説明

ポリエステル系繊維材料用オリゴマー除去剤

【課題】ポリエステル繊維材料やこれとその他の繊維材料との複合材料からなる繊維材料の染色工程で染色浴に添加することによって、ポリエステルオリゴマーの付着による種々の問題を解決することのできる、ポリエステル系繊維材料用オリゴマー除去剤を提供する。
【解決手段】スルホン酸塩基を有する二塩基酸を15〜65モル%含有する二塩基酸成分と、分子量900〜3500のポリエチレングルコールを含有する二価アルコール成分とを重縮合させた、200℃における溶融粘度が5000〜23000mPa・sであり、分子中にポリオキシエチレン鎖を10〜40質量%有するポリエステル共重合体を含有するポリエステル系繊維材料用オリゴマー除去剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル繊維材料およびポリエステル繊維材料とその他の繊維材料との複合材料からなるポリエステル系繊維材料に好適なオリゴマー除去剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル繊維材料およびこれとその他の繊維材料との複合材料からなるポリエステル系繊維材料は通常100〜140℃の高温条件下で染色するが、その際にポリエステル系繊維材料よりポリエステルオリゴマーが繊維表面あるいは染色浴中に溶出し、様々なトラブルを発生させる。ポリエステル系繊維材料が布帛の場合には影斑やカレンダーの汚れが、糸の場合には発粉やワインダー時の糸切れが起こり、大きな問題となっている。このような問題を解決するために、これまで染色浴中あるいは染色後の還元洗浄浴中にオリゴマー除去剤を添加する方法がとられている。例えば、特開2000−154466号(特許文献1)には、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルのスルホン酸塩、およびアクリル酸もしくはメタクリル酸ポリマーなどのカルボキシル基含有ポリマーやそれらの塩からなるオリゴマー除去剤を染色浴に添加して、オリゴマーの付着によるトラブルを防止する方法が開示されている。また、特開2001―295136号(特許文献2)には、多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物とアルキルもしくはアルケニル脂肪酸とのエステル化物、または多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物とそれらのアルキルもしくはアルケニル脂肪酸を含有する天然動植物油脂とのエステル交換反応により得られるエステル化物を含むオリゴマー防止剤を染色工程で染色浴中に添加して、オリゴマーの溶出を防止する方法が開示されている。しかしながら、これらのオリゴマー除去剤や防止剤の添加によってもポリエステルオリゴマーの除去効果は低く、特に酸性浴では十分なオリゴマーの除去効果が得られてないのが現状である。
【0003】
【特許文献1】特開2000−154466号公報
【特許文献2】特開2001―295136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のようなポリエステル繊維材料やこれとその他の繊維材料との複合材料からなる繊維材料の染色工程で染色浴に添加することによって、ポリエステルオリゴマーの付着による種々の問題を解決することのできる、ポリエステル系繊維材料用オリゴマー除去剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、スルホン酸塩基を有する二塩基酸を特定の量で含む二塩基酸成分と、ポリエチレングルコールを特定の量で含む二価アルコール成分とを重縮合させたポリエステル共重合体をオリゴマー除去剤として使用することにより、ポリエステル系繊維材料の染色工程におけるオリゴマーの付着による問題が解決できることを見出し、この知見に基づき本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、スルホン酸塩基を有する二塩基酸を15〜65モル%含有する二塩基酸成分と、分子量900〜3500のポリエチレングルコールを含有する二価アルコール成分とを重縮合させた、200℃における溶融粘度が5000〜23000mPa・sであり、分子中にポリオキシエチレン鎖を10〜40質量%有するポリエステル共重合体を含有することを特徴とするポリエステル系繊維材料用オリゴマー除去剤を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のオリゴマー除去剤は、ポリエステル共重合体に基づくものであるために、ポリエステルオリゴマーとの親和性がよく、オリゴマーを水中に安定に保持させることができる。さらに、本発明のオリゴマー除去剤は、スルホン酸基を有しているために、オリゴマーの繊維材料や染色機への再付着が生じないため、染色工程において好適に使用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明の好ましい実施の態様について説明するが、本発明はこれらの態様のみに限定されるものではなく、本発明の精神と実施の範囲内において多くの変更が可能であることを理解されたい。
【0009】
本発明のオリゴマー除去剤は、スルホン酸塩基を有する二塩基酸を15〜65モル%含有する二塩基酸成分と、分子量900〜3500のポリエチレングルコールを含有する二価アルコール成分とを重縮合させたポリエステル共重合体を含有する。スルホン酸塩基を有する二塩基酸の好ましいものとしては、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホフタル酸の金属塩およびそれらのジメチルエステル、ジエチルエステル、ジフェニルエステル等のエステル誘導体が挙げられる。ここで、金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が挙げられるが、特にナトリム塩、カリウム塩が好ましい。そして、これらのスルホン酸塩基を有する二塩基酸の二塩基酸成分中の含有量は15〜65モル%の範囲にある。スルホン酸塩基を有する二塩基酸が二塩基酸成分中の15モル%未満であると、ポリエステルオリゴマーの除去性に劣る。これはスルホン酸基の含有量が少ないとオリゴマーの分散性に劣るため、繊維材料にオリゴマーが再付着するからであると考えられる。一方、65モル%を超えると、ポリエステル共重合体の重縮合反応が困難となってくる。共重合に使用される二塩基酸成分中に含まれるスルホン酸塩基を有する二塩基酸以外の二塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸等の芳香族カルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、コハク酸等の脂肪族のカルボン酸が挙げられ、それらの酸無水物あるいはそれらと低級アルコールもしくはグリコール類とのエステル誘導体を使用することもできる。
【0010】
