ポリエチレングリコール−インターフェロンα結合体
本発明は、一般式 (1)の三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体であって、ポリエチレングリコールの平均分子量が400-45,000ダルトンである結合体、および前記結合体を含む医薬組成物に関する。一般式 (1)の生物活性ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体は、抗ウイルス活性および抗腫瘍活性を有し、反応における高い反応性により収率および純度が改善されており、また血中半減期を顕著に増加する効果およびインターフェロンの生物学的活性の減少を最小限とする効果を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体に関する。
【背景技術】
【0002】
インターフェロンは、1957年にIsaacsおよびLindenmannにより発見され、優れた抗ウイルス効果を有することが知られている [Isaacs et al, Virus interference, 147 (1957)]。インターフェロンはタイプ I (IFN-α、β、ω) およびタイプ II (IFN-γ)に分類され、インターフェロンにより生じる細胞は白血球、繊維芽細胞、T細胞など様々である。
【0003】
修飾インターフェロンαは、1986からヘアリー細胞白血病の治療薬として認可され使用されはじめた。つまりインターフェロンは、遺伝子組換技術によって産生され癌の処置に使用された、最初のサイトカインである [Pestka et al, Semin. Oncol., 24 (1997)]。
【0004】
インターフェロンαは、抗ウイルス活性および抗腫瘍活性を有する医薬活性タンパク質であり、世界の40ヵ国以上で14クラス以上の腫瘍およびウイルス疾患の処置に使用されている。インターフェロンαの臨床的に有効な処置分野は、ヘアリー細胞白血病、カポジ肉腫、慢性骨髄性白血病 (CML) 、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、腎細胞癌である [Nagabhushan T.L. et al, Regulatory practice for biopharmaceutical production, 221-234 (1994)]。
【0005】
また、インターフェロンは、癌患者の生存期間を延長しうる最初のヒトタンパク質であり、各種の腫瘍、例えば卵巣癌、乳癌、気管支癌、膀胱癌、胃癌などや急性白血病に適用可能であると期待される [Mosbe Talpaz et al, Seminars in Hepatology, 38(3), 22-27 (2001)]。
【0006】
特に、B型またはC型肝炎の処置のため、インターフェロンα-2a (IFN α-2a)、インターフェロンα-2b、およびその変異タンパク質としてインターフェロン-con1 (IFN-con1) が現在使用されている。また、B型肝炎ウイルス (HBV) またはC型肝炎ウイルス (HCV)などのウイルスによる感染が慢性に進行した場合、その感染が肝細胞癌に進行する危険性があることが報告されている。それゆえ、インターフェロンは癌の予防に使用することができる。
【0007】
しかしながら、臨床で有用なタンパク質治療薬としてのインターフェロンは、遺伝子工学的方法で作成された酵素、タンパク質、ホルモン、ペプチドなどと同様に、インビボでの低い安定性、インビボでの迅速な消失、反復投与による抗体形成およびそれによる過敏反応などの問題を有する。
【0008】
特に、1日1回、1週間3回などの頻回投与により患者に痛みが誘導される。さらに、長期間の処置を必要とする患者にとって、かかる投与はクオリティー・オブ・ライフを脅かしうる。
【0009】
これら問題を改善するため、安定で長期間活性を維持しうる医薬として、ポリエチレングリコールで修飾されたタンパク質治療薬が開発され、現在使用されている。
【0010】
ポリエチレングリコールは、親水性が高く、治療用タンパク質と結合すると溶解性を上昇させることができる。またポリエチレングリコールは、それが結合したタンパク質の分子量を酵素活性や受容体結合など主要な生物学的機能を維持しつつ増加させるのに有効である。つまりポリエチレングリコールは、糸球体ろ過を減少させることができ、またそのタンパク質を分解するタンパク分解酵素から有効にタンパク質を保護することができる。それゆえ、ポリエチレングリコールは、タンパク質分解を予防する、タンパク質の安定性および循環時間を増加する、および免疫原性を減少するという利点を有する。
【0011】
一般に使用される直鎖ポリエチレングリコールの分子量は約1,000-25,000ダルトンであるが、タンパク質またはペプチドの生物学的活性領域が限定されているためその活性を維持しつつ多くの直鎖高分子をタンパク質またはペプチドに結合するのには限界がある。
【0012】
直鎖ポリエチレングリコールのこれら問題を改善するため、Wana, H et alはトリクロロトリアジンを用いて分岐モノ-メトキシポリエチレン(mPEG) 誘導体をタンパク質に結合することを試みた [Wana, H et al., Ann. N.Y.Acad.Sci. 613:95-108 (1990)]。
【0013】
しかしながら、活性化分岐ポリエチレングリコール誘導体は大きさが大きく、タンパク質またはペプチド表面で立体障害が誘導され、それにより修飾タンパク質またはペプチドの活性が減少する。また、かかる誘導体は通常不完全な分岐ポリエチレングリコール誘導体のために精製収率が低くなる。
【0014】
韓国特許第0396983号は、これら分岐高分子誘導体の問題の改善を試みた。具体的には、この特許は、高分子とタンパク質とを結合するリンカーを長くして分岐高分子により誘導される立体障害を減少することで生物学的活性領域に結合するリンカーの数を最小限とし、これによりタンパク質構造を保護して生物学的活性の減少を最小限とすることを試みた。しかしながら、長いリンカーを有する活性化分岐高分子誘導体であるトリ-PEG-NHSは、過剰な直鎖PEG-NHSと少量のジ-PEG-NHSをリンカー構造製造時の不純物として含む。これらはインターフェロンへの結合反応に競合的に関与し、精製困難な低分子PEG-インターフェロンα結合体やジ-PEG-インターフェロンα結合体を生じる。つまり、この方法は低純度および低収率の問題を有する。
【0015】
それゆえ、インターフェロンαの生物活性の減少を最小限とすることができ、高純度であり、かつ安定性が良好な高分子ポリエチレングリコール-インターフェロン結合体がいまだ必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的はインターフェロンαや、当業界で知られるポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体と比較して、高純度かつ高収率で製造され、血中半減期が長く、そしてインターフェロンの生物活性減少が最小限である、三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体、前記結合体の製造方法、および前記結合体を含む医薬組成物、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明は、三分岐ポリエチレングリコール誘導体をインターフェロンαに結合した高純度の高分子、および前記分子を含む医薬組成物を提供する。
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体は、三分岐ポリエチレングリコール誘導体とインターフェロンαとの結合反応で生じ、以下の一般式 (1)で表すことができる:
【化1】
[式中、nは1-1,000の整数であり、mは10-1,000の整数である]。
【0020】
上記結合体において、ポリエチレングリコールの平均分子量は400-45,000ダルトン、好ましくは30,000-45,000ダルトン、より好ましくは43,000ダルトンである。
【0021】
ポリエチレングリコールの分子量が大きくなると高分子結合体の薬物動態は良好になるが、活性が減少する。それゆえ、適切な分子量が重要である。
【0022】
Zは、インターフェロンαとポリエチレングリコールのリンカーとして機能する (CH2)S または(CH2)SNHCO(CH2)S であり、ここでSは1-6の整数である。Yは、インターフェロン分子のNH2 官能基とポリエチレングリコール誘導体の官能基との結合反応により形成されるである二級アミンまたはアミド結合である。
【0023】
また、本発明は、以下の一般式 (1)に示す三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の製造方法であって、ポリエチレングリコールの平均分子量が400-45,000ダルトン、好ましくは30,000-45,000ダルトン、より好ましくは43,000ダルトンである方法を提供する。
【0024】
本発明の三分岐ポリエチレングリコール誘導体は、3つの直鎖状生物学的受容性高分子が結合した分岐構造を有する活性化高分子である。グリセリン構造における3つのOH (ヒドロキシ) 領域がいずれもエチレングリコール単位分子と重合しており、1つの領域の末端が官能基として活性化されている。活性化領域以外の他の2つの領域は、さらなる反応を予防するためモノメトキシで置換されている。上記分岐ポリエチレングリコール誘導体を製造する場合、各直鎖ポリエチレングリコールの大きさは自由に調節することができ、これにより適切な構造および分子量を有する高分子を製造し、インターフェロンαに結合することができる。
【0025】
インターフェロンαに結合する分岐ポリエチレングリコール (PEG) 誘導体は、以下の一般式 (2)により表される:
【化2】
[式中、nは1-1,000の整数であり、mは10-1,000の整数である]。結合体のポリエチレングリコール単位の平均分子量は400-45,000ダルトン、好ましくは30,000-45,000ダルトン、より好ましくは43,000ダルトンである。Xは、インターフェロンαを含むタンパク質またはペプチドと化学的に反応しうる以下の一般式 (3)により表される官能基である。好ましくは、Xは式 (3)の化合物のうちのN-ヒドロキシスクシンイミド (a) またはアルデヒド (b) であり、各々インターフェロンαに対する結合反応において高収率でアミド結合および二級アミン構造結合を形成する。
【化3】
[式中、Zは、インターフェロンαとポリエチレングリコールのリンカーとして機能する (CH2)S または(CH2)SNHCO(CH2)S であり、ここでSは1-6の整数である]。
【0026】
本発明において、インターフェロンα:分岐ポリエチレングリコール誘導体の反応モル比は1: 0.5 〜 1: 50である。好ましくは、インターフェロンα:分岐ポリエチレングリコール誘導体のモル比は、1: 0.5 〜 1: 3である。ポリエチレングリコールのインターフェロンαに対するモル比を増加させると、モノポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の単位時間あたりの収率が減少する。
【0027】
