説明

ポリオレフィン系微多孔膜及びその製造方法

【課題】剛性、透過性、品質安定性及び熱安定性が非常に優れた分離膜を提供する。
【解決手段】湿式工程により製造される、溶融温度125℃以上のポリエチレンからなる層と、乾式工程により製造される、溶融温度160℃以上のポリプロピレン20〜70wt%と耐熱フィラー80〜30wt%とからなる層との組み合わせで構成される2乃至3層の微多孔膜。ポリエチレンからなる層の気孔は、延伸/抽出過程を通じて作られるマイクロ気孔であって、平均の大きさは、0.1μm以下であり、ポリプロピレンと耐熱フィラーとからなる層の気孔は、ポリプロピレンと耐熱フィラーの界面拡開により形成されるマクロ気孔であって、平均の大きさは、1μm以上50μm以下であり、膜厚が9〜30μm、穿孔強度が0.15N/μm以上、透過度が1.5×10−5Darcy以上で、溶融破断温度が170℃以上であるポリオレフィン系多層微多孔膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、品質安定性と耐熱性に優れるポリオレフィン系多層微多孔膜に関する。より具体的には、ポリエチレンに起因する低い閉温度特性(low shutdown temperature)と、ポリプロピレンと耐熱フィラーに起因する高い溶融破断温度(melt fracture temperature)特性を同時に有するだけではなく、湿式方式により製造された分離膜の特徴である均一な微多孔及び高剛性/安定性という特性と、乾式により製造された大きい気孔による高透過/高強度という特性を同時に有し、高容量/高出力二次電池に使用時、優れた効果を奏するポリオレフィン系多層微多孔膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系微多孔膜(microporous film)は、その化学的安定性と優れた物性により、各種電池用隔離膜(battery separator)、分離用フィルタ及び微細濾過用分離膜(membrane)などに広く利用されている。
【0003】
ポリオレフィンから微多孔膜を製造する方法の中、ポリオレフィンを高温で希釈剤(diluent)と混練して単一相を作り、冷却過程でポリオレフィンと希釈剤とを相分離した後、希釈剤部分を抽出してポリオレフィンに孔隙を作る湿式法がある。湿式法は、薄膜のフィルムが製造できて、強度と透過度に優れており、気孔が均一で品質安定性にも優れているため、高容量/高出力リチウムイオン二次電池などに広く使われている。
【0004】
湿式法による一般的な多孔性フィルムの製造方法は、米国特許第4,247,498号に紹介されているが、この特許には、ポリエチレンと、これに合う希釈剤を使用し、これらの混合物を高温で混合して熱力学的単一相溶液を作った後、これを冷却させ、冷却過程でポリエチレンと希釈剤とを相分離させ、これを利用してポリオレフィン多孔膜を製造する技術が記載されている。
【0005】
リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が非常に高い優れた電池であるが、短絡の発生時、爆発の危険性が存在して、使用される分離膜は、高い品質水準に対する要求と共に、品質安定性も大きく要求されている。最近は、ハイブリッド自動車用電池などのように、リチウムイオン二次電池の高容量、高出力趨勢に合わせて、既存の湿式製品の品質安定性に加え、分離膜の熱的安定性がより一層要求されている。分離膜の熱安定性が劣ると、電池過熱による隔離膜溶融破断による爆発の危険性が大きくなるからである。
【0006】
電池内において隔離膜の熱的安定性は、閉温度と溶融破断温度により決定付けられる。閉温度は、電池の内部温度が非理想的に増加する時、隔離膜の微多孔が閉じ、それ以上電流が流れなくなる温度である。溶融破断温度は、閉温度以上に電池の温度が上がり続ける時、隔離膜が溶融破断され、電流が再び流れるようになる温度である。電池の安定性のためには、閉温度は低く、溶融破断温度は高いことが好ましい。特に、溶融破断温度は、電池の爆発を誘発する可能性がある状況で、電流を遮断し続けられる温度であって、電池の安定性に最も密接な関係を有している。
【0007】
分離膜の熱安定性を向上させるための努力は、大きく三つの方向に展開されてきた。無機物あるいは耐熱性のある樹脂を既存のポリエチレンに添加し、分離膜の耐熱性を高める方法と、耐熱性のある物質を表面にコーティングする方法、そして耐熱性のある層が存在する多層分離膜を形成する方法である。
【0008】
米国特許第6,949,315号には、超高分子量ポリエチレンに5〜15重量%のチタニウムオキシドなどの無機物を混練して、分離膜の熱安定性を向上させたフィルムが紹介されている。しかしながら、この方法は、無機物の添加による熱安定性の向上効果はあるが、無機物の投入による混練性の低下、混練性の低下による、延伸時のピンホールの発生及び品質不均一などの問題が発生しやすく、無機物と高分子樹脂界面との親和力(Compatibility)の不足により、衝撃強度などのフィルム物性の低下が発生するようになる。このような短所は、無機物を使用する分離膜には、必然的に現れるものである。
【0009】
無機物の代わりに耐熱性に優れた樹脂を混練して製造される分離膜は、米国特許第5,641,565号に示されている。この技術は、ポリエチレンに5〜45重量%のポリプロピレンを混合した樹脂混合物に、30〜75重量%の有機液状化合物と10〜50重量%の無機物を混合した後、有機液状化合物と無機物を抽出して分離膜を製造する技術である。この技術では、たとえ無機物を抽出するとはしても、前記した無機物の混練時の問題点を依然として有しており、前記特許で自ら言及したように、ポリエチレンとの混練性がないポリプロピレンの添加による物性の低下が発生するようになる。なお、この方法は、使用された無機物を抽出、除去するための工程が追加され、工程が複雑になる短所があり、十分な耐熱効果を得るためには、比較的多い量のポリプロピレンを必要とし、この場合、分離膜の物性は、さらに低下するようになる。
【0010】
耐熱性のある物質を微多孔膜の表面にコーティングする方法は、US2006−0055075A1に示されている。しかしながら、コーティング方式は、コーティング層の透過度を高めるに限界があって、全体フィルムの透過度が低下し、コーティング層と微多孔膜フィルム間のウェッティング性の低下により、品質の不均一が発生する可能性が高い。
【0011】