また、本発明のオリゴマー除去剤は、これに用いられるポリエステル共重合体を合成するためのもう一方の原料である二価アルコール成分として、分子量900〜3500のポリエチレングリコールを含有する。ポリエチレングリコールの分子量が900未満の場合にはオリゴマーの除去性が劣る傾向にあり、分子量が3500を超える場合には分散染料の分散性が悪くなる傾向にある。そして、前記ポリエステル共重合体中には前記ポリエチレングリコールに由来するポリオキシエチレン鎖が10〜40質量%含有されている。ポリオキシエチレン鎖の含有量が10質量%未満であるとオリゴマーの除去性が劣る傾向にあり、一方ポリオキシエチレン鎖の含有量が40質量%を超えると分散染料の分散性不足や染色加工中に起泡性が高くなるなどのトラブルの要因が多くなる傾向にある。ポリエステル共重合体の合成に用いられる二価アルコール成分中に含まれるポリエチレングリコール以外の二価アルコールとしては、エチレングリコールが好ましいが、その他炭素数3以上のアルキレングルコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の脂肪族または芳香族のジオール化合物などを用いることもできる。
【0011】
さらに、本発明のオリゴマー除去剤に用いられるポリエステル共重合体は、200℃における溶融粘度が5000〜23000mPa・sである。本発明において、200℃における溶融粘度は、エム・エス・ティー・(M.S.T.)エンジニヤリング(株)製のコーンプレート粘度計:CV−1Sを用い、その取り扱い説明書に従って溶融粘度に適したコーンの種類と回転数を選んで測定することができる。本発明においては、溶融粘度が5000mPa・s未満であると、ポリエステルオリゴマーの除去能が低下してくる傾向にあり、これはオリゴマー除去剤のポリエステル系繊維材料への親和性が低くなるからであると考えられる。また、溶融粘度が23000mPa・sを超えると、ポリエステル系繊維材料へのオリゴマー除去剤の残留が多くなり、後の仕上げ工程に悪影響を及ぼすことが懸念される。上記の如きスルホン酸塩基を有する二塩基酸の含有量、分子量900〜3500のポリエチレングリコールに由来するポリオキシエチレン鎖の含有量および200℃における溶融粘度を満足するポリエステル共重合体を含有する本発明のオリゴマー除去剤は、ポリエステル系繊維材料からのオリゴマー除去性に優れており、またポリエステル系繊維材料や染色機への再付着が少ないという特徴を有している。本発明のオリゴマー除去剤は、前記ポリエステル共重合体を10〜50質量%含有する水分散液または乳化液として用いられることが、その取り扱い容易性から好ましい。
【0012】
本発明に用いるポリエステル共重合体の製造方法には、特に制限はなく、エステル交換法、直接重合法などの、従来から行われている方法によって製造することができる。
【0013】
また、本発明のオリゴマー除去剤を用いてオリゴマーを除去するポリエステル系繊維材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびそれらの共重合物からなるポリエステル繊維材料や、これらのポリエステル繊維材料とその他の合成繊維材料や天然繊維材料との複合繊維材料が挙げられ、その形態としては糸、編み物、織物、不織布などが挙げられる。
【0014】
本発明のオリゴマー除去剤を用いてポリエステル繊維材料やその複合繊維材料を染色する場合の染色方法としては、液流染色、チーズ染色、ビーム染色、オーバーマイヤー染色、高圧噴射染色などの浸漬法が適しているが、本発明の目的を達成できるものであればその方法に特に制限はない。
【実施例】
【0015】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0016】
実施例1
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングルコール57g、分子量1000のポリエチレングリコール86gおよび酢酸亜鉛0.1gを仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら、150℃から230℃まで約3時間かけて昇温してエステル交換反応を行い、メタノールを系外に留出させた。次いで、チタン酸テトラブチル0.1gを加えて徐々に減圧していき、内圧を約10kPaとし、250℃で2時間反応させてポリエステル共重合体314gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約27質量%であり、200℃における溶融粘度をエム・エス・ティー・(M.S.T.)エンジニヤリング(株)製のコーンプレート粘度計:CV−1Sを用いて、その取り扱い説明書に従い溶融粘度に適したコーンの種類と回転数を選んで測定した結果、12000mPa・sであった。
【0017】
実施例2
反応容器に、テレフタル酸ジメチル155.2g(0.8モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩59.2g(0.2モル)、エチレングルコール58g、分子量2000のポリエチレングリコール131gおよび酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は実施例1と同様に操作して、ポリエステル共重合体340gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約38質量%であり、200℃における溶融粘度は20000mPa・sであった。
【0018】
実施例3
反応容器に、テレフタル酸ジメチル135.8g(0.7モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩88.8g(0.3モル)、エチレングルコール54g、分子量1000のポリエチレングリコール136gおよび酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は実施例1と同様に操作して、ポリエステル共重合体350gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約38質量%であり、200℃における溶融粘度は8100mPa・sであった。
【0019】
実施例4
反応容器に、テレフタル酸ジメチル97g(0.5モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩148g(0.5モル)、エチレングルコール61g、分子量2000のポリエチレングリコール38gおよび酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は実施例1と同様に操作して、ポリエステル共重合体280gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約13質量%であり、200℃における溶融粘度は8900mPa・sであった。
【0020】
実施例5
反応容器に、テレフタル酸ジメチル77.6g(0.4モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩177.6g(0.6モル)、エチレングルコール60、分子量1000のポリエチレングリコール39gおよび酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は実施例1と同様に操作して、ポリエステル共重合体290gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約13質量%であり、200℃における溶融粘度は7500mPa・sであった。
