説明

ポリエステル製造用重縮合触媒とその製造方法とこれを用いるポリエステルの製造方法

【課題】アンチモンを含まないながら、すぐれた触媒活性を有し、色相と透明性にすぐれるポリエステルを与えるポリエステル製造用重縮合触媒の製造方法と、そのような重縮合触媒と、そのような重縮合触媒を用いるポリエステルの製造方法を提供する。
【解決手段】エステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステル製造用触媒の製造方法であって、固体塩基粒子を分散させた有機溶媒中にて有機チタン化合物を加水分解して、上記固体塩基粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成する(第1の方法)。
固体塩基粒子を分散させた上記溶媒中にて有機ケイ素化合物及び/又は有機アルミニウム化合物及び/又は有機ジルコニウム化合物を加水分解して、ケイ素、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物又はケイ素、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも2種の元素の複合酸化物からなる内側被覆層を形成し、次いで、上述したようにして、上記内側被覆層上にチタン酸からなる外側被覆層を形成する(第2の方法)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル製造用重縮合触媒とその製造方法とこれを用いるポリエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等に代表されるポリエステルは、機械的特性と化学的特性にすぐれており、それぞれの特性に応じて、例えば、衣料用や産業資材用の繊維、包装用や磁気テープ用等のフィルムやシート、中空成形品であるボトル、電気、電子部品のケーシング、その他の種々の成形品や部品等の広範な分野において用いられている。
【0003】
代表的なポリエステルである芳香族ジカルボン酸成分とアルキレングリコール成分を主たる構成成分とするポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸とエチレングリコールとのエステル化反応や、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとのエステル交換によってビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)とこれを含むオリゴマーを製造し、これを重縮合触媒の存在下に真空中、高温下に溶融重縮合させることによって製造されている。
【0004】
従来、このようなポリエステル製造用重縮合触媒としては、三酸化アンチモンが広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。三酸化アンチモンは、安価ですぐれた触媒活性をもつ触媒であるが、重縮合時に金属アンチモンが析出して、得られるポリエステルが黒ずみ、また、得られるポリエステルに異物が混入するという問題があるほか、本来、毒性を有するという問題があるので、近年においては、アンチモンを含まない触媒の開発が望まれている。
【0005】
そこで、例えば、すぐれた触媒活性を有し、色相と熱安定性にすぐれるポリエステルを与える触媒として、ゲルマニウム化合物からなる触媒が知られているが、この触媒は非常に高価であるのみならず、重合中に反応系から外へ留出しやすいので、反応系の触媒濃度が経時的に変化し、重合の制御が困難になるという問題を有している。
【0006】
他方、グリコールチタネート等の有機チタン化合物をジメチルテレフタレートとエチレングリコールとのエステル交換によるポリエステル製造用重縮合触媒として用いることができることが既に知られている。例えば、テトラアルコキシチタネートからなる重縮合触媒が知られているが(特許文献3参照)、得られるポリエステルが溶融成形時に熱劣化して、着色しやすいという問題がある。
【0007】
そこで、近年、チタン化合物を重縮合触媒として用いて、高品質のポリエステルを高生産性にて製造する方法が種々、提案されている。例えば、ハロゲン化チタンやチタンアルコキシドを加水分解してチタン水酸化物を得、これを30〜350℃の温度で加熱して、脱水、乾燥し、かくして得られる固体状のチタン化合物を重縮合触媒として用いることが提案されている(例えば、特許文献4及び5参照)。
【0008】
しかし、上記記載の重縮合触媒の製法は、いずれも乾燥、粉砕を経て得られるものであり、その結果、少なからず粒子凝集が発生し、反応中の触媒分散性を悪化することから、本来の触媒性能を発揮できないことがあり、そして得られるポリエステルは、溶融成形時に熱劣化して、着色しやすく、また、透明性に劣る傾向があった。
【特許文献1】特公昭46−3395号公報
【特許文献2】特開昭49−57092号公報
【特許文献3】アメリカ特許第5596069号明細書
【特許文献4】特開2001−064377号公報
【特許文献5】特開2001−114885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、従来のポリエステル製造用重縮合触媒における上述した問題を解決するために鋭意研究した結果、固体塩基粒子を分散させた有機溶媒中、好ましくは、脂肪族一価アルコール及び脂肪族二価アルコールから選ばれる少なくとも1種の有機溶媒中にて、有機チタン化合物を加水分解して、上記固体塩基粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成させ、これをポリエステル製造用重縮合触媒として用いることによって、ポリエステルの製造時、分解が抑制されて、触媒を構成する金属元素(チタン)の単位重量当たり、高い重合活性にて高分子量のポリエステルを与え、しかも、このポリエステルは、溶融成形時、熱劣化による着色が殆どないことを見出して、本発明に至ったものである。
【0010】
従って、本発明は、アンチモンを含まないながら、すぐれた触媒活性を有し、色相と透明性にすぐれるポリエステルを与えるポリエステル製造用重縮合触媒の製造方法と、そのような重縮合触媒と、そのような重縮合触媒を用いるポリエステルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステル製造用触媒の製造方法であって、固体塩基粒子を分散させた有機溶媒中にて、有機チタン化合物を加水分解して、上記固体塩基粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成することを特徴とする製造方法が提供される。以下、この製造方法を本発明の第1の方法という。
【0012】
更に、本発明によれば、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステル製造用触の製造方法であって、固体塩基粒子を分散させた有機溶媒中にて、有機ケイ素化合物及び/又は有機アルミニウム化合物及び/又は有機ジルコニウム化合物を加水分解して、ケイ素、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物又はケイ素、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも2種の元素の複合酸化物からなる内側被覆層を形成し、次いで、このように、内側被覆層を形成した固体塩基粒子を分散させた上記溶媒中にて有機チタン化合物を加水分解して、上記内側被覆層上にチタン酸からなる外側被覆層を形成することを特徴とする製造方法が提供される。以下、この製造方法を本発明の第2の方法という。
【0013】
本発明によれば、上記固体塩基は、好ましくは、水酸化マグネシウム又はハイドロタルサイトである。また、本発明によれば、上記有機溶媒は、好ましくは、脂肪族一価アルコール及び脂肪族二価アルコールから選ばれる少なくとも1種であり、最も好ましくは、エチレングリコールである。
【0014】
更に、本発明によれば、固体塩基粒子を分散させた上記有機溶媒中にて、有機チタン化合物を加水分解して、上記固体塩基粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成することによって得られる、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステル製造用触媒が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、固体塩基粒子を分散させた上記有機溶媒中にて、有機ケイ素化合物及び/又は有機アルミニウム化合物及び/又は有機ジルコニウム化合物を加水分解して、ケイ素、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物又はケイ素、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも2種の元素の複合酸化物からなる内側被覆層を形成し、次いで、このように、内側被覆層を形成した固体塩基粒子を分散させた上記溶媒中にて有機チタン化合物を加水分解して、上記内側被覆層上にチタン酸からなる外側被覆層を形成することによって得られる、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステル製造用触媒が提供される。