また本発明は、本発明のポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体を有効成分として含む、インターフェロンα感受性疾患を処置または予防するための医薬組成物を提供する。組成物は、有効量の本発明のポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体、希釈体、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、ジュバンチア(juvantia)および/または担体から構成されうる。
【0028】
本発明の医薬組成物は、注射剤、カプセル剤、錠剤、液剤、丸剤、軟膏剤、眼軟膏剤、点眼剤、経皮吸収剤、ペースト剤、パップ剤、パッチ剤、エアロゾルなどに製剤することができる。そして、本発明の医薬組成物の有効投与は、患者の年齢、症状、体重などにより変動しうるが、通常1週間に1回または2週間に1回である。また、組成物は、1日の有効投与量の範囲内で1日1回または複数回投与してもよい。
【0029】
さらに本発明は、本発明の結合体を有効成分として投与することを含む、インターフェロンα感受性疾患を処置または予防する方法を提供する。インターフェロンα感受性疾患には、ヘアリー細胞白血病、カポジ肉腫、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、腎細胞癌が含まれる。さらに疾患には、卵巣癌、乳癌、気管支癌、膀胱癌、胃癌など、および急性白血病などの他の癌が含まれる。
【0030】
本発明を以下の実施例により具体的に説明する。以下の実施例は本発明をさらに説明する目的のものであり、本発明の範囲はこれによりいかなる意味においても限定されない。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、生物学的に活性な新規なグリセリン構造を有する三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体に関する。すなわち本発明は、高純度かつ高収率であり、生物活性の減少が最小限であり、そして血中半減期が増加していることを特徴とし、これは、直鎖ポリエチレングリコールは多くの直鎖高分子とタンパク質またはペプチドとを結合できない;分岐高分子誘導体はタンパク質またはペプチドの表面で過剰な立体障害を誘導する;および、リンカーが長い分岐高分子は低純度で精製収率が低い、などの問題を克服している。
【0032】
それゆえ、抗ウイルス活性および抗腫瘍活性を有するポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体を含む本発明の医薬組成物は、当業界にて既知のインターフェロンα治療薬と比較して、活性の減少が最小限で、治療効果が改善されうるもので、また体内半減期が長くなったことから投与頻度を減少することで患者の不快度を最小限としうる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、実施例1のサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(以下、SE-HPLC)による分析結果を示す図である。
【図2】図2は、実施例2のSE-HPLCによる分析結果を示す図である。
【図3】図3は、比較例1のSE-HPLCによる分析結果を示す図である。
【図4】図4は、比較例2のSE-HPLCによる分析結果を示す図である。
【図5】図5は、比較例3のSE-HPLCによる分析結果を示す図である。
【図6】図6は、比較例4のSE-HPLCによる分析結果を示す図である。
【図7】図7は、実施例1のマトリクス支援レーザー脱離イオン化時間飛行型(MALDI-TOF) 質量分析法(以下、MALDI-TOF)による分析結果を示す図である。
【図8】図8は、実施例2のMALDI-TOFによる分析結果を示す図である。
【図9】図9は、比較例1のMALDI-TOFによる分析結果を示す図である。
【図10】図10は、比較例2のMALDI-TOFによる分析結果を示す図である。
【図11】図11は、実施例1および比較例1ならびに3のポリエチレングリコールで修飾されたインターフェロンα結合体の水疱性口内炎ウイルスおよびMarbin-Darbyウシ腎臓細胞(MDBK)を用いた細胞変性効果 (CPE)の抑制結果を示す図である。
【図12】図12は、インターフェロンαおよび実施例1のポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の薬物動態の分析結果を示す図である。
【図13】図13は、インターフェロンαおよび実施例1のポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の抗腫瘍活性のDaudi細胞を用いた効果比較結果を示す図である。
【図14】図14は、インターフェロンαおよび実施例1の三分岐ポリエチレングリコール (PEG, MW43,000)で修飾されたインターフェロンα結合体の生物学的活性の温度変化をともなう比較結果を示す図である。
【図15】図15は、インターフェロンαおよび実施例1のポリエチレングリコールで修飾されたインターフェロンα結合体のタンパク分解酵素および時間に対する生物学的活性の分析結果を示す図である。
【実施例】
【0034】
実施例1
三分岐ポリエチレングリコール N-ヒドロキシスクシンイミドを用いる式 (1)の三分岐ポリエチレングリコール (MW 43,000 Da)-インターフェロンα結合体 (I) の製造
68 mgの三分岐ポリエチレングリコール N-ヒドロキシスクシンイミド (NOF corporation, Japan) (分子量43,000ダルトン)を10 mgのインターフェロンα (Dong-A Pharm. Co., Ltd.) に、100 mM ビシン(bicine)緩衝液、pH8.0中にて添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌した。そして、0.1M グリシンを添加して反応を停止した。
【0035】
反応物をHiprepTM 26/10 (Amersham Pharmacia Biotech) 脱塩カラム(40 mM NaH2PO4 (pH4.0) 緩衝液で平衡化)に導入し、同じ緩衝液で溶出することで緩衝液を交換した。この反応により三分岐ポリエチレングリコール-N-ヒドロキシスクシンイミドから分離されたN-ヒドロキシスクシンイミドを除去した。溶出物を SP-Sepharose Fast Flow 陽イオン交換クロマトグラフィー (Amersham Pharmacia Biotech) (40 mM NaH2PO4 (pH4.0) 緩衝液で平衡化)に導入し、その後液体クロマトグラフィーによりポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体を分離した。
【0036】
ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体は0-500 mM の塩化ナトリウム(NaCl)の濃度勾配を用いて分画した。
分画された溶出物の形状および大きさをHPLCとSDS-PAGEで確認した。そしてジ-またはトリ-分岐ポリエチレングリコールがインターフェロンαと結合した形状の結合体、および反応後に残存する非修飾インターフェロンαを除き、標題の結合体である1の三分岐ポリエチレングリコール (MW 43,000) とインターフェロンαが結合したポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体(モノ-三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体とも呼ぶ)を得た。
【0037】
サイズ排除高速液体クロマトグラフィーにより、反応物の混合物が、約47%のモノ-ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体 (モノ-PEG-IFNα)、約36%の非修飾インターフェロンα(IFNα)、およびその他のもの[ジ-PEG化インターフェロンα結合体 (ジ-PEG-IFNα) およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)]からなることが確認された {図1参照; 吸光度は280 nmで測定した; 保持時間は、(a) ジ-PEG-IFNαは約8分、(b) モノ-PEG-IFNαは約9分、(c) IFNαは約13.5分、(d)NHSは約15.3分であった}。そして、図7に示すように、分離されたモノ-三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体をMALDI-TOFにより分析し、値は65943.2(m/z)であった (図7参照)。
【0038】
実施例2
三分岐ポリエチレングリコールアルデヒドを用いる三分岐ポリエチレングリコール (MW 43,000 Da)-インターフェロンα結合体 (II) の製造
【0039】
68 mgの三分岐ポリエチレングリコールアルデヒド (NOF corporation, Japan) (分子量43,000ダルトン)を10 mgのインターフェロンα (Dong-A Pharm. Co., Ltd.)に、40 mM 酢酸ナトリウム (C2H3NaO2) 緩衝液、pH4.0中にて添加した。反応混合物を低温で14時間撹拌した。次いで、反応物をHiprepTM 26/10 (Amersham Pharmacia Biotech) 脱塩カラム(40mM NaH2PO4 (pH4.0) 緩衝液で平衡化)に導入し、同じ緩衝液で溶出することで緩衝液を交換した。
【0040】
その後、溶出物をSP-Sepharose Fast Flow 陽イオン交換クロマトグラフィー (Amersham Pharmacia Biotech) (40mM NaH2PO4 (pH4.0) 緩衝液で平衡化)に導入し、液体クロマトグラフィーによりポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体を分離した。ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体は0-500mMの塩化ナトリウム(NaCl)の濃度勾配を用いて分画した。
【0041】
分画化溶出物から、反応後に残存するインターフェロンαをHPLCおよびSDS-PAGEにより除き、標題の結合体である、三分岐ポリエチレングリコールが1つだけインターフェロンαのN-末端に結合しているポリエチレングリコール (MW 43,000)-インターフェロンα結合体(II) (モノ-三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体) を得た。
【0042】
サイズ排除高速液体クロマトグラフィーにより、混合物が約42%のモノ-ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体 (モノ-PEG-IFNα)および約55%の非修飾インターフェロンα(IFNα) からなることが確認された{図2参照; 吸光度は280 nmで測定し、保持時間は (a) モノ-PEG-IFNαは約9.5分、(b) IFNαは約14分であった}。そして、分離されたモノ-三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の純度および分子量をMALDI-TOFにより確認し、値は66141.9(m/z)であった (図8参照)。
【0043】
比較例1
