説明

ポリエチレンとポリ(ヒドロキシカルボン酸)のブレンド

少なくとも0.1重量%のポリ(ヒドロキシカルボン酸)と、少なくとも50重量%のシングルサイト触媒、好ましくはメタロセン触媒を用いて製造したポリエチレンとから成る樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエチレンを有するポリ(ヒドロキシカルボン酸)の混合物に関するものである。
本発明は特にポリ(乳酸)とシングルサイト触媒、好ましくはメタロセン触媒を用いて製造されたポリエチレンとの混合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ここ数年、人工的な廃棄物が環境に与えるインパクトを人々が心配するようになってきている。従って、再生可能な資源からの新規な生物分解可能(好ましくはコンポスト(堆肥)化可能な)プラスチックを開発することが重要になっている。
【0003】
その特に重要な候補がポリ(ヒドロキシカルボン酸)、特に比較的大きなスケールで商業的に入手可能なポリ乳酸である。乳酸はトウモロコシやイネのような植物または砂糖−またはデンプン−生成植物から得られ、PLAは再生可能な材料から得られるだけでなく、簡単にコンポスト化できる。そのため、従来は石油ベースの熱可塑性樹脂が使われていた用途でPLAを代替として使用することが重要になっている。
【0004】
しかし、PLA自体は従来のプラスチックと同じような有利な特性を有していない。特に、PLAは脆性があり、耐熱性、柔軟性が悪いという性能上の問題が有り、機械的強度が悪い。一方、ポリオレフィン、特にポリエチレンは非常に優れた機械的特性を有している。両者の特性を合わせるためにPLAとチーグラー−ナッタ触媒ポリエチレンのような従来のポリエチレンとを混合して少なくとも部分的に生物分解可能な樹脂を得ようとする試みが行なわれたが、許容可能な機械的特性のままである。現在では、両者の極性および分子量分布の差から、均一なPLAとチーグラー−ナッタ触媒ポリエチレンのような従来のポリエチレンとのブレンドを得ることは難しい、さらには不可能であると考えられている。従来は、相溶化剤を使用しているが、それによって追加の工業的階段を必要とし、押出成形時に特定の条件を必要とする。さらに、相溶化剤を加えると、望ましくない副生成物ができる。すなわち、相溶化剤および副生成物の両方が所望最終製品のフィルム、繊維または成形物の特性を変えることがある。
【0005】
特許文献1(欧州特許第EP 1 777263A号公報)には相溶化剤を用いてPLAとポリオレフィンとを混合する方法が記載されている。この場合の相溶化剤はカルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基、イソシアナート基およびオキサゾリン基の中から選択される少なくとも一つの官能基を有する水素化されたジエンベースのポリマーである。ポリオレフィンは高圧法または低圧法を用いてエチレンおよび/または少なくとも一種のα−オレフィンとを重合して得られるポリマーである。αオレフィンの例は3〜12の炭素原子を有するα−オレフィン、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン等のα−オレフィンである。
【0006】
特許文献2(米国特許公開第US 2005/0192405 A号明細書)にはPLAとポリオレフィンとのポリマーアロイが記載されている。2つの成分を互いに相溶するために、ポリアルキルアクリルエステルおよび/またはポリビニール・エステルと、ポリビニール・エステルとポリオレフィンとのブロック共重合体および/またはポリアルキルアクリルエステルとポリオレフィンのブロック共重合体とを含む。この特許に記載のポリオレフィンはラジカル重合機構で得られるポリエチレンか、チーグラー−ナッタ触媒を用いたカチオン添加重合機構を用いて得られるポリエチレンまたはポリプロピレンである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第EP 1777263A号公報
【特許文献2】米国特許公開第US 2005/0192405 A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ポリエチレンと再生可能な資源との混合物から得られる今までに公知の樹脂をよりも機械的性質が良いか、少なくとも類似している、少なくとも部分的に再生可能な資源から得ることができるポリエチレンベースの樹脂を提供することにある。
本発明の他の目的は、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)と比較したときに機械性質が改善された少なくとも部分的に再生可能な資源から得られる樹脂を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、ポリエチレンと類似した機械特性を有する少なくとも部分的に再生可能な資源から得ることができる樹脂を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、ガスバリヤ性がポリエチレンより優れた樹脂を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、表面張力特性がポリエチレンより優れた樹脂を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、相溶化剤を用いずにポリエチレンとポリ(ヒドロキシカルボン酸)との均一な混合物を得ることにある。
