説明

ポリエチレンテレフタレートの製造方法

【課題】重縮合速度を速め、色相を黄色味が強い又は青味が強いのいずれにも偏ることがない程度への色相の改善ができ、且つジエチレングリコールの発生量の抑制を同時に達成することができるポリエチレンテレフタレートの製造方法を提供する。
【解決手段】エステル交換反応工程と溶融重縮合反応工程を含む製造方法であって、ジカルボン酸のエステル形成性誘導体とグリコールを原料とし、加圧下チタン化合物から選ばれる少なくとも1種をエステル交換触媒として用い、エステル交換反応を終えた後、ゲルマニウム化合物またはチタン化合物から選ばれる少なくとも1種、リン化合物から選択される少なくとも1種、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物から選ばれる少なくとも1種、テレフタル酸、下記式で表される化合物1を使用し重合することを特徴とする、ポリエステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルを重合するに当たり、その反応速度を極めて向上させることで、使用エネルギーを削減するだけでなく、色相の改善及びDEG等の副生成物量を削減することで、品質的にも優れたポリエステルを供給することを可能とする。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(以下PETと略する。)は、その優れた機械的性質、化学的性質から、繊維、フィルム、工業用樹脂、ボトル、カップ、トレイ等に成形されて広く用いられている。通常、芳香族ポリエステルはテレフタル酸などのジカルボン酸成分またはそのジエステル化合物と、エチレングリコールなどの脂肪族ジオール類とを原料として製造される。具体的には、まず、芳香族ジカルボン酸類またはそのジエステル化合物類と脂肪族ジオール類とのエステル化反応により低次縮合物(エステル低重合体)を形成し、次いで重縮合触媒の存在下にこの低次縮合物を脱グリコール反応(液相重縮合)させて、高分子量化している。また、場合によっては固相重縮合を行い、更に分子量を高めている。
【0003】
しかしながら、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステルの品質について、解決すべき課題が残っている。例えば、ポリエステルは、重合時の熱分解により着色が起こりやすい。また、反応中に副反応が起こり、ジエチレングリコールなど種々の副生成物が生成するという問題がある。
【0004】
(1)チタンによる着色問題
特に触媒として、チタン化合物を用いたときに、色相の悪化は顕著である。チタンはエステルの重縮合反応を促進する作用のある元素であることが知られており、チタンアルコキシド、四塩化チタン、シュウ酸チタニル、オルソチタン酸などが重縮合触媒として公知であり、このようなチタン化合物を重縮合触媒として利用するために多くの検討が行われている。しかしながら、従来のチタン系触媒を重縮合触媒に用いた場合、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物に比べ活性はあるものの、得られたポリエステルが著しく黄色に着色するなどの問題が生じる。
【0005】
そのため、種々のチタン化合物が検討されてきた。例えば水酸化チタン(例えば、特許文献1参照。)を、またα−チタン酸(例えば、特許文献2参照。)を、それぞれポリエステル製造用触媒として使用することが開示されている。しかしながら、前者の方法では水酸化チタンの粉末化が容易でなく、一方、後者の方法ではα−チタン酸が変質し易いため、その保存、取り扱いが容易でなく、したがっていずれも工業的に採用するには適当ではなく、さらに、良好な色調(カラーb値)のポリマーを得ることも困難である。
【0006】
また、チタン化合物とトリメリット酸とを反応させて得られた生成物(例えば、特許文献3参照。)を、またチタン化合物と亜リン酸エステルとを反応させて得られた生成物(例えば、特許文献4参照。)を、それぞれポリエステル製造用触媒として使用することが開示されている。確かに、この方法によれば、ポリエステルの溶融熱安定性はある程度向上しているものの、これだけでは、得られるポリマーの色調(カラーb値)が十分なものとはならない。
【0007】
着色問題を解決するために、整色剤を添加するという方法が一般的に行われている。例えば、コバルト化合物や有機化合物を芳香族ポリエステルに添加して黄味(col−b)を抑え、改善することができるが、コバルト化合物を添加することによって芳香族ポリエステルの溶融熱安定性が低下し、ポリマーの分解も起こりやすくなるという問題がある。非金属の整色剤として、テラゾールブルーをはじめとする有機化合物の整色剤も一般に販売され使用されているが、これらにしても、黄味(col−b)を抑制できても、col−a値やcol−L値に影響し、全体としてのポリエステルの色相に悪影響を与えてしまうという欠点がある。
【0008】
また、安定剤として用いるリン化合物の添加量を増やし、チタン触媒を失活させ、色相の悪化を防ぐ、という方法が取られることもある。しかし、これでは、コバルト化合物の添加と同様、ポリエステルの色相(col−b)は改善することは出来るが、ポリエステルの溶融熱安定性が低下し、ポリマーの熱分解も起こりやすくなるという問題がある。
【0009】
(2)DEG制御
また、重合反応中、グリコール成分の副反応により生じるエーテル化合物の含有量は、各用途において重要な影響を与える。例えば、ポリエチレンテレフタレートをボトルとして用いる場合は、透明性確保のため、ある程度の量ジエチレングリコールを含有することが望ましい。少なすぎる場合は、成形後のボトル胴部の透明性が悪化し、また、多すぎる場合は、耐熱性が低下、結晶化促進効果の低下、ガスバリア性を損なうなどの問題が生じる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート樹脂を構成するジエチレングリコールの含有量は、ポリエチレンテレフタレート中、0.5〜2.0wt%でなければならず、好ましくは0.8〜1.7wt%、より好ましくは1.0〜1.5wt%の範囲である。
