説明

ポリオキシメチレンから残留モノマーを除去する方法

ポリオキシメチレンホモポリマー又はポリオキシメチレンコポリマーから、a)脱ガス装置中でポリマーから残留モノマーを蒸気としてガス状で取り出し、b)蒸気導管を介して前記残留モノマー蒸気を導出し、c)凝縮装置中で前記残留モノマーを前記蒸気から1.09〜102.4bar及び102〜230℃で凝縮させ、前記凝縮装置のいかなる点でも102℃を下回らず、かつ前記蒸気と接触する凝縮装置の面は凝縮された残留モノマーからなる液膜で覆われている方法工程を有する、残留モノマーを除去する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキシメチレンホモポリマー又はポリオキシメチレンコポリマーから、次の方法工程:
a) 脱ガス装置中で、前記ポリマーから残留モノマーを蒸気として70〜300℃の温度及び0.005〜50barの圧力でガス状で取り出す工程、
b) 蒸気導管を介して、前記残留モノマー蒸気を導出し、その際、前記蒸気温度をその沸点を上回るように保持する工程、
c) 凝縮装置中で、前記ガス状の残留モノマーを蒸気から凝縮させる工程
で反応されない残留モノマーを除去する方法において、
工程c)において凝縮装置を1.09〜102.4barの圧力及び102〜230℃の温度で運転し、その際、102℃の最低温度は前記凝縮装置のいかなる点でも下回らず、かつ
前記蒸気と接触する前記凝縮装置のそれぞれの面は、凝縮された残留モノマーを含有する液膜で覆われていることを特徴とする、反応されない残留モノマーを除去する方法に関する。
【0002】
さらに、本発明は、ポリオキシメチレンホモポリマー又はポリオキシメチレンコポリマーの製造の間での又は前記製造に引き続いて前記方法の使用に関する。さらに、本発明は、まずモノマー装置中で適当なモノマーを製造するか又は貯蔵し、次いで前記モノマーを重合反応器中で前記ポリマーに重合させ、前記重合の間又は前記重合の後に前記ポリマー中に含まれる残留モノマーを上記の方法により除去することを特徴とするポリオキシメチレンホモポリマー又はポリオキシメチレンコポリマーの製造方法に関する。
【0003】
最後に、本発明は、後者の方法により得られたポリオキシメチレンホモポリマー又はポリオキシメチレンコポリマーに関する。
【0004】
ポリオキシメチレンポリマー(POM)は、1,3,5−トリオキサン(省略形:トリオキサン)、ホルムアルデヒド又は他のホルムアルデヒド供給源のホモ重合又は共重合により得られる。この場合、前記反応は通常では完全ではなく、むしろPOM−粗製重合体は40%までの反応されないモノマーをも含有する。このような残留モノマーは、例えばトリオキサン及びホルムアルデヒド、並びに場合により併用されたコモノマー、例えば1,3−ジオキソラン又はエチレンオキシドである。これらの残留モノマーは後処理により前記粗製ポリマーから除去される。
【0005】
本発明は、DE-A 32 31 797の次の工程:
A. 脱ガス区域中で70〜300℃及び0.005〜50barで、ポリマーからガス状のトリオキサン蒸気を取り出す工程、
B. 前記蒸気を導出し、その際、前記蒸気温度は露点を上回る工程、
C. 場合により前記蒸気を1barを超えるまで圧縮する工程、
D. 1barを超えて、濃縮区域中で前記ガス状のトリオキサンを凝縮し、その際、凝縮できないホルムアルデヒドをガス状で取り出す工程、
E. 場合により、前記トリオキサンを精製する工程
を有する、トリオキサン含有オキシメチレンポリマーからトリオキサンを後処理するための方法から出発する。
【0006】
前記方法は、取り出されたトリオキサンが自発的に及び不所望に重合しかねないという欠点を有する。それにより、例えばパラホルムアルデヒドからなる被膜が形成され、この被膜がトリオキサンの凝縮又は後処理の際に前記装置を閉塞させてしまい、前記製造装置の停止の後に費用をかけて清浄化しなければならなくなる。前記文献の第3頁21行にも見られるように、表面で凝縮されたトリオキサンの重合する傾向が顕著である。この重合(重縮合)を回避するために、前記文献は第7頁15行〜第8頁5行及びその実施例には、凝縮区域中で重合防止剤、例えば水、アルコール、アンモニア又はアミンを併用することを教示している。
【0007】
前記の文献によると、前記防止剤は、重合反応の前に相応する量の重合開始剤の添加により過補償される(乗り越えられる)場合にだけ、凝縮されたトリオキサンをPOM製造に意図的に再使用することが可能である。この付加的な開始剤添加は、この方法のコストを上げてしまう。これとは別に、この文献は、前記防止剤を費用をかけてイオン交換、抽出又は蒸留により除去できることも教示しているが、これもこの方法の経済性を同様に低下させている。
【0008】
前記の文献は、第6頁23〜24行に、凝縮区域中で残留モノマーのホルムアルデヒドは凝縮できない、それというのも前記ホルムアルデヒドはガス状で取り出されるためであることを教示している。DE-A 32 31 797の方法の場合には、分離された残留モノマーのトリオキサンとホルムアルデヒドとが2つの異なる相(トリオキサンは液状、ホルムアルデヒドはガス状)として生じ、このことが残留モノマーの返送を複雑なものにしている。
【0009】
本発明の課題は、前記の欠点を取り除くことであった。特に、凝縮される残留モノマーの重合を重合防止剤の添加なしでも抑制する、トリオキサン、ホルムアルデヒド及びその他の残留モノマーを、ポリオキシメチレンから除去する方法が提供されるのが好ましい。開始剤も使用しないのが好ましい。
【0010】
さらに、この方法はホルムアルデヒドの分離を容易にするのが好ましい。特に、前記ホルムアルデヒドを、トリオキサンと一緒に液相として凝縮することができるのが好ましい。
【0011】
従って、残留モノマーを除去するための上記に定義された方法が見出された。さらに、前記方法の記載された使用、前記POMポリマーの記載された製造方法及び最後に記載された方法により得られたPOMポリマーが見出された。本発明の有利な実施態様は、引用形式請求項に記載されている。