分離膜の熱安定性を増加させるために、多層の分離膜を形成する方法は、ラミネーションを利用することである。米国特許第5,691,077号には、閉特性に優れた(溶融温度が低い)ポリエチレンに、溶融破断温度が高い(溶融温度が高い)ポリプロピレン樹脂をラミネーションし、3層構造の分離膜を形成する方法が示されている。この分離膜は、熱的特性には優れているが、低温乾式法によるフィルム製造過程における延伸不均一、ピンホール発生、厚さ偏差の増加などの短所と共に、別途の工程で進行されるラミネーション工程の追加による生産性の低下だけではなく、ラミネーション不良によるデラミネーション問題もあって、広く使用されていない。この方法は、優れた耐熱性にもかかわらず、二次電池用分離膜で必要とされる剛性、透過性、品質均一性、及び生産性が劣る問題点を有している。
【0012】
日本特開2002−321323と国際公開特許WO2004/089627には、湿式法により製造されるポリエチレン微多孔膜層を主(main)層として、同様に湿式法で製造されるポリエチレンとポリプロピレンが混合された層を表面層とする多層分離膜が紹介されている。これらの分離膜は、湿式工程により製造され、品質安定性には優れているが、ポリプロピレン樹脂の耐熱性以上の耐熱性を有するには限界がある。なお、多層の分離膜を全部湿式法で製造するため、製造工程が難しくなる短所もある。
【0013】
国際公開特許WO2006/038532には、無機粒子を含む多層湿式分離膜が紹介されているが、この分離膜も同様に、多層の分離膜を全部湿式で製造することによる難しい混練工程と、表面層にもフィルム生産過程で必ず抽出しなければならない希釈剤を50%以上含むため、製品の生産において、低い物性向上効果(希釈剤の含まれた軟化状態で延伸を行うため、延伸効果が低下する)を示すようになる。
【0014】
二次電池用分離膜の必須的な特性は、剛性、透過性及び品質均一性であり、最近はこれらに加え熱安定性がさらに大きく要求される。しかしながら、上述の従来技術は、湿式工程の分離膜水準の品質安定性と剛性/透過性及び高い熱安定性を同時に達成することができない。
【特許文献1】米国特許第4,247,498号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者らは、上述の従来技術の問題点を解決するために鋭意研究した結果、ポリプロピレンと、ポリプロピレンより溶融温度が高い耐熱フィラーとの混合物を、希釈剤無しに延伸すると、界面が拡開(interfacial expansion)し界面に気孔が生じて、ポリプロピレンと耐熱フィラーとから構成された多孔膜を製造することができ、この多孔膜を、湿式法で製造される多孔膜と共に、別途の層に使用すると、物性特性と品質安定性に優れた湿式法で製造されるポリエチレン微多孔膜層と、耐熱性に優れたポリプロピレンと耐熱フィラーとの混合多孔膜層の剛性と透過上の特性を同時に有する多層分離膜を製造することができて、なお、この分離膜は、剛性、透過性、品質安定性及び熱安定性が非常に優れていることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するための本発明によるポリオレフィン多層微多孔膜は、
(a)溶融温度125℃以上のポリエチレン20〜50wt%と希釈剤80〜50wt%とからなる組成物を溶融混練する段階と、
(b)溶融温度160℃以上のポリプロピレン20〜70wt%と溶融温度170℃以上の耐熱フィラー(heat-resistant filler)80〜30wt%とからなる組成物を溶融混練する段階と、
(c)前記(a)及び(b)で混練された溶融物を2乃至3層の多層シートに成形する段階と、
(d)前記多層シートを延伸し、フィルムに成形する段階と、
(e)前記フィルムから希釈剤を抽出する段階と、
(f)前記フィルムを熱固定する段階と、
から製造されて、
ポリエチレンからなる層の気孔は、ポリエチレンと希釈剤との相分離後、延伸/抽出過程を通じて作られるマイクロ気孔であって、平均の大きさは、0.1μm以下であり、ポリプロピレンと耐熱フィラーとからなる層の気孔は、ポリプロピレンと耐熱フィラーの界面拡開により形成されるマクロ気孔であって、平均の大きさは、1μm以上50μm以下であり、膜厚が9〜30μm、穿孔強度が0.15N/μm以上、透過度が1.5×10−5Darcy以上で、溶融破断温度が170℃以上であることを特徴とするポリオレフィン系多層微多孔膜である。
【0017】
本発明で使用されるポリオレフィン多層微多孔膜を製造する基本理論は、下記のようである。
【0018】
上述のように、ポリエチレンから微多孔膜を製造する湿式法は、ポリエチレンとこれに合う希釈剤を混合し押出してシートを製造し、これを延伸してフィルムを製造した後、有機溶媒で希釈剤を抽出し、多孔膜を製造する工程を使用する。しかしながら、ポリエチレンで製造された分離膜は、ポリエチレンの溶融温度が135℃を超えないため、耐熱性の限界を有する。一方、ポリプロピレンは、溶融温度が160℃に至るが、結晶性が劣り、湿式法では高透過のフィルムを製造し難いだけではなく、高い溶融温度により、閉温度も高くなって、安全性が低下する(閉温度は、電池の内部温度が非理想的に増加する時、隔離膜の微多孔が閉じ、それ以上電流が流れなくなる温度であって、低いほどよい)。このような問題を克服するために、上述のようにポリエチレンにポリプロピレンあるいは耐熱フィラーを混練して使用すると、耐熱性の向上(溶融破断温度の上昇)効果はあるが、耐熱物質がポリエチレンマトリックス内で粒子状に存在し、互いに連結されないため、溶融破断温度の上昇が大きくなく、ポリエチレンとの界面が弱くて、フィルム全体の物性を落としてしまう。
【0019】
したがって、ポリエチレンと、ポリプロピレンあるいは耐熱フィラーを混練して使用せずに、ポリエチレン層を別途の層にして、ポリプロピレンと耐熱フィラーとの層を別途の層にし、多層分離膜を形成する必要がある。こうすると、ポリプロピレンと耐熱フィラー層において、ポリプロピレンが連続的に連結されており、耐熱フィラーがポリプロピレンマトリックス内で粒子状に存在するようになる。結果的に、このように作られた多孔膜は、ポリエチレンの低い閉温度とポリプロピレンの高い溶融温度に無機物の耐熱性が加えられた高い溶融破断温度を同時に有する分離膜の製造が可能である。
【0020】
ポリプロピレンと耐熱フィラーは、単純混合する場合、透気度がない。ポリプロピレンと耐熱フィラー層に透気度を付与するために、本発明では、湿式ポリエチレンの製造工程の延伸工程を共に利用する。即ち、ポリエチレンと希釈剤との混合物からなるシートと、ポリプロピレンと耐熱フィラーとからなるシートを多層シートにして延伸すると、ポリプロピレンと耐熱フィラーとの混合層では、ポリプロピレンと耐熱フィラー間の界面が拡開し、気孔を形成するようになる。その後、抽出工程でポリエチレン層の希釈剤を抽出すると、湿式工程で製造される、安定性に優れたポリエチレン分離膜の特徴と、ポリプロピレンと耐熱フィラーによる優れた耐熱特性及び電解液含浸性、そして強度及び透過度を同時に有するポリオレフィン多層微多孔膜が形成される。
【0021】