二分岐ポリエチレングリコール-N-ヒドロキシスクシンイミドを用いる二分岐ポリエチレングリコール (PEG, MW 40,000 Da)-インターフェロンα結合体(III) の製造
【0044】
63 mgの二分岐ポリエチレングリコール N-ヒドロキシスクシンイミド (NOF corporation, Japan) (分子量40,000ダルトン)を、10 mgのインターフェロンα [既知の方法で製造、Pestka, Sci. Am. 249, 36 (1983)] に、100 mM ビシン緩衝液、pH8.0中において添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌した。そして、0.1M グリシンを添加して反応を停止した。
【0045】
反応物をHiprepTM 26/10 (Amersham Pharmacia Biotech) 脱塩カラム (40mM NaH2PO4 (pH4.0) 緩衝液で平衡化)に導入し、同じ緩衝液で溶出することで緩衝液を交換した。この反応によって三分岐ポリエチレングリコール-N-ヒドロキシスクシンイミドから分離されたN-ヒドロキシスクシンイミドを除去した。溶出物をSP-Sepharose Fast Flow 陽イオン交換クロマトグラフィー (Amersham Pharmacia Biotech) (40mM NaH2PO4 (pH4.0) 緩衝液で平衡化)に導入し、そこから液体クロマトグラフィーによりポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体を分離した。ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体は0-500 mMの塩化ナトリウム(NaCl)の濃度勾配を用いて分画した。分画化溶出物の形状および大きさをHPLCとSDS-PAGEにより確認した。そして、反応後に残存するインターフェロンα、および2以上の二分岐ポリエチレングリコールがインターフェロンαと結合したインターフェロンα結合体をそこから除去し、標題の結合体である、二分岐ポリエチレングリコールが1つだけインターフェロンαに結合したインターフェロンα結合体を得た。
【0046】
サイズ排除高速液体クロマトグラフィーにより、混合物は約40% のモノ-ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体 (モノ-PEG-IFNα)、約50%の非修飾インターフェロンα(IFNα)、およびその他のもの [ジ-PEG化インターフェロンα結合体 (ジ-PEG-IFNα)およびN-ヒドロキシスクシンイミド (NHS)] からなることが確認された{図3; 吸光度は280nmで測定し、保持時間は (a) ジ-PEG-IFNαが約8分、(b) モノ-PEG-IFNαが約9分、(c) IFNαが約13.5分、(d)NHSが約15分であった}。
【0047】
そして、分離されたモノ-二分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の分子量をMALDI-TOFにより測定し、値は62708.2(m/z)であった(図9参照)。
【0048】
比較例2
二分岐ポリエチレングリコールアルデヒドを用いる二分岐ポリエチレングリコール (PEG, MW 40,000 Da)-インターフェロンα結合体 (IV)の製造
63 mgの二分岐ポリエチレングリコールアルデヒド (NOF corporation, Japan) (分子量40,000ダルトン)を10 mgのインターフェロンα (Dong-A Pharm. Co., Ltd.) に、40 mM 酢酸ナトリウム (C2H3NaO2) 緩衝液、pH4.0中にて添加した。反応混合物を低温で10-14時間撹拌した。次いで、反応物をHiprepTM 26/10 (Amersham Pharmacia Biotech) 脱塩カラム (40mM NaH2PO4 (pH4.0) 緩衝液で平衡化)に導入し、同じ緩衝液で溶出することで緩衝液を交換した。
【0049】
その後、溶出物をSP-Sepharose Fast Flow 陽イオン交換クロマトグラフィー (Amersham Pharmacia Biotech) (40mM NaH2PO4 (pH4.0) 緩衝液で平衡化)に導入し、液体クロマトグラフィーによりポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体を分離した。反応物を0-500mMの塩化ナトリウム(NaCl)の濃度勾配により分画した。
【0050】
分画化溶出物をHPLCおよびSDS-PAGEにより確認した。そして、反応後に残存するインターフェロンαをそこから除去し、二分岐ポリエチレングリコールが1つだけインターフェロンα結合体のN末端に結合している、ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体 (II) を得た。
【0051】
サイズ排除高速液体クロマトグラフィーにより、混合物が約37%のモノ-ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体 (モノ-PEG-IFNα) および約60%の非修飾インターフェロンα(IFNα) からなることを確認した{図4参照; 吸光度は280 nmで測定し、保持時間は (a) モノ-PEG-IFNαは約9.5分、(b) IFNαは約14分であった}。そして、分離されたモノ-三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の分子量をMALDI-TOFにより測定し、値は 62718.9(m/z) であった(図10参照)。
【0052】
比較例3
N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHSエステル) 官能基を有するリシン構造(lysine-structured)二分岐ポリエチレングリコール (MW 40,000 Da)がインターフェロンαと結合しているポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の製造
【0053】
韓国特許第10-0254097号に記載の方法により、50 mgのインターフェロンαを二分岐ポリエチレングリコール N-ヒドロキシスクシンイミド (Nektar, America、平均分子量= 40,000ダルトン)と反応させて、二分岐ポリエチレングリコール (MW 40,000) インターフェロンα結合体を製造した。
【0054】
サイズ排除高速液体クロマトグラフィーにより、混合物が約17%のモノ-ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体 (モノ-PEG-IFNα)、約74%の非修飾インターフェロンα(IFNα)、およびその他のもの [ジ-PEG化インターフェロンα結合体 (ジ-PEG-IFNα) およびN-ヒドロキシスクシンイミド (NHS)] からなることを確認した{図5参照; 吸光度は280nmで測定し、保持時間は(a) ジ-PEG-IFNαが約8.5分、(b) モノ-PEG-IFNαが約9.5分、 (c) IFNαが約14分、(d)NHSが約16.5分であった}。
【0055】
比較例4
N-ヒドロキシスクシンイミドエステル (NHSエステル) 官能基を有するリシン構造三分岐ポリエチレングリコール (MW 43,000 Da)がインターフェロンαと結合しているポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体
【0056】
韓国特許第10-0396983号に記載の方法によりトリ-PEG-NHS (MW 43,000) を製造し、3 mgのインターフェロンαと反応させて三分岐ポリエチレングリコール (MW 43,000) インターフェロンα結合体を得た。
【0057】
サイズ排除高速液体クロマトグラフィーにより、混合物は約32% のモノ-ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体 (モノ-PEG-IFNα)、約52%の非修飾インターフェロンα(IFNα)、およびその他のもの [ジ-PEG化インターフェロンα結合体 (ジ-PEG-IFNα) およびN-ヒドロキシスクシンイミド (NHS)] からなることを確認した{図6参照; 吸光度は280nmで測定した;保持時間は (a) ジ-PEG-IFNαが約8.5分、(b) モノ-PEG-IFNαが約9.5分、(c) IFNαが約14分、(d)NHSが約16.5分であった}。
【0058】
前述のように製造した結合体を用いて特徴決定および薬理活性試験を行い、結果を以下に示す。
【0059】
実験例1
ポリエチレングリコール誘導体およびインターフェロンαの反応性試験
上記で使用したポリエチレングリコール誘導体およびインターフェロンαの反応性を試験するため、インターフェロンαとポリエチレングリコールとを反応させることで生成したモノ-ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の量および非修飾インターフェロンαの量を、実施例1および2ならびに比較例1−4に示すようにサイズ排除高速液体クロマトグラフィーによってピークエリアから決定した(図1−6)。その結果、ポリエチレングリコール構造に対するインターフェロンαの反応性を得ることができた (表1および2参照)。
【0060】
非修飾インターフェロンαの残存量および生成したモノ-ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の量を考慮すると、実施例1および2における三分岐ポリエチレングリコールとインターフェロンαの結合反応性がより優れていた。
【0061】
実験例2
ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の分子量および収率
実施例1および2ならびに比較例1および2で得られた高純度のポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体をMALDI-TOFで分析し、その結果が予想分子量と一致するかを確認した (図7、8、9および10参照)。非修飾インターフェロンαの量および生成したモノ-ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の収率に関連して、実施例1および2の精製収率が優れていることが確認された[表1(N-ヒドロキシスクシンイミドを用いたポリエチレングリコール誘導体とインターフェロンαの反応性および収率の比較) および表2(アルデヒドを用いたポリエチレングリコール誘導体とインターフェロンαの反応性および収率の比較)を参照]。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
実験例3
ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の抗ウイルス活性試験およびイン・ビトロ活性試験
先の実験で用いたポリエチレングリコール誘導体とインターフェロンαの結合体の効果をインターフェロンα活性に関して調べるため、実施例1ならびに比較例1および3で生成した各モノ-ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の抗ウイルス活性をMarbin-Darby ウシ腎臓 (MDBK) 細胞を用いて細胞変性効果 (CPE) アッセにより測定した。細胞は水疱性口内炎ウイルス(VSV)に曝露した。また、インターフェロンαに対する相対活性も測定した (図11参照)。
