説明

ポリエステル系繊維用難燃加工剤、それを用いた難燃性ポリエステル系繊維、及びその製造方法

【課題】 環境保全に課題の残るリン系難燃性化合物の使用量を抑え、且つ、ポリエステル系繊維に対して洗濯耐久性に優れた難燃性を付与することを可能とするポリエステル系繊維用難燃加工剤を提供すること。
【解決手段】 下記一般式[1]で表されるジフェニルスルホン系化合物(A)と有機リン系難燃性化合物(B)とを難燃加工成分として含有することを特徴とするポリエステル系繊維用難燃加工剤。
【化1】


(式[1]中、R、R、R、Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ−H,−OH,−NH,−COOH,−O(CHCHO)H[nは1〜5の整数],−CHCH=CH,−O−CHCH=CH,−OCH(CH)CH及び−OCHからなる群から選択されるいずれかを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系繊維の難燃加工に用いる難燃加工剤及びそれを用いた難燃性ポリエステル系繊維の製造方法、並びに難燃性ポリエステル系繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステル系繊維の難燃加工は、ヘキサブロモシクロドデカンに代表されるハロゲン系難燃性化合物を浸漬法又はサーモゾル法にて繊維の内部に浸透させて固着させることにより行われていた。しかしながら、ハロゲン系難燃性化合物により難燃加工されたポリエステル系繊維は燃焼時に人体に有害なガスを発生すること、ハロゲン系難燃性化合物の代表であるヘキサブロモシクロドデカンは難分解性、高蓄積性の物質であり、自然環境への有害性が危惧されるといった理由から、ハロゲン系難燃性化合物に代わる難燃加工成分としてリン系難燃性化合物が用いられるようになってきている。
【0003】
しかしながら、リン系難燃性化合物をポリエステル系繊維に付与した場合には、洗濯後の難燃性にばらつきが生じやすく、安定した難燃性が得られないという問題があった。そのため、リン系難燃性化合物の洗濯によるポリエステル系繊維からの脱落を抑制する手段として、例えば、特開平8−260351号公報(特許文献1)には、特定のリン系化合物と撥水撥油剤やポリウレタン樹脂等の機能性薬剤との混合物をポリエステル系繊維に付与し、100℃以上の温度で熱処理することにより、耐久性に優れた難燃性や撥水性能を有するポリエステル系繊維の製造方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、この方法によって得られた難燃性ポリエステル系繊維であっても、洗濯後等の難燃性という点では不十分であり、また、特に難燃性が得られにくいレギュラーポリエステル繊維とカチオン可染ポリエステル繊維との複合繊維に対しては、難燃性をほとんど付与することができなかった。また、リン系難燃性化合物は、河川富栄養化の原因物質の一つであり、ハロゲン系難燃性化合物と同様にリン系難燃性化合物も公害防止、環境保全の観点から使用量を削減すべき物質である。
【特許文献1】特開平8−260351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、環境保全に課題の残るリン系難燃性化合物の使用量を抑え、且つ、ポリエステル系繊維に対して洗濯耐久性に優れた難燃性を付与することを可能とし、特に難燃化の困難なレギュラーポリエステル繊維とカチオン可染ポリエステル繊維との複合繊維に対しても洗濯耐久性に優れた難燃性を付与できるポリエステル系繊維用難燃加工剤、並びに洗濯耐久性に優れた難燃性を有するポリエステル系繊維及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のジフェニルスルホン系化合物は、それ自体はポリエステル系繊維等に対する難燃効果を有さないにも拘らず、有機リン系難燃性化合物と併用した場合に有機リン系難燃性化合物の難燃効果がジフェニルスルホン系化合物により増強されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤は、下記一般式[1]:
【0008】
【化1】

【0009】
(式[1]中、R、R、R、Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ−H,−OH,−NH,−COOH,−O(CHCHO)H[nは1〜5の整数],−CHCH=CH,−O−CHCH=CH,−OCH(CH)CH及び−OCHからなる群から選択されるいずれかを表す。)
で表されるジフェニルスルホン系化合物(A)と有機リン系難燃性化合物(B)とを難燃加工成分として含有することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の難燃性ポリエステル系繊維は、ポリエステル系繊維と、前記ポリエステル系繊維に難燃加工成分として固着されている、前記ジフェニルスルホン系化合物(A)と前記有機リン系難燃性化合物(B)とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、本発明の難燃性ポリエステル系繊維の製造方法は、ポリエステル系繊維に前記本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤を接触させる工程と、加熱により前記ジフェニルスルホン系化合物(A)及び前記有機リン系難燃性化合物(B)を前記ポリエステル系繊維に固着させる工程とを含むことを特徴とする方法である。
【0012】
本発明においては、前記有機リン系難燃性化合物(B)が、下記一般式[2]で表されるリン酸エステル、下記一般式[3]で表される芳香族ホスフェート、下記一般式[4]で表される第一の芳香族リン化合物、下記一般式[6]で表される第二の芳香族リン化合物、前記第二の芳香族リン化合物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩及びアミン塩、下記一般式[8]で表されるホスファゼン化合物、下記一般式[9]で表される第一のリン酸アミド化合物、下記一般式[10]で表される第二のリン酸アミド化合物、下記一般式[11]で表される第三のリン酸アミド化合物、並びに下記式[12]で表されるトリフェニルホスフィンオキシドからなる群から選択される少なくとも一つのリン化合物であることが好ましい。
【0013】
【化2】

【0014】
(式[2]中、R、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基からなる群から選択されるいずれかを表す。)
【0015】
【化3】

【0016】
(式[3]中、R、R、R10及びR11は同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよいアリール基を表し、R12は炭素数1〜10のアルキレン基及び置換基を有していてもよいアリーレン基からなる群から選択されるいずれかを表し、mは1〜20の整数を表す。)
【0017】
【化4】

【0018】
〔式[4]中、R13は炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、−OH基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基及び下記一般式[5]:
【0019】
【化5】

【0020】
(式[5]中、R14は水素原子、炭素数1〜24のアルキル基及び炭素数5〜6の脂環アルキル基からなる群から選択されるいずれかを表す。)
で表される基からなる群から選択されるいずれかを表す。〕
【0021】
【化6】

【0022】
〔式[6]中、R15は炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、−OH基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基及び下記一般式[7]:
【0023】
【化7】

【0024】
(式[7]中、R16は水素原子、炭素数1〜24のアルキル基及び炭素数5〜6の脂環アルキル基からなる群から選択されるいずれかを表す。)
で表される基からなる群から選択されるいずれかを表す。〕
【0025】
【化8】

【0026】
(式[8]中、R17及びR18は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基及び置換基を有していてもよいアリール基からなる群から選択されるいずれかを表し、kは3〜10の整数を表す。)
【0027】
【化9】

【0028】
(式[9]中、R21及びR22は同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよいアリール基を表し、R19及びR20は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基及び置換基を有していてもよいアラルキル基からなる群から選択されるいずれかを表し、R19及びR20は相互に結合してリン原子に結合している窒素原子と共に環を形成していてもよい。)
【0029】
【化10】

【0030】
(式[10]中、R27は置換基を有していてもよいアリール基を表し、R23、R24、R25及びR26は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基及び置換基を有していてもよいアラルキル基からなる群から選択されるいずれかを表し、R23及びR24或いはR25及びR26は相互に結合してリン原子に結合している窒素原子と共に環を形成していてもよい。)
【0031】
【化11】