このように製造される分離膜の気孔の特徴は、ポリエチレンからなる層の気孔は、ポリエチレンと希釈剤との相分離後、延伸/抽出過程を通じて作られるマイクロ気孔(図1)であって、平均の大きさは、0.1μm以下であり、ポリプロピレンと耐熱フィラーとからなる層の気孔は、ポリプロピレンと無機物との界面拡開により形成されるマクロ気孔(図2)であって、平均の大きさは、1μm以上50μm以下である。
【0022】
前記ポリオレフィン多層微多孔膜を製造するための製造方法は、
(a)溶融温度125℃以上のポリエチレン20〜50wt%と希釈剤80〜50wt%とからなる組成物を溶融混練する段階と、
(b)溶融温度160℃以上のポリプロピレン20〜70wt%と溶融温度170℃以上の耐熱フィラー80〜30wt%とからなる組成物を溶融混練する段階と、
(c)前記(a)及び(b)で混練された溶融物を2乃至3層の多層シートに成形する段階と、
(d)前記多層シートを延伸し、フィルムに成形する段階と、
(e)前記フィルムから希釈剤を抽出する段階と、
(f)前記フィルムを熱固定する段階で構成される。
【0023】
以下、各段階について詳細に説明する。
(a)溶融温度125℃以上のポリエチレン20〜50wt%と希釈剤80〜50wt%とからなる組成物を溶融混練する段階;
本発明に使用されるポリエチレンは、エチレン単独、あるいはエチレンと炭素数3〜8のαオレフィンコモノマーとの組み合わせから構成される、溶融温度125℃以上の単一ポリンエチレンあるいはポリエチレン混合物である。ポリエチレン混合物は、エチレン単独、あるいはエチレンと炭素数3〜8のαオレフィンコモノマーとの組み合わせから構成されるポリエチレンの混合物であり、最終混合物の溶融温度が125℃以上の混合物である。炭素数3〜8のαオレフィンコモノマーの例は、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1などがある。ポリエチレンの分子量は、重量平均分子量が20万以上300万以下であることが好ましく、重量平均分子量が20万未満の場合は、最終多孔膜の物性が弱くなり、重量平均分子量が300万を超過する場合は、押出混練性が悪くなり、生産性が低下する。重量平均分子量のより好ましい領域は、20万以上150万以下である。
【0024】
本発明で使用される希釈剤としては、押出加工温度で樹脂と単一相をなすあらゆる有機液状化合物(organic liquid)が可能である。その例としては、ノナン(nonane)、デカン(decane)、デカリン(decalin)、パラフィンオイル(paraffin oil)などの脂肪族(aliphatic)あるいは環状炭化水素(cyclic hydrocarbon)と、ジブチルフタレート(dibutyl phthalate)、ジオクチルフタレート(dioctyl phthalate)などのフタル酸エステル(phthalic acid ester)がある。好ましくは、人体に無害で、沸点(boiling point)が高く、揮発性(volatile)成分の少ないパラフィンオイルが適合しており、さらに好ましくは、40℃における動粘度(kinetic viscosity)が20cSt〜200cStのパラフィンオイルが好適である。パラフィンオイルの動粘度が200cStを超過すると、押出工程における動粘度が高くて、負荷上昇、シート及びフィルムの表面不良などの問題が生じ得て、抽出工程では、抽出が難しくなり、生産性が低下して、残留したオイルによる透過度減少などの問題が生じ得る。パラフィンオイルの動粘度が20cSt未満の場合は、押出機内で溶融ポリエチレンとの粘度差により、押出加工時、混練が難しくなる。
【0025】
本発明で使用されるポリエチレンと希釈剤の組成は、ポリエチレンが20〜50重量%であり、希釈剤が80〜50重量%であることが好ましい。前記ポリエチレンの含量が50重量%を超過すると(即ち、希釈剤が50重量%未満であると)、孔隙度が減少して孔隙の大きさが小さくなり、孔隙間の相互連結(interconnection)が少なく、透過度が非常に低下する。その反面、前記ポリエチレンの含量が20重量%未満であると(即ち、希釈剤が80重量%を超過すると)、ポリエチレンと希釈剤の混練性が低下し、ポリエチレンが希釈剤に熱力学的に混練されず、ゲル状に押出されて、延伸時、破断及び厚さの不均一などの問題を引き起こす可能性がある。
【0026】
前記組成物には、必要に応じて、酸化安定剤、UV安定剤、帯電防止剤などの、特定機能の向上のための一般添加剤をさらに添加することができる。
【0027】
前記組成物は、希釈剤とポリエチレンとの混練のためにデザインされた二軸コンパウンダー、混練機、あるいはバンバリーミキサーなどを利用して溶融混練させる。溶融混練温度は、180℃以上300℃以下が好ましい。ポリエチレンと希釈剤は、予めブレンディングしてコンパウンダーに投入してもよく、分離された供給機(feeder)からそれぞれ投入してもよい。
【0028】
(b)溶融温度160℃以上のポリプロピレン20〜70wt%と溶融温度170℃以上の耐熱フィラー80〜30wt%とからなる組成物を溶融混練する段階;
本発明において、ポリプロピレンは、プロピレン単独、あるいはプロピレンとエチレンと及び炭素数4〜8の αオレフィンとの組み合わせから構成される、溶融温度160℃以上の単一あるいは混合ポリプロピレンである。 αオレフィン混合物は、プロピレン単独、あるいはプロピレンとエチレン及び炭素数4〜8のポリオレフィンとの組み合わせから構成される、ポリプロピレンの混合物であり、最終混合物の溶融温度が160℃以上の混合物である。好ましいポリプロピレンの重量平均分子量は、5万以上200万以下である。重量平均分子量が5万未満の場合は、無機物との混練性には優れているが、多孔膜の物性が低下して、200万を超過する場合は、無機物との混練性問題が発生し、好ましくない。
【0029】
本発明で使用される耐熱フィラーは、三つの役割を行う。第1の役割は、ポリプロピレンと混練後、延伸過程で界面に気孔を形成する核の役割である。耐熱フィラーの第2と第3の役割は、多孔膜の耐熱性を高める役割と耐熱フィラー自体の極性に起因する電解液との優れた親和力により電解液の含浸性を向上させる役割である。このような耐熱フィラーとしては、ポリボニリデンフロライド、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリメチレンオキシドなどの極性耐熱樹脂であるか、平均の粒子サイズが0.01μm〜5μmの無機物としてシリコンジオキシド(SiO)、アルミニウムオキシド(Al)、カルシウムカーボネート(CaCO)、チタニウムジオキシド(TiO)、SiS、SiPO、MgO、ZnO、BaTiO、天然または有機的に変形されたクレー、またはこれらの混合物が使用できる。
【0030】