本発明のさらに他の目的は、フィルム、熱成形、ブロー成形、射出延伸ブロー成形、押出ブロー成形および/または回転成形の用途で使用可能な少なくとも部分的に再生可能な資源から得た材料から成る樹脂ブレンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的の少なくとも一つは、少なくとも0.1重量%のポリ(ヒドロキシカルボン酸)と、少なくとも50重量%のシングルサイト触媒、好ましくはメタロセン触媒を用いて製造したポリエチレンとから成いる樹脂組成物を提供することによって達成できる。
【0011】
本発明の他の実施例の樹脂組成物は、シングルサイト触媒、特にメタロセン触媒を用いて製造したポリエチレンが50重量%以上である。
本発明のさらに他の実施例の樹脂組成物は、本質的にポリ(ヒドロキシカルボン酸)と、シングルサイト触媒、特にメタロセン触媒を用いて製造したポリエチレンとからから成る。
本発明はさらに、上記本発明樹脂組成物の製造方法にも関するものである。
本発明はさらに、シングルサイト触媒、例えばメタロセン触媒を用いて製造したポリエチレンの特性を変えるためのポリ(ヒドロキシカルボン酸)の使用に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】はメタロセン触媒を用いて製造したポリエチレンと、PLAとから成る本発明のフィルムの走査型電子顕微鏡(SEM)によるミクロ構造を示す図。
【図2】LDPEとPLAとから成っているフィルムのミクロ構造のSEMの図。
【図3】メタロセン触媒を用いて製造したポリエチレンとPLAとから成るフィルム表面のSEMの図。
【図4】はLDPEとPLAとから成るフィルム表面のSEMの図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記のように、本発明はポリ(ヒドロキシカルボン酸)とシングルサイト触媒、特にメタロセン触媒を用いて製造したポリエチレンとの樹脂ブレンドから成る組成物に関するものである。
現在まで、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)とポリエチレンは相溶化剤を使用せずに互いに均一な混合物にすることは不可能である、特に、これら2つの成分の極性の違いを考えると不可能であると考えられてきた。しかし、驚いたことに、そうでは無いことを本発明者は見出した。すなわち、シングルサイト触媒を用いて製造したポリエチレンを使した時に、これらの混合物は十分に均一で、驚くほど許容可能な特性を示し、従って、フィルム、熱成形、射出ブロー成形、押出しブロー成形、射出延伸ブロー成形、回転ブロー成形等で上記組成物が使用できるということを本発明は見出した。すなわち、これら2つの成分は極性が違うが、分子構造が類似しているので、互いに相溶解するようになると考えられる。
【0014】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)はモノマーが再生可能な資源から誘導され、少なくとも一つの水酸基と少なくとも一つのカルボキシル基とを有する任意のポリマーにすることができる。ヒドロキシカルボン酸モノマーはトウモロコシやイネの他に砂糖−およびデンプン−を生じる植物等の再生可能な資源から得るのが好ましい。本発明で使用するポリ(ヒドロキシカルボン酸)は生物分解可能であるのが好ましい。「ポリ(ヒドロキシカルボン酸)」という用語にはホモポリマーとコポリマーおよび混合物が含まれる。
【0015】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)は下記一般式(I)で表すことができる:
【化1】

【0016】
(ここで、
9は水素または1〜12の炭素原子を有する直鎖または分岐したアルキル、
10は任意で、1〜12の炭素原子を有する直鎖、分岐または環式のアルキレン鎖、
「r」は反復単位Rの数を表し、30〜15000の任意の整数)
【0017】
反復単位のモノマーは脂肪族で、ヒドロキシル基と、カルボンキシル基とを有する限り特に制限されない。可能なモノマーの例には乳酸、グリコール酸、3-ヒドロキシブチル酸、4-ヒドロキシブチル酸、4-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸、6-ヒドロキシカプロン酸等が含まれ、例えばポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(3-ヒドロキシブチル酸)、ポリ(4-ヒドロキシブチル酸)、ポリ(4-ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(5-ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(6-ヒドロキシカプロン酸)等がある。
【0018】
また、反復単位のモノマーは脂肪族ヒドロキシルカルボン酸のそれぞれの環式モノマーまたは環式ダイマーに由来するものでもよい。その例にはラクチド、グリコリド、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等が含まれる。
【0019】
ヒドロキシカルボン酸単位中に不斉炭素原子がある場合、D−形およびL型および両方の混合物が使用できる。ラセミ混合物を使用することもできる。
【0020】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)は一種または複数のコモノマーを任意成分として含んでいてもよい。このコモノマーは上記の一般式(I)で定義される別のヒドロキシカルボン酸にすることができる。各ヒドロキシカルボン酸の重量百分率は特に制限されない。