【0010】
繊維としてポリエチレンテレフタレートを用いる場合には、ジエチレングリコール濃度が0.4mol%より小さいと染色性が劣ってしまう。一方、ジエチレングリコール濃度が2.0mol%よりも大きくなると、染色性は優れるものの、融点が下がり、耐加水分解性や耐熱性、耐光性が悪化するなど、繊維強度が小さくなるだけでなく、耐侯性が悪くなってしまう。主鎖に取り込まれるジエチレングリコール濃度は0.4〜2.0mol%でなければならず、好ましくは0.5〜1.2mol%、より好ましくは0.6〜1.0mol%の範囲である。
【0011】
上記範囲内にジエチレングリコール含有量を調節する方法としては、主原料として使用するエチレングリコールからジエチレングリコールが一部副生するため、反応条件と合わせて、その副生成量を調節する方法が挙げられる。その結果、ポリマーに含有されているエーテル濃度が不足した場合は、重合の任意の過程で添加し補うことが可能である。しかしながら、重合過程の副反応により目標値より過剰に生成してしまう場合、反応温度や触媒添加量を下げるなど、生産性を犠牲にしなくてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特公昭48−002229号公報
【特許文献2】特公昭47−026597号公報
【特許文献3】特公昭59−046258号公報
【特許文献4】特開昭58−038722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記の問題状況を踏まえて本発明においては、ポリエチレンテレフタレートの重縮合速度を速め、得られるポリエチレンテレフタレートの色相を黄色味が強い又は青味が強いのいずれにも偏ることがない程度への色相の改善ができ、且つジエチレングリコールの発生量の抑制を同時に達成することができるポリエチレンテレフタレートの製造方法を提供することを本発明の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、根本的な対策として、重合速度を速めることで、色相の改善並びに副生成物の量を抑えるべく検討した結果、特定の金属種・添加剤の組み合わせにおいて、整色剤である化合物1を添加することが、極めて効果的であることを見出した。
【0015】
すなわち本発明は、エステル交換反応工程と溶融重縮合反応工程を含むポリエチレンテレフタレートの製造方法であって、テレフタル酸ジアルキルエステルもしくはテレフタル酸ビスヒドロキシアルキルエステルとエチレングリコールを原料とし、チタン化合物aから選ばれる少なくとも1種の化合物をエステル交換触媒として用いエステル交換反応を終えた後、ゲルマニウム化合物またはチタン化合物bから選ばれる少なくとも1種の化合物を重縮合触媒として用い、リン化合物から選択される少なくとも1種の化合物、テレフタル酸および下記式で表される化合物1を添加し重縮合することを特徴とする、ポリエチレンテレフタレートの製造方法である。
【0016】
【化1】

【発明の効果】
【0017】
本発明のポリエチレンテレフタレートの製造方法により、重縮合反応速度を速めることで、得られるポリエチレンテレフタレートの色相の改善並びに主にジエチレングリコール等の副生成物の発生量を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明はエステル交換反応工程と溶融重縮合反応工程を含むポリエチレンテレフタレートの製造方法であって、原料としてジメチルテレフタレートとエチレングリコールを用いる。
【0019】
(1)グリコール成分
本発明の製造方法において用いられる原料の1つはエチレングリコールである。更に本発明の効果を妨げない範囲内で他のポリオール成分を共重合しても良い。そのポリオール成分としては具体的には、トリメチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール(テトラメチレングリコール)、ネオペンチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジオール(ジヒドロキシシクロヘキサン)、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等のアルキレングリコールを挙げる事ができる。これらの化合物はその1種、又は2種以上を混合して用いてもよく、目的により任意に選ぶことができる。
【0020】
更に共重合芳香族ポリエステルの構成する高分子鎖が実質的に線状である範囲内で3価以上の多官能化合物、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を共重合してもよい。また、必要に応じて単官能化合物、例えばデシルアルコール、ドデシルアルコール、2−フェニルエタノールなどを用いても良い。
【0021】
(2)ジカルボン酸成分
本発明の製造方法において用いられるもう1つの原料であるジカルボン酸成分としては、テレフタル酸ジアルキルエステルもしくはテレフタル酸ビスヒドロキシアルキルエステルを挙げることができる。具体的にはこれらの化合物としてテレフタル酸ジメチルエステル、テレフタル酸ジエチルエステル、テレフタル酸ジプロピルエステル、ジテレフタル酸ブチルエステル、テレフタル酸ジヘキシルエステル、テレフタル酸ビスヒドロキシエチルエステル、テレフタル酸ビスヒドロキシプロピルエステル、テレフタル酸ビスヒドロキシブチルエステル、テレフタル酸ビスヒドロキシヘキシルエステルを挙げることができる。これらの化合物の中でジメチルテレフタレートまたはビスヒドロキシエチルテレフタレートを用いることが好ましい。またさらに目的を損なわない範囲で、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸を挙げることができる。これらの化合物の1種、又は2種以上を混合して用いてもよく、目的により任意に選ぶことができる。また、これらの芳香族ジカルボン酸においても、低級アルコールを用いて、低級エステル化した化合物を用いることもできる。