耐熱フィラーの中、極性耐熱樹脂の初期大きさは、溶融混練機でポリプロピレンと溶融混練されるため、あまり関係ないが、無機物の場合は、その粒子の大きさが非常に重要である。好ましい平均の粒子大きさは、0.01〜5μmである。 平均の粒子大きさが0.01μmより小さいと、延伸過程で形成される気孔の大きさが小さくて多孔膜に適合しない。平均の粒子大きさが5μmより大きいと、延伸後、気孔が大きすぎて、多孔膜の物性が低下し、厚さが9〜30μmである本発明による分離膜の全体物性にも影響を及ぼす。
【0031】
ポリプロピレンと耐熱フィラー層の含量は、ポリプロピレン20〜70wt%と耐熱フィラー80〜30wt%が好ましい。ポリプロピレンの含量が70wt%を超過すると、延伸過程で生成される気孔が減少し、透過度が大いに減少する。一方、ポリプロピレンの含量が20重量%未満であると、ポリプロピレンがマトリックス状に連結されず、切れるようになり、多孔膜の物性が低下して、耐熱性の向上効果が大いに低下する。ポリプロピレンと耐熱フィラー層の効果は、ポリプロピレンと耐熱フィラーが体積比で50/50程度の領域で最も好ましく現れて、耐熱フィラーの密度がプロピレンに対し高いことを考慮すると、さらに好ましいポリプロピレンと無機物の組成は、ポリプロピレン30〜50wt%と無機物70〜50wt%である。
【0032】
前記組成物には、必要に応じて、酸化安定剤、UV安定剤、帯電防止剤などの、特定機能の向上のための一般添加剤をさらに添加することができる。
【0033】
前記組成物は、ポリオレフィンと耐熱フィラーとの混練のためにデザインされた二軸コンパウンダー、混練機、あるいはバンバリーミキサーなどを利用して溶融混練させる。溶融混練温度は、耐熱フィラーが極性耐熱樹脂の場合は、極性耐熱樹脂の溶融温度に対し30℃〜50℃高い温度で加工することが好ましい。溶融混練温度が前記温度領域より低い場合は、極性耐熱樹脂の未溶融により混練不良が生じやすく、前記温度領域より高い場合は、温度が高すぎて、ポリプロピレンを含む樹脂の熱酸化が激しく発生する可能性がある。耐熱フィラーが無機物である場合、好ましい溶融混練温度は、180℃以上250℃以下である。 ポリプロピレンと耐熱フィラーは、予めブレンディングしてコンパウンダーに投入してもよく、分離された供給機(feeder)からそれぞれ投入してもよい。
【0034】
(c)前記(a)及び(b)で混練された溶融物を2乃至3層の多層シートに成形する段階;
溶融物からシート状の成形物を製造する方法には、一般的なキャスティング(casting)、あるいはカレンダリング(calendaring)方法、いずれも使用できる。好ましいキャスティングあるいはカレンダリングロールの温度は、30℃〜80℃である。冷却ロールの温度が30℃以下の場合は、シートの急冷によるシートのシワが発生し、冷却ロールの温度が80℃を超えると、冷却が十分ではなく、表面不良などの問題が発生し得る。
【0035】
多層のシートを形成する方法には、一般的な共押出法、熱融着法あるいはコーティング法などが使用できる。共押出法は、シートの成形時、それぞれの押出機から押出される溶融物を、多層Tダイを通じて共押出して多層シートを製造する方法であり、熱融着法は、それぞれの押出機から得られたシートを重ね合って、圧力を加えながら熱融着させる方法であって、コーティング法は、第1に形成されたシート上に、他の層を第2に押出して、多層シートを製造する方法である。
【0036】
(d)前記多層シートを延伸し、フィルムに成形する段階;
延伸は、テンタータイプ(tenter type)の同時延伸、あるいはロールを利用して縦方向の第1延伸を行って、テンターで横方向の第2延伸を行う逐次延伸など、いずれも使用可能である。延伸比は、縦方向及び横方向にそれぞれ4倍以上であり、総延伸比は、25〜60倍であることが好ましい。一方向の延伸比が4倍未満である場合は、一方向の配向が十分ではなく、且つ縦方向及び横方向間の物性均衡が崩れ、穿孔強度が低下する。また、総延伸比が25倍未満であると、未延伸が発生し、60倍を超過すると、延伸中、破断が発生する可能性が高く、最終フィルムの収縮率が増加する短所がある。
【0037】
この際、延伸温度は、使用されたポリエチレンの融点と、希釈剤の濃度及び種類によって異なる。最適の延伸温度は、前記多層シート成形物内のポリエチレンと希釈剤層の結晶部分の30〜80重量%が溶融温度範囲で選択されることが好ましい。延伸温度が、前記多層シート成形物内のポリエチレンと希釈剤層の結晶部分の30重量%が溶融温度より低い温度範囲で選択されると、フィルムの軟質性(softness)がないため、延伸性が悪くなり、延伸時に破断が発生する可能性が高く、且つ未延伸も発生する。一方、前記延伸温度が、前記多層シート成形物内のポリエチレンと希釈剤層の結晶部分の80重量%が溶融温度より高い温度範囲で選択すると、延伸が容易で、未延伸の発生は少ないが、部分的な過延伸により厚さ偏差が発生して、樹脂の配向効果が低く、物性が大きく低下するようになる。前記延伸温度領域は、ポリプロピレンの溶融温度よりは低い領域であるが、ポリプロピレンの低温延伸は可能な温度である。この延伸を通じて、ポリプロピレンと耐熱フィラー層では、ポリプロピレンは破断することなく延伸されて、且つポリプロピレンと耐熱フィラーの界面が拡開し、気孔が形成される。
【0038】
このように延伸されたポリプロピレンは、希釈剤無しに延伸されて、延伸効果が高く、分離膜全体の物性の向上にも寄与するようになる。
【0039】
一方、温度による結晶部分の溶ける程度は、フィルム成形物の熱分析(DSC, Differential scanning calorimeter)から得られる。
【0040】
(e)前記フィルムから希釈剤を抽出する段階;
延伸過程を通じて厚さが薄くなったシート、即ちフィルムは、有機溶媒を使用して抽出及び乾燥する。本発明で使用可能な有機溶媒は、特に限定されず、樹脂押出に使用された希釈剤を抽出できる溶剤であればいずれも使用可能であるが、好ましくは、抽出効率が高く、乾燥が速いメチルエチルケトン、メチレンクロライド、ヘキサンなどが好ましい。抽出方法は、浸漬(immersion)方法、溶剤スプレー(solvent spray)方法、超音波(ultrasonic)法などの一般的な溶媒抽出方法を独立的にあるいは組み合せて使用できる。抽出時、残留希釈剤の含量は、1重量%以下でなければならない。残留希釈剤が1重量%を超えると、物性が低下し且つフィルムの透過度が減少する。
【0041】
残留希釈剤の量は、抽出温度と抽出時間により大きく左右される。抽出温度は、希釈剤と溶媒の溶解度増加のために、高いことが好ましいが、溶剤の沸き(boiling)による安定性問題を考慮すると、40℃以下が好ましい。抽出温度が希釈剤の凝固点以下であると、抽出効率が大きく低下するため、必ず希釈剤の凝固点より高くなければならない。抽出時間は、生産されるフィルムの厚さにより異なるが、9〜30μm厚の微多孔膜を生産する場合、2〜4分が好ましい。