【0021】
また、コモノマーは二塩基カルボン酸および二価アルコールから成ることができる。これらが一緒に反応して一般式(II)に示すような乳酸のようなヒドロキシカルボン酸およびそのポリマーと化学反応可能なフリーなヒドロキシル末端基とフリーなカルボン酸末端基とを有する脂肪族エステル、オリゴエステルまたはポリエステルを形成することもできる:
【0022】
【化2】

【0023】
(ここで、
R11およびR12は1〜12の炭素原子を有する直鎖または分岐したアルキレンで、互いに同じでも異なっていてもよく、
「t」は反復単位Tの数を表表し、少なくとも1の任意の整数である)
【0024】
これらのコポリマーも本発明の範囲内である。反復単位「r」(式I)および「t」(式II)の数の合計は30〜15000の任意整数である。各モノマーすなわちヒドロキシカルボン酸モノマー、式(II)の脂肪族エステルまたはポリエステルコモノマーの重量百分率は特に制限されない。ポリ(ヒドロキシカルボン酸)は少なくとも50重量%のヒドロキシカルボン酸モノマーと、50重量%以下の脂肪族エステル、オリゴエステルまたはポリエステル・コモノマーとから成るのが好ましい。
【0025】
一般式(II)に示す脂肪族ポリエステル単位で使用可能な二価アルコールおよび二塩基酸は特に制限されない。使用可能な二価アルコールの例にはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7−オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、イソソルビド、そして、1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびこれらの混合物が含まれる。
【0026】
脂肪族二塩基酸にはコハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、
ウンデカン二酸、ドデカン二酸、3,3-ジメチルペンタン二酸、環式ジカルボン酸、例えばシクロヘキサンジカルボン酸およびこれらの混合物が含まれる。また、ヒドロキシカルボン酸コポリマーの二塩基酸残基を対応するジアシルクロライドまたは脂肪族二塩基酸のジエステルから誘導することもできる。
【0027】
二価アルコールまたは二塩基酸中に不斉炭素原子がある場合、D形およびL型および両方の混合物が使用できる。また、ラセミ混合物を使用することもできる。
【0028】
コポリマーは交互コポリマー、周期コポリマー、ランダムコポリマー、統計コポリマーまたはブロックコポリマーにすることができる。
重合はヒドロキシカルボン酸を重合するための公知の任意の方法で実行できる。ヒドロキシカルボン酸とその環式ダイマーの重合は縮合重合または開環重合で実行できる。
【0029】
ヒドロキシカルボン酸の共重合も公知の任意の方法で実行できる。共重合前にヒドロキシカルボン酸をコモノマーと別に重合するか、両者を同時に重合することができる。
【0030】
一般に、上記のポリ(ヒドロキシカルボン酸)、ホモポリマーまたはコポリマー(上記のように第2の別のヒドロキシカルボン酸または脂肪族エステルまたはポリエステルと共重合体)は分枝剤をさらに含むことができる。本発明のポリ(ヒドロキシカルボン酸)は分岐型、星型、三次元網状構造を有することができる。分枝剤はそれが少なくとも3つの水酸基および/または少なくとも3つのカルボキシル基を有する限り特に制限されない。分枝剤は重合中に加えることができる。その例としてはポリマー、特に多糖、セルロース、デンプン、アミロペクチン、デキストリン、デキストラン、グリコーゲン、ペクチン、キチン、キトサンおよびこれらの誘導体が挙げられる。他の例は脂肪族多価アルコール、例えばグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、キシリトール、イノシトール等である。分枝剤の他の例は脂肪族多塩基酸である。この種の酸にはシクロヘキサンヘキサカルボン酸、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、1,3,5-ペンタン−トリカルボン酸、1,1,2-エタントリカルボン酸等が含まれる。
【0031】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)の全分子量はナノチューブ複合材料および最終樹脂組成物の所望の機械特性、熱特性および加工性に依存するが、5,000〜1,000000グラム/モル、好ましくは10,000〜500,000グラム/モル、より好ましくは35,000〜200,000グラム/モルであるのが好ましい。ポリマーの全分子量は40,000〜100,000グラム/モルであるのが最も好ましい。
【0032】
分子量分布は一般にモノモダル(単峰、monomodal)である。重量平均分子量および/またはタイプが異なる2つ以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)の混合物の場合にはポリマーの分子量分布はマルチモダル、例えばビモダル(双峰)やトリモダル(三峰)になる。
【0033】
有用性および透明性の観点から、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)はポリ乳酸(PLA)であるのが好ましい。このポリ乳酸は乳酸またはラクチドから、好ましくはラクチドから直接得られるホモポリマーであるのが好ましい。
【0034】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)は生物分解可能、好ましくはコンポスト(堆肥)化可能な)もの、例えばPLAであるのが好ましい。