【0032】
(式[11]中、R28、R29、R30、R31、R32及びR33は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基及び置換基を有していてもよいアラルキル基からなる群から選択されるいずれかを表し、R28及びR29、R30及びR31、或いはR32及びR33は相互に結合してリン原子に結合している窒素原子と共に環を形成していてもよい。)
【0033】
【化12】

【0034】
また、本発明においては、前記ジフェニルスルホン系化合物(A)と前記有機リン系難燃性化合物(B)との配合比(A:B)が質量比で0.01:1〜1.25:1であることが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、環境保全に課題の残るリン系難燃性化合物の使用量を抑え、且つ、ポリエステル系繊維に対して洗濯耐久性に優れた難燃性を付与することを可能とし、特に難燃化の困難なレギュラーポリエステル繊維とカチオン可染ポリエステル繊維との複合繊維に対しても洗濯耐久性に優れた難燃性を付与できるポリエステル系繊維用難燃加工剤、並びに洗濯耐久性に優れた難燃性を有するポリエステル系繊維及びその製造方法を提供することが可能となる。
【0036】
また、本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤はハロゲン原子を含まないため、それを用いて得られた本発明による難燃性ポリエステル系繊維を廃棄焼却する際等に難燃加工剤に起因するダイオキシン発生は十分に防止され、環境保護、エコロジーの面からも好ましいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。先ず、本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤について説明する。
【0038】
本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤は、難燃加工成分として特定のジフェニルスルホン系化合物(A)及び有機リン系難燃性化合物(B)を含有するものであり、前記ジフェニルスルホン系化合物(A)は、難燃成分である有機リン系難燃性化合物(B)の難燃性増強成分として機能していると本発明者らは推察する。
【0039】
本発明にかかるジフェニルスルホン系化合物(A)は、下記一般式[1]で表される化合物である。
【0040】
【化13】

【0041】
一般式[1]において、R、R、R、Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ−H,−OH,−NH,−COOH,−O(CHCHO)H[nは1〜5の整数],−CHCH=CH,−O−CHCH=CH,−OCH(CH)CH及び−OCHからなる群から選択されるいずれかを表す。
【0042】
本発明にかかるジフェニルスルホン系化合物(A)としては、例えば、ジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアリルオキシジフェニルスルホン、4−アリルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジイソプロポキシジフェニルスルホン、4−イソプロポキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジベンジルオキシジフェニルスルホン、4−ベンジルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジアリル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス[4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンが挙げられる。これらの中でも、4,4’−ジアリルオキシジフェニルスルホンは、繊維への吸尽量がより高い傾向にあるため、好適に用いることができる。
【0043】
本発明に用いられる有機リン系難燃性化合物(B)は、特に限定されないが、後述する一般式[2]で表されるリン酸エステル;後述する一般式[3]で表される芳香族ホスフェート;後述する一般式[4]で表される第一の芳香族リン化合物;後述する一般式[6]で表される第二の芳香族リン化合物;後述する第二の芳香族リン化合物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩及びアミン塩;後述する一般式[8]で表されるホスファゼン化合物;後述する一般式[9]で表される第一のリン酸アミド化合物;後述する一般式[10]で表される第二のリン酸アミド化合物;後述する一般式[11]で表される第三のリン酸アミド化合物;並びに後述する式[12]で表されるトリフェニルホスフィンオキシドからなる群から選択される少なくとも1つのリン化合物であることが好ましい。これらのリン化合物は、1種のものを単独で用いても、2種以上のものを混合して用いてもよい。
【0044】
前記リン酸エステルは、下記一般式[2]により表される化合物である。
【0045】
【化14】

【0046】
一般式[2]において、R、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基からなる群から選択されるいずれかを表す。炭素数1〜24のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、2−ブチルオクチル基、2−ブチルデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、2−オクチルデシル基、ドコシル基、テトラコシル基が挙げられるが、化合物中のリン含量を高めるという観点から、炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。また、炭素数2〜22のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基、ドコセニル基が挙げられるが、化合物中のリン含量を高めるという観点から、炭素数2〜6のアルケニル基が好ましい。さらに、炭素数5〜6の脂環アルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。また、置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基が挙げられる。なお、かかる置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヒドロキシ基が挙げられる。
【0047】
このようなリン酸エステルとしては、例えば、トリキシリルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリトリルホスフェート、トリルジフェニルホスフェート、トリクメニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェートが挙げられる。
【0048】
前記芳香族ホスフェートは、下記一般式[3]により表される化合物である。
【0049】
【化15】

【0050】
一般式[3]において、R、R、R10及びR11は同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよいアリール基を表す。置換基を有していてもよいアリール基としては、一般式[2]中のR、R及びRとしての置換基を有していてもよいアリール基と同様のものが挙げられる。また、R12は炭素数1〜10のアルキレン基及び置換基を有していてもよいアリーレン基からなる群から選択されるいずれかを表す。そして、炭素数1〜10のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ブチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基が挙げられる。また、置換基を有していてもよいアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、メチレンビスフェニレン基、ジメチルメチレンビスフェニレン基、スルホンビスフェニレン基が挙げられる。なお、かかる置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヒドロキシ基が挙げられる。また、mは1〜20の整数を表す。
【0051】
このような芳香族ホスフェートとしては、例えば、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(2,6−キシリルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジトリルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジトリルホスフェート)、ビスフェノールSビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールSビス(ジトリルホスフェート)が挙げられる。
【0052】
前記第一の芳香族リン化合物は、下記一般式[4]により表される化合物である。
【0053】
【化16】

【0054】
一般式[4]において、R13は炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、−OH基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基及び下記一般式[5]で表される基からなる群から選択されるいずれかを表す。
【0055】
【化17】

【0056】
炭素数1〜24のアルキル基並びに炭素数2〜22のアルケニル基としては、一般式[2]中のR、R及びRとしての炭素数1〜24のアルキル基並びに炭素数2〜22のアルケニル基と同様のものが挙げられる。また、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシデシル基が挙げられる。さらに、置換基を有していてもよいアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−ヒドロキシ−3,5−ターシャリーブチルベンジル基が挙げられる。なお、かかる置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシ基が挙げられる。また、炭素数1〜10アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基が挙げられる。さらに、置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、3−メチルベンジルオキシ基、4−メトキシベンジルオキシ基が挙げられる。なお、かかる置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシ基が挙げられる。
【0057】
一般式[5]において、R14は水素原子、炭素数1〜24のアルキル基及び炭素数5〜6の脂環アルキル基からなる群から選択されるいずれかを表す。炭素数が1〜24のアルキル基並びに炭素数5〜6の脂環アルキル基としては、一般式[2]中のR、R及びRとしての炭素数1〜24のアルキル基並びに炭素数5〜6の脂環アルキル基と同様のものが挙げられる。
【0058】
このような第一の芳香族リン化合物としては、例えば、10−メチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(化合物A):
【0059】
【化18】

【0060】
10−ヒドロキシメチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(化合物B):
【0061】
【化19】

【0062】
10−ヒドロキシエチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(化合物C):
【0063】
【化20】

【0064】
10−フェニル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(化合物D):
【0065】
【化21】

【0066】
10−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(化合物E):
【0067】
【化22】

【0068】
10−(p−メチルベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(化合物F):
【0069】
【化23】

【0070】
[3−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド−10−イル)メチル]スクシンイミド(化合物G):
【0071】
【化24】