【0065】
相対活性を測定するため、インターフェロンαを105倍、比較例1のポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体を2 X 105倍、実施例1のポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体を105倍、そして比較例3のポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体を2 X 104倍に希釈した。2倍段階希釈の後、これらをMarbin-Darby ウシ腎臓 (MDBK) 細胞に添加し、水疱性口内炎ウイルス(VSV)に曝露した。その後、TCID50値 (組織培養感染量、50%の組織培養細胞の感染量) を示す連続的希釈率の値を計算し、各活性値を統計学的方法により得た。
【0066】
以下の表3に示す結果は、ポリエチレングリコールの修飾による生物学的活性の減少は、二分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体よりも三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の方が少ないことを示唆する [表3(ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の生物学的活性)参照]。
【0067】
【表3】
【0068】
実験例4
ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の薬力学試験
薬力学試験は、インターフェロンαおよび実施例1のポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の実験動物 (Sprague Dawley ラット) (体重240〜260 g)への皮下投与により行った。1匹あたり1 X 107 IU の量を注射した後、注射の0分、30分、1時間、4時間、10時間、24時間、34時間、2日、3日、4日、5日、6日および7日後にラットから血液サンプルを回収した。サンプルの抗ウイルス活性を細胞変性効果 (CPE) アッセイにより測定し、インターフェロンαおよびポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の半減期(T1/2) の値を得た (図12参照)。
【0069】
実施例1の三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の血中における半減期は、インターフェロンαと比較して9.2倍上昇した [表4(ラット(Sprague Dawleyラット)におけるインターフェロンαおよびポリエチレングリコール-インターフェロンαの薬力学)参照)]。
【0070】
【表4】
【0071】
実験例5
ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の抗腫瘍活性試験
Daudi 細胞(ATCC CCL-213) を、RAPI 1640 (Gibco, America) 培地(10% ウシ胎児血清およびペニシリン-ストレプトマイシン 0.5%を添加)中、37℃、CO2インキュベーターで2日間増殖させた。培養完了後、細胞を同培地で1回洗浄し、その後希釈して106 細胞/mlの密度とした。インターフェロンαおよび実施例1の三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体をそれぞれ2 mg/mlおよび19.2 mg/mlに希釈した。次いで、これらの各溶液を10倍まで段階希釈し、異なる濃度の10のサンプルを作成した。その後、96ウェルマイクロプレートの各ウェルにつきいずれも100μlの希釈体を調製し、対照細胞についてのみ50μlのVSV含有維持培地を添加した。対照として、細胞とウイルスを含みサンプルを含まないウェルを調製した。このマイクロプレートをCO2インキュベーターで37℃で5日間インキュベートした。5日後、40μlのPMS (Promega, America)含有MTS溶液を各ウェルに添加し、次いで1.5時間インキュベートした。それらについて吸光度を490 nmで測定し、EC50(50% 有効濃度)を計算した。図13に示す結果は、ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体がインターフェロンαと同様の抗腫瘍活性を有することを示唆する (図13参照)。
【0072】
実験例6
ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の温度安定性試験
インターフェロンαおよび実施例1の三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体を40 mM NaH2PO4 (pH 5.0) の 緩衝液に添加し、それぞれ1 mg/ml濃度の溶液とした。0℃、20℃、37℃、50℃、70℃、および100℃で15分間インキュベートした後、室温まで冷却し、その生物学的活性を測定した(図14参照)。
【0073】
図14の結果は、ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体が非修飾インターフェロンαよりも医薬的により安定であることを示唆する。
【0074】
実験例7
トリプシン消化に対するポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の安定性試験
インターフェロンαおよび実施例1の三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体を緩衝液により濃度1 mg/mlに調製し、溶液1 mlあたり1 mgのトリプシン(pH 7.0)を添加し、それぞれ室温でタンパク分解を誘導した。各溶液のアリコートを反応開始後5分、10分、20分、40分、および60分で回収し、その生物学的活性を測定した(図15参照)。
【0075】
本結果は、ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体が非修飾インターフェロンαよりもプロテアーゼに対してより安定であることを示唆する。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、グリセロール構造を有する新規三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の生物学的活性に関する。すなわち本発明は、高純度かつ高収率であり、生物活性の減少が最小限であり、そして血中半減期が増加していることを特徴とし、直鎖ポリエチレングリコールは多くの直鎖高分子とタンパク質またはペプチドとを結合できない; 分岐高分子誘導体はタンパク質またはペプチドの表面に過剰な立体障害を誘導する;および、リンカーの長い分岐高分子誘導体は低純度で精製収率が低い、などの問題を克服している。
【0077】
それゆえ、抗ウイルス活性および抗腫瘍活性を有するポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体を含む本発明の医薬組成物は、当業界に知られるインターフェロンα治療薬と比較して、活性の減少が最小限であり、治療効果が改善されうるもので、また体内半減期が長くなったことから投与頻度を減少することによって患者の服薬遵守が改善されうるものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体に関する。
【背景技術】
【0002】
インターフェロンは、1957年にIsaacsおよびLindenmannにより発見され、優れた抗ウイルス効果を有することが知られている [Isaacs et al, Virus interference, 147 (1957)]。インターフェロンはタイプ I (IFN-α、β、ω) およびタイプ II (IFN-γ)に分類され、インターフェロンにより生じる細胞は白血球、繊維芽細胞、T細胞など様々である。
【0003】
修飾インターフェロンαは、1986からヘアリー細胞白血病の治療薬として認可され使用されはじめた。つまりインターフェロンは、遺伝子組換技術によって産生され癌の処置に使用された、最初のサイトカインである [Pestka et al, Semin. Oncol., 24 (1997)]。
【0004】
インターフェロンαは、抗ウイルス活性および抗腫瘍活性を有する医薬活性タンパク質であり、世界の40ヵ国以上で14クラス以上の腫瘍およびウイルス疾患の処置に使用されている。インターフェロンαの臨床的に有効な処置分野は、ヘアリー細胞白血病、カポジ肉腫、慢性骨髄性白血病 (CML) 、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、腎細胞癌である [Nagabhushan T.L. et al, Regulatory practice for biopharmaceutical production, 221-234 (1994)]。
【0005】
また、インターフェロンは、癌患者の生存期間を延長しうる最初のヒトタンパク質であり、各種の腫瘍、例えば卵巣癌、乳癌、気管支癌、膀胱癌、胃癌などや急性白血病に適用可能であると期待される [Mosbe Talpaz et al, Seminars in Hepatology, 38(3), 22-27 (2001)]。
【0006】
特に、B型またはC型肝炎の処置のため、インターフェロンα-2a (IFN α-2a)、インターフェロンα-2b、およびその変異タンパク質としてインターフェロン-con1 (IFN-con1) が現在使用されている。また、B型肝炎ウイルス (HBV) またはC型肝炎ウイルス (HCV)などのウイルスによる感染が慢性に進行した場合、その感染が肝細胞癌に進行する危険性があることが報告されている。それゆえ、インターフェロンは癌の予防に使用することができる。
【0007】
しかしながら、臨床で有用なタンパク質治療薬としてのインターフェロンは、遺伝子工学的方法で作成された酵素、タンパク質、ホルモン、ペプチドなどと同様に、インビボでの低い安定性、インビボでの迅速な消失、反復投与による抗体形成およびそれによる過敏反応などの問題を有する。
【0008】
特に、1日1回、1週間3回などの頻回投与により患者に痛みが誘導される。さらに、長期間の処置を必要とする患者にとって、かかる投与はクオリティー・オブ・ライフを脅かしうる。
【0009】
これら問題を改善するため、安定で長期間活性を維持しうる医薬として、ポリエチレングリコールで修飾されたタンパク質治療薬が開発され、現在使用されている。
【0010】
ポリエチレングリコールは、親水性が高く、治療用タンパク質と結合すると溶解性を上昇させることができる。またポリエチレングリコールは、それが結合したタンパク質の分子量を酵素活性や受容体結合など主要な生物学的機能を維持しつつ増加させるのに有効である。つまりポリエチレングリコールは、糸球体ろ過を減少させることができ、またそのタンパク質を分解するタンパク分解酵素から有効にタンパク質を保護することができる。それゆえ、ポリエチレングリコールは、タンパク質分解を予防する、タンパク質の安定性および循環時間を増加する、および免疫原性を減少するという利点を有する。