【0016】
上記のほか、本発明によれば、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とアルキレングリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によって、上記芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシルアルキル)エステルを含むオリゴマーを製造し、次いで、上述した重縮合触媒の存在下でこのオリゴマーを高真空下に高温で溶融重縮合させることを特徴とするポリエステルの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の方法によれば、ポリエステル重縮合触媒が当初から溶媒中に分散された分散液として得られる。特に、上記溶媒としてエチレングリコールを用いることによって、得られた触媒をそのまま、エチレングリコールをポリエステルの1つの原料とするポリエステルの製造のための重縮合反応に用いることができる。しかも、本発明の方法によって得られる触媒によれば、ポリエステルの製造時、ポリエステルの黒ずみやポリエステル中への異物の混入なしに、また、ポリエステルの分解なしに、高い重合活性にて、すぐれた色相と透明性を有する高分子量ポリエステルを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明において、固体塩基として、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物、種々の複合酸化物のほか、アルミニウム、亜鉛、ランタン、ジルコニウム、トリウム等の酸化物等や、これらの複合物を挙げることができる。これらの酸化物や複合物は、一部が炭酸塩等の塩類にて置換されていてもよい。従って、本発明において、固体塩基として、より具体的には、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛等の酸化物や水酸化物、例えば、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化亜鉛等や、ハイドロタルサイト等の複合酸化物を例示することができる。なかでも、本発明によれば、水酸化マグネシウム又はハイドロタルサイトが好ましく用いられる。
【0019】
水酸化マグネシウム粒子は、例えば、塩化マグネシウムや硝酸マグネシウム等のような水溶性マグネシウム塩の水性溶液を水酸化ナトリウムやアンモニア等のアルカリで中和し、水酸化マグネシウムを沈殿させて得られる。このような水溶性マグネシウム塩の水性溶液をアルカリで中和して、水酸化マグネシウムの粒子を得る場合、水溶性マグネシウム塩の水溶液とアルカリとを同時中和してもよく、また、一方を他方に加えて中和してもよい。
【0020】
また、上記水酸化マグネシウム粒子は、その由来は、何ら制約されるものではなく、例えば、天然鉱石を粉砕して得られた粉末、マグネシウム塩水溶液をアルカリで中和して得られた粉末等であってもよい。
【0021】
また、ハイドロタルサイトは、好ましくは、下記一般式(I)
2+1-x3+x(OH-)2n-x/n・mH2O …(I)
(式中、M2+はMg2+、Zn2+及びCu2+から選ばれる少なくとも1種の2価金属イオンを示し、M3+はAl3+、Fe3+及びTi3+から選ばれる少なくとも1種の3価金属イオンを示し、An- はSO42-、Cl-、CO32- 及びOH- から選ばれる少なくとも1種のアニオンを示し、nは上記アニオンの価数を示し、xは0<x<0.5を満足する数であり、mは0≦m<2を満足する数である。)
で表される。
【0022】
特に、本発明においては、M2+がMg2+であり、M3+がAl3+であり、An- がCO32- であるハイドロタルサイト、即ち、一般式(II)
Mg2+1-xAl3+x(OH-)2(CO32-)x/2・mH2O …(II)
(式中、x及びmは前記と同じである。)
で表されるものが好ましく用いられる。このようなハイドロタルサイトは市販品として容易に入手することができるが、必要に応じて、適宜の原料を用いて、従来から知られている方法、例えば、水熱法によって製造することもできる。
【0023】
本発明によれば、第1の方法において固体塩基粒子の表面にチタン酸からなる被覆層の形成、又は第2の方法においてケイ素、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物又はケイ素、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも2種の元素の複合酸化物からなる内側被覆層の形成とこれに引き続く上記内側被覆層上にチタン酸からなる外側被覆層の形成は、有機溶媒中、即ち、反応溶媒中にて行われる。本発明によれば、この有機溶媒として、脂肪族一価アルコール及び脂肪族二価アルコールから選ばれる少なくとも1種が用いられる。ここに、本発明によれば、上記脂肪族一価アルコールは、好ましくは、次の一般式(I)
1−OH
(式中、R1は炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。)
で表される。従って、このような脂肪族一価アルコールとして、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等を挙げることができる。
【0024】
また、脂肪族二価アルコールは、好ましくは、次の一般式(II)
HO−R2−OH
(式中、R2 は炭素原子数1〜4のアルキレン基を示す。)
で表される。従って、このような脂肪族二価アルコールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール等を挙げることができる。
【0025】
本発明による重縮合触媒は、有機溶媒中によく分散した分散液として得ることができるので、脂肪族二価アルコール、特に、エチレングリコールが好ましく用いられる。しかし、有機溶媒は、上記に限定されるものではない。
【0026】
本発明において、チタン酸とは、一般式
TiO2・nH2
(式中、nは0<n≦2を満たす数である。)
で表される含水酸化チタンであって、このようなチタン酸は、例えば、後述するように、ある種の有機チタン化合物を加水分解することによって得ることができる。
【0027】
本発明による第1の方法は、固体塩基粒子を分散させた前記有機溶媒中にて、有機チタン化合物を加水分解して、上記固体塩基粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成することによって、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステル製造用触媒を得るものである。
【0028】
有機チタン化合物としては、加水分解性の有機基を有する化合物であれば、特に限定されるものではないが、チタンテトラアルコキシドが好ましく用いられる。チタンテトラアルコキシドの具体例としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート等を挙げることができる。
【0029】
本発明において、有機チタン化合物を加水分解するための手段及び方法は特に限定されるものではないが、好ましくは、有機チタン化合物に水を作用させることによって、容易に加水分解することができる。
【0030】
このように、有機チタン化合物を水にて加水分解する場合には、加水分解に用いる水の量は、用いる有機チタン化合物の有する有機基を加水分解するに足りる量である。有機チタン化合物におけるチタンの原子価は4価であるから、有機チタン化合物の加水分解に必要な水の理論量は用いる有機チタン化合物の4倍モル量である。従って、本発明においては、有機チタン化合物の加水分解に用いる水の量は、通常、用いる有機チタン化合物に対して4倍モル量以上であればよい。しかし、水を余りに多く用いても、得られる重縮合触媒分散液中に残存する水の量が不必要に増えるだけであるので、通常、用いる有機チタン化合物に対して4倍モルが用いられる。
【0031】
