説明

ポリエステル繊維製品

【課題】各種スポーツウェアのインナーや作業用衣服等の服地として、或いはカーテン生地等として有利に用いられ得る、耐洗濯性に優れたポリエステル繊維製品を提供すること。
【解決手段】ポリエステル基布の少なくとも一方の面にフッ素系樹脂からなる樹脂層を設け、かかる樹脂層の表面に、スパッタリング法に従ってステンレス、クロム又はチタンからなる金属層を設けることによって、目的とするポリエステル繊維製品を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル繊維製品に係り、特に、各種スポーツウェアのインナーや作業用衣服等の服地として、或いはカーテン生地等として、有利に用いられ得るポリエステル繊維製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種スポーツウェアのインナーや作業用衣服、或いはカーテン等に対しては、それらの使用態様や使用環境等に対応すべく、他の一般的な衣服等と比較して、より優れた遮熱性や保湿性等が求められている。このため、作業用衣服等の服地や生地として用いられる繊維製品や、かかる繊維製品を構成する繊維として、表面に金属の薄膜や層(以下、金属層という)が各種手法に従って形成されてなる繊維製品等が提案され、使用されている。
【0003】
その一方、表面に金属層が設けられてなる繊維製品については、洗濯を繰り返すことによって金属層が剥離(繊維製品表面から金属が脱落)してしまい、使用するにつれて遮熱性等が低下し、商品価値が低下するという問題を内在していることが知られている。
【0004】
そのような状況の下、洗濯を繰り返すことによっても金属層が剥離せず、その結果、遮熱性等が長期間に亘って発揮される繊維製品、換言すれば耐洗濯性に優れた繊維製品、及びかかる繊維製品の製造方法についての開発が進められているのであり、従来より様々なものが提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1(特許第3232751号公報)においては、有機系基材の表面にシリコーン系樹脂を付与し、その上からプラズマ処理を施し、プラズマ処理面上に金属又は無機物を有する薄膜を蒸着することを特徴とする蒸着製品の製造方法が提案されている。
【0006】
また、特許文献2(特開平10−266068号公報)においては、ポリエステル布帛の表面の少なくとも一部に、少なくとも酸化されたシリコーン系樹脂とメラミン系樹脂を含む中間剤を介して、金属又は無機物を有する蒸着薄膜を備えていることを特徴とする蒸着布帛が提案されている。
【0007】
さらに、特許文献3(特開平6−146166号公報)においては、防炎性を有する布帛に、溶剤型アクリル樹脂、溶剤型ウレタン樹脂、又はこれらの併用樹脂と、鱗片状アルミニウム微粒子とからなる樹脂液に、シランカップリング剤を配合してコーティングすることを特徴とする遮熱性布帛の製造方法が提案されている。
【0008】
しかしながら、用途の多様化や高品質化の要求が高まっている現状において、上述した繊維製品やその製造方法について、本発明者等が鋭意、検討したところ、従来の耐洗濯性に優れた繊維製品にあっては、ある程度の耐洗濯性は発揮するものの、十分なものとは言い難く、未だ改良の余地が残されていることが判明したのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3232751号公報
【特許文献2】特開平10−266068号公報
【特許文献3】特開平6−146166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここにおいて、本発明はかかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、各種スポーツウェアのインナーや作業用衣服等の服地として、或いはカーテン生地等として有利に用いられ得る、耐洗濯性に優れたポリエステル繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、本発明は、そのような課題を有利に解決するために、ポリエステル基布の少なくとも一方の面にフッ素系樹脂からなる樹脂層が設けられており、かかる樹脂層の表面に、スパッタリング法に従ってステンレス、クロム又はチタンからなる金属層が設けられていることを特徴とするポリエステル繊維製品を、その要旨とするものである。