【0072】
N−エチル[3−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド−10−イル)メチル]スクシンイミド(化合物H):
【0073】
【化25】

【0074】
N−フェニル[3−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド−10−イル)メチル]スクシンイミド(化合物I):
【0075】
【化26】

【0076】
が挙げられる。
【0077】
前記第二の芳香族リン化合物は、下記一般式[6]により表される化合物である。
【0078】
【化27】

【0079】
一般式[6]において、R15は炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、−OH基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基及び下記一般式[7]で表される基からなる群から選択されるいずれかを表す。
【0080】
【化28】

【0081】
炭素数1〜24のアルキル基並びに炭素数2〜22のアルケニル基としては、一般式[2]中のR、R及びRとしての炭素数1〜24のアルキル基並びに炭素数2〜22のアルケニル基と同様のものが挙げられる。また、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基並びに置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基としては、一般式[4]中のR13としての炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基並びに置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基と同様のものが挙げられる。
【0082】
一般式[7]において、R16は水素原子、炭素数1〜24のアルキル基及び炭素数5〜6の脂環アルキル基からなる群から選択されるいずれかを表す。炭素数が1〜24のアルキル基並びに炭素数5〜6の脂環アルキル基としては、一般式[2]中のR、R及びRとしての炭素数1〜24のアルキル基並びに炭素数5〜6の脂環アルキル基と同様のものが挙げられる。
【0083】
このような第二の芳香族リン化合物としては、例えば、メチル(2’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−2−イル)ホスフィン酸(化合物J):
【0084】
【化29】

【0085】
ヒドロキシメチル(2’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−2−イル)ホスフィン酸(化合物K):
【0086】
【化30】

【0087】
ヒドロキシエチル(2’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−2−イル)ホスフィン酸(化合物L):
【0088】
【化31】

【0089】
フェニル(2’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−2−イル)ホスフィン酸(化合物M):
【0090】
【化32】

【0091】
ベンジル(2’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−2−イル)ホスフィン酸(化合物N):
【0092】
【化33】

【0093】
p−メチルベンジル(2’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−2−イル)ホスフィン酸(化合物O):
【0094】
【化34】

【0095】
スクシンイミドメチル−(2’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−2−イル)ホスフィン酸(化合物P):
【0096】
【化35】

【0097】
N−エチルスクシンイミドメチル−(2’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−2−イル)ホスフィン酸(化合物Q):
【0098】
【化36】

【0099】
N−フェニルスクシンイミドメチル(2’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−2−イル)ホスフィン酸(化合物R):
【0100】
【化37】

【0101】
が挙げられる。
【0102】
前記第二の芳香族リン化合物の塩は、前記一般式[6]により表される化合物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩又はアミン塩である。そして、これらのアルカリ金属塩としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等の塩が挙げられる。また、これらのアルカリ土類金属塩としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム等の塩が挙げられる。さらに、これらのアミン塩としては、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アリルアミン等の1級アミンの塩;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアリルアミン等の2級アミンの塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の3級アミンの塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンの塩が挙げられる。
【0103】
このような第二の芳香族リン化合物の塩としては、例えば、ベンジル(2’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−2−イル)ホスフィン酸アンモニウム(化合物S):
【0104】
【化38】

【0105】
ヒドロキシメチル(2’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−2−イル)ホスフィン酸アンモニウム(化合物T):
【0106】
【化39】

【0107】
ヒドロキシエチル(2’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−2−イル)ホスフィン酸アルミニウム(化合物U):
【0108】
【化40】

【0109】
フェニル(2’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−2−イル)ホスフィン酸アンモニウム(化合物V):
【0110】
【化41】

【0111】
ベンジル(2’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−2−イル)ホスフィン酸アンモニウム(化合物W):
【0112】
【化42】

【0113】
p−メチルベンジル(2’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−2−イル)ホスフィン酸カルシウム(化合物X):
【0114】
【化43】

【0115】
スクシンイミドメチル−(2’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−2−イル)ホスフィン酸アンモニウム(化合物Y):
【0116】
【化44】

【0117】
N−エチルスクシンイミドメチル−(2’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−2−イル)ホスフィン酸アンモニウム(化合物Z):
【0118】
【化45】

【0119】
N−フェニルスクシンイミドメチル(2’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−2−イル)ホスフィン酸アンモニウム(化合物AA):
【0120】
【化46】

【0121】
が挙げられる。
【0122】
前記ホスファゼン化合物は、下記一般式[8]により表される化合物である。
【0123】
【化47】

【0124】
一般式[8]において、R17及びR18は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基及び置換基を有していてもよいアリール基からなる群から選択されるいずれかを表す。炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基並びに置換基を有していてもよいアリール基としては、一般式[2]中のR、R及びRとしての炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基並びに置換基を有していてもよいアリール基と同様のものが挙げられる。また、kは3〜10の整数を表す。
【0125】
このようなホスファゼン化合物としては、例えば、トリフェノキシトリメトキシシクロトリホスファゼン、テトラフェノキシテトラメトキシシクロテトラホスファゼン、ヘキサフェノキシヘキサメトキシシクロヘキサホスファゼンが挙げられる。
【0126】
前記第一のリン酸アミド化合物は、下記一般式[9]により表される化合物である。
【0127】
【化48】

【0128】
一般式[9]において、R21及びR22は同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよいアリール基を表す。置換基を有していてもよいアリール基としては、一般式[2]中のR、R及びRとしての置換基を有していてもよいアリール基と同様のものが挙げられる。また、R19及びR20は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基及び置換基を有していてもよいアラルキル基からなる群から選択されるいずれかを表し、R19及びR20は相互に結合してリン原子に結合している窒素原子と共に環を形成していてもよい。炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基並びに置換基を有していてもよいアリール基としては、一般式[2]中のR、R及びRとしての炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基並びに置換基を有していてもよいアリール基と同様のものが挙げられる。また、置換基を有していてもよいアラルキル基としては、一般式[4]中のR13としての置換基を有していてもよいアラルキル基と同様のものが挙げられる。
【0129】
このような第一のリン酸アミド化合物としては、例えば、アミノジフェニルホスフェート、メチルアミノジフェニルホスフェート、ジメチルアミノジフェニルホスフェート、エチルアミノジフェニルホスフェート、ジエチルアミノジフェニルホスフェート、プロピルアミノジフェニルホスフェート、ジプロピルアミノジフェニルホスフェート、オクチルアミノジフェニルホスフェート、ジフェニルウンデシルアミノホスフェート、シクロヘキシルアミノジフェニルホスフェート、ジシクロヘキシルアミノジフェニルホスフェート、アリルアミノジフェニルホスフェート、アニリノジフェニルホスフェート、ジ−o−クレジルフェニルアミノホスフェート、ジフェニル(メチルフェニルアミノ)ホスフェート、ジフェニル(エチルフェニルアミノ)ホスフェート、ベンジルアミノジフェニル、モルホリノジフェニルホスフェートが挙げられる。
【0130】
前記第二のリン酸アミド化合物は、下記一般式[10]により表される化合物である。
【0131】
【化49】