【0012】
全ての圧力の数値は、他に記載のない限り絶対圧である。
【0013】
本発明による方法によって反応されない残留モノマーが除去されるポリオキシメチレンホモポリマー又はポリオキシメチレンコポリマー(POM)は、それ自体公知でありかつ市販されている。前記ホモポリマーは、ホルムアルデヒド又は有利にトリオキサンの重合により製造され、前記コポリマーの製造の際にさらにコモノマーが併用される。
【0014】
特に一般的には、この種のPOMポリマーは、ポリマー主鎖中で繰返単位−CH2O−の少なくとも50mol%を有する。ポリオキシメチレンコポリマーが有利であり、特に、繰返単位−CH2O−の他に、なお50mol%まで、有利に0.1〜20mol%、特に0.3〜10mol%、さらに特に有利に2〜6mol%次の繰り返し単位を有する
【化1】

[式中、R1〜R4は相互に無関係に、水素原子、C1〜C4−アルキル基又はハロゲン置換された1〜4個のC原子を有するアルキル基を表し、R5は−CH2−、−CH2O−、C1〜C4−アルキル置換された又はC1〜C4−ハロアルキル置換されたメチレン基又は相応するオキシメチレン基を表し、nは0〜3の範囲の値を表す]。有利に、前記基は環状エーテルの開環によりコポリマー中に導入されていてもよい。有利な環状エーテルは、式:
【化2】

[式中、R1〜R5及びnは上記の意味を表す]の環状エーテルである。例えば、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、1,3−ブチレンオキシド、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン及び1,3−ジオキセパン(=ブタンジオールホルマール、BUFO)が環状エーテルとして挙げられ、並びに線状オリゴホルマール又はポリホルマール、例えばポリジオキソラン又はポリジオキセパンがコモノマーとして挙げられる。
【0015】
同様に、例えばトリオキサンと、前記した環状エーテルの1つと、第3のモノマー、有利に式
【化3】

及び/又は
【化4】

[式中、Zは化学結合、−O−、−ORO−(R=C1〜C8−アルキレン又はC3〜C8−シクロアルキレン)である]の二官能性化合物との反応により製造されるオキシメチレンターポリマーが適している。
【0016】
この種の有利なモノマーは、若干の例を挙げれば、エチレンジグリシド、ジグリシジルエーテル及びグリセリンとホルムアルデヒド、ジオキサン又はトリオキサンとの2:1のモル比のジエーテル、グリシジル化合物2molと2〜8個のC原子を有する脂肪族ジオール1molとからなるジエーテル、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、シクロブタン−1,3−ジオール、1,2−プロパンジオール及びシクロヘキサン−1,4−ジオールのジグリシジルエーテルである。
【0017】
鎖末端にC−C結合又は−O−CH3−結合を有する、末端基が安定化されたポリオキシメチレン重合体が特に有利である。
【0018】
有利なポリオキシメチレンコポリマーは、少なくとも150℃の融点及び5000〜300000、有利に7000〜250000の範囲内の分子量(重量平均)Mwを有する。不均一性(Mw/Mn)2〜15、有利に2〜9を有するPOM共重合体が特に有利である。
【0019】
この測定は、一般にゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)−SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)によって行われ、Mn−値(数平均分子量)は一般にGPC−SECによって測定される。
【0020】
前記ポリマーの分子量は、場合によりトリオキサン重合の際に通常の調節剤によって目的の値に調節することができる。調節剤として、一価アルコールのアセタールもしくはホルマール、アルコール自体並びに連鎖移動剤として機能する少量の水(この存在は一般に完全には回避されない)が挙げられる。前記調節剤は、10〜10000ppm、有利に100〜1000ppmの量で使用される。
【0021】
開始剤として(同様に触媒とも言われる)、トリオキサン重合の場合に通常のカチオン性開始剤が使用される。プロトン酸、例えばフッ素化又は塩素化されたアルキル−及びアリールスルホン酸、例えば過塩素酸、トリフロロメタンスルホン酸又はルイス酸、例えば四塩化スズ、五フッ化ヒ素、五フッ化リン及び三フッ化ホウ素並びにこれらの錯化合物及び塩状の化合物、例えば三フッ化ホウ素−エーテラート及びトリフェニルメチレンヘキサフルオロホスファートが適している。前記開始剤(触媒)は、約0.01〜1000ppm、有利に0.01〜500ppm及び特に0.01〜200ppmの量で使用される。一般に、前記開始剤を希釈された形で、有利に0.005〜5質量%の濃度で添加することが推奨される。このための溶剤として、不活性化合物、例えば脂肪族、環式脂肪族炭化水素、例えばシクロヘキサン、ハロゲン化された脂肪族炭化水素、グリコールエーテルなどを使用することができる。トリグリムが溶剤として特に有利である(トリエチレングリコールジメチルエーテル)。
【0022】
前記開始剤に対して付加的に、共触媒を併用することもできる。これは、全ての種類のアルコール、例えば2〜20個のC原子を有する脂肪族アルコール、例えばt−アミルアルコール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール;2〜30個のC原子を有するアルコール、例えばヒドロキノン;2〜20個のC原子を有するハロゲン化されたアルコール、例えばヘキサフルオロイソプロパノールであり;特に有利に全ての種類のグリコール、特にジエチレングリコール及びトリエチレングリコール;及び脂肪族ジヒドロキシ化合物、特に2〜6個の炭素原子を有するジオール、例えば1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及びネオペンチルグリコールである。