【0012】
なお、そのような本発明に従うポリエステル繊維製品においては、好ましくは、前記樹脂層の表面に対して低圧プラズマ処理が施されている。
【0013】
また、本発明に係るポリエステル繊維製品は、望ましくは、前記低圧プラズマ処理が、0.1〜5.0Paの酸素、アルゴンガス、窒素ガス、又はそれらのうちの二種以上からなる混合ガス雰囲気下において実施されたものである。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明に従うポリエステル繊維製品にあっては、ポリエステル基布と、最外層たる所定の金属(ステンレス、クロム又はチタン)からなる金属層との間に、フッ素系樹脂からなる樹脂層が設けられているところから、ポリエステル基布に対する金属層の密着性が効果的に向上せしめられて、度重なる洗濯によっても金属層が剥離し難いものとなっているのであり、優れた耐洗濯性を発揮することとなるのである。
【0015】
特に、スパッタリング法に従って金属層を設ける前に、樹脂層の表面に対して、予め低圧プラズマ処理、特に0.1〜5.0Paの酸素、アルゴンガス、窒素ガス、又はそれらのうちの二種以上からなる混合ガス雰囲気下における低圧プラズマ処理を施すことによって、得られるポリエステル繊維製品は、より優れた耐洗濯性を発揮するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に従うポリエステル繊維製品の一例を示す部分断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を適宜、参酌しながら、本発明を具体的に説明する。
【0018】
図1には、本発明に従うポリエステル繊維製品の代表的な一実施形態が、その厚さ方向の断面において概略的に示されている。かかる図1において、ポリエステル繊維製品2は、ポリエステル基布4の一方の面上に、基布側から外側に向かって、順に、フッ素系樹脂からなる樹脂層6と、最外層である金属層8が、各々、所定の厚さで一体的に形成されている。
【0019】
なお、ポリエステル基布4としては、一般に服地やカーテン生地等として用いられるシート状物であってポリエステル製のものであれば、如何なるものであっても使用可能である。具体的には、ポリエステル繊維で構成された織物や編布、ポリエステルフィルム等を、例示することが出来る。
【0020】
本発明において用いられるポリエステル基布4の厚さは、通常、40〜1000μmである。また、ポリエステル基布が織物である場合には、かかる織物を構成するポリエステル糸としては、線径が10〜1000デニール(d)のものが用いられる。
【0021】
そして、本発明に係るポリエステル繊維製品2においては、ポリエステル基布4と金属層8との間に、フッ素系樹脂からなる樹脂層6が設けられているところに、大きな特徴が存するのである。即ち、かかる所定の樹脂からなる樹脂層6が設けられていることによって、この樹脂層6とポリエステル基布4及び金属層8とが強固に密着し、度重なる洗濯によっても、金属層8がポリエステル繊維製品2から剥離し難くなっているのであり、以て、本発明のポリエステル繊維製品2は、優れた耐洗濯性を発揮することとなるのである。
【0022】
そのようなポリエステル繊維製品2を作製するに際しては、準備したポリエステル基布4に対して、先ず、フッ素系樹脂からなる樹脂層6が設けられる。かかる樹脂層6を設ける際の手法としては、フッ素系樹脂からなる樹脂層6を作製可能なものであれば、従来より公知の各種手法の何れをも採用することが可能である。それらの中でも、特に、フッ素系撥水剤等と称して市販されているフッ素系樹脂を用いて(必要に応じて水又は有機溶媒を用いて)、処理液を調製し、かかる処理液をポリエステル基布4の表面に塗布する手法が、有利に採用される。
【0023】
本発明において用いられるフッ素系樹脂としては、一般にフッ素系撥水剤等と称して市販されているものの中から、ポリエステル基布4の種類や目的とするポリエステル繊維製品2の特性等に応じたものが適宜、選択されて、使用される。フッ素系撥水剤としては、旭硝子株式会社製のアサヒガード(商品名)、日華化学工業株式会社製のNKガードSシリーズ(商品名)、大原パラジウム株式会社製のパラガード(商品名)等を、例示することが出来る。本発明においては、特に、下記構造式で表わされるフッ素系樹脂を含有するフッ素系撥水剤:アサヒガードGS-10 (旭硝子株式会社製)が有利に用いられる。