【0132】
一般式[10]において、R27は置換基を有していてもよいアリール基を表す。置換基を有していてもよいアリール基としては、一般式[2]中のR、R及びRとしての置換基を有していてもよいアリール基と同様のものが挙げられる。R23、R24、R25及びR26は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基及び置換基を有していてもよいアラルキル基からなる群から選択されるいずれかを表し、R23及びR24或いはR25及びR26は相互に結合してリン原子に結合している窒素原子と共に環を形成していてもよい。炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基並びに置換基を有していてもよいアリール基としては、一般式[2]中のR、R及びRとしての炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基並びに置換基を有していてもよいアリール基と同様のものが挙げられる。また、置換基を有していてもよいアラルキル基としては、一般式[4]中のR13としての置換基を有していてもよいアラルキル基と同様のものが挙げられる。
【0133】
このような第二のリン酸アミド化合物としては、例えば、ジアミノフェニルホスフェート、アミノメチルアミノフェニルホスフェート、ビス(メチルアミノ)フェニルホスフェート、アミノエチルアミノフェニルホスフェート、ビス(エチルアミノ)フェニルホスフェート、アミノプロピルアミノフェニルホスフェート、ビス(プロピルアミノ)フェニルホスフェート、アミノオクチルアミノフェニルホスフェート、アミノウンデシルアミノフェニルホスフェート、アミノシクロヘキシルアミノフェニルホスフェート、ビスシクロヘキシルアミノフェニルホスフェート、ビスアリルアミノフェニルホスフェート、アミノアニリノフェニルホスフェート、ジアニリノフェニルホスフェート、アニリノメチルアミノフェニルホスフェート、エチルアミノフェニルアミノフェニルホスフェート、ビスベンジルアミノフェニルホスフェート、ジモルホリノフェニルホスフェートが挙げられる。
【0134】
前記第三のリン酸アミド化合物は、下記一般式[11]により表される化合物である。
【0135】
【化50】

【0136】
一般式[11]において、R28、R29、R30、R31、R32及びR33は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基及び置換基を有していてもよいアラルキル基からなる群から選択されるいずれかを表し、R28及びR29、R30及びR31、或いはR32及びR33は相互に結合してリン原子に結合している窒素原子と共に環を形成していてもよい。炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基並びに置換基を有していてもよいアリール基としては、一般式[2]中のR、R及びRとしての炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基並びに置換基を有していてもよいアリール基と同様のものが挙げられる。また、置換基を有していてもよいアラルキル基としては、一般式[4]中のR13としての置換基を有していてもよいアラルキル基と同様のものが挙げられる。
【0137】
このような第三のリン酸アミド化合物としては、例えば、トリアミノホスフェート、ジアミノメチルアミノホスフェート、ビス(メチルアミノ)アミノホスフェート、ジアミノエチルアミノホスフェート、ビス(エチルアミノ)アミノホスフェート、ジアミノプロピルアミノホスフェート、ビス(プロピルアミノ)アミノホスフェート、ジアミノオクチルアミノホスフェート、ジアミノウンデシルアミノホスフェート、ジアミノシクロヘキシルアミノホスフェート、トリシクロヘキシルアミノホスフェート、アミノビスアリルアミノホスフェート、ジアミノアニリノホスフェート、トリアニリノホスフェート、ビスアニリノメチルアミノホスフェート、ビスアニリノエチルアミノホスフェート、トリベンジルアミノホスフェート、トリピペリジノホスフェートが挙げられる。
【0138】
前記トリフェニルホスフィンオキシドは、下記式[12]で表される化合物である。なお、かかるトリフェニルホスフィンオキシドは、本発明の効果に影響がない範囲であれば、不純物としてトリフェニルホスフィン等を含有していてもよい。
【0139】
【化51】