【0035】
ポリエチレン
本発明で使用するポリエチレンはシングルサイト触媒、好ましくはメタロセン触媒を使用して製造する。
「ポリエチレン」という用語はホモポリマーおよびα−オレフィンコモノマーを有するコポリマーを含む。この「ポリエチレン」という用語には上記定義のポリエチレンの一種または複数の混合物も含まれる。
【0036】
ポリエチレンがコポリマーの場合、コモノマーは任意のα-オレフィン、すなわち2〜12の炭素原子を有する任意の1−アルキレン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテンおよび1−ヘキセンにすることができる。コポリマーは交替コポリマー、周期コポリマー、ランダムコポリマー、統計コポリマー、ブロックコポリマーにすることができる。
本発明の樹脂組成物で使用するポリエチレンはエチレンのホモポリマーまたはそれとブテンまたはヘキセンとのコポリマーであるのが好ましい。
エチレンはシングルサイト触媒の存在下で低圧重合される。触媒はメタロセン触媒であるのが好ましい。必要に応じて同じまたは異なるタイプの一つまたは複数の触媒を一つの反応装置で同時に使うか、2つの並列反応装置、互いに直列に連結された2つの反応装置で使用してマルチモダル(多峰)や分子量分布が広いポリマーを得ることができる。
【0037】
低圧重合したポリエチレンは長鎖分岐の濃縮が低く、分子間力が強く、引張強度が高い。低圧重合エチレンは直鎖低密度(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)に分類でき、密度は主として加えるコモノマーの量で制御でき、加えるコモノマーの量を多くすると短鎖分枝度が高くなり、密度が低下する。コモノマーはポリプロピレン、1-ブテン、1-ペンテンまたは1-ヘキセンにするのが好ましい。
【0038】
ポリオレフィン全体の特性は使用した方法およびシングルサイト触媒のタイプに依存する。シングルサイト触媒は例えばメタロセン触媒または拘束幾何(constrained geometry)触媒である。ポリ(ヒドロキシカルボン酸)はチーグラー−ナッタ触媒またはクロム触媒を用いて製造したポリオレフィンよりも、シングルサイト触媒を用いて製造したポリオレフィン、特にメタロセン−触媒を用いて製造したポリオレフィンとより良く混合するということが確認されている。ポリ(ヒドロキシカルボン酸)とシングルサイト触媒を用いて製造したポリオレフィン、特にメタロセン−触媒を用いて製造したポリオレフィンとの混合物は均一で、相溶化剤は不用である。エチレン重合に適したメタロセン触媒の例にはエチレンビス(テトラヒドロキシインデニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビス(インでニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドおよびこれの混合物が含まれる。
【0039】
他のポリエチレンと比較して、シングルサイト触媒を用いて製造したポリオレフィン、特にメタロセン−触媒を用いて製造したポリオレフィンは分子量分布の幅がはるかに狭い。分子量分布は6以下、好ましくは4以下、さらに好ましくは3.5以下、最も好ましくは3以下であるのが好ましい。分子量分布の幅が狭いと、同じように分子量分布の幅が狭いポリ(ヒドロキシカルボン酸)と相溶性になる。
【0040】
理論に拘束されるものではないが、シングルサイト触媒、特にメタロセン−触媒のポリエチレンの分子構造がポリ(ヒドロキシカルボン酸)との相溶性を誘発すると考えられる。このポリエチレンには長鎖分岐はないか、極めて少ない。従って、コモノマーはポリエチレン骨格に沿って極めて規則的に入り、コモノマーすなわち短鎖分岐の分布が極めて規則的になる。ポリエチレン中でのこの効果(短鎖分岐の分布が非常に狭い(SCBD)として公知)はシングルサイト触媒で作ったポリエチレン、特にメタロセン触媒ポリエチレンに特有な効果である。その結果、溶融物からの結晶化中に非常に小さい結晶子が材料全体で形成され、優れた光学透明性を与える。これに対してチーグラー−ナッタ触媒またはクロム触媒を用いて製造したポリエチレンではコモノマーの分布は悪く、極めてランダムに入る。従って、結晶化時に異なる寸法の結晶が広い幅で分布し、ヘイズ値が高くなる。
【0041】
特定の理論に拘束されるものではないが、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)の分子構造はシングルサイト触媒(特にメタロセン-触媒)ポリエチレンの分子構造に類似するために、すなわち、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)は狭い分子量分布で、長鎖分岐はなく、短鎖分岐の分布が狭い(短鎖分岐が存在したとしても)ため、他のポリエチレンよりも、シングルサイト触媒ポリエチレン、特にメタロセン-触媒で作ったポリエチレンにより良く相溶すると考えられる。
【0042】
本発明組成物には一種または複数の添加剤を加えることができる。この添加剤は混合中および/または混合物から得られる生成物、例えフィルム中に加えることができる。添加剤は当業者に公知で、例えば抗酸化剤、例えばチバ(Ciba)社から入手可能なイルガノックス(IRGANOX、登録商標)1010またはイルガノックス(IRGANOX、登録商標)1076のようなヒンダードフェノール樹脂、亜リン酸エステル、例えばチバ(Ciba)社から入手可能なイルガノックス(IRGANOX、登録商標)168、抗クリング剤、粘着付与剤、例えばポリブテン、テルペン樹脂、脂肪族および芳香族炭化水素樹脂、アルカリ金属およびグリセリンステアレートおよび水素化ロジン;紫外線安定剤;熱安定剤;ブロッキング防止剤;離型剤;帯電防止剤;顔料;着色剤;カーボンブラック;染料;ワックス;シリカ;充填剤;タルク、抗酸化剤;過酸化物;グラフト化剤;滑剤;清澄剤;核剤などがある。
