説明

ポリオレフィン発泡体熱圧成形品の製造方法

【課題】バリの発生が無く、外観のきれいな成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る発泡体熱圧成形品の製造方法は、ポリオレフィン樹脂に発泡剤、架橋剤を添加混練し、得られた架橋性発泡性組成物を密閉金型Aに充填し、加圧下に加熱、整形して取り出し、次いで密閉金型Bに入れ加圧下に加熱して発泡剤、架橋剤を分解した後冷却して成形品よりも小さい発泡体を得、得られた発泡体を金型Cに入れ加圧下に加熱して成形することを特徴とする製造方法。発泡体熱圧成形品の製造方法


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体の熱圧成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から知られた発泡体の熱圧成形品は、加熱した金型の中に発泡体を入れて加圧加熱し、金型内部形状と同じ形に成形している(特開2007−245601号公報)。
【0003】
また、金型内で発泡粒子を発泡させて成形品を得る方法(特開平8−92407号公報)、(特開2003−226775号公報)が知られている。
【特許文献1】特開2007−245601号公報
【特許文献2】特開平8−92407号公報
【特許文献2】特開2003−226775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、
【特許文献1】は金型よりサイズの大きい発泡体を金型に入れて加圧しているため、金型の合わせ面にバリの発生や熱の回り具合によっては色むらが起こっていた。
【0005】
【特許文献2】、
【特許文献3】は、発泡粒子を金型に入れて発泡させるため、バリの発生は無いが発泡した粒子同士が融着したラインが成形品にでき、外観のきれいな成形品が得られなかった。
【0006】
本発明者らは、従来の成形品の製造方法の欠点を解消し、バリの発生が無く、外観のきれいな成形品の製造方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ポリオレフィン樹脂に発泡剤、架橋剤を添加混練し、得られた架橋性発泡性組成物を密閉金型Aに充填し、加圧下に加熱、整形して取り出し、次いで密閉金型Bに入れ加圧下に加熱して発泡剤、架橋剤を分解した後冷却して成形品よりも小さい発泡体を得、得られた発泡体を金型Cに入れ加圧下に加熱して成形する発泡体熱圧成形品の製造方法である。
本発明において、金型Aの体積が金型Bの体積の1〜5%小さいことが好ましく、且つ、金型Cの寸法が金型Bの寸法縦横厚みの各1.5〜2.5倍であるこが好ましい。金型Aの体積が金型Bの体積の5%より大きい場合は、金型Bの中で仕込み不足が生じ、1%未満の小さい場合は、金型Bでバリ漏れが生じる。金型Cの寸法が金型Bの寸法の1.5倍未満の場合、成形品にバリが発生し、2.5場合を超える場合は、硬さや強度に劣る成形品しか得られない。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によれば、金型より大きい発泡体を金型に入れて成形しないため、金型の合わせ面にバリが発生することが無い。
【0009】
しかも、発泡粒子を金型に入れて発泡させないため、外観のきれいな成形品を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において使用できる樹脂は熱可塑性樹脂、例えば、低、中、高、直鎖状ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、エラストマー等、また、エチレンプロピレンジエン共重合体ゴム(EPDM)等のゴムを挙げることができる。
【0011】
本発明でいう発泡剤とは、使用する樹脂の溶融温度以上の分解温度を有する化学発泡剤であり、例えばアゾ系化合物のアゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等;ニトロソ系化合物のジニトロソペンタメチレンテトラミン、トリニトロトリメチルトリアミン等;ヒドラジッド系化合物のp,p‘−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッド等;スルホニルセミカルバジッド系化合物のp,p‘−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジッド、トルエンスルホニルセミカルバジッド等がある。
【0012】
本発明でいう架橋剤とは、使用する樹脂中において少なくとも樹脂の流動開始温度以上の分解温度を有するものであって、加熱により分解され、遊離ラジカルを発生してその分子間もしくは分子内に架橋結合を生じせしめるラジカル発生剤であるところの有機過酸化物、例えばジクミルパーオキサイド、1,1−ジターシャリーブチルパーオキサイド、1,1−ジターシャリーブチルパーオキシー3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキシン、α、α―ジターシャリーブチルパーオキシイソプロピルベンゼン、ターシャリーブチルパーオキシケトン、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエートなどがあるが、その時に使用される樹脂によって最適な有機過酸化物を選択しなければならない。
【0013】