【0023】
モノマー、防止剤、共触媒及び場合により調節剤は任意に予備混合するか又は相互に別個に重合反応器に添加することもできる。さらに、EP-A 129369又はEP-A 128739に記載されているように、立体障害フェノールを安定化するための成分を含有していてもよい。
【0024】
有利に、前記重合に直接引き続き、前記重合体混合物を、有利に相変化を行わずに失活させる。開始剤の残り(触媒の残り)の失活は、一般に重合溶融物に失活剤を添加することにより行う。適当な失活剤は、例えばアンモニア並びに第1級、第2級又は第3級の脂肪族及び芳香族アミン、例えばトリアルキルアミン、例えばトリエチルアミンである。さらに、塩基性に反応する塩、例えばソーダ及びボラックス、さらにアルカリ金属及びアルカリ土類金属のカルボン酸塩及び水酸化物、さらにアルコラート、例えばナトリウムメタノラートが適している。これらの失活剤は、通常ではポリマーに有利に0.01質量ppmw(parts per million by weight)〜2質量%の量で添加される。さらに、アルキル基中で2〜30個のC原子を有するアルカリ金属−もしくはアルカリ土類金属アルキルが失活剤として有利である。特に有利な金属として、Li、Mg及びNaが挙げられ、その際、n−ブチルリチウムが特に有利である。
【0025】
ホルムアルデヒドからなるPOMは、通常では気相中、溶液中での重合、沈殿重合又は塊状(Substanz)重合により製造することができる。トリオキサンからのPOMは、一般に塊状での重合により得られ、そのために高い混合作用を有する全ての反応器を使用することができる。前記反応の実施は、この場合、均一系、例えば溶融液中で、又は不均一系で、例えば固体又は固体顆粒への重合として行うことができる。例えば、シェル型反応器、鋤刃混合器、管型反応器、リスト型反応器、ニーダー(バスニーダー)、例えば一軸又は二軸スクリューを備えた押出機、及び撹拌機付き反応器が適しており、その際、前記反応器はスタティックミキサ又はダイナミックミキサを有していてもよい。
【0026】
例えば押出機中での、塊状での重合の場合に、溶融したポリマーによりいわゆる溶融物シーリングが生じ、それにより揮発性成分は押出機中に留まる。前記モノマーは、押出機中に存在するポリマー溶融物中へ、開始剤(触媒)と一緒に又は別々に、反応混合物の有利な温度60〜114℃で供給される。有利に、前記モノマー(トリオキサン)は溶融した状態でも、例えば60〜120℃で添加される。発熱性の重合反応に基づき、通常では前記方法の開始時にだけ前記ポリマーを押出機中で溶融させなければならず、引き続き生じた重合熱は生成したPOMポリマーを溶融させるかもしくは融液状に保つために十分である。
【0027】
この溶融重合は、一般に1.5〜500bar及び130〜300℃で行われ、かつ重合混合物の反応器中での滞留時間は通常では0.1〜20、有利に0.4〜5分である。有利に、前記重合は30%を上回る転化率まで、例えば60〜90%まで行われる。
【0028】
この場合、前記したように多量の、例えば40%までの反応されない残留モノマー、特にトリオキサンとホルムアルデヒドを含有する粗製−POMが得られる。この場合、モノマーとしてトリオキサンだけを使用した場合でも、ホルムアルデヒドは粗製−POM中にも存在することができる、それというのもトリオキサンの分解生成物としてホルムアルデヒドが生じることができるためである。さらに、ホルムアルデヒドの他のオリゴマー、例えばテトラマーのテトラオキサンも存在することができる。
【0029】
本発明による方法の工程a)では、脱ガス装置中で、前記ポリマーから残留モノマーを蒸気として70〜300℃の温度及び0.005〜50barの圧力でガス状で取り出す。有利に圧力は0.005〜20、特に0.05〜5barである。
【0030】
有利にPOMの製造のためにトリオキサンをモノマーとして使用し、それにより、取り出される残留モノマーは主にトリオキサンを含有し、さらに通常ではテトラオキサン0.5〜10質量%と、ホルムアルデヒド0.1〜15質量%を含有する。
【0031】
有利に、工程a)では、溶剤又は抽出剤を併用せずかつ不活性ガスを供給しない。脱ガスすべき粗製−POMが固体の形で存在する場合には、前記脱ガスは有利に通常の固体スクリュー、ブレード型乾燥機又はミキサー中で行われる。前記脱ガス装置中の温度は、固体POMの場合、有利に115〜140℃であった。
【0032】
有利に、前記粗製−POMはポリマー溶融物として存在し、かつこの場合に脱ガス装置として、大きな溶融物表面積(溶融物/空気の相界面)を創出するような装置、例えば一軸又は多軸スクリュー押出機、ニーダー又は脱ガスポット(フラッシュポット)が使用される。この温度は、このようなPOM溶融液の場合に有利に170〜300℃である。
【0033】
この方法の工程b)の場合に、蒸気導管によって残留モノマー蒸気を導出し、その際、この蒸気温度はその沸点を上回るように、例えば130〜220℃に維持される。前記蒸気導管は、前記蒸気を凝縮装置に案内し、かつ場合により通常の加熱装置によって前記の温度に温度調節される。工程a)中での脱ガスが少なくとも1barで行われる場合に、蒸気の取り出しは凝縮装置(工程c)に後続する圧縮装置により、又は付加的な機械的装置なしで脱ガス装置と凝縮装置との間に存在する温度による蒸気圧勾配によって行われる。
【0034】
工程a)において脱ガスが真空中で行われる限り、工程b)の後の場合による工程b′)において導出される蒸気を圧縮し、その後で、前記の蒸気を凝縮装置(工程c))中に導入することができる。有利に、1barを超える圧力、特に1.1〜5barの圧力に圧縮される。圧縮機として、通常の装置、例えばタービン圧縮機、噴流圧縮機又は液体リング圧縮機が適している。液体リング圧縮機は有利に遮断液として65℃〜115℃の液状トリオキサンで運転され、かつ圧縮機及び凝縮装置をまとめることができる。