【0042】
(f)前記フィルムを熱固定する段階;
乾燥されたフィルムは、最後に、残留応力を除去し最終フィルムの収縮率を減少させるために、熱固定過程を経る。熱固定は、フィルムを固定させて熱を加え、収縮しようとするフィルムを強制に固定するか、延伸あるいは収縮させて、残留応力を除去することである。熱固定温度は、高いほど収縮率を低めるに有利であるが、高すぎる場合は、フィルムが部分的に溶けて、形成された微多孔が目詰まって、透過度が低下する。好ましい熱固定温度は、フィルムのポリエチレン結晶部分の10〜70重量%が溶融温度範囲で選択することが好ましい。前記熱固定温度が、前記フィルムの結晶部分の10重量%が溶融温度より低い温度範囲から選択されると、フィルム内のポリエチレン分子の再配列(reorientation)が十分ではなく、フィルムの残留応力の除去効果が得られなく、フィルムの結晶部分の70重量%が溶融温度より高い温度範囲で選択されると、部分的溶融により微多孔が目詰まって、透過度が低下される。
【0043】
ここで、熱固定時間は、熱固定温度が高い場合は、相対的に短くして、熱固定温度が低い場合は、相対的に長くすることができる。テンター方式の連続式熱固定装置を使用する場合、熱固定時間は、好ましくは20秒〜2分程度である。最も好ましくは、フィルムの結晶部分の10〜30重量%が溶融温度範囲では、1〜2分、30〜70重量%が溶融温度範囲では、20秒〜1分程度が好適である。
【0044】
以下、上述のように製造される本発明のポリオレフィン多層微多孔膜について、さらに詳細に説明する。
【0045】
本発明による多層微多孔膜は、溶融温度125℃以上のポリエチレンからなる層と、溶融温度160℃以上の、例えば溶融温度が160、163、167℃など、ポリプロピレン20〜70wt%と無機物80〜30wt%とからなる層との組み合わせから構成される2層あるいは3層の微多孔膜である。3層の場合、ポリエチレン層が中間層で、ポリプロピレンと耐熱フィラー層が両表面層であるか、その反対の場合も可能である。
【0046】
前記多層微多孔膜において、ポリエチレンからなる層の厚さが全体厚さの50%以上であり、ポリプロピレン及び耐熱フィラーからなる層の厚さが少なくとも1μm以上であることが好ましい。ポリエチレン層の厚さが全体フィルムの厚さの50%未満であると、優れた気孔の均一性による品質安定性と物性を有する湿式分離膜の比率が全体の50%未満となるわけだから、フィルム全体の品質安定性を阻害する恐れがあり、好ましくない。耐熱性の向上に寄与するポリプロピレン及び耐熱フィラーからなる層の厚さは、少なくとも1μm以上である必要がある。この層の厚さが1μmを超えない場合は、耐熱性の向上効果が大きくない。
【0047】
本発明による多層微多孔膜は、膜厚が9〜30μm、穿孔強度が0.15N/μm以上、透過度が1.5×10−5Darcy以上で、溶融破断温度が170℃以上である微多孔膜である。膜厚が9μmであると、全体強度が弱くて、二次電池用分離膜として好ましくなく、厚さが30μmを超過する場合は、透過度が低くて二次電池用分離膜として好ましくない。
【0048】
穿孔強度は、0.15N/μm以上であることが好ましいが、穿孔強度が0.15N/μm未満の場合は、強度が弱くて、二次電池用分離膜に適合しない。さらに好ましい穿孔強度は、0.2N/μm以上、0.5N/μmである。
【0049】
本多層分離膜の気体透過度は、1.5×10−5Darcy以上である。気体透過度が1.5×10−5Darcy未満の場合は、透過度が十分ではなく、高容量/高効率電池に適合しない。さらに好ましい気体透過度は、2.5×10−5Darcy〜 10.0×10−5Darcyである。
【0050】
本発明による微多孔膜の溶融破断温度は、使用されるポリプロピレンの溶融温度と無機物の含量により左右されるが、170℃以上220℃以下である。電池の耐熱テストは、150℃で評価されることが一般的であるが、電池内部の短絡の発生時、電池の温度はさらに高く上昇するため、溶融破断温度は、170℃以上であることが好ましい。
【0051】
本発明により形成される多孔膜の気孔は、二つの種類に存在する。ポリエチレンからなる層の気孔は、ポリエチレンと希釈剤との相分離後、延伸/抽出過程を通じて作られるマイクロ気孔であって、平均の大きさは、0.1μm以下である。平均の大きさが0.1μmを超えると、フィルム全体の安全性と安定性を阻害するようになる。好ましいマイクロ気孔の平均大きさは、0.01μm以上0.1μm以下である。一方、ポリプロピレンと耐熱フィラーとからなる層の気孔は、ポリプロピレンと耐熱フィラーとの界面拡開により形成されるマクロ気孔であって、平均の大きさは、1μm以上50μm以下である。この層の気孔が1μm未満の場合は、フィルム全体の透過度を低下させる可能性がある。その反面、この層の気孔が50μmを超える場合、フィルムの物性が低下する可能性があり、耐熱性の向上効果も低下する。耐熱性の向上効果は、50μm以下の気孔がポリプロピレン内に均一に分布し、安定的なポリプロピレンネットワークが形成される時に極大化するからである。さらに好ましいポリプロピレンと無機物からなる層の平均の気孔の大きさは、1μm以上20μm以下である。
【0052】
本発明による多層微多孔膜は、ポリエチレンに起因する低い閉温度特性と、ポリプロピレンと耐熱フィラーに起因する高い溶融破断温度特性を同時に有するだけではなく、湿式方式により製造された分離膜の特徴である均一な微多孔及び高剛性/安定性の特性と、乾式により製造された大きい気孔による高透過/高強度特性も同時に有し、高容量/高出力二次電池に使用時、優れた効果を奏する。
【発明の効果】
【0053】
本発明による多層微多孔膜は、ポリエチレンに起因する低い閉温度特性と、ポリプロピレンと耐熱フィラーに起因する高い溶融破断温度特性を同時に有するだけではなく、湿式方式により製造された分離膜の特徴である均一な微多孔及び高剛性/安定性の特性と、乾式により製造された大きい気孔による高透過/高強度特性も同時に有し、高容量/高出力二次電池に使用時、優れた効果を奏する。
【0054】
本発明の単純な変形及び変更は、全て本発明の領域に属し、本発明の具体的な保護範囲は、添付の特許請求の範囲により明確になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下、実施例を通じて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0056】
(実施例)
ポリエチレン及びポリプロピレンの分子量及び分子量分布の測定は、Polymer Laboratory社の高温GPC(Gel Permeation Chromatography)で測定した。