【0011】
一般に使用される直鎖ポリエチレングリコールの分子量は約1,000-25,000ダルトンであるが、タンパク質またはペプチドの生物学的活性領域が限定されているためその活性を維持しつつ多くの直鎖高分子をタンパク質またはペプチドに結合するのには限界がある。
【0012】
直鎖ポリエチレングリコールのこれら問題を改善するため、Wana, H et alはトリクロロトリアジンを用いて分岐モノ-メトキシポリエチレン(mPEG) 誘導体をタンパク質に結合することを試みた [Wana, H et al., Ann. N.Y.Acad.Sci. 613:95-108 (1990)]。
【0013】
しかしながら、活性化分岐ポリエチレングリコール誘導体は大きさが大きく、タンパク質またはペプチド表面で立体障害が誘導され、それにより修飾タンパク質またはペプチドの活性が減少する。また、かかる誘導体は通常不完全な分岐ポリエチレングリコール誘導体のために精製収率が低くなる。
【0014】
韓国特許第0396983号は、これら分岐高分子誘導体の問題の改善を試みた。具体的には、この特許は、高分子とタンパク質とを結合するリンカーを長くして分岐高分子により誘導される立体障害を減少することで生物学的活性領域に結合するリンカーの数を最小限とし、これによりタンパク質構造を保護して生物学的活性の減少を最小限とすることを試みた。しかしながら、長いリンカーを有する活性化分岐高分子誘導体であるトリ-PEG-NHSは、過剰な直鎖PEG-NHSと少量のジ-PEG-NHSをリンカー構造製造時の不純物として含む。これらはインターフェロンへの結合反応に競合的に関与し、精製困難な低分子PEG-インターフェロンα結合体やジ-PEG-インターフェロンα結合体を生じる。つまり、この方法は低純度および低収率の問題を有する。
【0015】
それゆえ、インターフェロンαの生物活性の減少を最小限とすることができ、高純度であり、かつ安定性が良好な高分子ポリエチレングリコール-インターフェロン結合体がいまだ必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的はインターフェロンαや、当業界で知られるポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体と比較して、高純度かつ高収率で製造され、血中半減期が長く、そしてインターフェロンの生物活性減少が最小限である、三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体、前記結合体の製造方法、および前記結合体を含む医薬組成物、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明は、三分岐ポリエチレングリコール誘導体をインターフェロンαに結合した高純度の高分子、および前記分子を含む医薬組成物を提供する。
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体は、三分岐ポリエチレングリコール誘導体とインターフェロンαとの結合反応で生じ、以下の一般式 (1)で表すことができる:
【化1】
[式中、nは1-1,000の整数であり、mは10-1,000の整数である]。
【0020】
上記結合体において、ポリエチレングリコールの平均分子量は400-45,000ダルトン、好ましくは30,000-45,000ダルトン、より好ましくは43,000ダルトンである。
【0021】
ポリエチレングリコールの分子量が大きくなると高分子結合体の薬物動態は良好になるが、活性が減少する。それゆえ、適切な分子量が重要である。
【0022】
Zは、インターフェロンαとポリエチレングリコールのリンカーとして機能する (CH2)S または(CH2)SNHCO(CH2)S であり、ここでSは1-6の整数である。Yは、インターフェロン分子のNH2 官能基とポリエチレングリコール誘導体の官能基との結合反応により形成されるである二級アミンまたはアミド結合である。
【0023】
また、本発明は、以下の一般式 (1)に示す三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の製造方法であって、ポリエチレングリコールの平均分子量が400-45,000ダルトン、好ましくは30,000-45,000ダルトン、より好ましくは43,000ダルトンである方法を提供する。
【0024】
本発明の三分岐ポリエチレングリコール誘導体は、3つの直鎖状生物学的受容性高分子が結合した分岐構造を有する活性化高分子である。グリセリン構造における3つのOH (ヒドロキシ) 領域がいずれもエチレングリコール単位分子と重合しており、1つの領域の末端が官能基として活性化されている。活性化領域以外の他の2つの領域は、さらなる反応を予防するためモノメトキシで置換されている。上記分岐ポリエチレングリコール誘導体を製造する場合、各直鎖ポリエチレングリコールの大きさは自由に調節することができ、これにより適切な構造および分子量を有する高分子を製造し、インターフェロンαに結合することができる。
【0025】
インターフェロンαに結合する分岐ポリエチレングリコール (PEG) 誘導体は、以下の一般式 (2)により表される:
【化2】
[式中、nは1-1,000の整数であり、mは10-1,000の整数である]。結合体のポリエチレングリコール単位の平均分子量は400-45,000ダルトン、好ましくは30,000-45,000ダルトン、より好ましくは43,000ダルトンである。Xは、インターフェロンαを含むタンパク質またはペプチドと化学的に反応しうる以下の一般式 (3)により表される官能基である。好ましくは、Xは式 (3)の化合物のうちのN-ヒドロキシスクシンイミド (a) またはアルデヒド (b) であり、各々インターフェロンαに対する結合反応において高収率でアミド結合および二級アミン構造結合を形成する。
【化3】
[式中、Zは、インターフェロンαとポリエチレングリコールのリンカーとして機能する (CH2)S または(CH2)SNHCO(CH2)S であり、ここでSは1-6の整数である]。
【0026】
本発明において、インターフェロンα:分岐ポリエチレングリコール誘導体の反応モル比は1: 0.5 〜 1: 50である。好ましくは、インターフェロンα:分岐ポリエチレングリコール誘導体のモル比は、1: 0.5 〜 1: 3である。ポリエチレングリコールのインターフェロンαに対するモル比を増加させると、モノポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の単位時間あたりの収率が減少する。
【0027】
また本発明は、本発明のポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体を有効成分として含む、インターフェロンα感受性疾患を処置または予防するための医薬組成物を提供する。組成物は、有効量の本発明のポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体、希釈体、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、ジュバンチア(juvantia)および/または担体から構成されうる。
【0028】
本発明の医薬組成物は、注射剤、カプセル剤、錠剤、液剤、丸剤、軟膏剤、眼軟膏剤、点眼剤、経皮吸収剤、ペースト剤、パップ剤、パッチ剤、エアロゾルなどに製剤することができる。そして、本発明の医薬組成物の有効投与は、患者の年齢、症状、体重などにより変動しうるが、通常1週間に1回または2週間に1回である。また、組成物は、1日の有効投与量の範囲内で1日1回または複数回投与してもよい。
【0029】
さらに本発明は、本発明の結合体を有効成分として投与することを含む、インターフェロンα感受性疾患を処置または予防する方法を提供する。インターフェロンα感受性疾患には、ヘアリー細胞白血病、カポジ肉腫、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、腎細胞癌が含まれる。さらに疾患には、卵巣癌、乳癌、気管支癌、膀胱癌、胃癌など、および急性白血病などの他の癌が含まれる。
【0030】
本発明を以下の実施例により具体的に説明する。以下の実施例は本発明をさらに説明する目的のものであり、本発明の範囲はこれによりいかなる意味においても限定されない。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、生物学的に活性な新規なグリセリン構造を有する三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体に関する。すなわち本発明は、高純度かつ高収率であり、生物活性の減少が最小限であり、そして血中半減期が増加していることを特徴とし、これは、直鎖ポリエチレングリコールは多くの直鎖高分子とタンパク質またはペプチドとを結合できない;分岐高分子誘導体はタンパク質またはペプチドの表面で過剰な立体障害を誘導する;および、リンカーが長い分岐高分子は低純度で精製収率が低い、などの問題を克服している。
【0032】
それゆえ、抗ウイルス活性および抗腫瘍活性を有するポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体を含む本発明の医薬組成物は、当業界にて既知のインターフェロンα治療薬と比較して、活性の減少が最小限で、治療効果が改善されうるもので、また体内半減期が長くなったことから投与頻度を減少することで患者の不快度を最小限としうる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、実施例1のサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(以下、SE-HPLC)による分析結果を示す図である。
【図2】図2は、実施例2のSE-HPLCによる分析結果を示す図である。
【図3】図3は、比較例1のSE-HPLCによる分析結果を示す図である。
【図4】図4は、比較例2のSE-HPLCによる分析結果を示す図である。
【図5】図5は、比較例3のSE-HPLCによる分析結果を示す図である。
【図6】図6は、比較例4のSE-HPLCによる分析結果を示す図である。
【図7】図7は、実施例1のマトリクス支援レーザー脱離イオン化時間飛行型(MALDI-TOF) 質量分析法(以下、MALDI-TOF)による分析結果を示す図である。
【図8】図8は、実施例2のMALDI-TOFによる分析結果を示す図である。
【図9】図9は、比較例1のMALDI-TOFによる分析結果を示す図である。
【図10】図10は、比較例2のMALDI-TOFによる分析結果を示す図である。
【図11】図11は、実施例1および比較例1ならびに3のポリエチレングリコールで修飾されたインターフェロンα結合体の水疱性口内炎ウイルスおよびMarbin-Darbyウシ腎臓細胞(MDBK)を用いた細胞変性効果 (CPE)の抑制結果を示す図である。
【図12】図12は、インターフェロンαおよび実施例1のポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の薬物動態の分析結果を示す図である。