【0043】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)とポリエチレンのブレンディング
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)とシングルサイト触媒を用いて製造したポリエチレンとのブレンディング方法は公知の任意の物理的ブレンディング方法で実行でき、例えば湿式混合または溶融混合で行なうことができる。ブレンディング条件はブレンディング法と使用したポリエチレンとに依存する。使用した方法とポリエチレンおよびポリ(ヒドロキシカルボン酸)に応じて任意の形することができ、例えば羽毛状物(フラフ、fluff)、粉末、顆粒、ペレット、溶液、スラリーおよび/またはエマルションにすることができる。
【0044】
ポリマーの乾式混合を用いる場合の乾式混合条件には、室温〜ポリマーの融点までの温度と、数秒〜数時間の混合時間とが含まれる。乾燥成分は例えば押出機で溶融混合前に混合することができる。
【0045】
溶融加工は熱可塑性樹脂の分野の標準的機器を使用して迅速かつ簡単に実行できる。各成分をバンバリー(Banbury)、ハッケ(Haake)またはブラベンダ(Brabender Internal Mixer)でバッチで溶融するか、典型的な押出機、例えば2軸スクリュー押出機を用いて連続的に混合できる。溶融混合時のブレンダ中のポリマーの温度は一般に、使用したポリマーの最も高い融点からこの融点より約80℃上の温度、好ましくは融点からこの融点より30℃上の温度までの範囲である。溶融混合に必要な時間は使用したブレンディング法に依存し、広範囲に変えることができる。必要な時間は各成分が完全に混合するのに十分な時間である。一般に、ポリマーは約10秒から約10分まで、好ましくは約5分まで、さらに好ましくは約2分までの時間混合される。
【0046】
また、各成分を湿式混合することもでき、成分の少なくとも一つは溶液またはスラリーの形にすることができる。溶液混合法を使用する場合のブレンディング温度は一般に25℃から含まれる溶液の曇点より50℃上の温度までである。混合後、溶剤または希釈剤を蒸発除去するとポリ(ヒドロキシカルボン酸)とポリエチレンの均一混合物になる。
【0047】
本発明の一つの実施例の樹脂組成物は少なくとも0.1重量%〜50重量%のポリ(ヒドロキシカルボン酸)と、少なくとも50重量%、好ましくは50重量%以上のポリエチレンとを含む。
【0048】
より好ましくは、本発明の樹脂組成物は0.1〜49.9重量%、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.1〜15重量%、最も好ましくは0.1〜10重量%のポリ(ヒドロキシカルボン酸)を含む。また、本発明の樹脂組成物は50〜99.9重量%、好ましくは70〜99.9重量%、より好ましくは800〜99.9重量%、より好ましくは85〜99.9重量%、最も好ましくは90〜99.9重量%のポリエチレンを含む。
【0049】
樹脂組成物は本質的にポリエチレンとポリ(ヒドロキシカルボン酸)とから成る、すなわち、0.1〜50重量%のポリ(ヒドロキシカルボン酸)と、50〜99.9重量%のポリエチレンとから成るのが好ましい。
【0050】
本発明の好ましい実施例の組成物は、ポリエチレンとポリ(ヒドロキシカルボン酸)とを相溶化するための相溶化剤を必要としない(すなわち相溶化は含まない)。
【0051】
本発明の樹脂組成物は以下で説明するのと同じ用途で使用される他の樹脂組成物との混合物として使用することもできる。
本発明組成物はその中のポリ(ヒドロキシカルボン酸)の含有量によっては部分的にコンポスト化が可能である。
【0052】
生物分解性は規格EN 13432:2000で定義される。包装材料が生物分解可能であるためには下記のライフ・サイクルを有していなければならない:
(1)時間t0(材料が生産ラインから離れた時)から始まる貯蔵および/または使用時間。
(2)時間t1(この時からポリマーは例えばエステル結合の加水分解等によって化学的に崩壊し始める)から始まる一体化の壊変時間、
(3)生物分解時間(この間に、部分的に加水分解されたポリマーはバクテリアおよび微生物の作用で生物学的に劣化する)
【0053】
劣化可能(degradable)、生物分解可能(biodegradable)およびコンポスト化可能(compostable)という用語は互いに同じような意味を表す用語として使われているが、区別することが重要である。コンポスト化可能(compostable)なプラスチックとは上記に加えて「利用可能なプログラムの一部としてのコンポスト現場で生物学的に分解を受けてプラスチックが視覚的に区別(distinguishable)できなくなり、公知のコンポスト化可能な材料(例えばセルロース)と同じ速度で二酸化炭素、水、無機化合物およびバイオマスに分解され、しかも、有毒残渣を残さないもの」(ASTMの定義)である。一方、劣化可能(degradable)なプラスチックは単に化学的に変化するだけのもので、微生物によって生物学的に劣化されるプラスチックであるという条件はない。従って、劣化可能なプラスチックが必ずしも生物分解可能であるというわけではなく、生分解性プラスチックが必ずしも劣化可能(すなわち、ゆっくりと壊れおよび/または毒性残渣を残す)であるというわけでもない。