本発明の第1の方法によれば、好ましくは、前記有機溶媒中に固体塩基粒子を分散させ、5〜100℃、好ましくは、25〜85℃の温度に保持しつつ、これに上記固体塩基100重量部に対してTiO2 換算にて0.1〜50重量部の有機チタン化合物と水を加えて、必要に応じて、酸触媒又はアルカリ触媒を加えて、上記有機チタン化合物を加水分解して、固体塩基粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成することによって、分散媒を上記溶媒とする分散液として本発明によるポリエステル重縮合触媒を得ることができる。このような方法によれば、固体塩基粒子100重量部に対して、TiO2換算にて0.1〜50重量部のチタン酸からなる被覆層を有する固体塩基粒子を得ることができる。上記加水分解の酸触媒としては、例えば、硝酸、酢酸等が用いられ、アルカリ触媒としては、例えば、アンモニア等が必要に応じて用いられる。
【0032】
このようにして得られるポリエステル重縮合触媒を以下、本発明による第1の重縮合触媒という。このような本発明による第1の重縮合触媒において、固体塩基100重量部に対して、チタン酸からなる被覆層の割合がTiO2換算で0.1重量部よりも少ないときは、得られる重縮合触媒の重合活性が低く、高分子量のポリエステルを生産性よく得ることができず、他方、固体塩基100重量部に対して、チタン酸からなる被覆層の割合がTiO2 換算で50重量部よりも多いときは、ポリエステルの製造に際して、ポリエステルの分解が起こりやすく、また、得られたポリエステルの溶融成形時に熱劣化による着色が生じやすい。
【0033】
本発明の第2の方法は、固体塩基粒子を分散させた前記有機溶媒中にて、有機ケイ素化合物及び/又は有機アルミニウム化合物及び/又は有機ジルコニウム化合物を加水分解して、ケイ素、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物又はケイ素、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも2種の元素の複合酸化物からなる内側被覆層を形成し、次いで、このように、内側被覆層を形成した固体塩基粒子を分散させた上記有機溶媒中にて有機チタン化合物を加水分解して、上記内側被覆層上にチタン酸からなる外側被覆層を形成することによって、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステル製造用触媒を得るものである。
【0034】
上記有機ケイ素化合物、有機アルミニウム化合物及び有機ジルコニウム化合物も、加水分解性の有機基を有する化合物であれば、特に限定されるものではないが、有機ケイ素化合物としては、例えば、テトラエチルオルトシリケート等が用いられ、有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムセカンダリーブトキシド等が用いられ、有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムn−プロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド等が用いられる。
【0035】
本発明による第2の方法においても、有機チタン化合物の加水分解におけると同様に、有機ケイ素化合物、有機アルミニウム化合物又は有機ジルコニウム化合物を加水分解するための手段及び方法は特に限定されるものではないが、好ましくは、それら有機金属化合物に水を作用させることによって、容易に加水分解することができる。
【0036】
このように、有機ケイ素化合物、有機アルミニウム化合物又は有機ジルコニウム化合物を水にて加水分解する場合には、これら有機金属化合物の加水分解に用いる水の量は、用いる有機金属化合物の有する有機基を加水分解するに足りる量であり、有機ケイ素化合物及び有機ジルコニウム化合物の加水分解に必要な水の理論量はそれぞれ4倍モル量である。従って、本発明においては、有機ケイ素化合物及び有機ジルコニウム化合物の加水分解に用いる水の量は、通常、それぞれ用いる有機金属化合物に対して4倍モル量以上であればよい。同様に、有機アルミニウム化合物の加水分解に必要な水の理論量は3倍モル量であるので、有機アルミニウム化合物の加水分解に用いる水の量は、通常、用いる有機アルミニウム化合物に対して3倍モル量以上であればよい。しかし、いずれの有機金属化合物の場合についても、その加水分解に水を余りに多く用いても、得られる重縮合触媒分散液中に残存する水の量が不必要に増えるだけであるので、有機ケイ素化合物及び有機ジルコニウム化合物の加水分解には、通常、4倍モルが用いられ、有機アルミニウム化合物の加水分解には、通常、3倍モルが用いられる。
【0037】
従って、本発明の第2の方法によれば、好ましくは、前記有機溶媒に固体塩基粒子を分散させ、5〜100℃の温度を保持しつつ、好ましくは、25〜85℃の温度に保持しつつ、これに固体塩基100重量部に対してSiO2 換算にて1〜20重量部の有機ケイ素化合物及び/又はAl23 換算にて1〜20重量部の有機アルミニウム化合物及び/又はZrO2 換算にて1〜20重量部の有機ジルコニウム化合物と水を加えて、必要に応じて、前述したような酸触媒又はアルカリ触媒を加えて、上記有機ケイ素化合物及び/又は有機アルミニウム化合物及び/又は有機ジルコニウム化合物を加水分解して、上記固体塩基粒子の表面にケイ素、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物又はケイ素、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも2種の元素の複合酸化物からなる内側被覆層を形成し、次いで、このようにして得られた内側被覆層を有する固体塩基粒子について、前述した第1の方法と同様にして、その内側被覆層上にチタン酸からなる外側被覆層を形成することによって、ポリエステル重縮合触媒を得るものである。
【0038】
即ち、前記有機溶媒中、固体塩基粒子の表面にケイ素、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物又はケイ素、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも2種の元素の複合酸化物からなる内側被覆層を形成した後、上記有機溶媒を5〜100℃の温度に保持しつつ、好ましくは、25〜85℃の温度に保持しつつ、これに固体塩基100重量部に対してTiO2 換算にて0.1〜50重量部の有機チタン化合物と水を加え、必要に応じて、前述したような酸触媒又はアルカリ触媒を加えて、有機チタン化合物を加水分解して、上記内側被覆層上にチタン酸からなる外側被覆層を形成することができる。
【0039】
本発明においては、上述したように、有機溶媒中、固体塩基粒子の表面に内側被覆層を形成した後、有機チタン化合物を加水分解して、上記内側被覆層上にチタン酸からなる外側被覆層を形成する際に用いる有機溶媒は、固体塩基粒子の表面に内側被覆層を形成する際に用いる有機溶媒と同じである必要はない。
【0040】
このようにして、本発明によれば、固体塩基100重量部に対して、ケイ素、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物又はケイ素、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも2種の元素の複合酸化物からなる内側被覆層1〜20重量部を固体塩基粒子の表面に有すると共に、その内側被覆層上にチタン酸からなる外側被覆層0.1〜50重量部を有するポリエステル重縮合触媒を前記溶媒を分散媒とする分散液として得ることができる。
【0041】
このようにして得られるポリエステル重縮合触媒を以下、本発明による第2の重縮合触媒という。このような第2の重縮合触媒において、固体塩基100重量部に対して、ケイ素、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物又はケイ素、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも2種の元素の複合酸化物からなる内側被覆層の割合が1重量部よりも少ないときは、得られる重縮合触媒の重合活性は高いものの、得られたポリエステルの色相の改善がみられず、他方、固体塩基100重量部に対して、内側被覆層の割合が酸化物換算で20重量部よりも多いときは、得られる重縮合触媒の重合活性が低下するので好ましくない。
【0042】
他方、固体塩基100重量部に対して、チタン酸からなる外側被覆層の割合がTiO2 換算で0.1重量部よりも少ないときは、得られる重縮合触媒の重合活性が低く、高分子量のポリエステルを生産性よく得ることができず、他方、固体塩基100重量部に対して、チタン酸からなる被覆層の割合がTiO2 換算で50重量部よりも多いときは、ポリエステルの製造に際して、ポリエステルの分解が起こりやすく、また、得られたポリエステルの溶融成形時に熱劣化による着色が生じやすい。
【0043】