【図13】図13は、インターフェロンαおよび実施例1のポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の抗腫瘍活性のDaudi細胞を用いた効果比較結果を示す図である。
【図14】図14は、インターフェロンαおよび実施例1の三分岐ポリエチレングリコール (PEG, MW43,000)で修飾されたインターフェロンα結合体の生物学的活性の温度変化をともなう比較結果を示す図である。
【図15】図15は、インターフェロンαおよび実施例1のポリエチレングリコールで修飾されたインターフェロンα結合体のタンパク分解酵素および時間に対する生物学的活性の分析結果を示す図である。
【実施例】
【0034】
実施例1
三分岐ポリエチレングリコール N-ヒドロキシスクシンイミドを用いる式 (1)の三分岐ポリエチレングリコール (MW 43,000 Da)-インターフェロンα結合体 (I) の製造
68 mgの三分岐ポリエチレングリコール N-ヒドロキシスクシンイミド (NOF corporation, Japan) (分子量43,000ダルトン)を10 mgのインターフェロンα (Dong-A Pharm. Co., Ltd.) に、100 mM ビシン(bicine)緩衝液、pH8.0中にて添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌した。そして、0.1M グリシンを添加して反応を停止した。
【0035】
反応物をHiprepTM 26/10 (Amersham Pharmacia Biotech) 脱塩カラム(40 mM NaH2PO4 (pH4.0) 緩衝液で平衡化)に導入し、同じ緩衝液で溶出することで緩衝液を交換した。この反応により三分岐ポリエチレングリコール-N-ヒドロキシスクシンイミドから分離されたN-ヒドロキシスクシンイミドを除去した。溶出物を SP-Sepharose Fast Flow 陽イオン交換クロマトグラフィー (Amersham Pharmacia Biotech) (40 mM NaH2PO4 (pH4.0) 緩衝液で平衡化)に導入し、その後液体クロマトグラフィーによりポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体を分離した。
【0036】
ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体は0-500 mM の塩化ナトリウム(NaCl)の濃度勾配を用いて分画した。
分画された溶出物の形状および大きさをHPLCとSDS-PAGEで確認した。そしてジ-またはトリ-分岐ポリエチレングリコールがインターフェロンαと結合した形状の結合体、および反応後に残存する非修飾インターフェロンαを除き、標題の結合体である1の三分岐ポリエチレングリコール (MW 43,000) とインターフェロンαが結合したポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体(モノ-三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体とも呼ぶ)を得た。
【0037】
サイズ排除高速液体クロマトグラフィーにより、反応物の混合物が、約47%のモノ-ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体 (モノ-PEG-IFNα)、約36%の非修飾インターフェロンα(IFNα)、およびその他のもの[ジ-PEG化インターフェロンα結合体 (ジ-PEG-IFNα) およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)]からなることが確認された {図1参照; 吸光度は280 nmで測定した; 保持時間は、(a) ジ-PEG-IFNαは約8分、(b) モノ-PEG-IFNαは約9分、(c) IFNαは約13.5分、(d)NHSは約15.3分であった}。そして、図7に示すように、分離されたモノ-三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体をMALDI-TOFにより分析し、値は65943.2(m/z)であった (図7参照)。
【0038】
実施例2
三分岐ポリエチレングリコールアルデヒドを用いる三分岐ポリエチレングリコール (MW 43,000 Da)-インターフェロンα結合体 (II) の製造
【0039】
68 mgの三分岐ポリエチレングリコールアルデヒド (NOF corporation, Japan) (分子量43,000ダルトン)を10 mgのインターフェロンα (Dong-A Pharm. Co., Ltd.)に、40 mM 酢酸ナトリウム (C2H3NaO2) 緩衝液、pH4.0中にて添加した。反応混合物を低温で14時間撹拌した。次いで、反応物をHiprepTM 26/10 (Amersham Pharmacia Biotech) 脱塩カラム(40mM NaH2PO4 (pH4.0) 緩衝液で平衡化)に導入し、同じ緩衝液で溶出することで緩衝液を交換した。
【0040】
その後、溶出物をSP-Sepharose Fast Flow 陽イオン交換クロマトグラフィー (Amersham Pharmacia Biotech) (40mM NaH2PO4 (pH4.0) 緩衝液で平衡化)に導入し、液体クロマトグラフィーによりポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体を分離した。ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体は0-500mMの塩化ナトリウム(NaCl)の濃度勾配を用いて分画した。
【0041】
分画化溶出物から、反応後に残存するインターフェロンαをHPLCおよびSDS-PAGEにより除き、標題の結合体である、三分岐ポリエチレングリコールが1つだけインターフェロンαのN-末端に結合しているポリエチレングリコール (MW 43,000)-インターフェロンα結合体(II) (モノ-三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体) を得た。
【0042】
サイズ排除高速液体クロマトグラフィーにより、混合物が約42%のモノ-ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体 (モノ-PEG-IFNα)および約55%の非修飾インターフェロンα(IFNα) からなることが確認された{図2参照; 吸光度は280 nmで測定し、保持時間は (a) モノ-PEG-IFNαは約9.5分、(b) IFNαは約14分であった}。そして、分離されたモノ-三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の純度および分子量をMALDI-TOFにより確認し、値は66141.9(m/z)であった (図8参照)。
【0043】
比較例1
二分岐ポリエチレングリコール-N-ヒドロキシスクシンイミドを用いる二分岐ポリエチレングリコール (PEG, MW 40,000 Da)-インターフェロンα結合体(III) の製造
【0044】
63 mgの二分岐ポリエチレングリコール N-ヒドロキシスクシンイミド (NOF corporation, Japan) (分子量40,000ダルトン)を、10 mgのインターフェロンα [既知の方法で製造、Pestka, Sci. Am. 249, 36 (1983)] に、100 mM ビシン緩衝液、pH8.0中において添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌した。そして、0.1M グリシンを添加して反応を停止した。
【0045】
反応物をHiprepTM 26/10 (Amersham Pharmacia Biotech) 脱塩カラム (40mM NaH2PO4 (pH4.0) 緩衝液で平衡化)に導入し、同じ緩衝液で溶出することで緩衝液を交換した。この反応によって三分岐ポリエチレングリコール-N-ヒドロキシスクシンイミドから分離されたN-ヒドロキシスクシンイミドを除去した。溶出物をSP-Sepharose Fast Flow 陽イオン交換クロマトグラフィー (Amersham Pharmacia Biotech) (40mM NaH2PO4 (pH4.0) 緩衝液で平衡化)に導入し、そこから液体クロマトグラフィーによりポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体を分離した。ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体は0-500 mMの塩化ナトリウム(NaCl)の濃度勾配を用いて分画した。分画化溶出物の形状および大きさをHPLCとSDS-PAGEにより確認した。そして、反応後に残存するインターフェロンα、および2以上の二分岐ポリエチレングリコールがインターフェロンαと結合したインターフェロンα結合体をそこから除去し、標題の結合体である、二分岐ポリエチレングリコールが1つだけインターフェロンαに結合したインターフェロンα結合体を得た。
【0046】
サイズ排除高速液体クロマトグラフィーにより、混合物は約40% のモノ-ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体 (モノ-PEG-IFNα)、約50%の非修飾インターフェロンα(IFNα)、およびその他のもの [ジ-PEG化インターフェロンα結合体 (ジ-PEG-IFNα)およびN-ヒドロキシスクシンイミド (NHS)] からなることが確認された{図3; 吸光度は280nmで測定し、保持時間は (a) ジ-PEG-IFNαが約8分、(b) モノ-PEG-IFNαが約9分、(c) IFNαが約13.5分、(d)NHSが約15分であった}。
【0047】
そして、分離されたモノ-二分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の分子量をMALDI-TOFにより測定し、値は62708.2(m/z)であった(図9参照)。
【0048】
比較例2
二分岐ポリエチレングリコールアルデヒドを用いる二分岐ポリエチレングリコール (PEG, MW 40,000 Da)-インターフェロンα結合体 (IV)の製造
63 mgの二分岐ポリエチレングリコールアルデヒド (NOF corporation, Japan) (分子量40,000ダルトン)を10 mgのインターフェロンα (Dong-A Pharm. Co., Ltd.) に、40 mM 酢酸ナトリウム (C2H3NaO2) 緩衝液、pH4.0中にて添加した。反応混合物を低温で10-14時間撹拌した。次いで、反応物をHiprepTM 26/10 (Amersham Pharmacia Biotech) 脱塩カラム (40mM NaH2PO4 (pH4.0) 緩衝液で平衡化)に導入し、同じ緩衝液で溶出することで緩衝液を交換した。
【0049】
その後、溶出物をSP-Sepharose Fast Flow 陽イオン交換クロマトグラフィー (Amersham Pharmacia Biotech) (40mM NaH2PO4 (pH4.0) 緩衝液で平衡化)に導入し、液体クロマトグラフィーによりポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体を分離した。反応物を0-500mMの塩化ナトリウム(NaCl)の濃度勾配により分画した。
