説明

ポリオキシメチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体の製造方法

【課題】強靭性と柔軟性を兼ね備え、しかも耐衝撃性に優れた成形物を与え、また透明性に優れたフィルムを与えるポリオキシメチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】(i)OH基当量が平均して2500以上であり且つ分子量分布(Mw/Mn)が1.30以下である1種以上のポリオキシアルキレンポリオール、またはOH基当量が平均して2500以上であり且つ分子量分布(Mw/Mn)が1.30以下である1種以上のポリオキシアルキレンポリオールを50質量%以上含むポリオキシアルキレンポリオール混合物と、(ii)ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド多量体、および(−CHO−)を主たる構成単位として含むホルムアルデヒド重合体からなる群から選択される1種以上の化合物とを、アルデヒド重合触媒の存在下で反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のポリオキシアルキレンポリオールを用いたポリオキシメチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オキシメチレン重合体は、ポリアセタール樹脂として知られ、結晶性が高く、優れた機械的性質、耐薬品性、耐摩耗性等を有することから、電気・電子部品、自動車部品などに用いられている。さらに、オキシメチレン重合体にオキシメチレンユニット以外のモノマーユニットを含有させてブロック共重合体にすることにより、またはオキシメチレン重合体に各種の添加剤を加えることにより、ポリオキシメチレン鎖の結晶性を下げて、可塑性、透明性、および柔軟性を高め、フィルム、シート、および繊維などへ応用することも検討されている。
【0003】
ポリオキシメチレン鎖以外の化学構造をもつポリエーテルとポリオキシメチレンとを組み合わせたポリオキシメチレン系ブロック共重合としては、以下のものが知られている。たとえば、炭化水素溶媒中、ポリアルキレングリコールの存在下、4級アンモニウムカルボキシレート触媒を用いてホルムアルデヒドを重合して得られた重合体から、強靭性、熱安定性および可塑性が良好な成形物、ならびに可撓性および透明性に優れたフィルムおよびシートの製造ができることが報告されている(特許文献1)。さらに、溶媒中で、または溶媒を用いることなく、ポリオキシメチレン化合物とそれ以外のポリアルキレンオキシドとをルイス酸触媒下で反応させることにより、熱安定性および塩基安定性に優れたポリオキシメチレン系重合体を製造する方法が報告されている(特許文献2)。さらに、カチオン重合触媒の存在下で、反応性官能基を有するエラストマーをポリオキシメチレン化合物及び環状エーテルと反応させる、ブロック化ポリアセタールの製法が報告されている(特許文献3)。さらに、ポリオキシメチレン化合物とポリエーテルポリオールとをポリイソシアネートによって結合させる、ブロック重合体の製造法が報告されている(特許文献4)。さらに、カチオン重合触媒を用いてポリオキシメチレン化合物を製造した後、触媒活性を保ったままの条件下で、ポリオキシメチレン化合物と活性水素を有するポリエステルまたはポリエーテル類とを溶融混練するポリオキシメチレン系共重合体の製造方法が報告されている(特許文献5)。
【0004】
公知の特許文献1〜5に記載されたポリオキシメチレン−ポリアルキレンオキシド共重合体においては、オキシメチレン重合体と比較して、フィルムに成形した場合の透明性が高くなり、また成形体の熱安定性が高くなるなどの特性改良が達成されることが報告されているが、フィルムにした場合の一層高い透明性や、さらに優れた耐熱性および機械物性、さらには成形加工の容易さのために溶融時に優れた流動性をもつことなどが求められている。
【特許文献1】特公昭35−2194号公報
【特許文献2】特公昭61−053369号公報
【特許文献3】特公昭62−020203号公報
【特許文献4】特開平2000−297135号公報
【特許文献5】特開平2005−105103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来公知のものと比較して、より優れた引張強度、引張伸度および耐衝撃性を有し、透明性に優れたフィルムを与えるポリオキシメチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のポリオキシメチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体の製造方法は、
(i)OH基当量が平均して2500以上であり且つ分子量分布(Mw/Mn)が1.30以下である1種以上のポリオキシアルキレンポリオール、またはOH基当量が平均して2500以上であり且つ分子量分布(Mw/Mn)が1.30以下である1種以上のポリオキシアルキレンポリオールを50質量%以上含むポリオキシアルキレンポリオール混合物と、
(ii)ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド多量体、および(−CHO−)を主たる構成単位として含むホルムアルデヒド重合体からなる群から選択される1種以上の化合物とを、アルデヒド重合触媒の存在下で反応させることを特徴とする。
【0007】
上記製造方法においては、OH基当量が平均して2500以上であり且つ分子量分布(Mw/Mn)が1.30以下であるポリオキシアルキレンポリオールの総不飽和度が、0.06meq/g以下であることが好ましい。
【0008】
上記製造方法においては、上記ポリオキシアルキレンポリオールが、複合金属シアン化物錯体触媒存在下で活性水素原子含有開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られたものであることがさらに好ましい。
【0009】
本発明に用いる上記複合金属シアン化物錯体触媒は、有機配位子の少なくとも一部としてtert−ブチルアルコ−ルを含むものであることが好ましい。
【0010】
さらに、上記製造方法において活性水素含有開始剤に開環付加重合させるアルキレンオキシドは、プロピレンオキシドであることが好ましい。
【0011】
本明細書において、「ポリオキシメチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体」中の「ポリオキシアルキレン」の語は、ポリオキシメチレン以外のポリオキシアルキレンを意味する。ポリオキシアルキレンポリオールの「OH基当量」とは、ポリオキシアルキレンポリオールのモル質量/1分子当たりの平均水酸基数、をいう。分子量分布は、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で表され、MwおよびMnはゲル浸透クロマトグラフィ−によって測定したポリスチレン換算分子量である。上記「総不飽和度」は、JIS−K−1557に準拠して測定した値(meq/g)である。
また、ポリオキシアルキレンポリオール中に含まれる金属量は、燃焼、灰化後、原子吸光分析法によって測定した値である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法を用いて製造したポリオキシメチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体は、溶融時の流動性(溶融流動性)に優れ、この共重合体から得られる成形体は、引張強度、引張伸度および耐衝撃性に優れ、この共重合体から製造したフィルムは透明性に優れるという効果の少なくとも1つが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のポリオキシメチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体(以下、ポリオキシメチレン系共重合体とも記す。)の製造方法をさらに詳細に説明する。