【化1】

【0024】
フッ素系樹脂を含む処理液をポリエステル基布4の表面に塗布する手法としては、従来より公知の各種手法を採用することが出来、例えば、処理液中にポリエステル基布4を所定時間、浸漬せしめるディップ法等が有利に用いられる。また、ポリエステル基布4の表面に処理液を塗布した後は、通常、加熱処理を施すことにより、処理液に含まれるフッ素系樹脂を硬化せしめる。更に、本発明の樹脂層6は、単位面積当たりのフッ素系樹脂の付着量が0.1〜100.0g/m2 となるように作製される。付着量が0.1g/m2 未満の場合には、金属層8の密着性の向上を有利に図り得ない恐れがあり、その一方、付着量が100.0g/m2 を超えても、金属層8の密着性はさほど向上せず、徒にコストだけが増加し、経済的ではないからである。ここで、フッ素系樹脂の付着量は、樹脂層形成の前後においてポリエステル基布の重量を電子天秤により測定し、下記式に従って算出されるものである。尚、下記式におけるS(ポリエステル基布の表面積)は、例えばディップ法等のように結果的にポリエステル基布の両面(表面及び裏面)に樹脂層が形成される場合には、Sは基布全体の表面積(表面の面積+裏面の面積)であり、塗布ロール等にてポリエステル基布の一方の面(表面又は裏面)のみに樹脂層が形成される場合には、かかる樹脂層が形成された面(表面又は裏面)の面積がSとなる。
[フッ素系樹脂の付着量(g/m2 )]=(A−B)/S
但し、Aは樹脂層形成後のポリエステル基布の重量(g)、
Bは樹脂層形成前のポリエステル基布の重量(g)、
Sはポリエステル基布の表面積(cm2 )である。
【0025】
なお、図1に示すポリエステル繊維製品2において、樹脂層6は、ポリエステル基布4の一方の表面(図1においては、ポリエステル基布4の上面)にのみ形成されているが、本発明が、かかる図1に示す如き態様のポリエステル繊維製品に限定されないことは、言うまでもないところである。具体的には、図1に示す如きポリエステル基布の表面に樹脂層及び金属層が設けられているだけではなく、その裏面(ポリエステル基布の下面)に樹脂層が設けられているものや、かかる樹脂層の表面に更に金属層が設けられているものであっても、本発明の範疇に含まれる。
【0026】
次いで、フッ素系樹脂からなる樹脂層6の表面に、スパッタリング法に従ってステンレス、クロム又はチタンからなる金属層8が設けられることとなるが、本発明においては、金属層8を設ける前に、樹脂層6の表面10に対して低圧プラズマ処理を施すことが望ましい。樹脂層6の表面10に対して低圧プラズマ処理を施した後に金属層8を設けることにより、得られるポリエステル繊維製品2においては、金属層8の密着性がより強固なものとなり、より優れた耐洗濯性を発揮することとなるからである。
【0027】
ここで、低圧プラズマ処理とは、一般に、低圧下(真空下)においてプラズマを発生させ、このプラズマによって目的物の表面を改質するものである。本発明において、樹脂層6の表面10に対して低圧プラズマ処理を実施する際の条件は、樹脂層6の種類やプラズマ発生装置の出力等に応じて適宜に決定されることとなるが、好ましくは、0.1〜5.0Paの酸素、アルゴンガス、窒素ガス、又はそれらのうちの二種以上からなる混合ガス雰囲気下において実施される。かかる条件を採用することによって、金属層8の密着性を効果的に向上せしめ得ると共に、低圧プラズマ処理の後、後述するスパッタリング加工へ連続的に移行することが可能ならしめられ、ポリエステル繊維製品2を効率良く製造することが出来るからである。
【0028】
そして、本発明においては、(低圧プラズマ処理が施された)樹脂層6の表面10に対して、スパッタリング法に従って、ステンレス、クロム又はチタンからなる金属層8が設けられるのである。
【0029】
かかる金属層8を形成する際のスパッタリング法としては、直流マグネトロンスパッタリング法、高周波マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法等を、用いることが出来る。スパッタリング法は、一般に行なわれているDC電源によるマグネトロンスパッタリング法で可能であるが、AC電源やパルス電源によるスパッタリングを行なうことにより、スパッタリングが長期に亘って安定し、また、高出力の印加が可能となる。なお、米国のBOC社のC−MAG、独国のライボルト社、アルデンヌ社のツインマグ(デュアルマグ)によっても、本発明の金属層8を形成することが可能である。