【0021】
実施例6
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングルコール61g、分子量3000のポリエチレングリコール83gおよび酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は実施例1と同様に操作して、ポリエステル共重合体315gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約26質量%であり、200℃における溶融粘度は10000mPa・sであった。
【0022】
実施例7
反応容器に、1,8−ナフタレンジカルボン酸129.6g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングルコール57g、分子量1000のポリエチレングリコール85gおよび酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は実施例1と同様に操作して、ポリエステル共重合体343gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約24質量%であり、200℃における溶融粘度は11000mPa・sであった。
【0023】
実施例8
反応容器に、無水マレイン酸58.8g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングルコール58g、分子量1000のポリエチレングリコール68gおよび酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は実施例1と同様に操作して、ポリエステル共重合体267gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約25質量%であり、200℃における溶融粘度は10000mPa・sであった。
【0024】
実施例9
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、1,4−ブタンジオール83g、分子量1000のポリエチレングリコール83gおよび酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は実施例1と同様に操作して、ポリエステル共重合体337gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約24質量%であり、200℃における溶融粘度は11000mPa・sであった。
【0025】
実施例10
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、ネオペンチルグリコール96g、分子量1000のポリエチレングリコール83gおよび酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は実施例1と同様に操作して、ポリエステル共重合体350gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約23質量%であり、200℃における溶融粘度は12000mPa・sであった。
【0026】
実施例11
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、ビスフェノールSのエチレンオキサイド2モル付加体310g、分子量1000のポリエチレングリコール83gおよび酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は実施例1と同様に操作して、ポリエステル共重合体564gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約14質量%であり、200℃における溶融粘度は12000mPa・sであった。
【0027】
実施例12
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・カリウム塩124.8g(0.4モル)、エチレングルコール57g、分子量1000のポリエチレングリコール86gおよび酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は実施例1と同様に操作して、ポリエステル共重合体320gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約26質量%であり、200℃における溶融粘度は14000mPa・sであった。
【0028】
実施例13
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、スルホテレフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングルコール57g、分子量1000のポリエチレングリコール86gおよび酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は実施例1と同様に操作して、ポリエステル共重合体314gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約27質量%であり、200℃における溶融粘度は15000mPa・sであった。
【0029】
実施例14
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、スルホテレフタル酸ジメチル・カリウム塩124.8g(0.4モル)、エチレングルコール57g、分子量1000のポリエチレングリコール86gおよび酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は実施例1と同様に操作して、ポリエステル共重合体320gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約26質量%であり、200℃における溶融粘度は13000mPa・sであった。
【0030】
実施例15
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、4−スルホフタル酸ジエチル・ナトリウム塩129.6g(0.4モル)、エチレングルコール57g、分子量1000のポリエチレングリコール86gおよび酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は実施例1と同様に操作して、ポリエステル共重合体297gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約28質量%であり、200℃における溶融粘度は12000mPa・sであった。
【0031】
実施例16