【0022】
更に共重合芳香族ポリエステルの構成する高分子鎖が実質的に線状である範囲内で3価以上の多官能化合物、例えばトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸又は没食子酸等を共重合してもよい。また、必要に応じて単官能化合物、例えば安息香酸、トルイル酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、о−ベンゾイル安息香酸などを用いても良い。他に、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ安息香酸のようなヒドロキシカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオール、ナフタレンジオール、ビスフェノールA、レゾルシンなどの芳香族ジオールを例示することができる。なお、共重合に用いるカルボン酸成分は、アルキルエステル化して用いても良い。
【0023】
(3)製造方法:エステル交換加圧反応
本発明のポリエチレンテレフタレートの製造方法はいわゆる溶融(液相)重縮合法(A)に該当するが、この方法(A)においては、上記のようなジカルボン酸エステル成分(以下、単にジカルボン酸成分と表記することがある)と、グリコール成分とを重縮合させてポリエチレンテレフタレートを製造する。この液相重縮合法では、通常まずジカルボン酸成分とグリコール成分とをエステル交換反応させ〔エステル交換反応工程(A−1)〕、次いで液相重縮合反応〔溶融重縮合反応工程(A−2)〕させる。具体的には、まずジカルボン酸成分とグリコール成分とをエステル交換反応工程(A−1)に供給する。この際、ジカルボン酸成分1モルに対して1.02〜3.0モルのグリコール成分を用いる。この工程においては、通常加圧下で行われることが好ましい。
【0024】
必要に応じて下記で述べるエステル交換触媒をジカルボン酸1モルに対して1〜60ミリモル%添加するのが好ましい。エステル交換触媒が全ジカルボン酸成分に対して1ミリモル%未満ではエステル交換反応が不十分なものとなり、これに続く液相重縮合反応及び必要に応じて行う固相重縮合反応速度の低下をもたらすことがある。エステル交換触媒を全ジカルボン酸成分に対して60ミリモル%を越えて添加すると触媒残渣による析出粒子の影響により得られたポリエステルを例えばボトル等に成形した際、大きく固有粘度の低下をもたらし好ましくないことがある。エステル交換反応は、通常、反応温度190〜280℃、好ましくは200〜260℃、の条件下で行われる。また、反応温度をグリコール成分の沸点以上にするため、加圧下で反応することもできる。
【0025】
ジカルボン酸成分としてジカルボン酸そのものを用いる場合、エステル化反応は、ジカルボン酸成分及びグリコール成分以外の添加物を添加せずに実施することも可能であり、また後述する重縮合触媒の共存下に実施することも可能であるが、さらにトリメチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの第3級アミン、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウムなどの第4級アンモニウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基性化合物を少量添加して実施することができる。なおエステル交換反応の終了は用いるテレフタル酸ジアルキルエステルに由来するアルコールなどの流出量によって確認することができる。
【0026】
(4)製造方法:溶融重合反応
このようにして得られたエステル交換反応物は、液相重縮合反応器に供給される。液相重縮合反応器では、重縮合触媒の存在下に減圧下で、得られるポリエステルの融点以上の温度に加熱し、この際生成するグリコール成分を系外に留去させながら重縮合させる。本発明では、上記のような液相重縮合工程(A)において、35℃のo−クロロフェノール中で測定される固有粘度が、0.40〜1.50dL/gであるポリエチレンテレフタレートを製造する。
【0027】
上記のような液相重縮合反応は、重縮合触媒の存在下に行われる。重縮合触媒としては、二酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシドなどのゲルマニウム化合物、三酸化アンチモンなどのアンチモン触媒又はチタニウムテトラブトキシドなどのチタン触媒を用いることができる。しかし、本発明の製造方法においては、ゲルマニウム化合物またはチタン化合物bを用いることが好ましい。
【0028】
このようにして、最終液相重縮合反応器から得られたポリエステル(a)は、通常、溶融押出成形法によって粒状(チップ状)に成形される。得られるポリエチレンテレフタレートの固有粘度は0.40〜1.50dL/gであることが必要である。固有粘度が0.40dL/g未満の場合、得られるポリエチレンテレフタレートを例えばボトルに成形する際、ボトルとしての強度が劣るばかりでなく、溶融粘度が低いためにブロー成形性の点で劣り好ましくない。1.50dL/gを越える場合には、溶融重合段階での着色が大きくなる。さらに、溶融粘度が高いためにボトルプリフォームを射出成形する際困難となり、成形温度を高くせざるをえなくなり、ポリエチレンテレフタレートの着色が大きくなり好ましくない。また、分解生成物であるアルデヒド類の発生も多くなりボトル成形後に充填した飲料物の味覚を損なうという問題点も生じるため好ましくない。
【0029】