【0030】
なお、上述したスパッタリング法に従う金属層8の形成は、バッチ方式、或いはロール・ツー・ロール方式の何れにおいても可能であるが、生産性に優れ、製造コストを低く抑えることが出来るロール・ツー・ロール方式が有利に採用される。
【0031】
また、金属層8は、単位面積当たりの金属(ステンレス、クロム又はチタン)の付着量が1.0〜1000.0μg/cm2 となるように作製される。付着量が1.0μg/cm2 未満の場合には、金属層8を設けることにより遮熱性や保湿性の向上等を有利に図り得ない恐れがあり、その一方、付着量が1000.0μg/cm2 を超えても、遮熱性等はさほど向上せず、徒にコストだけが増加し、経済的ではないからである。尚、ステンレス、クロム又はチタンの付着量は、蛍光X線分析によって測定されるものを意味する。
【0032】
そして、以上の如くして得られたポリエステル繊維製品2にあっては、ポリエステル基布4と金属層8との間に、フッ素系樹脂からなる樹脂層6が設けられているところから、金属層8の密着性がより強固なものとなっているのである。従って、度重なる洗濯によっても金属層8が剥離し難く、優れた耐洗濯性を発揮するのであって、金属層8による遮熱効果や保湿効果等を長期間に亘って享受し得ることとなるのである。
【実施例】
【0033】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には、上述の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0034】
なお、以下の実施例及び比較例においては、ポリエステル基布として、ポリエステルツイル[縦糸:(太さ:150d、67本/inch)、横糸:(太さ:300d、50本/inch)、目付け:132g/m2 ]を用いた。また、樹脂層を構成するフッ素系樹脂の付着量は前述した手法に従って算出し、金属層を構成するステンレス、クロム又はチタンの付着量は蛍光X線分析によって測定したものである。
【0035】
更に、得られたポリエステル繊維製品について、洗濯耐久試験前後の金属量を測定し、製品表面に残存する金属量の割合(金属残存率)を算出することにより、耐洗濯性を評価した。具体的には、得られたポリエステル繊維製品を、電気洗濯機法(JIS−L−0217、洗い方103)に従って洗濯した。かかる洗濯の後、試料を自然乾燥し、その後に再度、洗濯を行ない、合計10回、洗濯を繰り返して行なった(洗濯耐久試験)。洗濯耐久試験の前後において、試料表面の蛍光X線分析を行い、金属量を測定した。尚、ステンレスからなる金属層については、ステンレスに最も多く含まれる鉄の量(鉄付着量)を測定した。そして、下記式より金属残存率(%)を算出した。この金属残存率は、数値が大きいほど耐洗濯性に優れていることを意味するものである。各ポリエステル繊維製品の耐洗濯性を、金属残存率が95%以上の場合には◎と、85%以上95%未満の場合には○と、85%未満の場合には△と、それぞれ評価した。以下の実施例及び比較例において得られた各ポリエステル繊維製品の金属残存率及び耐洗濯性の評価結果を、下記表1に示す。
[金属残存率(%)]
={試験後の単位面積当たりの鉄付着量/試験前の単位面積当たりの鉄付着量}
×100
【0036】
−実施例1−
先ず、ポリエステル基布を、所定濃度のフッ素系樹脂(フッ素系撥水剤、商品名:アサヒガードGS-10 、旭硝子株式会社製)及び架橋剤(商品名:メイカネートWEB 、明成化学工業株式会社製)の水溶液に1秒間、浸漬した後、130℃で90秒間、加熱処理を施して、フッ素系樹脂を硬化させることにより、ポリエステル基布の表面にフッ素系樹脂からなる樹脂層を設けた。尚、かかる樹脂層を構成するフッ素系樹脂の付着量は5.2g/m2 であった。
【0037】
次いで、樹脂層が形成されたポリエステル基布を真空チャンバ内にセットし、このチャンバ内を一旦、真空度:7×10-3Paまで真空排気した後、25sccmの酸素ガスを導入して、チャンバ内をガス圧力:1.5Paに調整した。そして、13.56MHzの高周波電力:200Wを1分間、印加することにより、樹脂層の表面に対して低圧プラズマ処理を施した。
【0038】