【0014】
(ポリエ−テルポリオール)
本発明のポリオキシメチレン系共重合体の製造方法に用いるポリオキシアルキレンポリオールは、OH基当量が平均して2500以上であり且つ分子量分布(Mw/Mn)が1.30以下であるポリオキシアルキレンポリオール(以下、このポリオキシアルキレンポリオールを「高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオール」とも記す。)から選択した1種を用いるか、または2種以上を混合物として用いる。さらに本発明においては、上記高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオールの合計量がポリオキシアルキレンポリオール全体の50質量%以上となることを条件として、高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオールとそれ以外のポリオキシアルキレンポリオールを併用することもできる。
【0015】
本発明に用いる高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオールの製造方法は特に限定されないが、例えば、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下で、活性水素原子を少なくとも2個有する開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させて製造できる。開始剤1モルに対して重合させるアルキレンオキシドのモル当量を多くするほど、OH基当量の大きなポリオキシアルキレンポリオールが得られ、すなわち、開始剤に対して重合させるアルキレンオキシドの量を調節することで得られるポリオキシアルキレンポリオールのOH基当量を調節できる。また、アルキレンオキシド重合反応における撹拌条件、アルキレンオキシドの供給速度、重合温度、用いる触媒の量などの条件を適切に選択することで、分子量分布が狭い(Mw/Mnが1.30以下の)狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオールを製造することができ、以下に示す本発明の態様に基づいて、当業者は容易に適切な反応条件を選択することができる。開始剤に対して、アルキレンオキシドとともに環状エステル、例えばε−カプロラクトン、をランダムまたはブロック共重合して得られるポリエステルエ−テルポリオール、環状カーボネート、例えばエチレンカーボネート、をランダムまたはブロック共重合して得られるポリカーボネートエ−テルポリオールも、本発明に用いる高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオールに包含される。
【0016】
高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオールのOH基当量は、平均して2500以上であり、2800以上が好ましい。3000以上がさらに好ましく、さらには4000以上、最も好ましくは5000以上であることである。また上限は特にないが、ポリオキシアルキレンポリオールの製造の取り扱い性などから30000以下であることが好ましい。また、高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオールの分子量分布(Mw/Mn)は1.30以下であり、1.20以下であることが好ましく、1.10以下であることが特に好ましい。OH基当量を2500以上とし、分子量分布を1.30以下の高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオールを用いることにより、得られる本発明のポリオキシメチレンブロック共重合体の機械物性を向上することができる。
【0017】
上記高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオールは、その総不飽和度(meq/g)が0.06以下であることが好ましく、0.02以下であることがさらに好ましく、0.006以下であることが特に好ましい。総不飽和度が低いことにより、一官能であるモノオールの含量が少なく、引張り強度、衝撃強度を高くできる効果が得られる。ポリオキシメチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体の製造に、低不飽和度のポリエ−テルポリオールを用いることはこれまで知られていない。
【0018】
通常、ポリオキシアルキレンポリオールは分子量が大きくなると粘度も大きくなり、取り扱いが困難となるが、本発明で用いる高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオールは、分子量分布が狭いため、粘度も低く、取り扱いが容易である。
【0019】
低不飽和度のポリオキシアルキレンポリオールと、ホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒドの多量体もしくは重合体とを、アルデヒド重合触媒の存在下で反応させて得られる本発明のポリオキシメチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体は、樹脂強度と柔軟性と耐衝撃性を兼ね備えている。これは、ポリオキシアルキレンポリオールのOH基当量が大きいことにより、ポリオキシメチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体の柔軟性を高くでき、しかもポリオキシアルキレンポリオールの総不飽和度が低いことによってポリオキシアルキレン鎖を含んでも樹脂の強度の低下を少なくすることができるためであると考えられる。
【0020】
高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオールは、1分子当たり2〜12の水酸基を有するものが好ましく、2〜6の水酸基を有するものがさらに好ましく、2〜3の水酸基を有するものが特に好ましい。この場合、1分子当たりの水酸基の数とは、ポリオキシアルキレンポリオールを製造するために用いる開始剤1分子当たりの活性水素原子の数をいう。2種類以上の高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオールを混合して用いる場合は、全てのポリオールを平均した1分子当たりの水酸基数が上記範囲であることが好ましい。
【0021】
本発明において用いるポリオキシアルキレンポリオールは、上述のとおり、所定のOH基当量および分子量分布を有するものであれば、製造方法は特に制限されないが、一般に、活性水素原子を有する開始剤およびアルキレンオキシド開環重合触媒存在下で、アルキレンオキシドを開環重合させて製造できる。この場合、用いる触媒としては、特に、複合金属シアン化物錯体触媒、CsOH、ホスファゼンなどから選択される、分子量分布が狭く且つ総不飽和度の低いポリオキシアルキレンポリオールを製造するために適した触媒が好ましい。なかでも、後述の通り複合金属シアン化物錯体触媒が好ましい。
【0022】
(高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオール製造用の開始剤)