このような問題を解決するため溶融重縮合したポリエステル(a){プレポリマー}を固相重縮合することにより固有粘度を上げる方法が一般的である。その際、最終的に得られるポリエステルの物性を損なわないようするためにはプレポリマーの固有粘度を0.50〜1.50dL/gの範囲とすることが好ましい。プレポリマーの固有粘度が0.50dL/g未満の場合、溶融重縮合反応終了後ポリマーをチップ化する際、割れチップが多発し、形状の均一性がなくなり固相重縮合反応後のポリマー品質にばらつきが生じるだけでなく、固相重縮合への負荷が増加し、生産性が低下するという点で好ましくない。プレポリマーの固有粘度が1.50dL/gを越える場合には前述の通り溶融重縮合段階での着色、分解によるアルデヒド類の発生、ボトルプリフォームを射出成形の点で好ましくない。
【0030】
更に、エステル交換反応触媒または重縮合触媒を失活させるため、リン化合物を使用することが望ましい。リン化合物の添加量はエステル交換触媒または重縮合触媒(単一種であっても複数種であっても良い)の合計モル数に対して0.1〜10モル倍の添加量とすることが好ましい。添加量が0.1モル倍より少ないと、触媒が十分失活されず熱安定性、色相の点で問題になることがある。また添加量が10モル倍を越えると熱安定性の点で問題が起こることがある。
【0031】
(5)エステル交換触媒
本発明の製造方法においてはエステル交換触媒として、チタン化合物aを用いる。一般的なアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属系触媒として、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等を補助的に用いることができる。これらは単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよいが、ボトル用のポリエステルを合成するにあたっては、チタン化合物aを用いることが望ましい。アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属系触媒をエステル交換触媒として用いるには、チタン化合物と対比し大量に添加する必要があるが、ボトルに成形した際、ボトル胴部の結晶化度が高くなり、白化を引き起こす原因となり好ましくない。その点チタン化合物は、活性が極めて高いため、少量で済み、ボトル胴部の白化を避けることができる。
【0032】
チタン化合物aとしては、チタン原子を含む化合物一般を用いることができるが、チタン原子と酢酸からなる化合物またはチタン原子と無水トリメリット酸を反応させてなる化合物であることが好ましい。なお、チタン化合物としては、チタンテトラブトキシド及びそれらの縮合体、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルプロポキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラメトキシド、チタンテトラキスアセチルアセトナート錯体、チタンテトラキス(2,4−ヘキサンジオナト)錯体、チタンテトラキス(3,5−ヘプタンジオナト)錯体、チタンジメトキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジエトキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジイソプロポキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジノルマルプロポキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジブトキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジヒドロキシビスグリコレート、チタンジヒドロキシビスラクテート、チタンジヒドロキシビス(2−ヒドロキシプロピオネート)、乳酸チタン、チタンオクタンジオレート、チタンジメトキシビストリエタノールアミネート、チタンジエトキシビストリエタノールアミネート、チタンジブトキシビストリエタノールアミネート、ヘキサメチルジチタネート、ヘキサエチルジチタネート、ヘキサプロピルジチタネート、ヘキサブチルジチタネート、ヘキサフェニルジチタネート、オクタメチルトリチタネート、オクタエチルトリチタネート、オクタプロピルトリチタネート、オクタブチルトリチタネート、オクタフェニルトリチタネート、ヘキサアルコキシジチタネート、オクタアルキルトリチタネートなどが挙げられる。
【0033】
また上述のテトラアルキルチタネートと芳香族多価カルボン酸又はその無水物との反応生成物、テトラアルキルチタネートとモノアルキルホスフェート又はジアルキルホスフェート又はモノアリールホスフェート又はジアリールホスフェートとの反応生成物であっても良い。
【0034】
(6)アルカリ金属化合物
しかし、チタン化合物を触媒として用いる場合、ポリエステルが黄化し易いという問題がある。そこで、エステル交換反応終了後、活性を抑制するため、チタン化合物中のチタン原子1molあたり、アルカリ金属原子として0.5〜4.0倍molを添加することができる。0.5倍未満の場合、チタン化合物の活性抑制が不十分であり、続く重合反応において、ポリマーの黄化が顕著である。また、4.0倍より多い場合、アルカリ金属系触媒自身が引き起こす分解反応によって、ポリマーが黄化したり、上述したようにボトルに成形した場合、ボトル胴部の白化の原因となる。
【0035】
アルカリ金属系触媒として具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム、酢酸カリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2リチウム塩、2カリウム塩、フェノールのナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等のアルカリ土類金属化合物等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよいが、コスト面や反応系への投入を考えた際、エチレングリコールへの溶解性の高い水酸化物または酢酸塩であることが好ましい。
【0036】
(7)重縮合触媒