【0054】
規格EN 13432:2000に定義のコンポスト化可能(compostable)の主たるな特徴は下記である:
(1)材料を篩分けして分解(fisintegration)度を測定して、生物分解(biodegraded)した寸法を求める。コンポスト化可能とみなされるためには材料の10%以下の寸法が2mm以上でなければならない。
(2)生物分解度は生物分解プラスチックによって所定時間の間に生じる二酸化炭素の量を測定して決定する。コンポスト化可能とみなされるためには90日以内に90%が生物分解されなければならない。
(3)エコ毒性の測定は重金属の濃度が標準限界値以下であることと、土壌に種々の濃度でコンポストを混合して植物の成長をテストし、対照コンポストと比較して決定する。
【0055】
樹脂組成物の用途
樹脂組成物はポリエチレンの存在により機械特性が改良され、再生可能な資源が存在し、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)の存在により樹脂組成物はコンポスト化可能であるので、樹脂組成物にはフィルムおよび成形用途を含めた下記のような多種多様な用途がなる。
【0056】
本発明の樹脂組成物は特にフィルムに成形するのに適し、例えば注型、ブロー成形、1軸配向および2軸配向フィルムにすることができる。驚くことに、本発明のポリマーブレンドから形成されたフィルムは、100%がポリエチレンであるフィルムよりも優れた特性、特に高い引張強度を示すということが分かった。ポリ(ヒドロキシカルボン酸)、例えばPLAは表面張力が高いので、本発明の樹脂組成物から成るフィルムはポリエチレンのみから成るフィルムと比較して印刷特性が改善される。本発明のフィルムは100%がポリエチレンから成るフィルムと比較して、熱溶着特性および高局波溶着特性が良くなる。特に、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)とメタロセン触媒を用いて製造したポリエチレンとの混合物は、メタロセン触媒ポリエチレン単独のものとほぼ同じ初期溶着(シーリング)温度を有する([図5]参照)。ポリ(ヒドロキシカルボン酸)の存在によってフィルムのスチフネスも増加し、ポリエチレンフィルムと比較して水呼吸性(water breathability)も改良される。このフィルムは大気ガス、特に酸素、二酸化炭素および窒素に対するバリアー特性がポリエチレンだけから成るフィルムと比較して改善される。
【0057】
本発明のポリマーブレンドは注型またはブロー成形で単層(単層フィルム)または多層(多層フィルム)のフィルムに形成できる。多層フィルムで使用する場合、本発明のポリマーブレンドは多層フィルムの任意の層で使用でき、また、多層フィルムの複数の層で必要に応じて使用することができる。本発明のポリマーブレンドを使用してフィルムの1層以上の層を形成する場合、その各層の組成を個別に選択できる。すなわち、各層の化学組成、濃度、メルトインデックス、厚さ等を同じにしたり、フィルムの所望特性に応じて異なるものにすることができる。また、他の層を100%がポリ(ヒドロキシカルボン酸)、例えばPLA、100%がポリエチレン、高圧重合した低密度ポリエチレン(LDPE)、LLDPE、MDPEまたはHDPEから成る樹脂で形成することができる。多層フィルムの各層は適当な粘度を有していなければならないということは当業者は理解できよう。
【0058】
フィルムの各層およびフィルム全体の厚さは特に制限されず、フィルムの所望特性に応じて決定される。典型的なフィルムの層は約1〜1000マイクロメートル、一般には約5〜100マイクロメートルの厚さを有し、全体の厚さは5〜200マイクロメートル、特に5〜100マイクロメートルである。
【0059】
本発明は本発明の任意のポリマーブレンドを使用した単一層(単層)のフィルムを提供するのが好ましく、本発明の他の実施例では、フィルムの厚さは10〜150マイクロメートルである。
【0060】
本発明フィルムは公知の任意の押出し成形または共押出成形法を用いて形成できる。また、一般に用いられているブロー成形、チルローラー法にも適している。例えば、本発明組成物を融解状態でフラットダイから押出し、冷却してフィルムに形成する。あるいは、本発明組成物を融解状態で環状ダイから押出し、インフレーションし、冷却してチューブ、ブローフィルムにし、それはを軸線方向にスリットし、展開してフラットフィルムに形成することができる。
【0061】
特定実施例ではパイロットスケールの商用キャストフィルム成形機械を使用してキャストフィルムにすることもできる。この場合には、ポリマー混合物のペレットを約220℃〜約270℃の温度に溶融する。溶融温度は各樹脂の溶融粘度にマッチするように選択される。溶融流を単一フィルム押出しダイから所望の幅で押出す。ダイのギャップ間隙は250〜750マイクロメートル、好ましくは約600マイクロメートルにする。次いで材料を最終寸法まで延伸する。ダイ間隙から出て35℃以下、好ましくは約32℃の温度に維持された第1チルローラーに至る溶融物をピン止めするためには真空ボックスまたはエアーナイフを使用することができる。
【0062】
他の実施例では、ブローフィルムに成形できる。この場合にはブローフィルム成形ラインを使用して、ダイのギャップ間隙が1.0〜2.0mm、好ましくは1.2mmで、ダイ直径が1〜100mm、好ましくは50mmで、長さ/直径比が25であるダイを使用してフィルムを製造できる。ブローアップ比(BUR)は1.0〜10.0、好ましくは1.0〜5.0、最も好ましくは1.3〜3.5にすることができる。ダイから押出されたフィルムは例えばフィルム表面上に空気を吹分けて冷却される。工業的プロセスではダイから引き出した円筒形のフィルムを冷却し、必要に応じて軸方向の加工、スリッティング、処理、シーリングまたは印刷がされる。完成フィルムはロールに巻き取られ、後加工とカバリングがされる。
