらの原料モノマーの誘導体をエステル交換反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造してもよい。
【0026】
第2の層を構成するポリエステル樹脂(B)の固有粘度は、好ましくは0.40〜0.65dl/gであり、更には0.45〜0.62dl/gの範囲であることが好ましい。第2の層を構成するポリエステル樹脂(B)の固有粘度が上限を超える場合、第1の層を構成するポリエステル樹脂(A)の固有粘度との差が大きくなることがあり、その結果交互積層構成とした場合に各層内での厚みのばらつきが生じやすく、層構成が乱れて製膜性の低下につながることがある。
【0027】
[融点差]
本発明のポリエステル樹脂(A)の融点(Tm)と、ポリエステル樹脂(B)の融点(Tm)との差は、下記式(1)を満足する必要がある
−40℃<Tm−Tm2<−5℃ ・・・(1)
【0028】
ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)との融点差(Tm−Tm)の下限は、より好ましくは−35℃以上、さらに好ましくは−15℃以上である。融点差(Tm−Tm)が下限に満たない場合、層間の構造的な海島構造が十分に発現しない他、融点差が大きすぎてフィルム製膜性が低下することがある。一方、融点差(Tm−Tm)が上限を超える場合、本発明の層間の構造的な海島構造が十分に発現しない。
【0029】
かかる融点差とするために、第1の層を構成するポリエステル樹脂(A)および第2の層を構成するポリエステル樹脂(B)の主たる成分の種類、小割合の成分の種類およびそれらの成分量について、記載された範囲内で調整することによって達成される。かかる構成の中でも、第1の層を構成するポリエステル樹脂(A)としてエチレンテレフタレートを主たる成分とするポリエステルを用い、第2の層を構成するポリエステル樹脂(B)としてエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とするポリエステルを用いる組み合わせ、第1の層を構成するポリエステル樹脂(A)としてブチレンテレフタレートを主たる成分とするポリエステルを用い、第2の層を構成するポリエステル樹脂(B)としてエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とするポリエステルを用いる組み合わせが例示され、特にエチレンテレフタレートを主たる成分とするポリエステルとエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とするポリエステルとの組み合わせが好ましい。
【0030】
[フィルム積層構成]
本発明のポリエステル系フィルムは、エチレンテレフタレートを主たる成分とするポリエステル(A)からなる第1の層と、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とするポリエステル(B)からなる第2の層とを交互に積層してなるフィルムである。
【0031】
かかる積層構造は、第1の層の1層あたりの厚みが0.05〜4.5μm、第2の層の1層あたりの厚みが0.005〜1.0μmの範囲であり、かつ第1の層と第2の層とが交互に31層以上1001層以下の範囲で積層されることが必要である。
第1の層の1層あたりの厚みの下限は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上である。また第1の層の1層あたりの厚みの上限は、好ましくは4.0μm以下、より好ましくは3.0μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下である。なお、第1の層の1層あたりの厚みは、層数の増加に応じて薄くなり、また層数の減少に応じて厚くなる関係にある。
【0032】
積層数の下限は、好ましくは45層以上、さらに好ましくは75層以上である。また積層数の上限は1001層以下であれば金属光沢性の点で特に制限されないが、工業的観点で好ましくは701層以下、より好ましくは501層以下、さらに好ましくは201層以下である。
【0033】