本発明において、発泡助剤を発泡剤の種類に応じて添加することができる。発泡助剤としては尿素を主成分とした化合物、酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物、サリチル酸、ステアリン酸等を主成分とする化合物、即ち高級脂肪酸あるいは高級脂肪酸の金属化合物などがある。
【0014】
本発明においては、使用する組成物の物性の改良或いは価格の低下を目的として、架橋結合に著しい悪影響を与えない配合剤(充填剤)、例えば酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩、あるいはパルプ等の繊維物質、又は各種染料、顔料並びに蛍光物質、その他常用のゴム配合剤等を必要に応じて添加することができる。
【0015】
本発明において使用する金型の材質は、鉄、アルミ等の金属を用いることができる。ただし、金型Bはかなり高いプレス圧がかかるため、鉄製の金型を用いる方がよい。
【0016】
次に、本発明の熱圧成形品の製造方法について説明する。
【0017】
本発明の発泡体熱圧成形品の製造方法は、用いた発泡剤や有機過酸化物などによる発泡温度や架橋開始温度などにより、従来公知の方法及び適宜の条件で発泡及び成形を行うことができる。特に好ましい方法及び条件を下記に記述する。
【0018】
樹脂成分100重量部に周知の発泡剤、発泡助剤及び有機過酸化物を添加し、これをミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機等によって練和する。次いで、得られた発泡性樹脂組成物をプレス中の金型Aに入れ、一定時間20kg/cm以上の圧力にて90〜110℃で加熱する。次いで、該組成物を金型Bに入れ、一定時間130kg/cm以上の圧力にて140〜170℃で加熱して発泡剤、架橋剤を分解した後、冷却して発泡体を取り出す。取り出した発泡体を金型Cに入れ、一定時間20kg/cm以上の圧力にて110〜120℃で加熱すると、発泡体は金型C内部いっぱいに膨らみ充填する。充填後冷却して成形品を取り出す。
【実施例1】
【0019】
直鎖状低密度ポリエチレン(商品名:アフィニティーEG8200、密度0.870g/cm、メルトインデックス5.0g/10min、ダウ・ケミカル日本製)100重量部、アゾジカルボンアミド4.5重量部、ジクミルパーオキサイド0.8重量部、炭酸カルシウム30重量部からなる組成物を金型Aに入れ40kg/cm、100℃で10分間加圧加熱した後取り出した。取り出したコンパウンドを金型Bに入れ、150kg/cm、160℃で60分間加圧加熱した後、冷却し発泡体を得た。
次いで、発泡体を金型Cに入れ、40kg/cm、120℃で20分加圧加熱した後冷却して熱圧成形品を得た。
【0020】
金型Aは金型Bの体積より2%小さく、金型Cは金型Bの寸法縦横厚みの2倍のものを使用した。
【0021】
得られた熱圧成型品は、バリのカットが必要ない外観のきれいな成型品であった。
比較例1
【0022】
実施例1と同様の配合で、金型Aに入れる工程を省略し、金型B,Cの工程のみを行い熱圧成型品を得た。
【0023】
得られた熱圧成型品は、金型の合わせ面に亀裂が生じた成形品であった。
比較例2
【0024】
実施例1と同様の配合で、金型A,Bの行程を行い、冷却せずに取り出して金型Cに入れるようとしたが、製品が急激に発泡するため割れてしまい、金型Cに仕込めなかった。
比較例3
【0025】
金型Aの体積が金型Bの体積より0.5%小さいこと以外は、実施例1と同様の行程を行い熱圧成形品を得た。
【0026】
得られた熱圧成形品は、金型の合わせ面にバリが発生した成形品であった。
比較例4
【0027】
金型Aの体積が金型Bの体積より6%小さいこと以外は、実施例1と同様の行程を行ったが、金型Cに充填せず、きれいな熱圧成形品が得られなかった。
比較例5
【0028】
金型Cの寸法が金型Bの寸法縦横厚みの1.3倍であること以外は、実施例1と同様の行程を行い熱圧成形品を得た。
【0029】
得られた熱圧成形品は、金型の合わせ面にバリが発生した成形品であった。
比較例6
【0030】
金型Cの寸法が金型Bの寸法縦横厚みの2.8倍であること以外は、実施例1と同様の行程を行ったが、硬さや強度に劣った熱圧成形品しか得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように、本発明の方法によれば、バリの発生が無く、外観のきれいな熱圧成形品を得ることが出来る。本発明の方法によって製造された熱圧成形品は、雑貨、福祉関係をはじめ、柔軟性及び弾力性を求められる成形品の用途に適用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂に発泡剤、架橋剤を添加混練し、得られた架橋性発泡性組成物を密閉金型Aに充填し、加圧下に加熱、整形して取り出し、次いで密閉金型Bに入れ加圧下に加熱して発泡剤、架橋剤を分解した後冷却して成形品よりも小さい発泡体を得、得られた発泡体を金型Cに入れ加圧下に加熱して成形する発泡体熱圧成形品の製造方法。
【請求項2】
金型Aの体積が金型Bの体積の1〜5%小さく、且つ、金型Cの寸法が金型Bの寸法縦横厚みの各1.5〜2.5倍である請求項1記載のポリオレフィン発泡体熱圧成形品の製造方法。


【公開番号】特開2009−255366(P2009−255366A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106431(P2008−106431)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000177380)三和化工株式会社 (21)
【Fターム(参考)】