【0057】
希釈剤の粘度は、Cannon社のCAV−4自動動粘度計(Automatic Viscometer)で測定した。
【0058】
原料からシート及びフィルムを製造した方法は、次のようである。
【0059】
*フィルムの製造方法
ポリエチレンと希釈剤は、Φ=46mmの二軸コンパウンダーで混練された。混練温度は、180〜240℃であった。ポリエチレンは、メインホッパーに投入され、希釈剤は、サイドフィーダーを利用して押出機に投入された。混練された溶融物は、T字形ダイより押出されて、30℃キャスティングロールにより必要な厚さに成形された。
【0060】
ポリプロピレンと耐熱フィラーは、Φ=30mmの二軸コンパウンダーで混練/押出された。混練/押出温度は、220〜330℃であった。ポリプロピレンと耐熱フィラーは、事前に混練され押出機に投入された。混練/押出された溶融物は、別途のT字形ダイ付き押出機を通じて押出され、30℃キャスティングロールにより必要な厚さに成形された。
【0061】
多層シートは、コンプレッションモルダーを使用して、各シートを重ね合った後、熱融着して製造した。熱融着温度は200℃であり、熱融着時間は、30秒であった。
【0062】
成形されたシートの温度による結晶部分の溶ける現象を分析するために、Mettler Toledo社のDSC(Differential Scanning Calorimeter)を使用した。分析条件は、サンプル重量5mg、スキャン速度(scanning rate)10℃/minであった。
【0063】
シートの延伸は、テンタータイプのLab.延伸機、及び温度を変化させながら同時延伸で進行して、延伸温度は、DSC結果に基づき、ポリエチレンと希釈剤層の結晶部分が30〜80重量%溶融温度範囲で決定した。
【0064】
希釈剤の抽出は、メチレンクロライドを利用し、浸漬方式により行って、抽出時間は、5分間であった。
【0065】
熱固定は、希釈剤が抽出されたフィルムを空気中で乾燥した後、フィルムをフレームに固定して、熱風オーブン(convection oven)で行った、熱固定は、120℃で1分30秒間行った。
【0066】
各フィルム層の厚さは、SEM(Scanning Electron Mocroscope)を使用して測定した。製造されたフィルムを液体窒素下で20秒間冷却した後、瞬間破壊し、断面を観察して厚さを測定した。
【0067】
各層の気孔の平均の大きさは、二つの方法により測定された。ポリエチレンと希釈剤層の気孔の大きさは、同一条件で製造された単層のフィルムを製造し、孔隙測定機(Porometer:PMI社)を利用して、ASTM F316−03に基づき、ハーフドライ法で測定した。ポリプロピレンと耐熱フィラー層の気孔の大きさは、フィルム表面の電子顕微鏡写真から測定される見掛け気孔の大きさから測定した。
【0068】
製造されたフィルムは、微多孔膜において最も重要な物性である穿孔強度、気体透過度、及び溶融破断温度を測定し、その結果を下記表に示した。
【0069】
*物性測定方法
(1)穿孔強度は、直径1.0mmのピンが120mm/minの速度でフィルムを破断させる時の強度で測定した。
(2)気体透過度は、孔隙測定機(porometer:PMI社のCFP-1500-AEL)で測定した。一般に、気体透過度は、Gurley numberで表示されるが、Gurley numberは、フィルム厚の影響が補正されないため、フィルム自体の孔隙構造による相対的透過度が分かり難い。これを解決するために、本発明では、Darcy’s透過度常数を使用した。Darcy’s透過度常数は、下記数学式1から得られて、本発明では、窒素を使用した。
[数学式1]
C=(8FTV)/(πD(P−1))
ここで、C=Darcy透過度常数
F=流速
T=サンプル厚
V=気体の粘度(0.185 for N2)
D=サンプル直径
P=圧力
本発明では、100〜200psi領域でDarcy’s透過度常数の平均値を使用した。
(3)フィルムの溶融破断温度の測定のために、図3のような(外枠:7.5cm×7.5cm、内径:2.5cm×2.5cm)フレームに、図4のようにフィルム(5cm×5cm)をポリイミドテープで固定した後、設定された温度に維持される熱風オーブン(convection oven)で10分間放置後、フィルムの破断有無を観察した。10分が経ってもフィルムが破断しない最高の温度を溶融破断温度とした。
【0070】
(実施例1)
第1層には、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が134℃であるポリエチレンと、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが使用されて、二つの成分の含量は、それぞれ30wt%、70wt%であった。製造された第1層のシートの厚さは、950μmであった。第2層には、重量平均分子量が5.7×10で、溶融温度が163℃であるポリプロピレンと、平均の粒子の大きさが1.5μmであるCaCOが使用されて、二つの成分の含量は、それぞれ50wt%、50wt%であった。製造された第2層のシートの厚さは、100μmであった。
【0071】
第1層のシートと第2層のシートは、熱融着された後、119℃で同時延伸により縦方向6倍、横方向6倍に、トータル36倍に延伸された。抽出と熱固定段階を経た最終のフィルムの厚さは、22μmであった。
【0072】
(実施例2)
第1層には、重量平均分子量が2.7×10で、コモノマーとしてプロピレンが使用され溶融温度が130℃であるポリエチレンと、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが使用されて、二つの成分の含量は、それぞれ30wt%、70wt%であった。製造された第1層のシートの厚さは、1,000μmであった。第2層には、重量平均分子量が2.5×10で、エチレンがコモノマーとして使用され溶融温度が160℃であるポリプロピレンと、平均の粒子の大きさが3.0μmであるSiOが使用されて、二つの成分の含量は、それぞれ30wt%、70wt%であった。製造された第2層のシートの厚さは、90μmであった。
【0073】
第1層のシートと第2層のシートは、熱融着された後、119℃で同時延伸により縦方向7倍、横方向7倍に、トータル49倍に延伸された。抽出と熱固定段階を経た最終のフィルムの厚さは、17μmであった。
【0074】
(実施例3)