【0140】
本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤における難燃加工成分、すなわち前記ジフェニルスルホン系化合物(A)と前記有機リン系難燃性化合物(B)の配合比は、質量比で、(Aの質量):(Bの質量)=0.01:1〜1.25:1であることが好ましく、0.25:1〜0.75:1であることがより好ましい。前記ジフェニルスルホン系化合物(A)の配合比が前記下限未満の場合は得られる難燃性の洗濯耐久性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超える場合も得られる難燃性の洗濯耐久性が低下する傾向にある。
【0141】
本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤は、前記難燃加工成分を含有していればよく、用いる溶剤は特に限定されないが、環境への配慮等の観点から水を用いることが好ましい。また、その場合、前記難燃加工成分が水に乳化又は分散されていることが好ましく、乳化又は分散させるために界面活性剤を用いることがより好ましい。
【0142】
かかる界面活性剤としては、例えば、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤が挙げられる。このような非イオン界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、ポリオキシアルキレンエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキル多価アルコールエーテルを挙げることができる。
【0143】
また、このようなアニオン界面活性剤としても、特に限定されず、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアリールエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキル多価アルコールエーテル硫酸塩、アルコール硫酸塩の硫酸塩類;ポリオキシアルキレンエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアリールエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキル多価アルコールエーテルリン酸エステル、アルコールリン酸エステル等のリン酸エステル及びそれらの塩を挙げることができる。前記の塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アミン塩が挙げられ、アルカリ金属塩としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムの塩が挙げられる。また、アミン塩としては、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アリルアミン等の1級アミンの塩;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアリルアミン等の2級アミンの塩;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の3級アミンの塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンの塩が挙げられる。これらの非イオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤は、1種のものを単独で用いても、2種以上のものを混合して用いてもよい。
【0144】
また、特に芳香族系の置換基を有する界面活性剤を用いた場合には、保存安定性に優れた乳化物、分散物が得られる傾向にあるため、スチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物(非イオン界面活性剤)や、スチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩又はリン酸エステル塩(アニオン界面活性剤)を使用することが好ましい。
【0145】
このような界面活性剤の使用量は特に制限されないが、前記難燃加工成分の総量100質量部に対して、1〜50質量部程度であることが好ましく、1〜30質量部程度であることがより好ましい。このような界面活性剤の使用量が前記下限未満では、得られる難燃加工剤のエマルジョンの安定性が不良となる傾向があり、他方、前記上限を超えると、前記難燃加工成分の繊維への付着量の低下を招き難燃性が低下する傾向がある。
【0146】
さらに、本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤においては、その性能を損なわない範囲において保護コロイド剤を併用することができる。このような保護コロイド剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、澱粉を挙げることができる。
【0147】
本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤における前記難燃加工成分の含有量は特に制限されないが、難燃加工剤の総質量に対して、20〜90質量%程度であることが好ましく、25〜60質量%程度であることがより好ましい。このような難燃加工成分の含有量が前記下限未満では、難燃加工剤の処理量を多くしないと耐久性を満足する良好な難燃性が得られない傾向があり、他方、前記上限を超えると、難燃加工剤を液状として得ることが困難になり取り扱いが難しくなる傾向がある。なお、本発明の難燃加工剤は、後述するようにポリエステル系繊維に難燃加工処理を施す際に、採用する塗布方法等に応じて、そのまま又は適宜希釈して用いることができる。
【0148】
また、本発明において、前記難燃加工成分を乳化又は分散させる方法としては、特に限定されず、例えば、乳化させる方法としては、ホモミキサーを用いて転相乳化させる方法が挙げられる。また、分散させる方法としては、例えば、ガラスビーズを用いたビーズミルにより湿式分散させる方法が挙げられる。
【0149】
さらに、本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤中における前記難燃加工成分の乳化又は分散物の平均粒径としては、0.01〜1μmであることが好ましい。乳化又は分散物の平均粒径が前記上限を超えると、ポリエステル繊維等の内部への浸透が困難となり、十分な難燃性が発現されにくくなる傾向にある。
【0150】
なお、本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤は、前記ジフェニルスルホン系化合物(A)と前記有機リン系難燃性化合物(B)とが混合された乳化又は分散物であってもよいが、前記ジフェニルスルホン系化合物(A)を含有する乳化又は分散物と前記有機リン系難燃性化合物(B)を含有する乳化又は分散物とのキットであってもよい。
【0151】
次に、本発明の難燃性ポリエステル系繊維の製造方法について説明する。
【0152】
本発明の難燃性ポリエステル系繊維の製造方法は、ポリエステル系繊維に前述の本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤を接触させる工程と、加熱により前記ジフェニルスルホン系化合物(A)及び前記有機リン系難燃性化合物(B)を前記ポリエステル系繊維に固着させる工程とを含む方法である。
【0153】
本発明で用いられるポリエステル系繊維としては、特に限定されないが、例えば、レギュラーポリエステル繊維、カチオン可染ポリエステル繊維、再生ポリエステル繊維、又はこれら2種以上からなるポリエステル繊維が挙げられる。また、このようなポリエステル繊維と綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維;レーヨン、アセテート等の半合成繊維;ナイロン、アクリル、ポリアミド等の合成繊維;炭素繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維、アスベスト繊維、金属繊維等の無機繊維;又はこれら2種以上からなる繊維との混紡により得られる複合繊維をポリエステル系繊維として用いてもよい。さらに、本発明で用いられるポリエステル系繊維の形態としては特に制限されず、糸、トウ、トップ、カセ、織物、編み物、不織布、ロープ等の形態であってもよい。
【0154】
先ず、前記難燃加工剤を前記ポリエステル系繊維に接触させる工程について説明する。この工程は、被処理材であるポリエステル系繊維に前記難燃加工剤を接触させて付着させる方法であり、例えば、浸漬法、パディング法、スプレー法、塗布法(コーティング法、プリント法)等の方法によって前記難燃加工剤をポリエステル系繊維に接触させることができる。
【0155】
なお、本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤として前記ジフェニルスルホン系化合物(A)と前記有機リン系難燃性化合物(B)とが混合された乳化又は分散物を用いる場合は、そのまま又は適宜希釈して処理液として用いられる。また、本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤として前記ジフェニルスルホン系化合物(A)を含有する乳化又は分散物と前記有機リン系難燃性化合物(B)を含有する乳化又は分散物とのキットを用いる場合は、事前に混合して処理液として用いることが好ましいが、それぞれの乳化又は分散物を処理液として用いて順次(順番はA→B、B→Aのいずれでもよい)又は同時にポリエステル系繊維に接触させるようにしてもよい。
【0156】
また、浸漬法を用いる場合には、前記難燃加工剤を含む処理液にポリエステル系繊維を浸漬して前記難燃加工剤をポリエステル系繊維に付着させることができる。また、難燃加工剤と同時に分散染料や蛍光染料を用いて染色と難燃加工剤を付着させる工程とを同時に行うこともできる。この場合、例えば、液流染色機、ビーム染色機、チーズ染色機を使用することができる。
【0157】
さらに、コーティング法を用いる場合には、前記難燃加工剤を処理に適した粘度に調整したものを用いてもよく、このような難燃加工剤を含む液体を泡状にして前記ポリエステル系繊維に付着させる泡加工コーティング法を用いてもよい。このような泡加工コーティングによれば、起泡した難燃加工剤を含む液体を必要量ポリエステル系繊維に付着させることができ、従って乾燥に要するエネルギー及び時間を大幅に短縮することができ、且つ難燃加工剤を無駄なく使用することができる。加工に適した粘度に調整するための粘度調整剤としては、特に制限されないが、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、プロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ザンタンガム、デンプン糊等が挙げられる。また、この場合、例えば、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファーコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、カーテンコーター、カレンダーコーターを使用することができる。
【0158】
また、スプレー法を用いる場合には、例えば、圧搾空気により前記難燃加工剤を含む処理液を霧状にして吹き付けるエアースプレー、液圧霧化方式のエアースプレーを使用することができる。さらに、プリント法を用いる場合には、例えば、ローラー捺染機、フラットスクリーン捺染機、ロータリースクリーン捺染機を使用することができる。
【0159】
次に、前記難燃加工成分を加熱によりポリエステル系繊維に固着せしめる工程について説明する。この工程は、前記難燃加工剤を付着させたポリエステル系繊維を熱処理して難燃加工成分をポリエステル系繊維に固着(吸尽)させる熱処理工程であり、前記難燃加工剤を付着させる工程(付着工程)を実施した後に熱処理工程を実施しても、或いは付着工程と熱処理工程とを同時に実施してもよい。