【0063】
多層フィルムも公知の方法で形成できる。各層を形成する材料を共押出し装置とダイ組立体とを用いて共押出しし、互いに接着した少なくとも2層を有するフィルムを作るか。共押出しはキャストフィルムまたはブローフィルムプロセスに適している。多層フィルムを押出し被覆法で形成することもできる。この場合にはダイから出た溶融ポリマーを基材上に加熱状態で被覆する。
【0064】
上記のポリマーブレンドから作られるフィルムには多く用途がある。このフィルムは公知の多数の手段、例えばカッティング、スリッティングおよび/または巻き戻し加工等によって他の形、例えばテープにすることができる。延伸、シーリングまたは配向フィルムとしても有用である。
【0065】
ブレンドから作られたフィルムの表面張力はポリエチレンフィルムより改善されるが、本発明の樹脂組成物から作られたフィルムの表面張力を公知の技術でさらに改質する、例えばコロナ放電、各種の化学処理、火炎処理することでさらに増加させることもできる。
【0066】
本発明フィルムは粘着フィルム、延伸フィルム、収縮フィルム、バッグ、積層フィルム、ライナー、おしめ用フィルム、キャンディの包み、その他当業者に明らかな各種の最終用途で使用できる。本発明フィルムは各種製品のバンドルや一体化のためのパッケージング材料、冷凍食品のパッケージングを含む可撓性食品のパッケージング;バッグ、例えばゴミ袋、ビンのライナー、工業用ライナー、積込み袋、生産バッグ;製造時または運送時に表面を一時的に保護するための延伸または未延伸の保護材料等で使用できる。
【0067】
本発明組成物はさらに、一般的な射出成形、射出延伸ブロー成形、押出成形、押出ブロー成形、延伸ブロー成形、熱成形、発泡成形および回転成形の用途に適している。これらのプロセスで作られる物品は単層でも多層でもよい。その少なくとも1つの層は本発明の樹脂組成物から成る。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0068】
20重量%のPLA(テラマック(Terramac)、登録商標)6201と、80重量%の2つの異なるポリエチレンとの2つの成分を乾式混合して2つの混合物を作り、180℃の温度で約30分間で押出した。「混合物A」は80重量%のメタロセン触媒を用いて製造したポリエチレン(mPE)を用いたものであり、「混合物B」は80重量%の高圧重合で製造したLDPEである。各成分の特性は[表1]にまとめて示してある。
【0069】
【表1】

【0070】
ポリエチレンとPLAの濃度はASTM D1505で測定した。ポリエチレンの溶融指数MI2は2.16kgの荷重下で190℃でASTM D 1238に従って測定した。同じ規格に従ってPLAの溶融指数MI2も測定したが、この場合には233ppmの水の存在下と、1000ppmの水存在下とで測定した。PLAとポリエチレンのMWおよびMWDはGPCを用いて測定した。この場合、PLAはクロロホルムに溶かし、25℃で測定した。ポリエチレンのCH3とC49の短鎖分枝指数はNMRを用いて求めた。メタロセン触媒を用いて製造したポリエチレンのヘキセンコモノマーの重量百分率はNMRを使用して求めた。
【0071】
共押出しブローフィルム押出機(Collinブローフィルム押出機、吐出量12kg/h、使用比25%-50%-25%、長さ/直径比=25、ダイ直径=50mm、ダイ・ギャップ=1.2mm、ブローレシオ(BUR)=1.3-3.5)を用いて各混合物のフィルムを製造して、本発明の「フィルムA」および「フィルムB」を得た。
【0072】
比較として、同じ手順でmPE、LDPEおよびPLAだけから成る「フィルムC」、「フィルムD」および「フィルムE」を作った。全てのフィルムの厚さはは100マイクロメートルにした。「フィルムA」、「フィルムB」、「フィルムC」、「フィルムD」および「フィルムE」の特性を測定し、結果は[表2]に示した。
【0073】
摩擦係数μsおよびμkはASTM D1494-02で測定した。エルメンドルフ(Elmendorf)引裂強度は縦(機械)方向(MD)および横方向(TD)で測定した。これらの測定はASTM D 1922で行なった。ダート衝撃強度(Dart)はASTM D 1709に従って測定した。縦(機械)方向(MD)および横方向(TD)の降伏引張強度はASTM D 882-02に従って測定した。グロス(艶)はASTM D 2457に従って45度の角度で測定した。ヘイズはISO 14782に従って測定した。
【0074】
【表2】

【0075】
PLAとポリエチレンとの混合物は相溶であり、メタロセン触媒を用いたポリエチレンは高圧重合したLDPEよりはるかに相溶であることが分かる。
【0076】
[図1]〜[図4]は各混合物の走査型電子顕微鏡(SEM)の図で、[図1]と[図2]はそれぞれ「フィルムA」および「フィルムB」のミクロ構造のSEM図であり、[図3]と[図4]はそれぞれ「フィルムA」および「フィルムB」の表面の図である。これらの図は、メタロセン触媒を用いて製造したポリエチレンとPLAとの混合物から成るフィルムはLDPEをベースにしたものより均一であることを示している。この違いは特に[図3]と[図4]のフィルムの表面構造のSEM図から明らかである。
【0077】