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、4−スルホフタル酸ジエチル・カリウム塩136.0g(0.4モル)、エチレングルコール57、分子量1000のポリエチレングリコール86gおよび酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は実施例1と同様に操作して、ポリエステル共重合体303gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約27質量%であり、200℃における溶融粘度は12000mPa・sであった。
【0032】
比較例1
反応容器に、テレフタル酸ジメチル174.6g(0.9モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩29.6g(0.1モル)、エチレングルコール58g、分子量1000のポリエチレングリコール74gおよび酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は実施例1と同様に操作して、ポリエステル共重合体272gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約26質量%であり、200℃における溶融粘度は9200mPa・sであった。
【0033】
比較例2
反応容器に、テレフタル酸ジメチル58.2g(0.3モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩207.2g(0.7モル)、エチレングルコール60g、分子量2000のポリエチレングリコール90gおよび酢酸亜鉛0.1gを仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら、150℃から230℃まで約3時間をかけて昇温してエステル交換反応を行い、メタノールを系外に留出させた。次いで、チタン酸テトラブチル0.1gを加えて徐々に減圧していき、内圧が約30kPaとなったときに攪拌ができなくなり、その後の反応が継続できなかった。
【0034】
比較例3
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングルコール56g、分子量800のポリエチレングリコール83gおよび酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は実施例1と同様に操作して、ポリエステル共重合体310gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約26質量%であり、200℃における溶融粘度は9700mPa・sであった。
【0035】
比較例4
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングルコール61g、分子量4000のポリエチレングリコール83gおよび酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は実施例1と同様に操作して、ポリエステル共重合体315gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約26質量%であり、200℃における溶融粘度は10000mPa・sであった。
【0036】
比較例5
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングルコール62g、分子量2000のポリエチレングリコール24gおよび酢酸亜鉛0.1gを仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら、150℃から230℃まで約3時間をかけて昇温してエステル交換反応を行い、メタノールを系外に留出させた。次いで、チタン酸テトラブチル0.1gを加えて徐々に減圧していき、内圧が約40kPaとなったときに攪拌ができなくなり、その後の反応が継続できなかった。
【0037】
比較例6
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングルコール49g、分子量1000のポリエチレングリコール218gおよび酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は実施例1と同様に操作して、ポリエステル共重合体438gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約48質量%であり、200℃における溶融粘度は11000mPa・sであった。
【0038】
比較例7
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングルコール57g、分子量1000のポリエチレングリコール83gおよび酢酸亜鉛0.1gを仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら、150℃から230℃まで約3時間をかけて昇温してエステル交換反応を行い、メタノールを系外に留出させた。次いで、チタン酸テトラブチル0.1gを加えて徐々に減圧していき、内圧が約30kPaとなったところで反応を終了し、冷却してポリエステル共重合体312gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約26質量%であり、200℃における溶融粘度は3200mPa・sであった。
【0039】
比較例8
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.4g(0.6モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングルコール57g、分子量1000のポリエチレングリコール83gおよび酢酸亜鉛0.1gを仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら、150℃から230℃まで約3時間をかけて昇温してエステル交換反応を行い、メタノールを系外に留出させた。次いで、チタン酸テトラブチル0.1gを加えて徐々に減圧していき、内圧を約9kPaとし、250℃で5時間反応させてポリエステル共重合体311gを得た。得られたポリエステル共重合体のポリオキシエチレン鎖の含有量は約26質量%であり、200℃における溶融粘度は25000mPa・sであった。
【0040】
これらのポリエステル共重合体の合成結果を表1にまとめて示す。
【0041】
【表1】

【0042】
得られた実施例および比較例のオリゴマー除去剤の評価を以下のようにして行った。
オリゴマー除去性試験
染色時のオリゴマー除去効果を比較するために、実施例1〜16または比較例1、3、4、6〜8のオリゴマー除去剤を添加した下記の条件で染色したポリエステルサテン織物を、1,4−ジオキサンを用いて抽出して、その抽出液の286nmにおけるUV吸光度を測定することにより、布帛1g当たりのオリゴマーの付着量を算出した。
【0043】
得られた結果を表2に示す。
【0044】
染色浴
染料:C.I.Disperse Blue 79 1%o.w.f.