【0160】
なお、このような熱処理工程を、前記付着工程を実施した後に行う場合は、前記難燃加工剤を付着させたポリエステル系繊維を乾熱処理、飽和常圧スチーム処理、加熱スチーム処理、高圧スチーム処理等の蒸熱処理によって熱処理することができる。このような熱処理においては、熱処理温度が110℃〜210℃の範囲であることが好ましく、160℃〜210℃の範囲であることがより好ましい。熱処理温度が前記下限未満では、難燃加工成分のポリエステル系繊維への固着が不十分であり、次の工程での難燃加工成分の脱落により難燃性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えるときは、ポリエステル系繊維の変色や脆化が起こる傾向にある。また、このような熱処理においては、処理時間が10秒〜10分の範囲であることが好ましい。熱処理時間が前記下限未満では、難燃加工成分のポリエステル系繊維への固着が不十分であり、次の工程での難燃加工成分の脱落により難燃性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えるときは、ポリエステル系繊維の変色や脆化が起こる傾向にある。
【0161】
また、前記難燃加工剤を付着させたポリエステル系繊維を、浴中にて浴中熱処理を行うことができる。浴中熱処理は、染色浴中又は染料を含まない浴中にて難燃加工成分をポリエステル系繊維に固着(吸尽)せしめる処理である。このような浴中熱処理においては、熱処理温度が90〜150℃の範囲が好ましく、110℃〜140℃の範囲がより好ましい。浴中での熱処理温度が前記下限未満では、難燃加工成分が十分に吸尽されず、難燃性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとポリエステル繊維の変化や脆化が起こる傾向にある。また、このような浴中熱処理においては、処理時間が10分〜60分の範囲であることが好ましい。熱処理時間が前記下限未満では、難燃加工成分のポリエステル系繊維への吸尽が不十分であり、次の工程での難燃加工成分の脱落により難燃性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えるときは、ポリエステル系繊維の脆化が起こり易くなる傾向にある。さらに、このような浴中熱処理においては、例えば、液流染色機、ビーム染色機、チーズ染色機等を使用することができる。また、前述の乾熱処理又は蒸熱処理と前述の浴中熱処理を組み合わせて実施することもできる。これらの処理を組み合わせて実施することで、より確実に難燃加工成分をポリエステル系繊維へ吸尽させることができ、より優れた耐久性を有する難燃性ポリエステル系繊維を得ることができる傾向にある。
【0162】
また、このような熱処理工程を、前記付着工程と同時に実施する場合は、前記難燃加工剤を含む処理液にポリエステル系繊維を浸漬して難燃加工剤をポリエステル系繊維に付着しつつ又は、前記難燃加工剤と同時に分散染料や蛍光染料を用いて染色と難燃加工剤の付着とを同時に実施しつつ熱処理することができる。このような熱処理の条件(処理温度及び処理時間)は、前記浴中熱処理における条件と同様でよい。
【0163】
以上説明した本発明の難燃性ポリエステル系繊維の製造方法においては、前記ポリエステル系繊維に付与される前記難燃加工成分の量については特に制限されないが、通常は前記ポリエステル系繊維に対する前記難燃加工成分の固着量(前記ジフェニルスルホン系化合物(A)と前記有機リン系難燃性化合物(B)の合計吸尽量)が、加工前、すなわち被処理繊維の質量に対して0.5〜30%o.w.f.(on weight of fiber)であることが好ましく、1.5〜20%o.w.f.であることがより好ましい。前記難燃加工成分の固着量が前記下限未満であると、十分な難燃性が発現されにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、難燃加工成分が繊維に吸尽しきれず、繊維表面に多量に付着して風合いの低下や繊維表面の発粉が問題となる傾向にある。
【0164】
さらに、本発明の難燃性ポリエステル系繊維の製造方法においては、前記熱処理工程を実施した後に、通常の公知の方法によってポリエステル系繊維のソーピング処理を行い、ポリエステル系繊維に固着されず表面に付着しているだけの難燃加工成分を除去することが好ましい。このようなソーピング処理に用いられる洗浄剤としては、ポリエステル系繊維染色物の還元洗浄時に通常用いられる洗浄剤を用いることができ、例えば、アニオン系、非イオン系、両性系界面活性剤及びこれらが配合された洗浄剤を使用することができる。
【0165】
また、本発明の難燃性ポリエステル系繊維の製造方法においては、前記難燃加工剤の他に、従来から用いられている他の繊維用加工剤を、難燃性を損なわない程度に併用することもできる。このような繊維用加工剤としては、例えば、帯電防止剤、撥水撥油剤、防汚剤、硬仕上剤、風合調整剤、柔軟剤、抗菌剤、吸水剤、スリップ防止剤、耐光堅牢度向上剤が挙げられる。
【0166】
本発明の難燃性ポリエステル系繊維は、前述したポリエステル系繊維と、前記ポリエステル系繊維に固着(吸尽)されている前述した難燃加工成分、すなわち前記ジフェニルスルホン系化合物(A)と前記有機リン系難燃性化合物(B)とを備えるものである。このような本発明の難燃性ポリエステル系繊維は、優れた難燃性を有しており、しかもその難燃性は洗濯耐久性、特にドライクリーニング耐久性に優れている。
【実施例】
【0167】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、被処理材であるポリエステル系繊維としては以下の布帛を用い、難燃加工剤により処理されたポリエステル系繊維の難燃性(洗濯耐久性)は以下の方法により評価した。
【0168】
(1)ポリエステル系繊維
経糸としてフルダルポリエステル繊維(酸化チタン3.5質量%含有)からなる84デシテックス36フィラメントのレギュラーポリエステル繊維、緯糸として黒原着ポリエステル繊維からなる167デシテックス48フィラメントのポリエステル繊維を用いて構成され、密度が縦360本/2.54cm×横100本/2.54cmであり、両面朱子織とした織物を、通常の方法によって精練し、プレセットを施して、被処理材であるポリエステル系繊維布帛を得た。
【0169】
(2)ポリエステル系繊維の難燃性(洗濯耐久性)の評価
水洗い洗濯なしの試料として、難燃加工剤により処理されたポリエステル系繊維をそのまま用いた(「洗濯なし」)。また、水洗い洗濯した後の試料として、難燃加工剤により処理されたポリエステル繊維を、JIS L 1091に記載された方法(難燃性)に従って5回水洗い洗濯したものを用いた(「洗濯5回」)。さらに、ドライクリーニング後の試料として、難燃加工剤により処理されたポリエステル繊維を、JIS L 1018に記載された方法(難燃性)に従って5回ドライクリーニングしたものを用いた(「DC5回」)。これらの試料を用いて、以下の方法によりポリエステル系繊維の難燃性(洗濯耐久性)を評価した。
【0170】
(i)45゜ミクロバーナー法(残炎試験)
JIS L 1091に記載されているA−1法に準じて残炎時間[秒]を測定し、難燃性を評価した。
【0171】
(ii)コイル法(接炎試験)
JIS L 1091に記載されているD法に準じて各3回ずつ接炎回数[回]を測定し、難燃性を評価した。
【0172】
<難燃加工成分I(ジフェニルスルホン系化合物)の乳化分散物の調製>
4,4’−ジアリルオキシジフェニルスルホン(難燃加工成分I)40質量部と、トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド10モル付加物の硫酸エステルアンモニウム塩4質量部とを水56質量部に乳化分散せしめた。
【0173】
<難燃加工成分II(ジフェニルスルホン系化合物)の乳化分散物の調製>
2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(難燃加工成分II)40質量部と、トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド10モル付加物の硫酸エステルアンモニウム塩4質量部とを水56質量部に乳化分散せしめた。
【0174】
<難燃加工成分III(ジフェニルプロパン系化合物)の乳化分散物の調製>
4,4’−ジヒドロキシジフェニルプロパン(難燃加工成分III)40質量部と、トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド10モル付加物の硫酸エステルアンモニウム塩4質量部とを水56質量部に乳化分散せしめた。
【0175】
<難燃加工成分IV(有機リン系難燃性化合物)の乳化分散物の調製>
ビフェニルジフェニルホスフェート(難燃加工成分IV)40質量部と、トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド10モル付加物の硫酸エステルアンモニウム塩4質量部とを水56質量部に乳化分散せしめた。
【0176】
<難燃加工成分V(有機リン系難燃性化合物)の乳化分散物の調製>
レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(難燃加工成分V)40質量部と、トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド10モル付加物の硫酸エステルアンモニウム塩4質量部とを水56質量部に乳化分散せしめた。
【0177】
<難燃加工成分VI(有機リン系難燃性化合物)の乳化分散物の調製>
10−ベンジル−9,10−ジヒドロキシ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(難燃加工成分VI)40質量部と、トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド10モル付加物の硫酸エステルアンモニウム塩4質量部とを水56質量部に乳化分散せしめた。
【0178】
<難燃加工成分VII(有機リン系難燃性化合物)の乳化分散物の調製>
フェノキシメトキシホスファゼン(難燃加工成分VII)40質量部と、トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド10モル付加物の硫酸エステルアンモニウム塩4質量部とを水56質量部に乳化分散せしめた。
【0179】
<難燃加工成分VIII(有機リン系難燃性化合物)の乳化分散物の調製>
アニリノジフェニルホスフェート(難燃加工成分VIII)40質量部と、トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド10モル付加物の硫酸エステルアンモニウム塩4質量部とを水56質量部に乳化分散せしめた。
【0180】
<難燃加工成分IX(有機リン系難燃性化合物)の乳化分散物の調製>
トリフェニルホスフィンオキシド(難燃加工成分IX)40質量部と、トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド10モル付加物の硫酸エステルアンモニウム塩4質量部とを水56質量部に乳化分散せしめた。
【0181】
(実施例1)
前記被処理材であるポリエステル系繊維布帛に対して、ミニカラー染色機[(株)テクサム技研製]を使用し、以下の組成:
(i)分散染料[C.I.Disperse Blue 56]1%o.w.f.、
(ii)分散均染剤[ニッカサンソルトRM−340E、日華化学(株)製]0.5g/L、
(iii)80質量%酢酸0.3mL/L、及び
(iv)難燃加工成分Iと難燃加工成分IVの合計使用量が5%o.w.f.で、その配合比(I/IV)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤、