融点差が一定範囲にあるポリエステル樹脂を用いて、第1の層および第2の層それぞれの1層あたりの厚みをかかる範囲にすることにより、フィルム表面近傍で局部的に積層構造の乱れが生じて海島構造が発現し、すりガラス調の外観が得られる。第1の層の厚みが下限に満たず、第2の層の厚みが上限を超えると、フィルム表面近傍で局部的に積層構造の乱れが生じにくく、海島構造が発現しないためすりガラス調の外観が得られない。一方、第1の層の厚みが上限を超え、第2の層の厚みが下限に満たない場合、均一な製膜が困難となる。なお、第1の層の1層あたりの厚みは、各層が均一であっても、一定の厚みの変化があってもよい。これらはフィードブロックの各層厚みを制御して調整することができる。
【0034】
第1の層及び第2の層の1層あたりの厚みは、各層の厚みの合計を層数で割った値で求められ、厚みがほぼ均一な場合は厚さ方向で略中心付近の層の厚みから求めた値を用いてもよい。
また積層数が下限に満たない場合はすりガラス調外観が発現しない。積層数が上限を超える場合、各層の厚みが1層あたりの厚みの下限よりも薄くなり、製膜性が困難になる他、これ以上の積層数にすることによるすりガラス調外観のさらなる向上は認められない。
【0035】
また本発明のポリエステル系フィルムは、全フィルム厚みに対する第1の層の層厚みの総計が90%以上95%以下であることが必要である。
ポリエステル樹脂(A)からなる第1の層の層厚みの総計が全フィルム厚みに対して下限に満たない場合、フィルム表面近傍で局部的に積層構造の乱れが生じにくく、海島構造が発現しないためすりガラス調の外観を得ることができない。一方、ポリエステル樹脂(A)からなる第1の層の層厚みの総計が全フィルム厚みに対して上限を超える場合、均一な製膜が困難となる。
【0036】
本発明のポリエステル系フィルムは、全フィルム厚みに対する第2の層の層厚みの総計が5%以上10%以下であることが必要である。ポリエステル樹脂(B)からなる第2の層の層厚みの総計が全フィルム厚みに対して下限に満たない場合、均一な製膜が困難となる。一方、ポリエステル樹脂(B)からなる第2の層の層厚みの総計が全フィルム厚みに対して上限を超える場合、フィルム表面近傍で局部的に積層構造の乱れが生じにくく、海島構造が発現しないためすりガラス調の外観を得ることができない。
【0037】
本発明のポリエステル系フィルムの全フィルム厚みは特に限定されるものではないが、10〜300μmであることが好ましく、更に好ましくは25〜250μmである。全フィルム厚みが下限に満たない場合、フィルムにコシがなくなり、加工時のハンドリング性に劣ることがある。一方、全フィルム厚みが上限を超える場合、フィルムが硬すぎて加工時のハンドリング性が低下することがある。
【0038】
本発明のポリエステル系フィルムは、融点差が一定範囲にあるポリエステル樹脂を用いて、第1の層と第2の層の厚みが特定範囲にある場合にすりガラス調の外観を発現するものであり、そのため各層の層構成を上述のように制御することが重要であり、本発明で規定する以外の層、例えば厚み調整層などの層を含むことにより、かかる意匠性が低下する場合は、第1の層および第2の層のみから構成されることが好ましい。
【0039】
[フィルム特性]
本発明のポリエステル系フィルムのヘーズ(曇り度)はJIS規格K7136に準じて測定され、15%以上である。フィルムのヘーズの好ましい下限は25%以上、より好ましくは50%以上である。本発明のフィルムのヘーズはより大きい方が好ましいが、その上限は高々80%である。フィルムのヘーズが下限に満たない場合、すりガラス調の外観性が得られないことがある。一方、フィルムのヘーズを上限より大きくすることは、本発明で使用するポリエステル系樹脂の性質上困難である。
【0040】
かかるヘーズ特性を達成する手段は、融点差が一定範囲にあるポリエステル樹脂を用いて、第1の層と第2の層の各層厚みが、第1の層は0.05〜4.5μmの範囲内で、また第2の層は0.005〜1.0μmの範囲内で、かつ全フィルム厚みに対する第1の層の層厚みの総計が90%以上95%以下であることによって達成される。
【0041】
本発明のポリエステル系フィルムの表面粗さSRaは100nm以上800nm以下であることが好ましい。ここで表面粗さSRaは、フィルム表面の中心面平均粗さとも称され、フィルムの一定面積における横方向ならびに縦方向二次元の表面粗さのプロファイルの平均値を表わす。
フィルムの表面粗さSRaの下限は、より好ましくは150nm以上である。一方フィルムの表面粗さSRaの上限は、より好ましくは700nm未満である。かかる表面粗さは、第1の層と第2の層のポリエステル樹脂の融点差および第1の層と第2の層の厚みがそれぞれ特定範囲にある場合に層間の構造的な海島構造の発現によってフィルム表面近くの層構成を意図的に乱れさせることによりフィルム表面に凹凸が発現するものであり、粒子添加によるものではない。そのため、滑り性に問題がない場合はフィルム中に粒子を含有しないで、また滑り性付与を目的として粒子を添加する場合は0.1重量%のごく少量少量添加することにより、かかるフィルム表面粗さを達成するものである。