[表2]から、PLAをメタロセン触媒を用いて製造したポリエチレンとブレンディングした場合に、PLAだけから成るフィルムに比べて機械的特性が良くなることが分かる。さらに、「フィルムE」と比較して、「フィルムA」の縦方向エルメンドルフ引裂強度は良くなっている。一方、「フィルムB」は縦方向エルメンドルフ引裂強度が「フィルムE」より小さい。
【0078】
「フィルムA」は100%がポリエチレンである「フィルムC」および「フィルムD」と類似した特性を示す。引張強度は良くなり、エルレンマイヤ引裂強度および衝撃強度はほぼ同じである。
【0079】
相対では、メタロセン触媒を用いて製造したポリエチレンを含むブレンドの「フィルムA」は機械強度がより良く、特に縦方向のエルレンマイヤー引裂強度がLDPEから成っているブレンドの「フィルムB」より高い。引張強度は各ポリエチレンと比較すると増加さえする。[表2]から、PLAとブレンドしたときにポリエチレンをダート(Dart)衝撃強度改質材料として使用できることが分かる。
【0080】
「フィルムB」と比較して「フィルムA」のヘイズ%は低くなる。これからもPLAとmPEとの相溶性はPLAとLDPEとの相溶性よりはるかに高いことが分かる。
「フィルムA」もASTM D1434で測定した酸素および二酸化炭素に対するガスバリヤ性が「フィルムB」より良い。
【0081】
「フィルムA」は「フィルムB」より表面張力が増加するので、「フィルムA」上への印刷は「フィルムB」上への印刷より容易である。
【0082】
PLAを含む樹脂組成物のポリエチレンフィルムを使用した時の利点は多数ある。先ず最初に、樹脂組成物の一部を迅速に再生可能な資源のPLAで代替できる。石油資源に由来するエチレンの量、従ってフィルムに必要な量を減らすことができる。
【0083】
樹脂組成物中にPLAが存在するので、最終樹脂組成物は部分的に生物分解可能となり、しかも、コンポスト化可能になる。樹脂ブレンド中のPLAがより急速にコンポスト化されると、残ったポリエチレンのより広い表面積が露出されるので、このポリエチレンは単にポリエチレンだけでできた生成物よりも速く崩壊する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも0.1重量%のポリ(ヒドロキシカルボン酸)と、少なくとも50重量%のシングルサイト触媒、好ましくはメタロセン触媒を用いて製造したポリエチレンとから成る樹脂組成物。
【請求項2】
ポリエチレンとポリ(ヒドロキシカルボン酸)とを相溶化するための相溶化剤を含まない請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
ポリエチレンがエチレンビス(テトラヒドロキシインデニル)ジルコニウムジクロライドのメタロセン触媒を用いて製造されたものである請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
ポリエチレンの分子量分布が3.5以下、好ましくは3.0以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)がポリ(乳酸)である請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
ポリ(乳酸)がコポリマーであり、そのコモノマーが下記(1)および(2)の中から選択される一つまたは複数のコモノマーである請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物:
(1)乳酸以外の脂肪族ヒドロキシカルボン脂肪族、例えばグリコール酸、3-ヒドロキシブチル酸、4-ヒドロキシブチル酸、4-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸、6-ヒドロキシカプロン酸、
(2)二価アルコールと二塩基カルボン酸とのポリエステル。
【請求項7】
シングルサイト触媒を用いて製造したポリエチレンとポリ(ヒドロキシカルボン酸)とをブレンディングする段階を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂組成物の、フィルム成形、発泡成形、ヒーシール、ブロー成形、射出成形および/または延伸ブロー成形、押出しブロー成形、回転成形、熱成形および他の樹脂とのブレンドで使用。
【請求項9】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)の、ポリエチレンフィルムの印刷適性を改善する表面張力改質剤としての使用。
【請求項10】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)の、ポリエチレンのガスバリア特性改善剤としての使用。
【請求項11】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)の、ポリエチレンの水呼吸性(water breathability)改善剤としての使用。
【請求項12】
ポリエチレンがシングルサイト触媒、好ましくはメタロセン触媒を用いて使用したものである請求項9〜10のいずれか一項に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−536975(P2010−536975A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521448(P2010−521448)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061097
【国際公開番号】WO2009/027377
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】