を含む染色浴により、浴比1:15、温度130℃の条件下で30分間処理を施した。次いで、前記の処理が施されたポリエステル系繊維に対して、ソーピング剤[エスクードFRN、日華化学(株)製]2g/L及び苛性ソーダ1g/Lを含む水溶液を用いて、80℃で20分間ソーピング処理を施し、170℃で1分間乾燥し、試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0182】
(実施例2)
難燃加工剤として、難燃加工成分Iと難燃加工成分Vの合計使用量が5%o.w.f.で、その配合比(I/V)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0183】
(実施例3)
難燃加工剤として、難燃加工成分Iと難燃加工成分VIの合計使用量が5%o.w.f.で、その配合比(I/VI)が質量比で0.01/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0184】
(実施例4)
難燃加工剤として、難燃加工成分Iと難燃加工成分VIの合計使用量が1.25%o.w.f.で、その配合比(I/VI)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0185】
(実施例5)
難燃加工剤として、難燃加工成分Iと難燃加工成分VIの合計使用量が5%o.w.f.で、その配合比(I/VI)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0186】
(実施例6)
難燃加工剤として、難燃加工成分Iと難燃加工成分VIの合計使用量が25%o.w.f.で、その配合比(I/VI)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0187】
(実施例7)
難燃加工剤として、難燃加工成分Iと難燃加工成分VIの合計使用量が50%o.w.f.で、その配合比(I/VI)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0188】
(実施例8)
難燃加工剤として、難燃加工成分Iと難燃加工成分VIの合計使用量が75%o.w.f.で、その配合比(I/VI)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0189】
(実施例9)
難燃加工剤として、難燃加工成分Iと難燃加工成分VIの合計使用量が5%o.w.f.で、その配合比(I/VI)が質量比で1.25/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0190】
(実施例10)
難燃加工剤として、難燃加工成分Iと難燃加工成分VIの合計使用量が5%o.w.f.で、その配合比(I/VI)が質量比で2/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0191】
(実施例11)
難燃加工剤として、難燃加工成分Iと難燃加工成分VIIの合計使用量が5%o.w.f.で、その配合比(I/VII)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0192】
(実施例12)
難燃加工剤として、難燃加工成分Iと難燃加工成分VIIIの合計使用量が5%o.w.f.で、その配合比(I/VIII)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0193】
(実施例13)
難燃加工剤として、難燃加工成分Iと難燃加工成分IXの合計使用量が5%o.w.f.で、その配合比(I/IX)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0194】
(実施例14)
難燃加工剤として、難燃加工成分IIと難燃加工成分IVの合計使用量が5%o.w.f.で、その配合比(II/IV)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0195】
(実施例15)
難燃加工剤として、難燃加工成分IIと難燃加工成分Vの合計使用量が5%o.w.f.で、その配合比(II/V)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0196】
(実施例16)
難燃加工剤として、難燃加工成分IIと難燃加工成分VIの合計使用量が5%o.w.f.で、その配合比(II/VI)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0197】
(実施例17)
難燃加工剤として、難燃加工成分IIと難燃加工成分VIIの合計使用量が5%o.w.f.で、その配合比(II/VII)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0198】
(実施例18)
難燃加工剤として、難燃加工成分IIと難燃加工成分VIIIの合計使用量が5%o.w.f.で、その配合比(II/VIII)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0199】
(実施例19)
難燃加工剤として、難燃加工成分IIと難燃加工成分IXの合計使用量が5%o.w.f.で、その配合比(II/IX)が質量比で0.01/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0200】
(実施例20)
難燃加工剤として、難燃加工成分IIと難燃加工成分IXの合計使用量が1.25%o.w.f.で、その配合比(II/IX)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0201】
(実施例21)
難燃加工剤として、難燃加工成分IIと難燃加工成分IXの合計使用量が5%o.w.f.で、その配合比(II/IX)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0202】
(実施例22)
難燃加工剤として、難燃加工成分IIと難燃加工成分IXの合計使用量が25%o.w.f.で、その配合比(II/IX)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0203】
(実施例23)
難燃加工剤として、難燃加工成分IIと難燃加工成分IXの合計使用量が50%o.w.f.で、その配合比(II/IX)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0204】
(実施例24)
難燃加工剤として、難燃加工成分IIと難燃加工成分IXの合計使用量が75%o.w.f.で、その配合比(II/IX)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0205】
(実施例25)
難燃加工剤として、難燃加工成分IIと難燃加工成分IXの合計使用量が5%o.w.f.で、その配合比(II/IX)が質量比で1.25/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0206】
(実施例26)
難燃加工剤として、難燃加工成分IIと難燃加工成分IXの合計使用量が5%o.w.f.で、その配合比(II/IX)が質量比で2/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0207】
(比較例1)
難燃加工組成物を使用しなかった以外は実施例1と同様にして試料とするポリエステル系繊維を得た。
【0208】
(比較例2)
難燃加工剤として難燃加工成分IVのみを使用し、その使用量が5%o.w.f.となるようにした以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0209】
(比較例3)
難燃加工剤として難燃加工成分Vのみを使用し、その使用量が5%o.w.f.となるようにした以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0210】
(比較例4)
難燃加工剤として難燃加工成分VIのみを使用し、その使用量が5%o.w.f.となるようにした以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0211】
(比較例5)
難燃加工剤として難燃加工成分VIIのみを使用し、その使用量が5%o.w.f.となるようにした以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0212】
(比較例6)
難燃加工剤として難燃加工成分VIIIのみを使用し、その使用量が5%o.w.f.となるようにした以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0213】
(比較例7)
難燃加工剤として難燃加工成分IXのみを使用し、その使用量が5%o.w.f.となるようにした以外は実施例1と同様にして試料とする難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0214】
(比較例8)
難燃加工剤として難燃加工成分Iのみを使用し、その使用量が5%o.w.f.となるようにした以外は実施例1と同様にして試料とするポリエステル系繊維を得た。
【0215】
(比較例9)
難燃加工剤として難燃加工成分IIのみを使用し、その使用量が5%o.w.f.となるようにした以外は実施例1と同様にして試料とするポリエステル系繊維を得た。
【0216】
(比較例10)
難燃加工剤として難燃加工成分IIIのみを使用し、その使用量が5%o.w.f.となるようにした以外は実施例1と同様にして試料とするポリエステル系繊維を得た。
【0217】
(比較例11)
難燃加工剤として、難燃加工成分IIIと難燃加工成分IVの合計使用量が5%o.w.f.で、その配合比(III/IV)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とするポリエステル系繊維を得た。
【0218】
(比較例12)
難燃加工剤として、難燃加工成分IIIと難燃加工成分Vの合計使用量が5%o.w.f.で、その配合比(III/V)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とするポリエステル系繊維を得た。
【0219】
(比較例13)
難燃加工剤として、難燃加工成分IIIと難燃加工成分VIの合計使用量が5%o.w.f.で、その配合比(III/VI)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とするポリエステル系繊維を得た。
【0220】
(比較例14)
難燃加工剤として、難燃加工成分IIIと難燃加工成分VIIの合計使用量が5%o.w.f.で、その配合比(III/VII)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とするポリエステル系繊維を得た。
【0221】
(比較例15)
難燃加工剤として、難燃加工成分IIIと難燃加工成分VIIIの合計使用量が5%o.w.f.で、その配合比(III/VIII)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とするポリエステル系繊維を得た。
【0222】
(比較例16)
難燃加工剤として、難燃加工成分IIIと難燃加工成分IXの合計使用量が5%o.w.f.で、その配合比(III/IX)が質量比で0.65/1となるように前記乳化分散物を混合した難燃加工剤を用いた以外は実施例1と同様にして試料とするポリエステル系繊維を得た。
【0223】
実施例1〜26及び比較例1〜16で得られた各(難燃性)ポリエステル系繊維について、前述の方法により難燃性を評価した。得られた結果を表1及び表2に示す。
【0224】
【表1】