80%酢酸 1g/L
分散均染剤:ニッカサンソルトSN−558(日華化学(株)製) 1g/L
オリゴマー除去剤 0.3g/L
染色温度×時間:130℃×30分
浴比=1:15
染料分散性試験
染色時の染料分散性を比較するために、カラーペット(日本染色機械製)を用い、そのホルダーに精練を施したポリエステルニットを巻き付け、上下を輪ゴムで止めたものを、実施例1〜16または比較例1、3、4、6〜8のオリゴマー除去剤を添加した下記の条件で染色した後、ポリエステルニット上に残るケーシングスポットの程度を肉眼で観察して、染料分散性を5級(ケーシングスポットなし)から1級(ケーシングスポット多い)の5段階で評価した。
【0045】
得られた結果を表2に示す。
【0046】
染色浴
染料:C.I.Disperse Red 167 2%o.w.f.
80%酢酸 1g/L
分散均染剤:ニッカサンソルトSN−558(日華化学(株)製) 1g/L
オリゴマー除去剤 0.3g/L
染色温度×時間:115℃×1分
浴比=1:30
残留性試験
染色布へのオリゴマー除去剤の残留性を比較するために、前記オリゴマー除去性試験と同様の染色条件で染色したポリエステルサテン織物を120℃で1分間乾燥した後、180℃で30秒間加熱処理した。その後、室温まで冷却した後、生地上に水滴を1滴滴下して、水滴が完全に生地表面から浸透するまでの時間を測定した。吸水性の無いものほどオリゴマー除去剤の残留が無いと判断する。
【0047】
得られた結果を表2に示す。
加工適性試験
染色時の加工適性を比較するために、高温高圧液流染色機:MINI−JET D−100((株)テクサム技研製)を用いて、実施例1〜16または比較例1、3、4、6〜8のオリゴマー除去剤を添加した下記条件の処理浴に、ポリエステルポンジを入れて3℃/分の速度で昇温した時の60〜130℃までの泡の状態を、オリゴマー除去剤無添加の場合と比較して評価した。評価は○(無添加と同等)、△(無添加より泡立ち多い)、×(無添加より著しく泡立)の3段階で行い、泡立ちの少ないものを良と判断した。
【0048】
評価した結果を表2に示す。
【0049】
処理浴
80%酢酸 1g/L
分散均染剤:ニッカサンソルトSN−558(日華化学(株)製) 1g/L
オリゴマー除去剤 0.3g/L
浴比=1:30
【0050】
【表2】

【0051】
表2の結果のように、本発明の実施例のオリゴマー除去剤は、染色性に影響を与えずにオリゴマーを低減することができ、また加工時の泡立ちも少なく加工適性を備えていることが解る。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のオリゴマー除去剤を用いれば、オリゴマー付着による加工欠点の無い良好な品位の繊維製品が得られ、また加工時の泡立ちも少ないために加工時のトラブルも軽減されるので、繊維製品の染色加工などを経済的に行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン酸塩基を有する二塩基酸を15〜65モル%含有する二塩基酸成分と、分子量900〜3500のポリエチレングルコールを含有する二価アルコール成分とを重縮合させた、200℃における溶融粘度が5000〜23000mPa・sであり、分子中にポリオキシエチレン鎖を10〜40質量%有するポリエステル共重合体を含有することを特徴とするポリエステル系繊維材料用オリゴマー除去剤。

【公開番号】特開2007−308813(P2007−308813A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136522(P2006−136522)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】