【0050】
分画化溶出物をHPLCおよびSDS-PAGEにより確認した。そして、反応後に残存するインターフェロンαをそこから除去し、二分岐ポリエチレングリコールが1つだけインターフェロンα結合体のN末端に結合している、ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体 (II) を得た。
【0051】
サイズ排除高速液体クロマトグラフィーにより、混合物が約37%のモノ-ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体 (モノ-PEG-IFNα) および約60%の非修飾インターフェロンα(IFNα) からなることを確認した{図4参照; 吸光度は280 nmで測定し、保持時間は (a) モノ-PEG-IFNαは約9.5分、(b) IFNαは約14分であった}。そして、分離されたモノ-三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の分子量をMALDI-TOFにより測定し、値は 62718.9(m/z) であった(図10参照)。
【0052】
比較例3
N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHSエステル) 官能基を有するリシン構造(lysine-structured)二分岐ポリエチレングリコール (MW 40,000 Da)がインターフェロンαと結合しているポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の製造
【0053】
韓国特許第10-0254097号に記載の方法により、50 mgのインターフェロンαを二分岐ポリエチレングリコール N-ヒドロキシスクシンイミド (Nektar, America、平均分子量= 40,000ダルトン)と反応させて、二分岐ポリエチレングリコール (MW 40,000) インターフェロンα結合体を製造した。
【0054】
サイズ排除高速液体クロマトグラフィーにより、混合物が約17%のモノ-ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体 (モノ-PEG-IFNα)、約74%の非修飾インターフェロンα(IFNα)、およびその他のもの [ジ-PEG化インターフェロンα結合体 (ジ-PEG-IFNα) およびN-ヒドロキシスクシンイミド (NHS)] からなることを確認した{図5参照; 吸光度は280nmで測定し、保持時間は(a) ジ-PEG-IFNαが約8.5分、(b) モノ-PEG-IFNαが約9.5分、 (c) IFNαが約14分、(d)NHSが約16.5分であった}。
【0055】
比較例4
N-ヒドロキシスクシンイミドエステル (NHSエステル) 官能基を有するリシン構造三分岐ポリエチレングリコール (MW 43,000 Da)がインターフェロンαと結合しているポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体
【0056】
韓国特許第10-0396983号に記載の方法によりトリ-PEG-NHS (MW 43,000) を製造し、3 mgのインターフェロンαと反応させて三分岐ポリエチレングリコール (MW 43,000) インターフェロンα結合体を得た。
【0057】
サイズ排除高速液体クロマトグラフィーにより、混合物は約32% のモノ-ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体 (モノ-PEG-IFNα)、約52%の非修飾インターフェロンα(IFNα)、およびその他のもの [ジ-PEG化インターフェロンα結合体 (ジ-PEG-IFNα) およびN-ヒドロキシスクシンイミド (NHS)] からなることを確認した{図6参照; 吸光度は280nmで測定した;保持時間は (a) ジ-PEG-IFNαが約8.5分、(b) モノ-PEG-IFNαが約9.5分、(c) IFNαが約14分、(d)NHSが約16.5分であった}。
【0058】
前述のように製造した結合体を用いて特徴決定および薬理活性試験を行い、結果を以下に示す。
【0059】
実験例1
ポリエチレングリコール誘導体およびインターフェロンαの反応性試験
上記で使用したポリエチレングリコール誘導体およびインターフェロンαの反応性を試験するため、インターフェロンαとポリエチレングリコールとを反応させることで生成したモノ-ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の量および非修飾インターフェロンαの量を、実施例1および2ならびに比較例1−4に示すようにサイズ排除高速液体クロマトグラフィーによってピークエリアから決定した(図1−6)。その結果、ポリエチレングリコール構造に対するインターフェロンαの反応性を得ることができた (表1および2参照)。
【0060】
非修飾インターフェロンαの残存量および生成したモノ-ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の量を考慮すると、実施例1および2における三分岐ポリエチレングリコールとインターフェロンαの結合反応性がより優れていた。
【0061】
実験例2
ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の分子量および収率
実施例1および2ならびに比較例1および2で得られた高純度のポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体をMALDI-TOFで分析し、その結果が予想分子量と一致するかを確認した (図7、8、9および10参照)。非修飾インターフェロンαの量および生成したモノ-ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の収率に関連して、実施例1および2の精製収率が優れていることが確認された[表1(N-ヒドロキシスクシンイミドを用いたポリエチレングリコール誘導体とインターフェロンαの反応性および収率の比較) および表2(アルデヒドを用いたポリエチレングリコール誘導体とインターフェロンαの反応性および収率の比較)を参照]。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
実験例3
ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の抗ウイルス活性試験およびイン・ビトロ活性試験
先の実験で用いたポリエチレングリコール誘導体とインターフェロンαの結合体の効果をインターフェロンα活性に関して調べるため、実施例1ならびに比較例1および3で生成した各モノ-ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の抗ウイルス活性をMarbin-Darby ウシ腎臓 (MDBK) 細胞を用いて細胞変性効果 (CPE) アッセにより測定した。細胞は水疱性口内炎ウイルス(VSV)に曝露した。また、インターフェロンαに対する相対活性も測定した (図11参照)。
【0065】
相対活性を測定するため、インターフェロンαを105倍、比較例1のポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体を2 X 105倍、実施例1のポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体を105倍、そして比較例3のポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体を2 X 104倍に希釈した。2倍段階希釈の後、これらをMarbin-Darby ウシ腎臓 (MDBK) 細胞に添加し、水疱性口内炎ウイルス(VSV)に曝露した。その後、TCID50値 (組織培養感染量、50%の組織培養細胞の感染量) を示す連続的希釈率の値を計算し、各活性値を統計学的方法により得た。
【0066】
以下の表3に示す結果は、ポリエチレングリコールの修飾による生物学的活性の減少は、二分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体よりも三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の方が少ないことを示唆する [表3(ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の生物学的活性)参照]。
【0067】
【表3】
【0068】
実験例4
ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の薬力学試験
薬力学試験は、インターフェロンαおよび実施例1のポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の実験動物 (Sprague Dawley ラット) (体重240〜260 g)への皮下投与により行った。1匹あたり1 X 107 IU の量を注射した後、注射の0分、30分、1時間、4時間、10時間、24時間、34時間、2日、3日、4日、5日、6日および7日後にラットから血液サンプルを回収した。サンプルの抗ウイルス活性を細胞変性効果 (CPE) アッセイにより測定し、インターフェロンαおよびポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の半減期(T1/2) の値を得た (図12参照)。
【0069】
実施例1の三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の血中における半減期は、インターフェロンαと比較して9.2倍上昇した [表4(ラット(Sprague Dawleyラット)におけるインターフェロンαおよびポリエチレングリコール-インターフェロンαの薬力学)参照)]。
【0070】
【表4】
【0071】
実験例5
ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の抗腫瘍活性試験
Daudi 細胞(ATCC CCL-213) を、RAPI 1640 (Gibco, America) 培地(10% ウシ胎児血清およびペニシリン-ストレプトマイシン 0.5%を添加)中、37℃、CO2インキュベーターで2日間増殖させた。培養完了後、細胞を同培地で1回洗浄し、その後希釈して106 細胞/mlの密度とした。インターフェロンαおよび実施例1の三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体をそれぞれ2 mg/mlおよび19.2 mg/mlに希釈した。次いで、これらの各溶液を10倍まで段階希釈し、異なる濃度の10のサンプルを作成した。その後、96ウェルマイクロプレートの各ウェルにつきいずれも100μlの希釈体を調製し、対照細胞についてのみ50μlのVSV含有維持培地を添加した。対照として、細胞とウイルスを含みサンプルを含まないウェルを調製した。このマイクロプレートをCO2インキュベーターで37℃で5日間インキュベートした。5日後、40μlのPMS (Promega, America)含有MTS溶液を各ウェルに添加し、次いで1.5時間インキュベートした。それらについて吸光度を490 nmで測定し、EC50(50% 有効濃度)を計算した。図13に示す結果は、ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体がインターフェロンαと同様の抗腫瘍活性を有することを示唆する (図13参照)。