本発明によるポリエステルの製造方法は、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとを上記第1又は第2の重縮合触媒の存在下にエステル化反応又はエステル交換反応させることからなる。ここに、本発明によれば、第1及び第2の重縮合触媒のいずれも、当初から、前記有機溶媒に分散されているので、得られた分散液のまま、又は必要に応じて、適宜の濃度に調節して、直ちに反応に用いることができる。
【0044】
本発明において、ジカルボン酸としては、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ドデカンジカルボン酸等によって例示される脂肪族ジカルボン酸やそのエステル形成性誘導体、例えば、ジアルキルエステルや、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等によって例示される芳香族ジカルボン酸やそのエステル形成性誘導体、例えば、ジアルキルエステルを挙げることができる。また、本発明において、グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を例示することができる。
【0045】
上述したなかでは、例えば、ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が好ましく用いられ、また、グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のアルキレングリコールが好ましく用いられる。
【0046】
従って、本発明において、ポリエステルの好ましい具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)等を挙げることができる。
【0047】
しかし、本発明において、用いることができるジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体や、グリコール又はそのエステル形成性誘導体は、上記例示に限定されるものではなく、また、得られるポリエステルも、上記例示に限定されるものではない。
【0048】
一般に、ポリエチレンテレフタレートにて代表されるポリエステルは、次のいずれかの方法によって製造されている。即ち、テレフタル酸に代表されるジカルボン酸とエチレングリコールに代表されるグリコールとの直接エステル化反応によって、前記BHETを含む低分子量のオリゴマーを得、更に、このオリゴマーを重縮合触媒の存在下に高真空、高温下に溶融重縮合させて、所要の分子量を有するポリエステルを得る方法か、又はジメチルテレフタレートに代表されるテレフタル酸ジアルキルエステルとエチレングリコールに代表されるグリコールとのエステル交換反応によって、同様に、前記BHETを含む低分子量のオリゴマーを得、更に、このオリゴマーを重縮合触媒の存在下に高真空、高温下に溶融重縮合させて、所要の分子量を有するポリエステルを得る方法である。
【0049】
本発明においても、上述した第1又は第2の重縮合触媒を用いる以外は、従来から知られているように、前述した直接エステル化反応又はエステル交換反応によって前記BHETを含む低分子量のオリゴマーを得、次いで、このオリゴマーを上記重縮合触媒の存在下に高真空、高温下に溶融重縮合させることによって、所要の分子量を有するポリエステルを得ることができる。
【0050】
ポリエチレンテレフタレートの製造を例にとって説明すれば、常法に従って、知られているように、ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを触媒、例えば、酢酸カルシウムと共に反応槽に仕込み、常圧下に加熱し、エチレングリコールの還流温度で、メタノールを反応系外に留去しつつ、反応させることによって、BHETを含む低分子量のオリゴマーを得ることができる。オリゴマーの重合度は、通常、10程度までである。必要に応じて、加圧下に反応を行ってもよい。留出したメタノールの量にて反応を追跡することができ、通常、エステル化率は95%程度である。
【0051】
また、直接エステル化反応によるときは、テレフタル酸とエチレングリコールを反応槽に仕込み、生成する水を留去しながら、必要に応じて、加圧下に加熱すれば、同様に、BHETを含む低分子量のオリゴマーを得ることができる。このような直接エステル化反応によるときは、予め、製造したBHETを含む低分子量のオリゴマーを原料と共に反応槽に加え、この低分子量のオリゴマーの共存下に直接エステル化反応を行うことが好ましい。
【0052】
次いで、このようにして得られた低分子量のオリゴマーは、重合槽に移送し、ポリエチレンテレフタレートの融点(通常、240〜280℃である。)以上の温度に減圧下に加熱し、未反応のエチレングリコールと反応によって生成したエチレングリコールを反応系外に留去しつつ、同時に、溶融反応物の粘度をモニタリングしながら、上記オリゴマーを溶融重縮合させる。この重縮合反応は、必要に応じて、複数の反応槽を用いて、それぞれの反応槽において、反応温度と圧力を最適に変更させながら行ってもよい。反応混合物の粘度が所要値に達すれば、減圧を止め、例えば、窒素ガスにて重合槽内を常圧に戻して、得られたポリエステルを反応槽から、例えば、ストランド状に吐出させ、水冷し、切断して、ペレットとする。本発明によれば、このようにして、通常、固有粘度〔η〕が0.4〜1.0dL/gのポリエステルを得ることができる。
【0053】
本発明によるポリエステル製造用の第1及び第2の重縮合触媒はいずれも、前記BHETを含むオリゴマーの製造のための直接エステル化反応やエステル交換反応時に反応系に加えてもよく、また、低分子量のオリゴマーを得た後、これを更に重縮合させる際に反応系に加えてもよい。また、本発明による重縮合触媒は、前述したように、例えば、エチレングリコールのような溶媒に分散させた分散液の形態にて得られるので、そのまま、又は適宜に希釈して、反応系に加えることができる。特に、本発明によれば、触媒は、このように、エチレングリコールのような溶媒に分散させた分散液の形態にて得られるので、好ましくは、前記BHETを含むオリゴマーの製造のための直接エステル化反応やエステル交換反応に際して、反応系に加えて用いられる。
【0054】
本発明の方法によって得られる第1及び第2の重縮合触媒はいずれも、用いるジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体100モル部に対して、通常、1×10-5〜1×10-1モル部の範囲で用いられる。用いるジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体100モル部に対して、本発明による重縮合触媒の割合が1×10-5モル部よりも少ないときは、触媒活性が十分でなく、目的とする高分子量のポリエステルを得ることができないおそれがあり、他方、1×10-1モル部よりも多いときは、得られるポリエステルが熱安定性に劣るおそれがある。
【0055】
本発明による重縮合触媒はいずれも、溶融重合のみならず、固相重合や溶液重合においても、触媒活性を有しており、いずれの場合にも、ポリエステルの製造に用いることができる。
【0056】
本発明による重縮合触媒は、成分として、アンチモンを含まないので、得られるポリエステルに黒ずみを与えたり、得られるポリエステル中に異物として混入することがなく、しかも、アンチモンを成分として含む触媒と同等又はそれ以上の触媒活性を有し、すぐれた色相と透明性を有するポリエステルを得ることができる。しかも、本発明による重縮合触媒は、毒性がなく、安全である。
【0057】
特に、本発明の方法によれば、ポリエステル重縮合触媒が当初から溶媒中に分散された分散液として得られるので、そのまま、又は必要に応じて適宜に濃度を調節した後、反応系に加えることができる。
【0058】
ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステルの製造において、チタン酸の酸触媒作用は、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体のカルボニル基にルイス酸として配位して、グリコールの上記カルボニル炭素への攻撃を容易にすると同時に、グリコールの解離をも促進して、その求核性を大きくすることであると推測される。しかし、この酸触媒作用が強すぎるときは、望ましくない副反応が起こって、ポリエステルの分解反応や着色を招くとみられる。ここに、本発明による重縮合触媒によれば、チタン酸からなる被覆層を固体塩基である水酸化マグネシウムやハイドロタルサイトの粒子の表面に形成することによって、チタン酸の酸触媒作用が適度になる結果、すぐれた色相と透明性を有する高分子量ポリエステルを与えるものとみられる。
【0059】