【0042】
本発明のポリエステル系フィルムは、すりガラス調の外観を有するため意匠性に優れており、具体的な用途の一例として包装用フィルムとして用いることができる。
【0043】
[製造方法]
次に、本発明のポリエステル系フィルムの製造方法の一例について詳述する。
本発明のポリエステル系フィルムは、第1の押出機より供給された第1の層用ポリエステル(A)と、第2の押出機より供給された第2の層用ポリエステル(B)とを、多層フィードブロック装置を用いて溶融状態で交互に少なくとも31層以上重ね合わせた状態を形成し、ダイを用いてこれを回転するドラム上にキャストすることにより、多層未延伸フィルムとする。積層構造の最外層は特に規定されないが、第1の層を奇数層、第2の層を偶数層とすることが好ましい。本発明のすりガラス調の外観は、本発明の各層のポリエステル樹脂の種類、層比及び層数の範囲内において、多層未延伸フィルムとした段階で発現し、その後の延伸を施さない多層未延伸フィルム、また製膜方向またはその直交方向である幅方向の少なくとも1軸方向に延伸して得られる一軸延伸フィルム、または製膜方向および幅方向の2軸方向に延伸して得られる二軸延伸フィルムのいずれの形状にしても、すりガラス調外観は維持される。従って、すりガラス調外観以外の特性を付与する場合に、特性に応じた延伸形態を用いることができ、例えばシュリンク特性を付与する場合には一軸延伸フィルム、一方高温での熱収縮率の小さい耐熱寸法安定性の高いフィルム、機械的強度などの機械的特性の高いフィルムを得る場合には二軸延伸フィルム、などのように目的に応じた延伸状態のフィルムとすることができる。
【0044】
さらに延伸処理を施す場合は、延伸温度は、第1の層を構成するポリエステル(A)のガラス転移点の温度(Tg)〜Tg+50℃の範囲が好ましい。このときの面積倍率は1〜20倍、更に好ましくは1〜16倍であることが好ましい。
【0045】
また上記工程中にプライマー層などを塗設する場合は、例えば縦延伸後にフィルムの片面ないし両面に、水分散性の塗剤を塗布し、横延伸の前に乾燥してフィルムに皮膜を形成させることが好ましい。塗工法は限定されないが、リバースロールコーターによる塗工が好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
なお、実施例および比較例において用いた特性の測定方法ならびに評価方法は、次のとおりである。
【0047】
(1)各層厚み、層数
フィルムサンプルの断面を株式会社日立サイエンスシステムズ製の走査電子顕微鏡(S−4300SE/N形)で観察し、第1の層、第2の層について厚さ方向で略中心付近について各層の厚みをそれぞれ3層ずつn=3で測定し、それぞれ平均値より求めた。
また、層数についても同様にフィルムサンプルの断面を株式会社日立サイエンスシステムズ製の走査電子顕微鏡(S−4300SE/N形)で観察して求めた。
【0048】
(2)全フィルム厚み
フィルムの全フィルム厚みは、電子マイクロメータ(アンリツ(株)製の商品名「K−312A型」)を用いて針圧30gにて10箇所測定し、それらの平均値より求めた。
【0049】
(3)全フィルム厚みに対する第1の層の層厚みの総計
(1)から求めた第1の層の厚みに第1の層数を乗じて第1の層厚みの総計を求めた。一方、全フィルム厚みは(2)の方法に準じて求め、全フィルム厚みに対する第1の層の層厚みの総計(%)を算出した。
【0050】
(4)ヘーズ
JIS K7136に準じ、日本電色工業社製のヘーズ測定器(NDH−2000)を使用してフィルムのヘーズ値を測定した。
【0051】
(5)フィルム表面粗さSRa
三次元粗さ測定機(小坂研究所製SE―3CK)を用いて、針径2μmR、針圧30mg、測定長1mm、サンプリングピッチ2μm、カットオフ0.25mm、縦方向拡大率2万倍、横方向拡大率200倍、走査本数100本の条件にてフィルム表面の三次元表面プロファイルをイメージさせる。得られたプロファイルから中心面上に面積SMの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心面上に直交座標軸、X軸、Y軸を置き中心面に直交する軸をZ軸として次式(2)により与えられる値をSRaとする。