【0035】
脱ガス装置及び凝縮装置の間の蒸気導管の温度が常に、それぞれの圧力の際に前記蒸気の沸点を上回るように保持されるため、特に触媒痕跡物及びホルムアルデヒドによって促進される前記導管中でのトリオキサンの不所望な重合は回避することができる(DE-A 32 31 797参照)。
【0036】
この方法の工程c)において、凝縮装置中でガス状の残留モノマーが蒸気から(冷却によって)凝縮される。本発明の場合に、前記凝縮装置は1.09〜102.4barの圧力及び102〜230℃の温度で運転され、その際、102℃の最低温度は前記凝縮装置のいかなる点でも下回らない。この場合、点とは空間的状態もしくは位置を意味する。
【0037】
意外にも、凝縮の際に、前記の圧力範囲及び温度範囲に維持し、かつ凝縮装置はいかなる点でも少なくとも102℃の温度である場合に、凝縮装置中での残留モノマーの、特にトリオキサン及びホルムアルデヒドの不所望な重合は確実に回避できることが見出された。
【0038】
有利に、前記凝縮装置は、1.58〜14.8barの圧力及び111〜170℃の温度で運転され、特に有利に2.0〜5barの圧力及び120〜135℃の温度で運転される。
【0039】
前記圧力及び温度は、通常では例えば圧力調整弁、前方又は後方に設けられた圧縮機により、もしくは適当な加熱装置又は冷却装置、例えば加熱ジャケット又は冷却ジャケットにより調節される。
【0040】
有利に、圧力及び温度の維持すべき下限は次の不等式1及び2に従う:
【数1】

【数2】

前記式中:
Tは温度(℃)を表し、
pは絶対圧(bar)を表し、
Xは、トリオキサン中に溶解したホルムアルデヒド(例えば分子状のホルムアルデヒドとして、パラホルムアルデヒドとして、その他のダイマー、トリマー、テトラマー又は他のオリゴマーとして溶解)の所与の割合(質量割合Xとして表す)を表す。
【0041】
同様に本発明の場合には、前記凝縮装置は、前記凝縮装置の蒸気と接触する面(以後省略して接触面と言う)が、凝縮された残留モノマーを含有する液膜で覆われているように構成されかつ運転される。
【0042】
これは、特に死空間を有することのない凝縮装置を保証する、それというのも、このような死空間の範囲内での接触面は、場合によりこのような液膜を有していないか又は不完全な液膜を有するだけであるためである。それ自体濡れていない表面は不所望なようにパラホルムアルデヒドが形成されることが想定される。
【0043】
凝縮装置として、管状凝縮器が特に適している。この凝縮器は、例えば構造物のない簡単な環として構成されていて、その壁部は温度調節装置、例えば加熱ジャケット又は冷却ジャケットにより適当な温度に温度調節される。それに対して、DE-A 32 31 797の第6頁26〜28行に記載されているような充填塔又はトレイ構造物を備えた塔は、一般にあまり適していない、それというのもこれらの塔は障害となる死空間もしくは濡れていない表面を有していることがあるためである。
【0044】
有利に、前記凝縮装置は、管状凝縮器、液膜凝縮器又はスクラバー塔である。特に有利なのは外部加熱された管であり、前記管は有利に内部構造物を有していない。有利に、この管は垂直に配置されていて、かつ同様に有利に取り出されたガス状の残留モノマーが上部から前記管内へ導入される。そこで、前記残留モノマーは管壁部(=接触面)で凝縮され、液膜(凝縮物)を形成し、下部へ流下する。
【0045】
前記凝縮導管を改善するために、液状モノマー、例えば液状トリオキサンを用いて冷却を行うことができる。この液状モノマーは、例えば(既に凝縮された)残留モノマーであるか又は初めて供給された、つまり新しいモノマーであるか、又は残留モノマーと新しいモノマーとの混合物であることができる。
【0046】
液状モノマーを用いた冷却の際に、液状トリオキサンは、いわゆる急冷トリオキサンとして凝縮装置中へ、例えば前記管内へ導入される。凝縮装置壁部に、液状の急冷トリオキサンからなる液膜が形成され、前記液膜にて凝縮すべきガス状の残留モノマー(トリオキサン、ホルムアルデヒドなど)が凝縮されることが想定される。前記急冷トリオキサンは、ガス状の残留モノマーに対して並流又は向流で案内することができ、有利に並流で案内される。前記凝縮装置の流出口では、つまり例えば管の下端では、急冷トリオキサンと、取り出された凝縮された残留モノマーとからなる混合物が得られる。
【0047】
凝縮装置として同様に、管状凝縮器又は液膜凝縮器の他に、スクラバー塔も有利であり、これはスプレー凝縮器とも言われる。後者のスクラバー塔中では、液滴又は噴霧物が作成され、かつ凝縮は塔の接触面の他に液滴でも行われる。前記急冷トリオキサンは、液膜凝縮器もしくはスクラバー塔中で向流又は並流で案内することができる。
【0048】
前記急冷トリオキサンに対しても、前記の圧力及び温度条件が通用すると解釈される。特に、急冷トリオキサンは、102℃の最低温度を有する。
【0049】
従って、この方法の有利な実施態様の場合に、工程c)において前記蒸気は液状残留モノマーとの接触により、又は残留モノマーと新しいモノマーとからなる液体混合物との接触により凝縮される。
【0050】
急冷トリオキサンを用いた冷却は、開放型又は閉鎖型の運転方法で行うことができる。開放型の運転方法の場合に、凝縮された残留モノマーと添加された急冷トリオキサンとからなる混合物は前記凝縮装置から完全に取り出され、かつ場合により他の方法段階、例えば精製に供給される(下記参照)。
【0051】
有利な閉鎖型の運転方法の場合には、凝縮装置から取り出された混合物の一部を分岐させ、例えば熱交換器を用いて必要な温度に冷却し、急冷トリオキサンとして凝縮装置内へ循環して供給し、その際、必要な場合に新しいトリオキサンを供給することができる。例えば、管の下端で取り出された、急冷トリオキサンと凝縮されたトリオキサンとからなる混合物の一部を冷却し、再び管の上端に供給することもできる。