重縮合触媒としては、本発明の製造方法においては、ゲルマニウム化合物又はチタン化合物bを用いることができる。一般的に用いられるアンチモン化合物では、反応速度の向上が認められないため、望ましくない。これらの化合物は単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよい。なお、ゲルマニウム化合物を用いることが好ましく、そのゲルマニウム化合物では、一酸化ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシドなどが例示される。
【0037】
チタン化合物bとしては、チタンテトラブトキシド及びそれらの縮合体、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルプロポキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラメトキシド等のテトラアルキルチタネート類、チタンテトラキスアセチルアセトナート錯体、チタンテトラキス(2,4−ヘキサンジオナト)錯体、チタンテトラキス(3,5−ヘプタンジオナト)錯体、チタンジメトキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジエトキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジイソプロポキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジノルマルプロポキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジブトキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジヒドロキシビスグリコレート、チタンジヒドロキシビスラクテート、チタンジヒドロキシビス(2−ヒドロキシプロピオネート)、乳酸チタン、チタンオクタンジオレート、チタンジメトキシビストリエタノールアミネート、チタンジエトキシビストリエタノールアミネート、チタンジブトキシビストリエタノールアミネート、ヘキサメチルジチタネート、ヘキサエチルジチタネート、ヘキサプロピルジチタネート、ヘキサブチルジチタネート、ヘキサフェニルジチタネート、オクタメチルトリチタネート、オクタエチルトリチタネート、オクタプロピルトリチタネート、オクタブチルトリチタネート、オクタフェニルトリチタネート、ヘキサアルコキシジチタネート、オクタアルキルトリチタネートなどが挙げられる。
【0038】
また上述のテトラアルキルチタネートと芳香族多価カルボン酸又はその無水物との反応生成物、テトラアルキルチタネートとモノアルキルホスフェート又はジアルキルホスフェート又はモノアリールホスフェート又はジアリールホスフェートとの反応生成物であっても良い。
【0039】
(8)安定剤
重縮合反応は、必要に応じて安定剤の共存下に実施することができる。安定剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのリン酸エステル類、トリフェニルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類、メチルアッシドホスフェート、イソプロピルアッシドホスフェート、ブチルアッシドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ジオクチルホスフェートなどの酸性リン酸エステル及び正リン酸、ポリリン酸などのリン化合物が用いられる。好ましくはモノブチルホスフェート、ジブチルホスフェートまたは正リン酸から選択される少なくとも1種のリン化合物であることである。
【0040】
上記のような安定剤は、エステル交換触媒および重縮合触媒の合計モル数に対して10モル%〜130モル%で用いられることも好ましい。安定剤の添加量が10モル%未満の場合、十分にエステル交換触媒および重縮合触媒活性を抑制することができず、ポリエステルの熱安定性が十分に確保できない。また、130モル%を超える場合には、リン元素による分解反応のため、逆に熱安定性が悪くなるなどの問題が生じる。
【0041】
(9)工程の途中で添加するジカルボン酸
本発明の製造方法においては、エステル交換反応の放圧後から、重合反応において真空反応を始める前の間に、ジカルボン酸を原料であるジメチルテレフタレートに対し6〜18mol%添加し、重合することが目的を達成するためのポイントである。その際使用できるジカルボン酸としては、上記のジカルボン酸成分のエステル部分をカルボキシ基に置換えた化合物およびそれらの化合物に加え、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪酸ジカルボン酸およびその化合物を例示することができる。この中でも特に、テレフタル酸またはイソフタル酸およびその化合物が望ましい。ただし、反応途中に高温状態のオリゴマー中に投入する場合、テレフタル酸ジメチルエステルなど昇華性のある剤は、留出系配管や減圧口の閉塞を招くため、望ましくない。ポリエチレンテレフタレートを製造する際には、他の成分による共重合率を低下させる目的でテレフタル酸を好ましく選択することができる。このジカルボン酸の溶融重縮合工程への添加により色相の改善及びジエチレングリコールの発生が効率よく抑制することができる。
【0042】
(10)化合物1
本発明の製造方法においては、原料としてジカルボン酸のエステル化合物を用い、かつ、上記の触媒組成において、下記式で表される化合物1をポリマー残存量で0.1ppm以上になるよう添加することが必要である。化合物1は、一般的には青色整色剤等として使用される化合物であるが、上述の触媒組成において使用することで、著しく重合反応速度を向上させることができる。化合物1の添加量に特に上限はないが、添加量が多くなると、col−L値が低くなり、黒味が強くなってしまうため、ボトルやフィルムなど外観が重視される用途に用いる際には好ましくないことがある。
【0043】
【化2】

【0044】
(11)その他の添加剤について