第1層には、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が134℃であるポリエチレンと、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが使用されて、二つの成分の含量は、それぞれ30wt%、70wt%であった。製造された第1層のシートの厚さは、700μmであった。第2層には、重量平均分子量が2.5×10で、溶融温度が163℃であるポリプロピレンとポリメチルペンテンが使用されて、二つの成分の含量は、それぞれ70wt%、30wt%であった。製造された第2層のシートの厚さは、220μmであった。
【0075】
第1層のシートと第2層のシートは、熱融着された後、122℃で逐次延伸により縦方向6倍、横方向6倍に、トータル36倍に延伸された。抽出と熱固定段階を経た最終のフィルムの厚さは、20μmであった。
【0076】
(実施例4)
第1層には、重量平均分子量が2.7×10で、コモノマーとしてプロピレンが使用され溶融温度が130℃であるポリエチレンと、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが使用されて、二つの成分の含量は、それぞれ50wt%、50wt%であった。製造された第1層のシートの厚さは、340μmであった。第2層には、重量平均分子量が5.7×10で、溶融温度が163℃であるポリプロピレンとポリカーボネートが使用されて、二つの成分の含量は、それぞれ60wt%、40wt%であった。製造された第2層のシートの厚さは、35μmであった。
【0077】
第1層のシートと第2層のシートは、熱融着された後、122℃で同時延伸により縦方向5倍、横方向5倍に、トータル25倍に延伸された。抽出と熱固定段階を経た最終のフィルムの厚さは、12μmであった。
【0078】
(実施例5)
第1層には、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が134℃であるポリエチレンと、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが使用されて、二つの成分の含量は、それぞれ20wt%、80wt%であった。製造された第1層のシートの厚さは、2,000μmであった。第2層には、重量平均分子量が2.5×10で、溶融温度が163℃であるポリプロピレンと、平均の粒子の大きさが0.4μmであるBaTiOが使用されて、二つの成分の含量は、それぞれ20wt%、80wt%であった。製造された第2層のシートの厚さは、80μmであった。
【0079】
第1層のシートと第2層のシートは、第2層/第1層/第2層の3層シートに熱融着された後、122℃で同時延伸により縦方向7倍、横方向7倍に、トータル49倍に延伸された。抽出と熱固定段階を経た最終のフィルムの厚さは、30μmであった。
【0080】
(比較例1)
第1層に、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が134℃であるポリエチレンと、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが使用されて、二つの成分の含量は、それぞれ30wt%、70wt%であった。製造された第1層のシートの厚さは、1,100μmであった。
【0081】
第1層のシートは、単独で、120℃で同時延伸により縦方向6倍、横方向6倍に、トータル36倍に延伸された。抽出と熱固定段階を経た最終のフィルムの厚さは、20μmであった。
【0082】
(比較例2)
第1層には、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が134℃であるポリエチレンと、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが使用されて、二つの成分の含量は、それぞれ60wt%、40wt%であった。製造された第1層のシートの厚さは、500μmであった。第2層には、重量平均分子量が2.5×10で、溶融温度が163℃であるポリプロピレンのみを使用した。製造された第2層のシートの厚さは、200μmであった。
【0083】
第1層のシートと第2層のシートは、熱融着された後、116℃で同時延伸により縦方向6倍、横方向6倍に、トータル36倍に延伸された。抽出と熱固定段階を経た最終のフィルムの厚さは、18μmであった。
【0084】
(比較例3)
第1層には、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が134℃であるポリエチレンと、粒子の大きさが1.5μmであるCaCO及び40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが使用された。混練押出は、Φ=46mmの二軸コンパウンダーで混練された。混練温度は、180〜240℃であり、ポリエチレンとCaCOは、事前に混練され押出機に投入されて、パラフィンオイルは、サイドフィーダーを利用して押出機に注入された。三つの成分の含量は、ポリエチレン21wt%、CaCOが9wt%、パラフィンオイル70wt%であった。混練された溶融物は、T字形ダイより押出されて、キャスティングロールにより、厚さ450μmのシートに成形された。
【0085】
第2層には、重量平均分子量が5.7×10で、溶融温度が163℃であるポリプロピレンと、重量平均分子量が3.0×10で、溶融温度が134℃であるポリエチレンが使用された。混練押出は、Φ=46mmの二軸コンパウンダーで混練された。混練温度は、180〜240℃であり、ポリプロピレンとポリエチレンは、事前に混練され押出機に投入された。二つの成分の含量は、それぞれ80wt%、20wt%であった。製造された第2層のシートの厚さは、480μmであった。
【0086】
第1層のシートと第2層のシートは、熱融着された後、120℃で同時延伸により縦方向6倍、横方向6倍に、トータル36倍に延伸された。抽出と熱固定段階を経た最終のフィルムの厚さは、22μmであった。
【0087】
(比較例4)
第1層には、重量平均分子量が2.7×10で、コモノマーとしてプロピレンが使用され溶融温度が130℃であるポリエチレンと、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが使用されて、二つの成分の含量は、それぞれ30wt%、70wt%であった。製造された第1層のシートの厚さは、180μmであった。第2層には、重量平均分子量が2.0×10で、エチレンと1−ブテンがコモノマーとして使用され溶融温度が132℃であるポリプロピレンと平均の粒子の大きさが5.5μmであるSiOが使用されて、二つの成分の含量は、それぞれ50wt%、50wt%であった。製造された第2層のシートの厚さは、230μmであった。
【0088】
第1層のシートと第2層のシートは、熱融着された後、118℃で同時延伸により縦方向7倍、横方向3.5倍に、トータル24.5倍に延伸された。抽出と熱固定段階を経た最終のフィルムの厚さは、15μmであった。