【0052】
意外にも、本発明による前記凝縮の実施態様の場合に、残留モノマーのホルムアルデヒド及び他の低沸点化合物は、簡単に液体として分離され、ガスとして分離されないことが見出された。このことは予期できなかった、それというのもDE-A 32 31 797第6頁23〜24行及び第7頁6〜13行にはホルムアルデヒドがガス状でだけ取り出すことができることが教示されているためである。本発明による条件下で、ホルムアルデヒドもしくは他の低沸点物はトリオキサン液膜にて凝縮もしくは液状トリオキサン中に溶解されることが予想される。
【0053】
本発明による方法の場合に、凝縮工程c)において、凝縮装置中で分離された残留モノマーの重合を防止するために、有利にかつ前記の文献とは反対に防止剤を必要としない。有利に、前記凝縮の前又はその間に水も他の防止剤も添加する必要はない。特に有利に、工程a)及びb)の脱ガス及び蒸気導出においても、防止剤は添加されない。このことに、粗製−POMの製造において防止剤を併用してもよいことは矛盾していない。同様に、この有利な実施態様の場合に、大規模工業的なPOM法において使用されるトリオキサン中に通常のような15質量ppmまでのトリオキサンの極めてわずかな含水量は排除されるべきではなく、この種のわずかな含水量は一般に阻害する作用を示さない。
【0054】
従って、この方法は、有利に、工程b)の後に又は工程c)において、残留モノマーの重合を抑制する防止剤を添加しないことを特徴とする。このことは、前記方法を著しく簡素化しかつ低コスト化する、それというのも防止剤を費用をかけて除去する必要はないか、もしくは付加的な開始剤量により過補償する必要もないためである。
【0055】
例えば防止剤としての水がないにもかかわらずホルムアルデヒドも前記のように凝縮することができることはより意外である。DE-A 32 31 797による方法の場合に、急冷トリオキサンは防止剤として水を含有し、かつ当業者は例えば、Walker, Formaldehyde, Am. Chem. Soc. Monograph Series No. 159, 3rd ed., Reinhold New York 1964から、ホルムアルデヒドが水に極めて良好に溶解することは周知である。従って、ホルムアルデヒドが水の不在でも、本発明による方法の場合のように液相として分離されることは予想できなかった。
【0056】
上述のように、トリオキサンは、他の前記の残留モノマー、例えばホルムアルデヒドなどに代わって用いられる。有利に、前記残留モノマーは、トリオキサン、ホルムアルデヒド、テトラオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキセパン、エチレンオキシド及びホルムアルデヒドのオリゴマーから選択される。
【0057】
工程c)での凝縮の本発明の実施態様は、前記残留モノマーの不所望な重合を確実に抑制する。脱ガス装置中で重合防止剤がエントレイメントされ(これは常には避けることはできない)、かつこうして凝縮装置に達した場合であっても、この重合防止剤はそこでは害にならない。恐らく、本発明により構成された凝縮の場合に、場合により凝縮装置中でも生成される重合体は、固体の被膜に代わって形成される凝縮液中に溶解すると考えられる。従って、前記重合の場合に、容易にエントレイメント可能な揮発性の防止剤も使用することができ、かつ難揮発性防止剤の使用に限定されない。
【0058】
工程c)において分離された残留モノマーは通常の方法で取り出され、かつ有利に直接、つまり他の後処理なしでそれ自体さらに使用することができる。しかしながら、必要な場合に、工程c)で得られた凝縮された残留モノマーは精製装置中で精製することができる。これは、自体公知の精製操作もしくは分離操作で行うことができ、例えば蒸留、精留、パーベーパレーション、昇華、晶析、吸着、吸収、化学吸着、熱拡散、高濃度化、濃縮、蒸発、乾燥、凍結乾燥、凍結、凝縮、溶融、電気泳動、イオン交換、クロマトグラフィー、錯化、キレート化等により行うことができる。有利に防止剤、例えば水等を使用しないことにより、精製が必要な場合でも、この精製は著しく簡素化される。
【0059】
本発明の他の主題は、ポリオキシメチレンホモポリマー又はポリオキシメチレンコポリマー(省略して:POM)の製造の間に又はその製造に引き続く残留モノマー分離(以後分離方法)のための前記の方法の使用である。
【0060】
POMの製造の際に、通常ではまずいわゆるモノマー装置中で適当なモノマーを製造する、例えばホルムアルデヒドからなるトリオキサン、及び/又は適当なモノマーを貯蔵する。その後、前記モノマーをモノマー装置から重合反応器に移し、そこで、さらに上記したように重合させてPOMにする。記載された粗製−POMが得られ、この粗製−POMから反応されない残留モノマーを本発明による分離方法を用いて分離する。同様に、POMにする重合の間に既に、残留モノマーを本発明による分離方法により分離することができるか、又はこの本発明による残留モノマー分離を前記重合の間にも重合の後にも実施することができる。
【0061】
さらなる本発明の主題は、従ってまずモノマー装置中で適当なモノマーを製造するか又は貯蔵し、次いで前記モノマーを重合反応器中で前記ポリマーに重合させ、前記重合の間又は前記重合の後に前記ポリマー中に含まれる残留モノマーを上記の分離方法により除去することを特徴とするポリオキシメチレンホモポリマー又はポリオキシメチレンコポリマーの製造方法(以後「POM法」)である。もちろん、前記残留モノマーは、前記重合の間及び前記重合の後でも除去することができる。
【0062】
本発明によるPOM法は、1つの方法工程として本発明による分離方法を有する。
【0063】