また、本発明の方法によって得られる第2の重縮合触媒によれば、ケイ素、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物又はケイ素、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも2種の元素の複合酸化物からなる内側被覆層とチタン酸からなる外側被覆層を固体塩基の粒子の表面に形成することによって、固体塩基の過度の塩基触媒作用を抑制することができ、また、チタン酸の酸触媒作用が更に好適になる結果、一層、すぐれた色相と透明性を有する高分子量ポリエステルを与えるものとみられる。
【0060】
しかし、本発明によれば、ポリエステルの製造において、本発明による重縮合触媒を用いる利点を損なわない範囲において、従来より知られている重縮合触媒、例えば、アンチモン、ゲルマニウム、チタン、スズ、アルミニウム等の化合物からなる重縮合触媒を併用してもよい。更に、必要に応じてアルカリ金属化合物、熱安定性向上のため、リン酸化合物を併用してもよい。
【実施例】
【0061】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、得られたポリエステルの固有粘度は、ISO1628−1によって測定し、色相は、45゜拡散方式色差計(スガ試験機(株)製SC2−CH型)を用いて測定した。
【0062】
また、得られたポリエステルのヘイズ値は、段付き角板を成形し、JIS K−7136に準拠するヘイズメーターを用いて、その5mm厚さ部分について測定した。
【0063】
得られた重縮合触媒の分散液の沈降率ηは、50ccの試験管に触媒の分散液を所定量入れ、30日間静置し、このときの上澄み層の高さを試験開始時の分散液の試験管の底部からの液面の高さの割合として求めた。即ち、
η=上澄み層の高さ(cm)÷試験開始時の触媒分散液の液面の高さ(cm)×100
【0064】
Δbは、樹脂を205℃の熱風循環式のオーブン内に16時間入れて、試験前後の色相(b値)の変化から求めた。
【0065】
水酸化マグネシウム及びハイドロタルサイトの製造
参考例1
(水酸化マグネシウムの調製)
水5Lを反応器に仕込み、これに4モル/Lの塩化マグネシウム水溶液16.7Lと14.3モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液8.4Lとを撹拌下に同時に加えた後、170℃で0.5時間水熱反応を行った。このようにして得られた水酸化マグネシウムを濾過、水洗し、乾燥して、水酸化マグネシウムを得た。
【0066】
参考例2
(ハイドロタルサイトの調製)
3.8モル/L濃度の硫酸マグネシウム水溶液2.6Lと0.85モル/L濃度の硫酸アルミニウム水溶液2.6Lとの混合溶液と9.3モル/L濃度の水酸化ナトリウム水溶液2.8Lと2.54モル/L濃度の炭酸ナトリウム水溶液2.6Lとの混合溶液を攪拌下に同時に反応器に加えた後、180℃で2時間水熱反応を行った。反応終了後、得られたスラリーを濾過、洗浄した後、乾燥、粉砕して、Mg0.7Al0.3(OH)2(CO3)0.15・0.48H2Oなる組成を有するハイドロタルサイトを得た。
第1の重縮合触媒の調製とそれを用いるポリエステルの製造の実施例
【0067】
実施例1
(重縮合触媒Aの調製)
温度75〜85℃にを保持したエチレングリコール2.5L中に参考例1で得られた水酸化マグネシウム1107gを分散させ、撹拌しながら、これにチタンテトライソプロポキシド(Ti(OC37)4)395.0gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間熟成して、溶液を得た。次いで、この溶液にチタンテトライソプロポキシドに対して4倍モル量の水100gを加え、4時間熟成して、水酸化マグネシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして、本発明によるチタン酸からなる被覆層を有する水酸化マグネシウム(重縮合触媒A)のエチレングリコール分散液を得た。
【0068】
このエチレングリコール分散液における重縮合触媒の割合は、エチレングリコール溶液100重量部に対して、30重量部であった。このエチレングリコール分散液の沈降率を第1表に示す。また、上記重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、水酸化マグネシウム100重量部に対して、TiO2 換算にて10重量部であった。
【0069】
(ポリエステルaの製造)
側管を取付けたガラス製反応槽にテレフタル酸ジメチル13.6g(0.070モル)、エチレングリコール10.0g(0.16モル)、酢酸カルシウム二水和物0.022g及び重縮合触媒Aのエチレングリコール分散液0.0045g(重縮合触媒として0.00135g、即ち、2.1×10-5モル、テレフタル酸ジメチル100モル部に対して0.03モル部)を仕込み、この反応槽の一部を温度197℃の油浴に入れ、テレフタル酸ジメチルをエチレングリコールに溶解させた。反応槽の底部に届くように、キャピラリーを反応管内に挿入し、このキャピラリーを利用して、反応槽内に1時間窒素を吹き込んで、生成したメタノールの大部分を留出させながら、2時間加熱を続けて、BHETを含むオリゴマーを得た。
【0070】
次いで、得られた反応混合物を222℃で15分間加熱すると、エチレングリコールが留出して、重縮合が開始した。この後、283℃に昇温し、この温度に保持すると、エチレングリコールが更に留出し、重縮合が進行した。10分後、減圧を開始し、15分間かけて、27Pa以下まで圧力を低減した。その後、3時間で重縮合を終了した。重縮合反応の終了後、反応槽内を窒素ガスで常圧に戻し、得られたポリエステルを反応槽の底部の抜出し口からストランド状に吐出させ、冷却し、切断して、ポリエステルのペレットを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色相、ヘイズ値及びΔb値を第1表に示す。
【0071】
実施例2
(ポリエステルbの製造)
テレフタル酸43g(0.26モル)とエチレングリコール19g(0.31モル)を反応槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下に攪拌して、スラリーとした。この反応槽の温度を250℃、大気圧に対する相対圧力を1.2×105 Paに保ちながら、4時間かけてエステル化反応を行った。このようにして得られた低分子量オリゴマーのうち、50gを窒素ガス雰囲気下、温度250℃、常圧に保持した重縮合反応槽に移した。
【0072】
重縮合触媒Aのエチレングリコール分散液0.0083g(重縮合触媒として0.0025g、即ち、3.9×10-5モル、重縮合に供したテレフタル酸成分100モル部に対して0.015モル部)を予めエチレングリコールに分散させてスラリーとし、このスラリーを上記重縮合反応槽に加えた。この後、反応槽内を3時間かけて250℃から280℃まで昇温し、この温度を保持すると同時に、1時間かけて常圧から絶対圧力40Paに減圧して、この圧力を維持しながら、更に、2時間加熱を続けて、重縮合反応を行った。重縮合反応の終了後、反応槽内を窒素ガスで常圧に戻し、得られたポリエステルを反応槽の底部の抜出し口からストランド状に吐出させ、冷却し、切断して、ポリエステルのペレットを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色相、ヘイズ値及びΔb値を第1表に示す。
【0073】
実施例3
(重縮合触媒Bの調製)
温度75〜85℃に保持したエチレングリコール1.1L中に参考例2で得られたハイドロタルサイト500gを分散させ、撹拌しながら、これにチタンテトライソプロポキシド(Ti(OC37)4)177.8gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間熟成して、溶液を得た。次いで、この溶液にチタンテトライソプロポキシドに対して4倍モル量の水45gを加え、4時間熟成して、ハイドロタルサイト粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして、本発明によるチタン酸からなる被覆層を有するハイドロタルサイト(重縮合触媒B)のエチレングリコール分散液を得た。このエチレングリコール分散液における重縮合触媒の割合は、エチレングリコール溶液100重量部に対して、30重量部であった。このエチレングリコール分散液の沈降率を第1表に示す。また、この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、ハイドロタルサイト100重量部に対して、TiO2 換算にて10重量部であった。
【0074】
(ポリエステルcの製造)