【0089】
(比較例5)
第1層には、重量平均分子量が1.5×10で、コモノマーとして1−ブテンが使用され溶融温度が121℃であるポリエチレンと、40℃動粘度が95cStであるパラフィンオイルが使用されて、二つの成分の含量は、それぞれ30wt%、70wt%であった。製造された第1層のシートの厚さは、750μmであった。第2層には、重量平均分子量が2.5×10で、溶融温度が163℃であるポリプロピレンとポリカーボネートが使用されて、二つの成分の含量は、それぞれ10wt%、90wt%であった。製造された第2層のシートの厚さは、25μmであった。
【0090】
第1層のシートと第2層のシートは、熱融着された後、110℃〜120℃の温度で延伸を試みたが、破断により延伸が不可能であった。
【0091】
【表1】

PE:ポリエチレン、PP:ポリプロピレン、PMP:ポリメチルペンテン、PC:ポリカーボネート
Tm:溶融温度(Melting Temperature)
【0092】
【表2】

PE:ポリエチレン、PP:ポリプロピレン
Tm:溶融温度(Melting Temperature)
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】ポリエチレンと希釈剤との相分離後、延伸/抽出過程を通じて作られるマイクロ気孔を撮影したものである。
【図2】ポリプロピレンと耐熱フィラーの界面拡開により形成されるマクロ気孔を撮影したものである。
【図3】7.5cm×7.5cmの外枠と2.5cm×2.5cmの内径とからなるフレームを示したものである。
【図4】5cm×5cmのフィルムを示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)溶融温度125℃以上のポリエチレン20〜50wt%と希釈剤80〜50wt%とからなる組成物を溶融混練する段階と、
(b)溶融温度160℃以上のポリプロピレン20〜70wt%と溶融温度170℃以上の耐熱フィラー80〜30wt%とからなる組成物を溶融混練する段階と、
(c)前記(a)及び(b)で混練された溶融物を2乃至3層の多層シートに成形する段階と、
(d)前記多層シートを延伸し、フィルムに成形する段階と、
(e)前記フィルムから希釈剤を抽出する段階と、
(f)前記フィルムを熱固定する段階と、
から製造されて、
ポリエチレンからなる層の気孔は、ポリエチレンと希釈剤との相分離後、延伸/抽出過程を通じて作られるマイクロ気孔であって、平均の大きさは、0.1μm以下であり、ポリプロピレンと耐熱フィラーとからなる層の気孔は、ポリプロピレンと耐熱フィラーの界面拡開により形成されるマクロ気孔であって、平均の大きさは、1μm以上50μm以下であり、膜厚が9〜30μm、穿孔強度が0.15N/μm以上、透過度が1.5×10−5Darcy以上で、溶融破断温度が170℃以上であるポリオレフィン系多層微多孔膜の製造方法。
【請求項2】
ポリエチレンは、エチレン単独、あるいはエチレンと炭素数3〜8のαオレフィンとの組み合わせから構成される、溶融温度125℃以上の単一あるいは混合ポリエチレンであり、
ポリプロピレンは、プロピレン単独、あるいはプロピレンとエチレンと炭素数4〜8の αオレフィンとの組み合わせから構成される、溶融温度160℃以上の単一あるいは混合ポリプロピレンであり、
溶融温度170℃以上の耐熱フィラーは、ポリボニリデンフロライド、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリメチレンオキシドなどの耐熱樹脂であるか、平均の粒子サイズが0.01μm〜5μmの無機物としてシリコンジオキシド(SiO)、アルミニウムオキシド(Al)、カルシウムカーボネート(CaCO)、チタニウムジオキシド(TiO)、SiS、SiPO、MgO、ZnO、BaTiO、天然または有機的に変形されたクレー、またはこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載のポリオレフィン系多層微多孔膜の製造方法。
【請求項3】
ポリエチレンからなる層の厚さが全体厚さの50%以上であり、ポリプロピレンと耐熱フィラーとからなる層の厚さが少なくとも1μm以上であることを特徴とする、請求項2に記載のポリオレフィン系多層微多孔膜の製造方法。
【請求項4】
ポリプロピレンと耐熱フィラーとからなる層の組成が、ポリプロピレンが20〜50wt%であり、耐熱フィラーが80〜50wt%であることを特徴とする、請求項3に記載のポリオレフィン系多層微多孔膜の製造方法。
【請求項5】
膜厚が9〜30μm、穿孔強度が0.2N/μm以上、透過度が2.5×10−5〜10.0×10−5Darcyであることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかの項に記載のポリオレフィン系多層微多孔膜の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかの項に記載の製造方法により製造される、膜厚が9〜30μm、穿孔強度が0.15N/μm以上、透過度が1.5×10−5Darcy以上で、溶融破断温度が170℃以上であり、ポリエチレンからなる層の気孔は、ポリエチレンと希釈剤との相分離後、延伸/抽出過程を通じて作られるマイクロ気孔であって、平均の大きさは、0.1μm以下であり、ポリプロピレンと耐熱フィラーとからなる層の気孔は、ポリプロピレンと耐熱フィラーの界面拡開により形成されるマクロ気孔であって、平均の大きさは、1μm以上50μm以下である、ポリオレフィン系多層微多孔膜。
【請求項7】
製造される微多孔膜は、膜厚が9〜30μm、穿孔強度が0.2N/μm以上、透過度が2.5×10−5Darcy以上、溶融破断温度が170℃以上であり、ポリエチレンからなる層の気孔は、ポリエチレンと希釈剤との相分離後、延伸/抽出過程を通じて作られるマイクロ気孔であって、平均の大きさは、0.1μm以下であり、ポリプロピレンと耐熱フィラーとからなる層の気孔は、ポリプロピレンと耐熱フィラーの界面拡開により形成されるマクロ気孔であって、平均の大きさは、1μm以上50μm以下である、請求項6に記載のポリオレフィン系多層微多孔膜。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−160933(P2009−160933A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332246(P2008−332246)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(308007044)エスケー エナジー カンパニー リミテッド (53)
【Fターム(参考)】