【0225】
【表2】

【0226】
表1及び表2に示した結果から明らかなように、本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤を用いて得られたポリエステル系繊維(実施例1〜26)は、有機リン系難燃性化合物のみを難燃加工剤として用いて得られたもの(比較例2〜7)や、ジフェニルスルホン系化合物又はジフェニルプロパン系化合物のみを難燃加工剤として用いて得られたもの(比較例8〜10)や、ジフェニルプロパン系化合物と有機リン系難燃性化合物とを組み合わせて難燃加工剤として用いて得られたもの(比較例11〜16)に比べて、高い難燃性を有しており、しかもその難燃性は洗濯及びドライクリーニングを実施した後でも十分に維持されることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0227】
以上説明したように、本発明によれば、ポリエステル系繊維に対して洗濯耐久性に優れた難燃性を付与することを可能とし、特に難燃化の困難なレギュラーポリエステル繊維とカチオン可染ポリエステル繊維との複合繊維に対しても洗濯耐久性に優れた難燃性を付与できるポリエステル系繊維用難燃加工剤、並びに洗濯耐久性に優れた難燃性を有するポリエステル系繊維及びその製造方法を提供することが可能となる。
【0228】
したがって、本発明の難燃加工剤を用いて得られた本発明のポリエステル系繊維は、優れた難燃性を有しており、しかもその難燃性は洗濯耐久性、特にドライクリーニング耐久性に優れているため、衣料、寝装具、カーテン、ロールカーテン、シート、シートカバー、緞帳、壁クロス、天井クロス、カーペット、テント、養生シート等の様々な用途に好適に用いることができ、特に、頻繁に洗濯やドライクリーニングを行う用途に最適である。
【0229】
また、本発明のポリエステル系繊維用難燃加工剤においてはハロゲン化合物を難燃加工成分として用いていないため、難燃加工された繊維製品を廃棄焼却する際等にダイオキシン等の有害ガスや難分解性の残渣の発生を十分に防止することができる。さらに、本発明によれば、河川富栄養化の原因物質の一つであるリン系難燃性化合物の使用量の削減にも寄与することができるため、本発明は環境保全の観点からも非常に有用な技術である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]で表されるジフェニルスルホン系化合物(A)と有機リン系難燃性化合物(B)とを難燃加工成分として含有することを特徴とするポリエステル系繊維用難燃加工剤。
【化1】

(式[1]中、R、R、R、Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ−H,−OH,−NH,−COOH,−O(CHCHO)H[nは1〜5の整数],−CHCH=CH,−O−CHCH=CH,−OCH(CH)CH及び−OCHからなる群から選択されるいずれかを表す。)
【請求項2】
前記有機リン系難燃性化合物(B)が、下記一般式[2]で表されるリン酸エステル、下記一般式[3]で表される芳香族ホスフェート、下記一般式[4]で表される第一の芳香族リン化合物、下記一般式[6]で表される第二の芳香族リン化合物、前記第二の芳香族リン化合物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩及びアミン塩、下記一般式[8]で表されるホスファゼン化合物、下記一般式[9]で表される第一のリン酸アミド化合物、下記一般式[10]で表される第二のリン酸アミド化合物、下記一般式[11]で表される第三のリン酸アミド化合物、並びに下記式[12]で表されるトリフェニルホスフィンオキシドからなる群から選択される少なくとも一つのリン化合物であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル系繊維用難燃加工剤。
【化2】

(式[2]中、R、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基からなる群から選択されるいずれかを表す。)
【化3】

(式[3]中、R、R、R10及びR11は同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよいアリール基を表し、R12は炭素数1〜10のアルキレン基及び置換基を有していてもよいアリーレン基からなる群から選択されるいずれかを表し、mは1〜20の整数を表す。)
【化4】

〔式[4]中、R13は炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、−OH基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基及び下記一般式[5]:
【化5】

(式[5]中、R14は水素原子、炭素数1〜24のアルキル基及び炭素数5〜6の脂環アルキル基からなる群から選択されるいずれかを表す。)
で表される基からなる群から選択されるいずれかを表す。〕
【化6】

〔式[6]中、R15は炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、−OH基、炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基及び下記一般式[7]:
【化7】

(式[7]中、R16は水素原子、炭素数1〜24のアルキル基及び炭素数5〜6の脂環アルキル基からなる群から選択されるいずれかを表す。)
で表される基からなる群から選択されるいずれかを表す。〕
【化8】

(式[8]中、R17及びR18は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基及び置換基を有していてもよいアリール基からなる群から選択されるいずれかを表し、kは3〜10の整数を表す。)
【化9】

(式[9]中、R21及びR22は同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよいアリール基を表し、R19及びR20は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基及び置換基を有していてもよいアラルキル基からなる群から選択されるいずれかを表し、R19及びR20は相互に結合してリン原子に結合している窒素原子と共に環を形成していてもよい。)
【化10】

(式[10]中、R27は置換基を有していてもよいアリール基を表し、R23、R24、R25及びR26は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基及び置換基を有していてもよいアラルキル基からなる群から選択されるいずれかを表し、R23及びR24或いはR25及びR26は相互に結合してリン原子に結合している窒素原子と共に環を形成していてもよい。)
【化11】

(式[11]中、R28、R29、R30、R31、R32及びR33は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数5〜6の脂環アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基及び置換基を有していてもよいアラルキル基からなる群から選択されるいずれかを表し、R28及びR29、R30及びR31、或いはR32及びR33は相互に結合してリン原子に結合している窒素原子と共に環を形成していてもよい。)
【化12】

【請求項3】
前記ジフェニルスルホン系化合物(A)と前記有機リン系難燃性化合物(B)との配合比(A:B)が質量比で0.01:1〜1.25:1であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル系繊維用難燃加工剤。
【請求項4】
ポリエステル系繊維に請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のポリエステル系繊維用難燃加工剤を接触させる工程と、加熱により前記ジフェニルスルホン系化合物(A)及び前記有機リン系難燃性化合物(B)を前記ポリエステル系繊維に固着させる工程とを含むことを特徴とする難燃性ポリエステル系繊維の製造方法。
【請求項5】
ポリエステル系繊維と、
前記ポリエステル系繊維に難燃加工成分として固着されている、下記一般式[1]で表されるジフェニルスルホン系化合物(A)と有機リン系難燃性化合物(B)とを備えることを特徴とする難燃性ポリエステル系繊維。
【化13】

(式[1]中、R、R、R、Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ−H,−OH,−NH,−COOH,−O(CHCHO)H[nは1〜5の整数],−CHCH=CH,−O−CHCH=CH,−OCH(CH)CH及び−OCHからなる群から選択されるいずれかを表す。)

【公開番号】特開2009−270213(P2009−270213A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120594(P2008−120594)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】