ポリオキシアルキレンポリオールを製造するための活性水素原子を少なくとも2個有する開始剤としては、水;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等の2価アルコ−ル類;グリセリン、ジグリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ペンタエリスリト−ル、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリト−ル、ショ糖等の多価アルコ−ル類;エチレンジアミン、ジ(2−アミノエチル)アミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪酸アミン類;トルイレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族アミン類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノ−ルアミン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のフェノール類等が挙げられる。さらにこれらの開始剤にアニオン重合触媒、カチオン重合触媒、または配位重合触媒などの存在下でアルキレンオキシドを付加重合して得られるOH基当量が60〜2000程度の化合物も開始剤として使用できる。これらの活性水素化合物は2種以上を併用して使用することもできる。
【0023】
また、ポリカーボネートポリオールおよびポリオキシテトラメチレングリコールからなる群から選ばれる化合物を開始剤として用いることもできる。
【0024】
開始剤の使用量は、製造するポリオキシアルキレンポリオールのOH基当量に応じて適切な値を選択するが、最終的に製造するポリオキシアルキレンポリオールの全量に対して、通常3〜60質量%であることが好ましい。
【0025】
(高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオール製造用のアルキレンオキシド)
開環重合触媒の存在下、開始剤に開環付加重合するアルキレンオキシドとしては、開環付加重合可能なアルキレンオキシドであればよく、特に限定されない。具体的なアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、スチレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、グリシジルエ−テルおよびグリシジルアクリレ−トなどのグリシジル化合物、オキセタン、が挙げられる。
【0026】
本発明においては、一種類のアルキレンオキシドのみを用いてもよく、または所望により二種類以上のアルキレンオキシドを併用することもできる。二種類以上のアルキレンオキシドを併用する場合は、ブロック重合およびランダム重合のいずれの重合法を用いてもよく、さらにブロック重合とランダム重合の両者を組み合わせて一種のポリエーテル類を重合することもできる。本発明には、プロピレンオキシドを用いるか、または10モル%以上のプロピレンオキシドと他のアルキレンオキシドの混合物を用いることが好ましい。
【0027】
本発明の高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオールは分子鎖内に、アルキレンオキシド以外のモノマ−単位を50モル%以下で含むこともできる。具体的には、たとえば、例えばε−カプロラクトンなどの環状エステルやエチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート類などが挙げられる。これらは、ランダム重合することも、ブロック重合することもできる。
【0028】
(高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオールの製造条件)
活性水素原子含有開始剤存在下でアルキレンオキシドを開環重合させることによるポリオキシアルキレンポリオールの製造方法としては、一般に、水酸化カリウムなどのアルカリ化合物を触媒として用いる方法が公知である。しかし、アルカリ化合物を触媒として用いてOH基当量が2500以上である比較的高分子量のポリオキシアルキレンポリオールを製造しようとしても、得られるポリオキシアルキレンポリオールのOH基当量を2500以上にすることは困難であり、総不飽和度を0.06meq/g以下にすることも困難である。本発明の高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンを製造する場合に用いるアルキレンオキシド重合触媒としては、複合金属シアン化物錯体触媒、CsOHおよびホスファゼンからなる群から選択される触媒を用いることが好ましい。そのなかでも、tert−ブチルアルコ−ルを配位子の少なくとも一部として含有している複合金属シアン化物錯体触媒を用いることが特に好ましい。
【0029】
(高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオール製造用の複合金属シアン化物錯体)
複合金属シアン化物錯体触媒は公知の製造方法で製造でき、例えば、特開平2003−165836号、特開平2005−15786号、特開平7−196778号、特表2000−513647号に記載の方法が挙げられる。例えば、(1)水溶液中でハロゲン化金属塩とアルカリ金属シアノメタレ−トとを反応させて得られる反応生成物に有機配位子を配位させ、ついで、固体成分を分離し、分離した固体成分を有機配位子水溶液でさらに洗浄する方法、または(2)有機配位子水溶液中でハロゲン化金属塩とアルカリ金属シアノメタレ−トとを反応させ、得られる反応生成物(固体成分)を分離し、分離した固体成分を有機配位子水溶液でさらに洗浄する方法などにより製造できる。反応生成物を洗浄、ろ過分離して得られるケーキ(固体成分)を、ケーキに対して3質量%以下のポリエ−テルを含んだ有機配位子水溶液に再分散し、その後、揮発成分を留去することにより、スラリー状の複合金属シアン化物錯体触媒を調製することもできる。分子量分布の狭いポリオキシアルキレンポリオールを製造するためには、このスラリー状の触媒を用いることが特に好ましい。
【0030】
有機配位子としては、アルコ−ル、エ−テル、ケトン、エステル、アミン、アミドなどが使用できるが、好ましい有機配位子は、tert−ブチルアルコ−ル、tert−ペンチルアルコ−ル、およびエチレングリコールモノ−tert−ブチルエ−テル、ならびにtert−ブチルアルコ−ルとエチレングリコールモノ−tert−ブチルエ−テルの組合せであり、特に好ましい有機配位子は、tert−ブチルアルコ−ルである。したがって、有機配位子の少なくとも一部としてtert−ブチルアルコ−ルを有する複合金属シアン化物錯体触媒を用いることが好ましい。このような有機配位子を用いた場合には、高活性の複合金属シアン化物錯体触媒が得られ、総不飽和度の低いポリオキシアルキレンポリオールを製造することができる。
【0031】
また、開始剤に対して反応させるアルキレンオキシドのモル数を調節することにより、得られるポリオキシアルキレンポリオールのOH基当量を2500以上にすることができる。
【0032】
得られるポリオキシアルキレンポリオールの分子量分布は、用いる触媒の種類だけでなく、開始剤にアルキレンオキシドを重合させる重合条件にも左右される。得られるポリオキシアルキレンポリオールの分子量分布を狭くするためには、重合反応温度を高くして反応系内の粘度を下げることが好ましい。具体的には、重合温度は120℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがさらに好ましい。また、反応器内のモノマー供給ノズル数を多くし、および/または重合反応系内へのモノマー(アルキレンオキシド)供給速度を低くすることなどにより、反応器内においてモノマー濃度ができるだけ均一になるようにすることが好ましい。さらに、反応混合物の撹拌速度を高めること、および/または反応混合物に対して大きなせん断エネルギ−を与える大型の撹拌翼を用いること、が好ましい。