通常では、得られた粗製−POMに、押出機中で又は他の適当な混合装置中で、通常の添加物及び加工助剤(添加剤)が、この材料に対して通常の量で添加される。このような添加剤は、例えば滑剤又は離型剤、着色剤、例えば顔料又は染料、難燃剤、酸化防止剤、光の作用に対する安定剤、繊維状及び粉末状の充填剤又は強化剤、又は帯電防止剤、並びに他の添加剤、又はこれらの混合物である。
【0064】
有利な実施態様i)の場合に、前記残留モノマーは、粗製−POMの製造後に既に、つまり押出機での添加剤の添加の前に、本発明による分離方法を用いて、例えば、前記重合反応器から出た粗製−POMを脱ガスポット(フラッシュポット)中に送り、そこで前記残留モノマーを本発明により分離することにより、残留モノマーが除去される。
【0065】
他の有利な実施態様ii)の場合に、前記粗製−POMを、押出機もしくはその他の混合装置での添加剤の添加の際に初めて本発明による分離方法を用いて残留モノマーが除去される。この場合、添加剤の添加のための混合装置は、前記分離方法の工程a)で使用される脱ガス装置と同じであることができる。例えば、同じ押出機で、添加剤を混合し並びに前記分離方法の工程a)を実施する、つまり残留モノマーを上記としてガス状で取り出すことができる。
【0066】
特に、前記粗製−POMは前記重合反応器からまず脱ガスポット中に送られ、かつそこで前記残留モノマーを本発明により分離し、及び/又はその後で前記POMに押出機中で添加剤を混合し、かつ同時に本発明により前記残留モノマーを分離することができる。前記の実施態様i)とii)とを組み合わせてもよい。
【0067】
前記分離方法により除去された残留モノマーは、場合により記載された、しかしながら有利には必要でない精製後に、新たにPOM製造の際に使用物質として使用することができ、つまり本発明によるPOM法に返送する(循環させる)ことができる。この場合、前記返送の目標点は、製造装置に合わせることができる。例えば、前記残留モノマーは重合反応器に直接返送されるか又はこの供給路に返送されるか、又はモノマー装置に返送される。
【0068】
従って、前記POM法は、有利に除去された残留モノマーが重合反応器中に又はモノマー装置中に返送されることを特徴とする。もちろんこの両方の方法を組み合わせることもできる。
【0069】
本発明の主題は、最後に、前記のPOM法により得られたポリオキシメチレンホモポリマー又はポリオキシメチレンコポリマーでもある。
【0070】
本発明による分離方法は、トリオキサン、ホルムアルデヒド及びその他の残留モノマーをポリオキシメチレンから除去し、かつ凝縮の際に、凝縮された残留モノマーの不所望な重合を重合防止剤の添加なしで回避する。さらに、ホルムアルデヒドの分離は簡素化され、このホルムアルデヒドはトリオキサンと同様に液相として凝縮させることができる。従って、本発明による分離方法は装置的に簡単でかつ低コストで運転することができる。
【0071】
実施例:
次の比較例1はDE-A 32 31 797からの実施例2に相当する。
【0072】
比較例1(先行技術)
約34%の反応されないモノマーの含有量を有する粉末状の失活されたPOM共重合体を、固体スクリューコンベア中で約1.01barで130℃で連続的に脱ガスした。この粗製ポリマー粉末の固体スクリュー中での滞留時間は約15分であった。この脱ガスの後で、粗製ポリマーの揮発成分の含有量はなお約2.5%であり、この含有量は引き続く仕上げ工程で必要な規格値にまでさらに低下させた。脱ガス区域から取り出された蒸気は、約82%のトリオキサン、テトラオキサン及びホルムアルデヒドの他の環状のオリゴマー、アセタール及び約8%のホルムアルデヒドからなる。この蒸気導管は135℃に維持された。タービン圧縮機中で、前記蒸気を約2barに圧縮し、凝縮区域に送った。前記圧縮機及び蒸気導管は凝縮区域まで150℃に温度調節されていた。
【0073】
前記凝縮区域は充填塔として構成されていた。充填塔中に135℃の温度で導入される蒸気に、防止剤として水2000ppmを添加した急冷トリオキサンを、約20:1の質量比で向流で流した。前記急冷トリオキサンは塔頂に約75℃で供給され、かつ前記蒸気から析出したトリオキサン分と一緒に約95℃で前記塔から出た。使用された蒸気量に対して約3%の高さにある凝縮されないもしくは溶解されない割合は、前記充填塔の塔頂から出て、通常のウオータースクラバーによって回収された。
【0074】
凝縮された蒸気量に応じた量のトリオキサンは、急冷循環路から更なる処理のために分岐された。このトリオキサンは、99.8%の重合可能成分の含有量を有し、後処理において蒸留、又は抽出によって重合品質にまで精製された。
【0075】
前記の循環トリオキサンは冷却器中で約75℃の塔頂供給温度にまで冷却した。被膜形成は生じなかった。
【0076】
前記急冷トリオキサンの2000ppmの前記の含水量は、99.8%:100%−99.8%=0.2%≒2000ppmのトリオキサンの含有量から生じた。
【0077】
前記比較例は、防止剤として水を併用することが、凝縮の際の重合を抑制するが、このトリオキサンを重合に再び使用する前に、分離されたトリオキサンから水を費用をかけて蒸留及び抽出によって除去しなければならないことを示した。
【0078】
比較例2:防止剤の省略
例1に記載された方法と同様に行うが、防止剤として水を含有していないトリオキサンを急冷トリオキサンとして使用した(最大15ppmの避けられない痕跡量の水は度外視、この水は防止作用しない)。数分後に、凝縮区域中で被膜が形成された。全体で30分後に凝縮区域は閉塞され、前記装置は停止しなければならなかった。
【0079】
この実施例は、DE-A 32 31 797から公知の方法が防止剤なしでは実施できないことを示した。
【0080】
以後の実施例は本発明による。
【0081】
実施例3:
例2に記載されたのと同様の方法を、つまり防止剤なしの急冷トリオキサンを使用して実施するが、例2とは次のことが異なっていた。
【0082】
蒸気を脱ガス区域から蒸気導管(圧縮機なしで)を介して凝縮装置に直接供給した。脱ガス区域、蒸気導管並びに凝縮装置中の圧力は、約4barであった。