【0052】
【数1】

ここで、SM=LX×MYである。
【0053】
(6)すりガラス調外観
フィルムサンプルの外観を目視で観察し、すりガラス調の意匠性を備えているものを○、その中でも黒印字された紙の上にフィルムサンプルを重ね合わせ、黒印字を全く認識できないものを特にすりガラス調の意匠性に優れるとして◎、すりガラス調の外観を持たないものを×とした。
【0054】
(7)後加工時の汚染性評価
20mm幅に切断したフィルムサンプルを用い、フィルム表面を直径10mmの円柱状ステンレス製固定バーにあてて200gの荷重を加えた状態で80m走行させた後、バーに付着した付着物を観察し、下記の基準で評価した。
〇:バーに付着物が見られない
×:バーに付着物が見られる
【0055】
(8)融点
フィルムサンプル約10mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差熱量計(デュポン社製・V4.OB2000型DSC)に装着し、25℃から20℃/分の速度で昇温させて融点(Tm:℃)を測定した。
【0056】
(9)ガラス転移温度
フィルムサンプル約10mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差熱量計(デュポン社製・V4.OB2000型DSC)に装着し、25℃から20℃/分の速度で300℃まで昇温させ、300℃で5分間保持した後取出し、直ちに氷の上に移して急冷する。このパンを再度示差熱量計に装着し、25℃から20℃/分の速度で昇温させてガラス転移温度(Tg:℃)を測定した。
【0057】
(10)固有粘度
固有粘度([η]dl/g)は、25℃のo−クロロフェノール溶液で測定した。
【0058】
(11)ポリエステル成分量
フィルムサンプルの各層について、H−NMR測定よりポリエステルの成分および共重合成分及び各成分量を特定した。
【0059】
[実施例1]
第1の層用ポリエステル(A)として、固有粘度0.70dl/g、ガラス転移温度(Tg)83℃、融点(Tm)228℃のポリエチレンテレフタレート−ナフタレート共重合体(2,6−ナフタレンジカルボン酸含有量:12モル%)を用意し、第2の層用ポリエステル(B)として、固有粘度0.51dl/g、ガラス転移温度117℃、融点(Tm2)263℃のポリエチレンナフタレートホモポリマーを用意し、それぞれペレットを攪拌しながら110℃で10時間加熱し表面を結晶化させたものを用意した。
【0060】
ポリエステル(A)およびポリエステル(B)を、それぞれ170℃で4時間乾燥後、ポリエステル(A)を第1の押出機に、またポリエステル(B)を第2の押出機に供給し、290℃まで加熱して溶融状態とし、ポリエステル(A)を第1の層として101層、ポリエステル(B)を第2の層として100層に分岐させた後、第1の層と第2の層が交互に積層するような多層フィードブロック装置を使用して、積層状態の溶融体とし、その積層状態を保持したまま、キャスティングドラム上にキャストして、第1の層と第2の層が交互に積層された総数201層の未延伸多層積層フィルムを作成した。なお押出量の比は第1の層用ポリエステル(A)を94%、第2の層用ポリエステル(B)を6%に調整した。またフィードブロックの第1の層の各層厚み、第2の層の各層厚みは均一層となるよう制御した。
この多層未延伸フィルムを80℃の温度で連続製膜方向に3.5倍に延伸し、幅方向は未延伸とし、75℃で3秒間熱処理を行って厚さ60μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0061】
[実施例2]
ポリエステル(A)を固有粘度0.65dl/g、ガラス転移温度(Tg)79℃、融点(Tm)256℃のポリエチレンテレフタレートホモポリマーとし、押出量の比を第1の層用ポリエステル(A)を91%、第2の層用ポリエステル(B)を9%に変更し、連続製膜方向は未延伸、幅方向に80℃の温度で3.5倍で延伸を行った以外は、実施例1と同様にして、厚さ60μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0062】
[実施例3]