そのほか、必要に応じて他の添加剤、例えば、整色剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、アルカリ金属またはアルカリ土類金属およびその化合物から選ばれる少なくとも1種を使用してもよい。
【0045】
本発明の製造方法において使用されるアルカリ金属の化合物は、下記に限定されるものではないが、具体的には、塩化カリウム、カリウムミョウバン、ギ酸カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸二水素カリウム、グルコン酸カリウム、コハク酸カリウム、酪酸カリウム、シュウ酸二カリウム、シュウ酸水素カリウム、ステアリン酸カリウム、フタル酸カリウム、フタル酸水素カリウム、メタリン酸カリウム、リンゴ酸カリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、亜硝酸カリウム、安息香酸カリウム、酒石酸水素カリウム、重シュウ酸カリウム、重フタル酸カリウム、重酒石酸カリウム、重硫酸カリウム、硝酸カリウム、酢酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸カリウムナトリウム、炭酸水素カリウム、乳酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、ギ酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸二水素ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、シュウ酸二ナトリウム、シュウ酸水素ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸水素ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酒石酸水素ナトリウム、重シュウ酸ナトリウム、重フタル酸ナトリウム、重酒石酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、乳酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、水酸化リチウム、塩化リチウム、ギ酸リチウム、クエン酸三リチウム、クエン酸水素二リチウム、クエン酸二水素リチウム、グルコン酸リチウム、コハク酸リチウム、酪酸リチウム、シュウ酸二リチウム、シュウ酸水素リチウム、ステアリン酸リチウム、フタル酸リチウム、フタル酸水素リチウム、メタリン酸リチウム、リンゴ酸リチウム、リン酸三リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸二水素リチウム、亜硝酸リチウム、安息香酸リチウム、酒石酸水素リチウム、重シュウ酸リチウム、重フタル酸リチウム、重酒石酸リチウム、重硫酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、乳酸リチウム、硫酸リチウム又は硫酸水素リチウム等を例示することができる。これらは、単一の種類の化合物を用いても又は複数の種類の化合物を併用してもかまわない。またその中でも、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸二カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムカリウム、酢酸リチウム、炭酸二リチウム又は炭酸水素リチウムが好ましく用いることができ、好ましくはリチウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩を、より好ましくはナトリウム塩又はカリウム塩を、特に好ましくカリウム塩を用いることである。一方アニオン種側から見ると、これらの中で酢酸塩、炭酸塩または水酸化物が好ましい。
【0046】
本発明の製造方法において使用されるアルカリ土類金属の化合物は、下記に制限されるものではないが、具体的には塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、コハク酸カルシウム、酪酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、塩化マグネシウム、ギ酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、酪酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム又は硫酸マグネシウム等を例示することができる。これらは単一の種類の化合物を用いても又は複数の種類の化合物を併用してもかまわない。その中でも、酢酸マグネシウム、又は酢酸カルシウムを用いることが好ましい。好ましくはカルシウム塩又はマグネシウム塩を、より好ましくはカルシウム塩を用いることである。一方アニオン種側から見ると、これらの中で酢酸塩、炭酸塩または水酸化物が好ましい。またアルカリ金属塩とアルカリ土類金属塩を併用しても構わない。
【0047】
整色剤については、本発明の製造方法によって得られるポリエステル中には、その全質量を基準として整色剤を0.1〜10.0質量ppm含有していてもよい。なおその整色剤とは、有機の多芳香族環系染料又は顔料を表し、具体的にはアントラキノン系染料であることが好ましく、青色系整色用色素、紫色系整色用色素、赤色系整色用色素、橙色系整色用色素等が挙げられる。これらは単一種で用いても複数種を併用して用いても良いが、青色系整色用色素と紫色系整色用色素を質量比90:10〜40:60の範囲で併用することが好ましい。ここで青色系整色用色素とは、一般に市販されている整色用色素の中で「Blue」と表記されているものであって、具体的には溶液中の可視光吸収スペクトルにおける最大吸収波長が580〜620nm程度にあるものを示す。同様に紫色系整色用色素とは市販されている整色用色素の中で「Violet」と表記されているものであって、具体的には溶液中の可視光吸収スペクトルにおける最大吸収波長が560〜580nm程度にあるものを示す。