【0083】
前記凝縮装置は、充填塔ではなく、長さ200cm及び内径10cmの垂直に立てられた管として構成された管状凝縮器であり、この凝縮器は構造物を有しておらずかつ加熱ジャケットを備えていた。凝縮すべき蒸気は、上端から前記の管内へ導入され、同様に前記急冷トリオキサンも導入され、その際、急冷トリオキサン:蒸気の質量比(いわゆる急冷比)は約100:1であった。
【0084】
前記管は105℃に加熱され、急冷トリオキサンの温度は同様に105℃であった。
【0085】
管の下端で、急冷トリオキサンと、トリオキサン、ホルムアルデヒド及び全ての易揮発性成分を含有する凝縮した蒸気とからなる混合物が取り出された。この混合物の温度は105℃であった。管の上端ではガス状で取り出される物質はなかった。
【0086】
凝縮した蒸気量に相当する取り出された混合物の分は、さらに精製せずに、モノマーとしてさらに使用するためにPOM製造に分岐させ、残りの分を急冷トリオキサンとして、凝縮装置に返送した(急冷循環)。
【0087】
この装置は、24時間の運転後でも被膜形成は示されなかった。
【0088】
実施例4:
例3と同様の方法を行うが、次のことが異なっていた:急冷トリオキサン:蒸気の質量比(いわゆる急冷比)は約20:1であった。管の下端で取り出される混合物の温度は115℃であった。
【0089】
凝縮した蒸気量に相当する取り出された混合物の分は、さらに精製せずに、モノマーとしてさらに使用するためにPOM製造に分岐させ、残りの分を105℃に冷却しかつ急冷トリオキサンとして、凝縮装置に返送した(急冷循環)。
【0090】
この条件でも、装置内に24時間後に被膜は形成されなかった。
【0091】
実施例5:
約34%の反応されないモノマーの含有量を有する粉末状の失活されていないPOM共重合体を、例1と同様に連続的に脱ガスした。脱ガス後に、粗製ポリマーの揮発成分の含有量はなお約3%であった。脱ガス区域から取り出された蒸気は、約80%のトリオキサン、テトラオキサン及びホルムアルデヒドの他の環状のオリゴマー、アセタール及び約10%のホルムアルデヒドを有していた。この蒸気導管は150℃に維持された。タービン圧縮機中で、前記蒸気を約9barに圧縮し、凝縮区域に送った。前記圧縮機及び蒸気導管は凝縮装置まで150℃に温度調節されていた。
【0092】
前記凝縮装置は、管状凝縮器として構成されていた。凝縮すべき蒸気を、上端で前記凝縮器に導入し、同様に防止剤なしの急冷トリオキサンを導入した。蒸気温度は200℃であり、急冷トリオキサンの温度は130℃であった。急冷比は約100:1であった。前記凝縮器から、急冷トリオキサンと凝縮された蒸気とからなる混合物を取り出し、その際、前記混合物の温度は133℃であった。管の上端ではガス状で取り出される物質はなかった。
【0093】
凝縮した蒸気量に相当する取り出された混合物の分は、さらに精製せずに、モノマーとしてさらに使用するためにPOM製造に加圧下で133℃で分岐させ、残りの分を130℃に冷却しかつ急冷トリオキサンとして、凝縮装置に返送した(急冷循環)。
【0094】
24時間の運転後でも、被膜形成又は閉塞は観察されなかった。
【0095】
実施例6:
約38%の反応されないモノマーの含有量を有するPOM粗製ポリマー溶融物を、Coperion社の二軸スクリュー押出機ZSK28中で240℃で0.2barで、約0.3%の揮発成分の残留含有量にまで脱ガスした。約84%のトリオキサン、ホルムアルデヒドの他のオリゴマー、アセタール及び約6%のホルムアルデヒド並びにエントレイメントした組成ポリマー溶融液滴を有する蒸気を、180℃に温度調節した蒸気導管を介してタービン圧縮機に供給し、そこで前記蒸気を15barに圧縮した。前記タービン圧縮機及び凝縮装置までの引き続く蒸気導管は200℃に温度調節されていた。
【0096】
前記凝縮装置は管状反応器として構成されていた。前記の凝縮すべき蒸気を、凝縮器の上端に導入し、同様に防止剤なしの急冷トリオキサンを導入した。この蒸気温度は185℃で、急冷トリオキサンの温度は125℃であった。この急冷比は約100:1であった。凝縮器から、急冷トリオキサンと凝縮された蒸気とからなる混合物を取り出し、その際、この混合物の温度は128℃であった。管の上端ではガス状で取り出される物質はなかった。
【0097】
凝縮した蒸気量に相当する取り出された混合物の分は、さらに精製せずに、モノマーとしてさらに使用するためにPOM製造に加圧下で128℃で分岐させ、残りの分を125℃に冷却しかつ急冷トリオキサンとして、凝縮装置に返送した(急冷循環)。
【0098】
24時間の運転後でも、被膜形成又は閉塞は生じなかった。
【0099】
POM製造の場合に、トリオキサン95.5質量%と1,3−ジオキセパン4.5質量%とから、防止剤としてトリフルオロメタンスルホン酸0.2質量ppmと共にポリオキシメチレンを製造し、その際、転化率は73%であった。前記ポリマーを、押出機ZSK30で220℃でかつ50mbarで前記したように脱ガスし、安定剤としてCiba社のIrganox(R) 245(エチレン−ビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオナート]、CAS 036443-68-2)を添加した。
【0100】
DIN EN ISO 1133により溶融温度190℃定格荷重2.16kgで測定された前記ポリマーの溶融インデックスMFIは、2.8g/10minであった。
【0101】
窒素中で220℃で2時間の貯蔵後の前記ポリマーの熱安定性は、99.78%であった。
【0102】
実施例7:
約38%の反応されないモノマーの含有量を有するPOM粗製ポリマー溶融物を脱ガスポット(フラッシュポット)中で放圧させた。脱ガスポット中の温度は170〜180℃、圧力は約4barである。約84%のトリオキサン、ホルムアルデヒドの他のオリゴマー、アセタール及び約6%のホルムアルデヒドを含有する蒸気を、180℃に温度調節された蒸気管を介して凝縮装置に供給した。