側管を取付けたガラス製反応槽にテレフタル酸ジメチル13.6g(0.070モル)、エチレングリコール10.0g(0.16モル)、酢酸カルシウム二水和物0.022g及び重縮合触媒Bのエチレングリコール分散液0.039g(重縮合触媒として0.0117g、即ち、2.1×10-5モル、テレフタル酸ジメチル100モル部に対して0.03モル部)を仕込み、この反応槽の一部を温度197℃の油浴に入れ、テレフタル酸ジメチルをエチレングリコールに溶解させた。反応槽の底部に届くように、キャピラリーを反応管内に挿入し、このキャピラリーを利用して、反応槽内に1時間窒素を吹き込んで、生成したメタノールの大部分を留出させながら、2時間加熱を続けて、BHETを含むオリゴマーを得た。
【0075】
次いで、得られた反応混合物を222℃で15分間加熱すると、エチレングリコールが留出して、重縮合が開始した。この後、283℃に昇温し、この温度に保持すると、エチレングリコールが更に留出し、重縮合が進行した。10分後、減圧を開始し、15分間かけて、27Pa以下まで圧力を低減した。その後、3時間で重縮合を終了した。重縮合反応の終了後、反応槽内を窒素ガスで常圧に戻し、得られたポリエステルを反応槽の底部の抜出し口からストランド状に吐出させ、冷却し、切断して、ポリエステルのペレットを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色相、ヘイズ値及びΔb値を第1表に示す。
【0076】
実施例4
(ポリエステルdの製造)
テレフタル酸43g(0.26モル)とエチレングリコール19g(0.31モル)を反応槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下に攪拌して、スラリーとした。この反応槽の温度を250℃、大気圧に対する相対圧力を1.2×105Paに保ちながら、4時間かけてエステル化反応を行った。このようにして得られた低分子量オリゴマーのうち、50gを窒素ガス雰囲気下、温度250℃、常圧に保持した重縮合反応槽に移した。
【0077】
重縮合触媒Bのエチレングリコール分散液0.073g(重縮合触媒として0.0218g、即ち、3.9×10-5モル、重縮合に供したテレフタル酸成分100モル部に対して0.015モル部)を予めエチレングリコールに分散させてスラリーとし、このスラリーを上記重縮合反応槽に加えた。この後、反応槽内を3時間かけて250℃から280℃まで昇温し、この温度を保持すると同時に、1時間かけて常圧から絶対圧力40Paに減圧して、この圧力を維持しながら、更に、2時間加熱を続けて、重縮合反応を行った。重縮合反応の終了後、反応槽内を窒素ガスで常圧に戻し、得られたポリエステルを反応槽の底部の抜出し口からストランド状に吐出させ、冷却し、切断して、ポリエステルのペレットを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色相、ヘイズ値及びΔb値を第1表に示す。
【0078】
実施例5
(重縮合触媒Cの調製)
温度75〜85℃に保持したエチレングリコール2.5L中に参考例1で得られた水酸化マグネシウム1107gを分散させ、撹拌しながら、これにテトラエチルオルトシリケート(Si(OC25)4)191.7gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間熟成して、溶液を得た。次いで、この溶液にテトラエチルオルトシリケートに対して4倍モル量の水66gを加え、6時間熟成して、水酸化マグネシウム粒子の表面にケイ素酸化物からなる内側被覆層を形成した。
【0079】
次に、この内側被覆層を有する水酸化マグネシウムのエチレングリコール分散液を撹拌しながら、これにチタンテトライソプロポキシド(Ti(OC37)4)395.0gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間熟成した。次いで、これにチタンテトライソプロポキシドに対して4倍モル量の水100gを加え、4時間熟成して、上記内側被覆層上にチタン酸からなる外側被覆層を形成した。このようにして内側及び外側被覆層を有する水酸化マグネシウム(重縮合触媒C)のエチレングリコール分散液を得た。
【0080】
この重縮合触媒において、ケイ素酸化物からなる内側被覆層の割合は、水酸化マグネシウム100重量部に対して、SiO2 換算にて5重量部であり、チタン酸からなる外側被覆層の割合は、水酸化マグネシウム100重量部に対して、TiO2 換算にて10重量部であった。また、この重縮合触媒のエチレングリコール分散液の沈降率を第1表に示す。
【0081】
(ポリエステルeの製造)
上記重縮合触媒Cを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色相、ヘイズ値及びΔb値を第1表に示す。
【0082】
実施例6
(重縮合触媒Dの調製)
温度75〜85℃に保持したエチレングリコール2.5L中に参考例1で得られた水酸化マグネシウム1107gを分散させ、撹拌しながら、これにアルミニウムイソプロポキシド(Al(OC37)3)221.4gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間熟成して、溶液を得た。次いで、得られた反応混合物にアルミニウムイソプロポキシドに対して3倍モル量の水78.2gを加え、6時間熟成して、水酸化マグネシウム粒子の表面にアルミニウム酸化物からなる内側被覆層を形成した。
【0083】
この内側被覆層を有する水酸化マグネシウムのエチレングリコール分散液を撹拌しながら、これにチタンテトライソプロポキシド(Ti(OC37)4)395.0gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間熟成した。次いで、これにチタンテトライソプロポキシドに対して4倍モル量の水100gを加え、4時間熟成したて、上記内側被覆層上にチタン酸からなる外側被覆層を形成した。このようにして内側及び外側被覆層を有する水酸化マグネシウム(重縮合触媒D)のエチレングリコール分散液を得た。
【0084】
この重縮合触媒において、アルミニウム酸化物からなる内側被覆層の割合は、水酸化マグネシウム100重量部に対して、Al23換算にて5重量部であり、チタン酸からなる外側被覆層の割合は、水酸化マグネシウム100重量部に対して、TiO2 換算にて10重量部であった。また、この重縮合触媒のエチレングリコール分散液の沈降率を第1表に示す。
【0085】
(ポリエステルfの製造)
上記重縮合触媒Dを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色相、ヘイズ値及びΔb値を第1表に示す。
【0086】
実施例7
(重縮合触媒Eの調製)
温度75〜85℃に保持したエチレングリコール2.5L中に参考例1で得られた水酸化マグネシウム1107gを分散させ、撹拌しながら、これにジルコニウムn−プロポキシド(Zr(OC37)4)147.0gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間熟成して、溶液を得た。次いで、この溶液にジルコニウムn−プロポキシドに対して4倍モル量の水85.9gを加え、6時間熟成した、水酸化マグネシウム粒子の表面にジルコニウム酸化物からなる内側被覆層を形成した。
【0087】
次に、この内側被覆層を有する水酸化マグネシウムのエチレングリコール分散液を撹拌しながら、これにチタンテトライソプロポキシド(Ti(OC37)4)395.0gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間熟成した。次いで、得られた反応混合物にチタンテトライソプロポキシドに対して4倍モル量の水100gを加え、4時間熟成して、上記内側被覆層上にチタン酸からなる外側被覆層を形成した。このようにして内側及び外側被覆層を有する水酸化マグネシウム(重縮合触媒E)のエチレングリコール分散液を得た。
【0088】
この重縮合触媒において、ジルコニウム酸化物からなる内側被覆層の割合は、水酸化マグネシウム100重量部に対して、ZrO2換算にて5重量部であり、チタン酸からなる外側被覆層の割合は、水酸化マグネシウム100重量部に対して、TiO2 換算にて10重量部であった。また、この重縮合触媒のエチレングリコール分散液の沈降率を第1表に示す。
【0089】
(ポリエステルgの製造)
上記重縮合触媒Eを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色相、ヘイズ値及びΔb値を第1表に示す。
【0090】
実施例8
(重縮合触媒Fの調製)
温度75〜85℃に保持したエチレングリコール2.5L中に参考例1で得られた水酸化マグネシウム1107gを分散させ、撹拌しながら、これにテトラエチルオルトシリケート(Si(OC25)4)64.0gとアルミニウムイソプロポキシド(Al(OC37)3)74.0gとジルコニウムn−プロポキシド(Zr(OC37)4)49.1gとの混合溶液を2時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間熟成して、溶液を得た。次いで、この溶液に水52.5gを加え、6時間熟成して、上記水酸化マグネシウム粒子の表面にケイ素とアルミニウムとジルコニウムの複合酸化物からなる内側被覆層を形成した。