ポリエステル(A)を固有粘度0.71dl/g、ガラス転移温度(Tg)74℃、融点(Tm)228℃のポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体(イソフタル酸含有量:12モル%)とし、押出量の比を第1の層用ポリエステル(A)を92%、第2の層用ポリエステル(B)を8%に変更し、80℃の温度で連続製膜方向に3.2倍、90℃の温度で幅方向に3.8倍延伸し、190℃で3秒間熱固定処理を行った以外は実施例1と同様にして、厚さ16μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0063】
[実施例4]
ポリエステル(B)の固有粘度を0.58dl/g、ガラス転移温度(Tg)109℃、融点(Tm2)252℃のポリエチレンナフタレート−テレフタレート共重合体(テレフタル酸含有量:8モル%)とし、押出量の比を第1の層用ポリエステル(A)を91%、第2の層用ポリエステル(B)を9%に変更し、95℃の温度で連続製膜方向に3.2倍、100℃の温度で幅方向に4.0倍延伸し、185℃で3秒間熱固定処理を行った以外は実施例1と同様にして、厚さ12μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0064】
[実施例5]
実施例1と同じポリエステル樹脂を用い、押出量の比を第1の層用ポリエステル(A)を91%、第2の層用ポリエステル(B)を9%に変更し、延伸および熱処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして、厚さ220μmの未延伸多層積層フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0065】
[比較例1]
ポリエステル(A)の固有粘度を0.71dl/g、ガラス転移温度(Tg)74℃、融点(Tm)228℃のポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体(イソフタル酸含有量:12モル%)とし、押出量の比を第1の層用ポリエステル(A)を87%、第2の層用ポリエステル(B)を13%とした以外は実施例1と同様にして、厚さ60μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0066】
[比較例2]
実施例1と同じポリエステル樹脂を用い、押出量の比を第1の層用ポリエステル(A)を96%、第2の層用ポリエステル(B)を4%とした以外は実施例1と同様にして製膜したところ、第2の層用ポリエステル(B)の層をダイの幅方向に均一に押出すことができず、フィルムを製膜することができなかった。
【0067】
[比較例3]
第1の層用のポリエステル(A)を、固有粘度0.51dl/g、ガラス転移温度(Tg)117℃、融点(Tm1)263℃のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートホモポリマーとし、第2の層用のポリエステル(B)を、固有粘度0.71dl/g、ガラス転移温度(Tg)74℃、融点(Tm2)228℃のポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体(イソフタル酸含有量:12モル%)とし、押出量の比を第1の層用ポリエステル(A)を91%、第2の層用ポリエステル(B)を9%とした以外は実施例1と同様にして製膜したところ、第2の層用ポリエステル(B)の層をダイの幅方向に均一に押出すことができず、フィルムを製膜することができなかった。
【0068】
[比較例4]
実施例1と同じポリエステル樹脂を用い、押出量の比を第1の層用ポリエステル(A)を91%、第2の層用ポリエステル(B)を9%とし、ポリエステル(A)を第1の層として11層に、ポリエステル(B)を第2の層として10層に分岐させ、95℃の温度で連続製膜方向に3.2倍、100℃の温度で幅方向に3.8倍延伸し、190℃で3秒間熱固定処理を行った以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0069】
[比較例5]
実施例1と同じポリエステル樹脂を用い、押出量の比を第1の層用ポリエステル(A)を85%、第2の層用ポリエステル(B)を15%とし、90℃の温度で連続製膜方向に3.2倍、100℃の温度で幅方向に4.0倍延伸し、190℃で3秒間熱固定処理を行った以外は実施例1と同様にして、厚さ16μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0070】
[比較例6]