【0033】
本発明の高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオールを製造するためにCsOHまたはホスファゼン触媒を用いる場合は、開始剤へのアルキレンオキシド重合反応終了後に、触媒を除去するための精製を行うことが好ましく、そのような方法は当業者に公知である。
【0034】
一方、アルキレンオキシド重合触媒として複合金属シアン化物錯体触媒を用いる場合は、その触媒活性が高いことから、得られるポリオキシアルキレンポリオール中に残存する触媒量を低くでき、触媒除去のための精製をすることなくポリオキシアルキレンポリオールをさらにホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド多量体および/またはホルムアルデヒド重合体とカチオン重合触媒存在下で反応させてポリオキシメチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体を製造することができる。この場合は、アルキレンオキシドの重合によって得られる高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオール中に残存する触媒由来金属量が30ppm以下になる量で複合金属シアン化物錯体触媒を用いることが好ましい。複合金属シアン化物錯体触媒は、重合反応系内に一度に供給することも、重合途中で分割して供給することもできる。
【0035】
さらに、得られるポリオキシアルキレンポリオールに残存する触媒由来金属の量を20ppm以下とすることがさらに好ましく、10ppm以下とすることが特に好ましい。
【0036】
高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオールに含まれる触媒由来金属の量を上記範囲とすることにより、ポリオキシメチレン重合体とのブロック共重合体を製造する場合に用いるカチオン重合触媒への悪影響、例えば、触媒の失活など、を防ぐことができる。特に、ポリオキシアルキレンポリオール製造時に複合金属シアン化物錯体触媒を用いた場合は、得られる高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオールは、カチオン重合触媒を失活させるアルカリ成分を含まず、また、複合金属シアン化物錯体触媒が残存したとしてもカチオン重合触媒への悪影響が少ないため、後のポリオキシメチレン重合をスム−ズに進行させることができる。
【0037】
(ポリオキシアルキレンポリオールと反応させるポリオキシメチレン等)
本発明においては、(i)上記高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオールと、(ii)ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド多量体、および/またはオキシメチレン単位(−CHO−)を主たる構成単位として含むホルムアルデヒド重合体からなる群から選択される化合物とをアルデヒド重合触媒の存在下で反応させてポリオキシメチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体を製造する。
【0038】
ホルムアルデヒド多量体としては、ホルムアルデヒドの三量体からなる環状化合物であるトリオキサン、四量体からなる環状化合物であるテトラオキサンが好ましい。
オキシメチレン単位(−CHO−)を主たる構成単位として含むホルムアルデヒド重合体(以下、単にホルムアルデヒド重合体ともいう。)としては、ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド多量体を開環重合させて製造される、オリゴマー(パラホルムアルデヒド)及び高分子量化合物が挙げられる。
【0039】
また、ホルムアルデヒトまたはホルムアルデヒド多量体とともに、他のコモノマーを共重合させたものも使用できる。コモノマーの具体例としては、高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオールを製造する際に用いる上述のアルキレンオキシドを挙げることができる。さらに、オキセタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール及びジエチレングリコールホルマールなども挙げることができる。共重合モノマーを使用する場合は、その使用割合は0.05〜25モル%が好ましく、0.1モル〜10モル%、特に0.5〜5モル%が好ましい。
重合触媒としては、後述するカチオン重合触媒またはアニオン重合触媒が、用いるモノマーに応じて使用できる。
【0040】
上記(ii)のうち特に好ましいものは、ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒド多量体から選ばれるモノマーのみを開環重合させて製造されるホルムアルデヒド重合体(以下、ポリオキシメチレンともいう。)であり、数平均分子量が3000〜20万程度のものが使用できる。なかでも数平均分子量が5000以上のものが好ましく、10000以上のものがさらに好ましく、50000以上であることが好ましい。平均分子量が5000以上のポリオキシメチレンを用いることにより、得られるポリオキシメチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体の機械物性を優れたものにできる。
【0041】
(アルデヒド重合触媒)
本発明においては、上記(i)及び(ii)をアルデヒド重合触媒存在下で反応させて、ポリオキシメチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体を製造できる。アルデヒド重合触媒としては、従来公知のカチオン重合触媒およびアニオン重合触媒のいずれも用いることができる。
【0042】
(カチオン重合触媒)
ホルムアルデヒド重合体の製造、および本発明のポリオキシメチレン系ブロック共重合体の製造に用いることのできるカチオン重合触媒としては、例えば、四塩化鉛、四塩化スズ、四塩化チタン、三塩化アルミニウム、塩化亜鉛、三塩化バナジウム、三塩化アンチモン、金属アセチルアセトネート、五フッ化リン、五フッ化アンチモン、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素配位化合物(たとえば、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジブチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジオキサネート、三フッ化ホウ素アセチックアンハイドレート、三フッ化ホウ素トリエチルアミン錯化合物など)、過塩素酸、アセチルパークロレート、t−ブチルパークロレート、ヒドロキシ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの無機および有機酸ならびに有機酸の金属塩、トリエチルオキソニウムテトラフロロボレート、トリフェニルメチルヘキサフロロアンチモネート、アリルジアゾニウムヘキサフロロホスフェート、アリルジアゾニウムテトラフロロボレートなどの複合塩化合物、ジエチル亜鉛、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライドなどのアルキル金属塩、ヘテロポリ酸、およびイソポリ酸などが挙げられる。その中でも特に、MoO(diketonate)Cl、 MoO(diketonate)OSOCF、トリフルオロメタンスルホン酸、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジブチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジオキサネート、三フッ化ホウ素アセチックアンハイドレート、および、三フッ化ホウ素トリエチルアミン錯化合物などの三フッ化ホウ素配位化合物が好ましい。