これらの整色用色素としては油溶染料が特に好ましく、具体的な例としては、青色系整色用色素には、上述の化合物1以外にC.I.Solvent Blue 11、C.I.Solvent Blue 25、C.I.Solvent Blue 35、C.I.Solvent Blue 36、C.I.Solvent Blue 45 (Polysynthren Blue)、C.I.Solvent Blue 55、C.I.Solvent Blue 63、C.I.Solvent Blue 78、C.I.Solvent Blue 83、C.I.Solvent Blue 87、C.I.Solvent Blue 94等が挙げられる。紫色系整色用色素には、C.I.Solvent Violet 8、C.I.Solvent Violet 13、C.I.Solvent Violet 14、C.I.Solvent Violet 21、C.I.Solvent Violet 27、C.I.Solvent Violet 28、C.I.Solvent Violet 36等が挙げられる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれによりなんら限定を受けるものでは無い。なお、実施例中の各物性値は以下の方法により求めた。なお実施例、比較例において「部」とは重量部を表す。
【0049】
(1)エステル交換触媒(チタン化合物)、リン化合物の調整
(ア)酢酸チタンの調整
エチレングリコール75.8部に酢酸4.5部を混合した後、テトラブトキシチタン6.3部(チタン原子として0.9部)を添加した。この混合物を空気中、常圧下で60℃にて40分間反応せしめた後、常温に冷却し、目的のチタン化合物を得た。
(イ)トリメリット酸チタンの合成方法
無水トリメリット酸2質量部をエチレングリコール98質量部に混合したエチレングリコール溶液に、テトラブトキシチタンを1.77重量部(チタニウム金属成分として0.25重量部、無水トリメリット酸に対するモル比0.5)添加し、この混合物を空気中、常圧下で80℃に保持して60分間反応せしめ、その後、常温に冷却し、目的のチタニウム化合物を調製した。
(ウ)化合物2の合成方法
エチレングリコール525.6重量部とモノブチルホスフェート4.4重量部を入れて混合攪拌した中に、チタンテトラブトキシドのエチレングリコール溶液68.4重量部(チタン原子の濃度で1重量%、酢酸を1重量%添加)をゆっくり添加し、徐々に昇温して120℃の温度で1時間攪拌保持したのち、得られた懸濁液を室温まで放冷した(この溶液中でリンとチタンのモル比は2である)。
【0050】
(2)分析方法
(ア)固有粘度(IV)
極限粘度数は、チップまたはプリフォームのボトル口部(口栓部と同義である。)天面に相当する部分から切り出した試料を一定量計量し、o−クロロフェノールに0.012g/mlの濃度に溶解した後、一旦冷却させ、その溶液をウベローデ式粘度計を用いて35℃の温度条件で測定した溶液粘度から算出した。
(イ)色相
非晶ポリマーは170度×3時間窒素雰囲気下の乾燥機中で熱処理し、結晶化させた後、カラーマシン社製CM−7500型カラーマシンで測定した。結晶化ポリマーはそのままカラーマシン社製CM−7500型カラーマシンで測定した。
(ウ)ジエチレングリコール(DEG)含有量
ジエチレングリコール含有量は、サンプルを抱水ヒドラジンにて分解し、アジレントテクノロジー製ガスコロマトグラフィーにて測定した。
【0051】
(3)重合方法
[実施例1]
重合(実機レベル:EI−加圧法)
ジメチルテレフタレート100部と1,2−エチレンジオール(エチレングリコール)56部との混合物に、テレフタル酸ジメチルエステルに対し、酢酸チタンをチタン原子として3.0mmol%撹拌機、精留塔及びメタノール留出コンデンサーを設けた加圧反応が可能なステンレス製容器に仕込み、0.08MPaの加圧を行い、140℃から徐々に昇温しつつ、反応の結果生成するメタノールを系外に留出させながら、エステル交換反応を行った。内温が250℃に達した時点で、ジメチルテレフタレートに対し、カリウム原子として5.0mmol%、二酸化ゲルマニウム分子として35mmol%なるように調整した酢酸カリウムと二酸化ゲルマニウムの混合液およびジブチルホスフェートをリン原子として20.0mmol%、テレフタル酸を8.5部、化合物1をポリマー中の残存量で0.2ppmとなるよう添加し、10分間撹拌を行った後、反応を終了した。
【0052】
次いで、得られた反応生成物を撹拌装置、窒素導入口、減圧口及び蒸留装置を備えた反応容器に移し、210℃から273℃に徐々に昇温すると共に、常圧から30Paの高真空に圧力を下げながら重合反応を行った。反応系の溶融粘度をトレースしつつ、固有粘度が0.52dl/gとなる時点で重合反応を打ち切った。溶融ポリマーを反応器底部よりストランド状に冷却水中に押し出し、ストランドカッターを用いて切断してペレット化した。結果を表1に示した。
【0053】
[実施例2〜5]
化合物1をそれぞれポリマー中の残存量で0.5ppm、0.8ppm、1.0ppm、1.2ppmとなるよう添加した以外、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示した。
【0054】
[比較例1]
化合物1を添加しなかった以外、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示した。
【0055】
[比較例2]
単位時間当たり平均450質量部のオリゴマーが滞留する完全混合反応器内に、攪拌下、窒素雰囲気で274.5℃、常圧下に維持された条件下に、単位時間当たり389質量部の高純度テレフタル酸と単位時間当たり209質量部のエチレングリコールとを混合して調製されたスラリーを連続供給し、反応で発生する水とエチレングリコールを系外に留去ながら、反応器内理論滞留時間4時間でエステル化反応を反応を完結させた。この時のエステル化率は、98%以上で、生成されたオリゴマーの重合度は、約5〜9であった。