【0103】
前記凝縮装置は、液膜凝縮器として構成されていた。約175℃の温度で凝縮器中に導入された蒸気は、凝縮器の表面を流下する急冷トリオキサンからなる液膜上で凝縮された。前記急冷トリオキサンは、約135℃を有する凝縮器の頂部に供給された。急冷比は100:1であった。前記凝縮器から、急冷トリオキサンと凝縮された蒸気とからなる混合物を取り出し、その際、前記混合物の温度は137℃であった。ガス状で取り出される物質はなかった。
【0104】
凝縮した蒸気量に相当する取り出された混合物の分は、さらに精製せずに、モノマーとしてさらに使用するためにPOM製造に加圧下で137℃で分岐させ、残りの分を135℃に冷却しかつ急冷トリオキサンとして、凝縮装置に返送した(急冷循環)。
【0105】
24時間の運転後でも、被膜形成又は閉塞は生じなかった。
【0106】
POM製造の場合に、トリオキサン95.5質量%と1,3−ジオキセパン4.5質量%とから、防止剤としてトリフルオロメタンスルホン酸0.2質量ppmと共にポリオキシメチレンを製造し、その際、転化率は73%であった。前記ポリマーを押出機ZSK30で、220℃で70mbarで前記のように脱ガスし、安定剤としてCiba社のIrganox(R) 245 (CAS 036443-68-2)を添加した。
【0107】
DIN EN ISO 1133により溶融温度190℃定格荷重2.16kgで測定された前記ポリマーの溶融インデックスMFIは、4.9g/10minであった。
【0108】
窒素中で220℃で2時間の貯蔵での前記ポリマーの熱安定性は、98.24%であった。
【0109】
本発明による実施例3〜7は、本発明による分離方法を用いて残留モノマーは問題なく分離できることを示す。特に、防止剤を併用しなかったにもかかわらず、凝縮装置には24時間後でも被膜又は閉塞は生じなかった。ホルムアルデヒドも、簡単に分離することができた。
【0110】
更に、実施例6及び7は、同様に、POM製造(POM法)のための本発明による方法を示し、このPOM法の構成要素が前記の分離方法である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシメチレンホモポリマー又はポリオキシメチレンコポリマーから、次の方法工程:
a) 脱ガス装置中で、前記ポリマーから残留モノマーを蒸気として70〜300℃の温度及び0.005〜50barの圧力でガス状で取り出す工程、
b) 蒸気導管を介して、前記残留モノマー蒸気を導出し、その際、前記蒸気温度はその沸点を上回るように保持する工程、
c) 凝縮装置中で、前記ガス状の残留モノマーを蒸気から凝縮させる工程
で反応されない残留モノマーを除去する方法において、
工程c)において凝縮装置を1.09〜102.4barの圧力及び102〜230℃の温度で運転し、その際、102℃の最低温度は前記凝縮装置のいかなる点でも下回らず、かつ
前記蒸気と接触する前記凝縮装置のそれぞれの面は、凝縮された残留モノマーを含有する液膜で覆われていることを特徴とする、反応されない残留モノマーを除去する方法。
【請求項2】
凝縮装置として、管状凝縮器、液膜凝縮器又はスクラバー塔を使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程c)において蒸気を液状残留モノマーとの接触により、又は残留モノマーと新しいモノマーとからなる液状混合物との接触により凝縮させることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
工程b)の後に又は工程c)において、残留モノマーの重合を抑制する防止剤を添加しないことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
残留モノマーは、トリオキサン、ホルムアルデヒド、テトラオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキセパン、エチレンオキシド及びホルムアルデヒドのオリゴマーから選択されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ポリオキシメチレンホモポリマー又はポリオキシメチレンコポリマーの製造の間での又は前記製造に引き続く、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法の使用。
【請求項7】
ポリオキシメチレンホモポリマー又はポリオキシメチレンコポリマーの製造方法において、まずモノマー装置中で適当なモノマーを製造するか又は貯蔵し、次いで前記モノマーを重合反応器中で前記ポリマーに重合させ、前記重合の間又は前記重合の後に前記ポリマー中に含まれる残留モノマーを、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法により除去することを特徴とする、ポリオキシメチレンホモポリマー又はポリオキシメチレンコポリマーの製造方法。
【請求項8】
除去された残留モノマーを重合反応器中に又はモノマー装置中に返送することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項7又は8記載の方法により得られた、ポリオキシメチレンホモポリマー又はポリオキシメチレンコポリマー。

【公表番号】特表2007−538122(P2007−538122A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517070(P2007−517070)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005335
【国際公開番号】WO2005/113623
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】