【0043】
(アニオン重合触媒)
ホルムアルデヒド重合体の製造、および本発明でポリオキシメチレン系ブロック共重合体の製造に用いることのできるアニオン重合触媒としては、たとえば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、ナトリウムナフタレン、カリウムアントラセンなどのアルカリ金属錯化合物、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、水素化ナトリウム、水素化リチウムなどのアルカリ金属水素化物、水素化カルシウムなどのアルカリ土類金属水素化物、ナトリウムメトキシド、カリウムブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド、ステアリン酸ナトリウムなどのアルカリ金属カルボン酸塩、カプロン酸カルシウムなどのアルカリ土類金属カルボン酸塩、ジエチルアミン、トリオクチルアミン、トリブチルアミン、ピリジンなどのアミン、第4級アンモニウムカルボキシレートなどの第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジメトキシド、トリブチル錫クロライドなどの四価有機錫化合物、ブチルリチウム、ブチルマグネシウムクロライドなどのアルキル金属化合物などが挙げられる。これらのなかで、四価有機錫化合物および第4級アンモニウム塩が特に好ましい。
【0044】
(ポリオキシメチレン系ブロック共重合体の製造)
本発明においては、上述したポリオキシアルキレンポリオールと、ホルムアルデヒドおよび/または、ホルムアルデヒド多量体もしくはホルムアルデヒド重合体とを、上述したアルデヒド重合触媒を用いて反応させることによりポリオキシメチレン系ブロック共重合体を製造する。本発明では、特に、アルデヒド重合触媒としてカチオン重合触媒を用いて本反応を行うことが好ましい。
【0045】
上記方法を用いて製造した本発明のポリオキシメチレン系ブロック共重合体は、ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基にポリオキシメチレン鎖ブロックが付加した構造を主として有するものである。さらに詳しく説明すると、上記(ii)の成分として何を選択するかにより、本反応には以下の(1)と(2)の反応が含まれうる。
(1)予めホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド多量体を重合させて得たポリオキシメチレンなどのホルムアルデヒド重合体をポリオキシアルキレンポリオール鎖と結合させる反応
(2)ポリオキシアルキレンポリオール鎖にホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド多量体を付加重合させる反応
【0046】
(1)の反応においては、ホルムアルデヒド、トリオキサン、またはテトラオキサンなどから公知の方法を用いてポリオキシメチレンなどのホルムアルデヒド重合体を製造し、次にポリオキシアルキレンポリオールと反応させることができる。
【0047】
ホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド多量体(たとえば、トリオキサンおよびテトラオキサンなどから選択される化合物)などから製造されるホルムアルデヒド重合体をさらにポリオキシアルキレンポリオールと反応させる場合は、ポリオキシメチレンの製造に用いた重合触媒を失活されていない状態に保ったまま、続いてポリオキシアルキレンポリオールと反応させることが好ましい。例えば、重合触媒を用い、溶媒中でホルムアルデヒド、トリオキサン、またはテトラオキサンを重合した後に、さらにポリオキシアルキレンポリオールを添加し、ポリオキシメチレン系ブロック共重合体を製造することができる。溶媒は用いても用いなくてもよく、溶媒を用いない場合は、溶媒除去などの工程を必要としないため、好ましい製造方法である。具体的には、例えば、特表2000−513647号で提案されているように、カチオン重合触媒存在下でホルムアルデヒド、トリオキサン、およびテトラオキサンからなる群から選択される化合物を重合させてポリオキシメチレンなどのホルムアルデヒド重合体を製造し、重合触媒を失活させることなく次にポリオキシアルキレンポリオールと溶融混練することによって本発明のポリオキシメチレン系ブロック共重合体を製造できる。
【0048】
また、上記(2)の反応、すなわち、ポリオキシアルキレンポリオールに直接ホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド多量体(例えば、トリオキサンまたはテトラオキサンなど)を重合させる反応により、ポリオキシメチレン系ブロック共重合体を製造することもできる。この場合、溶媒中に溶解したアルデヒド重合触媒およびポリオキシアルキレンポリオールにホルムアルデヒドなどのモノマーを添加し、重合させることによって、ポリオキシアルキレンポリオールからポリオキシメチレン鎖ブロックを成長させることができる。
【0049】
ホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド多量体の重合反応に用いる溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンおよびトルエンなどの炭化水素、ジメトキシエタンおよびジオキサンなどのエーテル、塩化メチレンおよびクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素などを挙げることができる。
【0050】
ポリオキシアルキレンポリオールと反応させるホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド多量体もしくは重合体の使用量は、ポリオキシアルキレンポリオールに対して質量で、1倍量〜10000倍量、好ましくは2倍量〜1000倍量である。ホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド多量体もしくは重合体の使用量をポリオキシアルキレンポリオールの10000倍量以下にすることで、得られる共重合体の衝撃強度が顕著に低下することなく、しかも柔軟性が良好な樹脂が得られ、一方、1倍量以上にすることにより、強度および剛性が優れた共重合体を得ることができる。
【0051】
ポリオキシアルキレンポリオールと、ホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド重合体もしくは多量体との反応は、連続法またはバッチ法によって行うことができる。反応は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。溶媒を用いる場合、重合温度は通常、−20℃〜200℃、好ましくは0℃〜180℃、さらに好ましくは20℃〜160℃である。重合反応時間は通常、数分〜数十時間である。触媒使用量は通常、重合させるホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド重合体もしくは多量体に対して、0.03ppm〜1%、好ましくは0.1ppm〜0.1%、さらに好ましくは1ppm〜0.01%である。
【0052】