実施例1と同じポリエステル樹脂を用い、押出量の比を第1の層用ポリエステル(A)を85%、第2の層用ポリエステル(B)を15%とし、延伸および熱処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして、厚さ200μmの未延伸多層積層フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0071】
[比較例7]
第1の層用のポリエステル(A)を固有粘度0.71dl/g、ガラス転移温度(Tg)74℃、融点(Tm1)228℃のポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体(イソフタル酸含有量:12モル%)とし、一方、第2の層は形成せずに単層構成とし、90℃の温度で連続製膜方向に3.2倍、105度の温度で幅方向に3.8倍延伸し、195℃で3秒間熱固定処理を行った以外は実施例1と同様にして、厚さ50μmの単層フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0072】
[比較例8]
第1の層用のポリエステル(A)を固有粘度0.51dl/g、ガラス転移温度(Tg)117℃、融点(Tm1)263℃のポリエチレンナフタレートホモポリマーとし、一方、第2の層は形成せずに単層構成とし、130℃の温度で連続製膜方向に3.2倍、145度の温度で幅方向に3.8倍延伸し、200℃で3秒間熱固定処理を行った以外は実施例1と同様にして、厚さ50μmの単層フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のポリエステル系フィルムは、従来のような粒子を添加したり、製膜後の後加工により表面を荒らす加工を施すことなく、層構成の制御によりすりガラス調の外観を発現できることから、すりガラス調外観を有する意匠性包装用フィルムとして好適に用いることができ、また後加工工程における汚染が少ないすりガラス調外観を有する意匠性包装用フィルムを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂(A)からなる厚み0.05〜4.5μmの第1の層と、第1の層と異なるポリエステル樹脂(B)からなる厚み0.005〜1.0μmの第2の層とを交互に31層以上1001層以下の範囲で積層してなるフィルムであり、ポリエステル樹脂(A)の融点(Tm)とポリエステル樹脂(B)の融点(Tm2)とが下記式(1)の関係を満たし、
−40℃<Tm−Tm2<−5℃ ・・・(1)
全フィルム厚みに対する第1の層の層厚みの総計が90%以上95%以下であり、フィルムのヘーズが15%以上であることを特徴とするポリエステル系フィルム。
【請求項2】
ポリエステル樹脂(A)がエチレンテレフタレートを主たる成分とするポリエステルである請求項1に記載のポリエステル系フィルム。
【請求項3】
ポリエステル樹脂(B)がエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とするポリエステルである請求項1または2に記載のポリエステル系フィルム。
【請求項4】
ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が70℃を超え100℃以下の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル系フィルム。
【請求項5】
フィルムの表面粗さSRaが100nm以上800nm以下である請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル系フィルム。
【請求項6】
第1の層、第2の層の少なくともいずれか一方が粒子を0〜0.1重量%含有する請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル系フィルム。
【請求項7】
第1の層および第2の層のみから構成される、請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル系フィルム。

【公開番号】特開2009−61714(P2009−61714A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232680(P2007−232680)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】