【0072】
実験例6
ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の温度安定性試験
インターフェロンαおよび実施例1の三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体を40 mM NaH2PO4 (pH 5.0) の 緩衝液に添加し、それぞれ1 mg/ml濃度の溶液とした。0℃、20℃、37℃、50℃、70℃、および100℃で15分間インキュベートした後、室温まで冷却し、その生物学的活性を測定した(図14参照)。
【0073】
図14の結果は、ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体が非修飾インターフェロンαよりも医薬的により安定であることを示唆する。
【0074】
実験例7
トリプシン消化に対するポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の安定性試験
インターフェロンαおよび実施例1の三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体を緩衝液により濃度1 mg/mlに調製し、溶液1 mlあたり1 mgのトリプシン(pH 7.0)を添加し、それぞれ室温でタンパク分解を誘導した。各溶液のアリコートを反応開始後5分、10分、20分、40分、および60分で回収し、その生物学的活性を測定した(図15参照)。
【0075】
本結果は、ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体が非修飾インターフェロンαよりもプロテアーゼに対してより安定であることを示唆する。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、グリセロール構造を有する新規三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の生物学的活性に関する。すなわち本発明は、高純度かつ高収率であり、生物活性の減少が最小限であり、そして血中半減期が増加していることを特徴とし、直鎖ポリエチレングリコールは多くの直鎖高分子とタンパク質またはペプチドとを結合できない; 分岐高分子誘導体はタンパク質またはペプチドの表面に過剰な立体障害を誘導する;および、リンカーの長い分岐高分子誘導体は低純度で精製収率が低い、などの問題を克服している。
【0077】
それゆえ、抗ウイルス活性および抗腫瘍活性を有するポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体を含む本発明の医薬組成物は、当業界に知られるインターフェロンα治療薬と比較して、活性の減少が最小限であり、治療効果が改善されうるもので、また体内半減期が長くなったことから投与頻度を減少することによって患者の服薬遵守が改善されうるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式 (1)の三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体、ここでポリエチレングリコールの平均分子量は400-45,000ダルトンである:
【化1】
[式中、
nは、1-1,000の整数である;
mは、10-1,000の整数である;
Zは、インターフェロンαとポリエチレングリコールのリンカーとしての (CH2)S または(CH2)SNHCO(CH2)S であり、ここでSは1-6の整数である;
Yは、インターフェロン分子のNH2 官能基とポリエチレングリコール誘導体の官能基との結合である二級アミンまたはアミド結合である]。
【請求項2】
ポリエチレングリコールの平均分子量が30,000-45,000ダルトンである、請求項1の結合体。
【請求項3】
ポリエチレングリコールの平均分子量が43,000ダルトンである、請求項1の結合体。
【請求項4】
一般式 (1)の三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の製造方法であって、一般式 (2)の分岐ポリエチレングリコール誘導体とインターフェロンαとの共有結合を形成することを含む方法、ここでポリエチレングリコールの平均分子量は400-45,000ダルトンである:
【化2】
[式中、
nは、1-1,000の整数である;
mは、10-1,000の整数である;
Zは、インターフェロンαとポリエチレングリコールのリンカーとしての (CH2)S または(CH2)SNHCO(CH2)S であり、ここでSは1-6の整数である;
Yは、インターフェロン分子のNH2 官能基とポリエチレングリコール誘導体の官能基との結合である二級アミンまたはアミド結合である];
【化3】
[式中、
nは、1-1,000の整数である;
mは、10-1,000の整数である;
Xは、インターフェロンαを含むタンパク質またはペプチドと化学的に反応しうる以下の一般式 (3)により表される官能基である:
【化4】
[式中、Zは、インターフェロンαとポリエチレングリコールのリンカーとしての (CH2)S または(CH2)SNHCO(CH2)S であり、ここでSは1-6の整数である]]。
【請求項5】
ポリエチレングリコールの平均分子量が30,000-45,000ダルトンである、請求項4の方法。
【請求項6】
ポリエチレングリコールの平均分子量が43,000ダルトンである、請求項4の方法。
【請求項7】
Xが一般式 (3)のうちの (a) または (b) である、請求項4の方法。
【請求項8】
インターフェロンα:三分岐ポリエチレングリコール誘導体のモル比が 1: 0.5 〜 1: 50である、請求項4の方法。
【請求項9】
反応におけるインターフェロンα:三分岐ポリエチレングリコール誘導体のモル比が 1: 0.5 〜 1: 3である、請求項8の方法。
【請求項10】
請求項1、2、または3の結合体を有効成分として含む、インターフェロンα感受性疾患を処置または予防するための医薬組成物。
【請求項11】
インターフェロンα感受性疾患が、ヘアリー細胞白血病、カポジ肉腫、慢性骨髄性白血病 (CML)、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、および腎細胞癌である、請求項10の組成物。
【請求項12】
請求項1、2、または3の結合体を有効成分として投与することを含む、インターフェロンα感受性疾患を処置または予防する方法。
【請求項1】
一般式 (1)の三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体、ここでポリエチレングリコールの平均分子量は400-45,000ダルトンである:
【化1】
[式中、
nは、1-1,000の整数である;
mは、10-1,000の整数である;
Zは、インターフェロンαとポリエチレングリコールのリンカーとしての (CH2)S または(CH2)SNHCO(CH2)S であり、ここでSは1-6の整数である;
Yは、インターフェロン分子のNH2 官能基とポリエチレングリコール誘導体の官能基との結合である二級アミンまたはアミド結合である]。
【請求項2】
ポリエチレングリコールの平均分子量が30,000-45,000ダルトンである、請求項1の結合体。
【請求項3】
ポリエチレングリコールの平均分子量が43,000ダルトンである、請求項1の結合体。
【請求項4】
一般式 (1)の三分岐ポリエチレングリコール-インターフェロンα結合体の製造方法であって、一般式 (2)の分岐ポリエチレングリコール誘導体とインターフェロンαとの共有結合を形成することを含む方法、ここでポリエチレングリコールの平均分子量は400-45,000ダルトンである:
【化2】
[式中、
nは、1-1,000の整数である;
mは、10-1,000の整数である;
Zは、インターフェロンαとポリエチレングリコールのリンカーとしての (CH2)S または(CH2)SNHCO(CH2)S であり、ここでSは1-6の整数である;
Yは、インターフェロン分子のNH2 官能基とポリエチレングリコール誘導体の官能基との結合である二級アミンまたはアミド結合である];
【化3】
[式中、
nは、1-1,000の整数である;
mは、10-1,000の整数である;
Xは、インターフェロンαを含むタンパク質またはペプチドと化学的に反応しうる以下の一般式 (3)により表される官能基である:
【化4】
[式中、Zは、インターフェロンαとポリエチレングリコールのリンカーとしての (CH2)S または(CH2)SNHCO(CH2)S であり、ここでSは1-6の整数である]]。
【請求項5】
ポリエチレングリコールの平均分子量が30,000-45,000ダルトンである、請求項4の方法。
【請求項6】
ポリエチレングリコールの平均分子量が43,000ダルトンである、請求項4の方法。
【請求項7】
Xが一般式 (3)のうちの (a) または (b) である、請求項4の方法。
【請求項8】
インターフェロンα:三分岐ポリエチレングリコール誘導体のモル比が 1: 0.5 〜 1: 50である、請求項4の方法。
【請求項9】
反応におけるインターフェロンα:三分岐ポリエチレングリコール誘導体のモル比が 1: 0.5 〜 1: 3である、請求項8の方法。
【請求項10】
請求項1、2、または3の結合体を有効成分として含む、インターフェロンα感受性疾患を処置または予防するための医薬組成物。
【請求項11】
インターフェロンα感受性疾患が、ヘアリー細胞白血病、カポジ肉腫、慢性骨髄性白血病 (CML)、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、および腎細胞癌である、請求項10の組成物。
【請求項12】
請求項1、2、または3の結合体を有効成分として投与することを含む、インターフェロンα感受性疾患を処置または予防する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2009−536963(P2009−536963A)
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510874(P2009−510874)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【国際出願番号】PCT/KR2006/001794
【国際公開番号】WO2007/132956
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り
【出願人】(501187848)ドン・ア・ファーム・カンパニー・リミテッド (20)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【国際出願番号】PCT/KR2006/001794
【国際公開番号】WO2007/132956
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り
【出願人】(501187848)ドン・ア・ファーム・カンパニー・リミテッド (20)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]