原料としてホルムアルデヒドを使用しない場合は、バルク重合法を用いることもできる。バルク重合は、溶融混練式の反応器を用いて行うことが好ましい。溶融混練式の反応器としては、一軸または二軸の押出機が挙げられる。バルク重合の重合温度は、生成物であるポリオキシメチレン系ブロック共重合体の溶融温度以上であり、通常、60℃〜250℃、好ましくは100℃〜220℃、さらに好ましくは140℃〜200℃である。重合反応時間は通常、数十分〜数十時間である。触媒使用量は通常、反応させるホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド多量体もしくは重合体に対して、3ppm〜5質量%、好ましくは10ppm〜1質量%、さらに好ましくは50ppm〜0.1質量%である。
【0053】
(分子量調整)
本発明のポリオキシメチレン系ブロック共重合体の分子量は、そのひとつの指標である流動性MFR(メルトフローレイト)で、通常0.01〜300が好ましく、0.1〜100が特に好ましく、1〜50が最も好ましい。MFRが0.01より小さいと成形加工が難しく、300より大きいと良好な機械物性が得られる。
【0054】
ポリオキシメチレン系ブロック共重合体の分子量は、アセタール化合物、オルトギ酸エステル、カルボン酸無水物、およびアルコールなどから選択される分子量調整剤を用いることにより、調整できることが知られている。さらに、本発明で用いるポリオキシアルキレンポリオールも分子量調整剤として機能する。これらの分子量調整剤の使用量を適切な値に調節することによって、得られるポリオキシメチレン系ブロック共重合体の数平均分子量を調節することができる。なお、流動性MFRの測定法は、JIS−K7210(2000年度)に準拠し、試験温度230℃、荷重2.16kg重で、10分間に溶融、押し出される樹脂の質量(g)を測定する。
【0055】
(後処理)
上述した反応終了後、未反応モノマーおよび溶媒などの揮発成分の除去、触媒の失活処理、および重合体末端の安定化処理を、それぞれ必要に応じて任意に選択して行い、本発明のポリオキシメチレン系ブロック共重合体を製造する。これまでに揮発成分の除去、触媒の失活処理、末端安定化処理などを別々に、または同時に行う各種の後処理法が提案されており、本発明では公知の方法から任意に選択して実施することができる。
【0056】
上記反応を無溶媒で行い、反応後にホルムアルデヒドおよびトリオキサンなどの揮発成分が存在する場合には、触媒が失活する前か、または触媒が失活した後で揮発成分を、減圧下で直接除去することができる。溶媒を使用した場合には、ポリマーをろ過し分離した後、ポリマーに含まれる溶媒を減圧下で除去することができる。また、触媒を失活させ、重合体の末端安定化処理を行った後に、ろ過し、乾燥して、溶媒を除去することもできる。
【0057】
カチオン重合触媒を用いた場合には、得られたポリオキシメチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体に塩基性化合物を添加混合するか、または塩基性化合物の水溶液にブロック共重合体を混合して触媒を失活させ、その後、公知の方法による末端安定化処理を行うことが好ましい。重合終了後のポリマーと塩基性化合物の高温水溶液とを接触させて、揮発成分の除去と触媒失活を同時に行なうこともできる。カチオン重合触媒を中和し失活させるための塩基性化合物としては、アンモニア;トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミンおよびトリブタノ−ルアミン等のアミン類;アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物塩類、ならびにその他公知の触媒失活剤が挙げられる。ポリオキシアルキレンポリオールと、ホルムアルデヒド多量体および/またはホルムアルデヒド重合体とを、溶融混錬してカチオン重合反応させた場合、溶融混錬しながら塩基性化合物による触媒失活、不安定末端部の分解除去、または安定物質添加による不安定末端の封止を行なうことができる。アニオン重合触媒を用いて重合した場合には、必要に応じて触媒を中和、失活させる。アニオン重合触媒を中和するための酸性化合物としては、リン酸、硫酸、および塩酸など公知の触媒失活剤を用いることができる。
【0058】
末端安定化処理されたポリオキシメチレン系ブロック共重合体には、さらに必要に応じて公知の各種安定剤を配合することも可能であり、安定剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、窒素含有化合物、アルカリまたはアルカリ土類金属の水酸化物、無機塩、カルボン酸塩等のいずれか1種または2種以上を挙げることができる。さらに必要に応じて、熱可塑性樹脂に用いられる一般的な添加剤、例えば、染料および顔料等の着色剤、滑剤、核剤、離型剤、帯電防止剤、界面活性剤、有機高分子材料、無機または有機の繊維状、粉体状および板状の充填剤等からなる群から選択される添加剤を1種または2種以上添加することができる。
【0059】
本発明のポリオキシメチレン系ブロック共重合体は、これ単独で成形品の原料として用いることができ、また、末端安定化処理した別のポリオキシメチレンなどのホルムアルデヒド重合体と溶融混合して組成物を製造することもできる。異なる種類の重合体の配合比、配合させる重合体の化学構造を適切に選択することによって、得られる樹脂組成物の各種機械的物性をバランスよく調節することができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、得られたポリオキシメチレン系ブロック共重合体の流動性は、JIS−K7210(2000年度)に準拠し、試験温度230℃、荷重2.16kg重で、10分間に溶融、押し出される樹脂の質量(g)を測定した。得られたポリオキシメチレン系ブロック共重合体を用い、ISO9988−2:1999に準じて試験片を作成し、得られた試験片を温度23℃、湿度50%の条件下、100時間放置した後、引張り試験(ISO527−1:1993に準拠)、シャルピー衝撃試験(ノッチ付き;ISO179−1:2000に準拠)を行ない、引張強度、伸度、およびシャルピー衝撃試験評価を行った。
これと併せて、ポリオキシメチレン系ブロック共重合体を用いて厚さ約1mmのフィルムを作成し、その透明性を目視によって評価して透明性の高い順にA〜Cの順位付けを行った。
【0061】
(参考例1)「DMC触媒(DMC−TBA触媒)の製造」
塩化亜鉛10.2gと水10gからなる水溶液を500mLのフラスコに入れた。カリウムヘキサシアノコバルテート(KCo(CN))4.2gと水75gからなる水溶液を、300rpm(回転数/分)で撹拌しながら30分間かけて前記フラスコ内の塩化亜鉛水溶液に滴下して加えた。この間、フラスコ内の混合溶液を40℃に保った。カリウムヘキサシアノコバルテート水溶液の滴下終了後、フラスコ内の混合物をさらに30分撹拌した後、tert−ブチルアルコール(以下、TBAと略す。)80g、水80g、および0.6gのポリオールP(プロピレングリコールにKOH触媒を用いてプロピレンオキシドを付加重合し、脱アルカリ精製した、OH基当量501のポリオキシプロピレンジオール)からなる混合物を添加し、40℃で30分間、さらに60℃で60分間撹拌した。得られた混合物を、直径125mmの円形ろ板と微粒子用の定量ろ紙(ADVANTEC社製のNo.5C)とを用いて加圧下(0.25MPa)で濾過を行い、複合金属シアン化物錯体を含む固体(ケーキ)を分離した。
次いで、得られた複合金属シアン化物錯体を含むケーキをフラスコに移し、TBA36gおよび水84gの混合物を添加して30分撹拌後、上記と同じ条件で加圧濾過を行ってケーキを得た。得られたケーキをフラスコに移し、さらにTBA108gおよび水12gの混合物を添加して30分撹拌し、TBA−水混合溶媒に複合金属シアン化物錯体触媒(以下、DMC触媒とも記す。)が分散された液(スラリー)を得た。このスラリーに上記のポリオールPを120g添加混合した後、減圧下、80℃で3時間、さらに115℃で3時間、揮発性成分を留去して、スラリー状のDMC−TBA触媒を得た。スラリー中の固体触媒成分の濃度は4.1質量%であった。