そのような低圧プラズマ処理の後、再度、ポリエステル基布を再度、同装置内にセットし、このチャンバ内を一旦、真空度:7×10-3Paまで真空排気した後、28sccmのアルゴンガスを導入して、チャンバ内をガス圧力:1.9Paに調整した。そして、ターゲット材としてステンレス鋼(SUS310S )を用いて、13.56MHzの高周波電力:450Wを1分間、印加してスパッタリングを実施することにより、図1に示す如き構成のポリエステル繊維製品を得た。尚、樹脂層の表面に形成されたステンレスからなる金属層において、ステンレスの付着量は30.5μg/cm2 であった。
【0039】
−実施例2−
樹脂層を構成するフッ素系樹脂の付着量を3.5g/m2 にした以外は実施例1と同様の条件に従い、ポリエステル繊維製品を作製した。尚、樹脂層の表面に形成されたステンレスからなる金属層において、ステンレスの付着量は30.4μg/cm2 であった。
【0040】
−実施例3−
樹脂層の表面に対して低圧プラズマ処理を実施しなかったことを除いては実施例1と同様の条件に従い、ポリエステル繊維製品を作製した。尚、樹脂層の表面に形成されたステンレスからなる金属層において、ステンレスの付着量は30.1μg/cm2 であった。
【0041】
−実施例4−
ステンレスの付着量が約0.5倍となるようにスパッタリングの条件を変更した以外は実施例1と同様にして、ポリエステル繊維製品を作成した。尚、樹脂層の表面に形成されたステンレスからなる金属層において、ステンレスの付着量は14.2μg/cm2 であった。
【0042】
−実施例5−
ステンレスの付着量が約1.7倍となるようにスパッタリングの条件を変更した以外は実施例1と同様にして、ポリエステル繊維製品を作成した。尚、樹脂層の表面に形成されたステンレスからなる金属層において、ステンレスの付着量は50.3μg/cm2 であった。
【0043】
−実施例6−
スパッタリングのターゲット材として、ステンレス鋼(SUS310S )に代えてクロムを用いた以外は実施例1と同様にして、ポリエステル繊維製品を作成した。尚、樹脂層の表面に形成されたクロムからなる金属層において、クロムの付着量は29.8μg/cm2 であった。
【0044】
−実施例7−
スパッタリングのターゲット材として、ステンレス鋼(SUS310S )に代えてチタンを用いた以外は実施例1と同様にして、ポリエステル繊維製品を作成した。尚、樹脂層の表面に形成されたチタンからなる金属層において、チタンの付着量は30.3μg/cm2 であった。
【0045】
−比較例1−
樹脂層を設けなかったこと及び低圧プラズマ処理を実施しなかったことを除いては実施例1と同様の条件に従い、ポリエステル繊維製品を作製し、耐洗濯性を評価した。
【0046】
【表1】

【0047】
かかる表1の結果からも明らかなように、本発明に従うポリエステル繊維製品にあっては、優れた耐洗濯性を発揮するものであることが認められたのである。
【符号の説明】
【0048】
2 ポリエステル繊維製品 4 ポリエステル基布
6 樹脂層 8 金属層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル基布の少なくとも一方の面にフッ素系樹脂からなる樹脂層が設けられており、かかる樹脂層の表面に、スパッタリング法に従ってステンレス、クロム又はチタンからなる金属層が設けられていることを特徴とするポリエステル繊維製品。
【請求項2】
前記樹脂層の表面に対して低圧プラズマ処理が施されている請求項1に記載のポリエステル繊維製品。
【請求項3】
前記低圧プラズマ処理が、0.1〜5.0Paの酸素、アルゴンガス、窒素ガス、又はそれらのうちの二種以上からなる混合ガス雰囲気下において実施されたものである請求項2に記載のポリエステル繊維製品。


【図1】
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【公開番号】特開2011−241484(P2011−241484A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111955(P2010−111955)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(591158335)積水ナノコートテクノロジー株式会社 (20)
【Fターム(参考)】