【0091】
この内側被覆層を有する水酸化マグネシウムのエチレングリコール分散液を撹拌しながら、これにチタンテトライソプロポキシド(Ti(OC37)4)395.0gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間熟成した。次いで、得られた反応混合物にチタンテトライソプロポキシドに対して4倍モル量の水100gを加え、4時間熟成した、上記内側被覆層上にチタン酸からなる外側被覆層を形成した。このようにして、内側及び外側被覆層を有する水酸化マグネシウム(重縮合触媒F)のエチレングリコール分散液を得た。
【0092】
この重縮合触媒において、ケイ素とアルミニウムとジルコニウムの複合酸化物からなる内側被覆層の割合は、それぞれの元素についてSiO2、Al23 及びZrO2 換算にて、水酸化マグネシウム100重量部に対して、5重量部であり、チタン酸からなる外側被覆層の割合は、水酸化マグネシウム100重量部に対して、TiO2 換算にて10重量部であった。また、この重縮合触媒のエチレングリコール分散液の沈降率を第1表に示す。
【0093】
(ポリエステルhの製造)
上記重縮合触媒Fを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色相、ヘイズ値及びΔb値を第1表に示す。
【0094】
実施例9
(重縮合触媒Gの調製)
温度75〜85℃に保持したエチレングリコール1.1L中に参考例2で得られたハイドロタルサイト500gを分散させ、撹拌しながら、これにテトラエチルオルトシリケート(Si(OC25)4)86.7gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間熟成して、溶液を得た。次いで、この溶液にテトラエチルオルトシリケートに対して4倍モル量の水30gを加え、6時間熟成して、ハイドロタルサイト粒子の表面にケイ素酸化物からなる内側被覆層を形成した。
【0095】
この内側被覆層を有するハイドロタルサイトのエチレングリコール分散液を撹拌しながら、これにチタンテトライソプロポキシド(Ti(OC37)4)177.8gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間熟成した。次いで、得られた反応混合物にチタンテトライソプロポキシドに対して4倍モル量の水45gを加え、4時間熟成して、上記内側被覆層上に外側被覆層を形成した。このようにして、内側及び外側被覆層を有する水ハイドロタルサイト(重縮合触媒G)のエチレングリコール分散液を得た。
【0096】
この重縮合触媒において、ケイ素酸化物からなる内側被覆層の割合は、ハイドロタルサイト100重量部に対して、SiO2 換算にて5重量部であり、チタン酸からなる外側被覆層の割合は、ハイドロタルサイト100重量部に対して、TiO2 換算にて10重量部であった。また、この重縮合触媒G)のエチレングリコール分散液の沈降率を第1表に示す。
【0097】
(ポリエステルiの製造)
上記重縮合触媒Gを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色相、ヘイズ値及びΔb値を第1表に示す。
【0098】
実施例10
(重縮合触媒Hの調製)
温度75〜85℃に保持したエチレングリコール1.1L中に参考例2で得られたハイドロタルサイト500gを分散させ、撹拌しながら、これにアルミニウムイソプロポキシド(Al(OC37)3)100.0gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間熟成して、溶液を得た。次いで、この溶液にアルミニウムイソプロポキシドに対して3倍モル量の水26.5gを加え、6時間熟成して、ハイドロタルサイト粒子の表面にアルミニウム酸化物からなる内側被覆層を形成した。
【0099】
この内側被覆層を有するハイドロタルサイトのエチレングリコール分散液を撹拌しながら、これにチタンテトライソプロポキシド(Ti(OC37)4)177.8gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間熟成した。次いで、得られた反応混合物にチタンテトライソプロポキシドに対して4倍モル量の水45gを加え、4時間熟成して、上記内側被覆層上にチタン酸からなる外側被覆層を形成した。このようにして、内側及び外側被覆層を有するハイドロタルサイト(重縮合触媒H)のエチレングリコール分散液を得た。
【0100】
この重縮合触媒において、アルミニウム酸化物からなる内側被覆層の割合は、ハイドロタルサイト100重量部に対して、Al23換算にて5重量部であり、チタン酸からなる外側被覆層の割合は、ハイドロタルサイト100重量部に対して、TiO2 換算にて10重量部であった。また、この重縮合触媒H)のエチレングリコール分散液の沈降率を第1表に示す。
【0101】
(ポリエステルjの製造)
上記重縮合触媒Hを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色相、ヘイズ値及びΔb値を第1表に示す。
【0102】
実施例11
(重縮合触媒Iの調製)
温度75〜85℃に保持したエチレングリコール1.1L中に参考例2で得られたハイドロタルサイト500gを分散させ、撹拌しながら、これにジルコニウムn−プロポキシド(Zr(OC37)4)66.4gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間熟成して、溶液を得た。次いで、この溶液にジルコニウムn−プロポキシドに対して4倍モル量の水14.6gを加え、6時間熟成して、ハイドロタルサイト粒子の表面にジルコニウム酸化物からなる内側被覆層を形成した。
【0103】
この内側被覆層を有するハイドロタルサイトのエチレングリコール分散液を撹拌しながら、これにチタンテトライソプロポキシド(Ti(OC37)4)177.8gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間熟成した。次いで、得られた反応混合物にチタンテトライソプロポキシドに対して4倍モル量の水45gを加え、4時間熟成して、ハイドロタルサイト粒子の表面にチタン酸からなる外側被覆層を形成した。このようにして、内側及び外側被覆層を有するハイドロタルサイト(重縮合触媒I)のエチレングリコール分散液を得た。
【0104】
この重縮合触媒において、ジルコニウム酸化物からなる内側被覆層の割合は、ハイドロタルサイト100重量部に対して、ZrO2換算にて5重量部であり、チタン酸からなる外側被覆層の割合は、ハイドロタルサイト100重量部に対して、TiO2 換算にて10重量部であった。また、この重縮合触媒I)のエチレングリコール分散液の沈降率を第1表に示す。
【0105】
(ポリエステルkの製造)
上記重縮合触媒Iを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色相、ヘイズ値及びΔb値を第1表に示す。
【0106】
実施例12
(重縮合触媒Jの調製)
温度75〜85℃に保持したエチレングリコール1.1L中に参考例2で得られたハイドロタルサイト500gを分散させ、撹拌しながら、これにテトラエチルオルトシリケート(Si(OC25)4)29.0gとアルミニウムイソプロポキシド(Al(OC37)3)33.4gとジルコニウムn−プロポキシド(Zr(OC37)4)22.2gとの混合溶液を2時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間熟成して、溶液を得た。次いで、この溶液に水23.7gを加え、6時間熟成して、ハイドロタルサイト粒子の表面にケイ素とアルミニウムとジルコニウムの複合酸化物からなる内側被覆層を形成した。
【0107】
この内側被覆層を有するハイドロタルサイトのエチレングリコール分散液を撹拌しながら、これにチタンテトライソプロポキシド(Ti(OC37)4)177.8gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間熟成した。次いで、得られた反応混合物にチタンテトライソプロポキシドに対して4倍モル量の水45gを加え、4時間熟成して、ハイドロタルサイト粒子の表面にチタン酸からなる外側被覆層を形成した。このようにして、内側及び外側被覆層を有するハイドロタルサイト(重縮合触媒J)のエチレングリコール分散液を得た。
【0108】
この重縮合触媒において、ケイ素とアルミニウムとジルコニウムの複合酸化物からなる内側被覆層の割合は、ハイドロタルサイト100重量部に対して、それぞれSiO2、Al23 及びZrO2 換算にて5重量部であり、チタン酸からなる外側被覆層の割合は、ハイドロタルサイトに対して、TiO2 換算にて10重量部であった。また、この重縮合触媒J)のエチレングリコール分散液の沈降率を第1表に示す。