【0062】
(参考例2)「高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオールの調製」
パドル翼(撹拌翼径は反応器内径の50%)撹拌装置を備えた10L反応容器内に、開始剤として1300gのポリオールPと、9.51gの参考例1で調製したDMC−TBA触媒スラリー(0.39gの固体触媒成分を含む。)を投入した。反応容器内を窒素置換した後、内温を130℃に昇温し、170gのプロピレンオキシド(以下、単にPOとも記す。)を添加した。触媒活性化とともに重合が始まり、反応容器内のPO圧力が下がってから、20g/分の速度でPOを3500g反応容器内に供給し、その後、ガス相のモノマー分圧が0.08MPaを越えないようにして、10g/分以下の速度でPOをさらに3100g供給した。POを反応容器内に供給している間、反応容器の内温を約130℃に保ちながら、220rpmの回転速度で撹拌を行い、重合反応を行った。反応終了後、さらに130℃で60分間加熱および撹拌して未反応のPOをできるだけ反応させた後、内温を130℃に保ちながら減圧脱気を60分間行った。得られたポリオール(A)のOH基当量は3000、不飽和度は0.006meq/g、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比は1.05、および金属(Zn+Co)残渣は12ppmであった。このポリオールおよび以下の参考例で得たポリオールの性状を表1に示す。
【0063】
(参考例3)「高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオールの調製」
パドル翼(撹拌翼径は反応器内径の50%)撹拌装置を備えた10L反応容器中に、開始剤として1300gのポリオールPと、19.0gの上記DMC−TBA触媒スラリー(0.78gの固体触媒成分を含む。)を投入した。反応容器内を窒素置換した後、内温を130℃に昇温し、170gのPOを添加した。触媒活性化とともに重合が始まり、反応容器内のPO圧力が下がってから、20g/分の速度でPOを3500g反応容器内に供給し、その後、ガス相のモノマー分圧が0.08MPaを越えないように、15g/分以下の速度でPOをさらに3100g供給した。POを反応容器内に供給している間、反応容器の内温を約130℃に保ちながら、220rpmの回転速度で撹拌を行い、重合反応を行った。反応終了後、さらに130℃で60分間加熱および撹拌して未反応のPOをできるだけ反応させた後、反応器内のポリオキシプロピレンジオールを3900g抜き出した。 次に、10g/分の速度でPOを4200g供給して重合を続けた。POを反応容器内に供給している間、反応容器の内温を約130℃に保ちながら、220rpmの回転速度で撹拌を行い、反応終了後、さらに130℃で60分間加熱および撹拌して未反応のPOをできるだけ反応させた後、内温を130℃に保ちながら減圧脱気を60分間行った。得られたポリオール(B)のOH基当量は6000、不飽和度は0.005meq/g、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比は1.13、および金属(Zn+Co)残渣は13ppmであった。
【0064】
(参考例4)「DMC触媒(DMC−DME触媒)の製造」
塩化亜鉛10.2gと水10gからなる水溶液を500mLのフラスコに入れた。カリウムヘキサシアノコバルテート(KCo(CN))4.2gと水75gからなる水溶液を、300rpm(回転数/分)で撹拌しながら30分間かけて前記フラスコ内の塩化亜鉛水溶液に滴下して加えた。この間、フラスコ内の混合溶液を40℃に保った。カリウムヘキサシアノコバルテート水溶液の滴下終了後、フラスコ内の混合物をさらに30分撹拌した後、ジメトキシエタン(以下、DMEと略す。)80g、および水80gからなる混合物を添加し、40℃で30分間、さらに60℃で60分間撹拌した。得られた混合物を、直径125mmの円形ろ板と微粒子用の定量ろ紙(ADVANTEC社製のNo.5C)とを用いて加圧下(0.25MPa)で濾過を行い、複合金属シアン化物錯体を含む固体(ケーキ)を分離した。
次いで、得られた複合金属シアン化物錯体を含むケーキをフラスコに移し、DME36gおよび水84gの混合物を添加して30分撹拌後、上記と同じ条件で加圧濾過を行ってケーキを得た。得られたケーキをフラスコに移し、さらにDME108gおよび水12gの混合物を添加して30分撹拌し、上記と同じ条件で加圧濾過を行ってケーキを得た。得られたケーキを減圧下、80℃で5時間揮発性成分を留去して固体状のDMC−DME触媒を得た。
【0065】
(参考例5)「高分子量狭分子量分布ポリオキシアルキレンポリオールの調製」
パドル翼(撹拌翼径は反応器内径の50%)撹拌装置を備えた10L反応容器内に、開始剤としてポリオールPを1300gと、2.40gの参考例4で調製されたDMC−DME触媒固体とを投入した。反応容器内を窒素置換した後、内温を130℃に昇温し、170gのPOを添加した。触媒活性化とともに重合が始まり、反応容器内のPO圧力が下がってから、20g/分の速度でPOを3800g反応容器内に供給し、その後、ガス相のモノマー分圧が0.08MPaを越えないようにして、15g/分以下の速度でPOを3400g供給した。POを反応容器内に供給している間、反応容器の内温を約130℃に保ちながら、220rpmの回転速度で撹拌を行い、重合反応を行った。反応終了後、さらに130℃で60分間加熱および撹拌して未反応のPOをできるだけ反応させた後、反応器内のポリオキシプロピレンジオールを4300g抜き出した。
次に、10g/分の速度でPOを4950g供給して重合を続けた。POを反応容器内に供給している間、反応容器の内温を約130℃に保ちながら、220rpmの回転速度で撹拌を行い、反応終了後、さらに130℃で60分間加熱および撹拌して未反応のPOをできるだけ反応させた後、内温を130℃に保ちながら減圧脱気を60分間行った。得られたポリオキシアルキレンポリオール1000gと合成珪酸アルミニウム吸着剤(協和化学工業社製700PEL)10gを3L反応容器で、120℃、2時間混合撹拌し、さらに1時間減圧脱気した。得られた混合物を、直径250mmの円形ろ板と微粒子用の定量ろ紙(ADVANTEC社製のNo.5C)とを用いて加圧下(0.35MPa)で濾過を行い、精製されたポリオール(F)を得た。ポリオール(F)のOH基当量は6000、不飽和度は0.040meq/g、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比は1.21、および金属(Zn+Co)残渣は0.67ppmであった。
【0066】
(実施例1)
二軸押出機型の連続式重合装置(ジャケット温度80℃)に、トリオキサンおよび1,3−ジオキソラン(供給モル比96:4)、ならびに連鎖移動剤としてメチラール、カチオン重合触媒としてBFエーテラートを供給してトリオキサンと1,3−ジオキソランとの共重合を行い、フレーク状のホルムアルデヒド重合体を連続的に得た。得られたホルムアルデヒド重合体は、さらに二軸押出機でポリオキシアルキレンポリオール(B)との溶融混練を行い(ポリオキシメチレンとポリオキシアルキレンポリオールの質量比95:5)、ポリオキシメチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体を製造した。上記溶融混練条件は、シリンダー温度180℃〜200℃(ダイヘッド部)、スクリュー回転数は120rpm、フィード量は6kg/hrである。得られたブロック共重合体はペレタイズし、再度溶融混錬法を用い、ブロック共重合体100重量部に対してトリエチルアミンの5質量%水溶液を3重量部およびイルガノックス1010を0.2重量部添加して、触媒の失活化処理と共に安定化処理を行った。得られたブロック共重合体を用いて作成した試験片の機械的物性の測定結果を表2に示す。