【0056】
このエステル化反応で得られたオリゴマー450質量部を順次、重縮合反応槽に移し、重縮合触媒として、チタン/リン反応化合物(化合物2)をテレフタル酸成分に対し、単位時間当たり4mmol%、化合物1をポリマー残存量で0.2ppmとなるよう添加した。系内の反応温度を276.5℃、又、反応圧力60Paにて、反応で発生する水,エチレングリコールを系外に除去しながら重縮合反応を行った。この時の重縮合反応反応槽内の滞留時間は、180分であった。その後、系内の反応物を吐出部からストランド状に連続的に押出し、冷却、カッティングして、約3mm程度の粒状非晶質ポリマーを得た。結果を表1に示した。
【0057】
[比較例3〜4]
化合物1をそれぞれポリマー中の残存量で0.4ppm、0.6ppmとなるよう添加した以外、比較例2と同様に実施した。結果を表1に示した。これら比較例2〜3は重縮合速度やDEG含有量は実施例と同等であったが、得られるポリエチレンテレフタレートの色相の青みが強かった。
【0058】
[実施例6]
重合(ビーカーレベル:EI−BHET法)
ジメチルテレフタレート100部と1,2−エチレンジオール64部との混合物に、テレフタル酸ジメチルエステルに対し、酢酸チタンをチタン原子として3.0mmol%撹拌機、精留塔及びメタノール留出コンデンサーを設けた加圧反応が可能なステンレス製容器に仕込み、0.08MPaの加圧を行い、140℃から徐々に昇温しつつ、反応の結果生成するメタノールを系外に留出させながら、エステル交換反応を行った。
【0059】
こうして準備したビスヒドロキシエチルテレフタレート131部にテレフタル酸1.7部、ビスヒドロキシエチルテレフタレートに対し、酢酸カリウムをカリウム原子として5.0mmol%、二酸化ゲルマニウムを二酸化ゲルマニウム分子として35.0mmol%、モノブチルホスフェートをリン原子として20.0mmol%および化合物1をポリマー中の残存量で0.5ppmとなるよう、撹拌機、精留塔及びメタノール留出コンデンサーを設けた反応容器に仕込んだ。ついで、210℃から273℃に徐々に昇温すると共に、常圧から30〜50Paの高真空に圧力を下げながら重合反応を行った。高真空状態になってから、60分で重合反応を打ち切った。溶融ポリマーを反応器より取り出し、ペレット状に切断した。結果を表1に示した。
【0060】
[実施例7]
化合物1をそれぞれポリマー中の残存量で1.0ppmとなるよう添加した以外、実施例6と同様に実施した。結果を表1に示した。
【0061】
[実施例8]
酢酸カリウムを添加しなかった以外、実施例7と同様に実施した。結果を表1に示した。
【0062】
[実施例9]
モノブチルホスフェートにかわり、リン酸を用いた以外、実施例7と同様に実施した。結果を表1に示した。
【0063】
[実施例10]
酢酸カリウムにかわり、酢酸ナトリウムを用いた以外、実施例7と同様に実施した。結果を表1に示した。
【0064】
[比較例5]
化合物1を添加しなかった以外、実施例7と同様に実施した。結果を表1に示した。
【0065】
[比較例6]
二酸化ゲルマニウムにかわり、三酸化アンチモンを用いた以外、実施例7と同様に実施した。結果を表1に示した。
【0066】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のポリエチレンテレフタレートの製造方法により、重縮合反応速度を速めることで、得られるポリエチレンテレフタレートの色相を改善並びに主にジエチレングリコール等の副生成物の発生量を抑制することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル交換反応工程と溶融重縮合反応工程を含むポリエチレンテレフタレートの製造方法であって、テレフタル酸ジアルキルエステルもしくはテレフタル酸ビスヒドロキシアルキルエステルとエチレングリコールを原料とし、チタン化合物aから選ばれる少なくとも1種の化合物をエステル交換触媒として用いエステル交換反応を終えた後、ゲルマニウム化合物またはチタン化合物bから選ばれる少なくとも1種の化合物を重縮合触媒として用い、リン化合物から選択される少なくとも1種の化合物、テレフタル酸および下記式で表される化合物1を添加し重縮合することを特徴とする、ポリエチレンテレフタレートの製造方法。
【化1】

【請求項2】
化合物1をポリエチレンテレフタレート中の残存量で0.1ppm以上になるように添加することを特徴とする、請求項1記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
【請求項3】
リン化合物がモノブチルホスフェート、ジブチルホスフェートまたは正リン酸から選択される少なくとも1種のリン化合物であることを特徴とする、請求項1〜2のいずれか1項記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
【請求項4】
重縮合触媒がゲルマニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
【請求項5】
エステル交換触媒が、チタン原子と酢酸からなる化合物またはチタン原子と無水トリメリット酸からなる化合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
【請求項6】
テレフタル酸ジアルキルエステルもしくはテレフタル酸ビスヒドロキシアルキルエステルがジメチルテレフタレートまたはビスヒドロキシエチルテレフタレートであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。

【公開番号】特開2011−26438(P2011−26438A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173249(P2009−173249)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】