【0109】
(ポリエステルlの製造)
上記重縮合触媒Jを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色相、ヘイズ値及びΔb値を第1表に示す。
【0110】
比較例1
(重縮合触媒Kの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO2 換算で69.2g/L)1.6Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で99.6g/L)1.6Lを調製した。参考例1で得られた水酸化マグネシウムの水スラリー(123g/L)9.0Lを25Lの反応器に仕込んだ後、この水酸化マグネシウムのスラリーにそのpHが10.0になるように、上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成して、水酸化マグネシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有する水酸化マグネシウムの水スラリーを濾過し、水洗、乾燥した後、粉砕して、本発明による重縮合触媒Kを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、水酸化マグネシウム100重量部に対して、TiO2 換算にて10重量部であった。また、この重縮合触媒の水スラリーの沈降率を第1表に示す。
【0111】
(ポリエステルmの製造)
上記重縮合触媒Kを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色相、ヘイズ値、及びΔb値を第1表に示す。
【0112】
比較例2
(重縮合触媒Lの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO2 換算で69.4g/L)0.72Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で100g/L)0.72Lを調製した。参考例2で得られたハイドロタルサイトの水スラリー(100g/L)5.0Lを25Lの反応器に仕込んだ後、このハイドロタルサイトのスラリーにそのpHが9.0になるように、上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成し、ハイドロタルサイト粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このような水スラリーからハイドロタルサイトを濾過し、水洗、乾燥した後、粉砕して本発明による重縮合触媒Lを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、ハイドロタルサイト100重量部に対して、TiO2 換算にて10重量部であった。また、この重縮合触媒の水スラリーの沈降率を第1表に示す。
【0113】
(ポリエステルnの製造)
上記重縮合触媒Lを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色相及びヘイズ値及びΔb値を第1表に示す。
【0114】
比較例3
(ポリエステルoの製造)
実施例1において、重縮合触媒Aに代えて、三酸化アンチモン0.0061g(2.1×10-5モル、テレフタル酸ジメチル100モル部に対して0.03モル部)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色相及びヘイズ値を第1表に示す。
【0115】
比較例4
(ポリエステルpの製造)
実施例2において、重縮合触媒Aに代えて、三酸化アンチモン0.0114g(3.9×10-5モル、重縮合に供したテレフタル酸成分100モル部に対して0.015モル部)を用いた以外は、実施例2と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色相及びヘイズ値を第1表に示す。
【0116】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステル製造用触媒の製造方法であって、固体塩基粒子を分散させた有機溶媒中にて、有機チタン化合物を加水分解して、上記固体塩基粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステル製造用触の製造方法であって、固体塩基粒子を分散させた有機溶媒中にて、有機ケイ素化合物及び/又は有機アルミニウム化合物及び/又は有機ジルコニウム化合物を加水分解して、ケイ素、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物又はケイ素、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも2種の元素の複合酸化物からなる内側被覆層を形成し、次いで、このように、内側被覆層を形成した固体塩基粒子を分散させた上記有機溶媒中にて有機チタン化合物を加水分解して、上記内側被覆層上にチタン酸からなる外側被覆層を形成することを特徴とする製造方法。
【請求項3】
有機溶媒が脂肪族一価アルコール及び脂肪族二価アルコールから選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
有機溶媒がエチレングリコールである請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
固体塩基が水酸化マグネシウムである請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項6】
固体塩基がハイドロタルサイトである請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項7】
固体塩基粒子を分散させた有機溶媒中にて、有機チタン化合物を加水分解して、上記固体塩基粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成して得られる、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステル製造用触媒。
【請求項8】
固体塩基粒子を分散させた有機溶媒中にて、有機ケイ素化合物及び/又は有機アルミニウム化合物及び/又は有機ジルコニウム化合物を加水分解して、ケイ素、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物又はケイ素、アルミニウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも2種の元素の複合酸化物からなる内側被覆層を形成し、次いで、このように、内側被覆層を形成した固体塩基粒子を分散させた上記有機溶媒中にて有機チタン化合物を加水分解して、上記内側被覆層上にチタン酸からなる外側被覆層を形成して得られる、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステル製造用触媒。
【請求項9】
有機溶媒が脂肪族一価アルコール及び脂肪族二価アルコールから選ばれる少なくとも1種である請求項7又は8に記載のポリエステル製造用触媒。
【請求項10】
有機溶媒がエチレングリコールである請求項7又は8に記載のポリエステル製造用触媒。
【請求項11】
固体塩基が水酸化マグネシウムである請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項12】
固体塩基がハイドロタルサイトである請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項13】
芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とアルキレングリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によって、上記芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシルアルキル)エステルを含むオリゴマーを製造し、次いで、請求項7から12のいずれかに記載の重縮合触媒の存在下でこのオリゴマーを溶融重縮合させることを特徴とするポリエステルの製造方法。


【公開番号】特開2009−46593(P2009−46593A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214204(P2007−214204)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000174541)堺化学工業株式会社 (96)
【Fターム(参考)】