【0067】
(実施例2)
ポリオキシアルキレンポリオールとしてポリオール(A)を用いた以外は、実施例1と同様にポリオキシメチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体を製造し、得られたブロック共重合体を用いて試験片を作製した。この試験片の機械的物性の測定結果を表2に示す。
【0068】
(実施例3)「ポリオキシメチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体の製造」
ポリオール(B)のトルエン溶液(7質量%)を200g/時間、ホルムアルデヒドを100g/時間、重合触媒としてジブチル錫ジラウレートのトルエン溶液(1mmol/L)を50g/時間で冷却器付きの反応器に連続的に5時間供給し、この間、重合温度を60℃に保った。得られた固体をトルエンからろ過分離し、洗浄後に無水酢酸を添加して末端水酸基のアセチル化処理を行った。乾燥して得た固体に、ヒンダードフェノール系の安定剤としてイルガノックス1010(チバスペシャリテイケミカルズ社製)を1500ppm添加し、二軸押出機を用いて180℃で溶融混練りし、平板に成形してポリオキシメチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体の試験片を得た。機械的物性の測定結果を表2に示す。
【0069】
(実施例4)
ポリオキシアルキレンポリオールとしてポリオール(A)を用いた以外は、実施例3と同様にポリオキシメチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体の試験片を得た。機械的物性の測定結果を表2に示す。
【0070】
(実施例5)
ポリオキシアルキレンポリオールとして、特開平11−106500号公報の比較例に記載の方法に従ってCsOH触媒存在下でプロピレンオキシドを開環重合し、精製、脱触媒処理したポリオキシプロピレンジオール(ポリオール(C))を用いた以外は、実施例1と同様にポリオキシメチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体の試験片を得た。機械的物性の測定結果を表2に示す。ただし、CsOH触媒で製造されたポリオール(C)のOH基当量は3000、不飽和度は0.090meq/g、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比は1.09であった。
【0071】
(実施例6)
ポリオキシアルキレンポリオールとしてポリオール(C)を用いた以外は、実施例3と同様にポリオキシメチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体の試験片を得た。機械的物性の測定結果を表2に示す。
【0072】
(実施例7)
ポリオキシアルキレンポリオールとして、特開2001−106780号公報に記載の方法に従ってホスファゼン触媒存在下で開始剤としてジプロピレングリコールを用い、プロピレンオキシドを反応温度75℃で開環重合し、精製、脱触媒処理したポリオキシプロピレンジオール(ポリオール(D))を用いた以外は、実施例1と同様にポリオキシメチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体の試験片を得た。ただし、ポリオール(D)のOH基当量は5000、不飽和度は0.095meq/g、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比は1.21であった。
【0073】
(実施例8)
ポリオキシアルキレンポリオールとしてポリオール(F)を用いた以外は、実施例1と同様にポリオキシメチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体の試験片を得た。機械的物性の測定結果を表2に示す。
【0074】
(比較例)
ポリオキシアルキレンポリオールとして、KOH触媒存在下、プロピレンオキシドを開環重合して製造されたポリオキシプロピレンジオール(ポリオール(E))を用いた以外は実施例1と同様にポリオキシメチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体の試験片を得た。ただし、KOH触媒で製造されたポリオール(E)のOH基当量は1600、不飽和度は0.087meq/g、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比は1.049であった。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の製造方法にしたがって得られるポリオキシメチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体からは、強靭性と柔軟性を兼ね備え、しかも耐衝撃性に優れた成形物が得られ、また、透明性に優れたフィルムが得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)OH基当量が平均して2500以上であり且つ分子量分布(Mw/Mn)が1.30以下である1種以上のポリオキシアルキレンポリオール、またはOH基当量が平均して2500以上であり且つ分子量分布(Mw/Mn)が1.30以下である1種以上のポリオキシアルキレンポリオールを50質量%以上含むポリオキシアルキレンポリオール混合物と、(ii)ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド多量体、およびオキシメチレン単位(−CHO−)を主たる構成単位として含むホルムアルデヒド重合体からなる群から選択される1種以上の化合物とを、アルデヒド重合触媒の存在下で反応させることを特徴とするポリオキシメチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体の製造方法。
【請求項2】
OH基当量が平均して2500以上であり且つ分子量分布(Mw/Mn)が1.30以下である前記ポリオキシアルキレンポリオールの総不飽和度が0.06meq/g以下である、請求項1記載のポリオキシメチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体の製造方法。
【請求項3】
OH基当量が平均して2500以上であり且つ分子量分布(Mw/Mn)が1.30以下である前記ポリオキシアルキレンポリオールが、複合金属シアン化物錯体触媒存在下で活性水素原子含有開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られたものである、請求項1または2に記載のポリオキシメチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記複合金属シアン化物錯体触媒が、有機配位子の少なくとも一部としてtert‐ブチルアルコールを含む、請求項3記載のポリオキシメチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記アルキレンオキシドがプロピレンオキシドである、請求項3または4に記載のポリオキシメチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体の製造方法。



【公開番号】特開2007−211082(P2007−211082A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30840(P2006−30840)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】